特許第6774880号(P6774880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIXILの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774880
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】障子
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/02 20060101AFI20201019BHJP
【FI】
   E06B7/02
【請求項の数】10
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-1428(P2017-1428)
(22)【出願日】2017年1月6日
(65)【公開番号】特開2018-111932(P2018-111932A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】木平 浩司
【審査官】 鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−322883(JP,A)
【文献】 特開2014−062375(JP,A)
【文献】 特開平11−223078(JP,A)
【文献】 実開平2−053483(JP,U)
【文献】 中国実用新案第205532049(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00− 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建具枠の内周側に収められ、見込方向の両側の空間を連通させるための通気路が内部に形成された戸体と、
前記通気路を通ろうとする異物を捕捉するためのフィルタと、を備え、
前記戸体の外周面には、前記戸体の内部から前記フィルタを出し入れするための出入口が形成される障子。
【請求項2】
前記戸体は、その幅方向の一端部が回動軸を介して前記建具枠に連結され、前記回動軸周りの回動を伴い開閉可能であり、
前記出入口は、前記戸体の外周面のうちの幅方向の他端部の側面に形成される請求項1に記載の障子。
【請求項3】
前記出入口を塞ぐ蓋を備え、
前記フィルタは、前記蓋と一体に設けられる請求項1または2に記載の障子。
【請求項4】
前記フィルタは、前記戸体の幅方向に長い長尺体であり、その長手方向の端部が前記蓋に固定される請求項3に記載の障子。
【請求項5】
前記出入口を塞ぐ蓋を備え、
前記蓋は、蓋本体と、前記蓋本体を前記出入口から引き出す方向の操作力を受けて前記蓋本体に伝達可能に設けられる操作部材と、を有する請求項1から4のいずれかに記載の障子。
【請求項6】
前記操作部材は、前記蓋本体の外面からの突出量を調整可能に構成される請求項5に記載の障子。
【請求項7】
前記操作部材は、前記蓋本体を前記戸体に締結するための締結具である請求項5または6に記載の障子。
【請求項8】
前記フィルタは、前記通気路を仕切る仕切壁部と、前記仕切壁部に形成される複数の通気穴とを有する押出成形品である請求項1から7のいずれかに記載の障子。
【請求項9】
建具枠の内周側に収められ、見込方向の両側の空間を連通させるための通気路が内部に形成された戸体と、
前記通気路を通ろうとする異物を捕捉するためのフィルタと、を備え、
前記フィルタは、前記戸体の外周面に取り付けられる障子。
【請求項10】
前記通気路は、
前記戸体の見込方向の一方側に臨む側面に形成され、前記見込方向の一方側の空間との間で空気が出入り可能な第1通気孔と
前記戸体の外周面に形成され、前記見込方向の他方側の空間との間で空気が出入り可能な第2通気孔とを有する請求項1から9のいずれかに記載の障子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に用いられる障子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建具が隔てる室内空間と室外空間の間での換気を目的として、戸体の内部に室内外を連通させるための通気路を設けた障子が提案されている。このような障子として、特許文献1には、戸体の通気路に虫や塵埃等の異物を捕捉するためのフィルタを配置したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−62375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルタへの異物の付着量が多くなると、フィルタの目詰まりの原因となるため、定期的にフィルタのメンテナンスが必要となる。このため、特許文献1の障子では、戸体の見込方向の室内側にある室内側面にフィルタを出し入れするための出入口を形成している。本発明者は、特許文献1の障子に関して検討したところ、意匠性の観点から改善の余地があるとの認識を得た。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、フィルタと組み合わせる場合に、良好な意匠性を得られる障子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は障子である。第1態様の障子は、建具枠の内周側に収められ、見込方向の両側の空間を連通させるための通気路が内部に形成された戸体と、前記通気路を通ろうとする異物を捕捉するためのフィルタと、を備え、前記戸体の外周面には、前記戸体の内部から前記フィルタを出し入れするための出入口が形成される。
【0007】
第1態様によれば、戸体が閉位置にあるとき、戸体を見込方向に見て戸体の出入口が見え難くなり、良好な意匠性を得られる。
【0008】
本発明の第9態様は障子である。第9態様の障子は、建具枠の内周側に収められ、見込方向の両側の空間を連通させるための通気路が内部に形成された戸体と、前記通気路を通ろうとする異物を捕捉するためのフィルタと、を備え、前記フィルタは、前記戸体の外周面に取り付けられる。
【0009】
第9態様によれば、戸体の内部からフィルタを出し入れするための出入口が不要となる。また、戸体が閉位置にあるとき、戸体の見込方向の側面にフィルタを取り付ける場合と比べて、戸体を見込方向に見てフィルタが見え難くなる。これらが相まって、良好な意匠性を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の障子が用いられる建具を示す平面断面図である。
図2】第1実施形態の障子を室内側から見た図である。
図3】第1実施形態の障子を室外側から見た図である。
図4】第1実施形態の障子の分解斜視図である。
図5】第1実施形態の戸体の下部を周辺構造とともに示す側面断面図である。
図6】第1実施形態の取付枠体を室内側から見た斜視図である。
図7図5の一部の拡大図である。
図8】第1実施形態の第1フィルタ、蓋及び下框材の斜視図である。
図9】第1実施形態の第1フィルタの平面図である。
図10】第1実施形態の戸体の戸先側端部の下端部を示す斜視図である。
図11】第1実施形態の戸体の戸先側端部の下端部を示す正面断面図である。
図12】第1実施形態の第1締結具の雄ねじ部を雌ねじ部から抜き出した状態を示す図である。
図13】第1実施形態の蓋を出入口から引き出した状態を示す図である。
図14】第1実施形態の戸体を模式的に示す平面図である。
図15】第1実施形態の開位置にある開閉装置を室外側から見た図である。
図16】第1実施形態の閉位置にある開閉装置を室外側から見た他の図である。
図17】第1実施形態の繋ぎ部材の一部の拡大図である。
図18】第1実施形態の温度ヒューズが溶融した状態を示す図である。
図19】第1実施形態のカバーパネルと第2フィルタを室内側から見た図である。
図20】第1実施形態のカバーパネルと第2フィルタを室外側から見た図である。
図21】第1実施形態の操作装置の斜視図である。
図22】第1実施形態の操作装置の側面断面図である。
図23】第1実施形態の操作装置を模式的に示す側面図である。
図24】第1実施形態のワイヤーと周辺構造を模式的に示す図である。
図25図4の矢視Qから戸体を見た図である。
図26図4の矢視Qから戸体を見た他の図である。
図27】第2実施形態の障子を図7と同様の視点から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態、変形例では、同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略したり、構成要素の寸法を適宜拡大、縮小して示す。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、第1実施形態の障子14が用いられる建具10を示す平面断面図である。建具10は、建具枠12と、障子14を備える。建具枠12は、建物に形成される建物開口部16の内周側に配置され、建物開口部16にビス等により固定される。障子14は、建具枠12の内周側に収められ、建物開口部16を開閉可能である。障子14は、建物開口部16を完全に閉じる閉位置にあるとき、見込方向Xの一方側の第1空間18と他方側の第2空間20を隔てている。ここでの見込方向Xとは、閉位置にある障子14を正面から見たときの奥行方向をいう。本例では、第1空間18が室内空間18となり、第2空間20が室外空間20となる。以下、見込方向Xの一方側を室内側といい、見込方向Xの他方側を室外側という。
【0013】
建具枠12は、矩形状に枠組みされた複数の建具枠材を有する。建具枠12と閉位置にある障子14との間には環状に気密材22が配置され、これらの間は気密材22によりシールされる。
【0014】
図2は、障子14を室内側から見た図であり、図3は、障子14を室外側から見た図であり、図4は、障子14の分解斜視図である。障子14は、主に、戸体24と、第1フィルタ26と、蓋28とを備える。
【0015】
(戸体24)
図1に示すように、本実施形態の障子14は単数の戸体24を有する。戸体24は、建具枠12の内周側に収められる。戸体24の幅方向Yの一方側の端部24aは、上下に延びる回動軸30を介して建具枠12に連結される。本実施形態の回動軸30は蝶番の一部として組み込まれる。ここでの戸体24の幅方向Yとは、戸体24を見込方向Xに見て左右に延びる水平方向をいう。以下、戸体24の幅方向Yの一方側(図1中左側)を戸尻側といい、他方側(図1中右側)を戸先側という。
【0016】
戸体24は、回動軸30周りの回動を伴い建物開口部16を開閉可能である。詳しくは、戸体24は、回動軸30周りの回動を伴い外開き可能である。ここでの外開きとは、戸体24の戸先側端部24bが室外側に向かって動くことで開くことをいう。
【0017】
図5は、戸体24の下部を周辺構造とともに示す側面断面図である。図4図5に示すように、戸体24は、主に、框体32と、室内側表面板34(第1表面板)と、室外側表面板36(第2表面板)と、取付枠体38とを有する。
【0018】
框体32は、矩形状に枠組みされた複数の框材を有する。框材には、上框材32Aと、下框材32Bと、左右の縦框材32Cとが含まれる。框材は、アルミニウム等の金属を素材とする押出成形品である。本実施形態の框材は、溝形の断面形状をもつ長尺体である。
【0019】
室内側表面板34と室外側表面板36は、金属を素材とするプレス成形品、つまり、一体成形品である。室内側表面板34は、框体32の室内側に配置され、框体32にビス等により取り付けられる。室内側表面板34は、見込方向Xの室内側に臨む矩形状の室内側面24c(第1側面)を形成する第1主板部34aと、第1主板部34aの四周の外周縁部から室外側に延びる第1周板部34bと、を有する。
【0020】
室外側表面板36は、框体32の室外側に配置され、框体32にビス等により取り付けられる。室外側表面板36は、見込方向Xの室外側に臨む矩形状の室外側面(第2側面)を形成する第2主板部36aと、第2主板部36aの四周の外周縁部から室内側に延びる第2周板部36bとを有する。
【0021】
第1主板部34aは框体32を室内側から覆い、第2主板部36aは框体32を室外側から覆う。第1周板部34bと第2周板部36bとは互いの先端部が突き合わせられており、框体32を外周側から覆う。第1周板部34bと第2周板部36bの外周面は戸体24の四辺の外周面を形成している。戸体24の内部には室内側表面板34、室外側表面板36、框体32により囲まれた中空構造が設けられる。
【0022】
図6は、取付枠体38を室内側から見た斜視図である。取付枠体38は、開閉装置58(後述する)等の固定先となる。取付枠体38は、戸体24の下部の内部に配置される。詳しくは、取付枠体38は、框体32の下部の内周側に配置される。取付枠体38は、矩形状に枠組みされた複数の枠材を有する。枠材には、上枠材38Aと、下枠材38Bと、左右の縦枠材38Cとが含まれる。取付枠体38の室外側に臨む面には接着等により裏板40が取り付けられる。裏板40は、取付枠体38の内周側空間を室外側から覆う。取付枠体38は、図5に示すように、下框材32Bに載せられたうえで接着テープ等により下框材32Bに固定される。裏板40は、室外側表面板36に裏側から当接する。
【0023】
戸体24の内部には、室内空間18と室外空間20を連通させるための通気路42が形成される。通気路42は、戸体24の下部の内部に形成される。通気路42は、取付枠体38に囲まれた箇所や、取付枠体38の下枠材38Bと下框材32Bとに挟まれた箇所に形成される。本図では通気路42を通る空気の流通経路を一点鎖線Paで示す。
【0024】
通気路42は、室内空間18と通気路42の間で空気が出入りするための第1通気孔42aと、室外空間20と通気路42の間で空気が出入りするための第2通気孔42bとを有する。本実施形態の第1通気孔42aは、図4図5に示すように、戸体24の室内側面24cに形成される。本実施形態の第1通気孔42aは見込方向Xに見て矩形状を呈する。第1通気孔42aは開閉装置58により開閉される。
【0025】
図7は、図5の一部の拡大図である。本実施形態の第2通気孔42bは、戸体24の四辺の外周面のうちの下面24dに形成されている。詳しくは、第2通気孔42bは、室内側表面板34の下側の第1周板部34bや室外側表面板36の下側の第2周板部36bに形成される。第2通気孔42bは、戸体24の幅方向Yに沿って延びる長孔であり、戸体24の下面24dに幅方向Yに間を空けて複数形成される。
【0026】
下框材32Bや下枠材38Bには通気路42の一部となる貫通孔44が形成される。本実施形態の貫通孔44は、第2通気孔42bと上下に重なる位置に形成され、第2通気孔42bと同様に戸体24の幅方向Yに沿って延びる長孔である。
【0027】
戸体24の内部には第1フィルタ26を収容するためのフィルタ収容室46が設けられる。本実施形態のフィルタ収容室46は下框材32Bと下枠材38Bとの間に通気路42の一部として設けられる。図8は、第1フィルタ26、蓋28及び下框材32Bの斜視図である。フィルタ収容室46は、戸体24の下部、詳しくは、戸体24の下端部にて戸体24の幅方向Yに広がるように設けられる。本実施形態のフィルタ収容室46の戸先側端部(図8中右下側端部)は蓋28により画定され、戸尻側端部(図8中左上側端部)は下框材32Bの裏面から立ち上がる隔壁部材50により画定される。
【0028】
図7に示すように、フィルタ収容室46の内下面、つまり、下框材32Bの内下面は第1フィルタ26を載置するためのフィルタ載置面46aとなる。また、フィルタ収容室46のフィルタ載置面46aや内側面46bは、戸体24の幅方向Yに向かって平坦に延びている。
【0029】
(第1フィルタ26)
図9は、第1フィルタ26の平面図である。図7図9に示すように、第1フィルタ26は、戸体24の通気路42に配置される。詳しくは、第1フィルタ26は、通気路42の一部となるフィルタ収容室46に配置される。第1フィルタ26は、通気路42を通ろうとする異物を捕捉するためのものであり、通気路42内で第1通気孔42aから第2通気孔42bに至る空気の流通経路Paを横断するように配置される。第1フィルタ26は、室内空間18側の空間と室外空間20側の空間とに通気路42を仕切るように配置されることになる。
【0030】
第1フィルタ26は、戸体24の幅方向Yに長い長尺体である。第1フィルタ26は、アルミニウム等の金属又は樹脂を素材とする押出成形品、つまり、一体成形品である。第1フィルタ26は、互いに見込方向Xに対向する一対の側壁部26aと、一対の側壁部26aを接続する仕切壁部26bとを有する。一対の側壁部26aと仕切壁部26bのそれぞれは板状をなし、第1フィルタ26は全体としてH字状をなす。第1フィルタ26は、一対の側壁部26aそれぞれがフィルタ載置面46a上に載せられる。
【0031】
仕切壁部26bは、一対の側壁部26aそれぞれの上下方向での中間部に接続され、フィルタ載置面46aから間を空けて配置される。仕切壁部26bは、前述のように、室内空間18側の空間と室外空間20側の空間とに通気路42を仕切るためのものである。仕切壁部26bの幅方向Yの寸法Lbは、フィルタ収容室46の幅方向Yの寸法Laと同等の大きさに設定され、フィルタ収容室46を幅方向Yの全長に亘り上下に仕切ることになる。仕切壁部26bの上面部と一対の側壁部26aとの間の内隅部には第1締結具52をねじ込むための締結穴26cが形成される。
【0032】
仕切壁部26bには複数の第1通気穴26dが形成される。本実施形態の第1通気穴26dは見込方向Xに細長いスリット状をなし、複数の第1通気穴26dは第1フィルタ26の長手方向(戸体24の幅方向Y)に並べられる。
【0033】
本実施形態の第1フィルタ26は異物としての虫を捕捉するためのものである。これを実現するため、第1通気穴26dの大きさは、虫を捕捉可能な予め定められた範囲の大きさに設定されている。詳しくは、本実施形態の第1通気穴26dの大きさは、仕切壁部26bの厚み方向に見て、第1通気穴26dに内接する内接円の最大径が1.0cm以下となるように設定される。本実施形態ではスリット状の第1通気穴26dの幅寸法が1.0cm以下となるように設定されている。
【0034】
図10は、戸体24の戸先側端部24bの下端部を示す斜視図であり、図11は、その正面断面図である。戸体24には、戸体24の内部から第1フィルタ26を出し入れするための出入口24eが形成される。出入口24eは、戸体24の四辺の外周面のうちの戸先側側面24fに形成される。詳しくは、戸体24の戸先側側面24fの下端部に形成される。第1フィルタ26は、戸体24の出入口24eを通してフィルタ収容室46と外部空間との間で出し入れ可能である。第1フィルタ26は、フィルタ収容室46の見込方向Xに対向する内側面46b(図7参照)やフィルタ載置面46aに対するスライドを伴い、戸体24の出入口24eから出し入れされる。戸体24の戸先側端部24bの下面24dには、戸体24の戸先側側面24fから戸尻側端部24a側(図11中左側)に向かって切り欠いた切欠24gが形成される。切欠24gは戸体24の出入口24eと連続している。
【0035】
(蓋28)
蓋28は、戸体24の出入口24eを塞いでいる。本実施形態の蓋28は第1フィルタ26とは別部材により構成される。蓋28は、蓋本体28aと、第1締結具52とを有する。
【0036】
図11に示すように、戸体24は、さらに、框体32と蓋28とを連結するための連結部材54を有する。連結部材54は、框体32の縦框材32Cに固定される框固定部54aと、蓋28が固定される蓋固定部54bとを有する。框固定部54aは板状をなし、縦框材32Cの外面に重ね合わせられた状態でビス54cにより固定される。蓋固定部54bは板状をなし、框固定部54aより戸体24の幅方向Yの内側に配置される。蓋固定部54bには戸体24の幅方向Yに貫通する雌ねじ孔54dが形成される。
【0037】
蓋本体28aは、側壁部28bと、下壁部28cとを有する。蓋本体28aは、金属等を素材として、各部位が一体的に構成された一体成形品である。
【0038】
側壁部28bは、戸体24の戸先側側面24fの出入口24eを塞いでいる。側壁部28bの外面は戸体24の戸先側側面24fと面一となるように設けられる。側壁部28bには第1締結具52を挿通するための挿通穴28dが形成される。挿通穴28dは蓋本体28aの外面側に向かって拡径するテーパー状をなす。側壁部28bの裏面には第1フィルタ26の長手方向の端部が突き当てられる。第1フィルタ26は、蓋本体28aの側壁部28bを貫通するとともに、第1フィルタ26の締結穴26cにねじ込まれるビス等の第2締結具56を用いて、その長手方向の端部が蓋本体28aに固定される。第1フィルタ26は蓋28と一体に設けられることになる。
【0039】
下壁部28cは、側壁部28bの下端部から戸体24の戸尻側(図11中左側)に向かって延びている。下壁部28cは、戸体24の下面24dの切欠24gを塞いでいる。下壁部28cの外面は戸体24の下面24dと面一となるように設けられる。
【0040】
第1締結具52は、頭部52aと、軸部52bとを有する。頭部52aには、ドライバー等の工具を係合させて第1締結具52を回転させるための工具係合穴52cが設けられる。頭部52aは座面が截頭円錐状をなす。頭部52aは軸部52b寄りの部分を含む大部分が挿通穴28dに収められる。
【0041】
軸部52bは、蓋本体28aの側壁部28bを貫通している。軸部52bは、先端側の雄ねじ部52dと、雄ねじ部52dより頭部52a側の小径部52eとを有する。連結部材54の雌ねじ孔54dには第1締結具52の雄ねじ部52dがねじ込まれ、第1締結具52を締め付けることで連結部材54と蓋本体28aとが締結される。蓋28は第1締結具52により戸体24に着脱可能に固定されることになる。
【0042】
図12は、第1締結具52の雄ねじ部52dを雌ねじ孔54dから抜き出した状態を示す図である。この状態にあるとき、戸体24に対する第1締結具52の固定状態が解除される。このとき、第1締結具52の軸部52bは、蓋本体28aの挿通穴28dに対して挿抜方向に移動可能に支持される。
【0043】
小径部52eは、雄ねじ部52dのねじ山の外径より小径である。本実施形態の小径部52eはねじ山が外周面に形成されない無ねじ部である。雄ねじ部52dと小径部52eの間には頭部52a側に臨む段差部52fが設けられる。小径部52eにはEリング等の止め輪のような抜け止め部材52gが着脱可能に装着される。抜け止め部材52gは、第1締結具52が蓋本体28aの挿通穴28dから抜けようとしたとき、蓋本体28aの側壁部28bの裏面と第1締結具52の段差部52fとの間に挟み込まれる。これにより、抜け止め部材52gは、第1締結具52の挿通穴28dからの抜けを規制する役割を果たす。
【0044】
第1締結具52は、戸体24に対する固定状態を解除したとき、蓋本体28aの外面28eから頭部52aの座面が幅方向Yの外側に離れた位置に配置され、蓋本体28aの挿通穴28dから頭部52aが抜け出ている。このとき、第1締結具52は、蓋本体28aの外面28eから幅方向Yの外側に大きく突出している。一方、第1締結具52は、戸体24に対して固定状態にあるとき、蓋本体28aの外面28eからの突出量が小さくなり、蓋本体28aの挿通穴28dに頭部52aが収められる。このとき、第1締結具52の頭部52aの先端面は蓋本体28aの外面28eと連なるように設けられる。このように、第1締結具52は、蓋本体28aの外面28eからの突出量を調整可能に構成される。
【0045】
図13は、蓋28を出入口24eから引き出した状態を示す図である。第1締結具52は、戸体24に対する固定状態を解除したとき、蓋本体28aを出入口24eから引き出す引出方向Pbの操作力を受けると、その操作力を抜け止め部材52gを介して蓋本体28aに伝達可能である。つまり、第1締結具52は、引出方向Pbの操作力を受けて蓋本体28aに伝達可能に設けられる。ここでの引出方向Pbとは戸体24の幅方向Yの外側に向かう方向である。本実施形態の蓋本体28aは、この引出方向Pbの操作力を受けて戸体24の出入口24eから第1フィルタ26とともに引き出される。このように、第1締結具52は、戸体24の出入口24eから蓋本体28aを引き出すとき、作業者により操作される操作部材として機能する。本実施形態の第1締結具52は、作業者が頭部52aを摘まんだ状態で引出方向Pbに操作される。
【0046】
以上の障子14を用いた第1フィルタ26のメンテナンスの手順を説明する。ここでのメンテナンスとは、第1フィルタ26の清掃、交換、点検等を目的とする作業をいう。
【0047】
図14は、戸体24を模式的に示す平面図である。まず、戸体24の出入口24eから第1フィルタ26を引き出すスペースを確保できるように、戸体24を開方向Pcに動かす。戸体24の開き量は戸体24の幅方向Yでの延長線上に第1フィルタ26を配置できるスペースが設けられるように調整する。戸体24の開き量を調整したら、その調整後の開き量で保持されるように、ドアストッパ等の位置保持具を用いて戸体24の位置を保持する。
【0048】
次に、図12に示すように、蓋28の戸体24に対する固定状態を解除する。本実施形態では、第1締結具52を緩め、第1締結具52の雄ねじ部52dを連結部材54の雌ねじ孔54dから抜き出すことで、戸体24に対する第1締結具52の固定状態を解除する。
【0049】
この後、図13に示すように、第1締結具52の頭部52aに引出方向Pbの操作力を付与し、蓋本体28aとともに第1フィルタ26を戸体24の出入口24eから引き出す。戸体24の内部から第1フィルタ26の全体を引き出したら、第1フィルタ26のメンテナンスをする。
【0050】
この後、戸体24の出入口24eから奥側に向けてメンテナンス済みの第1フィルタ26を押し込むことで、戸体24のフィルタ収容室46に第1フィルタ26を配置する。このとき、第1フィルタ26には蓋28を固定しておく。この後、第1締結具52を連結部材54の雌ねじ孔54dにねじ込み、第1締結具52を締め付けることで、戸体24に蓋28を固定する。
【0051】
障子14の効果を説明する。
本実施形態では、第1フィルタ26を出し入れするための出入口24eが戸体24の外周面に形成される。よって、戸体24が閉位置にあるとき、戸体24を見込方向Xに見て戸体24の出入口24eや出入口24eを塞ぐ蓋28が見え難くなり、良好な意匠性を得られる。
【0052】
本実施形態では、図14に示すように、戸体24の戸尻側端部24aが回動軸30を介して建具枠12に連結され、戸体24の戸先側端部の側面に出入口24eが形成される。よって、戸体24を開方向に動かすことで、室内空間18から離れた箇所に戸体24の出入口24eを配置できる。これに伴い、室内空間18から離れた箇所を、戸体24の出入口24eを通して第1フィルタ26を出し入れするための作業空間にできる。よって、第1フィルタ26の出し入れに伴い第1フィルタ26に付いた塵埃が飛散しても、その飛散範囲を室外空間20にとどめ易くなり、室内空間18での塵埃の堆積を防止できる。
【0053】
本実施形態の第1フィルタ26は戸体24に着脱可能な蓋28に固定される。よって、蓋28の着け外しと同時に第1フィルタ26を出入口24eから出し入れできるようになり、第1フィルタ26のメンテナンス時の作業性が良好になる。
【0054】
また、第1フィルタ26は蓋28を介して戸体24に固定されることになる。よって、室外空間20側から通気路42内に大流量の空気が入り込んだ場合でも、第1フィルタ26の位置ずれが生じ難くなり、第1フィルタ26を定位置に保ち易くなる。
【0055】
また、第1フィルタ26は長尺体であるため、第1フィルタ26の長手方向に関する向きが所定の向きとなるように、戸体24の内部に配置することを要する場合がある。たとえば、戸体24の下面24dの第2通気孔42bが幅方向Yの一方側に偏った位置にあり、第1フィルタ26の第1通気穴26dが幅方向Yの他方側に偏った位置にある場合である。この場合、第1フィルタ26の長手方向に関する向きを所定の向きとは逆向きに配置する組み違いが生じ得る。このような組み違えが生じると、上の例でいえば、第1フィルタ26の第1通気穴26dを通してスムーズに空気が流れ難くなり、その組み違いに起因する不具合が生じる。ここで、本実施形態では第1フィルタ26の長手方向の端部に蓋28が固定されるため、第1フィルタ26の長手方向の向きに関する組み違えが生じ難くなる。よって、第1フィルタ26の長手方向の向きに関する組み違いを防止でき、その組み違いに起因する不具合を防止できる。
【0056】
また、蓋28は、蓋本体28aと、引出方向Pbの操作力を受けて蓋本体28aに伝達可能な第1締結具52とを有する。よって、第1締結具52をつまみとして利用することで、戸体24の出入口24eから蓋本体28aを引き出す作業をし易くなる。
【0057】
また、第1締結具52は蓋本体28aの外面からの突出量を調整可能である。よって、第1フィルタ26のメンテナンス時には第1締結具52の突出量を大きくすることで、第1締結具52を摘まみ易くなる。また、第1フィルタ26のメンテナンスの完了後、第1締結具52の突出量を小さくすることで、第1締結具52と周辺構造物(建具枠12)との干渉を避けられる。
【0058】
また、第1締結具52は蓋本体28aを戸体24に締結するためのものでもある。よって、第1締結具52の機能として、蓋本体28aを戸体24に固定する機能を持たせつつ、つまみとしての機能も持たせることができる。このため、それぞれの機能を別部品で実現するより部品点数を抑えられる。
【0059】
(A)また、第1フィルタ26は同様の断面が長手方向に連続する押出成形品である。よって、第1フィルタ26を長手方向に切断することで、第1フィルタ26の長手寸法を容易に調整できる。複数種の幅寸法が異なる戸体24に第1フィルタ26を組み込む場合を考える。本実施形態では、予め用意しておいた単数種の第1フィルタ26を切断することで、戸体24の幅寸法によらず第1フィルタ26を戸体24に組み付けられるようになる。よって、複数種の幅寸法が異なる戸体24との間で単数種の第1フィルタ26を共用でき、管理すべき部品点数を抑えられる。
【0060】
なお、蓋本体28aは、図11に示すように、間隔保持部28fを更に有する。間隔保持部28fは、蓋本体28aの側壁部28bの上端部から側壁部28bの裏側に向けて突き出ている。間隔保持部28fは、蓋本体28aを連結部材54に締結するうえで、連結部材54に当たることで、連結部材54との間の間隔を保持する役割を持つ。これにより、側壁部28bの外面と戸体24の戸先側側面24fとを面一にし易くなる。なお、同様の役割を果たすため、蓋本体28aの側壁部28bと連結部材54との間に板状のスペーサを挟み込んでもよい。
【0061】
次に、障子14の他の特徴を説明する。
図5図6に示すように、取付枠体38の室内側に臨む面の内周縁部には室外側に向かって窪む収容凹部38aが設けられる。収容凹部38aの内側は通気路42の一部となる。収容凹部38aには、後述する開閉装置58、カバーパネル72、第2フィルタ74が嵌め込まれた状態で収容される。収容凹部38aには、室内側に臨む当て面部38bが設けられる。
【0062】
(開閉装置)
障子14は、更に、通気路42を開閉するための開閉装置58を備える。図15及び図16は、開閉装置58を室外側から見た図である。図15では、開閉装置58の開閉部材62(後述する)が開位置にあり、図16では閉位置にある。
【0063】
開閉装置58は、通気部材60と、開閉部材62と、繋ぎ部材64とを有する。通気部材60と開閉部材62は無双戸を構成する。通気部材60は、複数の第2通気穴60aが形成された板状部材であり、開閉部材62は、複数の第3通気穴62aが形成された板状部材である。
【0064】
図5に示すように、通気部材60と開閉部材62は、戸体24の通気路42内に配置される。通気部材60は、取付枠体38の当て面部38bに室内側から重ね合わせられ、その外周縁部を貫通するビス65により当て面部38bに固定される。
【0065】
図15図16に示すように、開閉部材62は、通気部材60の裏側に配置され、通気部材60に対して上下にスライド可能に取り付けられる。通気部材60には、開閉部材62と当たることで上方へのスライド範囲を制限する上側ストッパ部材60bと、開閉部材62と当たることで下方へのスライド範囲を制限する下側ストッパ部材60cとが取り付けられる。
【0066】
開閉部材62は、通気部材60に対してスライドすることで、通気部材60の第2通気穴60aを全開させる開位置と、第2通気穴60aを全閉させる閉位置との間を移動可能である。開閉部材62は上側ストッパ部材60bと当たるときに開位置にあり、下側ストッパ部材60cと当たるときに閉位置にある。開閉部材62が開位置にあるとき、通気部材60の第2通気穴60aと開閉部材62の第3通気穴62aとが見込方向Xに重なる位置に配置され、通気路42が開かれた状態になる。開閉部材62が閉位置にあるとき、通気部材60と開閉部材62により通気路42が閉じられた状態になる。
【0067】
繋ぎ部材64は、開閉部材62の裏側に配置される。図17は、繋ぎ部材64の一部の拡大図である。繋ぎ部材64には操作装置80のワイヤー90(後述する)が挿通される挿通孔64aが形成される。ワイヤー90の末端部には第1ワイヤーエンド90aが取り付けられる。ワイヤー90の第1ワイヤーエンド90aは、繋ぎ部材64と当たることで繋ぎ部材64の挿通孔64aからの抜けを規制する。これにより、繋ぎ部材64にはワイヤー90(後述する)が繋がれる。本実施形態の開閉部材62は、ワイヤー90により繋ぎ部材64とともに上昇させられることで開位置に移動し、自重により下降することで閉位置に移動する。
【0068】
以上の開閉装置58は、戸体24に防火戸としての機能を発揮させるため、次のように構成される。
【0069】
図16に示すように、開閉部材62の裏面には戸体24の幅方向Yにスライド自在に繋ぎ部材64を支持する一対のガイド部材66が取り付けられる。繋ぎ部材64は一対のガイド部材66を介して開閉部材62にスライド自在に支持されることになる。以下、スライド方向Pdの一方側(図16中右側)を右側とし、他方側(図16中左側)を左側として説明する。
【0070】
繋ぎ部材64の右側部分はコイルばね等の付勢部材68を介して開閉部材62に接続される。付勢部材68は、スライド方向Pdに弾性的に伸び変形しており、その弾性反発力を用いて繋ぎ部材64を右側に向けて付勢している。
【0071】
繋ぎ部材64の左側部分は温度ヒューズ70を介して開閉部材62に接続される。温度ヒューズ70は、火災時に想定される所定の温度範囲に加熱されたときに溶融する性質を持つ。
【0072】
繋ぎ部材64の挿通孔64aには、ワイヤー90に対する繋ぎ部材64の右側への相対移動を許容するため、左側に向かって開く切欠部64b(図17参照)が形成される。
【0073】
図18は、温度ヒューズ70が溶融した状態を示す。火災時に温度ヒューズ70が溶融した場合、繋ぎ部材64は付勢部材68の付勢力により右側に移動する。繋ぎ部材64が右側に移動すると、繋ぎ部材64の挿通孔64aからワイヤー90が抜け出ることで、繋ぎ部材64に対するワイヤー90の繋ぎ状態が解除される。これに伴い、開閉部材62はワイヤー90により移動不能となり、自重により常に閉位置に保持される。これにより、戸体24の通気路42を通ろうとする火炎が開閉装置58により遮断される。
【0074】
(カバーパネル72及び第2フィルタ74)
図5に示すように、障子14は、更に、カバーパネル72と、第2フィルタ74とを備える。カバーパネル72と第2フィルタ74は、戸体24の通気路42、詳しくは、通気路42の一部となる収容凹部38a内に配置される。カバーパネル72は、戸体24の第1通気孔42aを覆い塞ぐように配置される。
【0075】
図19は、カバーパネル72と第2フィルタ74を室内側から見た図である。カバーパネル72には複数の第4通気穴72aが形成される。カバーパネル72は、その外周縁部に挿通されるビス76により、取付枠体38の当て面部38bに間を空けて固定される。
【0076】
図20は、カバーパネル72と第2フィルタ74を室外側から見た図である。第2フィルタ74は、通気路42を通ろうとする異物を捕捉するためのものである。第2フィルタ74は、カバーパネル72の裏側にて通気路42での空気の流通経路を横断するように配置される。詳しくは、通気路42の空気の流通経路となるカバーパネル72の全ての第4通気穴72aを覆うように配置される。第2フィルタ74は、異物としての塵埃を捕捉するためのメッシュフィルタである。第2フィルタ74は、戸体24の幅方向Yや上下方向に延びるシート状をなす。
【0077】
第2フィルタ74は、面ファスナー78を用いてカバーパネル72に取り付けられる。詳しくは、カバーパネル72と第2フィルタ74とには互いに対向する箇所に面ファスナー78が取り付けられる。面ファスナー78は、カバーパネル72の第4通気穴72aを避けた箇所に取り付けられる。第2フィルタ74は、カバーパネル72との間で互いに面ファスナー78同士を結合させることで、カバーパネル72に着脱可能に取り付けられる。
【0078】
(操作装置80)
図4に示すように、障子14は、更に、開閉装置58の開閉状態を操作するための操作装置80を備える。図21は、操作装置80の斜視図であり、図22は、操作装置80の側面断面図である。操作装置80は、主に、ベース部材82と、スライド部材84と、ロック部材86と、付勢部材88と、ワイヤー90と、を備える。ワイヤー90の詳細は後述する。
【0079】
ベース部材82は、戸体24の下部に固定されており、スライド部材84やロック部材86を支持している。ベース部材82は、戸体24に形成される取付孔24h内に室内側から差し込まれる差込部82aと、戸体24の室内側面24cに重ね合わせられる外板部82bとを有する。
【0080】
差込部82aは、戸体24の幅方向Yに細く上下に長い筒状をなす。差込部82aは、戸体24の幅方向Yに対向する一対の側壁部82aaと、上下に対向する上壁部82ab及び下壁部82acとを有する。一対の側壁部82aaは上壁部82abや下壁部82acより取付孔24hの奥側に突出する突出箇所82adを有する。一対の側壁部82aaの突出箇所82adの間には上下に間を空けて二つの裏当て部82cが設けられる。外板部82bは、上下に長い矩形状を呈しており、ビス92により戸体24に固定される。
【0081】
スライド部材84は、ベース部材82の上壁部82ab及び下壁部82acと裏当て部82cの間に配置されるスライド部84aと、スライド部84aから室内側に突き出る一対の突出部84bとを有する。スライド部84aは全体として板状をなしている。スライド部84aは、ベース部材82の上壁部82ab、下壁部82ac、裏当て部82c、一対の側壁部82aaをガイドとして、これらに対して上下にスライド可能である。スライド部材84は、ロック部材86を介してベース部材82に対して支持される。つまり、スライド部材84は、ベース部材82に対してスライド可能に支持される。スライド部84aの下端部にはワイヤー90の一端部が固定される。
【0082】
一対の突出部84bは上下に間を空けて設けられる。一対の突出部84bの間やスライド部84aには見込方向Xに貫通する挿通孔94が設けられる。挿通孔94は、スライド部84aに設けられる小孔部94aと、一対の突出部84bの間に設けられる大孔部94bとを有する。
【0083】
図23は、操作装置80を模式的に示す側面図である。スライド部材84は、ベース部材82に対して上下方向にスライドすることで、図23(a)に示すように、高位置にある第1スライド位置Sa1と、図23(b)に示すように、低位置にある第2スライド位置Sa2との間を移動可能である。
【0084】
開閉装置58の開閉部材62は、スライド部材84が第1スライド位置Sa1にあるとき、開位置に配置される(図15参照)。開閉部材62は、スライド部材84が第2スライド位置Sa2にあるとき、閉位置に配置される(図16参照)。スライド部材84が第2スライド位置Sa2から第1スライド位置Sa1にスライドして上昇すると、ワイヤー90が引き上げられることで、開閉部材62が開位置まで上昇する。スライド部材84が第1スライド位置Sa1から第2スライド位置Sa2にスライドして下降すると、ワイヤー90の引き下げを伴い、開閉部材62の自重により開閉部材62が閉位置まで下降する。このように、スライド部材84は、そのスライドに連動して開閉装置58の開閉状態を切り替え可能である。
【0085】
図22に示すように、ロック部材86は、スライド部材84の挿通孔94に挿抜方向Zに移動可能に挿通される。ロック部材86は、スライド部材84に対して移動可能に支持されることになる。ロック部材86は、スライド部材84の表側に配置される表側部材86Aと、スライド部材84の裏側に配置される裏側部材86Bとを有する。以下、ロック部材86の挿抜方向Zのうち、挿通孔94に表側から挿入される方向を挿入方向Zaとし、挿通孔94から抜ける方向を抜き方向Zbとする。
【0086】
表側部材86Aは、筒状部86aと、筒状部86aの先端側に設けられる頭部86bとを有する。ロック部材86は、スライド部材84の挿通孔94の奥側に向けて頭部86bを押し込むことで操作される。
【0087】
裏側部材86Bは、ブロック状の土台部86cと、土台部86cから室内側に向けて突き出る一対の弾性爪86dとを有する。弾性爪86dは、表側部材86Aの筒状部86a内に挿通される。弾性爪86dは、筒状部86aの開口周縁部に係合されることで、筒状部86a内からの抜けが規制され、表側部材86Aと裏側部材86Bが一体化される。弾性爪86dは、表側部材86Aの筒状部86a内に弾性的な撓み変形を伴い挿入されることで、筒状部86aの開口周縁部と係合可能な位置に設けられる。
【0088】
裏側部材86Bは、図21に示すように、土台部86cから戸体24の幅方向Yに突き出る一対のピン部86eとを有する。スライド部材84の一対の側壁部82aaのそれぞれにはロック孔82dが形成される。ロック孔82dにはロック部材86のピン部86eが挿通される。ロック孔82dはロック部材86の挿入方向Za側に向かって開いた切欠孔である。ロック孔82dは、抜き方向Zb側の上側に設けられた上側溝部82eと、抜き方向Zb側の下側に設けられた下側溝部82fとを有する。上側溝部82eと下側溝部82fは抜き方向Zb側に向かって窪んでいる。
【0089】
図22に戻る。付勢部材88は、ロック部材86の表側部材86Aの頭部86bとスライド部材84の大孔部94bの底壁部との間に配置される。付勢部材88は、ロック部材86を挿通孔94に押し込んだとき、ロック部材86に押し込み前の位置に戻る付勢力を付与するためのものである。ロック部材86は、付勢部材88の付勢力に抗して押し込まれることになる。ロック部材86は、押込力を付与していない場合、付勢部材88の付勢力により土台部86cが挿通孔94の開口周縁部に当たることで初期位置に保持される。
【0090】
ロック部材86は、スライド部材84の挿通孔94に対する挿抜方向Zでの移動によって、図23(a)に示すようなロック位置Sb1と、図23(c)に示すようなロック解除位置Sb2との間を移動可能である。ロック位置Sb1では、ロック部材86のピン部86eがロック孔82dの上側溝部82e又は下側溝部82f内に配置される。ロック解除位置Sb2では、ロック部材86のピン部86eがロック孔82dの溝部82e、82fから抜け出て、ロック孔82dの挿入方向Za側部分の内側に配置される。
【0091】
図23(a)に示すように、ロック部材86がロック位置Sb1にあり、かつ、スライド部材84が第1スライド位置Sa1にあるとき、ロック部材86のピン部86eが上側溝部82e内に配置される。このとき、ピン部86eが上側溝部82eの溝側面と当たることにより、スライド部材84のスライドがロックされるロック状態になる。
【0092】
一方、ロック部材86がロック解除位置Sb2にあるとき、ロック部材86のピン部86eが上側溝部82e又は下側溝部82fから抜け出ており、スライド部材84のスライドが許容されるロック解除状態になる。このように、ロック部材86とロック孔82dは、ロック状態とロック解除状態とを切り替え可能なロック機構96を構成する。
【0093】
これにより、ロック部材86がロック位置にある場合、スライド部材84を用いて開閉装置58の開閉状態を切り替え難くなる。よって、誤操作により開閉装置58の開閉状態が意図せず切り替わるのを防止できる。
【0094】
以上の操作装置80の他の特徴を説明する。
図22に示すように、ロック部材86の頭部86bの外面には、スライド部材84の挿通孔94にロック部材86を押し込むときに押圧される押圧面86fが設けられる。ロック部材86の押圧面86fは、ロック状態からロック解除状態に切り替えるときに押圧される。押圧面86fはロック機構96の一部を構成する。
【0095】
ロック部材86の押圧面86fは、使用者による押圧操作を受けるため、ロック解除位置Sb2からロック位置Sb1に向かう方向(抜き方向Zb)に臨んでいる。また、ロック部材86の押圧面86fは、スライド部材84が第2スライド位置Sa2から第1スライド位置Sa1に向かう上向きの方向に臨んでいる。本実施形態の押圧面86fは、抜き方向Zb及び上向きの方向に臨む平面状をなしている。この押圧面86fは、ロック部材86が初期位置にあるとき、第1突出部84bの外面と面一となるように設けられる。
【0096】
これにより、ロック部材86の押圧面86fを挿入方向Zaに押圧しようとするとき、挿入方向Zaに向かう力成分の他に、第1スライド位置Sa1から第2スライド位置Sa2に向かう下向きの力成分をロック部材86の押圧面86fに付与し易くなる。この結果、ロック部材86の押圧面86fに対する押圧方向を変えずとも、ロック部材86をロック位置Sb1からロック解除位置Sb2に移動させつつ、スライド部材84を第1スライド位置Sa1から第2スライド位置Sa2に移動させることができる。つまり、ロック部材86のロック解除操作と、スライド部材84を第1スライド位置Sa1から第2スライド位置Sa2にスライドさせる操作とを一操作で行うことができ、良好な操作性を得られる。
【0097】
このような効果は、ベース部材82を戸体24の下部に固定した場合に効果的に得られる。戸体24の下部にベース部材82を固定した場合、ロック部材86の押圧面86fを挿入方向Zaに向けて押圧する操作者が、ロック部材86の押圧面86fに下向きの力成分を付与し易くなるためである。
【0098】
図23(b)に示すように、ロック部材86がロック位置Sb1にあり、かつ、スライド部材84が第2スライド位置Sa2にあるとき、ロック部材86のピン部86eがロック孔82dの下側溝部82f内に配置される。ロック孔82dの下側溝部82fの溝側面のうち、スライド部材84が第2スライド位置Sa2から第1スライド位置Sa1に向かう側(上側)にある溝側面82gは、下側溝部82fの底側から入口側に向かうにつれて溝幅を広げるように傾斜している。
【0099】
ロック部材86がロック位置Sb1にあり、スライド部材84が第2スライド位置Sa2にある場合に、ロック部材86に第1スライド位置Sa1に向かう上向きの外力を付与するときを考える。このような外力は、スライド部材84の第2突出部84bを介してロック部材86に付与される。このとき、ロック部材86のピン部86eは、上向きの外力によって、下側溝部82fの溝側面82gによりロック位置Sb1からロック解除位置Sb2に向かう挿入方向Zaにガイドされる。本図ではロック部材86のピン部86eがガイドされることで動く経路を矢印Peで示す。ロック機構96は、この条件を満たすように構成されるといえる。これにより、ロック部材86のロック解除操作と、スライド部材84を第2スライド位置Sa2から第1スライド位置Sa1にスライドさせる操作とを一操作で行うことができ、良好な操作性を得られる。
【0100】
(ワイヤー90)
図24は、ワイヤー90と周辺構造を模式的に示す図である。ワイヤー90は、可とう性を持ち、スライド部材84が受けた操作力を開閉装置58に伝達するための伝達部材として機能する。ワイヤー90は、開閉装置58側の末端部に取り付けられる第1ワイヤーエンド90aと、操作装置80側の末端部に取り付けられる第2ワイヤーエンド90bとを有する。
【0101】
操作装置80は、ワイヤー90の他に、ワイヤー90に関連する構成として、ワイヤー90が挿通されるアウターケーブル98を備える。アウターケーブル98は可とう性をもつ筒状部材である。図2に示すように、アウターケーブル98は、戸体24の内部でのワイヤー90の配索経路を定めるためのものである。アウターケーブル98は、図4に示すように、戸体24の内部に固定される遮炎部材100(後述する)、繋ぎ枠材102、取付枠体38の上枠材38Aの内部を経由するように配索される。この繋ぎ枠材102は、遮炎部材100と上枠材38Aを繋いでいる。
【0102】
図24に戻る。アウターケーブル98の両端部の外周面には雄ねじ部98a、98bが形成されている。アウターケーブル98の一端部の雄ねじ部98aには中央側から先端側にかけて順に第1固定ナット98cと取付ナット98dが螺合される。アウターケーブル98の他端部の雄ねじ部98bには中央側から先端側にかけて順に第2固定ナット98eと第1調整ナット98fと第2調整ナット98gが螺合される。
【0103】
図15に示すように、アウターケーブル98の一端部は、戸体24の内部に固定される第1ケーブル固定部材104に固定される。本実施形態の第1ケーブル固定部材104は開閉装置58の上側ストッパ部材60bである。第1ケーブル固定部材104にはアウターケーブル98の一端部が挿通される。アウターケーブル98の一端部は、取付ナット98dの締め付けて、取付ナット98dと第1固定ナット98cの間に第1ケーブル固定部材を挟み込むことにより、第1ケーブル固定部材104に固定される。
【0104】
図25は、図4の矢視Qから戸体24を見た図である。戸体24の戸先側側面24fには点検孔106が形成され、その奥側にはアウターケーブル98の端部が配置される。点検孔106は、室内側表面板34や室外側表面板36の周板部34b、36bや、縦框材32Cに形成される。図4に示すように、戸体24には戸体24の点検孔106を塞ぐ点検孔カバー108が取り付けられる。点検孔カバー108はビス等を用いて着脱可能に戸体24に取り付けられる。
【0105】
図25に示すように、アウターケーブル98の他端部は、戸体24の内部に固定される第2ケーブル固定部材110に固定される。第2ケーブル固定部材110は、後述する遮炎部材100に固定される。第2ケーブル固定部材110にはアウターケーブル98の他端部が挿通される。アウターケーブル98の他端部は、第1調整ナット98f又は第2調整ナット98gの締め付けにより、第1調整ナット98fと第2調整ナット98gの間に第2ケーブル固定部材110を挟み込むことにより、第2ケーブル固定部材110に固定される。
【0106】
操作装置80を戸体24に組み込む手順を説明する。
まず、ワイヤー90の操作装置80側の端部に第2ワイヤーエンド90bを取り付け、その第2ワイヤーエンド90bを介してスライド部材84にワイヤー90を接続する(図21参照)。次に、戸体24の取付孔24h(図4参照)にワイヤー90を入れつつ、操作装置80のベース部材82等も取付孔24hに差し込み、ベース部材82を戸体24にビスにより固定する。次に、戸体24の内部の所定の配索経路上を通るようにワイヤー90の開閉装置58側の端部を動かし、そのワイヤー90の端部を戸体24の第1通気孔42aから引き出す。次に、アウターケーブル98の操作装置80側の端部を第2ケーブル固定部材110(図25参照)に固定する。次に、図15に示すように、ワイヤー90の開閉装置58側の端部を開閉装置58の繋ぎ部材64に挿通させて、繋ぎ部材64に繋ぐ。次に、開閉装置58を戸体24の収容凹部38a内に配置し、ビス等により戸体24に固定する。
【0107】
この後、操作装置80のスライド部材84を第1スライド位置Sa1と第2スライド位置Sa2の間で移動させることにより、開閉装置58が正しく開閉するか点検する。ここでの正しく開閉する場合とは、次の二つの条件を満たす場合をいう。第1の条件は、スライド部材84が第1スライド位置Sa1(図23(a)参照)にあるときに、開閉部材62が通気部材60を全開させる開位置(図15参照)にあることである。第2の条件は、スライド部材84が第2スライド位置Sa2(図23(b)参照)にあるときに、開閉部材62が通気部材60を全閉させる閉位置(図16参照)にあることをいう。
【0108】
開閉装置58が正しく開閉しない場合、戸体24の内部でのアウターケーブル98の二つの固定箇所間での配索経路長を調整する。ここでの二つの固定箇所とは、第1ケーブル固定部材104と第2ケーブル固定部材110に対してアウターケーブル98が固定される箇所をいう。この二つの固定箇所間でのアウターケーブル98の配索経路長を長くすると、ワイヤー90による開閉部材62の吊り下げ位置が高くなり、その配索経路長を短くすると、ワイヤー90による開閉部材62の吊り下げ位置が低くなる。
【0109】
この配索経路長を長くするためには、図26に示すように、アウターケーブル98の操作装置80側の端部に対する第1調整ナット98f及び第2調整ナット98gの螺合位置がアウターケーブル98の先端98hに近づくように調整する。この配索経路長を短くするためには、図25に示すように、アウターケーブル98の操作装置80側の端部に対する第1調整ナット98f及び第2調整ナット98gの螺合位置がアウターケーブル98の先端98hから離れるように調整する。
【0110】
スライド部材84が第1スライド位置Sa1にあっても、開閉部材62が通気部材60を完全に開けない場合を考える。この場合、ワイヤー90による吊り下げ位置を高くするため、前述の配索経路長を長くし、完全に開けるようにする。スライド部材84が第2スライド位置Sa2にあっても、開閉部材62が通気部材60を完全に閉じれない場合を考える。この場合、ワイヤー90による吊り下げ位置を低くするため、前述の配索経路長を短くし、完全に閉じれるようにする。これにより、開閉装置58が正しく開閉できるように、戸体24の内部でのワイヤー90の配索経路を調整できる。この調整作業は、戸体24の点検孔106から作業者が手指や工具を差し込んで行われる。
【0111】
次に、障子14の他の構成を説明する。
図4図22に示すように、戸体24は、更に、戸体24の内部に配置される遮炎部材100を有する。遮炎部材100は、火災時において、戸体24の点検孔106や取付孔24hから戸体24の内部に入り込む炎の広がりを防止するためのものである。本実施形態の遮炎部材100は、戸体24の幅方向Y内側への炎の広がりを防止することを想定している。これを実現するため、遮炎部材100は、戸体24の内部空間を幅方向Yに隔てる第1遮炎壁部100aと、第1遮炎壁部100aの見込方向Xの側端部から幅方向Yの外側に延びる一対の第2遮炎壁部100bとを有する。遮炎部材100は、第1遮炎壁部100aと一対の第2遮炎壁部100bとが溝状断面を形成している。
【0112】
図4に示すように、戸体24は、更に、戸体24の内側に配置される補強部材112を有する。補強部材112は、戸体24の戸当たりとの当接箇所周りを補強するためのものであり、戸体24の室外側表面板36の戸当たりとの当接位置の裏側に配置される。ここでの戸当たりとは、戸体24と当接することにより、戸体24の開き方向での動作範囲を制限するためのものであり、室外空間20に露出する床面や壁面に固定される。補強部材112は、取付枠体38より戸先側であって、フィルタ収容室46より上側に配置される。本実施形態の補強部材112は、溝形の断面形状をもつ長尺体であり、接着、溶接等により框体32に固定される。
【0113】
戸体24は、室外側表面板36の第2主板部36aの裏側に取り付けられる防音材(図示せず)を有する。防音材は、取付枠体38、遮炎部材100、補強部材112を避けた箇所に取り付けられる。防音材は、たとえば、水酸化アルミコア等のハニカム構造体である。
【0114】
(第2の実施の形態)
図27は、第2実施形態の障子14を図7と同様の視点から見た図である。第2実施形態の障子14は、第1実施形態と比べて、第1フィルタ26に関連する構成が異なる。第1フィルタ26は、第1実施形態と同様、戸体24の幅方向Yに長い長尺体となる押出成形品である。第1フィルタ26は、戸体24の通気路42の第2通気孔42bを覆う覆い部26eと、覆い部26eに形成された複数の第1通気穴26dとを有する。覆い部26eは、戸体24の幅方向Yに長尺な板状をなす。覆い部26eは、戸体24の四辺の外周面のうちの下面24dに重ね合わせた状態で接触する。本実施形態の第1フィルタ26は、ビス等の接続具27により第1フィルタ26の覆い部26eと戸体24を接続することで、戸体24の下面24dに着脱可能に取り付けられる。
【0115】
以上の構成によれば、第1フィルタ26が戸体24の外周面のうちの下面24dに取り付けられているため、戸体24の内部から第1フィルタ26を出し入れするための出入口や、その出入口を塞ぐ蓋が不要となる。また、戸体24が閉位置にあるとき、戸体24の見込方向Xの室内側面24cや室外側面に第1フィルタ26を取り付ける場合と比べて、戸体24を見込方向Xに見て第1フィルタ26が見え難くなる。これらが相まって、良好な意匠性を得られる。
【0116】
また、第1フィルタ26は着脱可能に戸体24に取り付けられる。よって、戸体24から第1フィルタ26を取り外すことで、第1フィルタ26のメンテナンス時の作業性が良好になる。また、第1フィルタ26は押出成形品であるため、第1実施形態の(A)と同様の効果を得られる。
【0117】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。また、図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0118】
障子14は、単数の戸体24を有する例を説明した。この他にも、障子14は、複数の戸体24を有してもよい。この場合、障子14は、たとえば、複数の戸体24をヒンジ軸を介して連結した折戸でもよい。この場合も、複数の戸体24のそれぞれは、回動軸30を介して建具枠12に連結され、その回動軸30周りの回動を伴い外開き可能にしてもよい。また、障子14は、戸体24が外開き可能な開き戸である例を説明したが、戸体24が内開き可能な開き戸でもよい。また、障子14は、開き戸を例に説明したが、単数又は複数の戸体24を有する引き戸でもよい。
【0119】
戸体24の出入口24eは、戸体24の外周面に形成されていればよく、戸体24の戸先側側面24fの他にも上面、下面、戸尻側側面に形成されてもよい。
【0120】
第1実施形態の第1フィルタ26は蓋28とは別部材により構成され、蓋28に固定されることで蓋28と一体に設けられる例を説明した。この他にも、第1フィルタ26と蓋28とを同部材により構成することで、第1フィルタ26と蓋28を一体に設けるようにしてもよい。
【0121】
第1実施形態の第1フィルタ26は、蓋28とは別部材により構成される場合に、蓋28に固定される例を説明したが、蓋28に固定されていなくともよい。各実施形態の第1フィルタ26は押出成形品である例を説明したが、メッシュフィルタ等でもよい。第1フィルタ26の第1通気穴26dの大きさは、虫を捕捉可能な大きさに設定される例を説明した。これに限られず、塵埃等を捕捉可能な大きさに設定されてもよい。
【0122】
蓋28は、戸体24に着脱可能に固定される例を説明したが、戸体24に固定されていなくともよい。
【0123】
第2実施形態の第1フィルタ26は、戸体24の外周面に取り付けられていればよい。第1フィルタ26は、戸体24の下面の他に、戸体24の上面、戸先側側面24f、戸尻側側面の何れかに取り付けられていてもよい。
【0124】
通気路42は、その第1通気孔42aや第2通気孔42bの形成箇所に関して特に限られない。たとえば、戸体24の二つの見込面のうちの一方に第1通気孔42aを形成し、他方に第2通気孔42bを形成してもよい。
【0125】
取付枠体38は専用の下枠材38Bを有する例を説明したが、下框材32Bが取付枠体38の第2下枠材を兼ねていてもよい。
【0126】
操作装置80により操作される被操作装置として開閉装置58を例に説明した。被操作装置は、戸体24に組み込まれ、複数の状態を切り替え可能に動作するものであればよい。被操作装置は、たとえば、施錠状態と施錠解除状態を切り替え可能な錠装置等でもよい。
【0127】
ワイヤー90は操作力を伝達するための伝達部材の一例として説明した。伝達部材はワイヤー等の可とう性を持つ索状体の他にロッド等の軸状体でもよい。
【0128】
以上の実施形態、変形例により具体化される発明を一般化すると、以下の技術的思想が導かれる。以下、発明が解決しようとする課題に記載の態様を用いて説明する。
【0129】
第2態様の障子は、第1態様において、前記戸体は、その幅方向の一端部が回動軸を介して前記建具枠に連結され、前記回動軸周りの回動を伴い開閉可能であり、前記出入口は、前記戸体の外周面のうちの幅方向の他端部の側面に形成されてもよい。
この態様によれば、戸体が隔てる二つの空間のうちの一方の空間から離れた箇所を、戸体の出入口を通してフィルタを出し入れするための作業空間にできる。よって、フィルタの出し入れに伴いフィルタに付いた塵埃が飛散しても、その一方の空間での塵埃の堆積を防止できる。
【0130】
第3態様の障子は、第1又は第2態様において、前記出入口を塞ぐ蓋を備え、前記フィルタは、前記蓋と一体に設けられてもよい。
この態様によれば、蓋の着け外しと同時にフィルタを出入口から出し入れできるようになり、フィルタのメンテナンス時の作業性が良好になる。
【0131】
第4態様の障子は、第3態様において、前記フィルタは、前記幅方向に長い長尺体であり、その長手方向の端部が前記蓋に固定されてもよい。
この態様によれば、フィルタの長手方向の向きに関する組み違いを防止でき、その組み違いに起因する不具合を防止できる。
【0132】
第5態様の障子は、第1から第4態様のいずれかにおいて、前記出入口を塞ぐ蓋を備え、前記蓋は、蓋本体と、前記蓋本体を前記出入口から引き出す方向の操作力を受けて前記蓋本体に伝達可能に設けられる操作部材と、を有してもよい。
この態様によれば、操作部材をつまみとして利用することで、戸体の出入口から蓋本体を引き出す作業をし易くなる。
【0133】
第6態様の障子は、第5態様において、前記操作部材は、前記蓋本体の外面からの突出量を調整可能に構成されてもよい。
この態様によれば、フィルタのメンテナンス時に操作部材の突出量を大きくすることで、操作部材を摘みやすくなる。また、フィルタのメンテナンスの完了後、操作部材の突出量を小さくすることで、操作部材と周辺構造物との干渉を避けられる。
【0134】
第7態様の障子は、第5又は第6態様において、前記操作部材は、前記蓋本体を前記戸体に締結するための締結具であってもよい。
この態様によれば、操作部材の機能として、蓋本体を戸体に固定する機能を持たせつつ、つまみとしての機能も持たせることができる。このため、それぞれの機能を別部品で実現するより部品点数を抑えられる。
【0135】
第8態様の障子は、第1から第7態様のいずれかにおいて、前記フィルタは、前記通気路を仕切る仕切壁部と、前記仕切壁部に形成される複数の通気穴とを有する押出成形品であってもよい。
この態様によれば、複数種の幅寸法が異なる戸体との間で単数種のフィルタを共用でき、管理すべき部品点数を抑えられる。
【0136】
第10態様の障子は、第1から第9態様のいずれかにおいて、前記通気路は、前記戸体の見込方向の一方側に臨む側面に形成され、前記見込方向の一方側の空間との間で空気が出入り可能な第1通気孔と、前記戸体の外周面に形成され、前記見込方向の他方側の空間との間で空気が出入り可能な第2通気孔と、を有してもよい。
【0137】
上述の障子14には、以下の項目に記載の発明が含まれている。
(項目1)
戸体に組み込まれる被操作装置を操作するための操作装置であって、
ベース部材と、
前記ベース部材に対してスライド可能に支持され、そのスライドに連動して前記被操作装置の状態を切り替え可能なスライド部材と、
前記スライド部材のスライドをロックするロック状態と、前記スライド部材のスライドを許容するロック解除状態とを切り替え可能なロック機構と、を備える操作装置。
(項目2)
前記スライド部材は、第1スライド位置と第2スライド位置の間をスライドすることで前記被操作装置の状態を切り替え、
前記ロック機構は、前記ロック状態から前記ロック解除状態に切り替えるときに押圧される押圧面を有し、
前記押圧面は、前記第2スライド位置から前記第1スライド位置に向かう方向に臨んでいる項目1に記載の操作装置。
(項目3)
前記スライド部材は、第1スライド位置と第2スライド位置の間をスライドすることで前記被操作装置の状態を切り替え、
前記ロック機構は、前記スライド部材に対して移動可能に支持され、前記ロック状態になるロック位置と、前記ロック解除状態になるロック解除位置との間を移動可能なロック部材を有し、
前記ロック機構は、前記スライド部材が前記第2スライド位置にあり、かつ、前記ロック位置に前記ロック部材がある場合、前記第2スライド位置から前記第1スライド位置に向かう外力により前記ロック部材が前記ロック解除位置にガイドされるように構成される項目1または2に記載の操作装置。
【符号の説明】
【0138】
10…建具、12…建具枠、14…障子、24…戸体、24e…出入口、26…フィルタ(第1フィルタ)、26b…仕切壁部、26d…第1通気穴、28…蓋、28a…蓋本体、28e…外面、30…回動軸、42…通気路、52…第1締結具(操作部材)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27