【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光回路チップから前記レンズまでの距離をAとし、前記光回路チップから前記光ファイバまでの距離をBとし、前記レンズの光軸までの前記第1の梁部の長さをL1とし、前記光ファイバの中心位置までの前記第2の梁部の長さをL2とし、前記第1の梁部の熱膨張係数をα1とし、前記第2の梁部の熱膨張係数をα2として、A:B=L1×α1:L2×α2の関係が成立するように、前記光回路チップから前記レンズまでの距離、前記光回路チップから前記光ファイバまでの距離、前記レンズの光軸までの前記第1の梁部の長さ及び前記第1の梁部の熱膨張係数、並びに、前記光ファイバの中心位置までの前記第2の梁部の長さ及び前記第2の梁部の熱膨張係数が設定されていることを特徴とする、請求項1に記載の光ファイバ実装構造。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面により、本発明の実施の形態にかかる光ファイバ実装構造及び光モジュールについて、
図1〜
図7を参照しながら説明する。
本実施形態にかかる光ファイバ実装構造は、例えば、高速、大容量の信号伝送を必要とする情報通信系の装置に用いられ、光ファイバと光回路チップ(光回路基板)を接続するための構造である。
【0017】
本実施形態の光ファイバ実装構造は、例えばシリコンフォトニクスを用いたシリコン光回路チップ、あるいは、面発光レーザ(VCSEL)を備える光回路チップのような光回路を備える光回路チップに、光ファイバを介して、他の部品を接続する場合に、光回路チップ上に光ファイバを実装するための光ファイバ実装構造である。なお、光回路チップを光チップ、光集積回路チップ、光回路基板ともいう。
【0018】
また、本実施形態の光ファイバ実装構造は、
図1に示すように、片持ち支持構造を採用した光ファイバ実装構造である。
このため、両端支持構造を採用する場合と比較して、省スペース化、小型化を実現することができる。また、光回路チップ上に光ファイバ実装構造を設け、さらに、例えば電子回路チップ(例えば駆動用ICチップなど)を設ける場合などに、例えば性能面の要求から、光ファイバ実装構造を設ける位置と電子回路チップを設ける位置を近づけたい場合にも対応することが可能となる。なお、電子回路チップを半導体回路チップ(半導体回路を備える半導体回路チップ)又は電気回路チップともいう。
【0019】
本実施形態の光ファイバ実装構造は、
図1に示すように、光回路チップ1上に片持ちで支持され、レンズ2を有する第1の梁部3と、光回路チップ1上に片持ちで支持され、光ファイバ4を保持する第2の梁部5とを備える。
なお、この光ファイバ実装構造6を構成する部品をフェルール又はレンズ式フェルールともいう。ここでは、フェルールは、逆L字形状の片持ち梁を2重にした2重の片持ち梁形状を有し、その断面形状がF字形状になっており、光回路チップ1上に搭載される。
【0020】
ここでは、第1の梁部3には、レンズ2が一体形成されている。このレンズ2は、光回路チップ1の光出力部7から出射された光を光ファイバ4に結像させ、又は、光ファイバ4からの光を光回路チップ1の光入力部7に結像させるためのものである。なお、第1の梁部3をレンズ梁ともいう。
また、第2の梁部5は、光ファイバ4を保持する光ファイバ保持部(光ファイバ保持構造;光ファイバ保持機構)8として、例えばV溝や穴(ファイバ穴)などを備える。なお、第2の梁部5を光ファイバ梁ともいう。
【0021】
例えば、光ファイバ実装構造6は、第1の梁部3と、第1の梁部3を片持ちで支持する第1支持部3Aとから構成される第1の部品3Xと、第2の梁部5と、第2の梁部5を片持ちで支持する第2支持部5Aとから構成される第2の部品5Xとを備えるものとすれば良い。
この場合、第1の梁部3と第2の梁部5との間にスリット9が形成されるように、第1の部品3Xと第2の部品5Xを接合して、これらを一体化すれば良い。
【0022】
なお、第1の部品3X及び第2の部品5Xは、片持ち形状の部品である。また、第1の部品3Xは、レンズ2を有するため、レンズ部品ともいう。また、第2の部品5Xは、光ファイバ4を保持するため、光ファイバ部品ともいう。
なお、これに限られるものではなく、例えば、光ファイバ実装構造6は、第1の梁部3と、第2の梁部5と、第1の梁部1及び第2の梁部5を片持ちで支持する支持部とから構成される部品を備えるものとしても良い。
【0023】
そして、本実施形態の光ファイバ実装構造6では、光回路チップ1から光ファイバ4までの距離が、光回路チップ1からレンズ2までの距離よりも長くなるように、第1の梁部3及び第2の梁部5が設けられている。
この場合、光回路チップ1上に光ファイバ実装構造6を設けた場合に、第1の梁部3が下側に位置し、第2の梁部5が上側に位置することになる。
【0024】
また、レンズ2の光軸までの第1の梁部3の長さに熱膨張係数(熱膨張率)を掛けて得られる第1移動量よりも光ファイバ4の中心位置までの第2の梁部5の長さに熱膨張係数を掛けて得られる第2移動量が大きくなるように、第1の梁部3の長さ及び熱膨張係数並びに第2の梁部5の長さ及び熱膨張係数が設定されている。
本実施形態では、光回路チップ1からレンズ2までの距離をAとし、光回路チップ1から光ファイバ4までの距離をBとし、レンズ2の光軸までの第1の梁部3の長さをL1とし、光ファイバ4の中心位置までの第2の梁部5の長さをL2とし、第1の梁部3の熱膨張係数をα1とし、第2の梁部5の熱膨張係数をα2として、A:B=L1×α1:L2×α2の関係が成立するように、光回路チップ1からレンズ2までの距離、光回路チップ1から光ファイバ4までの距離、レンズ2の光軸までの第1の梁部3の長さ及び第1の梁部3の熱膨張係数、並びに、光ファイバ4の中心位置までの第2の梁部5の長さ及び第2の梁部5の熱膨張係数が設定されている。
【0025】
ここでは、光回路チップ1の光入出力部7(例えばグレーティングカプラ、面発光レーザ、フォトディテクタなど)から第1の梁部3に設けられたレンズ2の主点(
図1中、×印で示す)までの距離をAとしている。また、光回路チップ1の光入出力部7から第2の梁部5に設けられた光ファイバ4の端部までの距離をBとしている。また、第1の梁部3を構成する材料(材質)の熱膨張係数をα1としている。また、第2の梁部5を構成する材料(材質)の熱膨張係数をα2としている。なお、光回路チップ1の光入出力部7をファイバインターフェースともいう。
【0026】
ここで、第1の梁部3と第2の梁部5は、同一の材料(同一の材質)からなるものとすることもできる。例えば、上述のように、光ファイバ実装構造6を、第1の部品3Xと、第2の部品5Xとを備えるものとして構成する場合、第1の部品3Xと第2の部品5Xを、同一の材料からなるものとすることもできる。
この場合、α1=α2となるため、A:B = L1:L2の関係が成立するように、光回路チップ1からレンズ2までの距離、光回路チップ1から光ファイバ4までの距離、レンズ2の光軸までの第1の梁部3の長さ及び第1の梁部3の熱膨張係数、並びに、光ファイバ4の中心位置までの第2の梁部5の長さ及び第2の梁部5の熱膨張係数を設定すれば良い。
【0027】
具体的には、レンズ2を有する第1の梁部3は、光を透過しうるように、透明樹脂からなるものとするのが好ましい。例えば、透明樹脂としては、ポリエーテルイミド(商品名:ULTEM(Sabic社製))などを用いることができる。この場合、第2の梁部5にも同じ材料を用いることもできる。例えば、上述のように、光ファイバ実装構造6を、第1の部品3Xと、第2の部品5Xとを備えるものとして構成する場合、第1の部品3Xと第2の部品5Xを、透明樹脂(例えばポリエーテルイミドなど)で構成することができる。
【0028】
このように構成される光ファイバ実装構造6は、
図1(A)に示すように、光回路チップ1の光入出力部7の位置、レンズ2の主点の位置、光ファイバ4の中心位置を合わせて、光回路チップ1上に設けられる。
そして、熱膨張が生じると、
図1(B)に示すように、第1の梁部3の熱膨張で、レンズ2の主点が横方向にΔx1移動し、結像位置はΔx2=Δx1×B/Aだけ移動する。一方、第2の梁部5の熱膨張で、光ファイバ4の中心位置が横方向にΔx2移動する。
【0029】
このように、第1の梁部3と第2の梁部5を設け、レンズ2を有する梁3と光ファイバ4を保持する梁5を分離して別にすることで、熱膨張でレンズ2と光ファイバ4が独立して移動できるようにしている。
そして、熱膨張による移動量は梁の長さに比例するため、熱膨張係数を考慮した梁の長さの比をA:Bと等しくすることで(A:B=L1×α1:L2×α2あるいはA:B = L1:L2)、光ファイバ4の移動量を結像位置の移動量に一致させることができるようにしている。つまり、熱膨張による結像位置のずれに、熱膨張による光ファイバ4のずれが追従するようにしている。
【0030】
このようにして、熱膨張による光ファイバ4の中心位置と結像位置との間の位置ずれを抑制できるようにしている。これにより、位置ずれによる損失の増加を抑制することが可能となる。
また、熱膨張の影響を抑えるために熱膨張係数が異なる材料を選択しなくても良く、熱膨張係数が同じ材料又は熱膨張係数が近い材料を用いても、熱膨張の影響、即ち、熱膨張による光ファイバ4の中心位置と結像位置との間の位置ずれを抑制できることになる。
【0031】
このため、異なる熱膨張係数の材料を用い、これらの材料の熱膨張係数を整合させる必要がなくなり、熱膨張係数以外の特性から最適の材料を選定できるようになる。例えば、材料の光学特性や成型性などの加工特性を優先した選定ができるようになる。
また、例えば、成型した樹脂のみでフェルール(光ファイバ実装構造)6を構成することで、製造性を向上させることも可能である。
【0032】
具体的には、例えば、透明樹脂として、ポリエーテルイミド(商品名:ULTEM(Sabic社製))を使用し、レンズ設計ソフトを用いて、光回路チップ1に備えられるグレーティングカプラ7と光ファイバ4を結合する最適なレンズ2の形状を求めれば良い。これにはレンズ2の焦点距離も含まれるため、上述の距離A、Bも求まることになる。
これらのデータを用いて、
図2(A)、
図2(B)に示すように、断面F字形状のフェルール(光ファイバ実装構造)6を作製し、光回路チップ1上に設ければ良い。
【0033】
なお、2つの梁3、5の間にスリット9の入ったものを一体成型することも可能であるが、通常の光ファイバ4であれば、上述の距離Bは約1〜2mmとなるため、きわめて細いスリット9を設けることになる。これには高度な成型技術が必要となる。
このため、例えば
図3(A)、
図3(B)に示すように、レンズ2を有するL字状部品3X及び光ファイバ4を保持するための穴(光ファイバ穴)8を有するL字状部品5Xの2個のL字状部品3X,5Xを用い、
図3(C)に示すように、これらをスリット9が形成されるように接合して、断面F字形状のフェルール(光ファイバ実装構造)6を作製するのが好ましい。そして、
図3(D)に示すように、このようにして作製したフェルール6の光ファイバ穴8に光ファイバ4を挿入して接着し、例えばシリコンフォトニクスによる光回路チップ1上に設ければ良い。
【0034】
なお、2個のL字状部品3X,5Xの接合に接着剤を使用することも可能であるが、スリット9に接着剤が入り込むと熱膨張対策効果が効かなくなるおそれがあるため、例えば超音波溶着などを用いて接合するのが好ましい。また、ここでは、スリット9を設けるようにしているが、熱膨張で2つの梁が自由に動くことができれば、接触した状態になっていても良い。
【0035】
ところで、上述のように構成しているのは、以下の理由による。
最近では光回路チップ1としてシリコンフォトニクスも用いられつつある。これは、シリコンを半導体製造プロセスで微細加工することにより、同じ機能を非常に小さいエリアに形成できる長所がある。
これらを基板上に形成した光導波路部品は単独では用途が限られており、離れた位置の部品間を接続する必要がある。接続する配線部材としては、光ファイバが性能面、価格面で優れている。
【0036】
一方、光信号を加工する部分、例えば、光トランシーバ、光カプラ・スプリッタ、AWG(Arrayed Waveguide Grating)などは光導波路として形成することが望ましい。
そこで、光導波路部品に光ファイバを接続することによって、光導波路で加工した光信号を目的の場所に伝達することが可能となる。
上述のシリコンフォトニクスでは、光ファイバとのインターフェースとしてグレーティングカプラが使われる場合がある。これは回折格子を利用して光導波路を伝搬する光を基板上方に放射するもので、これが使われる場合、光ファイバは、基板に対して垂直に近い角度で突き立てて実装することになる。そこで、フェルール6は、グレーティングカプラの放射角度に合わせて光回路チップ1上に斜めに傾けて設けることになる。
【0037】
また、光導波路部品がパッシブデバイスのみから構成されているのであれば、電気回路は不要である。一方、例えば光トランシーバのようなアクティブデバイスが含まれている場合は、駆動用の電気回路が必要である。
シリコンフォトニクスはシリコン基板に半導体プロセスを用いて形成するため、半導体回路も一緒に形成することは不可能ではない。
【0038】
しかしながら、光回路と半導体回路でそれぞれ最適な条件が異なるため、別々のプロセスを用いて製造した方が性能を最大限に引き出すことになるケースが多い。
その場合は、光回路と半導体回路が別基板となり、両者を組み合わせることになる。例えば、シリコンフォトニクス基板100の上に駆動IC(搭載部品)101を搭載することが考えられる(例えば
図4、
図6参照)。
【0039】
ところで、上述のように、光ファイバ102を基板100上に実装するためには、光ファイバ単独の実装は困難であるため、これを収納したブロック状のフェルール103を接着固定するのが一般的である(例えば
図4、
図6参照)。
しかしながら、光ファイバを収納するための機械的寸法や強度を確保するための接着面積が必要であり、これらはシリコンフォトニクスの特徴である微細化に比較して、きわめて巨大である。
【0040】
巨大だけなら基板面積の大型化を許容すればよいが、性能面の要求から、光ファイバインターフェース104と半導体回路(駆動IC)101を近づけたい場合がある(例えば
図4参照)。
例えば、光導波路の損失が無視できず、その長さを短くしたい場合、あるいは、グレーティングカプラではなく光ファイバからの光信号を直接受光器で受ける構成になっており、受光器〜半導体回路間の電気配線を短くしたい場合などである。
【0041】
この問題は、シリコンフォトニクスだけでなく、面発光レーザ(VCSEL)を使用する場合も共通である。
面発光レーザを使用する場合はチップから真上に光が放射される。このため、レンズで受けてマルチモードファイバに導く構造が一般的である。この場合、面発光レーザとレンズの間には空間が生じるため、ここに駆動用ICなどを配置することができる。その結果、全体としても小型化が可能となる。
【0042】
シリコンフォトニクスはシングルモードのため、面発光レーザよりも位置精度が格段に厳しくなる。
また、フェルール103を構成する樹脂を成型してレンズ105を加工する場合、樹脂としてフィラーの入っていない透明樹脂を使用することになるため、樹脂そのものが有する大きな熱膨張率を発現する。シリコンの熱膨張率は樹脂の約1/30と非常に小さいため、樹脂の熱膨張はそのまま部品の移動量となる。
【0043】
例えば、
図4に示すように、フェルール103を片持ち梁形状にし、梁106にレンズ105を設けるとともに、この梁106で光ファイバ102を保持する場合、熱膨張の影響は柱107の熱膨張による上下移動と、梁106の熱膨張による水平移動が主となる。このうち、上下方向の移動はレンズ105の焦点深度で吸収できるため、大きな問題とはならないが、水平方向の移動は、大きな問題となる。
【0044】
つまり、
図5(A)に示すように、光回路チップ100の光ファイバインターフェース104からレンズ105の主点(図中、×印で示す)までの距離をAとし、光回路チップ100の光ファイバインターフェース104から光ファイバ102の端面までの距離をBとした場合に、
図5(B)に示すように、梁106の熱膨張で、レンズ105の主点が横方向にΔx1移動すると、結像位置はΔx2=Δx1×B/Aだけ移動することになる。一方、光ファイバ102はレンズ105と一緒に移動するため、B/A−1だけ追従できない。
【0045】
このため、光ファイバ102の中心位置と結像位置との間に位置ずれが生じてしまい、通常、許容できない損失が生じることになる。
一方、
図6に示すように、フェルール103を両端支持形状にすると、熱膨張による変形のバランスを取りやすいため、熱膨張の影響を抑えることができる。
しかし、フェルール103の占有する面積が大きくなってしまい、大型化を招くことになる。
【0046】
また、熱膨張係数の異なる材質を組み合わせることで、熱膨張が発生しても結像位置がずれない構造とすることも考えられる。
しかしながら、これには、熱膨張係数のバリエーションが重要になってくる。レンズに用いる透明樹脂には、例えばポリエーテルイミド、ポリカーボネート、アクリル樹脂などがあるが、似たような熱膨張係数を有しているため、これらの樹脂を組み合わせても、熱膨張が発生した際に結像位置がずれない構造を実現することは難しい。このため、例えば、金属、セラミックス、ガラスなどの他の材質を組み合わせることになるが、加工性の悪い材質の使用、異種材質の組み合わせは、製造性の低下や大型化を招くことになるため、好ましくない。
【0047】
そこで、上述のように構成している。
ところで、上述のように構成される光ファイバ実装構造6を、光回路チップ1上に設けることで、光モジュール10を構成することができる。
この場合、光モジュール10は、光回路を備える光回路チップ1と、光回路チップ1上に光ファイバ4を実装するための光ファイバ実装構造6とを備えるものとなり、光ファイバ実装構造6は、上述のように構成されることになる。
【0048】
例えば、
図7に示すように、上述のように構成される光ファイバ実装構造6が設けられた光回路チップ1を、回路基板11上に設け、さらに、回路基板11上に、貫通配線基板12を設け、光回路チップ1及び貫通配線基板12上に、電子回路チップ13を設け、回路基板11と電子回路チップ13を、貫通配線基板12を介して接続するとともに、光回路チップ1と電子回路チップ13を接続することで、光モジュール10を構成すれば良い。
【0049】
ここでは、回路基板11と光回路チップ1及び貫通配線基板12との間、並びに、光回路チップ1及び貫通配線基板12と電子回路チップ13との間には、アンダーフィル材14が充填されている。
この光モジュール10は、貫通配線基板12を用いることで、光回路チップ1上に、駆動・制御を担う電子回路チップ13を集積した構造を有する。
【0050】
ここでは、光回路チップ1の光入出力部7としてグレーティングカプラを備えるものとし、これと光ファイバ4が光学的に接続されるように、上述のように構成される光ファイバ実装構造(フェルール)6を搭載している。
また、上述のように構成される光ファイバ実装構造(フェルール)6は、片持ち梁形状になっているため、電子回路チップ13に近接した配置が可能となっている。
【0051】
なお、上述のように構成される光ファイバ実装構造(フェルール)6を光回路チップ1上に設けるためのスペースが必要であるが、ここには放熱の必要のない光導波路回路(図示せず)を設けておけば無駄にはならない。
なお、本発明は、上述した実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0052】
以下、上述の実施形態に関し、更に、付記を開示する。
(付記1)
光回路を備える光回路チップ上に光ファイバを実装するための光ファイバ実装構造であって、
前記光回路チップ上に片持ちで支持され、レンズを有する第1の梁部と、
前記光回路チップ上に片持ちで支持され、前記光ファイバを保持する第2の梁部とを備え、
前記光回路チップから前記光ファイバまでの距離が、前記光回路チップから前記レンズまでの距離よりも長くなるように、前記第1の梁部及び前記第2の梁部が設けられており、
前記レンズの光軸までの前記第1の梁部の長さに熱膨張係数を掛けて得られる第1移動量よりも前記光ファイバの中心位置までの前記第2の梁部の長さに熱膨張係数を掛けて得られる第2移動量が大きくなるように、前記第1の梁部の長さ及び熱膨張係数並びに前記第2の梁部の長さ及び熱膨張係数が設定されていることを特徴とする光ファイバ実装構造。
【0053】
(付記2)
前記光回路チップから前記レンズまでの距離をAとし、前記光回路チップから前記光ファイバまでの距離をBとし、前記レンズの光軸までの前記第1の梁部の長さをL1とし、前記光ファイバの中心位置までの前記第2の梁部の長さをL2とし、前記第1の梁部の熱膨張係数をα1とし、前記第2の梁部の熱膨張係数をα2として、A:B=L1×α1:L2×α2の関係が成立するように、前記光回路チップから前記レンズまでの距離、前記光回路チップから前記光ファイバまでの距離、前記レンズの光軸までの前記第1の梁部の長さ及び前記第1の梁部の熱膨張係数、並びに、前記光ファイバの中心位置までの前記第2の梁部の長さ及び前記第2の梁部の熱膨張係数が設定されていることを特徴とする、付記1に記載の光ファイバ実装構造。
【0054】
(付記3)
前記第1の梁部と、前記第1の梁部を片持ちで支持する第1支持部とから構成される第1の部品と、
前記第2の梁部と、前記第2の梁部を片持ちで支持する第2支持部とから構成される第2の部品とを備えることを特徴とする、付記1又は2に記載の光ファイバ実装構造。
【0055】
(付記4)
前記第1の梁部と前記第2の梁部は、同一の材料からなることを特徴とする、付記1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバ実装構造。
(付記5)
前記光回路チップは、シリコン光回路チップであり、
前記第1の梁部は、透明樹脂からなることを特徴とする、付記1〜4のいずれか1項に記載の光ファイバ実装構造。
【0056】
(付記6)
光回路を備える光回路チップと、
前記光回路チップ上に光ファイバを実装するための光ファイバ実装構造とを備え、
前記光ファイバ実装構造は、
前記光回路チップ上に片持ちで支持され、レンズを有する第1の梁部と、
前記光回路チップ上に片持ちで支持され、前記光ファイバを保持する第2の梁部とを備え、
前記光回路チップから前記光ファイバまでの距離が、前記光回路チップから前記レンズまでの距離よりも長くなるように、前記第1の梁部及び前記第2の梁部が設けられており、
前記レンズの光軸までの前記第1の梁部の長さに熱膨張係数を掛けて得られる第1移動量よりも前記光ファイバの中心位置までの前記第2の梁部の長さに熱膨張係数を掛けて得られる第2移動量が大きくなるように、前記第1の梁部の長さ及び熱膨張係数並びに前記第2の梁部の長さ及び熱膨張係数が設定されていることを特徴とする光モジュール。
【0057】
(付記7)
前記光回路チップから前記レンズまでの距離をAとし、前記光回路チップから前記光ファイバまでの距離をBとし、前記レンズの光軸までの前記第1の梁部の長さをL1とし、前記光ファイバの中心位置までの前記第2の梁部の長さをL2とし、前記第1の梁部の熱膨張係数をα1とし、前記第2の梁部の熱膨張係数をα2として、A:B=L1×α1:L2×α2の関係が成立するように、前記光回路チップから前記レンズまでの距離、前記光回路チップから前記光ファイバまでの距離、前記レンズの光軸までの前記第1の梁部の長さ及び前記第1の梁部の熱膨張係数、並びに、前記光ファイバの中心位置までの前記第2の梁部の長さ及び前記第2の梁部の熱膨張係数が設定されていることを特徴とする、付記6に記載の光モジュール。
【0058】
(付記8)
前記第1の梁部と、前記第1の梁部を片持ちで支持する第1支持部とから構成される第1の部品と、
前記第2の梁部と、前記第2の梁部を片持ちで支持する第2支持部とから構成される第2の部品とを備えることを特徴とする、付記6又は7に記載の光モジュール。
【0059】
(付記9)
前記第1の梁部と前記第2の梁部は、同一の材料からなることを特徴とする、付記6〜8のいずれか1項に記載の光モジュール。
(付記10)
前記光回路チップは、シリコン光回路チップであり、
前記第1の梁部は、透明樹脂からなることを特徴とする、付記6〜9のいずれか1項に記載の光モジュール。