特許第6774809号(P6774809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774809
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】小麦ふすま含有麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20201019BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20201019BHJP
【FI】
   A23L7/109 A
   A23L7/10 Z
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-153367(P2016-153367)
(22)【出願日】2016年8月4日
(65)【公開番号】特開2017-29145(P2017-29145A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2019年6月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-155508(P2015-155508)
(32)【優先日】2015年8月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】迫田 俊
(72)【発明者】
【氏名】沖坂 浩一
(72)【発明者】
【氏名】白幡 登
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−140366(JP,A)
【文献】 特開平10−262586(JP,A)
【文献】 特開2013−243984(JP,A)
【文献】 特開2014−212713(JP,A)
【文献】 特開2012−110237(JP,A)
【文献】 特開平5−336907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00−7/25
FSTA/CAplus/WPIDS/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸煮処理小麦ふすまを含有する麺生地を圧延して麺帯を得、該麺帯を麺線に切り出し、得られた麺線を切断することを含む小麦ふすま含有麺類の製造方法であって、前記麺生地中の蒸煮処理小麦ふすまの含有量が、乾燥質量換算で7〜47質量%である、製造方法。
【請求項2】
前記蒸煮処理小麦ふすまが、小麦ふすまと、該小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対して13〜135質量部の水とを共存させ、該小麦ふすまと該水とを混練しながら60〜150℃で1〜60分間処理し、乾燥して得られたものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記混練を、ニーダー又は二軸エクストルーダーを用いて行う、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記麺生地中の蒸煮処理小麦ふすまの含有量が、乾燥質量換算で30質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦ふすま含有麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小麦ふすまは主に粉砕された小麦の外皮からなり、不溶性食物繊維、ビタミン、ミネラル等を豊富に含むことから、健康食品素材として注目されている。しかし、小麦ふすまは組織が強靭で、また吸水性が高く、食品に配合した際に食品の性状を変化させてしまう。
例えば、麺生地を調製する際に、穀粉、水等を配合した生地中に小麦ふすまを加えて混練した場合、小麦ふすまが生地中の水分を吸収して生地が硬化し、成形が困難となることがある。また、小麦ふすまを麺生地に配合すると、麺生地のつながり(展性)が悪化して圧延時に生地が破断しやすくなり、また、得られる麺線はぼそぼそとして弾力に劣るものとなる。
【0003】
かかる小麦ふすまの物性を改善した小麦ふすま加工品が開発されてきている。例えば特許文献1には、粉砕した小麦ふすまを7倍量の水に入れて懸濁状とし、この懸濁液を平鍋に入れて沸騰させて煮込んだり、減圧して水分を飛ばしたりして、水分含量が82.0重量%前後のペースト状ふすまを得ることが記載され、このペースト状小麦ふすまを小麦粉、そば粉、水及び塩と混合し、得られた生地を圧延して切り出すことにより、滑らかさ、喉ごし、及び弾力が良好なそばを製造できることが記載されている。
また、特許文献2には、小麦ふすまを、粉粒体加熱装置を用いて飽和水蒸気を導入しながら品温90℃で約5秒間湿熱処理し、次いで微粉砕して分級し、微ふすま画分を得ることが記載されている。さらに特許文献2には、この微ふすま画分と小麦粉との混合物を穀粉原料とし、これに乾燥グルテンと水を混合して麺生地を調製し、該生地を圧延し、麺線に切り出して中華麺を製造すると、製麺時の作業性が良好であり、また食感が良好な中華麺が得られたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−262586号公報
【特許文献2】特開2013−243984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び2記載のそばや中華麺は、小麦ふすまの配合に伴い低下する製麺時の作業性や麺の食感等をある程度改善しうるものの、そのレベルは十分とはいえない。
本発明は、小麦ふすまを豊富に含有する麺生地を圧延して麺帯とし、この麺帯を麺線に切り出し、当該麺線を所望の長さに切断する工程を含む麺類の製造方法であって、製麺の作業性に優れ、且つ、良好な弾力を有する麺類を得ることができる麺類の製造方法の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、小麦ふすま配合麺の製造において、麺生地に配合する小麦ふすまとして、小麦ふすまを特定条件で蒸煮処理したもの(蒸煮処理小麦ふすま)を特定量用いると、伸ばしても切れにくく生地のつながりが良好な麺生地を調製することができ、麺生地を圧延した際に生地が破断しにくく麺帯調製の作業性が大きく向上することを見い出した。その一方で本発明者は、かかる麺帯を麺線に切り出す際や麺線を所望の長さに切断する際には、より小さなせん断力で容易に切断できることを見い出した。さらに本発明者は、かかる麺線が弾力にも優れることを見い出した。
本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
【0007】
本発明は、蒸煮処理小麦ふすまを含有する麺生地を圧延して麺帯を得、該麺帯を麺線状に切り出し、得られた麺線を切断することを含む小麦ふすま含有麺類の製造方法であって、前記麺生地中の蒸煮処理小麦ふすまの含有量が、乾燥質量換算で7〜47質量%である製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の小麦ふすま含有麺類の製造方法によれば、麺生地中に小麦ふすまを豊富に含有しながらも麺生地の伸びが良く圧延適性に優れた麺生地を調製することができ、その一方、当該麺生地を圧延して得られる麺帯あるいは当該麺帯を切り出した麺線は、より小さなせん断力で切断することができる。すなわち、本発明の麺類の製造方法により、小麦ふすまを豊富に含有する麺生地を用いた製麺の作業性を大きく向上させることができる。また、本発明の小麦ふすま含有麺類の製造方法によれば、小麦ふすまを豊富に含有しながらも、弾力があり食感に優れた麺類を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の小麦ふすま含有麺類の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」という。)の好ましい実施形態について説明する。
【0010】
本発明の製造方法において、麺生地には蒸煮処理小麦ふすまが配合される。蒸煮処理小麦ふすまとは、小麦ふすまを特定条件で蒸煮処理し、乾燥して得られる小麦ふすま加工品である。蒸煮処理に付する小麦ふすまとしては、小麦の外皮を粉砕したものを用いることが好ましい。通常は小麦の外皮を焙煎し、粉砕したものを用いる。蒸煮処理に付する小麦ふすまとして、食品原料として市販されているものを広く用いることができる。かかる市販の小麦ふすまとしては、例えば、ウィートブランDF(商品名、日清ファルマ社製)、小麦ふすま(商品名、日本製粉社製)を用いることができる。蒸煮処理に付する小麦ふすまは、その含水率を10質量%以下とすることが好ましく、8質量%以下とすることがより好ましく、6質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0011】
本発明に用いる蒸煮処理小麦ふすまを得るために、小麦ふすまと、当該小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対し、13〜135質量部の水を共存させ、小麦ふすまと水とを混練しながら加熱処理する(本発明においては、この混練加熱処理を「蒸煮処理」という)。この蒸煮処理は、60〜150℃で1〜60分間の処理とすることが好ましい。蒸煮処理された小麦ふすまを乾燥することにより、本発明に用いる蒸煮処理小麦ふすまを得ることができる。本発明において、上記の小麦ふすまと共存させる水には、原料として用いる小麦ふすま自体に含まれる水分も含まれるものとする。つまり、上記の小麦ふすまと共存させる水の量(上記の13〜135質量部)は、原料とする小麦ふすまが有する水分量と、小麦ふすまとは別に配合される水の量の合計である。本発明において「乾燥質量」とは、沸点150℃以下の成分(水、溶剤等)を除いた質量を意味する。
上記蒸煮処理において、小麦ふすまと共存させる水の量を、当該小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対し13〜135質量部とすることにより、小麦ふすまを効率的に糊化して吸水性を効果的に低減することができ、この蒸煮処理小麦ふすまを配合して得られる麺生地のつながりを向上させることができ、また、弾力がありながらも切断しやすい性状の麺を得ることができる。
上記の小麦ふすまと共存させる水の量は、当該小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対し、好ましくは15質量部以上、より好ましくは17質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは23質量部以上、特に好ましくは25質量部以上である。また、上記の小麦ふすまと共存させる水の量は、当該小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対し、好ましくは130質量部以下、より好ましくは125質量部以下である。
【0012】
上記蒸煮処理の処理温度と処理時間は、得られる麺生地のつながり、弾力、切断容易性をバランス良く高める観点から、70〜140℃で1〜55分間とすることがより好ましく、75〜130℃で1.5〜50分間とすることがさらに好ましく、80〜125℃で1.5〜45分間とすることが特に好ましい。
【0013】
上記蒸煮処理は、水との接触効率の観点から、上述した通り小麦ふすまと水とを混練しながら行う。かかる蒸煮処理を行うのに好適な装置として、バッチ式での混練が可能なレオニーダー(カジワラ社製)や、二軸スクリューの回転により、小麦ふすまと水をせん断、混練する二軸エクストルーダーを挙げることができる。例えば、バッチ式で混練しながら蒸煮処理を行う場合、小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対して水の量を30質量部以上とすることがより好ましく、40質量部以上とすることがさらに好ましく、50質量部以上とすることが特に好ましい。また、バッチ式で混練しながら蒸煮処理を行う場合の温度と時間は、70〜140℃で10〜50分間程度とすることがより好ましく、70〜100℃で15〜40分程度の混練処理に付すことがさらに好ましい。また、二軸エクストルーダーを用いる場合には、小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対して水の量を100質量部以下とすることがより好ましく、80質量部以下とすることがさらに好ましく、60質量部以下とすることが特に好ましい。二軸エクストルーダーを用いる場合、バレル内の滞留時間が短いために、通常は70〜140℃で1〜15分間程度、好ましくは1.5〜10分間程度の混練処理となる。
蒸煮処理の圧力に特に制限はなく、通常は0.1〜9.0MPaとする。二軸エクストルーダーを用いて蒸煮処理する場合には、蒸煮処理の圧力はバッチ式の場合よりも通常は高くなり、好ましくは4.0〜8.0MPa程度とする。
【0014】
上記処理後、処理された小麦ふすまを乾燥する。品質保持の観点から、この乾燥により小麦ふすまの含水率(水分量)を15質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下とする。乾燥方法に特に制限はなく、例えば真空乾燥機を用いて乾燥することができる。乾燥温度も特に制限はなく、通常は60〜100℃の温度下で乾燥させる。
本明細書において含水率は、赤外線水分計(FD−720,ケット科学社製)を用いて測定することができる。すなわち、試料1gを試料皿に量り取り、赤外線照射によって105℃で加熱乾燥させ、含まれていた水分の蒸発による質量変化から水分量を求める。質量変化は30秒毎に測定し、変動幅が0.05%以内となったときの質量変化から、試料中の水分量を求め、含水率(質量%)を算出する。
【0015】
上記乾燥後の小麦ふすまは、そのまま蒸煮処理小麦ふすまとして本発明に用いてもよく、また、ブレンダ―等を用いて粉砕したものを蒸煮処理小麦ふすまとして本発明に用いてもよい。
上記乾燥後の小麦ふすまを粉体ないしは粒状とする場合、その粒径は0.03mm以上とすることが好ましく、0.05mm以上とすることがより好ましい。各種食品への配合のしやすさの観点から、本発明の小麦ふすま加工品は、より好ましくは粒径を0.055mm以上、さらに好ましくは0.06mm以上、特に好ましくは0.065mm以上とする。また、同様の観点から、本発明の小麦ふすま加工品の粒径を3.0mm以下とすることが好ましく、2.0mm以下とすることがより好ましく、1.0mm以下とすることがさらに好ましく、0.5mm以下とすることがさらに好ましく、0.2mm以下とすることがさらに好ましく、0.1mm以下とすることが特に好ましい。
本発明において単に「粒径」という場合、平均粒径を意味する。この平均粒径は、粒径分布測定装置SALD−2100(島津製作所製)を用いて、フローセルを使用し、個数基準の平均粒径として測定される。
本発明に用いる蒸煮処理小麦ふすまの粒径は、粉砕の程度やその後の分級により適宜調整することができる。粉砕の程度による調整は、用いる粉砕機の使用法に従えばよく、分級による調整は、空気分級や篩い分け等、慣用の手段により行うことができる。
【0016】
本発明の製造方法において、麺生地中、上記の蒸煮処理小麦ふすまの含有量は、乾燥質量換算で7〜47質量%である。すなわち、本発明の製造方法において、麺生地の乾燥質量中に占める、蒸煮処理小麦ふすまの乾燥質量が7〜47質量%である。栄養成分の摂取効率の観点から、麺生地中の蒸煮処理小麦ふすまの含有量は、乾燥質量換算で8質量%以上が好ましく、9質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、11質量%以上がさらに好ましい。また、製麺適性の観点から、麺生地中の蒸煮処理小麦ふすまの含有量は、乾燥質量換算で45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0017】
上記麺生地は、上記蒸煮処理小麦ふすま以外の穀粉を含有する。当該穀粉は、目的の麺類の種類に応じて適宜に選択される。例えば、小麦粉、米粉、そば粉、大麦粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉、及びひえ粉から選ばれる1種又は2種以上や、これと澱粉との組み合わせ等が挙げられる。使用する小麦粉の種類は特に限定されず、強力粉、中力粉、及び薄力粉の1種又は2種以上を用いることができる。また、小麦粉としてデュラム粉を用いることも好ましい。
上記澱粉としては、例えば、小麦澱粉、大麦澱粉、ライ麦澱粉、エンバク澱粉等の麦類澱粉、トウモロコシ澱粉、米澱粉、豆類澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、ヒシ澱粉、クリ澱粉、サゴ澱粉、ナガイモ澱粉、レンコン澱粉、クワイ澱粉、ワラビ澱粉、ユリネ澱粉、及びアミロメイズ澱粉から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
上記穀粉は、さらにこんにゃく粉、グルテン粉、加工澱粉等を含んでもよい。
麺生地中の穀粉(蒸煮処理小麦ふすまを含む)の含有量は、目的とする麺の種類により適宜に調整されるものであるが、通常は、乾燥質量換算で(すなわち、麺生地の乾燥質量中に占める、当該穀粉の乾燥質量が)、80〜100質量%が好ましく、82〜99.5質量%がより好ましく、85〜99質量%がより好ましい。
【0018】
本発明の製造方法において、麺生地は、蒸煮処理小麦ふすまを配合すること以外は、通常の麺生地の調製方法に準じて調製することができる。例えば、蒸煮処理小麦ふすまと、上記所望の穀粉と、水、塩等を配合して混練し、麺生地を調製することができる。また、中華麺の麺生地を調製する場合には、さらに、かん水が配合される。また、目的に応じて乳化剤、増粘安定剤、酸化防止剤、着色料、pH調整剤等を配合してもよい。
穀粉(蒸煮処理小麦ふすまを含む)と水との混合比は、麺類の種類にもよるが、通常は、穀粉:水=60:40〜85:15(質量比)であり、穀粉:水=70:30〜80:20(質量比)とすることが好ましい。当該質量比において、穀粉中の水分は「穀粉」ではなく「水」を構成するものとする。つまり、上記質量比において、「穀粉」の量は乾燥質量である。
【0019】
通常、小麦ふすまを麺生地に配合すると、生地の水分が小麦ふすまに吸収されたり、小麦ふすま自体が生地になじみにくい性状であることなどに起因して、生地のつながりが弱くなり展性に劣る性状の生地になってしまう。しかし、本発明においては、小麦ふすまとして蒸煮処理小麦ふすまを用いており、得られる麺生地は伸びがよく展性に優れ、後工程である圧延によっても生地が破断しにくい。すなわち、上記蒸煮処理小麦ふすまを配合した麺生地は、圧延特性に優れる。
【0020】
本発明の製造方法において、麺生地は、圧延され、所望の厚さの麺帯とされる。当該圧延は、麺生地を圧延ロールに通すことで行われる。次いで麺帯を切り出し機にかけて麺線とし、この麺線を所望の長さに切断することにより生麺を得ることができる。
本発明において、麺生地が展性に優れ圧延等の処理に付しても破断しにくいことは上述した通りであるが、この麺生地を圧延して得られる麺帯は逆に、麺線に切り出す際により小さなせん断力で切り出すことができ、当該麺線もまた、所望の長さに切断する際により小さなせん断力で切断することができる。すなわち、麺生地に蒸煮処理小麦ふすまを配合することにより、破断耐性と切断容易性という互いに相反する2つの特性を高度なレベルで両立した麺生地を得ることができる。
【0021】
上記生麺を調湿乾燥法等により乾燥すれば乾麺が得られ、蒸煮を施し冷却すれば蒸麺が得られ、連続的に蒸煮又は茹で処理を行った後、フライ用バスケットあるいは乾燥用バスケットに一食ずつ成形充填し、フライあるいは高温熱風乾燥処理すれば即席乾麺が得られる。本発明の製造方法で得られる麺類は、上記生麺、乾麺、蒸麺、即席乾麺のいずれの形態であってもよい。
また、本発明の製造方法で得られる麺類の種類も特に制限はなく、例えば、中華麺、焼きそば、うどん、そば、及びパスタ類が挙げられる。なかでも、中華麺及び焼きそばから選ばれる麺類が好ましい。
本発明の製造方法で得られる麺類は良好な弾力を有し、食感に優れる。
【0022】
上述した実施形態に関し、本発明は以下の小麦ふすま含有麺類の製造方法を開示する。
【0023】
<1>
蒸煮処理小麦ふすまを含有する麺生地を圧延して麺帯を得、該麺帯を麺線に切り出し、得られた麺線を切断することを含む小麦ふすま含有麺類の製造方法であって、前記麺生地中の蒸煮処理小麦ふすまの含有量が、乾燥質量換算で7〜47質量%である、製造方法。
【0024】
<2>
前記蒸煮処理小麦ふすまが、好ましくは、小麦ふすまと、該小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対し、13〜135質量部の水を共存させ、該小麦ふすまと該水とを混練しながら加熱処理した後、乾燥して得られたものであり; より好ましくは、小麦ふすまと、該小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対して13〜135質量部の水とを共存させ、該小麦ふすまと該水とを混練しながら60〜150℃で1〜60分間、より好ましくは70〜140℃で1〜55分間、さらに好ましくは75〜130℃で1.5〜50分間、特に好ましくは80〜125℃で1.5〜45分間処理した後、乾燥して得られたものである、前記<1>に記載の製造方法。
<3>
前記の小麦ふすまと共存させる水の量が、当該小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対し、好ましくは15質量部以上、より好ましくは17質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは23質量部以上、特に好ましくは25質量部以上である、前記<2>に記載の製造方法。
<4>
前記の小麦ふすまと共存させる水の量が、当該小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対し、好ましくは130質量部以下、より好ましくは125質量部以下である、前記<2>又は<3>に記載の製造方法。
<5>
前記の小麦ふすまと共存させる水の量が、当該小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対し、好ましくは17〜135質量部、より好ましくは20〜130質量部、さらに好ましくは23〜125質量部、特に好ましくは25〜125質量部である、前記<2>〜<4>のいずれか1つに記載の製造方法。
<6>
前記蒸煮処理小麦ふすまが、好ましくは、小麦ふすまと、該小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対して30〜135質量部、好ましくは40〜130質量部、より好ましくは50〜125質量部の水とを共存させ、レオニーダーを用いて、好ましくは70〜140℃で10〜50分間、より好ましくは70〜100℃で15〜40分間混練処理し、乾燥して得られたものである、前記<1>に記載の製造方法。
<7>
前記蒸煮処理小麦ふすまが、好ましくは、小麦ふすまと、該小麦ふすまの乾燥質量100質量部に対して13〜100質量部、好ましくは15〜80質量部、より好ましくは17〜60質量部、さらに好ましくは20〜60質量部、さらに好ましくは23〜60質量部、特に好ましくは25〜60質量部の水とを共存させ、二軸エクストルーダーを用いて、好ましくは70〜140℃で1〜15分間、より好ましくは1.5〜10分間混練処理し、乾燥して得られたものである、前記<1>に記載の製造方法。
<8>
前記乾燥の温度が好ましくは60〜100℃である、前記<2>〜<7>のいずれか1つに記載の製造方法。
【0025】
<9>
前記蒸煮処理小麦ふすまが、前記乾燥後、粉砕して得られたものである、前記<2>〜<8>のいずれか1つに記載の製造方法。
<10>
前記蒸煮処理小麦ふすまの含水率が、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である、前記<1>〜<9>のいずれか1つに記載の製造方法。
<11>
前記蒸煮処理小麦ふすまの粒径が、好ましくは0.03mm以上、より好ましくは0.05mm以上、さらに好ましくは0.055mm以上、さらに好ましくは0.06mm以上、特に好ましくは0.065mm以上である、前記<1>〜<10>のいずれか1つに記載の製造方法。
<12>
前記蒸煮処理小麦ふすまの粒径が、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.2mm以下、特に好ましくは0.1mm以下である、前記<1>〜<11>のいずれか1つに記載の製造方法。
<13>
前記蒸煮処理小麦ふすまの粒径が、好ましくは0.03〜3.0mm、より好ましくは0.05〜2.0mm、さらに好ましくは0.055〜1.0mm、さらに好ましくは0.06〜0.5mm、さらに好ましくは0.065〜0.2mm、特に好ましくは0.065〜0.1mmである、前記<1>〜<12>のいずれか1つに記載の製造方法。
【0026】
<14>
前記麺生地中、前記蒸煮処理小麦ふすまの含有量が、乾燥質量換算で好ましくは8質量%以上、より好ましくは9質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは11質量%以上である、<1>〜<13>のいずれか1つに記載の製造方法。
<15>
前記麺生地中、前記蒸煮処理小麦ふすまの含有量が、乾燥質量換算で好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である、<1>〜<14>のいずれか1つに記載の製造方法。
<16>
前記麺生地中、前記蒸煮処理小麦ふすまの含有量が、乾燥質量換算で好ましくは8〜45質量%、より好ましくは9〜40質量%、さらに好ましくは10〜35質量%、さらに好ましくは11〜30質量%である、<1>〜<15>のいずれか1つに記載の製造方法。
【0027】
<17>
前記麺生地が、前記蒸煮処理小麦ふすま以外の穀粉を含有する、前記<1>〜<16>のいずれか1つに記載の製造方法。
<18>
前記の蒸煮処理小麦ふすま以外の穀粉が、好ましくは小麦粉、米粉、そば粉、大麦粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉、及びひえ粉から選ばれる1種又は2種以上であるか、又は、小麦粉、米粉、そば粉、大麦粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉、及びひえ粉から選ばれる1種又は2種以上と澱粉との組み合わせである、前記<17>に記載の製造方法。
<19>
前記小麦粉が、好ましくは強力粉、中力粉、及び薄力粉から選ばれる1種又は2種以上である、前記<18>に記載の製造方法。
<20>
前記小麦粉が好ましくはデュラム粉である、前記<18>に記載の製造方法。
【0028】
<21>
前記澱粉が、好ましくは小麦澱粉、大麦澱粉、ライ麦澱粉、エンバク澱粉等の麦類澱粉、トウモロコシ澱粉、米澱粉、豆類澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、ヒシ澱粉、クリ澱粉、サゴ澱粉、ナガイモ澱粉、レンコン澱粉、クワイ澱粉、ワラビ澱粉、ユリネ澱粉、及びアミロメイズ澱粉から選ばれる1種又は2種以上である、前記<18>〜<20>のいずれか1つに記載の製造方法。
<22>
前記の蒸煮処理小麦ふすま以外の穀粉が、好ましくはこんにゃく粉、グルテン粉及び加工澱粉から選ばれる1種又は2種以上を含有する、前記<17>〜<21>のいずれか1つに記載の製造方法。
<23>
前記麺生地中、穀粉(蒸煮処理小麦ふすまを含む)の含有量が、乾燥質量換算で好ましくは80〜100質量%、より好ましくは82〜99.5質量%、さらに好ましくは85〜99質量%である、前記<1>〜<22>のいずれか1つに記載の製造方法。
<24>
前記麺生地が、好ましくは、少なくとも蒸煮処理小麦ふすまと、該蒸煮処理小麦ふすま以外の穀粉と、水と、必要により塩を配合し、混練して得られたものである、前記<1>〜<23>のいずれか1つに記載の製造方法。
<25>
前記麺生地中に、好ましくはかん水が配合されている、前記<1>〜<24>のいずれか1つに記載の製造方法。
<26>
前記麺生地中に、好ましくは乳化剤、増粘安定剤、酸化防止剤、着色料、及びpH調整剤から選ばれる1種又は2種以上が配合されている、前記<1>〜<25>のいずれか1つに記載の製造方法。
【0029】
<27>
前記麺生地の調製において、穀粉(蒸煮処理小麦ふすまを含む)と水との混合比が、好ましくは、穀粉:水=60:40〜85:15(質量比)であり、より好ましくは、穀粉:水=70:30〜80:20(質量比)である、前記<1>〜<26>のいずれか1つに記載の製造方法。
<28>
前記小麦ふすま含有麺類が、好ましくは生麺、乾麺、蒸麺又は即席乾麺である、<1>〜<27>のいずれか1つに記載の製造方法。
<29>
前記小麦ふすま含有麺類が、好ましくは中華麺、焼きそば、うどん、そば又はパスタ類であり、より好ましくは中華麺及び焼きそばである、<1>〜<28>のいずれか1つに記載の製造方法。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0031】
[参考例1] 蒸煮処理小麦ふすまの調製−1
小麦ふすま(商品名:ウィートブランDF、日清ファルマ社製、含水率14質量%)120kgを800L真空レオニーダー(商品名:FL−800、カジワラ社製)に投入し、蒸留水100kgを加え、83℃で30分間混練した。その後、小麦ふすまを取り出し、バキューム乾燥機を用いて60℃で24時間乾燥して粉砕した。室温で24時間保管した後に含水率を測定したところ、含水率は5質量%であった。また、粉砕物の平均粒径は500μmであった。
【0032】
[参考例2] 蒸煮処理小麦ふすまの調製−2
小麦ふすま(商品名:ウィートブランDF、日清ファルマ社製、含水率14質量%)65kgと蒸留水35kgを混合した。この混合物を二軸エクストルーダー(スエヒロEPM社製EA−20型)に投入し、120℃に設定したバレル内で、スクリューの回転により混合物を混練し、排出口から排出した。上記混合物のバレル内の滞留時間は3分間とした。排出口から排出された小麦ふすまを、バキューム乾燥機を用いて60℃で24時間乾燥して粉砕した。次いで室温で24時間保管した後に含水率を測定したところ、含水率は5質量%であった。また、粉砕物の平均粒径は500μmであった。
【0033】
[参考例3] 蒸煮処理小麦ふすまの調製−3
小麦ふすま(商品名:ウィートブランDF、日清ファルマ社製、含水率14質量%)75kgと蒸留水25kgを混合した。この混合物を二軸エクストルーダー(スエヒロEPM社製EA−20型)に投入し、120℃に設定したバレル内で、スクリューの回転により混合物を混練し、排出口から排出した。上記混合物のバレル内の滞留時間は2分間とした。排出口から排出された小麦ふすまを、バキューム乾燥機を用いて60℃で24時間乾燥して粉砕した。次いで室温で24時間保管した後に含水率を測定したところ、含水率は5質量%であった。また、粉砕物の平均粒径は500μmであった。
【0034】
[参考例4] 蒸煮処理小麦ふすまの調製−4
上記参考例3で得た蒸煮処理小麦ふすまを粉砕機(商品名:TV−450X2、東京製粉機製作所製)を用いて粉砕し、平均粒径178μmの蒸煮処理小麦ふすま(含水率5質量%)を得た。
【0035】
[参考例5] 蒸煮処理小麦ふすまの調製−5
上記参考例4で得た蒸煮処理小麦ふすまを粉砕機(商品名:SPM−R430、西村機械製作所製)を用いて粉砕し、平均粒径67μmの蒸煮処理小麦ふすま(含水率5質量%)を得た。
【0036】
[参考例6] 比較用蒸煮処理小麦ふすまの調製−6
小麦ふすま(商品名:ウィートブランDF、日清ファルマ社製、含水率14質量%)60gを、オートクレーブ(商品名:SS−245、トミー精工社製)を用いて90℃で5秒間の湿熱処理に付した。湿熱処理後の小麦ふすまを、バキューム乾燥機を用いて60℃で24時間乾燥して粉砕した。次いで室温で24時間保管した後に含水率を測定したところ、含水率は5質量%であった。また、粉砕物の平均粒径は500μmであった。
【0037】
[参考例7] 小麦ふすまペーストの調製
小麦ふすま(商品名:ウィートブランDF、日清ファルマ社製、含水率14質量%)200gと水1400gを混合してなる懸濁液を平鍋に入れ、加熱し、沸騰してから弱火にして40分間煮込み、小麦ふすまペーストを得た。得られた小麦ふすまペーストの含水率は82質量%であった。
【0038】
[参考例8] 未蒸煮処理小麦ふすまの調製
小麦ふすま(商品名:ウィートブランDF、日清ファルマ社製、含水率14質量%)を未蒸煮処理小麦ふすまとした。この未蒸煮処理小麦ふすまの平均粒径は500μmである。
【0039】
[実施例、比較例] 麺類の製造
下表に示す穀粉をミキサー(トーキョーメンキ社製)に投入し、20秒間予備撹拌した。次いで、下表に示す量の食塩及び粉末かん水(オリエンタル酵母工業社製)を、下表に示す量の水に溶解した水溶液を調製し、上記ミキサー内に少しずつ投入し、10分間混捏して麺生地を調製した。調製直後の麺生地あるいは調製後室温で1時間を放置した麺生地を、圧延機(トーキョーメンキ社製)により圧延し、厚さ1.5mmの麺帯を得た。次いで、切刃(♯20角)で幅2.0mmの麺線に切り出し、ハサミを用いて麺線を長さ40cmに切断して生麺を得た。
【0040】
[試験例1] 麺生地のつながり(麺生地の破断耐性)の評価
上記実施例及び比較例における厚さ1.5mmの麺帯を、幅2cm、長さ40cmに切り出した。この麺帯を両端から引っ張り、その伸びやすさを指標にして、下記評価基準により麺生地のつながりを評価した。評価数値は3人の専門パネルの評価数値の平均値とした。
なお、便宜上、麺帯を用いて試験をしているが、麺帯も麺生地であることにかわりなく、この試験結果は、圧延前の麺生地のつながりの試験結果と等価なものとして評価できる。また、比較例1、2及び7における麺帯は、その一部が破断していたが(すなわち、その一部が切断され、あるいはひびが生じ、あるいは切れ目が入っていたが)、破断していない部分を切り出して上記試験例1に用いた。実施例1〜12における麺帯には、破断は全く生じていなかった。
<麺生地のつながりの評価基準>
5 生地の伸びが非常によく、引っ張った際に生地がより破断しにくい。
4 生地がより伸びやすく、引っ張った際に生地が破断しにくい。
3 生地の伸びがよく、引っ張った際に生地が破断しにくい。
2 生地がほとんど伸びず、引っ張った際に生地が破断しやすい。
1 生地が全く伸びず、引っ張った際に生地が破断してしまう。
【0041】
[試験例2] 麺線の切断容易性の評価
上記実施例及び比較例における麺線を10本束ね、この束を、ハサミを用いて切断するのに要する力を調べた。麺生地調製直後の麺生地を圧延し、切り出した比較例3における麺線の束を切断するのに要する力を基準(評価3)とし、各実施例及び比較例における麺線の束を切断するのに要する力を評価した。評価数値は3人の専門パネルの評価数値の平均値とした。
<麺線の切断容易性の評価基準>
5 より弱い力で麺線の束を切断することができる。
4 基準よりも弱い力で麺線の束を切断することができる。
3 基準
2 麺線の束を切断するのに基準よりも強い力が必要である。
1 麺線の束を切断できない。
【0042】
[試験例3] 麺の弾力の評価
上記実施例及び比較例で調製した生麺を10本束ね、この束を両端から引っ張り、10本の麺線すべてを切断するのに要する力を指標にして弾力を評価した。評価数値は3人の専門パネルの評価数値の平均値とした。この弾力は、口中で麺を咀嚼した際に感じる麺の弾力と相関する。
<麺の弾力の評価基準>
5 切断するのにかなり強い力を要する。
4 切断するのに強い力を要する。
3 切断するのにやや強い力を要する。
2 弱い力で切断される。
1 かなり弱い力で切断される。
【0043】
上記各試験例の結果を下表に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
上記表中に記載の原料の入手先ないし含水率について以下に記載する。
小麦粉:特ナンバーワン(商品名、日清製粉社製)、含水率14質量%
そば粉:亀寿雪(商品名、日穀製粉社製)、含水率13.5質量%
デュラム粉:自家製パスタ用小麦粉(商品名、日清フーズ社製)、含水率12.6質量%
【0046】
上記表1に示されるように、麺生地に配合する蒸煮処理小麦ふすまの量が本発明で規定するよりも多いと、麺生地のつながりが悪く、引っ張った際に破断しやすい麺生地となった。結果、麺生地を圧延した際にも生地が破断しやすかった。さらに、この麺生地から得られる麺は弾力に劣っていた(比較例1及び2)。
また、麺生地に未蒸煮処理小麦ふすまを配合したり、小麦ふすまと水とを混練せずに湿熱処理したものを配合したりすると、生地を調製後1時間程度放置しただけで生地の物性が大きく変化し、得られる麺の弾力が大きく低下する結果となった(比較例3及び5)。つまり、麺類の製造において、作業時間をより厳しく制約する必要があることがわかった。
また、小麦ふすまを配合しない場合には、麺線を切断するのに強い力を要し、製麺の作業性に劣る結果となった(比較例4)。
また、ペースト状の小麦ふすまを用いると、麺生地中に小麦ふすまを所望量配合した場合には水分が多量過ぎて麺帯を調製できなかった(比較例6)。また、小麦ふすまペーストの配合量を抑えて麺帯を調製した場合には、麺生地中に小麦ふすまを十分量配合することができず、また、得られる麺生地のつながりが悪く、引っ張った際に破断しやすい性状となった(比較例7)。
【0047】
これに対し、麺生地に蒸煮処理小麦ふすまを本発明で規定する量の範囲内で配合した場合には、麺生地のつながりが良好で圧延特性に優れ、且つ、麺線をハサミで切断した際には弱い力で容易に切断することができた。しかも得られた麺は弾力にも優れていた(実施例1〜12)。また、実施例1〜12では、麺生地を調製した後、しばらく放置しても麺生地の性状に大きな変化は生じず、安定した品質の麺が得られることがわかった。