特許第6774837号(P6774837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774837
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】土壌の比抵抗測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20201019BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   G01R27/02 E
   G01N27/06 Z
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-209124(P2016-209124)
(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-72052(P2018-72052A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 忠
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−183434(JP,A)
【文献】 特開平11−248664(JP,A)
【文献】 特開2013−083606(JP,A)
【文献】 特開2000−046510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/00−27/32
G01N 27/00−27/10
G01N 27/14−27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌の比抵抗を測定するために用いる比抵抗測定装置であって、
土壌中に挿入可能な測定フレーム体を有し、
測定フレーム体に複数の第1電極と複数の第2電極とが設けられ、
これら第1電極と第2電極とはそれぞれ測定フレーム体の挿入方向において縦列に並べられているとともに、測定フレーム体の挿入方向を横切る方向において、間隔をあけて対向しており、
測定フレーム体の挿入方向において隣同士である一対の第1電極間の電流と電位差と間隔をそれぞれI、V、Dとし、
測定フレーム体の挿入方向において隣同士である一対の第2電極間の電流と電位差と間隔をそれぞれI、V、Dとし、
対向する第1電極と第2電極との間の電流と電位差と間隔をそれぞれI、V、Dとすると、
第1の比抵抗値=2×π×D×(V/I
第2の比抵抗値=2×π×D×(V/I
第3の比抵抗値=4×π×D×(V/I
という換算式に基づいて比抵抗値を求めることが可能であることを特徴とする比抵抗測定装置。
【請求項2】
土壌の比抵抗を測定するために用いる比抵抗測定装置であって、
土壌中に挿入可能な測定フレーム体を有し、
測定フレーム体に第1電極と第2電極とが設けられ、
第1電極と第2電極とは、測定フレーム体の挿入方向を横切る方向において、間隔をあけて対向しており、
対向する一対の第1電極と第2電極との間の電流と電位差とに基づいて比抵抗値を測定可能であり、
対向する第1電極と第2電極との間に挟まれている土壌を湿潤状態にする水分供給部材が測定フレーム体に設けられていることを特徴とする比抵抗測定装置。
【請求項3】
第1〜第3の比抵抗値のうちの最小の比抵抗値を選択可能に構成されていることを特徴とする請求項記載の比抵抗測定装置。
【請求項4】
測定フレーム体は一対の対向するフレームを有し、
複数の第1電極が、一方のフレームに、測定フレーム体の挿入方向において縦列に並べられて設けられ、
複数の第2電極が、他方のフレームに、測定フレーム体の挿入方向において縦列に並べられて設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の比抵抗測定装置。
【請求項5】
測定フレーム体が比抵抗測定器に備えられ、
比抵抗測定器が抵抗計に接続されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の比抵抗測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌の比抵抗を測定する比抵抗測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された鉄等の金属製の管の腐食は、一般に、腐食電流回路が形成されることにより、腐食が促進されると考えられる。土壌の比抵抗値が大きく、電気を通し難い砂質系の土壌等の埋設環境下では、腐食電流回路が形成され難く、腐食の進行度は遅い。逆に、土壌の比抵抗値が小さく、電気を通し易い粘土質系の土壌等の埋設環境下では、腐食電流回路が形成され易く、腐食の進行度は早い。
【0003】
このように、土壌の比抵抗値と腐食性とは密接に関係しており、比抵抗値は土壌の腐食性を評価する上で有効な指標となっており、例えば、下記表1に示すように、ANSIやDGVWにおいて、土壌の腐食性の評価の項目に、土壌の比抵抗値が取り入れられている。
【0004】
【表1】
【0005】
従来、土壌の比抵抗測定装置としては、例えば土壌棒方式の比抵抗測定装置が知られている。この比抵抗測定装置は、図14に示すように、土壌101中に挿入される電極棒102と、アナログ式の抵抗計103とを有している。電極棒102は、鋼材でできた先端部104と、絶縁リング105を介したステンレス製の本体部106とを有しており、先端部104と本体部106との間の抵抗値を測定するように構成されている。
【0006】
これによると、電極棒102を土壌101中に挿入するだけで、土壌101の比抵抗値を測定することができるので、簡易である。尚、上記のような土壌棒方式の比抵抗測定装置は例えば下記特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0007】
また、上記のような土壌棒方式以外の比抵抗測定装置としては、土壌箱方式の比抵抗測定装置が知られている。この比抵抗測定装置は、採取された土壌を土壌箱に隙間無く詰め込み、土壌箱の両端部に設けられた電極で比抵抗値を測定するものである。
【0008】
これによると、採取した土壌のなかから任意に土壌を選択することができ、採取した土壌中の比抵抗値が最小の土壌を測定することができる。尚、上記のような土壌箱方式の比抵抗測定装置は例えば下記特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭63−8673
【特許文献2】実開昭59−194052
【特許文献3】実開昭55−77174
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら上記の土壌棒方式の比抵抗測定装置では、電極棒102を土壌101中に挿入した際、電極棒102の先端部104が当接している範囲しか測定できず、先端部104の箇所以外に比抵抗値が異なる土質が存在している場合に、十分に対応できないといった問題がある。
【0011】
さらに、土壌101の比抵抗を正確に測定するには、電極棒102と土壌101とが密着していなければならず、電極棒102と土壌101との間に空隙があると、安定した測定結果が得られないといった問題がある。
【0012】
また、土壌箱方式の比抵抗測定装置では、一旦、土壌を採取した後、採取した土壌を土壌箱に詰め込んで測定するため、手間と時間を要するといった問題がある。
【0013】
本発明は、正確および迅速且つ簡易に土壌の比抵抗を測定することが可能な比抵抗測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本第1発明は、土壌の比抵抗を測定するために用いる比抵抗測定装置であって、
土壌中に挿入可能な測定フレーム体を有し、
測定フレーム体に複数の第1電極と複数の第2電極とが設けられ、
これら第1電極と第2電極とはそれぞれ測定フレーム体の挿入方向において縦列に並べられているとともに、測定フレーム体の挿入方向を横切る方向において、間隔をあけて対向しており、
測定フレーム体の挿入方向において隣同士である一対の第1電極間の電流と電位差と間隔をそれぞれI、V、Dとし、
測定フレーム体の挿入方向において隣同士である一対の第2電極間の電流と電位差と間隔をそれぞれI、V、Dとし、
対向する第1電極と第2電極との間の電流と電位差と間隔をそれぞれI、V、Dとすると、
第1の比抵抗値=2×π×D×(V/I
第2の比抵抗値=2×π×D×(V/I
第3の比抵抗値=4×π×D×(V/I
という換算式に基づいて比抵抗値を求めることが可能であるものである。
【0015】
これによると、比抵抗値を測定する際、測定フレーム体を土壌中に挿入する(突き刺す)ことにより、対向する第1電極と第2電極との間に土壌が挟まれるため、土圧により電極と土壌との密着状態が良好になり、正確および迅速且つ簡易に、土壌の比抵抗を測定することができる。
【0017】
また、測定フレーム体に、複数の第1電極と複数の第2電極とがそれぞれ測定フレーム体の挿入方向において縦列に並べられ、これら第1電極と第2電極とが上記挿入方向を横切る方向において間隔をあけて対向しているため、広い範囲で、土壌の比抵抗を測定することができる。これにより、比抵抗値が異なる土質が存在している場合でも、十分に対応することができる。
【0018】
また、複数の第1および第2電極を用いて、土壌の複数個所における比抵抗値を測定することができるため、信頼性の高い測定結果を得ることができる。
本第2発明は、土壌の比抵抗を測定するために用いる比抵抗測定装置であって、
土壌中に挿入可能な測定フレーム体を有し、
測定フレーム体に第1電極と第2電極とが設けられ、
第1電極と第2電極とは、測定フレーム体の挿入方向を横切る方向において、間隔をあけて対向しており、
対向する一対の第1電極と第2電極との間の電流と電位差とに基づいて比抵抗値を測定可能であり、
対向する第1電極と第2電極との間に挟まれている土壌を湿潤状態にする水分供給部材が測定フレーム体に設けられているものである。
これによると、測定フレーム体を土壌中に挿入し、水分を水分供給部材から土壌に供給することによって、対向する第1電極と第2電極との間に挟まれている土壌を湿潤状態にすることができる。これにより、湿潤状態の土壌の比抵抗値を測定することができる。
【0019】
本第3発明における比抵抗測定装置は、第1〜第3の比抵抗値のうちの最小の比抵抗値を選択可能に構成されているものである。
【0020】
これによると、土壌の比抵抗値が小さいほど、埋設された管の腐食が促進されるため、最小の比抵抗値を選択することによって、土壌の腐食性をより厳しい基準で評価することができる。
【0025】
本第発明における比抵抗測定装置は、測定フレーム体は一対の対向するフレームを有し、
複数の第1電極、一方のフレームに、測定フレーム体の挿入方向において縦列に並べられて設けられ、
複数の第2電極、他方のフレームに、測定フレーム体の挿入方向において縦列に並べられて設けられているものである。
【0026】
これによると、複数の第1電極が、一方のフレームに、挿入方向に縦列に並べられ、複数の第2電極が、他方のフレームに、挿入方向に縦列に並べられ、これら第1電極と第2電極とが間隔をあけて対向しているため、広い範囲で、土壌の比抵抗を測定することができる。
【0027】
また、比抵抗値を測定する際、一対のフレームを土壌中に挿入する(突き刺す)ことにより、一対のフレーム間に土壌が挟まれるため、土圧により電極と土壌との密着状態が良好になり、正確および迅速且つ簡易に、土壌の比抵抗を測定することができる。
【0028】
本第発明における比抵抗測定装置は、測定フレーム体が比抵抗測定器に備えられ、
比抵抗測定器が抵抗計に接続されているものである。
【発明の効果】
【0029】
以上のように本発明によると、正確および迅速且つ簡易に土壌の比抵抗を測定することができ、また、広い範囲で土壌の比抵抗を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1の実施の形態における比抵抗測定装置の使用状態を示す図である。
図2】同、比抵抗測定装置の比抵抗測定器の断面図である。
図3】同、比抵抗測定装置の比抵抗測定器の一部拡大断面図である。
図4図2におけるX−X矢視図である。
図5】同、比抵抗測定装置の構成を示すブロック図である。
図6】同、比抵抗測定装置の水分供給管の取付部分の拡大断面図である。
図7】同、比抵抗測定装置を用いて第1の比抵抗値R(1)〜R(4)を測定する手順を説明する模式図である。
図8】同、比抵抗測定装置を用いて第2の比抵抗値R(1)〜R(4)を測定する手順を説明する模式図である。
図9】同、比抵抗測定装置を用いて第3の比抵抗値R(1)〜R(5)を測定する手順を説明する模式図である。
図10】同じ土壌をサンプルとして、本第1の実施の形態の比抵抗測定装置で測定したときの最小の比抵抗値と、従来の土壌箱方式の比抵抗測定装置で測定したときの比抵抗値との関係を示すグラフである。
図11】本発明の第2の実施の形態における比抵抗測定装置の測定フレーム体の斜視図である。
図12図11におけるX−X矢視図である。
図13図12におけるX−X矢視図である。
図14】従来の土壌棒方式の比抵抗測定装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0032】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、図1図4に示すように、1は土壌2の比抵抗を測定するために用いる比抵抗測定装置であり、比抵抗測定器4と、比抵抗測定器4に接続されたデジタル交流抵抗計5とを有している。
【0033】
比抵抗測定器4は、土壌2中に挿入可能な測定フレーム体10と、取っ手部14とを有している。測定フレーム体10は、略U字状の部材であり、一対の対向するフレーム11,12と、両フレーム11,12の基端部間に設けられた連結フレーム13とを有している。取っ手部14は連結フレーム13に設けられ、両フレーム11,12の側面間には補強板15が設けられている。
【0034】
フレーム11,12はそれぞれ、細長い平板状の部材であり、先端が尖っている。一方のフレーム11には、金属製の複数の第1電極17a〜17eが測定フレーム体10の挿入方向Aに縦列に並べられて設けられている。また、他方のフレーム12には、金属製の複数の第2電極18a〜18eが上記挿入方向Aに縦列に並べられて設けられている。第1電極17a〜17eは挿入方向Aにおいて所定間隔Dをあけて縦列に並べられ、同様に、第2電極18a〜18eは挿入方向Aにおいて所定間隔Dをあけて縦列に並べられている。また、これら第1電極17a〜17eと第2電極18a〜18eとは、上記挿入方向Aに直交する方向(挿入方向Aを横切る方向の一例)において、所定間隔Dをあけて対向している。尚、各所定間隔D〜Dの単位はメートルである。
【0035】
尚、第1および第2電極17a〜17e,18a〜18eは一方および他方のフレーム11,12に形成された凹部19に嵌め込まれている。また、各第1および第2電極17a〜17e,18a〜18eと一方および他方のフレーム11,12とは絶縁部材20を介して電気的に絶縁されている。第1および第2電極17a〜17e,18a〜18eにはそれぞれ配線21が接続されている。
【0036】
フレーム11,12と連結フレーム13と取っ手部14との内部には、配線21を通す配線用通路22が形成されている。複数本の配線21は、結束されて比抵抗測定器4から引き出され、デジタル交流抵抗計5に接続されている。
【0037】
図1図5に示すように、デジタル交流抵抗計5は、交流電源26と、交流電源26に接続される電極17a〜17e,18a〜18eを順次切り換える切換部27と、切り換えられた電極17a〜17e,18a〜18e間の電流および電位差を計測する電流・電位差計測部28と、計測された電流および電位差に基づいて比抵抗値を算出する演算部30と、1回の測定において算出された複数の比抵抗値を記憶する記憶部33と、記憶された複数の比抵抗値のうちから最小の比抵抗値を選択する選択部31と、選択された比抵抗値をデジタル表示する表示部32とを有している。
【0038】
図3図4図6に示すように、両フレーム11,12には、両フレーム11,12間に挟まれている土壌2に水34を供給して土壌2を湿潤状態にする細い水分供給管35(水分供給部材の一例)が設けられている。水分供給管35はそれぞれ各フレーム11,12の長手方向に沿って取り付けられている。水分供給管35には複数の小さな注出孔36が形成されており、水分供給管35内の水34が注出孔36から外部に注出される。
【0039】
図1に示すように、両水分供給管35には給水装置37が接続されている。給水装置37は、可撓性を有する屈曲自在な給水用チューブ38と、給水バルブ39と、小型の給水ポンプ40と、水34を貯める容器41とを有している。尚、両水分供給管35は、基端部において一本の管に合流して、給水用チューブ38に接続されている。
【0040】
以下、上記比抵抗測定装置1を用いて土壌2の比抵抗を測定する方法を説明する。
【0041】
図1に示すように、比抵抗測定器4の測定フレーム体10を土壌2に挿入し(突き刺し)、デジタル交流抵抗計5を作動させる。これにより、交流電源26に接続される電極17a〜17e,18a〜18eが切換部27によって順次切り換えられ、切り換える度に、電極17a〜17e,18a〜18e間の電流および電位差が電流・電位差計測部28によって計測される。
【0042】
例えば、先ず、図7(a)に示すように、切換部27によって第1電極17aと第1電極17bとが交流電源26に接続され、電流・電位差計測部28によって一対の第1電極17a,17b間を流れる電流Iと一対の第1電極17a,17b間の電位差Vとが計測され、これら電流Iと電位差Vとに基づいて、一対の第1電極17a,17b間の第1の比抵抗値R(1)が演算部30により算出される。
【0043】
この際、演算部30において、下記の第1換算式を用いて第1の比抵抗値R(1)が算出される。
=2×π×D×(V/I)・・・第1換算式
尚、上記電流Iの単位はアンペア、電位差Vの単位はボルト、比抵抗値Rの単位はΩ・mである。尚、算出された第1の比抵抗値R(1)は記憶部33に記憶される。
【0044】
次に、図7(b)に示すように、切換部27によって第1電極17bと第1電極17cとが交流電源26に接続され、電流・電位差計測部28によって第1電極17b,17c間を流れる電流Iと第1電極17b,17c間の電位差Vとが計測され、これら電流Iと電位差Vとに基づいて、同様に、第1電極17b,17c間の第1の比抵抗値R(2)が演算部30において上記第1換算式により算出される。
【0045】
このようにして、上記と同様に、順次、図7(c)に示すように、一対の第1電極17c,17d間における電流Iと電位差Vとが計測され、これら電流Iと電位差Vとに基づいて、第1電極17c,17d間の第1の比抵抗値R(3)が上記第1換算式により算出され、その後、図7(d)に示すように、一対の第1電極17d,17e間における電流Iと電位差Vとが計測され、これら電流Iと電位差Vとに基づいて、第1電極17d,17e間の第1の比抵抗値R(4)が上記第1換算式により算出される。これにより、複数の第1の比抵抗値R(1)〜第1の比抵抗値R(4)が求められ、各第1の比抵抗値R(1)〜第1の比抵抗値R(4)は記憶部33に記憶される。
【0046】
次に、図8(a)に示すように、切換部27によって第2電極18aと第2電極18bとが交流電源26に接続され、電流・電位差計測部28によって一対の第2電極18a,18b間を流れる電流Iと一対の第2電極18a,18b間の電位差Vとが計測され、これら電流Iと電位差Vとに基づいて、第2電極18a,18b間の第2の比抵抗値R(1)が演算部30により算出される。
【0047】
この際、演算部30において、下記の第2換算式を用いて第2の比抵抗値R(1)が算出される。
=2×π×D×(V/I)・・・第2換算式
尚、算出された第2の比抵抗値R(1)は記憶部33に記憶される。
【0048】
次に、図8(b)に示すように、切換部27によって第2電極18bと第2電極18cとが交流電源26に接続され、電流・電位差計測部28によって一対の第2電極18b,18c間を流れる電流Iと第2電極18b,18c間の電位差Vとが計測され、これら電流Iと電位差Vとに基づいて、同様に、第2電極18b,18c間の第2の比抵抗値R(2)が演算部30において上記第2換算式により算出される。
【0049】
このようにして、上記と同様に、順次、図8(c)に示すように、一対の第2電極18c,18d間における電流Iと電位差Vとが計測され、これら電流Iと電位差Vとに基づいて、第2電極18c,18d間の第2の比抵抗値R(3)が上記第2換算式により算出され、その後、図8(d)に示すように、一対の第2電極18d,18e間における電流Iと電位差Vとが計測され、これら電流Iと電位差Vとに基づいて、第2電極18d,18e間の第2の比抵抗値R(4)が上記第2換算式により算出される。これにより、複数の第2の比抵抗値R(1)〜第2の比抵抗値R(4)が求められ、各第2の比抵抗値R(1)〜第2の比抵抗値R(4)は記憶部33に記憶される。
【0050】
次に、図9(a)に示すように、切換部27によって対向する一対の第1電極17aと第2電極18aとが交流電源26に接続され、電流・電位差計測部28によって、一対の第1電極17aと第2電極18aとの間を流れる電流Iと、第1電極17aと第2電極18aとの間の電位差Vとが計測され、これら電流Iと電位差Vとに基づいて、一対の第1電極17aと第2電極18aとの間の第3の比抵抗値R(1)が演算部30により算出される。
【0051】
この際、演算部30において、下記の第3換算式を用いて第3の比抵抗値R(1)が算出される。
=4×π×D×(V/I)・・・第3換算式
尚、算出された第3の比抵抗値R(1)は記憶部33に記憶される。
【0052】
次に、図9(b)に示すように、切換部27によって一対の第1電極17bと第2電極18bとが交流電源26に接続され、電流・電位差計測部28によって、一対の第1電極17bと第2電極18bとの間を流れる電流Iと、第1電極17bと第2電極18bとの間の電位差Vとが計測され、これら電流Iと電位差Vとに基づいて、同様に、第1電極17bと第2電極18bとの間の第3の比抵抗値R(2)が演算部30において上記第3換算式により算出される。
【0053】
このようにして、上記と同様に、順次、図9(c)に示すように、一対の第1電極17cと第2電極18cとの間における電流Iと電位差Vとが計測され、これら電流Iと電位差Vとに基づいて、一対の第1電極17cと第2電極18cとの間の第3の比抵抗値R(3)が上記第3換算式により算出され、次に、図9(d)に示すように、一対の第1電極17dと第2電極18dとの間における電流Iと電位差Vとが計測され、これら電流Iと電位差Vとに基づいて、一対の第1電極17dと第2電極18dとの間の第3の比抵抗値R(4)が上記第3換算式により算出され、その後、図9(e)に示すように、一対の第1電極17eと第2電極18eとの間における電流Iと電位差Vとが計測され、これら電流Iと電位差Vとに基づいて、一対の第1電極17eと第2電極18eとの間の第3の比抵抗値R(5)が上記第3換算式により算出される。これにより、複数の第3の比抵抗値R(1)〜第3の比抵抗値R(5)が求められ、各第3の比抵抗値R(1)〜第3の比抵抗値R(5)は記憶部33に記憶される。
【0054】
上記のようにして、1回の測定において、複数の第1の比抵抗値R(1)〜第1の比抵抗値R(4)と、第2の比抵抗値R(1)〜第2の比抵抗値R(4)と、第3の比抵抗値R(1)〜第3の比抵抗値R(5)とが求められて記憶部33に記憶される。このように本第1の実施の形態では、一例として、1回の測定において、合計13個の比抵抗値R(1)〜R(4)、R(1)〜R(4)、R(1)〜R(5)が求められて記憶部33に記憶される。
【0055】
その後、選択部31において、記憶部33に記憶されている複数の第1〜第3の比抵抗値R(1)〜R(4)、R(1)〜R(4)、R(1)〜R(5)のうちから最小の比抵抗値が選択され、選択された比抵抗値が表示部32に表示される。
【0056】
このようにして土壌2の比抵抗値を測定した後、比抵抗測定器4の両フレーム11,12を土壌2から抜き取ればよい。
【0057】
比抵抗測定装置1を用いて、以上のような方法で土壌2の比抵抗を測定することにより、複数の第1電極17a〜17eが、一方のフレーム11に、挿入方向Aにおいて縦列に並べられ、複数の第2電極18a〜18eが、他方のフレーム12に、挿入方向Aにおいて縦列に並べられ、これら第1電極17a〜17eと第2電極18a〜18eとが所定間隔Dをあけて対向しているため、広い範囲で、土壌2の比抵抗値を測定することができる。これにより、比抵抗値が異なる土質が存在している場合でも、十分に対応することができる。
【0058】
また、図1に示すように、一対のフレーム11,12を土壌2中に挿入することにより、一対のフレーム11,12間に土壌2が挟まれるため、土圧により各第1および第2電極17a〜17e,18a〜18eと土壌2との密着状態が良好になり、正確および迅速且つ簡易に、土壌2の比抵抗値を測定することができる。
【0059】
また、複数の第1および第2電極17a〜17e,18a〜18eを用い、上記第1〜第3換算式に基づいて第1〜第3の比抵抗値を求めることにより、土壌2の複数個所における比抵抗値を測定することができるため、信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【0060】
また、土壌2の比抵抗値が小さいほど、埋設された管の腐食が促進されるため、上記の方法で求められた複数の第1〜第3の比抵抗値R(1)〜R(4)、R(1)〜R(4)、R(1)〜R(5)のうちから最小の比抵抗値を選択することによって、土壌2の腐食性をより厳しい基準で評価することができる。
【0061】
また、図1に示すように、比抵抗測定器4の測定フレーム体10を土壌2に挿入した後、給水装置37の給水バルブ39を開き、給水ポンプ40を作動して、容器41内の水34を給水用チューブ38から両水分供給管35内に送ることにより、図4図6に示すように、水34が、両水分供給管35内から注出孔36を通って、両フレーム11,12間の土壌2に供給される。
【0062】
これにより、両フレーム11,12間の土壌2を湿潤状態にすることができ、湿潤状態の土壌2の比抵抗値を測定することもできる。
【0063】
尚、下記表2は、従来の土壌箱方式の比抵抗測定装置で測定された土壌の比抵抗値と、本第1の実施の形態の比抵抗測定装置1で測定された土壌2の最小の比抵抗値との相関を示したものである。表2によると、土壌箱方式の比抵抗測定装置で測定された比抵抗値と本第1の実施の形態の比抵抗測定装置1で測定された最小の比抵抗値との相関係数は0.944となり、高い相関を示している。また、このときの回帰直線の傾きは1.076であり、この傾きが1.0に近いほど、測定された両者の比抵抗値の対応関係が1対1で近似していることになる。従って、本第1の実施の形態の比抵抗測定装置1で測定した比抵抗値は、従来の土壌箱方式の比抵抗測定装置で測定された比抵抗値に対して、ほぼ1対1の対応関係で近似しており、比抵抗値を求める際に使用した上記第1〜第3換算式が正しいことが確認できた。
【0064】
【表2】
【0065】
また、図10に示すグラフは、上記回帰直線を示すグラフであり、同じ土壌をサンプルとして、本第1の実施の形態の比抵抗測定装置1で測定したときの最小の比抵抗値のデータをX軸に示し、従来の土壌箱方式の比抵抗測定装置で測定したときの比抵抗値のデータをY軸に示している。
【0066】
上記第1の実施の形態では、第1および第2電極17a〜17e,18a〜18eを一方および他方のフレーム11,12の凹部19に嵌め込んでいるため、両フレーム11,12を土壌2に挿入するときの抵抗が小さくなり、両フレーム11,12を土壌2に容易に突き刺すことができる。
【0067】
上記第1の実施の形態では、図7に示すように、挿入方向Aにおいて隣同士の第1電極17a,17b間における電流Iと電位差Vとを計測し、これに基づいて第1の比抵抗値R(1)を求めているが、これに限定されるものではなく、例えば、第1電極17bをとばして、第1電極17a,17c間における電流Iと電位差Vとを計測し、これに基づいて第1の比抵抗値Rを求めてもよい。
【0068】
同様に、図8に示すように、挿入方向Aにおいて隣同士の第2電極18a,18b間における電流Iと電位差Vとを計測し、これに基づいて第2の比抵抗値R(1)を求めているが、これに限定されるものではなく、例えば、第2電極18bをとばして、第2電極18a,18c間における電流Iと電位差Vとを計測し、これに基づいて第2の比抵抗値Rを求めてもよい。
【0069】
また、図9に示すように、挿入方向Aに直交する方向において対向する一対の第1電極17aと第2電極18aとの間における電流Iと電位差Vとを計測し、これに基づいて第3の比抵抗値R(1)を求めているが、これに限定されるものではなく、例えば、斜め方向において対向する一対の第1電極17aと第2電極18bとの間における電流Iと電位差Vとを計測し、これに基づいて第3の比抵抗値Rを求めてもよい。
【0070】
上記第1の実施の形態では、図4に示すように、水分供給管35を、両方のフレーム11,12に設けているが、いずれか片方のフレームのみに設けてもよい。
【0071】
上記第1の実施の形態では、複数の比抵抗値R(1)〜R(4)、R(1)〜R(4)、R(1)〜R(5)のうちから最小の比抵抗値を選択して表示部32に表示しているが、最小の比抵抗値に限定するものではなく、例えば、複数の比抵抗値R(1)〜R(4)、R(1)〜R(4)、R(1)〜R(5)の平均値を表示したり、或いは、最小の比抵抗値と最大の比抵抗値との間のいずれかの比抵抗値を表示してもよい。また、全ての複数の比抵抗値を表示してもよい。
【0072】
上記第1の実施の形態において、図3に示すように、各所定間隔D,D,Dは、全て同じ数値であってもよいし、或いは、異なる数値であってもよい。また、第1電極17a〜17eを5個、第2電極18a〜18eを5個設けているが、5個以外の複数個設けてもよい。
【0073】
また、図7図9に示すように、合計13個の比抵抗値R(1)〜R(4)、R(1)〜R(4)、R(1)〜R(5)を求めているが、13個以外の複数個の比抵抗値を求めてもよい。
【0074】
或いは、相対向する第1電極17a〜17eと第2電極18a〜18eとのうちのいずれか一組だけを設けたものであってもよい。この場合は、広い範囲の測定は望めないが、測定フレーム体10を土壌2中に挿入する(突き刺す)ことにより、対向する一組の第1電極と第2電極との間に土壌2が挟まれるため、土圧により電極と土壌2との密着状態が良好になり、正確および迅速且つ簡易に土壌2の比抵抗を測定することができるといった効果を得ることができる。
【0075】
上記第1の実施の形態において、フレーム11,12はそれぞれ、細長い平板状の部材であるが、平板状に限られるものではなく、他の形状の部材、例えば棒状の部材であってもよい。
【0076】
(第2の実施の形態)
先述した第1の実施の形態では、図1に示すように、測定フレーム体10を略U字状に形成しているが、この形状に限定されるものではなく、例えば、第2の実施の形態として、図11図13に示すように、測定フレーム体61を六角形の筒状に形成してもよい。
【0077】
測定フレーム体61の各内面には、複数の第1電極62a〜62c,64a〜64c,66a〜66cと複数の第2電極63a〜63c,65a〜65c,67a〜67cとがそれぞれ挿入方向Aにおいて縦列に並べられて設けられている。
【0078】
このうち、第1電極62a〜62cと第2電極63a〜63cとは、上記挿入方向Aに直交する方向(挿入方向Aを横切る方向の一例)において、所定間隔Dをあけて対向している。同様に、別の第1電極64a〜64cと別の第2電極65a〜65cとは、上記挿入方向Aに直交する方向において、所定間隔Dをあけて対向している。さらに、他の第1電極66a〜66cと他の第2電極67a〜67cとは、上記挿入方向Aに直交する方向において、所定間隔Dをあけて対向している。
【0079】
尚、その他の構成については、先述した第1の実施の形態のものと同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0080】
比抵抗測定装置1を用いて土壌2の比抵抗を測定する場合、比抵抗測定器4の測定フレーム体61を土壌2に挿入し(突き刺し)、デジタル交流抵抗計5を作動させて、先述した第1の実施の形態と同様な測定方法を行えばよい。
【0081】
この際、計測された一対の第1電極62a〜62c間の電流Iと電位差Vとに基づいて第1の比抵抗値Rを求め、一対の第2電極63a〜63c間の電流Iと電位差Vとに基づいて第2の比抵抗値Rを求め、対向する一対の第1電極62a〜62cと第2電極63a〜63cとの間の電流Iと電位差Vとに基づいて第3の比抵抗値Rを求めることができる。
【0082】
また、同様に、計測された別の一対の第1電極64a〜64c間の電流Iと電位差Vとに基づいて第1の比抵抗値Rを求め、別の一対の第2電極65a〜65c間の電流Iと電位差Vとに基づいて第2の比抵抗値Rを求め、対向する別の一対の第1電極64a〜64cと第2電極65a〜65cとの間の電流Iと電位差Vとに基づいて第3の比抵抗値Rを求めることもできる。
【0083】
さらに、同様に、計測された他の一対の第1電極66a〜66c間の電流Iと電位差Vとに基づいて第1の比抵抗値Rを求め、他の一対の第2電極67a〜67c間の電流Iと電位差Vとに基づいて第2の比抵抗値Rを求め、対向する他の一対の第1電極66a〜66cと第2電極67a〜67cとの間の電流Iと電位差Vとに基づいて第3の比抵抗値Rを求めることもできる。
【0084】
上記第2の実施の形態では、測定フレーム体61を六角形の筒状に形成しているが、六角形に限定されるものではなく、例えば四角形等の多角形に形成してもよいし、或いは、円筒形に形成してもよい。
【0085】
また、第1および第2電極62a〜62c,64a〜64c,66a〜66c,63a〜63c,65a〜65c,67a〜67cを、挿入方向Aにおいて、それぞれ3個ずつ設けているが、3個以外の複数個ずつ設けてもよい。
【0086】
或いは、第1および第2電極62a〜62c,64a〜64c,66a〜66c,63a〜63c,65a〜65c,67a〜67cを、挿入方向Aにおいて、それぞれ1個ずつ設けたものであってもよい。この場合は、広い範囲の測定は望めないが、測定フレーム体61を土壌2中に挿入する(突き刺す)ことにより、挿入方向Aに直交する方向において対向する一組の第1電極と第2電極との間に土壌2が挟まれるため、土圧により電極と土壌2との密着状態が良好になり、正確および迅速且つ簡易に土壌2の比抵抗を測定することができるといった効果を得ることができる。
【0087】
上記第1の実施の形態においては、図1に示すように、測定フレーム体10を土壌2に挿入する際、作業者が取っ手部14を手で握って、測定フレーム体10を土壌2に突き刺すのであるが、土壌2が固く、測定フレーム体10の土壌2への挿入時の抵抗が大きい場合には、例えば、作業者の脚力等を利用して、スコップやシャベルのように測定フレーム体10を土壌2に押し込んだり、作業者の体重を利用して押し込んでもよい。また、測定フレーム体10を土壌2に容易に挿入するために、測定フレーム体10に治具(アタッチメント)を装着してもよい。さらに、上記第2の実施の形態において、図13に示すように、測定フレーム体61を土壌2に挿入する際も同様である。
【符号の説明】
【0088】
1 比抵抗測定装置
2 土壌
4 比抵抗測定器
5 デジタル交流抵抗計
10 測定フレーム体
11,12 一方および他方のフレーム
17a〜17e 第1電極
18a〜18e 第2電極
35 水分供給管(水分供給部材)
61 測定フレーム体
62a〜62c,64a〜64c,66a〜66c 第1電極
63a〜63c,65a〜65c,67a〜67c 第2電極
A 挿入方向
第1電極間の間隔
第2電極間の間隔
第1電極と第2電極との間の間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図13
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