特許第6774913号(P6774913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6774913コンクリート柱用継手および組立式コンクリート柱
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774913
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】コンクリート柱用継手および組立式コンクリート柱
(51)【国際特許分類】
   E04H 12/12 20060101AFI20201019BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   E04H12/12
   E04B1/58 503B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-138104(P2017-138104)
(22)【出願日】2017年7月14日
(65)【公開番号】特開2019-19525(P2019-19525A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2019年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】菊 広樹
(72)【発明者】
【氏名】古市 護
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−153598(JP,A)
【文献】 実開昭58−126354(JP,U)
【文献】 実開昭55−117553(JP,U)
【文献】 特開平06−257324(JP,A)
【文献】 実開昭57−165703(JP,U)
【文献】 実開昭57−168655(JP,U)
【文献】 特開2014−084614(JP,A)
【文献】 特開2008−095456(JP,A)
【文献】 特開2009−197554(JP,A)
【文献】 特開平11−190020(JP,A)
【文献】 特開2000−227184(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0026206(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 12/12,12/00
E04B 1/58
E04B 1/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の上側柱と、下方に向かって漸次径大のテーパ部を少なくとも上端部の所定範囲に有するコンクリート製の下側柱とを軸方向に接続するコンクリート柱用継手であって、
前記上側柱に一体的に接続される上側接続部と、
前記下側柱に接続される下側接続部とを備え、
前記下側接続部は、前記テーパ部に嵌合可能な円筒状の嵌合部と、この嵌合部より上方に位置し内側へ突出した接触部とを有し、
前記下側接続部が前記下側柱に接続された状態では、前記嵌合部が前記テーパ部に嵌合し、かつ、前記接触部が前記テーパ部の外周面の一部に接触する
ことを特徴とするコンクリート柱用継手。
【請求項2】
嵌合部は、下端部から軸方向の所定範囲に設けられたスリットを有する
ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート柱用継手。
【請求項3】
コンクリート製の上側柱と、
下方に向かって漸次径大のテーパ部を少なくとも上端部の所定範囲に有するコンクリート製の下側柱と、
請求項1または2記載のコンクリート柱用継手とを具備し、
前記コンクリート柱用継手の上側接続部が前記上側柱に一体的に接続された状態にて、下側接続部における嵌合部が前記テーパ部に嵌合し、かつ、前記下側接続部における接触部が前記テーパ部の外周面の一部に接触することにより、前記上側柱と前記下側柱とが接続される
ことを特徴とする組立式コンクリート柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製の上側柱と、下方に向かって漸次径大のテーパ部を少なくとも上端部の所定範囲に有するコンクリート製の下側柱とを軸方向に接続するコンクリート柱用継手、および、それを用いて上側柱と下側柱とが接続される組立式コンクリート柱に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート柱は、下方に向かって漸次径大のテーパ形状が一般的であり、同等規格の組立式コンクリート柱も同様にテーパ形状が多い。すなわち、テーパ形状の組立式コンクリート柱は、テーパ形状の上側柱と下側柱を、コンクリート柱用継手にて軸方向に接続して構成されることが多い。
【0003】
この種の組立式コンクリート柱に用いられる継手としては、例えば差込式、フランジ式およびリング式等が知られている。
【0004】
差込式継手は、特許文献1および特許文献2等のように、2つの柱のそれぞれの端部が互いに差込可能に構成された継手である。
【0005】
フランジ式継手は、特許文献3等のように、2つの柱の端部に円板状部材(フランジ部)が設けられており、これらを突き合わせてボルトおよびナットで接続する継手である。
【0006】
リング式継手は、特許文献4等のように、2つの柱の端部に設けられたフランジと、フランジに外嵌可能でそのフランジを軸方向に締め付ける2つ割りの内リング(第1のリング)と、内周に内リングの外周のテーパ形状に対応した円錐テーパを有し内リングに外嵌可能な外リング(第2のリング)とを備え、これらフランジと内リングと外リングとで上下の柱を接続する構成である。
【0007】
また、柱用の継手ではないが、鋼管の差込式の継手としては、特許文献5に示すように、一方の鋼管の端部にかしめが設けられた構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−257324号公報
【特許文献2】特開2014−84614号公報
【特許文献3】特開2008−95456号公報
【特許文献4】特開2009−197554号公報
【特許文献5】特開2000−227184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の特許文献1および特許文献2や特許文献5等の差込式の構成では、部品が少なく簡易な構成で、コストを抑えることができ、施工性にも優れているが、製造上等の観点から適切な継手とは言えない。
【0010】
すなわち、継手として利用可能なテーパ形状の鋼管に関する規格品(既製品)がないため、個別に設計および製造する必要がある。
【0011】
また、継手を構成する鋼板や鋼管をテーパ形状で寸法精度を高く成形する必要があり、容易に製造できない。
【0012】
さらに、テーパ状の鋼管である継手を下側柱に嵌合させて接続するため、鋼管を作成する際に発生する内周面の溶接ビードが、下側柱に干渉してしまい適切に接続(嵌合)できなくなってしまう。そのため、内周面の溶接ビードを切除する必要があるが、継手を構成する鋼管は比較的大きなものではなく、内周面の切除作業を行いにくい。
【0013】
また、下側柱との接続部分では、その形状精度に起因して、部分的な隙間ができてしまい、接触位置(力の伝達位置)が安定しない。
【0014】
特許文献5のようなかしめが設けられた構成は、鋼管内における下側柱との接触箇所がそのかしめの一箇所のみであるため、柱全体としての曲げ剛性が低く(変形が大きく)、柱の継手としては適していない。
【0015】
上述の特許文献3のフランジ式の構成や特許文献4のリング式の構成では、継手強度および機械的な信頼性は優れているものの、部品が多くなるため、コストが上昇するとともに、構造計算が複雑になり、また、施工時や保守点検時の工数や管理項目が多くなってしまう。
【0016】
したがって、効率的に製造および施工でき、上側柱と下側柱とを適切に接続できるコンクリート柱用継手が求められていた。
【0017】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、効率的に製造および施工でき、上側柱と下側柱とを適切に接続できるコンクリート柱用継手、および、それを用いた組立式コンクリート柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に記載されたコンクリート柱用継手は、コンクリート製の上側柱と、下方に向かって漸次径大のテーパ部を少なくとも上端部の所定範囲に有するコンクリート製の下側柱とを軸方向に接続するコンクリート柱用継手であって、前記上側柱に一体的に接続される上側接続部と、前記下側柱に接続される下側接続部とを備え、前記下側接続部は、前記テーパ部に嵌合可能な円筒状の嵌合部と、この嵌合部より上方に位置し内側へ突出した接触部とを有し、前記下側接続部が前記下側柱に接続された状態では、前記嵌合部が前記テーパ部に嵌合し、かつ、前記接触部が前記テーパ部の外周面の一部に接触するものである。
【0019】
請求項2に記載されたコンクリート柱用継手は、請求項1記載のコンクリート柱用継手において、嵌合部は、下端部から軸方向の所定範囲に設けられたスリットを有するものである。
【0020】
請求項3に記載された組立式コンクリート柱は、コンクリート製の上側柱と、下方に向かって漸次径大のテーパ部を少なくとも上端部の所定範囲に有するコンクリート製の下側柱と、請求項1または2記載のコンクリート柱用継手とを具備し、前記コンクリート柱用継手の上側接続部が前記上側柱に一体的に接続された状態にて、下側接続部における嵌合部が前記テーパ部に嵌合し、かつ、前記下側接続部における接触部が前記テーパ部の外周面の一部に接触することにより、前記上側柱と前記下側柱とが接続されるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、下側接続部が、嵌合部と接触部とを有するため、効率的に製造および施工でき、上側柱と下側柱とを適切に接続できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施の形態に係る組立式コンクリート柱の構成を示す断面図である。
図2】同上組立式コンクリート柱におけるコンクリート柱用継手の下側接続部を示す正面図である。
図3】同上組立式コンクリート柱におけるコンクリート柱用継手の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態の構成について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1は、組立式コンクリート柱1を示し、この組立式コンクリート柱1は、コンクリート製の上側柱2と、コンクリート製の下側柱3とが、コンクリート柱用継手4を介して軸方向に接続されている。すなわち、組立式コンクリート柱1は、下側柱3の上側に、上側柱2がコンクリート柱用継手4を介して接続されている。
【0025】
上側柱2は、コンクリート製の柱状の本体部11の軸方向の下端部に端板12が設けられている。
【0026】
本体部11は、図示しない上端部から下方へ漸次径大となる円錐筒状のテーパ部13を有し、このテーパ部13の下側には、外径が一定であるストレート形状の円筒部14が設けられている。
【0027】
また、円筒部14には、コンクリート柱用継手4の上端部が一体に接続されており、コンクリート柱用継手4の内側で円筒部14の下端部に端板12が設けられている。
【0028】
下側柱3は、コンクリート製の柱状の本体部15の軸方向の上端部に端板16が設けられている。
【0029】
本体部15は、上端部から下方へ漸次径大となる円錐筒状のテーパ部17を有し、軸方向の全体にわたってテーパ形状に成形されている。
【0030】
コンクリート柱用継手4は、外径が一定である直胴状(いわゆるストレート形状)の鋼管である。このコンクリート柱用継手4は、上側柱2に一体に接続された上側接続部21と、この上側接続部21の下側に位置し下側柱3に嵌合して接続される下側接続部22とを有している。
【0031】
上側接続部21は、上側柱2を成形する際に、型枠内の対応する箇所に予め配置されて上側柱2に一体成形されている。すなわち、コンクリート柱用継手4は、上側接続部21が上側柱2のテーパ部13の下側の部分と型枠内で一体成形されることにより、一体化されている。
【0032】
下側接続部22は、ストレート形状の嵌合部23と、この嵌合部23より内側へ突出した接触部24とを有している。
【0033】
嵌合部23は、下側柱3のテーパ部17を挿入するように嵌合可能である。すなわち、上側接続部21を上側柱2に一体成形した状態にて、上側柱2とともにコンクリート柱用継手4を下側柱3の上方から下降させることで、嵌合部23内に下側柱3が挿入されてそのテーパ部17が嵌合部23内に嵌合される。
【0034】
接触部24は、嵌合部23におけるテーパ部17との嵌合箇所より上方に位置し、嵌合部23の内周面の周方向に連続した円環状であり、例えば溶接等によって一体的に設けられている。
【0035】
また、図2に示すように、下側接続部22には、嵌合部23の下端部から軸方向の所定範囲へ延びる複数のスリット25が設けられている。
【0036】
各スリット25は、嵌合部23の下端縁部から直線状に切込形成されており、嵌合部23の周方向に一定間隔で互いに離間している。
【0037】
そして、下側接続部22内に下側柱3のテーパ部17を挿入すると、その下側接続部22の嵌合部23におけるスリット25が設けられた範囲が、テーパ部17の形状に対応するように変形して嵌合される。
【0038】
下側接続部22が下側柱3のテーパ部17に嵌着されて接続された状態では、嵌合部23がテーパ部17に嵌合し、かつ、接触部24がテーパ部17の外周面の一部に接触する。すなわち、下側柱3に接続されたコンクリート柱用継手4は、嵌合部23におけるテーパ部17との嵌合箇所であるスリット25に対応する範囲と接触部24とがテーパ部17の外周面に接触する。
【0039】
また、このように上側接続部21が上側柱2に一体化され、かつ、下側接続部22が下側柱3に嵌着された状態のコンクリート柱用継手4内では、上側柱2の下端面に位置する端板12と下側柱3の上端面に位置する端板16とが、軸方向に離間した状態で対向している。
【0040】
次に、上記一実施の形態の作用および効果を説明する。
【0041】
コンクリート柱用継手4は、下側接続部22が、嵌合部23と接触部24とを有し、下側接続部22が下側柱3のテーパ部17に接続された状態では、嵌合部23がテーパ部17に嵌合し、かつ、接触部24がテーパ部17の外周面の一部に接触するため、下側接続部22が、テーパ部17に対して、嵌合部23における嵌合箇所と接触部24とで軸方向に複数箇所接触する。そのため、コンクリート柱用継手4が下側柱3に対して安定して支持され、上側柱2と下側柱3とを適切に接続できる。
【0042】
また、上側接続部21および下側接続部22のいずれも外径が一定のストレート形状に構成できるため、下側接続部22を下側柱3のテーパ部17に対応したテーパ形状に成形または加工する必要がなく、例えばJIS G 3444に規定された一般構造用炭素鋼鋼管等のような規格品を利用して、効率的に製造できる。
【0043】
さらに、下側接続部22は、テーパ部17に対して嵌合箇所および接触部24のみが接触し、嵌合部23における嵌合箇所および接触部24以外の部分とテーパ部17との間には隙間が生じるため、溶接によるビードを切除する箇所を大幅に低減できるとともに、上側柱2と下側柱3との力の伝達メカニズムが明確になり、設計照査しやすくなる。
【0044】
また、コンクリート柱用継手4にて上側柱2と下側柱3とを接続する際には、上側接続部21を上側柱2に一体成形し、その上側柱2とともに上方から下側柱3に向かって下降させて、下側接続部22内に下側柱3のテーパ部17を挿入するように嵌合させるだけであるため、作業が容易であり効率的に施工できる。
【0045】
さらに、下側接続部22の嵌合部23にスリット25が設けられているため、下側接続部22内に下側柱3を挿入するように嵌着すると、その下側接続部22の嵌合部23におけるスリット25が設けられた範囲がテーパ部17の形状に対応するように変形する。そのため、例えばスリット25が設けられておらず嵌合部23の下側縁部のみがテーパ部17に接触した状態で嵌合された場合に比べて、テーパ部17との接触面積が大きくなり、より強固に嵌着できる。
【0046】
なお、上記一実施の形態では、上側柱2はテーパ部13を有し、そのテーパ部13の下側が円筒状である構成としたが、このような構成には限定されず、コンクリート柱用継手4が一体的に接続された構成であればよく、例えば、軸方向全体が円筒状(ストレート形状)である構成等にしてもよい。
【0047】
下側柱3は、テーパ部17が少なくとも上端部から所定範囲に設けられた構成であればよく、例えば、軸方向全体がテーパ形状の構成や、上端部から一部の領域のみがテーパ形状である構成等であればよい。
【0048】
コンクリート柱用継手4は、規格品の鋼管を利用したストレート形状のものが好ましいが、このような構成には限定されず、上側接続部21と下側接続部22とを備え、その下側接続部22がテーパ部17に嵌合可能な嵌合部23と、テーパ部17の外周面に接触する接触部24とを有する構成であればよい。
【0049】
下側接続部22は、スリット25が設けられた構成としたが、このような構成には限定されず、スリット25が設けられていない構成にしてもよい。
【0050】
接触部24は、嵌合部23の内周面に周方向に連続して設けられた構成には限定されず、嵌合部23をテーパ部17に嵌合した状態で、そのテーパ部17の外周面の一部に接触可能であればよい。すなわち、例えば、嵌合部23において傾斜状に接触部24が設けられた構成や、嵌合部23の軸方向における異なる位置に複数の接触部24が設けられた構成や、嵌合部23の内周面に接触部24が点在するように設けられた構成等にしてもよい。
【0051】
また、図3の変形例に示すように、鋼管であるコンクリート柱用継手4の所定箇所を絞り加工によって内側へ屈曲させることで、接触部31が形成された構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 組立式コンクリート柱
2 上側柱
3 下側柱
4 コンクリート柱用継手
17 テーパ部
21 上側接続部
22 下側接続部
23 嵌合部
24 接触部
25 スリット
31 接触部
図1
図2
図3