特許第6774828号(P6774828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774828
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/00 20060101AFI20201019BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   C08J5/00CES
   B65D85/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-183177(P2016-183177)
(22)【出願日】2016年9月20日
(65)【公開番号】特開2018-48230(P2018-48230A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植草 貴行
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/055803(WO,A1)
【文献】 特開2013−169685(JP,A)
【文献】 特開平10−194905(JP,A)
【文献】 特開2001−122346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−5/02;5/12−5/22
A01N 1/00−65/48
A01P 1/00−23/00
B65D 65/00−65/46
B65D 85/00−85/28;85/575
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(I)および(II)を満たす熱可塑性樹脂組成物を含み、
(I)10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる、15℃における貯蔵弾性率と40℃における貯蔵弾性率との比率G’@15℃/G’@40℃が、50以上
(II)JIS K7126−1に準拠し、試験温度40℃および試験湿度0%RHの条件で、酸素透過度(酸素透過係数、単位:cm・mm/(m・24h・atm))が、500以上
前記熱可塑性樹脂組成物は、
4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)および
4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα−オレフィンから導かれる構成単位(ii)を含み、
任意に非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)を含んでもよい
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体であって、
構成単位(i)、(ii)および(iii)の合計を100モル%としたときに、
構成単位(i)を55〜90モル%、
構成単位(ii)を10〜45モル%、
構成単位(iii)を0〜10モル%含む、
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を含有する組成物であり、
温度変化、または伸長および元の形状への変形により、内部の気体状物質を外部に拡散させ状態と、前記気体状物質の拡散を抑制する状態と、の状態変化が可能である、容器。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂組成物の、10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接tanδがピーク値となる温度は、20℃以上40℃以下である、請求項1に記載の容器
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂組成物の、10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接tanδのピーク値は、0.5以上5.0以下である、請求項1または2に記載の容器
【請求項4】
前記熱可塑性組成物の、JIS K7127に準拠して引張速度200mm/分で伸張させた時の引張破断伸びが400%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂組成物は、
前記4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を含む熱可塑性樹脂(A)と、無機フィラー(B)と、を含有する組成物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の容器
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂組成物は、
前記4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を50質量%以上99質量%以下含有し、
無機フィラー(B)を1質量%以上50質量%以下含有する
組成物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の容器
【請求項7】
少なくとも胴部に前記熱可塑性樹脂組成物を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート、フィルムおよび容器に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香剤、ならびに殺虫剤および防虫剤などの気体状物質を比較的遅い速度で少量ずつ容器内部から外部へと拡散する、徐放性の容器が知られている。
【0003】
特許文献1には、容器に設けた多数の細孔から上記気体状物質を少量ずつ放出する、徐放性の容器が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、シリコーンゴムの単層から形成される徐放性の容器が記載されている。特許文献2によれば、ゴムはプラスチックに比べてガスを透過させやすく、特にシリコーンゴムは種々のガスをよく透過させるため、徐放性の容器の材料として好適とされている。
【0005】
一方、4−メチル−1−ペンテン重合体は、嵩高い官能基を有するため、他の熱可塑性オレフィンフィルムに比べて密度が低く、これにより4−メチル−1−ペンテン重合体を含むフィルムは、酸素ガス、炭酸ガス等のガス透過性が高い。特許文献3によれば、4−メチル−1−ペンテン重合体をガス透過性フィルムとして利用した生鮮食品等の包装袋などの開発が進められている。
【0006】
しかしながら4−メチル−1−ペンテン重合体は、融点が高く、離型性があることが知られており、それゆえに4−メチル−1−ペンテン重合体で主に構成されたフィルム(以下、「4−メチル−1−ペンテン系重合体フィルム」と称する場合がある。)は、ヒートシール温度を高くする必要がある上、ヒートシール強度が低い。特許文献4では、4−メチル−1−ペンテン系重合体フィルムに対してヒートシール性を付与する方法して、4−メチル−1−ペンテン系重合体フィルムに、他の熱可塑性樹脂、例えばオレフィン系重合体で構成されたフィルム(以下、「オレフィン系重合体フィルム」と称する場合がある。)を積層した多層フィルムを生鮮食品等の包装袋などにする方法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−107701号公報
【特許文献2】特開平8−155022号公報
【特許文献3】特開平11−301691号公報
【特許文献4】特開2000−189051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜4に記載の容器は、気体状物質が容器内部から外部へ一様に拡散することを前提としている。しかし、人が長期間不在である部屋で芳香剤が拡散しつづけたり、外出から戻った後まで防虫剤が拡散しつづけたりすると、これらの芳香剤や防虫剤は無駄に消費されてしまうことになる。
【0009】
また特許文献3および特許文献4に記載の4−メチル−1−ペンテン重合体では、高耐熱性、離型性であることによるヒートシール温度を高く設定する必要があり、かつヒートシール強度も低くなることに加え、シリコーンゴムのように伸張後に復元するようなゴム弾性を示さないことから、芳香剤や防虫剤の拡散量を制御できないといった課題があった。
【0010】
上記の課題に鑑み、本発明は、気体状物質を容器内部から外部へ拡散させる状態と、気体状物質の拡散を抑制する状態と、を制御できる容器を製造できる熱可塑性儒地組成物を含むシートまたはフィルム、および容器を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、以下の容器に関する。
[1]以下の(I)および(II)を満たす熱可塑性樹脂組成物を含み、
(I)10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる、15℃における貯蔵弾性率と40℃における貯蔵弾性率との比率G’@15℃/G’@40℃が、50以上
(II)JIS K7126−1に準拠し、試験温度40℃および試験湿度0%RHの条件で、酸素透過度(酸素透過係数、単位:cm・mm/(m・24h・atm))が、500以上
前記熱可塑性樹脂組成物は、
4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)および
4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα−オレフィンから導かれる構成単位(ii)を含み、
任意に非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)を含んでもよい
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体であって、
構成単位(i)、(ii)および(iii)の合計を100モル%としたときに、
構成単位(i)を55〜90モル%、
構成単位(ii)を10〜45モル%、
構成単位(iii)を0〜10モル%含む、
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を含有する組成物であり、
温度変化、または伸長および元の形状への変形により、内部の気体状物質を外部に拡散させ状態と、前記気体状物質の拡散を抑制する状態と、の状態変化が可能である、容器。
[2]前記熱可塑性樹脂組成物の、10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接tanδがピーク値となる温度は、20℃以上40℃以下である、[1]に記載の容器
[3]前記熱可塑性樹脂組成物の、10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接tanδのピーク値は、0.5以上5.0以下である、[1]または[2]に記載の容器
[4]前記熱可塑性組成物の、JIS K7127に準拠して引張速度200mm/分で伸張させた時の引張破断伸びが400%以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の容器
[5]前記熱可塑性樹脂組成物は、前記4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を含む熱可塑性樹脂(A)と、無機フィラー(B)と、を含有する組成物である、[1]〜[4]のいずれかに記載の容器
[6]前記熱可塑性樹脂組成物は、前記4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を50質量%以上99質量%以下含有し、無機フィラー(B)を1質量%以上50質量%以下含有する組成物である、[1]〜[5]のいずれかに記載の容器。
]少なくとも胴部に前記熱可塑性樹脂組成物を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の容器。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、気体状物質を容器内部から外部へ拡散させる状態と、気体状物質の拡散を抑制する状態と、を制御できる容器を製造できる熱可塑性儒地組成物を含むシート、および容器が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係るシート、フィルムおよび容器は、以下の(I)および(II)を満たす熱可塑性樹脂組成物を含んで形成される。
(I)10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる、15℃における貯蔵弾性率と40℃における貯蔵弾性率との比率G’@15℃/G’@40℃が、50以上
(II)JIS K7126−1に準拠し、試験温度40℃および試験湿度0%RHの条件で、酸素透過度(酸素透過係数、単位:cm・mm/(m・24h・atm))が、500以上
【0014】
上記熱可塑性樹脂組成物は、加温(たとえば40℃近くへの加温)や変形(たとえば100%伸長)するとガス透過性が高まり、容器内部から外部へ気体状物質を少しずつ拡散させるが、より低温(たとえば15℃近く)や収縮時ではガス透過性が低下し、気体状物質は容器内部から外部へ拡散しにくい。そのため、上記熱可塑性樹脂組成物を含む容器は、加温や変形させたときに容器内部から外部へ気体状物質を拡散させ、加温や変形しないときは気体状物質の拡散を抑制する。
【0015】
1.熱可塑性樹脂組成物
上記貯蔵弾性率の比率(G’@15℃/G’@40℃)が50以上である熱可塑性樹脂は、より低い温度での状態に比べて、加温時に、分子の流動性が十分に高まって気体状物質が通過できる多数の細孔が生じるため、気体状物質を透過させやすくなる。一方で上記熱可塑性樹脂は、通常時は分子の流動性が低く、上記細孔が生じにくいため、気体状物質を透過させにくい。そのため、上記貯蔵弾性率の比率(G’@15℃/G’@40℃)が上記範囲である熱可塑性樹脂組成物は、容器としたときに、加温時に容器内部の気体状物質を拡散させ、常温では容器内部の気体状物質の拡散を抑制する。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物の上記貯蔵弾性率の比率(G’@15℃/G’@40℃)は50以上800以下であることが好ましく、80以上600以下であることがより好ましい。上記貯蔵弾性率の比率(G’@15℃/G’@40℃)に特に上限はないが、800以下であることが好ましい。
【0016】
貯蔵弾性率は、45mm×10mm×3mmの短冊片を測定試料として用い、粘弾性測定装置(たとえば、ANTONPaar社製MCR301)を用いて、10rad/sの周波数で−40〜150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定して求めることができる。
【0017】
また、40℃での酸素透過度(酸素透過係数、単位:cm・mm/(m・24h・atm))が500以上である熱可塑性樹脂は、加温時に十分な量の気体状物質を透過させる。そのため、上記40℃での酸素ガス透過率が上記範囲である熱可塑性樹脂組成物は、容器としたときに、加温時に容器内部の気体状物質を十分に拡散させやすい。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物の上記40℃での酸素ガス透過率は500以上10000以下であることが好ましく、500以上5000以下であることがより好ましい。上記40℃での酸素ガス透過率に特に上限はないが、一時に多量の気体状物質を拡散させずに容器の徐放性を高める観点からは、10000以下であることが好ましい。
【0018】
40℃での酸素ガス透過率(10−11cm(STP)/(cm・s・cmHg)、40℃)は、JIS K7126−1に準拠して、ガス透過率測定装置(例えばMOCON法、差圧法ガス透過率測定装置)を用いて、試験温度40℃及び試験湿度0%RHの条件で、フィルムの測定面積を5cmにして測定して求めることができる。このとき、フィルムの測定面積は、中央部に直径25mmの孔を開けたモダンコトロール社製の粘着剤付きアルミマスクを2枚用意し、この2枚のマスクで、測定対象のフィルムを挟み込むように積層し、調整する。詳細には、フィルムを中央部の孔が2枚のマスクで重なるように配置する。また、このとき、たとえば、試験片の厚さは100μm以上500μm以下、試験室の環境温度は40℃、高圧側の加圧は49Paとすればよい。
【0019】
また、上記熱可塑性樹脂組成物は、10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接tanδがピーク値となる温度が、20℃以上40℃以下であることが好ましい。上記温度が40℃以下である熱可塑性樹脂組成物は、より低い温度での状態に比べて、加温時に、分子の流動性が十分に高まって気体状物質をより透過させやすくなる。一方で上記温度が20℃以上である熱可塑性樹脂組成物は、通常時は分子の流動性が低く、上記細孔がより生じにくいため、気体状物質を透過させにくい。そのため、tanδがピーク値となる温度が上記範囲である熱可塑性樹脂組成物は、容器としたときに、加温時に容器内部の気体状物質を拡散させ、常温では容器内部の気体状物質の拡散を抑制する。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物のtanδがピーク値となる温度は25℃以上40℃以下であることが好ましく、30℃以上40℃以下であることがより好ましい。
【0020】
また、上記熱可塑性樹脂組成物は、上記tanδのピーク値が0.5以上5.0以下であることが好ましい。tanδのピーク値が5.0以下である熱可塑性樹脂組成物は、加温時に、分子の流動性が十分に高まって気体状物質を透過させやすくなる。また、tanδのピーク値が0.5以上である熱可塑性樹脂組成物は、加温時に、分子の流動性が過剰に高まらないため、容器としたときに、一時に多量の気体状物質を拡散させずに容器の徐放性を高めることができる。また、tanδのピーク値が0.5以上である熱可塑性樹脂組成物は、応力吸収性が高いため、使用中の落下などによる容器の破損を抑制できる。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物のtanδのピーク値は0.6以上3.0以下であることが好ましく、0.8以上3.0以下であることがより好ましい。
【0021】
tanδは、上記貯蔵弾性率の測定時に得られる貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)との比(G”/G’:損失正接)から算出することができる。このとき、0〜30℃の範囲でtanδがピーク値(最大値)となる際の温度を、上記tanδがピーク値となる温度とし、その際のtanδの値を上記tanδのピーク値とする。なお、上記ピークは、熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度に起因すると考えられる。
【0022】
また、前記熱可塑性組成物は、JIS K7127に準拠して引張速度200mm/分で伸張させた時の引張破断伸びが400%以上であることが好ましい。引張破断伸びが400%以上である熱可塑性樹脂組成物は、変形しやすく、変形(たとえば100%伸張)したときに分子の流動性がより高まって上記細孔をより生じやすい。そのため、上記引張破断伸びが上記範囲である熱可塑性樹脂組成物は、容器としたときに、伸張によって容器内部の気体状物質を拡散させ、収縮時は容器内部の気体状物質の拡散を抑制する。上記観点からは、熱可塑性樹脂組成物の上記引張破断伸びは400%以上2000%以下であることが好ましく、400%以上1500%以下であることがより好ましい。上記貯蔵弾性率の比率(G’@15℃/G’@40℃)に特に上限はないが、2000%以下であることが好ましい。
【0023】
上記熱可塑性樹脂組成物は、上述した物性を満たすものであれば限定されないが、熱可塑性樹脂(A)と無機フィラー(B)を含有する組成物であることが好ましく、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)と、無機フィラー(B)と、を含有する組成物(以下、単に「4MP1系組成物」ともいう。)とすることがより好ましい。熱可塑性樹脂(A)と無機フィラー(B)を含有する組成物は、伸張時に熱可塑性樹脂(A)と無機フィラー(B)との界面が剥離して、上記細孔を十分に形成することができ収縮時に細孔が閉じることで可逆的にガス透過性を制御することが可能となる。また、4MP1系組成物は、上記物性を充足させやすく、かつ、材料を持つ離型性におり上記界面の剥離による細孔の形成が生じやすい。
【0024】
4MP1系組成物は、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を50質量%以上99質量%以下含有し、無機フィラー(B)を1質量%以上50質量%以下含有する。4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)と無機フィラー(B)との比率が上記範囲だと、加温時に十分な量の細孔が形成されて気体状物質を透過させることができ、かつ、上記細孔の量が多すぎないため一時に多量の気体状物質を透過させずに容器の徐放性を高めることができる。上記観点からは、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の含有量は50質量%以上98質量%以下であることが好ましく、60質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。また、無機フィラー(B)の含有量は2質量%以上50質量%であることが好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
1−1.4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)
1−1−1.4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の構成
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)および4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα−オレフィンから導かれる構成単位(ii)を含む。4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、任意に、非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)を含んでもよい。4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、1種単独で、または2種類以上を組み合せて用いることができる。
【0026】
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、構成単位(i)、構成単位(ii)および構成単位(iii)の合計を100モル%としたときに、構成単位(i)を55モル%以上90モル%以下、構成単位(ii)を10モル%以上45モル%以下、構成単位(iii)を0モル%以上10モル%以下含む。
【0027】
なお、構成単位(i)の割合の下限値は、55モル%であるが、60モル%であることが好ましく、68モル%であることがより好ましい。一方、構成単位(ii)の割合の上限値は、90モル%であるが、86モル%であることが好ましく、84モル%であることがより好ましい。4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)が含む構成単位(ii)の割合が上記下限値以上であると、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)のtanδがピーク値となる温度が室温付近になるため、熱可塑性樹脂組成物のtanδがピーク値となる温度も上述した範囲に調整しやすい。また、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)が含む構成単位(i)の割合が上記上限値以下であると、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)が適度な柔軟性を有するため、熱可塑性樹脂組成物のΔHSを上述した範囲に調整しやすい。
【0028】
当然ながら、このとき、構成単位(ii)の割合の上限値は、45モル%であるが、40モル%であることが好ましく、32モル%であることがより好ましい。一方、構成単位(ii)の割合の下限値は、10モル%であるが、14モル%であることが好ましく、16モル%であることがより好ましい。
【0029】
構成単位(ii)を導くα−オレフィンの例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、および1−エイコセンなどを含む炭素原子数2〜20(好ましくは炭素原子数2〜15、より好ましくは炭素原子数2〜10)の直鎖状のα−オレフィン、ならびに、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、および3−エチル−1−ヘキセンなどを含む炭素原子数5〜20(好ましくは炭素原子数5〜15)の分岐状のα−オレフィンが挙げられる。これらの中でもエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。構成単位(ii)は、これらのうち1つの化合物から導かれてもよいし、2以上の化合物から導かれてもよい。
【0030】
構成単位(iii)を導く非共役ポリエンの例には、1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、8−メチル−4−エチリデン−1,7−ノナジエン、および4−エチリデン−1,7−ウンデカジエンなどを含む鎖状非共役ジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−イソブテニル−2−ノルボルネン、シクロペンタジエン、およびノルボルナジエンなどを含む環状非共役ジエン、ならびに、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン、および4−エチリデン−8−メチル−1,7−ナノジエンなどを含むトリエンなどが含まれる。これらのうち、特に構成単位(ii)を導くα−オレフィンがプロピレンであるときは、架橋効率を高める観点からは、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)が好ましい。構成単位(iii)は、これらのうち1つの化合物から導かれてもよいし、2以上の化合物から導かれてもよい。
【0031】
ただし、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、実質的に構成単位(i)および構成単位(ii)からなることが好ましい。
【0032】
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、以下の要件(a)、(b)および(c)から選ばれる1以上の要件を満たすことが好ましい。
要件(a)
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の、デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]は、0.1dL/g以上5.0dL/g以下であることが好ましく、0.5dL/g以上4.0dL/g以下であることがより好ましく、0.5dL/g以上3.5dL/g以下であるさらに好ましい。上記極限粘度[η]が上記範囲である4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、シートまたはフィルム状の熱可塑性樹脂組成物への成形が容易である。
【0033】
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の上記極限粘度[η]は、重合による製造中に水素を添加して分子量や重合活性を制御して、上記範囲に調整することができる。
【0034】
上記極限粘度[η]は、135℃でデカリン中に異なる量の熱可塑性樹脂組成物を溶解させたときの、それぞれのポリマーの単位濃度cあたりの粘度増加率ηspを求めて還元粘度ηradとし、ηradをポリマーの単位濃度cがゼロになるように外挿して、求めることができる。
【0035】
要件(b)
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(分子量分布:Mw/Mn)は、1.0以上3.5であることが好ましく、1.2以上3.0以下であることがより好ましく、1.5以上2.8以下であることがさらに好ましい。上記Mw/Mnが上記範囲である4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、低分子量、低立体規則性ポリマーによる成形性の低下が生じにくく、シートまたはフィルム状の熱可塑性樹脂組成物への成形が容易である。
【0036】
また、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、500以上10,000,000以上であることが好ましく、1,000以上5,000,000以下であることがより好ましく、1,000以上2,500,000以下であることがさらに好ましい。
【0037】
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)のMw/MnおよびMwは、たとえばメタロセン触媒を使用することで、上記範囲に調整することができる。
【0038】
上記MwおよびMw/Mnは、たとえば、液体クロマトグラフとしてWaters製ALC/GPC 150−C plus型(示唆屈折計検出器一体型)を用い、カラムとして東ソー株式会社製GMH6−HT×2本およびGMH6−HTL×2本を直列接続し、移動相媒体としてo−ジクロロベンゼンを用い、流速1.0ml/分、140℃で測定して得られるクロマトグラムを、標準ポリスチレンサンプルを使用した検量線を用いて解析して、求めることができる。
【0039】
要件(c)
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)のASTM D 1505に準拠して測定される密度は、830kg/m3以上870kg/m3以下であることが好ましく、830kg/m3以上865kg/m3以下であることがより好ましく、830kg/m3以上855kg/m3以下であることがさらに好ましい。上記密度が上記範囲である4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、軽量であるため、持ち運びや取扱いが容易な容器を製造しやすい。
【0040】
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の上記密度は、構成単位(i)〜構成単位(iii)の組成比によって適宜調整することができる。
【0041】
なお、上記要件(a)〜要件(c)に係る極限粘度[η]、Mw/Mn、Mwおよび密度は、上述した熱可塑性樹脂組成物と同様の測定で求めることができる。
【0042】
1−1−2.4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の製造方法
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、上記構成単位(i)〜構成単位(iii)を導くモノマーを、マグネシウム担持型チタン触媒またはメタロセン触媒などの適当な触媒の存在下で重合させて,製造することができる。重合は、溶解重合および懸濁重合などを含む液相重合法、ならびに気相重合法などから適宜選択して行うことができる。
【0043】
液相重合法では、液相を構成する溶媒として不活性炭化水素溶媒を用いることができる。上記不活性炭化水素の例には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、および灯油などを含む脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、およびメチルシクロヘキサンなどを含む脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどを含む芳香族炭化水素、ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、およびテトラクロロメタンなどを含むハロゲン化炭化水素、ならびにこれらの混合物などが含まれる。
【0044】
また、液相重合法では、上記構成単位(i)〜構成単位(iii)を導くモノマー自身を溶媒とする塊状重合とすることもできる。
【0045】
なお、上記構成単位(i)〜構成単位(iii)を導くモノマーの共重合を段階的に行うことにより、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を構成する構成単位(i)〜構成単位(iii)の組成分布を適当に制御することもできる。
【0046】
重合温度は、−50℃以上200℃以下が好ましく、0℃以上100℃以下がより好ましく、20℃以上100℃以下がさらに好ましい。
【0047】
重合圧力は、常圧以上10MPaゲージ圧であることが好ましく、常圧以上5MPaゲージ圧であることがより好ましい。
【0048】
重合の際に、生成するポリマーの分子量や重合活性を制御する目的で水素を添加してもよい。添加される水素の量は、上記構成単位(i)〜構成単位(iii)を導くモノマーの合計量1kgに対して、0.001NL以上100NL以下程度が適当である。
【0049】
1−2.無機フィラー(B)
無機フィラー(B)は、熱可塑性樹脂組成物に添加される無機化合物であればよい。無機フィラー(B)の例には、カーボンブラックまたはグラファイトもしくはシランカップリング剤などにより表面処理が施されたカーボンブラック、微粉ケイ酸、シリカ(煙霧質シリカ、沈降性シリカ、珪藻土および石英などを含む)、アルミナ、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化チタン、三酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化バリウムおよび酸化カルシウムなどを含む酸化物系フィラー、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムなどを含む水酸化物系フィラー、珪酸アルミニウム(クレー)、珪酸マグネシウム(タルク)、マイカ、珪酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズなどを含む珪酸塩系フィラー、珪藻土および石灰岩などを含む堆積岩系フィラー、モンモリロン石(モンモリロンナイト)、マグネシアンモンモリロン石、テツモンモリロン石、テツマグネシアンモンモリロン石、バイデライト、アルミニアンバイデライト、ノントロン石、アルミニアンノントロナイト、サポー石(サポナイト)、アルミニアンサポー石、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、およびベントナイトなどを含む粘土鉱物系フィラー、フェライト、鉄およびコバルトなどを含む磁性系フィラー、銀、金、銅およびこれらの合金などを含む導電性フィラー、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、シリコンカーバイト、窒化ボロンなどが含まれる。
【0050】
これらのうち、シリカ、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウムが好ましく、シリカがより好ましい。シリカは、ヘキサメチルジシラザン、クロロシランおよびアルコキシシランなどを含む反応性シラン、または低分子量のシロキサンなどで表面処理されていてもよい。
【0051】
1−3.その他の成分
上記熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、公知の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0052】
たとえば、熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、結晶核剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、有機充填剤、および軟化剤等の添加剤を含んでもよい。
【0053】
上記軟化剤の例には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルトおよびワセリンなどを含む石油系物質、コールタールおよびコールタールピッチなどを含むコールタール類、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油および椰子油などを含む脂肪油、トール油、蜜ロウ、カルナウバロウおよびラノリンなどを含むロウ類、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−水酸化ステアリン酸、モンタン酸、オレイン酸およびエルカ酸などを含む脂肪酸またはその金属塩、石油樹脂、クマロンインデン樹脂およびアタクチックポリプロピレンなどを含む合成高分子、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートおよびジオクチルセバケートなどを含むエステル系可塑剤、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエンまたはその変性物もしくは水添物、ならびに液状チオコールなどを含む公知の軟化剤が含まれる。
【0054】
前記難燃剤の例には、ポリリン酸アンモニウム、エチレンビストリス(2−シアノエチル)ホスフォニウムクロリド、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド等のリン酸エステル及びその他のリン化合物、塩素化パラフィン、塩素化ポリオレフィン、パークロロシクロペンタデカン等の塩素系難燃剤、ヘキサブロモベンゼン、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビステトラブロモフタルイミド、テトラブロモビスフェノールA誘導体、テトラブロモビスフェノールS、およびテトラブロモジペンタエリスリトール等の臭素系難燃剤、ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0055】
上記その他の添加剤の含有量の合計は、熱可塑性樹脂(たとえば4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1))を100質量部として、0.001質量部以上50質量部以下とすることが好ましい。
【0056】
1−4.熱可塑性樹脂組成物の製造方法
上記熱可塑性樹脂組成物は、公知の方法で製造することができる。たとえば、4MP1系組成物は、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)中に無機フィラー(B)を略均一に分散させて、製造することができる。たとえば、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)、無機フィラー(B)およびその他の添加剤をロールミル、バンバリーミキサーまたは押出機などによって溶融混錬すればよい。容器の製造を容易にする観点からは、上記熱可塑性樹脂組成物は、シートまたはフィルム状に成形してもよい。
【0057】
2.容器
容器は、少なくとも部分的に上記熱可塑性樹脂から形成されればよい。容器の全体が上記熱可塑性樹脂組成物から形成されるときは、容器を一体的に成形できるため容器の製造が容易である。なお、容器の一部が別の材料からなるときは、それぞれの部分を別個に成形し、接着剤、熱融着または超音波融着などによって接合させて、容器を製造してもよい。
【0058】
容器の形状は特に限定されず、三方シール平袋、スタンディングパウチ、ガセット包装袋およびピロー包装袋などの公知の形状のほか、ビン状、アンプル状、袋状および箱状などとすることができる。容器は、自立可能でもよいし、紐などによって提げて保持するものでもよい。これらの形状を有する容器は、上記熱可塑性樹脂組成物から公知の方法で成型することができる。このとき、シートまたはフィルム状の上記熱可塑性樹脂組成物から上記容器を形成してもよいし、上記熱可塑性樹脂を容器状に成形して、容器の一部にシートまたはフィルム状の上記熱可塑性樹脂組成物を含ませてもよい。
【0059】
容器は、芳香剤、ならびに殺虫剤および防虫剤などの物質を内部に保持し、加温したとき、また伸張させるなどして変形させた時に徐放させることができる。上記芳香剤、ならびに殺虫剤および防虫剤などの物質は、気体状でもよいし、気化または昇華可能である限り、固体状または液体状でもよい。上記芳香剤、ならびに殺虫剤および防虫剤などの物質は、容器を形成する上記熱可塑性樹脂組成物またはその他の成分の物性を顕著に変化させない限りにおいて、容器の内部に直接封入されてもよいが、気体透過性を有する他の袋にこれらを入れて、上記袋ごと容器の中に封入してもよい。
【0060】
容器は、ヒーターまたはレンジなどによる加温、人の肌または息などによる加温、および風呂などの湯に浸けるなどによる加温によって、および容器を手で引っ張ることにより、容器内部から外部へ気体状物質を徐放することができる。また、容器は、加温をやめて容器の温度を低下させれば、容器内部から外部への気体状物質の拡散を抑制することができ、伸張させた容器も元の形状に戻ることで気体状物質の拡散も抑制することができる。いずれの方法でも、気体状物質を容器内部から外部へ拡散させる状態と、気体状物質の拡散を抑制する状態と、の制御は容易に行える。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
なお、実施例において共重合体の各種物性は、以下の方法により測定した。
【0063】
〔組成〕
共重合体中の4−メチル−1−ペンテン及びプロピレン(炭素数3のα−オレフィン)の含有率(モル%)は、13C−NMRにより測定した。測定条件は、下記のとおりである。
【0064】
測定装置:核磁気共鳴装置(ECP500型、日本電子(株)製)
観測核:13C(125MHz)
シーケンス:シングルパルスプロトンデカップリング
パルス幅:4.7μ秒(45°パルス)
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:1万回以上
溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(容量比:80/20)混合溶媒
試料濃度:55mg/0.6mL
測定温度:120℃
ケミカルシフトの基準値:27.50ppm
【0065】
〔極限粘度[η]〕
共重合体の極限粘度[η]は、測定装置としてウベローデ粘度計を用い、デカリン溶媒中、135℃で測定した。
【0066】
具体的には、約20mgの粉末状の共重合体をデカリン25mlに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリンを5ml加えて希釈した後、上記と同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作を更に2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位:dl/g)として求めた(下記の式1参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)・・・式1
【0067】
〔重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)〕
共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。測定条件は、下記のとおりである。
【0068】
測定装置:GPC(ALC/GPC 150−C plus型、示差屈折計検出器一体型、Waters製)
カラム:GMH6−HT(東ソー(株)製)2本、及びGMH6−HTL(東ソー(株)製)2本を直列に接続
溶離液:o−ジクロロベンゼン
カラム温度:140℃
流量:1.0mL/min
【0069】
〔メルトフローレート(MFR)〕
共重合体のメルトフローレート(MFR:Melt Flow Rate)は、ASTM D1238に準拠し、230℃で2.16kgの荷重にて測定した。単位は、g/10min)である。
【0070】
〔密度〕
共重合体の密度は、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して、測定した。
【0071】
〔融点(T)〕
共重合体の融点(T)は、測定装置として示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル(株)製)を用いて測定した。
約5mgの共重合体を測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで200℃まで加熱した。共重合体を完全融解させるために、200℃で5分間保持し、次いで、10℃/minで−50℃まで冷却した。−50℃で5分間置いた後、10℃/minで200℃まで2度目の加熱を行なった。この2度目の加熱でのピーク温度(℃)を共重合体の融点(T)とした。
【0072】
〔動的粘弾性〕
動的粘弾性の測定では、厚さ3mmのプレスシートを測定試料として用い、さらに動的粘弾性測定に必要な45mm×10mm×3mmの短冊片を切り出した。ANTONPaar社製MCR301を用いて、10rad/sの周波数で−40〜150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定し、0〜40℃の範囲でガラス転移温度に起因する損失正接(tanδ)がピーク値(最大値)となる際の温度(以下「ピーク値温度」ともいう。)、およびその際の損失正接(tanδ)の値を測定した。
【0073】
〔機械特性(引張破断伸び、引張破断強度、ヤング率〕
厚みが200μmのシートを、幅25mm×長さ100mmのダンベル状に切断したものを試験片として用いた。
JIS K7127(1999)に準拠し、引張試験機(万能引張試験機3380、インストロン製)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度200mm/min、及び温度23℃の条件で、試験片の引張弾性率(YM)(単位:MPa)、引張破断伸び(EL)(単位:%)、および引張破断強度(TS)(単位:MPa)を測定した。
【0074】
〔ガス透過性(酸素透過係数)〕
厚みが100μmのフィルムを、幅30mm×長さ30mmの形状に切断したものを試験片として用いた。JIS K7126−1に準拠し、差圧法ガス透過率測定装置(東洋精機製作所製)を用いて、試験温度23℃及び試験湿度0%RHの条件で、フィルムの測定面積を5cmにして測定した。フィルムの測定面積は、中央部に直径25mmの孔を開けたモダンコトロール社製の粘着剤付きアルミマスクを2枚用意し、この2枚のマスクで、測定対象のフィルムを挟み込むように積層し、調整した。詳細には、フィルムを中央部の孔が2枚のマスクで重なるように配置している。
【0075】
[合成例1]共重合体A−1の合成
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、300mlのn−ヘキサン(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、及び450mlの4−メチル−1−ペンテンを23℃で装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
【0076】
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.19MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
【0077】
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、及び0.01mmolのジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlを、オートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度調整した。
【0078】
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を攪拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。
【0079】
次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、100℃で12時間乾燥させて、44.0gの粉末状の共重合体A−1を得た。
【0080】
得られた共重合体A−1の各種物性の測定結果を表1に示す。
【0081】
共重合体A−1中の4−メチル−1−ペンテンの含有率は84.1mol%であり、プロピレンの含有率は15.9mol%であった。また、共重合体A−1の密度は838kg/mであった。共重合体A−1の極限粘度[η]は1.5dl/gであり、重量平均分子量(Mw)は340,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、メルトフローレート(MFR)は11g/10minであった。共重合体A−1の融点(T)は132℃であった。
【0082】
[合成例2]共重合体A−2の合成
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、300mlのn−ヘキサン(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、及び450mlの4−メチル−1−ペンテンを23℃で装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
【0083】
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.40MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
【0084】
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、及び0.01mmolのジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlを、オートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度調整した。
【0085】
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を攪拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。
【0086】
次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、100℃で12時間乾燥させて、36.9gの粉末状の共重合体A−2を得た。
【0087】
得られた共重合体A−2の各種物性の測定結果を表1に示す。
【0088】
共重合体A−2中の4−メチル−1−ペンテンの含有率は72.5mol%であり、プロピレンの含有率は27.5mol%であった。また、共重合体A−2の密度は839kg/mであった。共重合体A−2の極限粘度[η]は1.5dl/gであり、重量平均分子量(Mw)は337,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、メルトフローレート(MFR)は11g/10minであった。共重合体A−2の融点(T)は観測されなかった。
【0089】
[合成例3]共重合体A−3の合成
国際公開第2006/054613号の比較例7において、4−メチル−1−ペンテンと1−デセンとの割合を変更することによって、共重合体A−3を得た。
【0090】
得られた共重合体A−3の各種物性の測定結果を表1に示す。
【0091】
共重合体A−3中の4−メチル−1−ペンテンの含有率は98.0mol%であり、1−デセンの含有率は2.0mol%であった。また、共重合体A−3の密度は833kg/mであった。共重合体A−3の極限粘度[η]は2.4dl/gであり、メルトフローレート(MFR)は4g/10minであった。共重合体A−3の融点(T)は238℃であった。
【0092】
なお、表1において、「4MP1単位」は4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)を意味し、「AO単位」は4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα−オレフィンから導かれる構成単位(ii)を意味する。
【0093】
【表1】
【0094】
<実施例1>
共重合体A−1 100質量部を、リップ幅240mmのTダイを設置した20mmφの単軸押出機(単軸シート形成機、(株)田中鉄工所製)のホッパーに投入した。そして、シリンダー温度を230℃、ダイス温度を230℃に設定し、Tダイから溶融混練物を厚み200μmで押し出し、キャスト成形することにより、実施例1のフィルムを得た。
【0095】
<実施例2>
共重合体A−1 40質量部と、共重合体A−2 60質量部と、を混合(ドライブレンド)したこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2のフィルム(厚み:200μm)を得た。
【0096】
<実施例3>
共重合体A−1 40質量部と、共重合体A−2 60質量部と、炭酸カルシウムB−1 30質量部を二軸押出機(サーモプラスチックス(株)製)で混合し、得られた組成物のペレットを実施例1と同様の方法により成形して、実施例3のフィルム(厚み:200μm)を得た。
【0097】
<比較例1>
共重合体A−3 100質量部用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により成形して、比較例1のフィルム(厚み:200μm)を得た。
【0098】
【表2】
【0099】
表2から分かるとおり、上述した(i)(ii)を満たす実施例の4−メチル−1−ペンテン重合体および4−メチル−1−ペテン重合体と無機フィラーとの組成物から得られたシートでは貯蔵弾性率の温度依存性を示すG’@15℃/G’@40℃が高く設定することができる。これにより、柔軟性及びガス透過性の制御が可能になる。一方比較例1では、貯蔵弾性率の温度依存性と引張破断伸びが低いため、温度や伸張でガス透過性を制御することは困難となる。