(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体パッケージに関しては、小型化(ダウンサイジング化)が強く求められている。その要求に応えるためには、リードフレーム上における領域(面積)の有効活用を図ることが必要となる。
【0005】
しかしながら、銅または銅合金を形成材料とし、かつ、その表面にニッケルめっき層が部分的に形成されてなるリードフレームについては、以下に述べるように、領域有効活用の点では不利である。
例えば
図3に示すように、銅または銅合金を形成材料とする基材21の表面にニッケルめっき層22が部分的に形成されてなるリードフレームを例に挙げて考える。かかるリードフレームにおいては、銅とニッケルの固有電位の関係(ニッケルが卑金属)により電解質中でのイオン化傾向に差が生じることから、ニッケルめっき層22との境界近傍における銅のイオン化が抑制されてしまい、その境界近傍が粗化されないおそれがある。しかも、その場合に粗化がされない範囲を所望の通りに制御することは非常に困難である。そのために、かかるリードフレームに対して粗化処理を行う場合には、ニッケルめっき層22の形成箇所を覆うようにマスキングテープ30を貼付して、銅とニッケルが電解質中で接触しないようにすることが考えられる。ところが、マスキングテープ30を貼付する場合においても、ニッケルめっき層22を完全に覆うようにするためには、例えば少なくとも0.5mm程度の幅をマスキングテープ30の貼付マージン幅(図中「W」参照)として確保しなければならず、その分だけニッケルめっき層22との境界近傍に粗化処理がされない非粗化部分が存在してしまうことになる。
このような非粗化部分の存在は、リードフレーム上の領域有効活用を図る点では不利である。しかも、非粗化部分の存在は、樹脂密着性の向上には寄与しないので、樹脂密着性の向上を通じて半導体パッケージの信頼性を向上させる上では好ましくない。
【0006】
本発明は、表面に部分めっき層および粗化面を備えるリードフレームにおいて、そのリードフレーム上の領域有効活用を図ることができ、しかも樹脂密着性向上による信頼性向上が期待できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
銅または銅合金を形成材料とする基材と、
前記基材の表面の一部に形成され、少なくとも表層部分にニッケルリンめっき層を有する部分めっき層と、
前記基材の表面における前記部分めっき層との隣接領域に配された粗化面と、
を備えるリードフレームである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表面に部分めっき層および粗化面を備えるリードフレームにおいて、そのリードフレーム上の領域有効活用を図ることができ、しかも樹脂密着性向上による信頼性向上が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0011】
<1.リードフレームの概略構成>
先ず、本実施形態に係るリードフレームの概略構成を説明する。
図1は、本実施形態に係るリードフレームの要部構成例を模式的に示す側断面図である。
【0012】
本実施形態で例に挙げて説明するリードフレーム10は、半導体パッケージを構成する部材の一つであり、基材11を備えて構成されるとともに、その基材11の表面に部分めっき層12が形成されてなり、さらには部分めっき層12が形成されていない基材11の表面に粗化面13が配されてなるものである。
【0013】
(基材)
基材11は、銅または銅合金を形成材料とする薄板状(例えば、板厚が0.08〜3.0mm程度)のもので、半導体素子が搭載される素子搭載部やその周囲に配されるリード等を有する所定形状(以下「リードフレーム形状」という。)に成形されたものである。なお、リードフレーム形状の形状自体は、素子搭載部に搭載される半導体素子や当該半導体素子を備えて構成される半導体パッケージに応じて適宜決定されたものであればよく、特に限定されるものではない。
【0014】
(部分めっき層)
部分めっき層12は、ダイやワイヤ等のボンディング性を向上させるべく、基材11の表面の一部に形成されたものである。ここでいう「一部」とは、表面の全部ではなく部分的に形成されていることを意味する。したがって、基材11の表面上において、部分めっき層12は、部分的に形成されたものであれば、複数箇所に形成されていてもよい。部分めっき層12が形成される箇所数や面積等は、素子搭載部に搭載される半導体素子や当該半導体素子を備えて構成される半導体パッケージに応じて適宜決定されたものであればよく、特に限定されるものではない。
【0015】
また、部分めっき層12は、表層部分にニッケルリンめっき層12aを有している。ニッケルリンめっき層12aは、ニッケル(Ni)−リン(P)めっき処理によって形成され、Niを主な析出物としPを2〜15%程度を含む被膜からなる層である。ニッケルリンめっき層12aは、少なくとも部分めっき層12の表層部分に形成されていればよい。つまり、部分めっき層12は、その全部をニッケルリンめっき層12aによって形成することも考えられるが、必ずしもこれに限定されることはなく、少なくとも部分めっき層12の表層部分(すなわち部分めっき層12の露出表面を含む部分)を覆っていれば、ニッケルリンめっき層12aが一部分に形成されたものであってもよい。
【0016】
このことから、部分めっき層12については、その全部をニッケルリンめっき層12aによって形成するのではなく、下地めっき層としてのニッケルめっき層12bと、そのニッケルめっき層12bを覆うように形成されたニッケルリンめっき層12aと、を有して構成することが考えられる。ニッケルめっき層12bは、Niめっき処理によって形成されたNi被膜からなる層である。このような構成とすれば、一般にNi−Pめっき処理の析出スピードよりもNiめっき処理の析出スピードのほうが速いことから、部分めっき層12を形成する際の効率向上が図れるようになる。
【0017】
部分めっき層12をニッケルリンめっき層12aとニッケルめっき層12bとの多層構造とする場合、ニッケルリンめっき層12aは、0.4μm以上の厚さで形成されているものとする。表層部分をニッケルリンめっき層12aが覆うことによる効果(詳細は後述)を、確実に得られるようにするためである。ただし、上述した効率向上の観点においては、ニッケルリンめっき層12aが極力薄いほうが好ましい。そこで、ニッケルリンめっき層12aの厚さは、例えば0.5μm程度とすることが考えられる。なお、ニッケルリンめっき層12aの厚さを0.5μm程度とした場合に、例えば、部分めっき層12の全体の厚さが1.5μm程度であれば、ニッケルめっき層12bの厚さは、1.0μm程度となる。
【0018】
(粗化面)
粗化面13は、半導体パッケージを封止する樹脂材料の密着性を向上させるための粗化処理が施された面であり、アンカー効果が生じ得る程度(例えば、Ra(算術平均粗さ)で0.20μm以上程度、Rz(最大高さ)で2.0μm以上程度)の表面粗さを有する面である。
【0019】
また、粗化面13は、基材11の表面に粗化処理が施されてなる面であるから、基材11の表面上で部分めっき層12が形成されていない箇所(すなわち、部分めっき層12の非形成箇所)に配されているが、特に部分めっき層12との隣接領域にも配されている。ここでいう「隣接領域」とは、部分めっき層12の端縁(すなわち、基材11の露出表面との境界)に接するように位置する領域のことをいうが、部分めっき層12の端縁に接する部分を有していればよく、その領域の平面視形状や大きさ(範囲)等が特に限定されるものではない。
【0020】
<2.リードフレームの製造手順>
次に、上述した構成のリードフレーム10を製造する手順、すなわち本実施形態に係るリードフレームの製造方法の一例について、簡潔に説明する。ここでは、部分めっき層12がニッケルめっき層12bとニッケルリンめっき層12aとの多層構造である場合を例に挙げる。
【0021】
上述した構成のリードフレーム10の製造にあたっては、少なくとも、部分めっき層12を形成するめっき工程(ステップ10、以下ステップを「S」と略す。)と、粗化処理を行う粗化工程(S20)と、を経る。以下、これらの各工程について説明する。
【0022】
(めっき工程:S10)
めっき工程(S10)では、先ず、リードフレーム10を構成する基材11、または、その元になるリードフレーム形状成形前の銅条に対して、所定の前処理(脱脂、酸洗等)を行い、さらに部分めっき層12の形成予定箇所のみを露出させるマスキング処理(マスキングテープの貼付等)を行う。
【0023】
その後、めっき工程(S10)では、ニッケルめっき層12bを形成するためのNiめっき処理を行う。具体的には、ニッケルめっき層12bの厚さが例えば1.0μm程度となるような処理条件(処理時間、処理温度等)でNiめっき処理を行う。これにより、部分めっき層12の形成予定箇所には、例えば1.0μm程度の厚さのニッケルめっき層12bが下地めっき層として形成されることになる。なお、Niめっき処理の詳細な内容(使用するめっき浴の種類や具体的な手法等)は、公知技術を利用したものであればよく、ここではその説明を省略する。
【0024】
ニッケルめっき層12bを形成したら、次いで、めっき工程(S10)では、必要に応じて洗浄処理等を経た後に、ニッケルリンめっき層12aを形成するためのNi−Pめっき処理を行う。具体的には、ニッケルリンめっき層12aの厚さが例えば0.5μm程度となるような処理条件(処理時間、処理温度等)でNi−Pめっき処理を行う。これにより、部分めっき層12の形成予定箇所には、例えば0.5μm程度の厚さのニッケルリンめっき層12aが、ニッケルめっき層12bの表面を覆うように形成されることになる。つまり、表層部分にニッケルリンめっき層12aを有する多層構造の部分めっき層12が形成されるのである。なお、Ni−Pめっき処理の詳細な内容(使用するめっき浴の種類や具体的な手法等)は、公知技術を利用したものであればよく、ここではその説明を省略する。
【0025】
部分めっき層12の形成後は、マスキング処理の解除(マスキングテープの剥離等)を行って、マスキングされていた箇所(すなわち、部分めっき層12の非形成箇所)を露出させる。
【0026】
(粗化工程:S20)
めっき工程(S10)の後に行う粗化工程(S20)では、所定の前処理(脱脂、酸洗等)を経た後に、部分めっき層12の非形成箇所に粗化面13を形成するための粗化処理を行う。粗化処理は、エッチング液(エッチャント)である所定の粗化処理液を用いて化学的に行う。所定の粗化処理液は、基材11の表面を粗化し得るものであれば特に限定されるものではないが、例えば、硫酸等の酸性水溶液と過酸化水素等の酸化溶液との混合液に添加材が含まれたものが一例として挙げられる。
【0027】
ところで、粗化工程(S20)では、粗化処理にあたり、部分めっき層12の形成箇所に対するマスキング処理を必要としない。粗化工程(S20)で用いる粗化処理液は、部分めっき層12の表層部分を覆うニッケルリンめっき層12aとは反応せず、その部分めっき層12に対する保護を要さないからである。
【0028】
しかも、ニッケルリンめっき層12aを構成するNi−Pは、非金属元素を含有するため、基材11を構成する銅と電解質中に存在しても、電解質中でのイオン化傾向に差が生じてしまうことがない。そのため、部分めっき層12の表層部分がニッケルリンめっき層12aによって覆われていれば、部分めっき層12の形成箇所に対するマスキング処理を行わなくても、部分めっき層12との境界近傍における銅のイオン化が抑制されてしまうことがなく、基材11の表面における部分めっき層12との隣接領域を含む被処理面に対しても粗化処理が行われることになる。
【0029】
つまり、粗化工程(S20)においては、部分めっき層12との隣接領域にも、粗化面13が形成される。
【0030】
粗化面13の形成後は、後処理として、粗化処理後の表面酸化物の除去や防錆処理等を行う。
【0031】
以上に説明した手順を経ることで、本実施形態に係るリードフレーム10が製造される。
【0032】
<3.本実施形態における効果>
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
【0033】
(a)本実施形態によれば、基材11の表面に部分めっき層12および粗化面13を備えるリードフレーム10において、部分めっき層12の表層部分がニッケルリンめっき層12aによって覆われており、その部分めっき層12との隣接領域に粗化面13が配されている。つまり、粗化面13の形成にあたり、マスキング処理を要することなく粗化処理を行うことができ、しかもその場合であっても、部分めっき層12との境界近傍における銅のイオン化が抑制されてしまうことがない。したがって、部分めっき層12との境界近傍における非粗化部分の存在を排除し得るようになり、リードフレーム10上における領域(面積)の有効活用を図ることができる。しかも、非粗化部分の排除により粗化面13を増大させ得るようになるので、樹脂密着性の向上を通じて半導体パッケージの信頼性を向上させる上で好ましいものとなる。
以上のように、本実施形態によれば、基材11の表面に部分めっき層12および粗化面13を備えるリードフレーム10において、そのリードフレーム10上の領域有効活用を図ることができ、しかも樹脂密着性向上による信頼性向上が期待できる。
【0034】
(b)本実施形態では、部分めっき層12が、下地めっき層としてのニッケルめっき層12bと、そのニッケルめっき層12bを覆うように形成されたニッケルリンめっき層12aと、を有して構成されている。このような構成とすれば、一般にNi−Pめっき処理の析出スピードよりもNiめっき処理の析出スピードのほうが速いことから、部分めっき層12の全部をニッケルリンめっき層12aによって形成する場合に比べて、部分めっき層12を形成する際の効率向上が図れるようになる。
【0035】
(c)本実施形態では、ニッケルリンめっき層12aが0.4μm以上の厚さで形成されている。このような構成とすれば、部分めっき層12の表層部分をニッケルリンめっき層12aが覆うことによる効果(すなわち、リードフレーム10上の領域有効活用を図り、しかも樹脂密着性向上による信頼性向上が期待できるという効果)を、確実に得られるようになる。
特に、本実施形態で説明したように、ニッケルリンめっき層12aの厚さを0.5μm程度とした場合であれば、上述の効果を確実に得られるようにしつつ、ニッケルリンめっき層12aを極力薄くすることで、部分めっき層12を形成する際の効率向上が図れるようになる。
【0036】
<4.変形例等>
以上に本発明の一実施形態を説明したが、上記の開示内容は、本発明の例示的な実施形態の一つを示すものである。すなわち、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0037】
例えば、上述した実施形態では、具体的な数値(ニッケルリンめっき層12aのP含有率や粗化面13の表面粗さ等)を例に挙げて説明したが、本発明がこれらの数値に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更しても構わない。
【実施例1】
【0038】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。ただし、本発明が、以下の実施例に限定されないことは勿論である。
図2は、本発明の実施例と参考例における粗化面の一具体例を示す説明図である。
【0039】
(参考例)
先ず、後述する実施例1,2と比較するための参考例について説明する。
参考例では、銅合金を形成材料とする基材上に、ニッケルめっき層を1.5μm厚で形成し、部分めっき層を構成した。つまり、参考例では、部分めっき層が多層構造ではなく、ニッケルめっき層のみからなる単層構造となっている。そして、部分めっき層に対するマスキング処理をせずに、粗化面を形成する粗化処理を行った。粗化処理は、粗化処理液としてアトテックジャパン株式会社製の「モールドプレップ」を用い、その粗化処理液に部分めっき層が形成された基材を60秒、40℃で浸漬させることによって行った。
【0040】
このようにして得られたリードフレームにおける部分めっき層と粗化面との境界近傍を平面視した様子を
図2(a)に示す。図例によれば、部分めっき層と粗化面との境界近傍において、粗化未処理領域が広く存在していることがわかる(図中のA部における変色部分参照)。これは、銅とニッケルの固有電位の関係により電解質中でのイオン化傾向に差が生じることから、ニッケルめっき層からなる部分めっき層との境界近傍における銅のイオン化が抑制されてしまい、その境界近傍が粗化されないことによるものと推察される。
【0041】
(実施例1)
次に、実施例1について説明する。
実施例1では、部分めっき層12の構成が参考例の場合とは異なる。すなわち、実施例1では、部分めっき層12が参考例の場合のような単層構造ではなく、ニッケルリンめっき層12aとニッケルめっき層12bとの多層構造となっている。具体的には、実施例1では、銅合金を形成材料とする基材11上に、下地めっき層としてのニッケルめっき層12bを1.3μm厚で形成し、そのニッケルめっき層12bを覆うニッケルリンめっき層12aを0.2μm厚で形成して、部分めっき層12を構成した。その他(マスキング処理および粗化処理等)については、参考例の場合と同様である。
【0042】
このようにして得られたリードフレーム10における部分めっき層12と粗化面13との境界近傍を平面視した様子を
図2(b)に示す。図例によれば、上述した参考例の場合とは異なり、広い粗化未処理領域が存在していないことがわかる。これは、部分めっき層12が多層構造でありニッケルリンめっき層12aによって覆われているためであると推察される。ただし、実施例1においては、部分めっき層12と粗化面13との境界近傍に、僅かながらの粗化未処理領域が残存している(図中のB部参照)。
【0043】
(実施例2)
続いて、実施例2について説明する。
実施例2では、実施例1の場合と同様に部分めっき層12が多層構造であるが、その部分めっき層12を構成するニッケルリンめっき層12aとニッケルめっき層12bの厚さが実施例1の場合とは異なる。すなわち、実施例2では、下地めっき層としてのニッケルめっき層12bを1.0μm厚で形成し、そのニッケルめっき層12bを覆うニッケルリンめっき層12aを0.5μm厚で形成して、部分めっき層12を構成した。その他(マスキング処理および粗化処理等)については、実施例1の場合と同様である。
【0044】
このようにして得られたリードフレーム10における部分めっき層12と粗化面13との境界近傍を平面視した様子を
図2(c)に示す。図例によれば、部分めっき層12との隣接領域にも粗化面13が配されていることがわかる。
【0045】
(評価)
以上のような実施例1,2および参考例のそれぞれで得られた結果を比較すると、部分めっき層12bの表層がニッケルリンめっき層12aによって覆われた多層構造であれば、部分めっき層12と粗化面13との境界近傍に広い粗化未処理領域が存在してしまうことがないので、リードフレーム10上の領域(面積)の有効活用を図る上で有用であることがわかる。
【0046】
しかも、実施例2の場合のように、ニッケルリンめっき層12aが0.5μm厚で形成されていれば、表層部分をニッケルリンめっき層12aが覆うことによる効果が得られる厚さ(具体的には0.4μm厚)を超えているので、境界近傍に僅かながらの粗化未処理領域が残存してしまうこともなく、確実にリードフレーム10上における領域(面積)の有効活用を図ることができる。