特許第6774795号(P6774795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774795
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】センサシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/98 20160101AFI20201019BHJP
   A61B 5/04 20060101ALI20201019BHJP
   A61G 12/00 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   A61B90/98
   A61B5/04 R
   A61G12/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-127894(P2016-127894)
(22)【出願日】2016年6月28日
(65)【公開番号】特開2018-315(P2018-315A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今野 徳人
(72)【発明者】
【氏名】池谷 浩彦
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−202111(JP,A)
【文献】 特開2001−187611(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/109360(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/180937(WO,A1)
【文献】 特表2017−522777(JP,A)
【文献】 特表2017−508225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/98
A61B 5/04
A61G 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を識別することが可能な患者識別情報が記憶された記憶部を有するIDタグと、
患者の生体情報を計測することが可能なセンサと、
を備え、
前記IDタグは、前記IDタグと前記センサが患者に取り付けられた状態において、当該患者の体表面を介する人体通信により前記患者識別情報を前記センサに送信可能であり、
前記センサは、前記患者識別情報を前記生体情報に対して付与した後に、前記患者識別情報付きの前記生体情報を外部機器に向けて送信可能であり、
さらに、
前記センサは、前記患者識別情報を取得する前に前記生体情報の計測を開始した場合、特定の患者識別情報が付与されていないことを示す未付与識別子を前記生体情報に付与して、前記未付与識別子付きの前記生体情報を前記外部機器に向けて送信する、
センサシステム。
【請求項2】
前記IDタグは、患者の身体の一部に装着することが可能である、
請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記IDタグは、患者の手首に装着可能なリストバンドである
請求項2に記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記センサは、前記生体情報の計測を開始する前に、前記IDタグから前記患者識別情報を取得する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項5】
前記センサは、前記患者識別情報を取得する前に前記生体情報の計測が開始されても、前記外部機器に向けた前記生体情報の送信を開始しない、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサを用いて情報を取得するセンサシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
センサを患者に取り付けた状態で、センサと表示装置とをケーブル(有線)で接続する構成では、そのケーブルにより患者の動きを拘束してしまう場合がある。そこで、例えば、センサと表示装置とを無線で通信することを可能に構成したシステムがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8558933号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムでは、複数の患者が表示装置の近距離にいる場合、センサと表示装置との間における無線通信が混線してしまい、センサが測定した生体情報と患者との対応付けを正確に行えない事態が考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、センサが測定した生体情報と患者との対応付けを正確に行うことが可能なセンサシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のセンサシステムは、
患者を識別することが可能な患者識別情報が記憶された記憶部を有するIDタグと、
患者の生体情報を計測することが可能なセンサと、
を備え、
前記IDタグは、前記IDタグと前記センサが患者に取り付けられた状態において、当該患者の体表面を介する人体通信により前記患者識別情報を前記センサに送信可能であり、
前記センサは、前記患者識別情報を前記生体情報に対して付与した後に、前記患者識別情報付きの前記生体情報を外部機器に向けて送信する。
【0007】
この構成によれば、医療従事者により患者毎にユニークに付与される患者識別情報が、その患者の体表面を介してセンサに送信される。このため、センサは、そのセンサを装着している患者の患者識別情報を確実に生体情報に付与することができる。そして、外部機器では、生体情報と患者識別情報とが正確にリンクされた状態の生体情報(患者識別情報付き生体信号)を受信することが可能であるため、その生体情報を計測したセンサと患者とを正確に対応づけた状態で、表示画面等に表示することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のセンサシステムによれば、センサが測定した生体情報と患者との対応付けを正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るセンサシステムの概要図である。
図2】リストバンドとセンサとの機能を説明するためのブロック図である。
図3】ベッドサイドモニタに表示されるメッセージ画像の一例を示す図である。
図4】ベッドサイドモニタに表示される生体情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るセンサシステム1は、患者に装着されるリストバンド2(IDタグの一例。ID:identification)と、同じく患者に装着されるセンサ3と、センサ3と通信可能なベッドサイドモニタ4(外部機器の一例)と、ベッドサイドモニタ4と通信可能なナースコールシステム5とを備えている。なお、図1は、ある病院におけるワンフロアの一部の様子を示している。病室100にベッドサイドモニタ4が設置され、ナースステーション200にナースコールシステム5が設置されている。
【0011】
リストバンド2は、患者の身体の一部、例えば手首や足首等に装着することが可能である。リストバンド2には、その患者を識別することが可能な患者識別情報が目視で確認できるような態様で記載されている。患者識別情報は、病院から各患者に付与されるユニークな患者情報であり、例えば患者ID、患者氏名、診察券番号等が含まれうる。
【0012】
センサ3は、必要に応じて患者の身体の一部に装着され、その患者の生体情報を計測することが可能である。センサ3には、例えば心電図を計測するためのセンサ3a、体温やSpOを計測するためのセンサ3b、呼吸を計測するためのセンサ3c等が含まれる。センサ3は、近距離型の無線通信機能を有するワイヤレスセンサであり、ベッドサイドモニタ4との間で無線通信(例えばBluetooth(登録商標))可能に構成されている。
【0013】
ベッドサイドモニタ4は、各入院患者が使用するベッド毎に設置されている。ベッドサイドモニタ4は、表示画面41を有しており、無線通信でセンサ3から受信した患者の生体情報を表示画面41に表示可能である。また、ベッドサイドモニタ4は、ナースコールシステム5との間で通信可能に構成されている。ベッドサイドモニタ4とナースコールシステム5とは、例えば有線ケーブルや無線LAN(LAN:Local Area Network)を介して接続可能である。
【0014】
ナースコールシステム5には、入院している全患者の情報が記録された患者情報テーブルが保有されている。患者情報テーブルには、例えば患者ID、患者氏名、入院する部屋番号、ベッド番号、担当医師、担当看護師等の情報が患者毎にそれぞれ対応付けて記憶されている。ナースコールシステム5は、患者情報テーブルの情報を無線通信でベッドサイドモニタ4に送信可能である。また、ナースコールシステム5は、表示画面51を有しており、ベッドサイドモニタ4から受信した患者の生体情報を表示画面51に表示可能である。
【0015】
図2に示すように、リストバンド2は、記憶部21と、人体通信部22と、開始スイッチ23と、電源部24とで構成される電子デバイス部を備えている。
記憶部21には、患者識別情報が記憶されている。記憶される患者識別情報は、患者ID、患者氏名、診察券番号等のうちの一種類の情報であっても複数種類の情報であってもよい。記憶部21の患者識別情報は、書き換え可能である。電子デバイス部は、患者識別情報を書き換えることにより繰り返し使用可能である。
【0016】
人体通信部22は、センサ3との間で人体通信を行うための通信部であり、例えばICチップで構成されている。人体通信とは、ケーブルを使わずに人体(誘電体)を通信媒体として利用する通信方式のことをいい、国際標準規格「IEEE 802.15.6」に基づいている。人体通信には、例えば誘電体である人体がもともと持つ体表面の静電気の層に信号を与えて通信を行う電解方式が用いられている。なお、静電気の層は、人体の表面を数センチ覆っているため、リストバンド2は、人体通信部22が直接人体に接触されていない状態でも電解方式によりセンサ3と通信可能である。
【0017】
開始スイッチ23は、人体通信部22を起動させて人体通信を開始させるためのスイッチである。電源部24には、例えばコイン電池が用いられている。
【0018】
図2に示すように、センサ3は、人体通信部31と、計測部32と、送信部33と、電源部34とを備えている。
人体通信部31は、上記リストバンド2の人体通信部22と同様の機能を有する通信部である。人体通信部31は、リストバンド2の人体通信部22との間で人体通信を行い、リストバンド2が保有する患者識別情報を受信する。
【0019】
計測部32は、センサ3が装着される患者の生体情報を計測する。送信部33は、計測部32が計測した生体情報に、リストバンド2から受信された患者識別情報を付与してベッドサイドモニタ4へ送信する。電源部34には、例えばコイン電池が用いられている。
【0020】
次に、図1図4を参照して、センサシステム1の動作例を説明する。
先ず、初期設定として、入院が決まった患者(例えば、患者Aと称する)に対して、ナースコールシステム5上で患者情報テーブルが作成される。また、リストバンド2上に例えば患者Aの氏名(A子さん)が表記されるとともに、リストバンド2内に埋め込まれた記憶部21に患者Aの患者IDが書き込まれる。医療従事者から患者Aにリストバンド2が渡され、リストバンド2が患者Aの手首に装着される。
【0021】
病室100のベッド61で例えば横になっている患者Aに対して、医療従事者により、例えば心電図を計測するためのセンサ3aが装着される。そして、リストバンド2の人体通信部22を起動させるための開始スイッチ23が医療従事者により押下される。この際に、医療従事者は、リストバンド2上に表記されている患者の氏名を目視で確認して、患者A本人であることを確認することが望ましい。
【0022】
リストバンド2の人体通信部22が人体通信を開始し、記憶部21に記憶されている患者Aの患者IDが、患者Aの体表面を介してセンサ3aに送信される。患者IDは、その後一定周期毎にリストバンド2からセンサ3aへ自動的に送信される。
【0023】
センサ3aの人体通信部31は、リストバンド2から送信されてきた患者IDを取得する。この場合、センサ3aは、心電図の計測を開始する前に、リストバンド2から患者IDを取得する。このため、例えばセンサ3aは、患者IDを取得するまでの間、計測部32による心電図の計測を停止しておくようにしてもよい。
【0024】
なお、リストバンド2とセンサ3a間の通信方式は双方向通信であっても単方向通信であってもよい。例えば双方向通信の場合、センサ3aは、患者IDを要求する信号をリストバンド2に対して送信し、患者IDをリストバンド2から取得するようにしてもよい。また、図示を省略するが、センサ3aは、記憶部を有し、リストバンド2から取得する患者IDをその記憶部に記憶しておくようにしてもよい。
【0025】
センサ3aは、計測部32で計測した患者Aの心電図に対して患者Aの患者IDを付与した後に、患者ID付きの心電図を送信部33からベッドサイドモニタ4へ向けて無線送信する。センサ3aは、例えば先頭のヘッダー領域に患者IDを書き込み、ヘッダー領域の後段に続くデータ領域に心電図データを書き込んだ患者ID付きの心電図を送信する。
【0026】
センサ3aは、リストバンド2から患者IDを取得する前に計測部32による心電図の計測が開始された場合、送信部33による心電図の送信を開始しない。すなわち、センサ3aは、患者IDが付与されていない心電図を、送信部33からベッドサイドモニタ4へ向けて送信しないように設定されている。
【0027】
ベッドサイドモニタ4は、患者ID付き心電図を受信すると、ナースステーション200のナースコールシステム5に保有されている患者情報テーブルを参照し、患者IDに対応付けられている患者Aの氏名(「A子さん」)を特定する。ベッドサイドモニタ4は、例えば図3に示すように、表示画面41に「A子さんの心電図を受信しました」というメッセージをポップアップ画面42で表示する。
【0028】
医療従事者は、ポップアップ画面42の表示内容を確認し、A子さんが患者本人であるかを確認した後、ポップアップ画面42上をタッチする。
【0029】
ベッドサイドモニタ4は、ポップアップ画面42を消去させて、図4に示すように、表示画面41上に患者Aの心電図波形を例えば患者Aの氏名(「A子さん」)と共に表示する。なお、この例では心電図を計測するセンサ3aの場合を説明したが、体温を計測するセンサ3b、呼吸を計測するセンサ3cの場合も同様に動作し、各生体情報が表示画面41に表示される。
【0030】
上記ベッドサイドモニタ4に表示される患者Aの各生体情報は、ナースコールシステム5側の操作により、ベッドサイドモニタ4からナースコールシステム5へ無線送信され、ナースコールシステム5の表示画面51上に表示されうる。
【0031】
ところで、従来、ワイヤレスセンサを用いて患者情報を計測する医療機器では、例えば患者Aにセンサa〜c(図示せず)が装着され、患者Bにセンサd〜f(図示せず)が装着されているような場合、センサから情報を受信した医療機器は、センサaの情報が患者Aの情報であることを自動的に対応付けることができない。この場合、例えば各センサが有する機器番号と患者情報とを対応付けることが可能であるが、この対応付け作業においてヒューマンエラーが発生する可能性がある。また、例えばセンサ毎に患者IDを手入力して対応付けることも考えられるが、上記同様にヒューマンエラーが発生する可能性があるとともに、患者が変わるたびに、対応付けした患者IDを消込する作業が必要となり作業負荷が増大する。
【0032】
これに対し、本実施形態のセンサシステム1によれば、医療従事者により患者Aに付与されるユニークな患者IDが、その患者Aの体表面を介してリストバンド2からセンサ3aに送信される。このため、センサ3aは、そのセンサ3aを装着している患者Aの患者IDをセンサ3aで計測された心電図に間違いなく付与することができる。そして、ベッドサイドモニタ4では、計測された心電図と患者IDとが正確に対応付けられた状態の患者ID付き心電図の信号を受信することが可能であるため、その心電図を計測したセンサ3aと患者A(「A子さん」)とを正確に対応づけた状態で、表示画面41等に表示することができる。
【0033】
また、リストバンド2は、患者Aの手首に装着することが可能であり、リストバンド2上には患者Aの氏名が表記されている。このため、リストバンド2が記憶する患者Aの患者IDを患者Aの体表を介して確実にセンサ3aに付与することができる。また、医療従事者は、センサ3aを装着する際に、リストバンド2上の患者Aの氏名と患者本人とが間違いなく対応していることを目視で確認することができる。なお、ここで、「表記する」とは、例えば、リストバンド2が液晶画面を有し、ボタン操作等に応じてその液晶画面に患者の氏名が表示される態様も含み得る意味である。
【0034】
また、センサ3aは、心電図の計測を開始する前に、リストバンド2から患者IDを取得するように構成されている。また、センサ3aは、患者IDを取得する前に心電図の計測が開始されても、ベッドサイドモニタ4に向けた心電図の送信を開始しないように構成されている。このため、医療従事者や患者がセンサと患者を対応付けるための特別の作業を行うことなく、センサ3aを装着している患者Aの患者IDを自動的に心電図に付与することができる。また、センサ3aが計測した心電図と患者Aとの対応付けを正確に行えない事態が発生することを抑止することができる。
【0035】
<変形例>
センサ3aは、リストバンド2から患者IDを取得する前に計測部32による心電図の計測が開始された場合、患者IDが付与されていないことを示す識別子(例えば未付与識別子)を心電図に付与して、未付与識別子付きの心電図を送信部33からベッドサイドモニタ4へ向けて送信するようにしてもよい。この場合、未付与識別子付き心電図を受信したベッドサイドモニタ4は、表示画面41に例えば「まだ患者を特定できていません」というメッセージを表示してもよい。
【0036】
このような構成によれば、センサ3aが測定した心電図と患者Aとの対応付けを正確に行えない事態が発生することを抑止することができる。そして、上記実施形態と同様に、患者Aに装着されたセンサ3aによって計測された患者Aの心電図をベッドサイドモニタ4の表示画面41等に表示することができる。また、例えば患者Aが装着するリストバンド2の記憶部21に患者IDが書き込まれていないような不具合が生じた場合でも、その不具合を検出しうる。
【0037】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0038】
1:センサシステム、2:リストバンド(IDタグの一例)、3(3a〜3c):センサ、4:ベッドサイドモニタ(外部機器の一例)、5:ナースコールシステム、21:記憶部、22,31:人体通信部、23:開始スイッチ、24,34:電源部、32:計測部、33:送信部、41,51:表示画面、100:病室、200:ナースステーション
図1
図2
図3
図4