(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記筒状部は、前記スリットに沿って前記筒状部の前記軸方向と平行に直線状に延びる一対の直線状縁部と、前記一対の直線状縁部間を湾曲状に接続して前記スリットの閉塞端を区画する湾曲状縁部と、を含み、
  前記湾曲状縁部において、前記反対側周方向領域に隣接する部分の曲率半径が、前記解除部側周方向領域に隣接する部分の曲率半径よりも大きくされている、請求項4に記載のステアリング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
  しかしながら、製造誤差により、ツース部材をツース部へ押圧する荷重がばらつき、前記押圧荷重が過大になったり、ロック操作時の操作レバーの操作荷重が大きくなったりするおそれがある。
  そこで、ロック時に、付勢部材の付勢力で、ツース部材を噛合位置に回転変位させ、ロック解除時に、解除部材によって、付勢部材に抗してツース部材を噛合解除位置に回転変位させることが考えられる。
【0005】
  しかし、その場合、締付軸の外周面と筒状部材の内周面との嵌合に遊びがあると、ロック解除状態からロック状態へ移行する途中において、解除部材とツース部材との係合が外れるときに、付勢部材の付勢力に抗する解除部材の付勢反力が、瞬時に解放され、締付軸と筒状部材との間に打音が発生するおそれがある。
  本発明の目的は、打音の発生を抑制することができるステアリング装置を提供することである。
 
【課題を解決するための手段】
【0006】
  請求項1の発明は、コラム軸方向(X)に伸縮可能なコラムシャフト(8)と、ロアジャケット(16)と前記ロアジャケットに嵌合されたアッパジャケット(15)とを含み、前記コラムシャフトを回転可能に支持し、テレスコ調整時に前記コラム軸方向に伸縮可能なコラムジャケット(11)と、前記ロアジャケットに支持されて回転操作される締付軸(40)であって外周面に当該締付軸の軸方向(J)に延びる第1平坦部(43)を有する締付軸を含み、前記締付軸を介して前記ロアジャケットによって前記アッパジャケットを締付保持させる締付機構(5)と、前記アッパジャケットと前記コラム軸方向に一体移動する第1ツース部材(50)と、前記ロアジャケットに回転可能に支持され回転に伴って前記第1ツース部材と噛合可能な第2ツース部材(60)と、前記締付機構による締付時に前記第2ツース部材を前記第1ツース部材に噛合させるように弾性付勢する付勢部材(70)と、前記締付軸に外嵌され内周面に前記第1平坦部とトルク伝達可能に対向する第2平坦部(81e)が形成された筒状部(81)と、前記筒状部の外周面(81c)に設けられ前記第2ツース部材と係合可能な解除部(82)とを含む解除部材(80)であって、前記締付軸の締付解除側への回転に伴って回転されることにより前記解除部を前記第2ツース部材に係合させて前記付勢部材に抗して前記第2ツース部材を噛合解除側へ回転変位させる解除部材と、を備え、前記第1平坦部および前記第2平坦部の少なくとも一方に、他方に弾性係合して、前記第1平坦部および前記第2平坦部の間の遊びを抑制する凸部(110)が形成されている、ステアリング装置(1)を提供する。
【0007】
  なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
  請求項2のように、請求項1において、前記筒状部には、当該筒状部の軸方向の一端(81a)から軸方向に延びる少なくとも1つのスリット(83)が形成されており、前記凸部は、前記筒状部において前記スリットが設けられて前記筒状部の周方向(K)に不連続な周方向不連続領域(90)に配置されていてもよい。
【0008】
  請求項3のように、請求項2において、前記スリットは、前記筒状部の前記軸方向の前記一端から前記軸方向の途中部まで延びており、前記筒状部は、前記軸方向の前記途中部から前記軸方向の他端(81b)までに配置されて前記筒状部の周方向に連続する周方向連続領域(100)を含んでいてもよい。
  請求項4のように、請求項3において、前記スリットは、前記第1平坦部と前記第2平坦部とが対向する方向に対して直交する方向に対向する位置に一対設けられており、前記周方向不連続領域は、前記一対のスリットによって解除部側周方向領域(91)と解除部側とは反対側の反対側周方向領域(92)とに分割され、前記凸部は、前記反対側周方向領域における第2平坦部に配置されていてもよい。
【0009】
  請求項5のように、請求項4において、前記筒状部は、前記スリットに沿って前記筒状部の前記軸方向と平行に直線状に延びる一対の直線状縁部(84)と、前記一対の直線状縁部間を湾曲状に接続して前記スリットの閉塞端(83b)を区画する湾曲状縁部(85)と、を含み、前記湾曲状縁部において、前記反対側周方向領域に隣接する部分(85b)の曲率半径(R2)が、前記解除部側周方向領域に隣接する部分(85a)の曲率半径(R1)よりも大きくされていてもよい。
 
【発明の効果】
【0010】
  請求項1の発明では、ロック解除状態で、解除部材は、その解除部を第2ツース部材に係合させて付勢部材に抗して第2ツース部材を噛合解除状態に保持する。そのロック解除状態からロック状態へ移行する途中において解除部と第2ツース部材との係合が外れるときに、付勢部材の付勢力に抗する解除部材の付勢反力が瞬時に解放される。一方、締付軸の外周面の第1平坦部と解除部材の筒状部の内周面の第2平坦部との少なくとも一方に設けられて他方に弾性係合する凸部により、両平坦部間の遊びが抑制されている。このため、前記付勢反力の解放時に、両平坦部間の打音の発生を抑制することができる。
【0011】
  請求項2の発明では、組立時において、締付軸に解除部材の筒状部を嵌合させて組み付けるときに、筒状部の軸方向に延びるスリットの働きで、筒状部を容易に弾性変形させて締付軸に組み付けることができる。
  請求項3の発明では、解除部材の筒状部においてスリットが設けられて周方向に不連続な周方向不連続領域で、万一、破損等が生じたとしても、筒状部において周方向に連続する周方向連続領域によって、締付軸からの筒状部の脱落が防止される。
【0012】
  請求項4の発明では、噛合解除状態で、解除部材の筒状部が第2ツース部材から解除部を介して受ける係合反力は、解除部側とは反対側で凸部が設けられた反対側周方向領域の第2平坦部が、締付軸の第1平坦部から遠ざかる方向に作用する。このため、凸部の荷重負荷を低減することができ、ひいては凸部のへたりを抑制して、長期に、両平坦部間の打音を抑制することができる。
【0013】
  請求項5の発明では、筒状部において軸方向に延びるスリットの閉塞端を区画する湾曲状縁部において、解除部側とは反対側で凸部が設けられた反対側周方向領域に隣接する部分の応力が、解除部側周方向領域に隣接する部分の応力よりも高くなる傾向にある。これに対して、本発明では、スリットの閉塞端を区画する湾曲状縁部において、反対側周方向領域に隣接する部分の曲率半径を、解除部側周方向領域に隣接する部分の曲率半径よりも大きくすることで、湾曲状縁部において、反対側周方向領域に隣接する部分に応力が集中することを緩和することができる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0015】
  図1は本発明の一実施形態のステアリング装置の概略構成を示す一部破断模式的側面図である。
図1を参照して、ステアリング装置1は、操舵機構2と、転舵機構3と、支持機構4と、締付機構5と、ツースロック機構6とを備えている。
  操舵機構2は、コラムシャフト8と、ピニオンシャフト9と、インターミディエイトシャフト10と、コラムジャケット11とを含む。インターミディエイトシャフト10は、コラムシャフト8と、ピニオンシャフト9との間に介在する。コラムジャケット11は、コラムシャフト8を挿通させて回転可能に支持する。
 
【0016】
  コラムシャフト8は、ステアリングホイール12に連結されるアッパシャフト13と、インターミディエイトシャフト10に連結されるロアシャフト14とを含む。アッパシャフト13とロアシャフト14は、例えばスプライン嵌合やセレーション嵌合によってコラム軸方向Xに相対摺動可能に嵌合されている。コラムシャフト8は、コラム軸方向Xに伸縮可能である。ピニオンシャフト9には、ピニオン9aが形成されている。
 
【0017】
  コラムジャケット11は、コラム軸方向Xに相対摺動可能に嵌合された筒状のアッパジャケット15とロアジャケット16とを含む。コラムジャケット11は、コラム軸方向Xに伸縮可能である。アッパジャケット15は例えばインナージャケットであり、ロアジャケット16は例えばアウタージャケットである。
  転舵機構3は、ラックシャフト17および図示しないタイロッドを有している。ラックシャフト17には、ピニオン9aに噛み合うラック17aが形成されている。タイロッドは、その一端がラックシャフトに連結されて、その他端が転舵輪(図示せず)に連結されている。
 
【0018】
  運転者の操作によってステアリングホイール12が回転されると、コラムシャフト8およびインターミディエイトシャフト10を介して、ピニオンシャフト9が回転される。ピニオンシャフト9の回転は、ラックアンドピニオン機構により、ラックシャフト17の軸方向の往復運動に変換される。ラックシャフト17の往復運動により転舵輪の転舵角が変化する。
 
【0019】
  支持機構4は、車体22に対して操舵機構2を支持する。支持機構4は、ロア固定ブラケット18と、コラムブラケット19と、チルト支軸20と、アッパ固定ブラケット21とを含む。ロア固定ブラケット18は、車体22に固定される。コラムブラケット19は、ロアジャケット16に固定されている。チルト支軸20は、ロア固定ブラケット18によって支持されている。チルト支軸20は、コラムブラケット19を介して、コラムジャケット11を、当該チルト支軸20の中心軸線CCを中心として、チルト可能に支持する。
 
【0020】
  図2は、ステアリング装置1の概略斜視図である。
図1に示すように、アッパ固定ブラケット21は、車体22に固定される。アッパ固定ブラケット21は、車体22に取り付けられた取付板23と、
図2に示すように取付板23の左右方向(車両の左右方向に相当)の両端からチルト方向Yの下方に延びる一対の側板24とを含む。
  
図2に示すように、ロアジャケット16は、一対の側板24間に配置される一対の被締付部25を含む。ロアジャケット16は、コラム軸方向Xの上端部(ステアリングホイール12側の端部)からコラム軸方向Xの下方に延びるスリット26を形成している。一対の被締付部25は、スリット26の両側に配置されている。締付機構5によって一対の被締付部25が締め付けられることにより、ロアジャケット16は、弾性的に縮径可能である。
 
【0021】
  ロアジャケット16は、軸方向Xに延びる案内溝27を形成している。案内溝27には、アッパジャケット15に固定された被案内突起28が嵌合している。案内溝27は、被案内突起28を介してアッパジャケット15の軸方向移動を案内しつつ、ロアジャケット16に対するアッパジャケット15の回転を規制する。また、案内溝27と被案内突起28との嵌合により、ロアジャケット16からのアッパジャケット15の抜けが防止されている。
 
【0022】
  図3は、ステアリング装置1の要部の断面図であり、
図1のIII−III線に沿って切断された断面図に相当する。
図3に示すように、締付機構5は、操作レバー29と、締付軸40と、回転カム31と、一方の締付部材32(非回転カム)と、ナット33と、他方の締付部材34、介在部材35とを含む。
  締付軸40は、ボルトからなり、軸部41と、頭部42とを含む。軸部41は、一端41aと、他端41bと、一端41aと他端41bとの間に配置された中間部41cとを含む。頭部42は、軸部41の一端41aに接続されている。軸部41の他端41bにおける外周面41dに設けられたねじ部41eに、ナット33が螺合されている。軸部41の中間部41cにおける外周面41dには、締付軸40の中心軸方向である締付軸方向Jに延びる一対の第1平坦部43が形成されている。一対の第1平坦部43間に、二面幅Wが形成される。
 
【0023】
  アッパ固定ブラケット21の各側板24には、チルト方向Yに延びるチルト用長孔38が形成されている。ロアジャケット16の一対の被締付部25は、一対の側板24間に配置され、対応する側板24の内側面24bにそれぞれ沿う板状をなしている。各側板24の内側面24bが、それぞれ対応する被締付部25の外側面25aに対向している。ロアジャケット16の各被締付部25には、円孔からなる締付軸挿通孔39が形成されている。締付軸40の軸部41は、アッパ固定ブラケット21の両側板24のチルト用長孔38およびロアジャケット16の両被締付部25の締付軸挿通孔39に挿通されている。
 
【0024】
  締付軸40の頭部42と一方の側板24(
図3において左側の側板)との間に、操作レバー29と、回転カム31と、一方の締付部材32(非回転カムに相当)とが介在している。回転カム31と、一方の締付部材32(非回転カム)と、他方の締付部材34と、介在部材35とは、締付軸40の軸部41の外周面によって支持されている。
  操作レバー29は、締付軸40の頭部42に一体回転可能に連結されており、運転者によって回転操作される。締付軸40の軸部41の中心軸線C1が、操作レバー29の回転中心に相当する。
 
【0025】
  他方の側板24(
図3において右側の側板)とナット33との間に、他方の締付部材34と、介在部材35とが介在している。他方の締付部材34は、他方の側板24の外側面24aに沿わされており、他方の側板24を締め付ける機能を果たす。介在部材35は、ワッシャ36と、針状ころ軸受37とを含む。ワッシャ36は、ナット33と当接している。針状ころ軸受37は、ワッシャ36と他方の締付部材34との間に介在する。
 
【0026】
  回転カム31は、操作レバー29と一体回転に連結され締付軸40に対して締付軸方向J(締付軸40の中心軸線C1の方向)の移動が規制されている。非回転カム(一方の締付部材32)は、回転カム31に対してカム係合し、一方の側板24を締め付ける。回転カム31と非回転カム(一方の締付部材32)とは、操作レバー29の操作トルクを締付軸40の軸力(一対の側板24を締め付けるための締付力)に変換する力変換機構として機能する。
 
【0027】
  一方の締付部材32(非回転カム)および他方の締付部材34は、それぞれ対応する側板24を締め付ける締付板部32a,34aと、それぞれ対応するチルト用長孔38に嵌合したボス部32b,34bとを有している。各ボス部32b,34bと対応するチルト用長孔38との嵌合によって、各締付部材32,34の回転が規制されている。また、一方の締付部材32(非回転カム)および他方の締付部材34は、締付軸40によって締付軸方向Jに移動可能に支持されている。
 
【0028】
  操作レバー29のロック方向への回転に伴って、回転カム31が一方の締付部材32(非回転カム)に対して回転することにより、一方の締付部材32が締付軸方向Jに移動されて、両締付部材32,34(の締付板部32a,34a)の間で、アッパ固定ブラケット21の一対の側板24がクランプされて締め付けられる。
  これにより、アッパ固定ブラケット21の各側板24が、ロアジャケット16の対応する被締付部25を締め付ける。その結果、ロアジャケット16のチルト方向Yの移動が規制されて、チルトロックが達成される。また、両被締付部25が締め付られることで、ロアジャケット16が、弾性的に縮径してアッパジャケット15を締め付ける。これにより、アッパジャケット15の軸方向Xの移動が規制されて、テレスコロックが達成される。
 
【0029】
  次いで、ツースロック機構6について説明する。
図4は、ツースロック機構6の概略分解斜視図である。
図4に示すように、ツースロック機構6は、第1ツース部材50と、第2ツース部材60と、付勢部材70と、解除部材80とを含む。
  
図5Aは、解除部材80の断面図であり、
図5Bは
図5Aの要部の拡大図であり、
図5Cは、解除部材80の一部を内側から見た概略斜視図である。
図6Aは、噛合解除状態のツースロック機構6の周辺の構造の概略側面図である。
図6Bは、噛合状態のツースロック機構6の周辺の構造の概略側面図である。
 
【0030】
  図4に示すように、第1ツース部材50は、アッパジャケット15の外周面15aに固定されている。第1ツース部材50には、多数の第1ツース51が、コラム軸方向Xに所定間隔毎に並べて形成されている。第1ツース部材50は、素材となる長尺板に、多数の溝52がコラム軸方向Xに所定間隔毎に形成されたものであって、隣接する溝52間に、第1ツース51が形成されてもよい。
 
【0031】
  図4および
図6Aに示すように、第2ツース部材60は、環状のボス部61と、第2ツース形成腕62と、カムフォロワ腕63とを含む。に示すように、ボス部61は、ロアジャケット16によって支持された支持軸45に外嵌されている。第2ツース部材60は、ボス部61を介して支持軸45に回転可能に支持されている。
  第2ツース形成腕62は、ボス部61の外周面61aから突出状に延びており、先端部に第2ツース64を形成している。カムフォロワ腕63は、ボス部61の外周面61aから突出状に延びており、先端部に、凸湾曲状の係合部65を形成している。第2ツース形成腕62とカムフォロワ腕63とは、ボス部61の周方向に離隔して配置されている。両腕62,63は、ボス部61の軸方向から見て、ボス部61を介して、「く」の字状の姿勢で連結されている。両腕62,63は、ボス部61と一体に回転する。
 
【0032】
  図4に示すように、付勢部材70は、例えば、ねじりコイルばねからなる。付勢部材70は、コイル部71と、第1係合部72と、第2係合部73とを含む。コイル部71は、第2ツース部材60のボス部61の外周面61aを取り囲むように配置される。第2係合部73は、ロアジャケット16の被締付部25に設けられた係止穴25bに係止される。第1係合部72は、コイル部71の一端から延びカムフォロワ腕63に係合する。
 
【0033】
  図4および
図6Bに示すように、付勢部材70は、カムフォロワ腕63を介して第2ツース部材60を第1ツース部材50に対する噛合側へ弾性的に回転付勢する。
  
図4および
図5Aに示すように、解除部材80は、筒状部81と、解除部82とを含む。筒状部81は、締付軸40において一対の第1平坦部43が形成された部分に、外嵌されている。筒状部81は、軸方向に延びており、軸方向の一端81aと、軸方向の他端81bと、外周面81cと、内周面81dとを有している。
 
【0034】
  筒状部81の内周面81dには、締付軸40の一対の第1平坦部43のそれぞれとトルク伝達可能に対向する一対の第2平坦部81eが形成されている。解除部82は、筒状部81の外周面81cから径方向外側へ突出する先細り状のカム突起からなる。解除部82(カム突起)は、第2ツース部材60のカムフォロワ腕63の係合部65と係合可能である。
 
【0035】
  筒状部81には、筒状部81の軸方向の一端81aから軸方向の途中部まで延びるスリット83が形成されている。スリット83は、第1平坦部43と第2平坦部81eとが対向する方向に対して直交する方向に対向する位置に一対設けられている。
  筒状部81において、スリット83が設けられた筒状部81の軸方向の一端81aから筒状部81の軸方向の途中部までの領域は、スリット83によって筒状部81が周方向Kに不連続となる周方向不連続領域90である。一方、筒状部81において、スリット83が形成されていない筒状部81の軸方向の途中部から軸方向の他端81bまでの領域は、周方向Kに連続する周方向連続領域100である。
 
【0036】
  周方向不連続領域90は、一対のスリット83によって、解除部82側の解除部側周方向領域91と、解除部82側とは反対側の反対側周方向領域92とに分割されている。
  
図5A、
図5Bおよび
図5Cに示すように、筒状部81の周方向不連続領域90の反対側周方向領域92において、内周面81dの第2平坦部81eに、凸部110が形成されている。凸部110は、頂部111と、一対の斜面部112,113を含む。頂部111は、第2平坦部81eと平行な平坦部からなる。一対の斜面部112,113は、筒状部81の軸方向(締付軸方向Jに相当)に関して、頂部111の両側に配置され、互いに逆向きに傾斜する。
 
【0037】
  図6A、
図6Bに示すように、凸部110は、締付軸40の第1平坦部43と弾性係合して、第1平坦部43と第2平坦部81eとの遊びを抑制する。
  
図5Aに示すように、スリット83は、開放端83aと、閉塞端83bとを含む。筒状部81は、互いの間にスリット83を区画して筒状部81の軸方向に延びる一対の直線状縁部84と、一対の直線状縁部84間を湾曲状に接続して閉塞端83bを区画する湾曲状縁部85とを含む。湾曲状縁部85において、反対側周方向領域92に隣接する部分85bの曲率半径R2が、解除部側周方向領域91に隣接する部分85aの曲率半径R1よりも大きくされている(R2>R1)。
 
【0038】
  次いで、ツースロック機構6の動作を説明する。
図6Aに示すアンロック状態では、解除部材80の解除部82が、第2ツース部材60のカムフォロワ腕63の係合部65に係合することで、解除部材80が、付勢部材70に抗して、第2ツース部材60の第2ツース64を、第1ツース51に対する噛合を解除する噛合解除状態に保持している。
  
図6Aに示すアンロック状態(噛合解除状態)から、操作レバー29および締付軸40を締付軸40の中心軸線C1回りにロック方向(
図6Aにおいて反時計回り)に回転させると、
図6Bに示すように、解除部材80の解除部82(カム突起)と第2ツース部材60のカムフォロワ腕63の係合部65との係合が外れる。これにより、付勢部材70による、カムフォロワ腕63を含む第2ツース部材60の反時計回りの回転が許容される。このため、付勢部材70の働きで、第2ツース部材60が反時計回りに回転し、第2ツース64が第1ツース51と噛み合うことによりツースロックが達成される。
 
【0039】
  逆に、
図6Bに示すロック状態(噛合状態)から、操作レバー29をアンロック方向(
図6Bにおいて時計回り)に回転させると、
図6Aに示すように、解除部82が、カムフォロワ腕63の係合部65に係合し、付勢部材70に抗して、カムフォロワ腕63を介して第2ツース部材60を時計回りに回転させる。このため、第1ツース51に対する第2ツース64の噛み合いが外れ、ツースロックが解除される。
 
【0040】
  本実施形態によれば、
図6Aに示すように、ロック解除状態で、解除部材80は、その解除部82を第2ツース部材60に係合させて付勢部材70に抗して第2ツース部材60を噛合解除状態に保持する。
図6Aに示すロック解除状態から
図6Bに示すロック状態へ移行する途中において解除部82と第2ツース部材60との係合が外れるときに、付勢部材70の付勢力に抗する解除部材80の付勢反力が瞬時に解放される。
 
【0041】
  仮に、凸部110が設けられておらず、締付軸40の第1平坦部43と解除部材80の筒状部81の第2平坦部81eとの間に遊びがある場合には、前記付勢反力の解放時に、両平坦部43,81eとの間で打音が発生するおそれがある。これに対して、本実施形態では、解除部材80の平坦部81eに設けられ締付軸40の平坦部43に弾性係合する凸部110の働きで両平坦部43,81e間の遊びが抑制されるため、前記付勢反力の解放時における、両平坦部43,81e間の打音の発生を抑制することができる。
 
【0042】
  また、凸部110が、筒状部81においてスリット83が設けられて筒状部81の周方向Kに不連続な周方向不連続領域90に配置されている。このため、組立時において、締付軸40に解除部材80の筒状部81を嵌合させて組み付けるときに、筒状部81の軸方向に延びるスリット83の働きで、筒状部81の周方向不連続領域90を容易に弾性変形させて、締付軸40に組み付けることができる。すなわち、凸部110に起因してツースロック機構6の組立性が悪くなることが抑制される。
 
【0043】
  また、解除部材80の筒状部81のスリット83が、筒状部81の軸方向の一端81aから軸方向の途中部まで延びており、筒状部81の前記途中部から軸方向の他端81bまでの領域は、筒状部81の周方向Kに連続する周方向連続領域100となる。このため、解除部材80の筒状部81においてスリット83が設けられた周方向不連続領域90で、万一、破損等が生じたとしても、筒状部81の周方向連続領域100によって、締付軸40からの筒状部81の脱落が防止され、フェールセーフが達成される。
 
【0044】
  また、解除部材80の筒状部81の周方向不連続領域90が、一対のスリット83によって解除部側周方向領域91と解除部側とは反対側の反対側周方向領域92とに分割され、凸部110が、反対側周方向領域92における第2平坦部81eに配置される。一方、
図6Aに示す噛合解除状態で、解除部材80の筒状部81が第2ツース部材60から解除部82を介して受ける係合反力は、凸部110が設けられた反対側周方向領域92の第2平坦部81eが、締付軸40の第1平坦部43から遠ざかる方向に作用する。このため、凸部110の荷重負荷を低減することができ、ひいては凸部110のへたりを抑制して、長期に、両平坦部43,81e間の打音を抑制することができる。
 
【0045】
  また、筒状部81が、スリット83を区画して軸方向と平行に直線状に延びる一対の直線状縁部84と、一対の直線状縁部84間を湾曲状に接続してスリット83の閉塞端83bを区画する湾曲状縁部85とを含む。
  この湾曲状縁部85において、解除部側とは反対側で凸部110が設けられた反対側周方向領域92に隣接する部分85bの応力が、解除部側周方向領域91に隣接する部分85aの応力よりも高くなる傾向にある。これに対し、本実施形態では、湾曲状縁部85において、反対側周方向領域92に隣接する部分85bの曲率半径R2が、解除部側周方向領域91に隣接する部分85aの曲率半径R1よりも大きくされている。このため、湾曲状縁部85において、反対側周方向領域92に隣接する部分85bに応力が集中することを緩和することができ、耐久性を向上することができる。
 
【0046】
  本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、前記実施形態では、凸部110が、筒状部81の周方向不連続領域90の反対側周方向領域92における第2平坦部81eに設けられたが、これに代えて、図示していないが、凸部110が、筒状部81の周方向不連続領域90の解除部側周方向領域91における第2平坦部81eに設けられてもよい。また、凸部110が、一対の第2平坦部81eの双方に設けられてもよい。
 
【0047】
  また、図示していないが、凸部110は、締付軸40の第1平坦部43に設けられてもよい。すなわち、凸部110は、締付軸40の第1平坦部43および筒状部81の第2平坦部81eの少なくとも一方に設けられればよい。
  また、図示していなが、締付軸40の外周面に単一の第1平坦部43が設けられて締付軸40の一部の断面がD形断面とされ、筒状部81の内周面81dに単一の第2平坦部81eが設けられてもよい。
 
【0048】
  また、図示していないが、一つの平坦部に対して、複数の凸部110が設けられてもよい。
  また、図示していないが、筒状部81のスリット83は、単一で設けられてよい。その場合、スリット83は、筒状部81の軸方向の一端81aから他端81bまで延びるものであってもよい。
 
【0049】
  その他、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。