特許第6774927号(P6774927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774927
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】裁断機
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/26 20060101AFI20201019BHJP
   B26D 7/12 20060101ALI20201019BHJP
   B26D 5/00 20060101ALI20201019BHJP
   B26D 1/10 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   B26D7/26
   B26D7/12
   B26D5/00 F
   B26D1/10
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-244185(P2017-244185)
(22)【出願日】2017年12月20日
(65)【公開番号】特開2019-107756(P2019-107756A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2019年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100101638
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 峰太郎
(72)【発明者】
【氏名】名出 隆二
【審査官】 永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−071210(JP,A)
【文献】 特開平07−060686(JP,A)
【文献】 特開2013−099811(JP,A)
【文献】 特開平06−155381(JP,A)
【文献】 米国特許第04920495(US,A)
【文献】 特開2015−006703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/26
B26D 1/10
B26D 5/00
B26D 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地を載置する裁断テーブルに沿って二次元移動する裁断ヘッドと、
裁断ヘッドから下方に突出する裁断刃と、
裁断刃を一定のストローク範囲で上下動させるレシプロヘッドと、
レシプロヘッドを昇降させ、上昇時に裁断刃の下端が生地表面から上方に離れ、下降時に裁断刃が生地を貫通して生地を裁断可能にする昇降アクチュエーターと
を含む裁断機において、
裁断ヘッド内の昇降アクチュエーターによるレシプロヘッドの上昇範囲に、裁断テーブル上に載置される生地の積層厚に応じて予め定められる位置でレシプロヘッドの上昇を阻止するか阻止しないかを切替え可能な上昇ストッパーを備えることを特徴とする裁断機。
【請求項2】
前記生地の積層厚を検出する検出手段と、
裁断開始前に検出手段によって検出される積層厚を、予め設定される基準値と比較し、基準値に対する積層厚の小または大に応じて、前記上昇ストッパーが前記レシプロヘッドの上昇を前記予め定められる位置で阻止するか阻止しないかを、それぞれ切替える切替手段と
を含むことを特徴とする請求項1記載の裁断機。
【請求項3】
前記検出手段は、裁断中も前記積層厚を検出し、
前記切替手段は、裁断開始前の積層厚が前記基準値に対して小であって前記レシプロヘッドの上昇を前記予め定められる位置で阻止するようにしていても、積層厚が基準値に予め設定される許容値を加えた生地盛り基準よりも大となると、レシプロヘッドの上昇を阻止しないように前記上昇ストッパーを切替える、
ことを特徴とする請求項2記載の裁断機。
【請求項4】
前記上昇ストッパーに対し、前記予め定められる位置で前記レシプロヘッドの上昇を阻止するように下降させるか、該位置でレシプロヘッドの上昇を阻止しないように上昇させるかを切替える切替アクチュエーターを備え、
切替アクチュエーターの推力を、前記昇降アクチュエーターの推力よりも大きくしておく、
ことを特徴とする請求項3記載の裁断機。
【請求項5】
前記裁断ヘッドは、前記裁断刃を研磨可能な研磨機構を備え、
前記切替え手段は、前記昇降アクチュエーターでレシプロヘッドを上昇させ、前記切替アクチュエーターでレシプロヘッドの上昇を阻止しない状態と阻止する状態とを切替えて、研磨機構によってレシプロヘッドが上下動させる裁断刃を研磨する、
ことを特徴とする請求項4記載の裁断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裁断テーブル上に載置される布帛などの生地を、予め設定されるデータに基づいて裁断する裁断機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、予め設定される裁断データに基づいて生地を裁断するための裁断機が用いられている。裁断機では裁断効率を向上させるため、水平な裁断テーブル上に複数枚の生地を積層して載置し、同時に裁断する(たとえば、特許文献1,2参照)。生地の裁断は、裁断テーブル上方を二次元移動する裁断ヘッドから下方に突出する裁断刃を、生地に貫通させて上下に往復動させながら裁断ヘッドを移動させて行う。
【0003】
裁断データは、一般に、生地から複数のパーツの輪郭などを切断すべきことを示す。パーツ間には隙間が設けられ、裁断刃を生地から引抜く状態で裁断ヘッドを移動させる必要がある。また、同一のパーツでも、裁断刃を生地からいったん引抜かなくては切断することができない部分も生じる。これらの場合、裁断刃を生地から裁断ヘッドに引上げて、再び裁断ヘッドを生地に突刺して裁断を続けることになる。
【0004】
裁断刃の上下の往復動は、裁断ヘッドの上部に備えられるレシプロヘッドによって駆動される。裁断刃を生地から引抜くための上昇と、裁断刃を生地に突刺すための下降は、レシプロヘッドを昇降させて行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3786975号公報
【特許文献2】特許第6146897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
裁断機として、積層厚が大きな生地を裁断可能なことは、裁断能力が高くなるけれども、レシプロヘッドに必要な昇降のストロークが大きくなる。昇降ストロークが大きいと、積層厚が小さな生地を裁断する際に、裁断刃の無駄な上昇が有り、生産効率が低下する。
【0007】
特許文献1の裁断機では、レシプロヘッドに相当するヘッドブロックを、一定のストロークの範囲内で昇降駆動し、無駄な上昇が無いようにしている。生地の積層厚が大きくても裁断可能にするために、ヘッドブロックと昇降駆動用の機構とを、生地の積層厚に応じて昇降させるZ軸昇降機構を備えている。しかしながら、Z軸昇降機構を備えることで、部品点数や、コスト、重量が増加してしまう。
【0008】
特許文献2の裁断機では、生地押えに相当するシート押えに対して、裁断刃を上下に往復動させる裁断刃往復動機構が設けられる昇降枠が一定の高さまで上昇したことを検出すると昇降シリンダーに内蔵のストッパーで上昇を停止させる。昇降シリンダーがヘッド固定枠に取付けられているので、昇降枠の停止位置は、シート押えに対して一定であっても、固定枠に対してはシート材の表面の高さに応じて変化する。このような内蔵機能を有する昇降シリンダーの機構またはその駆動系は複雑になってしまうと考えられる。
【0009】
本発明の目的は、簡単な機構で裁断刃の無駄な上昇を無くすことが可能な裁断機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、生地を載置する裁断テーブルに沿って二次元移動する裁断ヘッドと、
裁断ヘッドから下方に突出する裁断刃と、
裁断刃を一定のストローク範囲で上下動させるレシプロヘッドと、
レシプロヘッドを昇降させ、上昇時に裁断刃の下端が生地表面から上方に離れ、下降時に裁断刃が生地を貫通して生地を裁断可能にする昇降アクチュエーターと
を含む裁断機において、
裁断ヘッドに内の昇降アクチュエーターによるレシプロヘッドの上昇範囲に、裁断テーブル上に載置される生地の積層厚に応じて予め定められる位置でレシプロヘッドの上昇を阻止するか阻止しないかを切替え可能な上昇ストッパーを備えることを特徴とする裁断機である。
【0011】
また本発明は、前記生地の積層厚を検出する検出手段と、
裁断開始前に検出手段によって検出される積層厚を、予め設定される基準値と比較し、基準値に対する積層厚の小または大に応じて、前記上昇ストッパーが前記レシプロヘッドの上昇を前記予め定められる位置で阻止するか阻止しないかを、それぞれ切替える切替手段と
を含むことを特徴とする。
【0012】
また本発明で、前記検出手段は、裁断中も前記積層厚を検出し、
前記切替手段は、裁断開始前の積層厚が前記基準値に対して小であって前記レシプロヘッドの上昇を前記予め定められる位置で阻止するようにしていても、積層厚が基準値に予め設定される許容値を加えた生地盛り基準よりも大となると、レシプロヘッドの上昇を阻止しないように前記上昇ストッパーを切替える、
ことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記上昇ストッパーに対し、前記予め定められる位置で前記レシプロヘッドの上昇を阻止するように下降させるか、該位置でレシプロヘッドの上昇を阻止しないように上昇させるかを切替える切替アクチュエーターを備え、
切替アクチュエーターの推力を、前記昇降アクチュエーターの推力よりも大きくしておく、
ことを特徴とする。
【0014】
また本発明で、前記裁断ヘッドは、前記裁断刃を研磨可能な研磨機構を備え、
前記切替え手段は、前記昇降アクチュエーターでレシプロヘッドを上昇させ、前記切替アクチュエーターでレシプロヘッドの上昇を阻止しない状態と阻止する状態とを切替えて、研磨機構によってレシプロヘッドが上下動させる裁断刃を研磨する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、裁断ヘッド内のレシプロヘッドの上昇範囲に、生地の積層厚に応じて予め定められる位置でレシプロヘッドの上昇を阻止するか阻止しないかを切替え可能な上昇ストッパーを設ける。生地の積層厚が小さいときは上昇ストッパーでレシプロヘッドの上昇を阻止し、裁断刃の無駄な上昇を無くすことができる。生地の積層厚が大きければ、レシプロヘッドを上昇させても裁断刃の下端が生地の表面から離れずに、裁断ヘッドの移動に支障が生じるような事態が生じ得る。そのような事態を避けるために、生地の積層厚が大きければ、上昇ストッパーがレシプロヘッドの上昇を阻止しないようして、安全を図ることができる。
【0016】
また本発明によれば、上昇ストッパーによってレシプロヘッドの上昇を阻止するか阻止しないかを、裁断開始前に検出手段が生地の積層厚を検出し、積層厚が基準値よりも小さいか大きいかに応じて、切替え手段で切替えることができる。
【0017】
また本発明によれば、裁断開始後の生地の積層厚に、切断部からの空気漏れなどによる生地盛りが生じても、生地盛りによって増加する積層厚が基準値に許容値を加えた生地盛り基準より小さければレシプロヘッドの無駄な上昇を阻止し、生地盛り基準より大きければ上昇を阻止しないようにして安全を図ることができる。
【0018】
また本発明によれば、切替アクチュエーターの推力を昇降アクチュエーターの推力よりも大きくしておくので、切替アクチュエーターで上昇ストッパーを下降させれば、予め定められる位置でレシプロヘッドの上昇を阻止することができる。
【0019】
また本発明によれば、切替アクチュエーターによる上昇ストッパーの昇降の切替えで、昇降アクチュエーターがレシプロヘッドを上昇させる位置を切替え、裁断刃に対する研磨機構による研磨範囲を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施例としての裁断機1の主要部分の概略的な構成を示す模式的な正面図である。
図2図2は、図1のレシプロヘッド5の上昇を阻止する阻止状態と阻止しない阻止解除状態とを示す模式的な正面図である。
図3図3は、図1の上昇ストッパー11によるレシプロヘッド5の上昇阻止状態と阻止解除状態とを切替えるための構成を示す模式的な正面図である。
図4図4は、図1の上昇ストッパー11による上昇阻止状態と阻止解除状態とを切替える動作を示すフローチャートである。
図5図5は、図1の上昇ストッパー11によるレシプロヘッド5のレシプロヘッド5の上昇の阻止解除状態と阻止状態とを切替えて行う裁断刃4の研磨で、拡大する研磨範囲を示す簡略化した右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1図5で、本発明の一実施例としての裁断機1の構成について説明する。説明の便宜上、説明対象の図には記載されていない部分について、他の図に記載される参照符を付して言及する場合がある。
【実施例】
【0022】
図1は、裁断機1の概略的な構成を示す。裁断機1は、載置面が水平な裁断テーブル2と、裁断テーブル2の上方を載置面から一定の高さで、裁断テーブル2に沿って二次元移動する裁断ヘッド3とを備える。裁断ヘッド3は、下方に突出する裁断刃4と、裁断刃4を一定のストローク範囲で上下動させるレシプロヘッド5と、レシプロヘッド5を昇降させる昇降アクチュエーター6とを含む。裁断ヘッド3には、裁断刃4の向きを中心軸3a回りに変えるR軸ユニット7と、裁断刃4を研磨する研磨ユニット8と、生地押え9とをさらに含む。R軸ユニット7および研磨ユニット8には、外部から回転駆動力を受けるプーリー7a,8aがそれぞれ設けられる。研磨ユニット8内には、裁断刃4を研磨することが可能な研磨機構8bが設けられる。生地押え9は、裁断テーブル2上に載置される生地10の表面を押える。布帛などの生地10は、通気性を有し、複数枚を積層して表面を非通気性の密閉シート10aで覆い、裁断テーブル2の下方から空気を吸引すれば、載置面上に保持しながら裁断刃4によって同時に切断することができる。昇降アクチュエーター6によるレシプロヘッド5の上昇時に裁断刃4の下端が生地10の表面から上方に離れ、下降時に裁断刃4が生地10を貫通して生地を裁断可能にする。
【0023】
裁断ヘッド3には、昇降アクチュエーター6によるレシプロヘッド5の上昇を、予め定められる位置で阻止するか阻止しないかを切替え可能な上昇ストッパー11を備える。上昇ストッパー11は、上下方向の阻止経路11aに沿って昇降し、裁断ヘッド3に固定される切替アクチュエータ−12によって昇降駆動される。切替アクチュエーター12は、上昇ストッパー11に対し、予め定められる位置でレシプロヘッド5の上昇を阻止するように下降させるか、該位置でレシプロヘッド5の上昇を阻止しないように上昇させるかを切替える。
【0024】
レシプロヘッド5の昇降を案内するために、昇降案内機構13が設けられる。昇降案内機構13は、たとえばリニアガイドやボールスプラインなどを用い、ガイド13aとスライダー13bとを含む。ガイド13aは、裁断ヘッド3に取付けられ、スライダー13bはレシプロヘッド5を支持してレシプロヘッド5と一体的に昇降する昇降部材14に取付けられる。昇降部材14は、阻止経路11aの予め定める位置に、当接部材14aを有する。レシプロヘッド5の上昇で当接部材14aが上昇し、上昇ストッパー11に当接すると、レシプロヘッド5の上昇が阻止される。上昇ストッパー11や当接部材14aには、当接時の衝撃を緩和するように、ゴムなどの弾性材料を用いたり、ショックアブゾーバーを用いたりすることが好ましい。阻止経路11aは、昇降部材14がレシプロヘッド5と一体的に昇降する際に、当接部材14aを設ける位置が昇降する経路となる。上昇ストッパー11は、レシプロヘッド5自体の上昇経路、または昇降部材14などでレシプロヘッド5と一体的に上昇する部材の上昇経路を含むレシプロヘッド5の上昇範囲に配置すればよい。
【0025】
昇降アクチュエーター6によるレシプロヘッド5の昇降は、昇降部材14を介して行われる。昇降アクチュエーター6は、支持部材15に取付けられる。支持部材15は、裁断ヘッド3に固定される。昇降アクチュエーター6は、支持部材15を介して裁断ヘッド3に固定されるけれども、支持部材に限らず、裁断ヘッド3に固定されればよい。支持部材15は、R軸ユニット7を中心軸3a回りの回転が可能な状態で支持する。研磨ユニット8は、R軸ユニット7の下部に設けられる。R軸ユニット7および研磨ユニット8を、プーリー7a,8aを介してそれぞれ回転駆動する機構も、支持部材15に取付けられるけれども、図示を省略する。
【0026】
本実施例の説明では、昇降アクチュエーター6、上昇ストッパー11、切替アクチュエーター12、昇降案内機構13などを、中心軸3aに対して左右対称に配置している。これは説明の便宜を図るためであり、裁断ヘッド3内のスペース上の制約などがあれば、各部の配置は変化させることができる。
【0027】
本実施例で、上昇ストッパー11でレシプロヘッド5の上昇を阻止すれば、生地10の積層厚Tが小さいときなどに、上昇高さをH1に抑え、阻止解除時の上昇高さH2に比較して、裁断刃4の無駄な上昇を無くすことができる。生地10の積層厚Tが大きければ、上昇ストッパー11がレシプロヘッド5の上昇を阻止しないように、阻止を解除すればよい。H2は、昇降アクチュエーター6の最大ストロークに対応し、H1は、H2から切替アクチュエーター12の作動ストロークを差引いた値となる。たとえば、H1がH2の70〜80%程度に削減されることで、レシプロヘッド5の上昇時間短縮の効果がある。
【0028】
図2は、図1のレシプロヘッド5の上昇に対する阻止状態を左半分の(L)で、阻止解除状態を右半分の(R)でそれぞれ示す。図示ではいずれの状態でも、裁断刃4の下端は生地10の表面から上昇し、研磨機構8bによる研磨も可能になる。ただし、生地10の積層厚が大きくなると、生地10の表面が左半分(L)に示す裁断刃4の下端よりも上昇するおそれがある。裁断刃4の下端が生地10の表面から抜けないことになり、裁断ヘッド3を移動させると裁断刃4で生地10を傷つけたり、裁断刃4を無理に曲げて折ってしまったりするおそれがある。このような場合は、右半分(R)に示すような阻止解除状態とすれば、レシプロヘッド5の上昇で裁断刃4の下端も上昇し、積層厚が大きくなっても上昇した裁断刃4の下端に達する積層厚までは、生地10の表面から抜けるようになる。
【0029】
右半分(R)に示す阻止解除状態では、上昇ストッパー11が上昇した状態となり、昇降アクチュエーター6でレシプロヘッド5は当接部材14aが上昇ストッパー11に当接するまで上昇させることができる。昇降アクチュエーター6がストロークの上限までレシプロヘッド5を上昇させても、当接部材14aが上昇ストッパー11に当接しないで、隙間が生じるようにしてもよい。しかしながら、隙間が大きいと、高さの差H2−H1となる切替アクチュエーター12の作動ストロークは最大ストロークから隙間分を差引いたものとなる。切替アクチュエーター12による阻止解除時の上昇ストッパー11の高さをH2より低くすることもできるけれども、昇降アクチュエーター6の作動ストロークが最大ストロークよりも小さくなる。昇降アクチュエーター6や切替アクチュエーター12の最大ストロークを有効に使用するためには、阻止解除時の隙間は丁度0となるようにすることが好ましい。
【0030】

図3は、図1の上昇ストッパー11による阻止とその解除とを切替えるための構成を示す。支持部材15には、検出手段20および押圧手段21も取付けられている。検出手段20は、エンコーダー20a、ラック20bおよびピニオン20cを含み、直接的には、支持部材15に対する生地押え9の下降量を検出する。支持部材15は、裁断テーブル2の載置面上を一定の高さで二次元移動する裁断ヘッド3に固定されている。検出手段20は、生地押え9で密閉シート10aの表面を押圧することで、生地10の積層厚を検出することになる。押圧手段21は、押圧力を発生する押圧アクチュエーター21a、押圧アクチュエーター21aから下方に延びるロッド21b、およびロッド21bと生地押え9とを接続する接続ユニット21cを含む。接続ユニット21cには、ラック20bの下部も接続される。押圧手段ト21による押圧で、生地押え9は、裁断ヘッド3から下方に押圧され、案内軸22が軸ガイド22aに沿って上下に案内される状態で生地10の表面を押圧する。生地押え9の位置の変化は、接続ユニット21cおよびラック20bを介して、エンコーダー20aで検出される。
【0031】
裁断機1の全体を制御するコントローラーの一部などに、切替手段30が設けられる。切替手段30は、裁断開始前に検出手段20によって検出される積層厚Tを、予め設定される基準値と比較する積層厚比較手段31と、基準値に対する積層厚Tの大または小に応じて、上昇ストッパー11がレシプロヘッド5の上昇を阻止しないか阻止するかを、それぞれ切替える阻止切替手段32とを含む。
【0032】
なお、裁断テーブル2の表面は、裁断刃4の刃先4aおよび刃縁4bの進入を許容しつつ、生地10を載置面上に保持する剛毛ブラシを並べて覆っている。レシプロヘッド5内には、裁断刃4を上下に往復動させるレシプロ機構が内臓されている。R軸ユニット7のプーリー7aは、ベルト7bを介して、支持部材15に取付けられるモーター7cで回転駆動される。研磨ユニット8に対する回転駆動も、支持部材15に取付けられるモーターで行われるけれども、図示を省略する。
【0033】
また、昇降アクチュエーター6、切替アクチュエーター12、押圧アクチュエーター21aには、空気圧シリンダーを使用することができる。油圧や電動のシリンダー、ソレノイドなどを使用することもできる。
【0034】
図4は、図1の上昇ストッパー11によるレシプロヘッド5の上昇阻止と上昇阻止の解除とを切替える動作を示す。裁断テーブル2に生地10を載置すると、ステップs1で上昇ストッパー11を阻止解除状態にしてレシプロヘッド5を昇降アクチュエーター6で上昇させておき、生地押え9も上昇させておく。ステップs2で裁断ヘッド3をたとえば原点位置に移動させる。ステップs3では、押圧アクチュエーター21aを作動させ、生地押え9を下降させる。ステップs4では、検出手段20によって、生地押え9が生地10の表面を押圧して停止する高さから生地10の積層厚Tを検出する。ステップs5では、切替手段30の積層厚比較手段31が積層厚Tを基準値と比較する。基準値は、裁断機1として想定する最大積層厚の75%程度や、上昇阻止状態での昇降アクチュエーター6によるレシプロヘッド5の昇降ストロークの50%程度とする。
【0035】
ステップs5で、積層厚Tが基準値よりも大きくないと判断するときは、ステップs6で上昇ストッパー11を作動させ、上昇阻止状態にする。なお、基準値よりも大きくないとは、論理上、基準値よりも小さい場合と基準値と等しい場合とを含む。しかしながら実際上基準値と等しいと判断されることは殆ど発生しないので、基準値よりも大きいか小さいかの判断が主となり、等しい場合は大小のいずれかに含めればよい。
【0036】
ステップs6に続き、レシプロヘッド5を下降させ、ステップs7で裁断刃4による生地10の裁断を行う。裁断刃4を生地10から引抜くためにレシプロヘッド5を上昇させる前に、ステップs8で生地10の積層の積層厚Tを検出手段20で検出する。ステップs9では、積層厚比較手段31が積層厚Tを予め設定される生地盛り基準と比較する。この生地盛り基準は、基準値に許容値を加えた値とする。積層厚Tが生地盛り基準よりも大きくなければ、ステップs7に戻り、上昇ストッパー11を作動させた上昇阻止状態での裁断を続ける。
【0037】
ステップs9で、積層厚Tが生地盛り基準よりも大きいと判断するときは、ステップs10で上昇ストッパー11を阻止解除状態にする。ステップs5で積層厚Tが基準値よりも大きいと判断するときステップs1での阻止解除状態を続行し、またはステップs10で上昇ストッパー11を阻止解除状態にしたときは、ステップs11の裁断を続け、ステップs12で裁断終了と判断されれば、動作を終了する。ステップs9で生地盛りが大きくなるときは、裁断の進行で生地10の膨らみが大きくなる可能性が高く、上昇阻止状態は解除しておいた方がよい場合が多いからである。
【0038】
以上のように、検出手段20は、裁断中も積層厚Tを検出し、阻止切替手段32は、裁断開始前の積層厚Tが基準値に対して小であってレシプロヘッド5の上昇を阻止するようにしていても、積層厚Tが予め設定される生地盛り基準に対して大となると、レシプロヘッド5の上昇を阻止しないように切替える。裁断開始後の生地の積層厚Tに、切断部からの空気漏れなどによる生地盛りが生じても、生地盛りによって増加した積層厚Tが生地盛り基準より小さければ無駄な上昇を無くし、基準より大きければ上昇阻止状態を解除して、昇降アクチュエーター6がレシプロヘッド5を上昇させても、裁断刃4の下端が生地10の表面から抜けなくなるような事態を避けて、安全を図ることができる。
【0039】
図5は、図1の上昇ストッパー11によるレシプロヘッド5の上昇阻止とその解除とを切替えて行うことで可能な、裁断刃4の研磨による研磨範囲を示す。図5(a)に示すように、図2(R)のような阻止解除状態での昇降アクチュエーター6によるレシプロヘッド5の上昇時には、レシプロヘッド5による裁断刃4の上下動で、刃先4aおよび刃縁4bについてGuの範囲で、研磨機構8bによる研磨を行うことができる。切替アクチュエーター12を作動させると、昇降アクチュエーター6で上昇させているレシプロヘッド5を図2(L)のように下げ、図5(b)に示すように、裁断刃4の刃縁4bに対し、Gdの範囲で研磨を行うことができる。したがって、全体として、上昇ストッパー11によるレシプロヘッド5の上昇の阻止解除状態と上昇阻止状態とを利用して、裁断刃4に対する研磨機構8bによる研磨範囲Gをレシプロヘッド5による裁断刃4の上下動の範囲よりも、拡大することができる。従来、このような範囲拡大は、研磨ユニット8を上下動させる専用のアクチュエーターを設けて実現している。本実施例では、切替アクチュエーター12で兼用させることができる。
【0040】
以上の実施例では、上昇ストッパー11が阻止経路11aに沿って上下動して、上昇阻止状態では積層厚Tの基準値に対応する予め定められる位置でレシプロヘッド5の上昇を阻止しているけれども、阻止経路11aに対して異なる方向から出没して阻止を行うようにしてもよい。阻止解除状態では、上昇ストッパー11をレシプロヘッド5の上昇範囲外に退出させるようにすることもできる。
【0041】
また、本実施例で上昇ストッパー11が上昇阻止状態となる位置は1箇所であるけれども、複数箇所で上昇阻止状態となるようにしてもよい。複数箇所で順次上昇阻止状態と阻止解除状態の切替えを行うようにすれば、生地10の積層厚Tが小さい場合にレシプロヘッド5の上昇を阻止する位置をより低くし、レシプロヘッド5の上昇時間短縮の効果を高めることができる。生地10の積層厚Tが大きくなれば、順次大きい基準値に対応して予め定められる位置で上昇阻止状態となるようの切替え、安全を図りつつ時間短縮の効果も残すことができる。
【0042】
また、上昇ストッパー11によるレシプロヘッド5の上昇阻止は、生地の積層厚Tを検出して切替え制御しているけれども、裁断開始時の作業者などの判断に従うようにしてもよい。判断結果で、裁断機1に対する作動を指示する際に、上昇阻止状態とするか阻止解除状態とするかを予め切替えておいて動作させることもできる。さらに、裁断機1で生地を裁断する裁断データに上昇ストッパー11によるレシプロヘッド5の上昇阻止の切替えを含め、裁断がある程度進行するまでは上昇を阻止し、進行してから上昇を阻止しないように設定することもできる。
【符号の説明】
【0043】
1 延反機
2 裁断テーブル
3 裁断ヘッド
4 裁断刃
5 レシプロヘッド
6 昇降アクチュエーター
8b 研磨機構
9 生地押え
10 生地
11 上昇ストッパー
12 切替アクチュエーター
20 検出手段
30 切替手段
31 積層圧比較手段
32 阻止切替手段
図1
図2
図3
図4
図5