(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1部材は、表裏面が鉛直方向に沿って前記建築構造物に取付けられる第1本体板と、前記第1本体板を、その表裏面が向く一方向に挟んだ状態で前記第1本体板に連結される一対の接続板と、を備え、
前記第2部材は、前記第1本体板と上下方向の位置を異ならせて配置された状態で前記建築構造物に取り付けられ、前記一対の接続板に前記一方向に挟まれる第2本体板を備え、
前記粘弾性体は、前記一対の接続板と前記第2部材とを各別に連結するように前記第2本体板を前記一方向に挟んで一対配設され、前記一方向に直交し、水平方向に沿う他方向に入力された前記振動エネルギーを吸収し、
前記支持部材は、前記接続板から第2部材に向けて突出していることを特徴とする請求項1に記載の粘弾性制振ダンパー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の粘弾性制振ダンパーのうち、間柱タイプでは、粘弾性制振ダンパーが取付けられる支柱周辺の鉄骨の加工精度や組立精度に起因して、この支柱の据え付け精度が低下すると、支柱間の寸法が設計値から外れることで、粘弾性制振ダンパーの据え付け精度が低下し、例えば、第1部材が第2部材に対して傾いて(せって)しまい、粘弾性体の一部が局所的に大きく板厚方向に変形する等のおそれがあった。
またブレースタイプでは、粘弾性制振ダンパーを据え付ける際にピン接合で仮付けすることが多く、第1部材および第2部材が、それぞれの長手方向の端部を中心に相対的に回動することで位置ずれを起こし、第1部材および第2部材の自重が粘弾性体に直接作用することがあった。これにより、特に夏場等の高温環境下で粘弾性体がへたって大きく変形した場合には、例えば、第1部材が第2部材に対して傾いて(せって)しまい、第1部材の外面と、第2部材の内面と、が部分的に接触することがある等し、そのまま本接続されてしまうと、粘弾性制振ダンパーの据え付け精度が低下するおそれがあった。
以上のように、粘弾性体が大きく変形した状態で、粘弾性制振ダンパーが据え付けられることによって、所期した制振性能が発揮されないおそれがあった。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであって、精度よく据え付けることができる粘弾性制振ダンパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明
の第1態様に係る粘弾性制振ダンパーは、建築構造物に取付けられる第1部材および第2部材と、前記第1部材と前記第2部材とを連結し、前記建築構造物から入力される振動エネルギーを吸収する粘弾性体と、を備
え、前記第1部材は前記粘弾性体を介して前記第2部材を板厚方向に挟むように構成された粘弾性制振ダンパーであって、
内周面に雌ねじ部が形成され前記第1部材に配設されたナット部材と、外周面に前記雌ねじ部と螺合する雄ねじ部が形成されたボルト部材と、を有する複数の支持部材を備え、前記ボルト部材が前記第1部材
から、前記粘弾性体が制振する方向と交差する方向に向けて突出し
、前記第2部材上を前記制振する方向に
摺動することを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、
第1部材から前記交差する方向に向けて突出し、
第2部材上を、粘弾性体が制振する方向に摺動する支持部材を複数備えているので、第1部材と第2部材との間に前記交差する方向の隙間を確保することができる。このため、仮に第1部材および第2部材が取付けられる建築構造物の加工精度、および据え付け精度の影響、並びに第1部材および第2部材の自重等によって、第1部材および第2部材に、前記交差する方向に互いを接近させるような外力が加えられた場合であっても、複数の支持部材それぞれが前記他方に当接することにより、粘弾性体が大きく変形してしまうのを抑えることが可能になる。これにより、粘弾性制振ダンパーを精度よく据え付けることができる。
また、支持部材が、前記ナット部材および前記ボルト部材を備えているので、簡易な構成で前述の各作用効果を確実に奏功させることができる。
また、ナット部材の雌ねじ部と、ボルト部材の雄ねじ部と、が互いに螺合しているので、ボルト部材を回転させることで、支持部材の、第1部材から第2部材に向けた突出量を容易に調整することができる。
【0008】
また、前記第1部材は、表裏面が鉛直方向に沿って前記建築構造物に取付けられる第1本体板と、前記第1本体板を、その表裏面が向く一方向に挟んだ状態で前記第1本体板に連結される一対の接続板と、を備え、前記第2部材は、前記第1本体板と上下方向の位置を異ならせて配置された状態で前記建築構造物に取り付けられ、前記一対の接続板に前記一方向に挟まれる第2本体板を備え、前記粘弾性体は、前記一対の接続板と前記第2部材とを各別に連結するように前記第2本体板を前記一方向に挟んで一対配設され、前記一方向に直交し、水平方向に沿う他方向に入力された前記振動エネルギーを吸収し、前記支持部材は、前記
接続板から第2部材に向けて突出してもよい。
【0009】
この場合、支持部材が、
接続板から第2部材に向けて前記一方向に突出しているので、第1部材および第2部材を前記他方向に相対変位させる振動エネルギーを、接続板と第2部材との間に前記一方向の隙間を確保した状態で、粘弾性体により吸収することができる。すなわち、粘弾性制振ダンパーに、接続板および第2部材を互いに前記一方向に接近させる力が加えられたとしても、粘弾性体の厚み寸法を確保することができる。
【0010】
また、前記支持部材は、前記
接続板における外周縁部に各別に配設されてもよい。
この場合、支持部材が、
接続板における外周縁部に各別に配設されているので、接続板と第2部材との間に、広範囲にわたって、前記一方向の隙間を確保することが可能になる。このため、粘弾性体が大きく変形するのを効果的に抑えることができる。
【0011】
また、前記支持部材は、前記他方向で互いに対向する位置に各別に配設されてもよい。
この場合、支持部材が、前記他方向で互いに対向する位置に各別に配設されているので、接続板および第2部材が、前記沿面方向のうち、水平方向の一方側に位置する部分を互いに離間させながら、他方側に位置する部分を互いに接近させるように相対変位するのを規制することが可能になり、粘弾性体が大きく変形するのを確実に抑えることができる。
【0012】
また、
本発明の第2態様に係る粘弾性制振ダンパーは、長尺状をなし
建築構造物に取付けられる第1部材および第2部材と、前記第1部材と前記第2部材とを連結し、前記建築構造物から入力される振動エネルギーを吸収する粘弾性体と、前記第1部材から、前記粘弾性体が制振する方向と交差する方向に向けて突出し、前記第2部材上を、前記制振する方向に摺動する複数の支持部材と、備え、前記第1部材は、筒状をなす前記第2部材の内側に挿入されるとともに、前記第1部材が前記第2部材の内面に、前記粘弾性体を介して配置され、前記第1部材の長手方向における一方側の端部と、前記第2部材の長手方向における他方側の端部と、が前記建築構造物に各別に取付けられ、前記支持部材は、前記第1部材の
外面から前記第2部材の内面に向けて突出し、前記支持部材は、前記第2部材の内側において、前記第1部材が配置されている領域における長手方向の両端部に各別に配設され、これらの支持部材は、長手方向に直交する横断面視において、前記第2部材の中心軸線を径方向に挟んで互いに反対となる位置に各別に配置さ
れ、前記支持部材は、内周面に雌ねじ部が形成されたナット部材と、外周面に前記雌ねじ部と螺合する雄ねじ部が形成されたボルト部材と、を備え、前記第1部材に前記ナット部材が配設され、前記第2部材上を前記ボルト部材が摺動することを特徴と
する。
【0013】
この発明によれば、仮に第1部材および第2部材が、上下方向に対して傾斜した状態で建築構造物に取付けられることによって、第1部材および第2部材が、それぞれの自重により、長手方向におけるそれぞれの端部を中心に、相対的に回動しやすくなったとしても、支持部材を、前記他方に当接させることが可能になり、粘弾性体に第1部材および第2部材の自重が加えられるのを抑えることができる。これにより、粘弾性体が大きく変形するのを抑えることができる。
また、支持部材が、前記ナット部材および前記ボルト部材を備えているので、簡易な構成で前述の各作用効果を確実に奏功させることができる。
また、ナット部材の雌ねじ部と、ボルト部材の雄ねじ部と、が互いに螺合しているので、ボルト部材を回転させることで、支持部材の、前記一方から前記他方に向けた突出量を容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、粘弾性制振ダンパーを精度よく据え付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、
図1から
図4を参照し、本発明の第1実施形態に係る粘弾性制振ダンパー10について説明する。本実施形態に係る粘弾性制振ダンパー10は、間柱タイプである。
図1に示すように、本実施形態に係る粘弾性制振ダンパー10は、図示しない建築構造物に取付けられる第1部材11および第2部材12と、第1部材11と第2部材12とを連結し、建築構造物から第1部材11又は第2部材12に伝達される振動エネルギーを吸収する粘弾性体13と、を備えている。
【0018】
第1部材11は、表裏面が鉛直方向に沿って建築構造物に取付けられる第1本体板11Aと、第1本体板11Aを、その表裏面が向く一方向に挟んだ状態で第1本体板11Aに連結される一対の接続板11Bと、を備えている。また、第2部材12は、第1本体板11Aと上下方向の位置を異ならせて配置された状態で建築構造物に取り付けられ、一対の接続板11Bに前記一方向に挟まれる第2本体板12Aを備えている。
なお、以下の説明において、粘弾性制振ダンパー10のうち、第1本体板11A側を下側、第2本体板12A側を上側という。また、前記一方向を板厚方向いい、第1本体板11Aおよび第2本体板12Aの表裏面に沿う方向を沿面方向という。また、板厚方向に直交し、水平方向に沿う他方向を左右方向という。
【0019】
図2に示すように、第1本体板11Aおよび第2本体板12Aは、板厚方向から見て、一対の辺が左右方向に延び、かつ残り一対の辺が上下方向に延びる矩形状を呈する。第1本体板11Aおよび第2本体板12Aは、上下方向に対向している。
第1本体板11Aおよび第2本体板12Aそれぞれの左右方向の大きさは、互いに同等となっている。第1本体板11Aおよび第2本体板12Aそれぞれの左右方向の位置は、互いに一致している。第1本体板11Aおよび第2本体板12Aそれぞれの厚み寸法は、互いに同等となっている。
【0020】
第1本体板11Aおよび第2本体板12Aそれぞれにおける左右方向の両端部には、表裏面が左右方向を向くとともに、第1本体板11Aおよび第2本体板12Aから板厚方向の両方向に突出する、それぞれ一対の側板16a、16bが各別に配設されている。
側板16a、16bは、左右方向から見た側面視で一対の辺が板厚方向に延び、かつ残り一対の辺が上下方向に延びる矩形状を呈する。側板16a、16bそれぞれの板厚方向の大きさは、互いに同等となっている。側板16a、16bそれぞれの板厚方向の位置は、互いに一致している。側板16a、16bそれぞれの厚み寸法は、互いに同等となっている。
【0021】
図3に示すように、側板16a、16bの厚み寸法は、第1本体板11Aおよび第2本体板12Aの厚み寸法よりも大きくなっている。
図2に示すように、第1本体板11Aの下端部、および第2本体板12Aの上端部にはそれぞれ、建築構造物に取付けられる際に用いられる取付け孔14a、14bが、左右方向に間隔をあけて複数配置されている。
【0022】
図1に示すように、接続板11Bは、第1本体板11Aおよび第2本体板12Aを板厚方向で挟むように、第1本体板11Aに一対配設されている。接続板11Bは、板厚方向から見て、一対の辺が左右方向に延び、かつ残り一対の辺が上下方向に延びる矩形状を呈する。
接続板11Bは、第1本体板11Aおよび第2本体板12Aに、上下方向に跨って配設されている。
【0023】
図2に示すように、接続板11Bの左右方向の大きさは、第1本体板11Aの左右方向の大きさよりも小さくなっている。接続板11Bの左右方向の中央部の位置は、第1本体板11Aの左右方向の中央部の位置と一致している。
図1に示すように、接続板11Bの上端部は、第2本体板12Aの取付け孔14bよりも下方に位置し、接続板11Bの下端部は、第1部材11の取付け孔14aよりも上方に位置している。
【0024】
一対の接続板11Bと第1本体板11Aとは、図示しない連結部材を介して連結されている。接続板11Bの下端部および第1本体板11Aの上端部にはそれぞれ、互いが板厚方向に連通する貫通孔14cが複数形成されており、連結部材は、一対の接続板11Bおよび第1本体板11Aを、貫通孔14cを通して一体に貫いている。
第1本体板11Aと接続板11Bとの間には、スペーサとしてのフィラープレート17が配設されている。フィラープレート17は、第1本体板11Aと接続板11Bとの間に配設されている。
【0025】
フィラープレート17は一般構造用圧延鋼材(SS材)で形成された板状部材である。フィラープレート17には、貫通孔14cと連通し、連結部材が一体に挿入される連通孔が複数形成されている。フィラープレート17の左右方向の大きさは、接続板11Bの左右方向の大きさと同等となっている。フィラープレート17の左右方向の位置は、接続板11Bの左右方向の位置と一致している。
【0026】
第2部材12は、表裏面が板厚方向を向く連結板12Bを備えている。連結板12Bは、第2本体板12A、および一対の接続板11Bを板厚方向で挟むように、一対配設されている。
図2に示すように、連結板12Bは、板厚方向から見て、一対の辺が左右方向に延び、かつ残り一対の辺が上下方向に延びる矩形状を呈する。連結板12Bは、接続板11B、および第2本体板12Aに、上下方向に跨って配設されている。
【0027】
連結板12Bの左右方向の大きさは、接続板11Bの左右方向の大きさと同等となっている。連結板12Bの左右方向の位置は、接続板11Bの左右方向の位置と一致している。連結板12Bの上端部は、第2本体板12Aの取付け孔14bよりも下方で、かつ接続板11Bの上端部よりも上方に位置している。連結板12Bの下端部は、第2本体板12Aの下端部と上下方向の位置が一致している。
【0028】
連結板12Bの表裏面のうち、板厚方向の外側を向く表面には、上下方向に延びるリブ16cが、左右方向に間隔をあけて2つ配設されている。リブ16cは、連結板12Bの表面から板厚方向に突出している。
図1に示すように、連結板12Bおよび第2本体板12Aは、複数の連結部材を介して互いに連結されている。連結板12Bの上端部および第2部材にはそれぞれ、互いが板厚方向に連通する貫通孔14dが複数形成されている。連結部材は、一対の連結板12Bおよび第2本体板12Aを、貫通孔14dを通して一体に貫いている。
連結板12Bと第2本体板12Aとの間には、スペーサとしてのフィラープレート18が配設されている。フィラープレート18は、連結板12Bと第2本体板12Aとの間における上端部に配設されている。
【0029】
フィラープレート18は一般構造用圧延鋼材(SS材)で形成された板状部材である。フィラープレート18には、貫通孔14dと連通し、連結部材が一体に挿入される連通孔が複数形成されている。フィラープレート18の左右方向の大きさは、連結板12Bの左右方向の大きさと同等となっている。フィラープレート18の左右方向の位置は、連結板12Bの左右方向の位置と一致している。
【0030】
粘弾性体13は、例えばゴム材料やエラストマー等により形成された板状部材である。
粘弾性体13は、一対の接続板11Bと第2部材12とを各別に連結するように第2本体板12Aを板厚方向に挟んで一対配設され、左右方向に入力された振動エネルギーを吸収する。
粘弾性体13は、接続板11Bに配設されている。粘弾性体13は、一対の接続板11Bの表裏面に各別に配設され、連結板12Bと接続板11Bとの間、並びに接続板11Bと第2本体板12Aとの間にそれぞれ配設されている。
【0031】
粘弾性体13の下端部は、第2本体板12Aの下端部よりも上方に位置し、粘弾性体13の上端部は、接続板11Bの上端部よりも下方に位置している。粘弾性体13の左右方向の中央部の位置は、接続板11Bの左右方向の中央部の位置と一致している。粘弾性体13の左右方向の大きさは、接続板11Bの左右方向の大きさよりも小さくなっている。
【0032】
そして本実施形態では、
図3に示すように、粘弾性制振ダンパー10は、第1部材11および第2部材12のうちの少なくとも一方から、粘弾性体13が制振する方向と交差する方向に向けて突出し、他方上を摺動する支持部材19を複数備えている。
図示の例では、支持部材19は、第1本体板11Aにおける接続板11Bに配設されている。支持部材19は、沿面方向と直交する板厚方向に向けて突出し、第2本体板12A上を摺動する。支持部材19は、粘弾性制振ダンパー10における上下方向の中央部に配設されている。なお、支持部材19は、上下方向の中央部から上下方向に位置をずらして配設されていてもよい。
【0033】
また本実施形態では、支持部材19は、接続板11Bおよび第2部材12のうちのいずれか一方における外周縁部に各別に配設されている。図示の例では、支持部材19は、接続板11Bの外周縁部において、接続板11Bを左右方向に挟む互いに対向する位置に各別に配設されている。また、支持部材19は、第2本体板12Aを板厚方向に挟んで一対、各別に配設されている。なお、支持部材19は、第2本体板12Aの外周縁部において、第2本体板12Aを左右方向に挟む互いに対向する位置に各別に配設されてもよい。
【0034】
また本実施形態では、
図4に示すように、支持部材19は、内周面に雌ねじ部が形成されたナット部材19aと、外周面にこの雌ねじ部と螺合する雄ねじ部が形成されたボルト部材19bと、を備えている。第1本体板11Aおよび第2本体板12Aのうちの少なくとも一方にナット部材19aが配設され、他方上をボルト部材19bが摺動する。
図示の例では、ナット部材19aは、第1本体板11Aの接続板11Bに配設され、ボルト部材19bは、第1本体板11Aと第2本体板12Aとが沿面方向に相対変位をした際に、第2本体板12A上を摺動する。なお、ナット部材19aが、第2本体板12Aに配設され、ボルト部材19bが、接続板11B上を摺動してもよい。
【0035】
ナット部材19aは金属材料により形成されている。ナット部材19aの外周面が、接続板11Bの外周縁部に、例えば溶接等により固着されている。ボルト部材19bはナット部材19aに螺着されている。ボルト部材19bは合成樹脂材料により形成され、例えばポリアセタール(登録商標:ジュラコン)等の摺動性のよい材質を用いることができる。
なお、ナット部材19aおよびボルト部材19bを形成する材質としてはこれらに限られず、ナット部材19aを合成樹脂材料等で形成してもよいし、ボルト部材19bを金属材料等で形成してもよい。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る粘弾性制振ダンパー10によれば、第1部材11における接続板11Bから板厚方向に向けて突出し、第2部材12における第2本体板12A上を、粘弾性体13が制振する方向に摺動する支持部材19を備えているので、接続板11Bと第2本体板12Aとの間に板厚方向の隙間を確保することができる。このため、仮に接続板11Bおよび第2本体板12Aが取付けられる建築構造物の加工精度、および据え付け精度の影響、並びに接続板11Bおよび第2本体板12Aの自重等によって、接続板11Bおよび第2本体板12Aに、板厚方向に互いを接近させるような外力が加えられた場合であっても、支持部材19が他方に当接することにより、粘弾性体13が大きく変形してしまうのを抑えることが可能になる。これにより、粘弾性制振ダンパー10の据え付け精度を安定させることができる。
【0037】
また、支持部材19が、接続板11Bから第2本体板12Aに向けて板厚方向に突出しているので、第1部材11および第2本体板12Aを、それぞれの表裏面に沿う沿面方向に相対変位させる振動エネルギーを、接続板11Bと第2本体板12Aとの間に板厚方向の隙間を確保した状態で、粘弾性体13により吸収することができる。すなわち、粘弾性制振ダンパー10に、接続板11Bおよび第2本体板12Aを互いに板厚方向に接近させる力が加えられたとしても、粘弾性体13の厚み寸法を確保することができる。
【0038】
また、支持部材19が、接続板11Bにおける外周縁部に各別に配設されているので、接続板11Bと第2本体板12Aとの間に、広範囲にわたって、板厚方向の隙間を確保することが可能になる。このため、粘弾性体13が大きく変形するのを効果的に抑えることができる。
【0039】
また、支持部材19が、左右方向で互いに対向する位置に各別に配設されているので、接続板11Bおよび第2本体板12Aが、沿面方向のうち、左右方向の一方側に位置する部分を互いに離間させながら、他方側に位置する部分を互いに接近させるように傾いて相対変位するのを規制することが可能になり、粘弾性体13が大きく変形するのを確実に抑えることができる。
【0040】
また、支持部材19が、ナット部材19aおよびボルト部材19bを備えているので、簡易な構成で前述の作用効果を確実に奏功させることができる。
また、ナット部材19aの雌ねじ部と、ボルト部材19bの雄ねじ部と、が互いに螺合しているので、ボルト部材19bを回転させることで、接続板11Bから第2本体板12Aに向けた支持部材19の突出量を容易に調整することができる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、
図5および
図6を参照し、本発明に係る第2実施形態に係る粘弾性制振ダンパー20について説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0042】
図5に示すように、本実施形態に係る粘弾性制振ダンパー20では、第1部材21および第2部材22は長尺状をなし、第2部材22は筒状をなしている。粘弾性制振ダンパー20は、ブレースタイプである。
以下の説明において、第2部材22の中心軸線Oに沿う方向を長手方向といい、長手方向から見て、中心軸線Oと交差する方向を径方向という。
【0043】
図6に示すように、第1部材21はH鋼とされ、長手方向に直交する横断面視でH字状を呈する。第1部材21は、径方向に直交する方向に延びるとともに、互いが径方向に対向する一対のフランジ21aと、径方向に延びるとともに、これらのフランジ21aの中央部同士を連結するウェブ21bと、を備えている。フランジ21aの厚み寸法は、ウェブ21bの厚み寸法よりも大きくなっている。
図5に示すように、フランジ21aの長手方向における一方側の端部E1には、建築構造物に取付けられる取付け孔21cが複数形成されている。
【0044】
図6に示すように、第2部材22は、前記横断面視で矩形状を呈する。第2部材22は、径方向に互いに対向して配置され、第1部材21を径方向の外側から囲繞する一対の分割管22aと、これら一対の分割管22a同士を連結する一対の外側板22bと、を備えている。一対の分割管22aは、径方向のうち、前記横断面視でウェブ21bが延びる方向に互いに対向している。分割管22aおよび外側板22bは、例えば金属材料等により形成されている。
分割管22aは、前記横断面視で径方向の内側に向けて開口するC字状を呈する。
図5に示すように、分割管22aの長手方向における他方側の端部E4には、建築構造物に取付けられる取付け孔22cが複数形成されている。
【0045】
図5および
図6に示すように、第1部材21は、第2部材22の内側に挿入されるとともに、第1部材21が第2部材22の内面に、粘弾性体23を介して配置されている。第1部材21の長手方向における一方側の端部E1は、第2部材22の前記一方側の端部E3から外側に突き出ている。なお、第1部材21の前記一方側の端部E1は、第2部材22の前記一方側の端部E3から外側に突き出ていなくてもよい。
一対の分割管22aの内周面のうち、径方向で互いに対向する内側底面22dは、第1部材21におけるフランジ21aの表面のうち、径方向の外側を向く外側面21dと対向している。
【0046】
粘弾性体23は、例えばゴム材料やエラストマー等により形成された板状部材である。粘弾性体23は、第2部材22の内側において、中心軸線Oを径方向に挟む位置に、各別に配設されている。粘弾性体23は、分割管22aの内側底面22dと、フランジ21aの外側面21dと、の間の径方向の隙間に配設されている。
また、
図5に示すように、粘弾性体23は、前記隙間のうち、第2部材22の長手方向における一方側の端部E3が位置する部分、および第1部材21の長手方向における他方側の端部E2が位置する部分に、各別に配設されている。粘弾性体23は、第2部材22の内側に配設されるとともに、一対のフランジ21aが互いに対向する方向から見て、長手方向に長い長方形状を呈する。
粘弾性体23の厚み寸法は、第1部材21におけるウェブ21bの厚み寸法よりも小さくなっている。
【0047】
そして本実施形態では、支持部材29は、第1部材21の外面および第2部材22の内面のうち、いずれか一方に、いずれか他方に向けて突出している。
図示の例では、支持部材29は、第1部材21の外面に配設され、第2部材22の内面に向けて突出し、第2部材22の内面を摺動する。このため、支持部材29は、粘弾性体23が制振する長手方向と交差する方向に向けて突出している。なお、支持部材29は、第2部材22の内面に配設され、第1部材21の外面を摺動してもよい。
【0048】
支持部材29は、第2部材22の内側において、第1部材21が配置されている領域における長手方向の両端部に各別に配設されている。図示の例では、支持部材29は、第1部材21における長手方向の他方側の端部E2と、第1部材21のうち、第2部材22における長手方向の一方側の端部E3に位置する部分と、に各別に配設されている。
また、
図6に示すように、支持部材29は、粘弾性制振ダンパー20の前記横断面視において、中心軸線Oを径方向に挟んで互いに反対となる位置に各別に配置されている。
【0049】
第1部材21には、支持部材29を第1部材21の外面に固定する固定板21eが配設されている。固定板21eは、第1部材21における一対のフランジ21aおよびウェブ21bにより囲まれた凹部内に配設されている。固定板21eは、例えば溶接等により、一対のフランジ21aの内側面およびウェブ21bの外面と固着されている。
【0050】
固定板21eは、前記横断面視において、一対の辺が、フランジ21aが延びる方向に延び、かつ残り一対の辺が、ウェブ21bが延びる方向に延びる矩形状を呈する。前記横断面視において、固定板21eにおける、ウェブ21bが延びる方向の中央部には、前記凹部の外側に向けて膨出する膨出部21fが形成されている。
膨出部21fに、ナット部材29aが固着されている。ナット部材29aの外周面が、固定板21eの膨出部21fのうち、長手方向の内側を向く内側面に固着されている。
ナット部材29aは、例えば溶接等により固定板21eに固着されている。なお、支持部材29は、固定板21eを介さずに、第1部材21の外面および第2部材22の内面のうち、いずれか一方に配設されてもよい。
【0051】
ナット部材29aは、前記横断面視において、フランジ21aが延びる方向に開口している。ナット部材29aには、ボルト部材29bが螺着されている。ボルト部材29bは、第1部材21における固定板21eから前記凹部の外側に向けて突出している。すなわち、本実施形態では、支持部材29は、前記横断面視で粘弾性体23が延びる方向に沿って突出している。
【0052】
ボルト部材29bの先端部は、第2部材22における外側板22bの表裏面のうち、径方向の内側を向く裏面に当接している。ボルト部材29bは、第1部材21と第2部材22とが長手方向に相対変位をした際に、外側板22bの裏面を摺動する。なお、ナット部材29aが、第2部材22に配設され、ボルト部材29bが、第1部材21の外面を摺動してもよい。
【0053】
粘弾性制振ダンパー20は、上下方向に対して傾斜した状態等で、図示しない建築構造物に取付けられる。この際、第1部材21の長手方向における一方側の端部が下方に位置し、第2部材22の長手方向における他方側の端部が上方に位置した状態で、建築構造物に取付けられる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る粘弾性制振ダンパー20によれば、第1実施形態に係る粘弾性制振ダンパー10と同様に、支持部材29が、長手方向と交差する方向に突出しているので、第1部材21と第2部材22との前記交差する方向の隙間を確保することができる。これにより、第1部材21と第2部材22とが互いに接触し、粘弾性体23が大きく変形してしまうのを抑えることが可能になり、粘弾性制振ダンパー20の据え付け精度を安定させることができる。
【0055】
また、仮に第1部材21および第2部材22が、上下方向に対して傾斜した状態で建築構造物に取付けられることによって、第1部材21および第2部材22が、それぞれの自重により、長手方向におけるそれぞれの端部を中心に、相対的に回動しやすくなったとしても、支持部材29を、第2部材22に当接させることが可能になり、粘弾性体23に第1部材21および第2部材22の自重が加えられるのを抑えることができる。これにより、粘弾性体23が大きく変形するのを抑えることができる。
【0056】
次に、粘弾性制振ダンパー20の変形例について説明する。
図7に示すように、変形例の粘弾性制振ダンパー30では、第2部材22の径方向の外側に、径方向に互いに対向して配置され、第2部材22を径方向に囲繞する一対の囲繞分割管31が配設されている。一対の囲繞分割管31は、径方向のうち、前記横断面視でウェブ21bが延びる方向に対向している。囲繞分割管31は、例えば金属材料等により形成されている。囲繞分割管31は、前記横断面視で径方向の内側に向けて開口するU字状を呈する。
【0057】
囲繞分割管31の外面のうち、径方向の内側を向く内側底面31aは、第2部材22における分割管22aの外面のうち、径方向の外側を向く外側底面22eと、径方向に隙間を設けて対向している。
囲繞分割管31と第2部材22との径方向の隙間には、粘弾性体23が中心軸線Oを挟んで一対各別に配設されている。
【0058】
囲繞分割管31は、図示しない連結手段により、第1部材21の一方側の端部と連結されている。このため、粘弾性制振ダンパー30に長手方向に沿う外力が加えられると、囲繞分割管31は、第1部材21とともに長手方向に変位する。
このように、粘弾性制振ダンパー30に囲繞分割管31が配設されている場合には、粘弾性制振ダンパー30に配設される粘弾性体23の数量を増やすことができ、粘弾性制振ダンパー30の制振性能を向上することができる。
【0059】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0060】
例えば、上記第1実施形態および第2実施形態においては、支持部材19、29が、ナット部材19a、29aとボルト部材19b、29bを備え、ボルト部材19b、29bが、第1部材21および第2部材22のうちの少なくとも一方に配設される構成を示したが、このような態様に限られない。支持部材は一体の部品で構成されてもよい。
【0061】
また、上記第1実施形態においては、第2部材12が、表裏面が板厚方向を向き、第2本体板12A、および一対の接続板11Bを板厚方向で挟む一対の連結板12Bを備える構成を示したが、このような態様に限られない。第2部材は、連結板12Bを備えていなくてもよい。
【0062】
また、上記第1実施形態においては、支持部材19が、第1部材11の接続板11Bから板厚方向に向けて突出し、第2本体板12A上を摺動する構成を示したが、このような態様に限られない。支持部材は、接続板11Bから板厚方向に向けて突出し、連結板12B上を摺動してもよい。
また、支持部材は、第2部材12の第2本体板12Aから板厚方向に向けて突出し、接続板11B上を摺動してもよいし、第2部材12の連結板12Bから板厚方向に向けて突出し、接続板11B上を摺動してもよい。
さらにまた、粘弾性制振ダンパーが、これらの支持部材を複数備えていてもよい。
【0063】
また、上記第1実施形態においては、支持部材19が、接続板11Bにおける外周縁部において、表裏面に沿う方向のうち、水平方向で接続板11Bを挟んで互いに対向する位置に各別に配設されている構成を示したが、このような態様に限られない。支持部材は、第2部材22における第2本体板12Aおよび連結板12Bのうちのいずれかにおける外周縁部に配設されてもよい。
【0064】
また、支持部材は、左右方向で互いに対向する位置に各別に配設されている構成を示したが、このような態様に限られない。支持部材は、沿面方向で互いに対向する位置に各別に配設されてもよい。例えば上下方向と左右方向に対向して4つ配設されてもよい。
また、上記第1実施形態においては、支持部材19が一対配設された構成を示したが、このような態様に限られず、支持部材は、3つ以上配設されていてもよい。
【0065】
また、上記第2実施形態においては、粘弾性制振ダンパー20は、上下方向に対して傾斜した状態で建築構造物に取付けられる構成を示したが、このような態様に限られない。粘弾性制振ダンパーは、第1部材が上方に配置され、第2部材が下方に配置されてもよいし、上下方向に沿って、又は水平方向やその他の方向に沿って建築構造物に取付けられてもよい。
【0066】
また、上記第2実施形態においては、支持部材29は、長手方向に直交する横断面視で粘弾性体23が延びる方向に沿って突出している構成を示したが、このような態様に限られない。支持部材29は、前記横断面視で、粘弾性体23が延びる方向と直交する方向に突出してもよい。
【0067】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。