(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774835
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】モールドベース、モールドベース装置及び樹脂モールド装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/32 20060101AFI20201019BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20201019BHJP
B29C 43/36 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
B29C45/32
B29C43/18
B29C43/36
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-198029(P2016-198029)
(22)【出願日】2016年10月6日
(65)【公開番号】特開2018-58285(P2018-58285A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】木田 健司
(72)【発明者】
【氏名】東福寺 茂幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寿
(72)【発明者】
【氏名】中山 英雄
【審査官】
正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−056150(JP,A)
【文献】
特開2010−094931(JP,A)
【文献】
特開平07−256700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 43/00−43/58
B29C 45/12
B29C 45/13
B29C 45/32
B29C 45/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定プラテンと可動プラテンがタイバーにより連結された型締め空間を有するプレス機構に着脱可能に搭載されるモールドベースであって、
前記固定プラテンに積層配置された第一ベースプレートと前記可動プラテンに積層配置された第二ベースプレートと、前記第一ベースプレートと前記第二ベースプレートとの間に中間ベースプレートを有し、前記第一ベースプレートに固定された複数の第一ガイドポストが前記中間ベースプレートを貫通して延設され前記第二ベースプレートに固定された第二ガイドポストが前記第一ガイドポストと近接して前記中間ベースプレートを貫通して互いに平行に延設されてベースプレート間に上下一対の空間部が形成され、各ベースプレートの対向面にモールド金型が各々支持される積層金型用ベースプレートを備え、前記中間ベースプレートに対して前記第一ベースプレート及び前記第二ベースプレートを相対的に等距離で接離動させる差動機構が組み付けられていることを特徴とするモールドベース。
【請求項2】
前記差動機構は、第一ベースプレートに設けられた第一ラック部と第二ベースプレートに設けられた第二ラック部とが、前記第一ベースプレートと第二ベースプレートとの間に設けられた中間ベースプレートに回転可能に支持されたピニオンギヤと各々噛み合っているラックピニオン機構を備えている請求項1記載のモールドベース。
【請求項3】
固定プラテンと可動プラテンがタイバーにより連結された型締め空間を有するプレス機構に請求項1又は請求項2のいずれか1項記載のモールドベースが着脱可能に搭載され、積層配置された複数のベースプレートの対向面にモールド金型が各々挿抜可能に設けられていることを特徴とするモールドベース装置。
【請求項4】
一方の固定プラテンに支持された第一ベースプレートと、前記一方の固定プラテンと前記可動プラテンとの間に設けられた中間ベースプレートとで各々金型が支持されてなる第一モールド金型と、
前記中間ベースプレートと前記可動プラテンに支持された第二ベースプレートとで各々金型が支持されてなる第二モールド金型と、を具備し、
前記差動機構は、前記可動プラテンの昇降動作に連動して前記中間ベースプレートに対して前記第一ベースプレートと前記第二ベースプレートを相対的に等距離で接離動させる請求項3記載のモールドベース装置。
【請求項5】
前記ベースプレートに支持される金型が圧縮成型用金型を含む請求項3又は請求項4記載のモールドベース装置。
【請求項6】
一方の固定プラテンと他方の固定プラテンとが可動プラテンを介してタイバーにより連結されて一対の型締め空間を有し、前記他方の固定プラテンに前記可動プラテンを昇降させる型開閉機構を具備したプレス機構に、前記一方の固定プラテンと前記可動プラテンとの間の型締め空間に請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載のモールドベース装置が挿抜可能に組み付けられ、前記型開閉機構によって前記可動プラテンを昇降させることで積層配置された複数のモールド金型の開閉動作が同期を取って行われることを特徴とする樹脂モールド装置。
【請求項7】
前記一方の固定プラテンに支持された第一ベースプレートと、前記一方の固定プラテンと前記可動プラテンとの間に設けられた中間ベースプレートとの対向面に各々金型が支持されてなる第一モールド金型と、
前記中間ベースプレートと前記可動プラテンに支持された第二ベースプレートとの対向面に各々金型が支持されてなる第二モールド金型と、
前記他方の固定プラテンに支持され、前記可動プラテンを昇降させることで積層配置された前記第一モールド金型及び前記第二モールド金型の開閉動作を行なう型開閉機構と、を具備し、
前記差動機構は、前記可動プラテンの昇降動作に連動して前記中間ベースプレートに対して前記第一ベースプレートと前記第二ベースプレートを相対的に等距離で接離動させる請求項6記載の樹脂モールド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のベースプレートが積層配置されたモールドベース、そのモールドベースに複数のモールド金型が挿抜可能に積層配置されたモールドベース装置及びモールドベース装置をプレス機構に備えた樹脂モールド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や電子部品を有するワークを熱硬化性樹脂にて樹脂封止する場合に、従来はトランスファ成形が行われていたが、近年圧縮成形も行われるようになっている。圧縮成形は被成形品であるワークを金型で挟みキャビティ内の樹脂を加熱加圧させて成形するため、複数枚のワークを平面に配置させて圧縮成形金型で成形した場合に、挟み込むワークの厚さ及び投入したキャビティ内の樹脂量の増減により金型若しくは加圧プレスが傾くという現象が起き易く、複数枚取り用の金型で圧縮成形することが困難であった。このため、圧縮成形でトランスファ成形と同様に1回のプレス動作で複数枚取り成形を行う場合の生産性を上げるために、1つのプレスに圧縮成形金型を上下に積層して樹脂モールドする方法が考えられている。例えば樹脂を、圧縮成形金型を上下に積層して、2つの圧縮成形金型を型開閉機構としてラックピニオン機構を可動プラテンの外側に設けることで、圧縮成形金型を併設する場合に比べて装置の設置スペースを縮小して効率良く型締めすることができる圧縮成形装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、第1成形型と第2成形型を積層配置した構成において、第1上型を固定し、第1下型と第2上型を中間プレートに固定し、第2下型をスライドプレートに固定し、当該スライドプレートの下方に設けたトグルリンク機構によって、中間プレートの移動量Lに対してスライドプレートの移動量nLとすることで、第1,第2成形型に所要の型締め力を加える圧縮成形装置が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−94931号公報
【特許文献2】特開2015−100985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧縮成形金型を上下に積層し、上下の金型が同時成形を実行できないと成形時間の差から上下の金型による成形品に成形品質のばらつきが発生するため、上下の金型を同時に成形する必要がある。また、仮に2プレスで上下金型を同時に成形する場合は、中間プレートを固定として上プレスと下プレスを同時に対向させて可動とする方法もあるが、2プレスを必要となるため機構が煩雑になるし、コスト高にもなり、上下で独立に開閉動作を行うため、同時成形することも困難である。また1プレスで上下の金型を同時に成形するとすれば、上金型領域と下金型領域を同時に型締めする機構が必要になる。この場合、新たな圧縮成形専用のプレスを必要としていたため、既存の1枚取り圧縮成形用プレス装置や、トランスファ成形用プレス装置が有効に活用できていなかった。
特許文献1に設けられた型開閉機構に設けられたラックピニオン機構は、上金型と下金型が同時に型締めするための専用のプレス機構であり、ラックピニオン機構が中間プレートに軸支され、ピニオンを挟んでポストとスライドプレートにあるラックで挟むことで、スライドプレートを移動量2だけ上昇することにより中間プレートが移動量1だけ動くようになっている。
【0006】
また、特許文献2のように、下部固定盤とスライドプレート及び中間プレートとボールねじとを各々連結する専用のリンク部材を設けるとすれば、プレス装置専用のリンク機構が必要になるうえに、トグルリンク機構の構成が複雑であり、小型のリンク機構で2対1の正確な動作を行うための調整が煩雑で調整に時間がかかり製造コストが嵩む。
【0007】
本発明の目的は上記従来技術の課題を解決し、省スペースに積層配置された複数のモールド金型の型開閉動作を簡易な構成で同時に実現できるモールドベース、モールドベースに複数のモールド金型を挿抜可能に設けられた組立性の良いモールドベース装置及び既存のプレス機構にモールドベース装置を搭載することで安価に生産性を向上させることができる樹脂モールド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため
、次の構成を備える。
即ち、モールドベースにおいては、
固定プラテンと可動プラテンがタイバーにより連結された型締め空間を有するプレス機構に着脱可能に搭載されるモールドベースであって、前記固定プラテンに積層配置された第一ベースプレートと前記可動プラテンに積層配置された第二ベースプレートと、前記第一ベースプレートと前記第二ベースプレートとの間に中間ベースプレートを有し、前記第一ベースプレートに固定された複数の第一ガイドポストが前記中間ベースプレートを貫通して延設され前記第二ベースプレートに固定された第二ガイドポストが前記第一ガイドポストと近接して前記中間ベースプレートを貫通して互いに平行に延設されてベースプレート間に上下一対の空間部が形成され、各ベースプレートの対向面にモールド金型が各々支持される積層金型用ベースプレートを備え、
前記中間ベースプレートに対して前記第一ベースプレート及び前記第二ベースプレートを相対的に等距離で接離動させる差動機構が組み付けられていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれ
ば、差動機構によって隣接するベースプレートどうしを相対的に等距離で接離動させて、複数のモールド金型の同期を取って型開閉させることができる。よって、
第一ベースプレートと中間ベースプレートの対向面、中間ベースプレートと第二ベースプレートの対向面に各々支持されて積層配置された一対のモールド金型の型開閉動作を簡易な構成で同時に実現することができる。また、第一ガイドポスト及び第二ガイドポストは近接して中間ベースプレートを貫通して延設されているため、ベースプレート間の上下一対の空間部に配置される複数のモールド金型の平行度を維持して型開閉動作を実現することができる。
【0011】
前記差動機構は、第一ベースプレートに設けられた第一ラック部と第二ベースプレートに設けられた第二ラック部とが、前記第一ベースプレートと第二ベースプレートとの間に設けられた中間ベースプレートに回転可能に支持されたピニオンギヤと各々噛み合っているラックピニオン機構を備えていてもよい。
これにより、第一ベースプレートと中間ベースプレート、中間ベースプレートと第二ベースプレートとを相対的に等距離で接離動させて、積層配置された一対のモールド金型の型開閉動作を簡易な構成で同時に行なうことができる。
【0012】
モールドベース装置においては、固定プラテンと可動プラテンがタイバーにより連結された型締め空間を有するプレス機構に、上述したモールドベースが着脱可能に搭載され、積層配置された複数のベースプレートの対向面にモールド金型が各々挿抜可能に設けられていることを特徴とする。
これにより、プレス機構の型締め空間に複数のモールド金型を備えたモールドベース装置をセットする前に、当該モールドベース装置をトライプレス(プレス試験機)に載せられるため、事前に積層金型用ベースプレート及びモールド金型の調整(移動量や平行度等の調整)が容易に行える。
【0013】
また、一方の固定プラテンに支持された第一ベースプレートと、前記一方の固定プラテンと前記可動プラテンとの間に設けられた中間ベースプレートとで各々金型が支持されてなる第一モールド金型と、前記中間ベースプレートと前記可動プラテンに支持された第二ベースプレートとで各々金型が支持されてなる第二モールド金型と、を具備し、前記差動機構は、前記可動プラテンの昇降動作に連動して前記中間ベースプレートに対して前記第一ベースプレートと前記第二ベースプレートを相対的に等距離で接離動させるようにしてもよい。これにより、積層配置された第一モールド金型及び第二モールド金型の型開閉動作を簡易な構成で同時に行なうことができる。
【0014】
前記モールドベース装置に支持される金型は圧縮成型用金型を含んでいてもよい。これにより、ワークの種類により金型を使い分けて(圧縮成形用金型若しくはトランスファ成形用金型又はこれらの併用)、1回のモールド動作で生産性を向上させたり、多品種生産を実現させたりすることができる。
【0015】
樹脂モールド装置においては、一方の固定プラテンと他方の固定プラテンとが可動プラテンを介してタイバーにより連結されて一対の型締め空間を有し、前記他方の固定プラテンに前記可動プラテンを昇降させる型開閉機構を具備したプレス機構に、前記一方の固定プラテンと前記可動プラテンとの間の型締め空間に上述したいずれかのモールドベース装置が挿抜可能に組み付けられ、前記型開閉機構によって前記可動プラテンを昇降させることで積層配置された複数のモールド金型の開閉動作が同期を取って行われることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、既存のプレス機構にモールドベース装置を入れ替えるだけで、複数のモールド金型を用いた積層プレスを実現することができ、安価な設備投資で生産性を向上させることができる。モールドベース装置は予め金型調整しておくことで、樹脂モールド装置の組立時間を短縮することができる。
【0017】
前記一方の固定プラテンに支持された第一ベースプレートと、前記一方の固定プラテンと前記可動プラテンとの間に設けられた中間ベースプレートとの対向面に各々金型が支持されてなる第一モールド金型と、前記中間ベースプレートと前記可動プラテンに支持された第二ベースプレートとの対向面に各々金型が支持されてなる第二モールド金型と、前記他方の固定プラテンに支持され、前記可動プラテンを昇降させることで積層配置された前記第一モールド金型及び前記第二モールド金型の開閉動作を行なう型開閉機構と、を具備し、前記差動機構は、前記可動プラテンの昇降動作に連動して前記中間ベースプレートに対して前記第一ベースプレートと前記第二ベースプレートを相対的に等距離で接離動させるようにしてもよい。
これにより、可動プラテンを昇降させることで各ベースプレートの対向面に支持され省スペースに積層配置された第一モールド金型及び第二モールド金型を簡易な構成で同時に型開閉動作を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
上記構成によれば、省スペースに積層配置された複数のモールド金型の型開閉動作を簡易な構成で同時に実現できるモールドベースを提供することができる。
また、モールドベースに複数のモールド金型を挿抜可能に設けられた組立性の良いモールドベース装置を提供することができる。
また、モールドベース装置は、既存のプレス機構の型締め空間に挿抜可能に搭載することができるため、安価な設備投資でモールド製品の生産性を向上させることができる。
更に、樹脂モールド装置に複数のモールド金型をセットする前にモールドベース装置ごとトライプレスに載せられるため、事前に複数のモールドベース及び複数のモールド金型の金型調整が容易であり、樹脂モールド装置の組立時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】ワーク搬入前の樹脂モールド装置の斜視図である。
【
図2】ワーク搬入後の樹脂モールド装置の斜視図である。
【
図3】モールド金型クランプ状態の樹脂モールド装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る樹脂モールド装置の好適な実施の形態について添付図面を参照して詳述する。樹脂モールド装置は、一例として下型キャビティの圧縮成形装置について説明するものとするが、上型キャビティの圧縮成形装置であって良い。ワークは、基板、プレート、半導体ウエハ等様々なものが用いられる。
【0021】
[実施例1]
図1を参照すると矩形状の上固定プラテン1と矩形状の下固定プラテン2が四隅に設けられたタイバー3によって各々連結されている。タイバー3には可動プラテン4が昇降可能に連繋して設けられている。可動プラテン4は、型開閉機構5によって、タイバー3にガイドされながら昇降するようになっている。上固定プラテン1と下固定プラテン2との間には、可動プラテン4に仕切られた一対の型締め空間が形成されている。型開閉機構5は、駆動源であるサーボモータ5aによりねじ軸5bを正逆回転駆動するようになっている。このねじ軸にねじ嵌合するナット部(図示せず)を介して可動プラテン4が昇降するようになっている。
【0022】
図6は既存のプレス機構の上固定プラテン1と可動プラテン4間に挿入され、それぞれのプラテンに支持することが可能なモールドベース装置21であって、プレス機構より取り出した状態を示す。モールドベース装置21は後述するように積層配置されたn枚(nは3以上の整数)のベースプレートを備え、各ベースプレートの対向面に各々モールド金型が挿抜可能に支持される積層金型用ベースプレート22を備えている。尚、積層金型用ベースプレート22は、
図6に示す各ベースプレートから第一モールド金型6及び第二モールド金型9を除いた部分を指すものとする。
【0023】
第一モールド金型6は、第一ベースプレート8と中間ベースプレート7との対向面に各々支持されている(第一の空間部)。具体的には、
図6に示すように、第一上型6aは上固定プラテン1の下面に設けられた上ベースプレート8に固定されている。第一下型6bは、中間ベースプレート7の上面に固定されている。中間ベースプレート7上には、第一下型ブロック6cが設けられている。この第一下型ブロック6c上には、第一下型キャビティ6gの底部を形成する第一下型キャビティ駒6dが設けられている。第一下型ブロック6c上であって第一下型キャビティ駒6dの周囲には、第一下型キャビティ6gの側部を形成する環状の第一下型クランパブロック6eが第一コイルばね6fを介してフローティング支持されている。
【0024】
また、第二モールド金型9は、中間ベースプレート7と第二ベースプレート10との対向面に各々支持されている(第二の空間部)。具体的には、
図6に示すように、第二上型9aは、中間ベースプレート7の下面に固定されている。第二下型9bは、可動プラテン4に支持された第二ベースプレート10の上面に支持されている。第二ベースプレート10上には、第二下型ブロック9cが設けられている。第二下型ブロック9c上には、第二下型キャビティ9gの底部を形成する第二下型キャビティ駒9dが設けられている。第二下型ブロック9c上であって第二下型キャビティ駒9dの周囲には、第二下型キャビティ9gの側部を形成する環状の第二下型クランパブロック9eが第二コイルばね9fを介してフローティング支持されている。
【0025】
図6において、矩形状の上型ベースプレート8の四隅近傍には上型ガイドポスト11が各々垂下して固定されている。各上型ガイドポスト11の先端側は、中間ベースプレート7を貫通して第二モールド金型9側に延設されている。また、矩形状の第二ベースプレート10の四隅には下型ガイドポスト12が各々立設されている。各下型ガイドポスト12の先端側は中間ベースプレート7を貫通して第一モールド金型6側に延設されている。即ち、
図8に示すように、上型ガイドポスト11と下型ガイドポスト12とは、中間ベースプレート7の四隅位置で互いに平行に近接して貫通するように設けられている(
図8参照)。
【0026】
差動機構は、いずれかのベースプレートに設けられ、隣接するベースプレートどうしを相対的に等距離で接離動させる。
図6において、差動機構13は、上型ガイドポスト11と下型ガイドポスト12とが重なり合う第二モールド金型9側に複数箇所(
図1では4箇所)であって、中間ベースプレート7の投影面積内に設けられている。差動機構13は、後述するように型開閉機構5の型開閉動作に連動して中間ベースプレート7に対して第一ベースプレート8と第二ベースプレート10とを相対的に等距離で接離動させる。言い換えると、第一ベースプレート8を基準として相対的に中間ベースプレート7が移動量1動くのに対して、第二ベースプレート10が移動量2だけ動くという、1対2で動く関係を差動機構13が行っているものである。このように二層のモールド金型が重ねて配置される積層金型用ベースプレート22内に差動機構13が組み込まれている。
【0027】
具体的には、
図7に示すように、第一ガイドポスト11の先端側外周面には第一ラック部13aが長手方向に沿って各々設けられている。また、同コーナーにある第二ガイドポスト12の第一ガイドポスト11と対向する外周面には、第二ラック部13bが長手方向に沿って各々設けられている。第一ガイドポスト11及び第二ガイドポスト12の外周面は面取りされており、該面取りされた対向面に第一ラック部13aと第二ラック部13bが対向して配置されている。また、中間ベースプレート7の下面にはピニオンポスト14が垂下して設けられており、その先端には枠体16が設けられている。枠体16内にはピニオンブロック15が長手方向両側に設けられたコイルばね15a(弾性体)によって挟み込まれて保持されている。ピニオンブロック15にはピニオンギヤ13cが回転可能支持されている。ピニオンギヤ13cは、枠体16より歯面が露出しており、180度位相が異なる位置で第一ラック部13a及び第二ラック部13bと各々噛み合っている。
尚、ピニオンブロック15には、ピニオンギヤ13cを各々回転駆動するサーボモータが設けられていてもよい。この場合、各サーボモータにより第一ベースプレート8と第二ベースプレート10の間隔を微調整することができ、より平行度を出すことができる。
【0028】
差動機構13は、第一ベースプレート8が固定され、型開閉機構5が作動して第二ベースプレート10が移動量2だけ上昇(移動)するのに対して、中間プレート7が移動量1だけ上昇(移動)することができるようになっている。これにより、中間ベースプレート7に対する第一ベースプレート8と第二ベースプレート10の相対的移動量を1対1として、第一モールド金型6と第二モールド金型9の型開閉動作を同時に行なうことができる。
【0029】
ここで、樹脂モールド装置の樹脂モールド動作について
図1〜
図5を参照して説明する。先ず、
図1において、図示しないローダーによりワークWおよび樹脂Rを型開きした第一モールド金型6及び第二モールド金型9に搬入する。具体的には、ワークWは第一上型6a及び第二上型9aに各々吸着保持させる。また、樹脂RはフィルムFに供給した状態で第一下型6b及び第二下型9bの下型キャビティ9gに搬入する。フィルムFは第一下型6b及び第二下型9bに吸着保持される。ワークW及び樹脂Rの第一モールド金型6及び第二モールド金型9への搬入後の状態を
図2に示す。このとき、
図4に示すように、差動機構13は、ピニオンギヤ13c(
図7参照)が第一ラック部13aの下端と第二ラック部13bの上端とで各々噛み合った位置にある。
【0030】
フィルムFは、耐熱性を有するもので、金型面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するもの、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEPフィルム、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリジン等を主成分とした単層膜又は複層膜が好適に用いられる。
【0031】
図3に示すように、型開閉機構5を作動させて可動プラテン4を上昇させると第一モールド金型6及び第二モールド金型9が共に型閉じ動作を行なう。このとき、
図5に示すように、第二ベースプレート10に立設された下型ガイドポスト12も上昇し中間ベースプレート7を貫通して第一モールド金型6側へ突出する突出量が増える(上方移動量2)。また、第一ベースプレート8に垂下して支持された上型ガイドポスト11も相対的に下降し、中間ベースプレート7を貫通して第二モールド金型9側へ突出する突出量が増える(下方移動量1)。よって、中間ベースプレート7に支持された差動機構13のピニオンギヤ13c(
図7参照)は、第一ラック部13aと第二ラック部13bに挟まれて回転することで、同時に同速度でそれぞれ反対方向に移動する。そして、中間ベースプレート7を介して設けられた第一モールド金型6と第二モールド金型9の相対的移動量は1対1となるので、ワークW及び樹脂Rが同時にクランプされて圧縮成形が行われる。
【0032】
上記構成によれば、モールドベース装置21は型開閉機構5により型開閉動作を行なうと、差動機構13によって、中間ベースプレート7に対して第一ベースプレート8と第二ベースプレート10を相対的に等距離で接離動させることができる。よって、一対の固定プラテン1,2間をタイバー3によって連結された既存のプレス装置を用いて、省スペースでかつ簡易な構成で第一モールド金型6及び第二モールド金型9の開閉動作を同時に実現することができる。
【0033】
[実施例2]
次に、モールドベース装置21に備えた差動機構13の他の構成について
図8乃至
図12を参照して説明する。なお、積層金型用ベースプレート22を構成する第一ベースプレート8と第二ベースプレート10を相対的に等距離で接離動させるためであれば良いので、差動機構13は
図8に示すようにタイバー3間の積層金型用ベースプレート22の側面であれば、どこに存在しても良い。
【0034】
図9の模式図に示すように、ピニオンギヤ13cを中間ベースプレート7に回転軸を中心に回転可能に固定するようにしてもよい。第一ベースプレート8の側面に垂下した第一ラック部13aと第二ベースプレート10の側面に立設した第二ラック部13bは、ピニオンギヤ13cに180度位相が異なる位置で噛み合っている。この場合にも、可動プラテン4の上昇により第二ベースプレート10が移動量2上昇すると、ピニオンギヤ13cと噛み合う第一ベースプレート8が固定されているため、中間ベースプレート7が移動量1だけ上昇する。この結果、第一モールド金型6と第二モールド金型9を同時に開閉することができる。また、
図9には記載していないが、
図8に記載されているように、実施例1と同様の第一ガイドポスト11と第二ガイドポスト12が設けられている。
【0035】
[実施例3]
図10にモールドベース装置21に備えた差動機構13の他例にかかる模式図を示す。第二ベースプレート10にはねじ軸23が回転可能に立設されている。ねじ軸23は、中間ベースプレート7とナット部7aを介してねじ嵌合し、第一ベースプレート8とナット部8aを介して各々ねじ嵌合している。ナット部7aは中間ベースプレート7に、ナット部8aは第一ベースプレート8に各々固定されている。ねじ軸23は第一モールド金型6(第一上型6a及び第一下型6b)とねじ嵌合する部分の山ピッチと、第二モールド金型9(第二上型9a及び第二下型9b)とねじ嵌合する部分の山ピッチが1対2で形成されており、ねじ軸23が1回転することにより、移動量が2対1となるように構成されている。
【0036】
また、第一ベースプレート8よりねじ軸23が上方に延設されるため、上固定プラテン1にねじ軸23の上端部が入り込む為の凹部または貫通孔が設けられている。また、図面には特に記載していないが、実施例1と同様に第一ベースプレート8には第一ガイドポスト11が、第二ベースプレート10には第二ガイドポスト12が各々立設されている(
図8参照)。ねじ軸23による開閉機構により、第一モールド金型6と第二モールド金型9が常に相対的に等速で開閉できるねじ軸機構であれば、どのようなねじ軸機構でも良い。
【0037】
[実施例4]
図11にモールドベース装置21に備えた差動機構13の他例にかかる模式図を示す。本実施例も
図11には特に記載していないが、実施例1と同様に第一ベースプレート8には第一ガイドポスト11が、第二ベースプレート10には第二ガイドポスト12が各々立設されている(
図8参照)。差動機構13は、第一ベースプレート8と中間ベースプレート7との間に第一中間移動プレート17が平行に設けられている。第一ベースプレート8と第一中間移動プレート17との間及び第一中間移動プレート17と中間ベースプレート7との間は、複数の平行リンク19で連結されている。また、中間ベースプレート7と第二ベースプレート10との間に第二中間移動プレート18が平行に設けられている。中間ベースプレート7と第二中間移動プレート18との間及び第二中間移動プレート18と第二べースプレート10との間は複数の平行リンク20で連結されている。
【0038】
これにより、第一モールド金型6は第一中間移動プレート17を中心に開閉動作し、第二モールド金型9は第二中間移動プレート18を中心に開閉動作が同時に行われるので、第一モールド金型6及び第二モールド金型9を、平行リンク19,20を介して同時に開閉することができる。平行リンク機構により、第一モールド金型6と第二モールド金型9が常に等速で開閉できるリンク機構であれば、どのようなリンク機構でも良い。
【0039】
尚、また、中間ベースプレート7を介して第一モールド金型6と第二モールド金型9が1セットずつ搭載されるため、各々独立して交換することができる。
上述した実施例は、第一モールド金型6及び第二モールド金型9がともに下型キャビティが形成される圧縮成形用の金型を用いた場合について説明したが、上段及び下段共に上型キャビティが形成される金型であってもよい。
また、上段の金型と下段の金型とで、上型キャビティが形成される圧縮成形用の金型と下型キャビティが形成される圧縮成形用の金型を別に有していてもよい。また、上段の金型と下段の金型は共にトランスファ成形用の金型であってもよいし、トランスファ成形用の金型と圧縮成形用の金型であってもよい。
【0040】
また、ワークWは半導体製品のモールドの他に、熱硬化性樹脂を用いる電子部品の成形に用いてもよい。またモールド金型のタイプは、縦型プレスでも横型プレスでもいずれでもよい。また、積層金型用ベースプレート22は固定プラテン1と可動プラテン4にボルト固定されているが、上型ガイドポスト11及び下型ガイドポスト12があるため、フリーシャンクによる接続であっても良い。
【0041】
また、ガイドポスト11,12は積層方向両端のベースプレート8,10に各々固定されていたが、いずれか1枚のベースプレートに固定し、他の2枚のベースプレートをガイド可能に連繋する構成としても良い。この場合は、上固定プラテン1又は可動プラテン4にガイドポスト用の逃げ孔を設ければ良い。
【0042】
また、本実施例は、3枚のベースプレートに第一モールド金型6と第二モールド金型9を積層配置可能なモールドベース、モールドベース装置、樹脂モールド装置について例示したが、これに限定されるものではない。
例えば、モールドベースに用いられるベースプレートを3枚より多く例えば4枚以上設けることで3以上に形成される空間部にモールド金型を3層以上で積層配置する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 上固定プラテン 2 下固定プラテン 3 タイバー 4 可動プラテン 5 型開閉機構 5a サーボモータ 5b,23 ねじ軸 6 第一モールド金型 6a 第一上型 6b 第一下型 6c 第一下型ブロック 6d 第一下型キャビティ駒 6e 第一下型クランパブロック 6f 第一 コイルばね 6g 第一下型キャビティ 7 中間ベースプレート 8 第一ベースプレート 9 第二モールド金型 9a 第二上型 9b 第二下型 9c 第二下型ブロック 9d 第二下型キャビティ駒 9e 第二下型クランパブロック 9f 第二コイルばね 9g 第二下型キャビティ 10 第二ベースプレート 11 上型ガイドポスト 12 下型ガイドポスト 13 差動機構 13a 第一ラック部 13b 第二ラック部 13c ピニオンギヤ 14 ピニオンポスト 15 ピニオンブロック W ワーク R 樹脂 16 枠体 17 第一中間移動プレート、18 第二中間移動プレート 19,20 平行リンク 21 モールドベース装置 22 積層金型用ベースプレート