特許第6774786号(P6774786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774786
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】ロータリダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/14 20060101AFI20201019BHJP
【FI】
   F16F9/14 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-104540(P2016-104540)
(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公開番号】特開2017-211019(P2017-211019A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】金子 亮平
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−215209(JP,A)
【文献】 特開2014−070640(JP,A)
【文献】 米国特許第06318522(US,B1)
【文献】 特開2009−262883(JP,A)
【文献】 米国特許第1628811(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F9/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性流体の移動を制限することにより、加えられた回転力に対して制動トルクを発生させるロータリダンパであって、
前記粘性流体が充填された円筒室、および前記円筒室の中心線に沿って当該円筒室の内周面から径方向内方に向けて形成された凸状の仕切り部を有するケースと、
前記円筒室に対して相対的に回転するように当該円筒室に収容され、外周面が前記仕切り部の先端面と近接するロータ本体、および前記円筒室の中心線に沿って前記ロータ本体の外周面から径方向外方に向けて形成され、先端面が前記円筒室の前記内周面と近接するベーンを有するロータと、
前記円筒室の開口部に取り付けられ、前記ロータを前記粘性流体とともに前記円筒室内に封じ込める蓋と、
前記仕切り部あるいは前記ベーンに設けられ、前記仕切り部あるいは前記ベーンによって仕切られる前記円筒室内の領域間を連結する流路と、
前記流路内を移動可能に設けられ、前記ロータが前記円筒室に対して相対的に正転方向へ回転した場合に前記流路を塞ぎ、前記ロータが前記円筒室に対して相対的に反転方向へ回転した場合に前記流路を開放する逆止弁と、
前記逆止弁が前記流路を塞ぐ方向へ所定の位置まで移動した場合に、当該逆止弁に対して反力を発生させる反力付与手段と、を備え、
前記流路は、
前記流路を塞ぐ方向において、前方側の流路部の深さが後方側の流路部の深さよりも浅い段差構造を有し、
前記反力付与手段は、
前記逆止弁に取り付けられ、当該逆止弁が前記流路を塞ぐ方向へ移動した場合に、当該逆止弁が前記流路を塞ぐよりも先に前記流路の前記段差構造による段差面と当接する弾性体を有する
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項2】
粘性流体の移動を制限することにより、加えられた回転力に対して制動トルクを発生させるロータリダンパであって、
前記粘性流体が充填された円筒室、および前記円筒室の中心線に沿って当該円筒室の内周面から径方向内方に向けて形成された凸状の仕切り部を有するケースと、
前記円筒室に対して相対的に回転するように当該円筒室に収容され、外周面が前記仕切り部の先端面と近接するロータ本体、および前記円筒室の中心線に沿って前記ロータ本体の外周面から径方向外方に向けて形成され、先端面が前記円筒室の前記内周面と近接するベーンを有するロータと、
前記円筒室の開口部に取り付けられ、前記ロータを前記粘性流体とともに前記円筒室内に封じ込める蓋と、
前記仕切り部あるいは前記ベーンに設けられ、前記仕切り部あるいは前記ベーンによって仕切られる前記円筒室内の領域間を連結する流路と、
前記流路内を移動可能に設けられ、前記ロータが前記円筒室に対して相対的に正転方向へ回転した場合に前記流路を塞ぎ、前記ロータが前記円筒室に対して相対的に反転方向へ回転した場合に前記流路を開放する逆止弁と、
前記逆止弁が前記流路を塞ぐ方向へ所定の位置まで移動した場合に、当該逆止弁に対して反力を発生させる反力付与手段と、を備え、
前記流路は、
前記流路を塞ぐ方向において、前方側の流路部の深さが後方側の流路部の深さよりも浅い段差構造を有し、
前記反力付与手段は、
前記流路の前記段差構造による段差面に取り付けられ、前記逆止弁が前記流路を塞ぐ方向へ移動した場合に、当該逆止弁が前記流路を塞ぐよりも先に当該逆止弁と当接する弾性体を有する
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項3】
請求項またはに記載のロータリダンパであって、
前記反力付与手段は、
前記弾性体を装着する装着手段をさらに有し、
前記弾性体は、
前記装着手段から取り外し可能である
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか一項に記載のロータリダンパであって、
前記ベーンに装着され、前記ベーンの先端面と前記円筒室の内周面との間、前記ベーンの下面と前記円筒室の底部との間、および前記ベーンの上面と前記蓋の下面との間の隙間を塞ぐシール材として機能する摺動部材をさらに有する
ことを特徴とするロータリダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリダンパに関し、特に、制動トルク特性を調整可能なロータリダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
正転方向の回転に対して強い制動トルクを発生させる一方、反転方向の回転に対しては弱い制動トルクを発生させるロータリダンパが知られている。例えば、特許文献1には、構造が簡単で安価に製造可能なロータリダンパが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のロータリダンパは、円筒室を備えたケースと、円筒室内に回転自在に収容されたロータと、円筒室内に充填された粘性流体と、ケースの開口側端面に取り付けられて円筒室内にロータを粘性流体とともに封じ込める蓋と、を備えている。
【0004】
ロータは、円筒形状のロータ本体と、円筒室の内周面と僅かな隙間を形成するように、ロータ本体の外周面から径方向外方に突出して形成されたベーンと、を有する。ベーンには、ロータの回転方向と垂直な一方の側面(第一の側面と呼ぶ)から他方の側面(第二の側面と呼ぶ)へと繋がる流路が形成されている。また、ベーンの先端面(円筒室の内周面と対向する面)には、円筒室の内周面との僅かな隙間を塞ぐシール材が取り付けられている。このシール材は、ベーンに形成された流路の開閉を行う弾性体の逆止弁を有する。また、円筒室の内周面には、ロータ本体の外周面と僅かな隙間を形成するように、径方向内方に突出した仕切り部が形成されている。
【0005】
以上のような構成において、特許文献1に記載のロータリダンパは、ベーンの第一の側面から第二の側面へ向かう方向(正転方向)に回転させる力がロータに加わると、円筒室内の粘性流体によって逆止弁がベーンの第二の側面に押し付けられて、流路が逆止弁で塞がれる。これにより、粘性流体の移動が、円筒室の仕切り部とロータ本体の外周面との隙間およびケースの閉口側端面(底面)とベーンの下面(ケースの閉口側端面と対向する面)との隙間を介してのみに制限されて、ベーンの第二の側面側の粘性流体に対する圧力が高まり、強い制動トルクが発生する。一方、ベーンの第二の側面から第一の側面へ向かう方向(反転方向)に回転させる力がロータに加わると、ベーンの第一の側面側の粘性流体が、流路に流入して逆止弁を押し上げて流路を開放する。したがって、粘性流体の移動がベーンに形成された流路においても行われるため、ベーンの第一の側面側の粘性流体に対する圧力は高くならず、このため、弱い制動トルクが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−301272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のロータリダンパは、正転方向の回転力がロータに加わると、直ちに逆止弁が流路を塞いで、強い制動トルクを発生させる。しかしながら、ロータリダンパの用途によっては、正転方向の回転力がロータに加わった場合に、制動トルクを徐々に増加させて最終的に強い制動トルクを発生させるような制動トルク特性(正転方向における初動特性)が要求される。特許文献1に記載のロータリダンパは、制動トルク特性の調整について何ら考慮されていない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、制動トルク特性を調整可能なロータリダンパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、仕切り部あるいはベーンに、この仕切り部あるいはベーンによって仕切られる円筒室内の領域間を連結する流路を形成した。そして、この流路内を移動して、正転方向の回転力がロータに加わると流路を塞ぎ、反転方向の回転力がロータに加わると流路を開放する逆止弁と、逆止弁が流路を塞ぐ方向へ所定の位置まで移動した場合に、この逆止弁に対して反力を発生させる反力付与手段と、を設けた。
【0010】
例えば、本発明の一態様は、粘性流体の移動を制限することにより、加えられた回転力に対して制動トルクを発生させるロータリダンパであって、
前記粘性流体が充填された円筒室、および前記円筒室の中心線に沿って当該円筒室の内周面から径方向内方に向けて形成された凸状の仕切り部を有するケースと、
前記円筒室に対して相対的に回転するように当該円筒室に収容され、外周面が前記仕切り部の先端面と近接するロータ本体、および前記円筒室の中心線に沿って前記ロータ本体の外周面から径方向外方に向けて形成され、先端面が前記円筒室の前記内周面と近接するベーンを有するロータと、
前記円筒室の開口部に取り付けられ、前記ロータを前記粘性流体とともに前記円筒室内に封じ込める蓋と、
前記仕切りあるいは前記ベーンに設けられ、前記仕切りあるいは前記ベーンによって仕切られる前記円筒室内の領域間を連結する流路と、
前記流路内を移動可能に設けられ、前記ロータが前記円筒室に対して相対的に正転方向へ回転した場合に前記流路を塞ぎ、前記ロータが前記円筒室に対して相対的に反転方向へ回転した場合に前記流路を開放する逆止弁と、
前記逆止弁が前記流路を塞ぐ方向へ所定の位置まで移動した場合に、当該逆止弁に対して反力を発生させる反力付与手段と、を備え
前記流路は、
前記流路を塞ぐ方向において、前方側の流路部の深さが後方側の流路部の深さよりも浅い段差構造を有し、
前記反力付与手段は、
前記逆止弁に取り付けられ、当該逆止弁が前記流路を塞ぐ方向へ移動した場合に、当該逆止弁が前記流路を塞ぐよりも先に前記流路の前記段差構造による段差面と当接する弾性体を有する
また、本発明の他の態様は、粘性流体の移動を制限することにより、加えられた回転力に対して制動トルクを発生させるロータリダンパであって、
前記粘性流体が充填された円筒室、および前記円筒室の中心線に沿って当該円筒室の内周面から径方向内方に向けて形成された凸状の仕切り部を有するケースと、
前記円筒室に対して相対的に回転するように当該円筒室に収容され、外周面が前記仕切り部の先端面と近接するロータ本体、および前記円筒室の中心線に沿って前記ロータ本体の外周面から径方向外方に向けて形成され、先端面が前記円筒室の前記内周面と近接するベーンを有するロータと、
前記円筒室の開口部に取り付けられ、前記ロータを前記粘性流体とともに前記円筒室内に封じ込める蓋と、
前記仕切り部あるいは前記ベーンに設けられ、前記仕切り部あるいは前記ベーンによって仕切られる前記円筒室内の領域間を連結する流路と、
前記流路内を移動可能に設けられ、前記ロータが前記円筒室に対して相対的に正転方向へ回転した場合に前記流路を塞ぎ、前記ロータが前記円筒室に対して相対的に反転方向へ回転した場合に前記流路を開放する逆止弁と、
前記逆止弁が前記流路を塞ぐ方向へ所定の位置まで移動した場合に、当該逆止弁に対して反力を発生させる反力付与手段と、を備え、
前記流路は、
前記流路を塞ぐ方向において、前方側の流路部の深さが後方側の流路部の深さよりも浅い段差構造を有し、
前記反力付与手段は、
前記流路の前記段差構造による段差面に取り付けられ、前記逆止弁が前記流路を塞ぐ方向へ移動した場合に、当該逆止弁が前記流路を塞ぐよりも先に当該逆止弁と当接する弾性体を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、逆止弁が流路を塞ぐ方向へ所定の位置まで移動した場合に、反力付与手段が逆止弁に反力を付与するので、そこから逆止弁をさらに流路を塞ぐ方向へ移動させるためには、より大きな正転方向の回転力をロータに加える必要がある。したがって、本発明によれば、ロータに加えられた正転方向の回転力に対して、反力付与手段により逆止弁に反力を付与して制動トルクを徐々に増加させ、最終的には逆止弁により流路を塞いで強い制動トルクを発生させるような制動トルク特性を実現でき、また、反力付与手段の反力を調整することにより、制動トルク特性を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(A)および図1(B)は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1の概略構成を示す外観図および部分断面図である。
図2図2は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1の部品展開図である。
図3図3(A)は、ケース2の正面図であり、図3(B)は、図3(A)に示すケース2のA−A断面図であり、図3(C)は、ケース2の背面図であり、図3(D)は、図3(A)に示すケース2のB−B断面図であり、図3(E)は、図3(A)に示すケース2のC部拡大図である。
図4図4(A)〜図4(E)は、逆止弁3の正面図、側面図、背面図、上面図、および底面図である。
図5図5(A)および図5(B)は、ロータ4の正面図および側面図であり、図5(C)は、図5(A)に示すロータ4のD−D断面図である。
図6図6(A)〜図6(C)は、蓋5の正面図、側面図、および背面図であり、図6(D)は、図6(A)に示す蓋5のE−E断面図である。
図7図7(A)および図7(B)は、ロータリダンパ1の動作原理を説明するための図である。
図8図8(A)〜図8(C)は、逆止弁3の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態を説明する。
【0014】
図1(A)および図1(B)は、本実施の形態に係るロータリダンパ1の概略構成を示す外観図および部分断面図であり、図2は、本実施の形態に係るロータリダンパ1の部品展開図である。
【0015】
図示するように、本実施の形態に係るロータリダンパ1は、ケース2と、一対の逆止弁3と、ケース2に対して相対的に回転可能にケース2内に収容されたロータ4と、ケース2内に充填されたオイル、シリコン等の粘性流体6と、ロータ4を粘性流体6とともにケース2内に封じ込める蓋5と、を備えている。
【0016】
図3(A)は、ケース2の正面図であり、図3(B)は、図3(A)に示すケース2のA−A断面図であり、図3(C)は、ケース2の背面図であり、図3(D)は、図3(A)に示すケース2のB−B断面図であり、図3(E)は、図3(A)に示すケース2のC部拡大図である。
【0017】
図示するように、ケース2内には、一端が開口した円筒室(底付き円筒状の空間)200が形成されており、この円筒室200の底部201には、ロータ4用の開口部202が形成されている。ロータ4は、後述するロータ本体400の下端部403(図5参照)がこの開口部202に挿入されることにより、ロータ4の回転軸420が円筒室200の中心線220と一致するように、円筒室200内に収容される(図1および図2参照)。円筒室200の内周面203の開口側206には、蓋5の後述する雌ネジ部502(図6参照)と螺合する雌ネジ部207が形成されている。
【0018】
また、円筒室200の内周面203には、径方向内方に突出し、先端面205がロータ4の後述するロータ本体400の外周面404(図5参照)と近接して、円筒室200を仕切る一対の仕切り部204が、円筒室200の中心線220に沿って、この中心線220に対して軸対称に形成されている。
【0019】
仕切り部204には、この仕切り部204によって仕切られた円筒室200内の領域216a、216b間を連結する流路208が形成されている。逆止弁3は、この流路208内を移動可能に配置される。
【0020】
流路208は、正転方向(図7のR1方向)後方側の端面209から正転方向前方側の端面210に向けて直線状に形成されている。流路208は、正転方向後方(端面209)側の流路部211において一定の幅W1を有するが、正転方向前方(端面210)側の流路部212において、正転方向前方へ向けて、一定の幅W1から徐々に狭くなる幅W2を有する。また、流路208は、正転方向前方側の流路部212の深さD2が正転方向後方側の流路部212の深さD1より浅い2段構造となっている。
【0021】
正転方向後方側の流路部211には、流路208内に配置された逆止弁3が開門方向(図8のM2方向)に移動した場合に、逆止弁3が端面209側から流路208の外へ脱落するのを防止するためのストッパ213が設けられている。また、正転方向後方側の流路部211と正転方向前方側の流路部212との段差面214には、円筒室200の中心線220に沿って溝215が形成されている。
【0022】
図4(A)〜図4(E)は、逆止弁3の正面図、側面図、背面図、上面図、および底面図である。
【0023】
図示するように、逆止弁3は、弁本体300と、弁部301と、反力付与部302と、を有する。弁本体300は、流路208の正転方向後方側の流路部211の深さD1と略同じ高さD3と、流路208の正転方向後方側の流路部211の幅W1より狭い幅W3と、を有する四角柱状部材である。
【0024】
弁部301は、弁本体300の閉門方向(図8のM1方向)前方側の側面303の上部に形成され、流路208の正転方向前方側の流路部212の深さD2と略同じ高さD4を有し、かつその幅W4が閉門方向前方に向けて徐々に狭くなる台柱形状部材である。ただし、弁部301の上面(閉門方向前方側の端面)304における幅W4は、流路208の正転方向前方側の流路部212の端面210側開口における幅W2より広い。
【0025】
反力付与部302は、弁本体300の閉門方向前方側の側面303の下部に、閉門方向前方に向けて形成された装着柱305と、装着柱305に装着されたゴムリング、コイルスプリング等の環状弾性体306と、を有する。環状弾性体306は、逆止弁3が閉門方向に移動した場合に、弁部301が流路208の正転方向前方側の流路部212を閉門するよりも先に、流路28内の段差面214に当接する。そして、環状弾性体306が押圧されて弾性変形することにより、逆止弁3は閉門方向へさらに移動して、弁部301が流路208の正転方向前方側の流路部212を閉門する。装着柱305が流路208の閉門を阻害することがないように、装着柱305の長さL1は、流路208内の段差面214に形成された溝215の深さD5よりも短い。
【0026】
図5(A)および図5(B)は、ロータ4の正面図および側面図であり、図5(C)は、図5(A)に示すロータ4のD−D断面図である。
【0027】
図示するように、ロータ4は、円筒状のロータ本体400と、ロータ400の回転軸420に対して軸対称に形成された一対のベーン(回転翼)401と、を備えている。
【0028】
ベーン401は、ロータ4の回転軸420に沿って形成され、ロータ本体400の外周面404から径方向外方へ突出し、先端面405がケース2の円筒室200の内周面203と近接して、円筒室200を仕切る。ベーン401には、ベーン401の先端面405と円筒室200の内周面203との間、ベーン401の下面406と円筒室200の底部201との間、およびベーン401の上面407と蓋5の下面504(図6参照)との間を塞ぐシール材として機能する摺動部材408が必要に応じて装着される(図1図2参照)。摺動部材408の素材には、ポリアミド等の摺動性に優れた樹脂が用いられる。
【0029】
ロータ本体400には、外部からの回転力をロータ4に伝達する六角シャフト(不図示)を挿入するための貫通孔409が、回転軸420を中心にして形成されている。そして、ロータ本体400の上端部402は、蓋5の開口部500(図6参照)に回転可能に挿入され、ロータ本体400の下端部403は、ケース2の円筒室200の底部201に形成された開口部202に回転可能に挿入される(図2参照)。
【0030】
なお、円筒室200の開口部202から粘性流体6が外部に漏れないように、Oリング等のシール材(不図示)を、ロータ本体400の下端部403と円筒室200の開口部202との間に介在させてもよい。
【0031】
図6(A)〜図6(C)は、蓋5の正面図、側面図、および背面図であり、図6(D)は、図6(A)に示す蓋5のE−E断面図である。
【0032】
図示するように、蓋5には、ケース2の円筒室200の底部201に形成された開口部202と対向する位置に、蓋5の上面503および下面504を貫く開口部500が形成されている。この開口部500には、ロータ4のロータ本体400の上端部402が挿入される。また、蓋5の外周面501には、円筒室200の内周面203の開口側206に形成された雌ネジ部207と螺合する雄ネジ部502が形成されている。なお、蓋5の開口部500から粘性流体6が外部に漏れないように、Oリング等のシール材(不図示)を、ロータ4のロータ本体400の上端部402と蓋5の開口部500との間に介在させてもよい。同様に、蓋5の雄ネジ部502とケース2の円筒室200の雌ネジ部207との螺合部分から粘性流体6が外部に漏れないように、Oリング等のシール材(不図示)を、蓋5の外周面501と円筒室200の内周面203との間に介在させてもよい。
【0033】
つぎに、ロータリダンパ1の動作原理を説明する。
【0034】
図7(A)および図7(B)は、ロータリダンパ1の動作原理を説明するための図であり、図8(A)〜図8(C)は、逆止弁3の動作を説明するための図である。
【0035】
図7(A)に示すように、ケース2に対してロータ4が正転方向R1に相対的に回転した場合、ロータ4のベーン401とケース2の仕切り部204の正転方向後方側の端面209との間の領域217が圧縮され、この領域217内の粘性流体6が流路208に流れ込む。この流路208内に流れ込んだ粘性流体6の力により、逆止弁3が流路208内を閉門方向M1に移動する。そして、図8(A)に示すように、逆止弁3の弁部301が流路208の正転方向前方側の流路部212を閉門するよりも先に、逆止弁3の反力付与部302の環状弾性体306が段差面214に当接し、逆止弁3に、閉門方向M1の反対方向へ押し戻す反力が働く。これにより、ロータ4の正転方向R1の回転によって領域217内の粘性流体6の圧力が徐々に高まり、ロータ4に加えられた正転方向R1の回転力に対する制動トルクが徐々に増加する。その後、図8(B)に示すように、環状弾性体306が押圧されて弾性変形することにより、逆止弁3が閉門方向M1へさらに移動し、流路208の正転方向前方側の流路部212を閉門する。これにより、流路208内の粘性流体6の移動が阻害され、ロータ4の正転方向R1の回転によって領域217内の粘性流体6の圧力が急激に高まり、ロータ4に加えられた正転方向R1の回転力に対してより強い制動トルクを発生させる。
【0036】
一方、図7(B)に示すように、ケース2に対してロータ4が正転方向R1の逆回転方向である反転方向R2に相対的に回転した場合、ロータ4のベーン401とケース2の仕切り部204の正転方向前方側の端面210との間の領域218が圧縮され、この領域218内の粘性流体6が流路208に流れ込む。この流路208内に流れ込んだ粘性流体6の力により、逆止弁3が流路208を開門して、流路208内を開門方向M2に移動する。そして、図8(C)に示すように、逆止弁3の弁本体300が流路208の正転方向後方側の流路部211に設けられたストッパ213と当接する。上述したように、逆止弁3の弁本体300の幅W3は、流路208の正転方向後方側の流路部211の幅W1より狭い。このため、領域218から流路208内に流れ込んだ粘性流体6は、逆止弁3により移動を阻害されることなく、ロータ4のベーン401とケース2の仕切り部204の正転方向後方側の端面209との間の領域217へ排出される。したがって、領域218内の粘性流体6の圧力は高くならず、ロータ4に加えられた反転方向R2の回転力に対して弱い制動トルクを発生させる。
【0037】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0038】
本実施の形態では、逆止弁3の反力付与部302の環状弾性体306が流路208の段差面214に当接する位置まで、逆止弁3が流路208を閉門方向M1へ移動した場合に、反力付与部302の環状弾性体306が逆止弁3に反力を付与する。このため、そこから逆止弁3をさらに閉門方向N1へ移動させるためには、より大きな正転方向R1の回転力をロータ4に加える必要があり、ロータ4に加えられた正転方向R1の回転力に対する制動トルクが徐々に増加する。そして、ロータ4に加えられた正転方向R1の回転力により環状弾性体306が弾性変形し、逆止弁3が閉門方向M1へさらに移動すると、逆止弁3により流路208が閉門して粘性流体6の移動が阻害され、ロータ4に加えられた正転方向R1の回転力に対して強い制動トルクが発生する。
【0039】
したがって、本実施の形態によれば、ロータ4に加えられた正転方向R1の回転力に対して、制動トルクを徐々に増加させて最終的に強い制動トルクを発生させるような制動トルク特性を実現できる。また、逆止弁3の反力を調整することにより、制動トルク特性を調整することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、反力付与部302を備えた逆止弁3を流路208内に配置している。このため、ケース2の円筒室200内に、反力付与部302のための特別なスペースを用意する必要がない。したがって、ロータリダンパ1の小型化が可能となる。
【0041】
また、本実施の形態では、反力付与部302を、弁本体300の閉門方向前方側の側面303の下部に、閉門方向前方に向けて形成された装着柱305と、装着柱305に装着された環状弾性体306と、で構成している。このため、装着柱305に装着する環状弾性体306の厚さ、素材を変更することにより、反力の付与タイミング、大きさを変更することができる。したがって、逆止弁3の反力を容易に調整することができ、ひいては制動トルク特性を容易に調整することができる。
【0042】
また、本実施の形態において、ロータ4のベーン401に、ベーン401の先端面405と円筒室200の内周面203との間、ベーン401の下面406と円筒室200の底部201との間、およびベーン401の上面407と蓋5の下面504との間を塞ぐシール材として機能する摺動部材408を装着することにより、これらの隙間を塞ぎつつ摺動性を向上させることができる。このため、ロータ4に加えられた正転方向R1の回転力に対して、より高い制動トルクを実現しつつ、外部からの回転力をロータ4に伝達する六角シャフトを滑らかに回転させることができる。
【0043】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0044】
例えば、上記の実施の形態では、ケース2の円筒室200内の仕切り部204に流路208を形成したが、本発明はこれに限定されない。ロータ4のベーン401に、ベーン401によって仕切られる円筒室200内の領域を連結する流路を形成してもよい。
【0045】
また、上記の実施の形態では、反力付与部302を逆止弁3に設けているが、本発明はこれに限定されず、反力付与部302を逆止弁3とは別個に設けてもよい。反力付与部302は、逆止弁3が閉門方向M1へ所定の位置まで移動した場合に、逆止弁3に反力を付与することができるものであればよい。例えば、流路208内の段差面214にゴム、スプリング等の弾性体を取り付け、逆止弁3の弁部301が流路208の正転方向前方側の流路部212を塞ぐよりも先に、この弾性体を弁本体300の閉門方向前方側の側面303の下部に当接させて、逆止弁3に反力を付与するようにしてもよい。
【0046】
また、上記の実施の形態では、ケース2の円筒室200に一対の仕切り部204を設けるとともに、ロータ4に一対のベーン401を設けた場合を例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。仕切り部204およびベーン401は、互いに同数であれば、1または3以上形成されていてもよい。
【0047】
また、上記の実施の形態では、ロータ4がケース2の円筒室200に対して相対的に正転方向R1に回転した場合に強い制動トルクを発生させ、ロータ4がケース2の円筒室200に対して相対的に反転方向R2に回転した場合に弱い制動トルクを発生させる、いわゆる一方向性のロータリダンパを例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明は、正転方向R1および反転方向R2の両方向において強い制動トルクを発生させる、いわゆる双方向性のロータリダンパにも適用可能である。この場合、流路208に加えて、反転方向後方側の流路部において一定の幅を有するが、反転方向前方側の流路部において、反転方向前方へ向けて、この一定の幅から徐々に狭くなる幅を有する、流路208と同様の構造を有する流路を、ケース2の仕切り部204あるいはロータ4のベーン401に設ける。そして、この流路内に、反転方向を閉門方向とする、逆止弁3と同様の構造を有する逆止弁を配置する。
【0048】
上記の実施の形態に係るロータリダンパ1は、例えば、自動車、鉄道車両、航空機、船舶等で用いられるリクライニング機能付きの座席シートに広く適用できる。また、双方向に回転する回転体の例えば一方向側への回転運動を制動することが必要とされる装置であれば、リクライニング機能付きの座席シート以外の装置にも広く適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1:ロータリダンパ、 2:ケース、 3:逆止弁、 4:ロータ、 5:蓋、 6:粘性流体、 200:円筒室、 201:円筒室200の底部、 202:円筒室200の開口部、 203:円筒室の内周面、 204:円筒室200の仕切り部、 205:仕切り部204の先端面、 206:円筒室200の開口側、 207:円筒室200の雌ネジ部、 208:流路、 209:流路208の正転方向後方側の端面、 210:流路208の正転方向前方側の端面、 211:流路208の正転方向後方側の流路部、 212:流路208の正転方向後方側の流路部、 213:ストッパ、 214:流路208の段差面、 215:段差面214の溝、 220:円筒室200の中心線、 300:弁本体、 301:弁部、 302:反力付与部、 303:弁本体300の閉門方向前方側の側面、 304:弁部301の上面、 305:反力付与部302の装着柱、 306:反力付与部302の環状弾性体、 400:ロータ本体、 401:ベーン、 402:ロータ本体400の上端部、 403:ロータ本体400の下端部、 404:ロータ本体400の外周面、 405:ベーン401の先端面、 406:ベーン401の下面、 407:ベーン401の上面、 408:シール材、 409:ロータ本体400の貫通孔、 420:ロータ4の回転軸、 500:蓋5の開口部、 501:蓋5の外周面、 502:蓋5の雌ネジ部、 503:蓋5の上面、 504:蓋5の下面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8