特許第6774936号(P6774936)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6774936水性ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774936
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】水性ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20201019BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20201019BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20201019BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20201019BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20201019BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20201019BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20201019BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20201019BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   C08G18/00 C
   C08G18/08 019
   C08G18/10
   C08G18/67
   C08G18/66 003
   C08F299/06
   C09D175/04
   C09D7/40
   C09D5/02
【請求項の数】12
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-505138(P2017-505138)
(86)(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公表番号】特表2017-528559(P2017-528559A)
(43)【公表日】2017年9月28日
(86)【国際出願番号】EP2015066986
(87)【国際公開番号】WO2016016117
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2018年7月5日
(31)【優先権主張番号】14179407.3
(32)【優先日】2014年7月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513277278
【氏名又は名称】オールネックス オーストリア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アールツト、アントン
(72)【発明者】
【氏名】クットラー、ウルリケ
【審査官】 工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−292148(JP,A)
【文献】 特開昭63−051471(JP,A)
【文献】 特開平05−194687(JP,A)
【文献】 米国特許第06946515(US,B1)
【文献】 国際公開第96/001860(WO,A1)
【文献】 特開平03−162469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−301/00
C08G 18/00− 18/87
C08L 1/00−101/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリットと、該ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリットが分散される水と、該水分散されるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリットの構成要素とを含む、水性ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液であって、該水分散されるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリットの構成要素は、疎水性修飾ヒドロキシ官能性ポリエステルAと、ウレタン、ウレア、またはチオウレタンを形成しながらイソシアネートと反応する更なる基を有する酸Bと、任意選択で、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリアミド、ポリジエン、及びポリエンであり得、分子当たり少なくとも2つのヒドロキシル基を有する、ヒドロキシ官能性オリゴマー性またはポリマー性化合物Cと、任意選択で、分子当たり少なくとも2つのヒドロキシル基を有する、モノマー性ヒドロキシ化合物Dと、任意選択で、分子当たり少なくとも1つの第一級または第二級アミノ基及び少なくとも1つのヒドロキシル基を有する化合物Eと、任意選択で、分子当たり2つ以上の第一級または第二級アミノ基を有し、ヒドロキシル基を有しない化合物Fと、ヒドロキシル基を1つのみ有し、1つ以上の第三級アミノ基を有する化合物Gと、重合性エチレン不飽和を有し、結合形成しながらイソシアネート基と反応する更なる官能基を有する、オレフィン性不飽和モノマーH2と、少なくとも1つの重合性エチレン不飽和を有し、イソシアネート基と反応する更なる官能基を有しない、オレフィン性不飽和モノマーH1と、分子当たり少なくとも2つのイソシアネート基を有する多官能性イソシアネートIとを含み、該疎水性修飾ポリエステルAが、0.1mg/g以下の酸価を有し、該疎水性修飾ポリエステルAは、残存ヒドロキシル基及び残存酸基を有するポリエステルA’から、その酸基と、エポキシドまたはアジリジン官能性、及び少なくとも4個の炭素原子の直鎖または分岐アルキル残基を有する単官能性化合物A4との反応によって得られ、この反応において、該ポリエステルA’の残存する酸基のうちの少なくとも90%が、エステルまたはアミド基へと変換される、上記水性ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液。
【請求項2】
前記疎水性修飾ポリエステルAが、4〜20個の炭素原子の鎖長を伴う側鎖を有する、請求項1に記載の水性ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液。
【請求項3】
前記疎水性修飾ポリエステルAの前記側鎖が、前記ポリエステルに対して、エステルまたはアミド基によって結合する、請求項2に記載の水性ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液。
【請求項4】
請求項1に記載の水性ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液の調製プロセスであって、
− ステップa)において、残存ヒドロキシル基及び残存酸基を有するポリエステルA’が、脂肪族ジオールA1と脂肪族及び/または芳香族二酸A2との混合物を、任意選択でヒドロキシ酸A3の存在下で、ならびに更に任意選択で、3つ以上のヒドロキシル基を有するヒドロキシ化合物A11と、3つ以上の酸基を有する酸化合物A21と、2つ以上のヒドロキシル基もしくは2つ以上の酸基、または少なくとも2つのヒドロキシル基及び少なくとも2つの酸基を有するヒドロキシ酸A31とのうちの1つ以上の存在下で、重縮合反応において形成される水を除去しながら、最大250℃の高温においてエステル化する、ポリエステル化プロセスにおいて作製され、
− ステップb)において、疎水性修飾ポリエステルAが、残存ヒドロキシル基及び残存酸基を有するポリエステルA’の反応によって、該ポリエステルA’の酸基と、エポキシドまたはアジリジン官能性、及び少なくとも4個の炭素原子の直鎖または分岐アルキル残基を有する単官能性化合物A4との反応によって得られ、この反応において、残存する酸基のうちの少なくとも90%が、エステルまたはアミド基へと変換され、
− ステップc)において、疎水性修飾ポリエステルAが、
− ウレタン、ウレア、またはチオウレタンを形成しながらイソシアネートと反応する更なる基を有する酸Bと、
− 任意選択で、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリアミド、ポリジエン、及びポリエンであり得、分子当たり少なくとも2つのヒドロキシル基を有する、ヒドロキシ官能性オリゴマー性またはポリマー性化合物Cと、
− 任意選択で、分子当たり少なくとも2つのヒドロキシル基を有する、モノマー性ヒドロキシ化合物Dと混合され、
C及びDのいずれも混合物に添加されないか、またはC及びDのうち片方もしくは両方が混合物に添加され、
− ステップd)において、得られた混合物を撹拌しながら少なくとも60℃に加熱して均質な溶液を形成し、次いでステップd)において、準化学量論的な量の前記多官能性イソシアネートIを添加し、反応温度を60℃〜150℃の範囲に保ってプレポリマーを形成し、また未反応のイソシアネート基が反応混合物中にそれ以上存在しないように、添加された多官能性イソシアネートIの量の中のイソシアネート基の物質量が、この反応において存在する、前記疎水性修飾ポリエステルAと、前記酸Bと、前記ヒドロキシ官能性オリゴマー性またはポリマー性化合物Cと、前記モノマー性ヒドロキシ化合物Dイソシアネート反応性ヒドロキシル基の物質量の合計よりも少なく、
− ステップe)において、このプレポリマーに、1つ以上のビニル基または重合性オレフィン性不飽和基以外の更なる官能基を有しない、少なくとも1つのオレフィン性不飽和モノマーH1と、少なくとも1つのヒドロキシル基及びビニル基または重合性オレフィン性不飽和基を有する、少なくとも1つのオレフィン性不飽和モノマーH2とを含む溶液を添加し、
− 任意選択で、抗酸化剤またはラジカル捕捉剤を添加し、
− 任意選択で、この反応において不活性である溶媒Sを添加し、
該溶液及び該プレポリマーを均質化し、
− ステップf)において、この均質な混合物に、イソシアネート基の物質量n(NCO)の、反応混合物中に存在するイソシアネート反応性基であるヒドロキシル基の物質量の合計n(OH,Σ)に対する比、n(NCO)/n(OH,Σ)が1.02mol/mol以上となるように、化学量論的に過剰な更なる多官能性イソシアネートIを添加し、
− ステップg)において、これに、化合物G、水、任意選択で化合物E、任意選択で化合物Fを含む混合物を添加し、
結果として得られる混合物をよく均質化し、
− ステップh)において、ラジカル開始剤の水溶液を添加し、
− ステップi)において、反応混合物を重合して分散液を獲得し、
この分散液を最終的に室温まで冷まし、濾過する、上記プロセス。
【請求項5】
ステップa)において、脂肪族ジオールA1と脂肪族及び/または芳香族二酸A2との混合物が、重縮合反応において形成される水を除去しながら、最大250℃の高温においてエステル化され、ステップb)において、第1のステップにおいて形成される前記ポリエステルA’が、モノエポキシド化合物及びモノアジリジン化合物からなる群から選択される化合物A4と共に150℃〜220℃の温度で処理され、それにより前記ポリエステルA’の酸基が、エステルまたはアミド基を付加及び形成しながら、かつオキシランまたはアジリジン環の開環によってヒドロキシル基またはアミノ基を付加及び形成しながら消費される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ヒドロキシ官能性モノマーH2が、2つのヒドロキシル基を有し、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する多価アルコールと、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの同族体からなる群から選択されるオレフィン性不飽和カルボン酸との部分エステルである、請求項4または5に記載のプロセス。
【請求項7】
化合物E及び/または化合物Fが使用される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項8】
化合物Eが使用され、これらが、モノヒドロキシモノアミンである2−アミノエタノール、2−メチルアミノエタノール、及び3−アミノプロパノール、ジヒドロキシモノアミンである2−アミノ−1,3−プロパンジオール、ジエタノールアミン、及び1,1’−イミノジ−2−プロパノールからなる群から選択される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
化合物C及び/または化合物Dが使用される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項10】
ヒドロペルオキシドがラジカル開始剤として使用され、還元剤と組み合わされる、請求項4に記載のプロセス。
【請求項11】
コーティング組成物の調製用に、請求項1〜3のいずれかに記載の、または請求項4〜10のいずれかによって調製される、水性ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液を使用する方法であって、請求項1〜3のいずれかに記載の、または請求項4〜10のいずれかによって調製される、水性ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液を提供するステップと、それにアミノプラスト架橋剤を添加するステップと、結果として得られる混合物を均質化するステップとを含む、上記方法。
【請求項12】
コーティング組成物の調製用に、請求項1〜3のいずれかに記載の、または請求項4〜10のいずれかによって調製される、水性ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液を使用する方法であって、請求項1〜3のいずれかに記載の、または請求項4〜10のいずれかによって調製される、水性ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液を提供するステップと、それにアミノプラスト架橋剤を添加するステップと、結果として得られる混合物を均質化するステップと、基材に該コーティング組成物を適用するステップと、コーティングされた該基材を50℃〜180℃の温度に加熱することによって、該コーティング組成物を架橋してコーティングを形成するステップとを含む、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーラジカルによって開始される、エチレン性不飽和モノマーと酸基及びヒドロキシル基を含有するポリウレタンプレポリマーとの重合によって調製される水性ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液に関し、それらの調製方法に関し、また具体的には多層コーティングにおけるコーティング結合剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン性不飽和モノマーとポリウレタンマクロモノマーとのラジカル開始共重合によって作製されるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッドの分散液については、とりわけEP0522420A2において公知である。これらの分散液は様々な用途において使用されており、車両の塗装に使用される多層コーティングにおける下地塗装の調製が挙げられる。そのような多層塗布においては、コーティング層の重要な特性はそれらの塗装間の接着力であり、この場合では、プライマー表面層と下地塗装との間、及び下地塗装層と最上部のコーティング層である仕上塗装との間の接着力である。下地塗装にとって重要な別の特性はその耐水性及び耐湿性であり、これは絶え間ない改善を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の基礎となる実験において、多官能性イソシアネートと、疎水性修飾ポリエステルから作製されるポリウレタンに基づく、酸基及びヒドロキシル基を含有するポリウレタンプレポリマーとの存在下における、フリーラジカルによって開始される、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーの混合物の重合によって作製される水性ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液が、改善された下地塗装コーティング組成物をもたらすことが発見された。
【課題を解決するための手段】
【0004】
それ故に、本発明は、ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッドUV及び水を含む、水性ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液に関するもので、この中ではポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッドUVが分散されている。水分散されるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッドの構成要素は、
− 疎水性修飾ヒドロキシ官能性ポリエステルAと、
− ウレタン、ウレア、またはチオウレタンを形成しながらイソシアネートと反応する更なる基を有する酸Bと、
− 任意選択で、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリアミド、ポリジエン、及びポリエンであり得、分子当たり少なくとも2つのヒドロキシル基を有する、ヒドロキシ官能性オリゴマー性またはポリマー性化合物Cと、
− 任意選択で、分子当たり少なくとも2つのヒドロキシル基を有する、モノマー性ヒドロキシ化合物Dと、
− 任意選択で、分子当たり少なくとも1つの第一級または第二級アミノ基及び少なくとも1つのヒドロキシル基を有する化合物Eと、
− 任意選択で、分子当たり2つ以上の第一級または第二級アミノ基を有し、ヒドロキシル基を有しない化合物Fと、
− ヒドロキシル基を1つのみ有し、1つ以上の第三級アミノ基を有する化合物Gと、
− 重合性エチレン不飽和を有し、結合形成しながらイソシアネート基と反応する更なる官能基を有する、モノマーH2と、少なくとも1つの重合性エチレン不飽和を有し、イソシアネート基と反応する更なる官能基を有しない、オレフィン性不飽和モノマーH1とを含む、オレフィン性不飽和モノマーHと、
− 分子当たり少なくとも2つのイソシアネート基を有する多官能性イソシアネートIとを含む。
【0005】
疎水性修飾ポリエステルAは、好ましくは4〜20個の炭素原子の鎖長を伴う側鎖を有し、好ましくは残存ヒドロキシル基及び残存酸基を有するポリエステルA’の反応によって、酸基と、エポキシドまたはアジリジン官能性、及び少なくとも4個の炭素原子の直鎖または分岐アルキル残基を有する単官能性化合物A4との反応によって得られ、この反応において、残存する酸基のうちの少なくとも90%が、エステルまたはアミド基へと変換され、これらの基が側鎖をポリエステル主鎖と結合させる。
【0006】
そのような疎水性修飾ポリエステルAを構成要素として有するポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液が、改善された層間の接着力、ならびに増加された耐水性及び耐湿性を伴うコーティングフィルムをもたらすことが発見された。
【発明を実施するための形態】
【0007】
疎水性修飾ポリエステルAは、好ましくは、脂肪族ジオールA1と脂肪族及び/または芳香族二酸A2とに基づくか、分子当たり1つのヒドロキシル基と1つの酸基とを有するモノヒドロキシ一酸A3に基づくポリエステルA’から、またはこれらの出発材料の混合物から作製される。少量、例えばジヒドロキシ化合物の物質量の最大10%、または二酸の物質量の最大10%、またはモノヒドロキシ一酸の物質量の最大10%等は、同種のより高い官能性の化合物、すなわちトリオールA11、三酸A21、または2つ以上の官能性ヒドロキシル基または酸基を有するヒドロキシ酸A31で置き換えることができる。ポリエステルAの合成の第1のステップにおいて、ヒドロキシ官能性及び酸官能性化合物A1、A2、A3、ならびに任意選択でA11、A21、及びA31の混合物は、最大250℃の高温において、重縮合反応において形成される水を除去しながら、かつ任意選択でエステル化触媒の存在下でエステル化される。化学量論は、好ましくは、結果として得られるポリエステルA’のヒドロキシル価が少なくとも20mg/gかつ最大100mg/gであるように選択される。好ましくは5mg/g以下の低い酸価が得られる。この反応において形成されたポリエステルA’は、次いで、ポリエステルA’の酸基と、エステルまたはアミド基を付加及び形成しながら、かつオキシランまたはアジリジン環の開環によってヒドロキシル基またはアミノ基を付加及び形成しながら反応する、モノエポキシド化合物またはモノアジリジン化合物であり得る化合物A4と共に好ましくは150℃〜220℃の温度で処理される。ポリエステルA’と化合物A4との反応によって形成されるポリエステルAは、好ましくは0.1mg/g以下の残存酸価を有する。それらのヒドロキシル価は、好ましくは少なくとも22mg/gであり、かつまた好ましくは105mg/g以下である。
【0008】
酸価(acid value)または酸価(acid number)wAcは、DIN EN ISO2114(DIN 53 402)に従って、試験下の試料を中和するのに必要とされる水酸化カリウムの質量mKOHと、この試料の質量m、または溶液もしくは分散液の場合は試料中の固体の質量との比として定義され、その慣用単位は「mg/g」である。この値は、実施例においては、この基準に従って決定される。
【0009】
ヒドロキシル価(hydroxyl value)またはヒドロキシル価(hydroxyl number)wOHは、DIN EN ISO4629(DIN 53 240)に従って、試料と同数のヒドロキシル基を有する水酸化カリウムの質量mKOHと、その試料の質量m(溶液もしくは分散液の場合は試料中の固体の質量)との比として定義され、その慣用単位は「mg/g」である。この値は、実施例においては、この基準に従って決定される。
【0010】
好ましい化合物A1は、好ましくは2〜12個の炭素原子を有する、直鎖、分岐、及び環状脂肪族ジヒドロキシ化合物である。1,2−エタンジオール、1,2−及び1,3−プロパンジオール、1,2−及び1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,4−ビス−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、ならびに6〜25個の炭素原子を伴うα−、ω−ジヒドロキシアルカン、特に1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,21−ヘンエイコサンジオール、及び1,25−ペンタコサンジオールである、いわゆる二官能性脂肪アルコール、ならびにまた1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールのイソソルビド、イソマンニド、イソイジド等の炭水化物系エーテルアルコールが好ましい。これらの中でもより鎖長の長いアルコールは、それを用いて調製されるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッドから作製されるコーティング層の、増加された疎水性及びより高度な靭性にも寄与し得る。
【0011】
好ましい化合物A2は、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、オクタン二酸等の3〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、ならびにまた最大40個の炭素原子を有する二量体脂肪酸、ならびにまたイソフタル酸、テレフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸である。
【0012】
好ましい化合物A3は、ヒドロキシ安息香酸、乳酸、γ−ヒドロキシ酪酸、δ−ヒドロキシ吉草酸、及びε−ヒドロキシカプロン酸である。
【0013】
好ましい化合物A11は、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、エリスリトール、トレイトール、及びマンニトールである。
【0014】
好ましい化合物A21は、トリメリト酸(trimellithic acid)、トリメシン酸、カルバリル酸、及びアコニット酸である。
【0015】
好ましい化合物A31は、クエン酸、酒石酸、α−、β−、及びγ−レソルシル酸(3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、及び2,6−ジヒドロキシ安息香酸)、ならびにゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)である。
【0016】
好ましい化合物A4は、グリシドール(2,3−エポキシ−1−プロパノール)、ならびにそのエーテル及びエステル、例えば酢酸グリシジル、プロピオン酸グリシジル、酪酸グリシジル、ピバリン酸グリシジル、2−エチルヘキサン酸グリシジル、2,2−ジメチルオクタン酸グリシジル、グリシドールと異性体のα−分岐デカン酸の混合物とのエステルの商業的混合物、ラウリルグリシジルエーテル、及びステアリルグリシジルエーテル等である。他の有用なモノエポキシドは、1,2−エポキシヘキサン(epoxhexane)、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、及び1,2−エポキシオクタデカン等のエポキシ化アルカン、ならびにヘキシルアジリジン、ヘプチルアジリジン、ノニルアジリジン、及びドデシルアジリジン等の好ましくは6〜12個の炭素原子を有するアルキルアジリジンである。
【0017】
ウレタン、ウレア、またはチオウレタンを形成しながらイソシアネートと反応する更なる基を有する酸Bは、好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシル、アミノ、またはチオール基と、好ましくはカルボン酸基またはスルホン酸基である酸基とを有し、より好ましくは、2,2−(ビス−ヒドロキシメチル)酢酸、2,2−(ビスヒドロキシメチル)−プロピオン酸、2,2−(ビスヒドロキシメチル)酪酸、及び2−アミノエタンスルホン酸からなる群から選択される。
【0018】
任意選択で使用される、ヒドロキシ官能性オリゴマー性またはポリマー性化合物Cは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリアミド、ポリジエン、及びポリエンであり得、分子当たり少なくとも2つのヒドロキシル基を有し、以下の式のポリヒドロキシポリエーテルを含み、
[化1]
H−[−O−(CHR)−]OH
式中、Rは水素または任意選択で様々な置換基を伴う低級アルキルラジカルであり、nは2〜6の数であり、mは10〜120の数である。
【0019】
例としては、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール、及びポリ(オキシプロピレン)グリコールである。好ましいポリヒドロキシポリエーテルは、400g/mol〜5000g/molの範囲のモル質量を有するポリ(オキシプロピレン)グリコールである。
【0020】
ポリヒドロキシポリエステルは、有機ポリカルボン酸またはそれらの無水物と有機ポリオールとのエステル化によって調製される。ポリカルボン酸及びポリオールは、脂肪族または芳香族ポリカルボン酸及びポリオールであり得る。
【0021】
この調製のために使用されるポリオールは、A1において言及されたものを含み、また、ポリヒドロキシポリエステル、例えばトリメチロールプロパン等のトリスヒドロキシアルキルアルカン、及び例えばペンタエリスリトール等のテトラキスヒドロキシアルキルアルカンにおいて使用されるポリオールの質量に基づいて、10%以下の質量分率で含む。
【0022】
ポリエステルの酸成分は、主に、分子中に2〜18個の炭素原子を有する低モル質量のポリカルボン酸またはそれらの無水物からなる。好適な酸は、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタル酸、ヘキサクロロヘプタンジカルボン酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、例えばn−オクテニルコハク酸、ならびにn−及びイソ−ドデセニルコハク酸、テトラクロロフタル酸、トリメリト酸(trimellithic acid)、ならびにピロメリト酸(pyromellithic acid)である。これらの酸の代わりに、存在する場合はそれらの無水物を使用することもできる。二量体及び三量体脂肪酸を、ポリカルボン酸として採用することもできる。
【0023】
ポリヒドロキシポリエーテル及びポリヒドロキシポリエステルという用語はまた、カルボキシル基、ホスホン酸基、またはスルホン酸基を有するモノマーを含有する、この種類の生成物を意味するものとして理解されるべきである。
【0024】
ラクトンに由来するポリヒドロキシポリエステルが更に本発明において使用できる。
これらの生成物は、例えば、ラクトンとポリオールとの反応によって得られる。そのような生成物については、米国特許第3169945号に記載されている。
【0025】
この反応によって得られるポリラクトンポリオールは、末端のヒドロキシル基の存在と、ラクトンに由来する、反復するポリエステル内容物とを特徴とする。
【0026】
出発材料として使用されるラクトンは、任意の所望のラクトンまたは複数のラクトンの任意の所望の組み合わせであってもよく、このラクトンは、環内に少なくとも4個の炭素原子、例えば5〜8個の炭素原子を含有すべきであり、2個の水素原子が、環の酸素基に結合する炭素原子に対して直接結合しているべきである。
【0027】
好ましいラクトンはカプロラクトンである。最も好ましいラクトンは非置換のε−カプロラクトンである。このラクトンは、大量に利用可能であり、また優れた特性を有するコーティングを製造するため、特に好ましい。様々な他のラクトンを個別に、または組み合わせて更に使用することができる。
【0028】
ラクトンとの反応にとって好適な脂肪族ポリオールの例は、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールである。
【0029】
可能な出発化合物はさらに、ポリカーボネートポリオール及びポリカーボネートジオールである。これらのOH官能性ポリカーボネートは、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、またはペンタエリスリトール等のポリオールと、ジメチル、ジエチル、もしくはジフェニルカーボネート等のジカーボネート、またはホスゲンとの反応によって調製することができる。そのようなポリオールの混合物も同様に採用することができる。ポリヒドロキシポリエーテル、ポリヒドロキシポリエステル、及びポリヒドロキシポリカーボネートの混合物もまた同様に可能である。
【0030】
更なるオリゴマー性またはポリマー性ヒドロキシ官能性化合物は、ポリアミド、ポリジエン、及びポリエンであり、ここではオリゴマーまたはポリマー鎖がポリアミド、ポリエン、またはポリジエンであり、分子当たり少なくとも2つの、好ましくは末端の、ヒドロキシル基が存在する。特に好ましいのは、ポリブタジエンまたは水素化ポリブタジエンに基づくジヒドロキシ化合物である。これらの化合物は、これらの構成要素を含むポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッドから作製されるコーティング層の疎水性及び靭性にも寄与する。
【0031】
任意選択で使用される、分子当たり少なくとも2つのヒドロキシル基を有するモノマー性ヒドロキシ化合物Dは、脂肪族ジオールであり、これは直鎖、分岐、または環状であってもよく、2〜40個の炭素原子を有し得る。好ましい化合物Dは、1,2−エタンジオール、1,2−及び1,3−プロパンジオール、1,2−及び1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,4−ビス−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、ならびに6〜25個の炭素原子を伴うα−、ω−ジヒドロキシアルカン、特に1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,21−ヘンエイコサンジオール、及び1,25−ペンタコサンジオールである、いわゆる二官能性脂肪アルコール、ならびにまたイソソルビド、イソマンニド、及びイソイジド等の炭水化物系エーテルアルコールである。これらの中でもより鎖長の長いアルコールは、それを用いて調製されるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッドから作製されるコーティング層の、増加された疎水性及びより高度な靭性にも寄与し得る。
【0032】
化合物C及びDの一方または両方を使用することが可能である。
【0033】
任意選択で使用される化合物Eは、分子当たり1つの第一級または第二級アミノ基及び少なくとも1つのヒドロキシル基を有する、例えば2−アミノエタノールであり、好ましくは第二級アミノ基及び2つのヒドロキシル基を有し得る。好ましい化合物は、モノヒドロキシモノアミン、2−アミノエタノール、2−メチルアミノエタノール、及び3−アミノプロパノール、ジヒドロキシモノアミン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、ジエタノールアミン、及び1,1’−イミノジ−2−プロパノール(ジイソプロパノールアミン)からなる群から選択される。これらの化合物は任意選択で使用され、イソシアネートと反応して好ましくはウレアを形成し、これらは、形成されるポリマーに追加的なヒドロキシル基を導入し得る。
【0034】
分子当たり2つ以上のアミノ基を有し、ヒドロキシル基を有しない化合物Fは、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、及び2−メチル−1,5−ジアミノペンタン等の2〜10個の炭素原子と少なくとも2つの第一級アミノ基とを有する脂肪族直鎖または分岐ジアミンである。これらの化合物は任意選択で使用され、合成中に形成されるイソシアネート官能性化合物と反応することによって、ウレア基の形成の下で鎖延長をもたらす。
【0035】
化合物E及びFのうち少なくとも1つを使用することが好ましい。
【0036】
1つ以下のヒドロキシル基と、少なくとも1つの第三級アミノ基とを有する化合物Gは、好ましくは脂肪族の直鎖、分岐、または環状化合物であり、4〜12個の炭素原子を有し、好ましい化合物は、N−N−ジメチルアミノエタノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、1−ジメチルアミノ−3−プロパノール、及びまたN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンである。これらの化合物は中和剤として使用される。
【0037】
オレフィン性不飽和化合物Hは、ラジカル重合可能であるオレフィン性不飽和を有するヒドロキシ官能性モノマーH2であるモノマーH2、またラジカル共重合可能であり、それらの分子内にイソシアネート基と反応し得る官能基を有しない、オレフィン性不飽和モノマーH1を含む。モノマーH2は、好ましくは少なくとも1つのヒドロキシル基、より好ましくは1つまたは2つのヒドロキシル基、最も好ましくは2つのヒドロキシル基を有し、好ましくは、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する多価アルコールと、アクリル酸、メタクリル酸、ならびにビニル酢酸、クロトン酸、及びイソクロトン酸等のそれらの同族体からなる群から選択されるオレフィン性不飽和カルボン酸との部分エステルである。好ましいモノマーH2は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル−(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレートであり、ここで「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートまたはメタクリレート」を表す。好ましいモノマーH1は、(メタ)アクリル酸と、アルキル基に1〜12個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖、分岐、または環状モノアルコールとのエステル、特にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートであり、また、スチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等の共重合可能なビニルモノマーである。ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートまたはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の、2つ以上のオレフィン性不飽和基を有するモノマーで、一不飽和モノマーの質量の最大10%を置き換えることも可能である。
【0038】
分子当たり少なくとも2つのイソシアネート基を有する多官能性イソシアネートIは、芳香族もしくは脂肪族、または混合性の脂肪族−芳香族イソシアネートであり、好ましくは、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、プロピレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、2,3−ジメチルエチレンジイソシアネート、1−メチルトリメチレンジイソシアネート、シクロペンチレン1,3−ジイソシアネート、シクロへキシレン1,4−ジイソシアネート、シクロへキシレン1,2−ジイソシアネート、フェニレン1,3−ジイソシアネート、フェニレン1,4−ジイソシアネート、トルイレン2,4−ジイソシアネート、トルイレン2,6−ジイソシアネート、ビフェニレン4,4’−ジイソシアネート、ビス−(4−イソシアナトフェニル)メタン(MDI)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート、ナフチレン1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナトメチル−5−イソシアナト−1,3,3−トリ−メチルシクロヘキサン(IPDI)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12−MDI)、4,4’−ジイソシアナト−ジフェニルエーテル、2,3−ビス−(8−イソシアナトオクチル)−4−オクチル−5−ヘキシルシクロヘキセン、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、上記のジイソシアネートのウレトジオン、上記のジイソシアネートのイソシアヌレート、及び上記のジイソシアネートのアロファネートからなる群から選択される。そのようなジイソシアネートまたはポリイソシアネートの混合物も同様に採用することができる。
【0039】
上に列挙された全ての化合物について、言及された化合物のうちの2つ以上の混合物を使用することもできる。
【0040】
ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッドUVのためのこれらのエダクトまたは出発材料の量は、以下の条件を好ましくは満たすように選択される。
a)質量分率w(A)=ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッドUV中の疎水性修飾ポリエステルAのm(A)/m(UV)であり、式中、m(A)はポリエステルAの質量であり、m(UV)はポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッドUVの質量であり、これが20%〜60%(20g/[100g]〜60g/[100g])、特に好ましくは25%〜55%である、
b)ポリエステルA中の疎水性修飾因子A4の物質量の、ポリエステルA’中の残存酸基の物質量に対する比が、1.1mol/mol〜1.7mol/molであり、特に好ましくは1.2mol/mol〜1.6mol/molであり、1.25mol/mol〜1.5mol/molが特に好ましい、
c)質量分率w(H)=ポリウレタン−ビニルハイブリッドポリマーUV中のオレフィン性不飽和モノマーHのm(H)/m(UV)であり、これが10%〜60%、特に好ましくは25%〜50%である、
d)上に定義された質量分率w(H)が35%以上である場合、ビニルポリマー部のガラス転移温度Tが20℃以下であり、特に好ましくは0℃以下であり、この条件は低い膨れ度合いを達成するのに特に好ましい、
e)質量分率w(H2)=オレフィン性不飽和モノマーH中のヒドロキシ官能性モノマーH2のm(H2)/[m(H1)+m(H2)]であり、これが5%〜35%、特に好ましくは7%〜30%である。
【0041】
特に好ましい実施形態においては、これらの条件のうちの少なくとも2つ、すなわちa)及びb);a)及びc);a)及びd);a)及びe);b)及びc);b)及びd);b)及びe);c)及びd);c)及びe);ならびにd)及びe)が満たされる。より好ましくは、これらの条件のうちの少なくとも3つ、すなわちa)、b)、及びc);a)、b)、及びd);a)、b)、及びe);a)、c)、及びd)、a)、c)、及びe);a)、d)、及びe);b)、c)、及びd)、b)、c)、及びe);b)、d)、及びe);ならびにc)、d)、及びe)が満たされる。更により好ましくは、これらの条件のうちの4つ、すなわちa)、b)、c)、及びd);a)、b)、c)、及びe);ならびにb)、c)、d)、及びe)が満たされる。最も好ましくは、全ての条件a)、b)、c)、d)、及びe)が満たされる。
【0042】
付加重合体UV中のエダクトの質量分率について言及する場合、ヒドロキシ官能性エダクトは常に、−OH末端基を有するそのヒドロキシル形態を指し、アミノ官能性エダクトは常に、>NHまたは−NH末端基等を有するそのアミン形態を指す。同様に、イソシアネートは、−N=C=O末端基を有するそのイソシアネート官能形態を指し、オレフィン性不飽和モノマーは、そのオレフィン性不飽和形態を指す。
【0043】
ポリエステルA’は、ポリエステル化プロセスにおいて作製され、ここでは、脂肪族ジオールA1と脂肪族及び/または芳香族二酸A2との混合物が、任意選択でヒドロキシ酸A3の存在下で、そして更に任意選択で、3つ以上のヒドロキシル基を有するヒドロキシ化合物A11と、3つ以上の酸基、好ましくはカルボキシル基を有する酸化合物A21と、2つ以上のヒドロキシル基もしくは2つ以上の酸基、または少なくとも2つのヒドロキシル基及び少なくとも2つの酸基を有するヒドロキシ酸A31とのうちの1つ以上の存在下で、重縮合反応において形成される水を除去しながら、最大250℃の高温においてエステル化される。
【0044】
第2のステップにおいては、第1のステップにおいて形成された、残存ヒドロキシル基及び残存酸基を有するポリエステルA’は、モノエポキシド化合物及びモノアジリジン化合物からなる群から選択される単官能性化合物A4と共に好ましくは150℃〜220℃の温度で処理され、それによりポリエステルA’の酸基の好ましくは少なくとも90%が、エステルまたはアミド基を付加及び形成しながら、かつオキシランまたはアジリジン環の開環によってヒドロキシル基またはアミノ基を付加及び形成しながら消費される。0.1mg/g以下の酸価を有する疎水性修飾ポリエステルAが得られる。
【0045】
その後、疎水性修飾ポリエステルAは、ウレタン、ウレア、またはチオウレタンを形成しながらイソシアネートと反応する更なる基を有する酸Bと、任意選択で、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリアミド、ポリジエン、及びポリエンであり得、分子当たり少なくとも2つのヒドロキシル基を有する、ヒドロキシ官能性オリゴマー性またはポリマー性化合物Cと、更に任意選択で、分子当たり少なくとも2つのヒドロキシル基を有する、モノマー性ヒドロキシ化合物Dと混合される。化合物Cの使用、ならびに化合物Dの使用は任意選択であり、Cのみ、Dのみ、C及びDの両方を使用すること、またはどちらも使用しないことが可能である。
【0046】
次いで、A、B、C(使用される場合)、及びD(使用される場合)の混合物を、撹拌しながら好ましくは少なくとも60℃に加熱して均質な溶液を形成し、その後、ロットのサイズに応じて好ましくは20分から120分の時間にわたって、反応温度を60℃〜150℃の範囲に保ちながら、準化学量論的な量の多官能性イソシアネートIを添加することで反応させる。ヒドロキシル官能基を有する、「プレポリマー」とも呼ばれる中間体が形成される。「準化学量論的」とは、添加された多官能性イソシアネートIの量の中のイソシアネート基の物質量が、この反応において存在する化合物A、B、C、及びDのイソシアネート反応性基、この場合ではヒドロキシル基の物質量の合計よりも少ないことを意味する。反応のこの段階の最後において、未反応のイソシアネート基は、反応混合物中にそれ以上存在しない。
【0047】
次いで、このプレポリマーに、1つ以上のビニル基または重合性オレフィン性不飽和基以外の更なる官能基を有しない、少なくとも1つのオレフィン性不飽和モノマーH1と、少なくとも1つのヒドロキシル基及びビニル基または重合性オレフィン性不飽和基を有する、少なくとも1つのオレフィン性不飽和モノマーH2とを含む溶液を添加し、任意選択で、好ましくは立体障害フェノールである抗酸化剤またはラジカル捕捉剤、例えば2位及び6位に嵩高い置換基、好ましくはtert−ブチル基を、また4位にアルキル置換基を有するフェノール等を添加し、更に任意選択で、この反応において不活性である溶媒Sも添加し、溶液及びプレポリマーを均質化する。この均質な混合物に、今回は化学量論的に過剰な更なる多官能性イソシアネートIを添加し、それにより、イソシアネート基の物質量n(NCO)が、イソシアネート反応性基、この場合においてはヒドロキシル基の物質量の合計n(OH,Σ)を少なくとも2%上回り、換言すれば、n(NCO)/n(OH,Σ)が1.02mol/mol以上となる。次いで、化合物E(使用される場合)、F(使用される場合)、及びG、ならびに水を含む混合物が添加され、結果として得られる混合物を好ましくは30〜90分間よく均質化し、その後ラジカル開始剤、好ましくはアルキルヒドロペルオキシドの水溶液を添加し、再度均質化し、その後好ましくは、還元剤、好ましくはアスコルビン酸の水溶液を添加する。重合反応は、好ましくは1時間〜4時間継続され、この後、結果として得られるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッドUVの分散液は、室温まで冷まされ、濾過される。
【0048】
ポリウレタン部の化学量論を調整することによって、ならびにまたラジカル開始剤及び還元剤の量を選択することによって、ならびにまたポリウレタン部(化合物A、B、C、D、E、F、及びIに由来する)の質量m(U)の、化合物Hに由来するビニルポリマーの質量m(H)に対する比を変動させることによって、結果として得られるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッドの重合度を変動させることが可能である。
【0049】
本発明によるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッドUVの分散液は多様な使用法にとって好適であり、例えばコーティングシステムの調製にとって、とりわけ木材のコーティングにとって、水で希釈可能な接着剤用の結合剤として、または印刷用インクのための樹脂として好適である。
【0050】
これらの分散液は、他のプラスチックの水性分散液及び溶液、例えばアクリル系及び/またはメタクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリウレア樹脂、ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリクロロプレン、及びポリアクリロニトリル、ならびにエチレン/ブタジエン/スチレンコポリマーに基づく熱可塑性物質と組み合わせてもよく、一般にそれらと適合性である。本発明の分散液はまた、増粘作用を有し、カルボキシル基を含有するポリアクリレートまたはポリウレタン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ならびにベントナイト、ナトリウム−マグネシウムシリケート、及びナトリウム−マグネシウム−フッ素−リチウムシリケート等の無機チキソトロープ剤に基づく物質と組み合わせてもよい。
【0051】
本発明によるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液は、ほとんどの多様な基材、例えばセラミック、木材、ガラス、コンクリート、及び好ましくはポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンポリマー等のプラスチック、ならびに好ましくは鉄、銅、アルミニウム、鋼鉄、真鍮、青銅、錫、亜鉛、チタン、マグネシウム等の金属に対して適用することができる。本発明の分散液は、接着を促進するプライマーまたは中間層を伴わずに、様々な基材に対して接着する。
【0052】
本発明によるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液は、例えば、ほとんどの多様な使用分野のための腐食防止コーティング及び/または中間コーティングの製造にとって、具体的には自動車及びプラスチックの塗装分野の塗料のマルチコート処理におけるメタリック塗料及び固体ベース塗料の製造にとって、またプラスチックの塗装分野のプライマー塗料の製造にとって好適である。
【0053】
本発明によるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液に基づくベース塗料はフラッシュオフタイムが短いため、ベース塗料の着色塗装は、焼付けステップを伴わずにクリアワニスを用いてワニスを重ね塗りすることができ(ウェットインウェットプロセス)、コーティングはその後、一緒に焼付けるか、強制乾燥に供することができる。本発明によるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液で調製されたベース塗料は、焼付けまたは乾燥温度から概ね独立して、同じ品質の塗膜を提供し、それにより、これらの分散液は、自動車両用の補修塗料、ならびに自動車両の連続塗装用の焼付け塗料のどちらとしても採用することができる。どちらの場合においても、元のコーティングに対する良好な接着性と、凝縮水に対する良好な耐性を有する塗膜がもたらされる。
【0054】
例えばウレア、環状ウレア、メラミン、もしくはベンゾグアナミン樹脂等の水溶性または水乳化性アミノプラスト架橋剤、末端イソシアネート基を有するポリイソシアネートまたはプレポリマー、水溶性または水分散性ポリアジリジン及びブロック化ポリイソシアネート等の、塗料業界において通例の架橋剤を、本発明によるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液を用いて、水で希釈可能な塗料を配合する際に添加してもよい。水性コーティングシステムは、塗料技術において公知であり、通例の全ての無機または有機顔料及び色素、ならびに湿潤剤、抑泡剤、流れ調整剤、安定剤、触媒、充填剤、可塑剤、及び溶媒を含有し得る。コーティング組成物は、増粘剤、流れ調整剤、湿潤剤、光安定剤、及び顔料、特に金属フレーク顔料等の通常の添加剤を添加することによって、塗料へと仕上げられる。得られた塗料は、基材に適用され、塗料を架橋して基材上にコーティングフィルムを形成し、コーティングされた基材を好ましくは50℃〜180℃の温度に加熱することによって硬化される。
【0055】
本発明によるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液はまた、任意の所望の基材を糊着するために直接使用することもできる。特定の接着特性を達成するために、本発明によるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液は、他のプラスチックの分散液または溶液と混合されてもよい(上を参照)。例えば、末端イソシアネート基を有するポリイソシアネートもしくはプレポリマー、または水溶性もしくは水乳化性メラミンもしくはベンゾグアナミン樹脂等の架橋剤を更に添加して、熱及び剥離に対する耐性を向上させることができる。
【0056】
本発明によるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液に基づく接着剤は、可塑剤、溶媒、フィルム結合助剤、充填剤、ならびに合成及び天然樹脂等の、接着剤技術における通例の添加剤を含有してもよい。これらは特に、例えば内装の糊着等、自動車両業界における基材の糊着剤の製造、ならびに例えば靴底及び靴のシャフトの糊着等、製靴業における基材の糊着剤の製造にとって好適である。本発明によるポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液に基づく接着剤は、水性分散液及び溶液接着剤に使用される、接着剤技術の通例の方法で調製及び処理される。
【0057】
本発明は、後に続く実施例によって更に例証される。
【実施例】
【0058】
本明細書及び実施例において、以下の記号が使用される:
M モル質量、SI単位:g/mol
n 物質量、SI単位:mol
η 動粘度、SI単位:Pa・s、DIN EN ISO3219に従って、23℃及び100s−1の剪断速度において判定(別途明記されていない場合)
混合物M中の物質Bの質量分率であり、この混合物は溶液であってもよく、SI単位:kg/kg、またはcg/g=10g/kg=g/(100g)=%等のその任意の倍数であり、
=m/mと定義され、式中、mは物質Bの質量であり、mは混合物または溶液の質量であり、水性希釈された酸または塩基に使用される場合、この量は「強度」とも呼ばれる
不揮発物の質量分率、DIN EN ISO3251に従って、105℃で1時間乾燥された1gの試料において判定
OH ヒドロキシル価(hydroxyl value)またはヒドロキシル価(hydroxyl number)、試料Bと同じ物質量のヒドロキシル基、−OHを有する質量mKOHと、試料Bの質量mとの比、DIN EN ISO4629に従って判定、通常の単位は「mg/g」である
酸価(acid value)または酸価(acid number)、酸性水素基Hを有する試料Bを中和するのに必要とされる質量mKOHと、試料Bの質量mとの比、DIN EN ISO2114に従って判定、通常の単位は「mg/g」である
w(H) ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド樹脂中のモノマーH1及びH2に由来するポリマーの質量分率、w(H)=m(H)/[m(U)+m(H)]として計算され、式中、m(U)はポリウレタン部の質量である
pH 水素イオン、Hのmol/L単位のモル濃度数値の、10を底とする対数の負の値であり、pH=−lg[c(H)/(mol・L−1)]と定義され、DIN ISO976に従って、10%の固体の質量分率を有する水性希釈された試料において判定
ガラス転移温度、10K/分の加熱率を用いて動的走査熱量計で測定(これらの実施例においては、実施例において使用された比のモノマーH1及びH2のポリマーにおいて測定、ポリマーは、Tが重合度に最早依存しないように、十分に高い重合度を有する)
【0059】
ポリエステルA’の調製(比較例)
47gの1,6−ヘキサンジオール(M=118.18g/mol、n=0.398mol)、33.5gのアジピン酸(M=146.14g/mol、n=0.229mol)、及び22gのイソフタル酸(M=166.13g/mol、n=0.132mol)の混合物を装入し、220℃に加熱した。反応物質混合物中の官能基の物質量は、n(OH)=0.795mol、n(COOH)=0.458mol+0.265mol=0.723molであった。反応中に形成された水は、共沸点混合物生成剤として添加された8gのキシレンの補助により留去した。水の理論量(14g)及び試料において判定される酸価が3mg/g未満に到達した後、残存キシレンを留去し、ポリエステルを室温(23℃)に冷ました。
【0060】
ヒドロキシル価:45mg/g、酸価:2.8mg/g
【0061】
ポリエステルAの調製
89.4gのポリエステルA’を、1.4gのネオデカン酸のグリシジルエステル((登録商標)Cardura E 10P、Momentive Specialty Chemicals Inc.により販売)と、180℃〜200℃の温度で約1時間、試料において判定される酸価が0.1mg/g未満になるまで反応させた。
【0062】
ヒドロキシル価:45mg/g、酸価:0.08mg/g
【0063】
実施例1(比較例)
863gのポリエステルA’を、79gのジメチロールプロピオン酸(DMPA)と共に130℃まで加熱し、均質な溶液が形成されるまで混合物をこの温度に保持した。次いで、150gのテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)を30〜45分間の期間にわたって計量する一方で、遊離イソシアネート基が最早検出できなくなるまで、撹拌を130℃で継続した。
【0064】
70℃まで冷却した後、360gの2−エチルヘキシルアクリレート、36gのグリセロールモノメタクリレート、18gの1,4−ブチレングリコール、及び0.66gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)からなる溶液を迅速に添加し、混合物を均質化した。244gのTMXDIを15分間の期間にわたって添加し、現行の反応混合物中の遊離イソシアネート基の質量分率が1.2%になるまで、これらの成分を75℃で反応させた。遊離イソシアネート基のこの質量分率に到達した直後、49gのジエタノールアミンを添加し、結果として生じた温度に反応混合物を保持し、60分間撹拌した。38gのN,N−ジメチルエタノールアミンを添加した後、混合物を10分間均質化させた。次いで、激しく撹拌しながら、温度が75℃である3012gの水をこのプレポリマー溶液に添加した。混合物を75℃まで冷却した後、混合物を更に1時間撹拌した。溶質の質量分率が70%である、tert−ブチルヒドロペルオキシドの水溶液2.4gを添加し、結果として得られた混合物を75℃で5分間均質化した。次いで、25gの水と3.5gのアスコルビン酸との混合物を、30〜45分間の期間にわたって添加した。その後、更に2時間、温度を75℃〜80℃に保持した。室温(23℃)まで冷ました後、結果として得られた分散液を、25μmの細孔径を有するフィルタを通して濾過した。このようにして得られた分散液は以下の特性データを有した。
=36.4%、pH=7.9、η=69mPa・S、T=−56℃、w(H)=22%
【0065】
実施例2(比較例)
950gのポリエステルA’を、111gのジメチロールプロピオン酸(DMPA)と共に130℃まで加熱し、均質な溶液が得られるまで混合物を撹拌しながらこの温度に保持した。次いで、206gのテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)を30〜45分間の期間にわたって計量する一方で、遊離イソシアネート基が最早検出されなくなるまで、撹拌を130℃で継続した。70℃まで冷却した後、246gの2−エチルヘキシルアクリレート、610gのメチルメタクリレート、88gのグリセロールモノメタクリレート、2.47gの1,4−ブチレングリコール、及び2.3gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)からなる溶液を迅速に添加し、混合物を均質化した。次いで、301gのTMXDIを15分間の期間にわたって添加し、その後、現行の反応混合物中の遊離イソシアネート基の質量分率が0.98%になるまで、これらの成分を75℃で反応させた。遊離イソシアネート基のこの濃度に到達した直後、温度が70℃〜75℃である、25.8gの1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、56gのN,N−ジメチルエタノールアミン、及び4315gの水で構成される混合物を添加し、75℃で60分間激しく撹拌した。次いで、溶質の質量分率が70%である、tert−ブチルヒドロペルオキシドの水溶液5.5gを添加し、結果として得られた混合物を70℃〜75℃で5分間均質化した。均質化の後、130gの水と7.6gのアスコルビン酸との混合物を、30〜45分間の期間にわたって添加した。その後、更に2時間、温度を75℃〜80℃に保持した。室温(23℃)まで冷ました後、分散液を、25μmの細孔径を有するフィルタを通して濾過した。このようにして得られた分散液は以下の特性を有する。
不揮発物の質量分率w=36.1%、pH=7.7、η=230mPa・S、T=42℃、w(H)=37%
【0066】
実施例3
950gのポリエステルAを、98gのジメチロールプロピオン酸(DMPA)と共に130℃まで加熱し、均質な溶液が得られるまで混合物をこの温度に保持した。次いで、190gのテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)を30〜45分間の期間にわたって計量する一方で、遊離イソシアネート基が全く検出できなくなるまで、撹拌を130℃で継続した。70℃まで冷却した後、625gの2−エチルヘキシルアクリレート、368.6gのメチルメタクリレート、88gのグリセロールモノメタクリレート、及び2.3gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)からなる溶液を迅速に添加し、結果として得られた混合物を均質化した。次いで、124gのTMXDIと143gの5−イソシアナト−1−(イソシアナトメチル)−1,3,3−トリメチル−シクロヘキサン(IPDI)との混合物を15分間の期間にわたって添加し、現行の反応混合物中の遊離イソシアネート基の質量分率が0.88%になるまで、この混合物を75℃での反応に供した。遊離イソシアネート基のこの濃度に到達した直後、温度が70℃〜75℃である、23.8gの2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、58.6gのN,N−ジメチルエタノールアミン、及び4335gの水で構成される混合物を添加し、75℃で60分間激しく撹拌した。その後、溶質の質量分率が70%である、tert−ブチルヒドロペルオキシドの水溶液6.28gを添加し、結果として得られた混合物を70℃〜75℃で5分間均質化した。均質化の後、190gの水と8.7gのアスコルビン酸との混合物を、30〜45分間の期間にわたって添加した。その後、更に2時間、温度を75℃〜80℃に保持した。室温(23℃)まで冷ました後、分散液を、25μmの細孔径を有するフィルタを通して濾過した。このようにして得られた分散液は以下の特性を有する:w=35.8%、pH=8.4、η=310mPa・S、T=−10℃、w(H)=41%
【0067】
実施例4
950gのポリエステルAを、98gのジメチロールプロピオン酸(DMPA)と共に130℃まで加熱し、均質な溶液が得られるまで混合物をこの温度に保持した。次いで、190gのテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)を30〜45分間の期間にわたって計量する一方で、遊離イソシアネート基が全く検出されなくなるまで、撹拌を130℃で継続した。
【0068】
70℃まで冷却した後、709gの2−エチルヘキシルアクリレート、419gのメチルメタクリレート、24.8gの1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、88gのグリセロールモノメタクリレート、60gの1,4−ブタンジオール、及び2.3gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)からなる溶液を迅速に添加し、混合物を均質化した。469gのTMXDIを15分間の期間にわたって添加し、反応混合物中の遊離イソシアネート基の質量分率が1.04%になるまで、これらの成分を75℃で反応させた。遊離イソシアネート基のこの濃度に到達した直後、温度が70℃〜75℃である、16.4gの2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、29.3gのジエタノールアミン、58.5gのN,N−ジメチルエタノールアミン、及び5097gの水で構成される混合物を添加し、75℃で60分間激しく撹拌した。その後、溶質の質量分率が70%である、tert−ブチルヒドロペルオキシドの水溶液7.21gを添加し、結果として得られた混合物を70℃〜75℃で5分間均質化した。均質化の後、230gの水と10gのアスコルビン酸との混合物を、30〜45分間の期間にわたって添加した。その後、更に2時間、温度を75℃〜80℃に保持した。室温(23℃)まで冷ました後、分散液を、25μmの細孔径を有するフィルタを通して濾過した。このようにして得られた分散液は以下の特性を有した:w=35.8%(1時間、125℃、1g)、pH=8.4、η=310mPa・S、T=−10℃、w(H)=40%
【0069】
実施例5
950gのポリエステルAを、98gのジメチロールプロピオン酸(DMPA)と共に130℃まで加熱し、均質な溶液が形成されるまで混合物をこの温度に保持した。次いで、190gのテトラメチルキシリレンジイソキシアネート(tetramethylxylylene diisoxyanate)(TMXDI)を30〜45分間の期間にわたって計量する一方で、遊離イソシアネート基が最早検出できなくなるまで、撹拌を130℃で継続した。
【0070】
70℃まで冷却した後、182gの2−エチルヘキシルアクリレート、757gのメチルメタクリレート、21gの1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、88gのグリセロールモノメタクリレート、及び2.3gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)からなる溶液を迅速に添加し、混合物を均質化した。124gのTMXDIと143gのIPDIとの混合物を15分間の期間にわたって添加し、現行の反応混合物中の遊離イソシアネート基の質量分率が0.9%になるまで、これらの成分を75℃で反応させた。遊離イソシアネート基のこの質量分率に到達した直後、温度が70℃〜75℃である、12gの2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、20.9gのジエタノールアミン、58.5gのジメチルエタノールアミン、及び4320gの水で構成される混合物を添加し、75℃で1時間激しく撹拌した。その後、溶質の質量分率が70%である、tert−ブチルヒドロペルオキシドの水溶液6.1gを添加し、70℃〜75℃で5分間均質化した。均質化の後、190gの水と8.4gのアスコルビン酸との混合物を、30〜45分間の期間にわたって添加した。その後、更に2時間、温度を75℃〜80℃に保持した。室温(23℃)まで冷ました後、分散液を、25μmの細孔径を有するフィルタを通して濾過した。このようにして得られた分散液は以下の基本的形態を有する:w=35.6%、pH=7.9、η=120mPa・S、T=60℃、w(H)=40%
【0071】
実施例6
950gのポリエステルAを、98gのジメチロールプロピオン酸(DMPA)と共に130℃まで加熱し、均質な溶液が形成されるまで混合物をこの温度に保持した。次いで、190gのテトラメチルキシリレンジイソキシアネート(tetramethylxylylene diisoxyanate)(TMXDI)を30〜45分間の期間にわたって計量する一方で、遊離イソシアネート基が最早検出できなくなるまで、撹拌を130℃で継続した。
【0072】
70℃まで冷却した後、61.1gの2−エチルヘキシルアクリレート、254gのメチルメタクリレート、88gのグリセロールモノメタクリレート、及び2.3gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)からなる溶液を迅速に添加し、混合物を均質化した。280.5gのTMXDIを15分間の期間にわたって添加し、現行の反応混合物中の遊離イソシアネート基の質量分率が1.2%になるまで、これらの成分を75℃で反応させた。遊離イソシアネート基のこの質量分率に到達した直後、温度が70℃〜75℃である、23.5gの2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、58.5gのジメチルエタノールアミン、及び3288gの水で構成される混合物を添加し、75℃で1時間激しく撹拌した。その後、溶質の質量分率が70%である、tert−ブチルヒドロペルオキシドの水溶液2.34gを添加し、70℃〜75℃で5分間均質化した。均質化の後、100gの水と3.24gのアスコルビン酸との混合物を、30〜45分間の期間にわたって添加した。その後、更に2時間、温度を75℃〜80℃に保持した。室温(23℃)まで冷ました後、分散液を、25μmの細孔径を有するフィルタを通して濾過した。このようにして得られた分散液は以下の基本的形態を有する:w=35.2%、pH=8.1、η=230mPa・S、T=60℃、w(H)=20%
【0073】
自動車業界において車体に使用される、通常の多層コーティングでコーティングされた鋼板を用いて、適用試験を実行した。この試験のために、以下の塗料を調製した。
【0074】
実施例7 CED樹脂
数平均モル質量が380g/molである、ビスフェノールAに基づくエポキシ樹脂2572g、数平均モル質量が550g/molである、ポリカプロラクトンジオール440g、661gのビスフェノールA、及び1734gのメトキシプロパノールをレジンケトルに順次入れ、撹拌しながら43℃まで加熱した。混合物を更に30分間撹拌し、その後41℃まで冷却した。この温度で、221gのジエタノールアミン、及び次いで194gのジメチルアミノプロピルアミンを添加すると、冷却を行いながらも、温度が最大125℃まで上昇した。125℃で撹拌しながら反応を更に2時間継続させた後、質量分率40%までメトキシプロパノールで引き伸ばし、希釈した試料の動粘度は、23℃及び25s−1の剪断速度において測定したところ、765mPa・sであった。その後、反応マスを120℃に冷却した。
【0075】
実施例8 CED硬化剤
別個のステップにおいて、105gのジエタノールアミン及び102gの炭酸プロピレンを反応させて、120℃で3時間アダクトを形成した。
【0076】
687.5gのMDIを、水分を排除しながらレジンケトルに装入した。25℃で、445.5gのジエチレングリコールモノブチルエーテルを、穏やかに冷却しつつ、温度を最大40℃に保ちながらゆっくりと添加した。−N=C=O、モル質量42.02g/molとして計算したイソシアネート基の質量分率は9.9%であった。温度40℃で、第1のステップで作製したアダクト207gを、0.4gのジブチル錫ジラウレートと共に添加した。発熱反応に起因して、温度は80℃まで上昇し、冷却することでこの温度を上限として保持した。この温度において、撹拌しながら反応を3時間継続させた。次いで、5gのエタノール及び61.8gのメトキシプロパノールを80℃で添加し、更に1時間撹拌を継続した。その後、60gの水を添加し、温度を周囲温度(23℃)まで下げながら、混合物を均質化した。
【0077】
実施例9 CED樹脂乳濁液
実施例7の樹脂溶液5822gを反応容器に装入し、撹拌しながら120℃まで加熱した。この温度において、減圧下、1426gのメトキシプロパノールを留去した。次いで、残存する液体を95℃まで冷却し、107gの脱イオン水を添加して、それにより温度を80℃まで下げた。その後、実施例8の硬化剤2408gを添加し、混合物を80℃で1時間均質化した。
【0078】
別個のステップにおいて、溶質の質量分率が70%である298.3gのメタンスルホン酸水溶液に、107gの三酸化ビスマスを溶解させ、完全に溶解させた後に7913gの脱イオン水を添加することで希釈して、酸性触媒溶液を調製した。次いで、30分以内に、樹脂と硬化剤との均質化した混合物をこの触媒溶液に全体的に撹拌しながら添加し、それによって混合物は40℃の温度を呈した。この温度で混合物を更に2時間撹拌し、その後2058gの脱イオン水を添加することで、固体の質量分率が37%になるまで希釈した。
【0079】
実施例10 練肉樹脂
258gの2−エチルヘキシルアミンを、撹拌器、温度計、及び蒸留装置を備え付けられたレジンケトルに装入し、80℃まで加熱した。この温度において、5.26mol/kgというエポキシド基の特定の含有量を有する、ポリプロピレングリコール及びエピクロロヒドリンから作製したエポキシ樹脂380gを1時間かけて均等に添加したが、温度が120℃まで上昇した。120℃で、反応を更に1時間継続させた。次に、1175gの2−ブトキシエタノールを添加し、温度を70℃まで下げたところで、2.11mol/kgというエポキシド基の特定の含有量を有する、ビスフェノールA及びエピクロロヒドリンに基づくエポキシ樹脂1900gを添加した。混合物を120℃まで加熱し、90分間反応させた。このようにして得られた中間体は、ポリオキシアルキレン単位(−CH(CH)−CH−O−)の質量分率11%、及び4個以上の炭素原子を有するアルキル基の質量分率9%を有する。
【0080】
この中間体の温度を100℃にし、204gの3−(N,N−ジメチル)−アミノプロピルアミン−1を添加し、混合物を100℃で1時間反応させた。次いで、314gの2−ブトキシエタノールを、ホルムアルデヒドの質量分率が91%であるパラホルムアルデヒド66gと共に添加した。温度を140℃まで上昇させ、反応において形成された水36gを、メチルイソブチルケトンを担体として用いて共沸蒸留で留去した。水を分離したら、ケトンを減圧下における蒸留によって除去し、774gの2−ブトキシエタノールを添加することで、固体の質量分率が55%になるまで残余を希釈した。
【0081】
実施例11 顔料ペースト
以下の材料を示される順番で混合容器に添加した:207.9gの脱イオン水、16.9gの酢酸水溶液(100gの水性希釈溶液中30gの酢酸)、18.7gの2−ブトキシエタノール、268gの実施例10の練肉樹脂溶液、2−ブトキシエタノール中2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,6−ジオールの50%強度溶液10.2g((登録商標)Surfynol 104 BC、Air Products Nederland B.V.)、7.3gのカーボンブラック顔料((登録商標)Printex 201、Evonik Industries)、及び479.2gの二酸化チタン白色顔料((登録商標)Kronos RN 59、Kronos Titan GmbH)。混合物を溶解器内で15分間分散させ、その後ボールミル内で1時間練肉した
【0082】
実施例12 CEDコーティング組成物の調製
CEDコーティング組成物を、以下の製法に従って、実施例9の乳濁液、実施例11の顔料ペースト、及び水から調製した:
3392gのCED樹脂乳濁液(実施例9)
5982gの脱イオン水
626gの顔料ペースト(実施例11)
【0083】
これらの成分を、23℃で30分間、撹拌しながら、示される順番でブレンドし、均質化した。
【0084】
実施例13 プライマー/サーフェーサーコーティング組成物の調製
使用するプライマー−サーフェーサーコーティング組成物13bを、脱イオン水の添加によって固体の質量分率が42%に調整されている実施例13acの縮合物と、実施例13adの水性分散液と、高度にメトキシメチル化されたメラミン架橋剤とからなるブレンド13bbの添加によって仕上げられた灰色顔料ペースト13baから調製した。
【0085】
実施例13aa−酸官能性ポリウレタン
第1の反応において、946gのジエチレングリコールジメチルエーテルと526gのメチルイソブチルケトンとの混合物中の810gのジメチロールプロピオン酸という混合物をレジンケトル内に装入し、完全に溶解するまでこの混合物を100℃に加熱することで、酸官能性ポリウレタン13aaを調製した。この温度において、870gのトルイレンジイソシアネート(「TDI」)と、528gの、1molのTDI及び1molのエチレングリコールモノエチルエーテルの反応生成物である、セミキャップされたTDIとの混合物を、温度を100℃で一定に保ちながら4時間かけて添加した。全てのイソシアネート基を完全に消費するために、反応混合物をこの温度で1時間撹拌した。固体の質量分率は60%であった。酸官能性ポリウレタン13aaは140mg/gの酸価を有し、20℃のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中の溶液について測定したシュタウディンガー指数(Staudinger−Index)は9.3cm/gであった。
【0086】
300gのエチレングリコールモノエチルエーテルを580gのTDIに、30℃で2時間以内に添加し、更に続けて2時間反応させることで、セミキャップされたTDIを別個に調製し、この時間の後、アダクト中のイソシアネート基の最終質量分率は16.5%であることが確認された。
【0087】
実施例13ab−ヒドロキシ官能性ポリエステル
別個のステップにおいて、190gのトリプロピレングリコール、625gのネオペンチルグリコール、140gの異性化リノール酸、415gのイソフタル酸、及び290gのトリメリト酸無水物をレジンケトル内で混合し、反応混合物の酸価が4mg/gに減少するまで230℃でエステル化することで、ヒドロキシ官能性ポリエステル13abを調製した。DIN53211に従って20℃で測定された、形成された樹脂の2−n−ブトキシエタノール中50%強度の溶液の流出時間は、165秒であった。ヒドロキシ官能性ポリエステル13abのシュタウディンガー指数の値は、20℃のN,N−ジメチルホルムアミド中で測定したところ、10.5cm/gであった。
【0088】
実施例13ac−実施例13aaの酸官能性ポリウレタンと実施例13abのヒドロキシ官能性ポリエステルとの縮合物13ac
実施例13aaの酸官能性ポリウレタン300gと、実施例13abのヒドロキシ官能性ポリエステル700gとを、撹拌器、温度計、窒素入口、及び蒸留装置を備え付けられた反応容器に装入し、撹拌しながら混合し、155℃まで加熱した。減圧下の蒸留により、窒素ブランケットの下で溶媒を除去して、凝縮器内において分離された溶媒の流れを一定に維持した。試料を取り出し、酸価及び粘度に関して分析することによって、反応の進捗を監視した。36mg/gの酸価及び16.2cm/gのシュタウンディンガー指数に到達したとき、反応を停止し、次いで縮合物を周囲温度(23℃)まで冷却し、排出した。13acと呼ばれるこの縮合物は、ジメチルエタノールアミンとの中和後、水中で完全に希釈可能であり、沈殿または相分離を全く伴わなかった。
【0089】
実施例13ad−修飾ポリエステル
撹拌器及び還流凝縮器を備え付けられたレジンケトルに、192gのトリプロピレングリコール及び104gのネオペンチルグリコールを装入し、この装入物を撹拌しながら110℃に加熱した。その後、192gのトリメリト酸無水物を添加し、2時間以内に混合物を170℃まで加熱した。酸価が87mg/gになるまで、反応混合物をこの温度に保持した。150℃に冷却した後、α−分岐デカン酸のグリシジルエステルの商業的混合物((登録商標)Cardura E 10、Momentive Specialty Chemicals,Inc.)40gと、亜麻仁油脂肪酸14gとを添加した。次いで、この混合物を1時間以内に180℃まで加熱し、酸価が55mg/gに到達するまでこの温度に保持した。その後、反応混合物を冷却し、固体の質量分率が70%になるまでメトキシプロパノールを添加することで希釈した。100gのこの溶液に、7gのジメチルエタノールアミンと68gの脱イオン水とを添加し、毎分600回転で15分間、機械的撹拌器を用いて均質化した。固体の質量分率が40%である水性分散液を得た。
【0090】
実施例13b−着色プライマー/サーフェーサーコーティング組成物の調製
着色プライマー−サーフェーサーコーティング組成物を、以下の製法に従って調製した:脱イオン水の添加によって固体の質量分率が42%に調整されている実施例13acの縮合物21.10gに、3.35gの脱イオン水、12.65gのルチル型二酸化チタン顔料(Al及びZr化合物で表面処理済、(登録商標)Kronos 2190、Kronos Titan GmbH)、12.65gの沈降硫酸バリウム顔料(Blanc fixe F、Sachtleben GmbH)、及び0.05gのカーボンブラック((登録商標)Printex U、Evonik Carbon Black GmbH)を明記される順序で入れ、その後、毎分1200回転で15分間、機械的撹拌器を用いて均質化した。予備ブレンドをビーズミルに移し、50℃を上回らない温度で練肉した。45分間の練り時間の後、必要とされる粒径10μmが達成され、練肉を停止し、このようにして形成された13baと呼ばれるペーストをビーズから分離した。
【0091】
脱イオン水の添加によって固体の質量分率が42%に調整されている実施例13acの縮合物9.00gを装入し、実施例13adの水性分散液27.20g、メトキシ基対メチレン基対メラミン由来部分のモル比が5.0mol:5.8mol:1molからである、高度にメトキシメチル化されたメラミン架橋剤(Cymel(登録商標)303、Allnex USA Inc.)1.75g、及び脱イオン水12gをこの順序で添加することによって、混合物13bbを調製した。
【0092】
この混合物13bbを周囲温度(23℃)でペースト13baに添加し、毎分1200回転で15分間、機械的撹拌器を用いて均質化して、着色プライマー−サーフェーサーコーティング組成物13bを得た。このコーティング組成物13bの動粘度は300mPa・sであり(25s−1の剪断速度で測定)、そのpH値は8.0であった。
【0093】
実施例14 下地塗装コーティング組成物の調製
表1の以下の製法に従って、実施例1〜6のポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液から、下地塗装コーティング組成物を調製した。
【0094】
下地塗装組成物(構成成分の質量はg単位)
【表1】
【0095】
下地塗装組成物を、以下の製法に従って調製した:ポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液(実施例1〜実施例6)を装入し、明記された順序でメチル化高イミノメラミン架橋剤(Cymel(登録商標)327、Allnex USA Inc.)、ジメチルエタノールアミン(脱イオン水中の10%強度溶液)、及び脱イオン水(パートA)をこの装入物に添加し、その後毎分900回転の機械的撹拌器を用いて均質化した。15分間撹拌した後、脱イオン水中のアクリル系コポリマー増粘剤の10%強度溶液(Rheovis(登録商標)AS 1130、BASF SE)及び更なる脱イオン水(パートB)を添加し、毎分900回転で更に10分間均質化した。別個のステップにおいて、アルミニウムフレーク(シリカ内包アルミニウムフレーク、Hydrolan(登録商標)2154、Eckart GmbH)を装入し、アニオン性湿潤剤(Additol XL(登録商標)250、Allnex Austria GmbH)及びブチルグリコール(エチレングリコールモノブチルエーテル)を添加し、毎分600回転で30分間、機械的撹拌器を用いて均質化することで、アルミニウムフレークスラリー(パートC)を調製した。次いで、予備ブレンドされたパートA及びBに、均質化したパートCを毎分900回転で撹拌しながら添加し、更に20分間均質化した。最後のステップにおいて、イソブタノール(パートD)を添加し、毎分900回転で更に5分間、混合物を均質化した。
【0096】
記載されるように調製した下地塗装コーティング組成物を、周囲温度(23℃)で12時間静止した。この時間の後、脱イオン水中のジメチルエタノールアミンの10%強度溶液によって、pH値を8.3に調整し、脱イオン水を添加することで、塗料の粘度を300mPa・s(25s−1の剪断速度で測定)に調整した。これらの組成については表2で詳述する。
【0097】
下地塗装塗料組成物(構成成分の質量はg単位)
【表2】
【0098】
実施例15 仕上塗装コーティング組成物の調製
実施例15a−ヒドロキシ官能性アクリル系ポリマー
アクリル系コポリマーを、以下の製法に従って作製した:
撹拌器、不活性ガス入口、加熱及び冷却システム、ならびに添加漏斗を備え付けられた反応器に、ネオデカン酸のグリシジルエステルを装入し、175℃に加熱した。6時間以内に、74.8gのアクリル酸、229.3gのヒドロキシエチルメタクリレート、178.3gのtert−ブチルメタクリレート、62.7gのメチルメタクリレート、及び222.4gのスチレンからなる、モノマーと開始剤との混合物を、19.8gのジ−tert−アミルペルオキシドと共に添加し、ポリマーを形成した。反応混合物を更に2時間撹拌したが、このときまでに95%超の変換が認められた。固体の質量分率が75%になるまで酢酸ブチルを添加することで、このコポリマーを希釈し、室温まで冷ました後、溶液を濾過して懸濁されていた固体を取り除き、その後更に酢酸ブチルを添加することで、固体の質量分率を70%に調整した。
【0099】
実施例15b−仕上塗装コーティング組成物の調製
2種類の予備混合物を、以下の製法に従って調製した:
パートA:
825gの、実施例15aのヒドロキシ官能性アクリル系ポリマー溶液
51gの酢酸ブチル
51gのキシレン
51gのメトキシプロピルアセテート
5gの束縛アミン光安定剤(ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートと、1−(メチル)−8−(1,2,2,6,6,ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートとの混合物、BASF SEによりTinuvin(登録商標)292として販売)
15gのベンゾトリアゾール系光安定剤(β−[3−(2−H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−tert.ブチルフェニル]−プロピオン酸ポリ[エチレングリコール]300−エステルと、ビス{β−[3−(2−H−ベンゾ−トリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−tert.ブチルフェニル]−プロピオン酸}−ポリ(エチレングリコール)300−エステルとの混合物、Tinuvin(登録商標)1130として販売、BASF SE)
2gの、修飾シリコーンに基づく均染剤(Additol(登録商標)VXL 4930、Allnex Austria GmbH)
パートB:
322gの、酢酸ブチル中に溶解させたHDIトリマー、溶質の質量分率90%(Desmodur(登録商標)N3390BA、イソシアヌレート系、CAS Nr.:28182−81−2、Bayer Material Science AGにより販売)
97gの酢酸ブチル
40gのキシレン
24gのソルベントナフサ150/180(150℃〜180℃の沸点範囲をもつ芳香族炭化水素のブレンド)
【0100】
パートAの成分を言及した順番で装入し、毎分900回転で15分間、23℃で機械的攪拌器を用いて均質化した。
【0101】
別個のステップにおいて、トリマー性HDIの溶液及び溶媒をブレンドし、毎分900回転で撹拌しながら予備ブレンドしたパートAに添加した。10分間均質化した後、酢酸ブチルとソルベントナフサ150/180との質量比が60/40の混合物を添加することで、仕上塗装の粘度を130mPa・s(25s−1の剪断速度で測定)に調整した。この使用準備済仕上塗装コーティング組成物は、90分以内に適用されねばならない。
【0102】
実施例16 多層コーティングの調製
多層コーティングを、以下の手順に従って、実施例12のCEDコーティング組成物、実施例13bのプライマー−サーフェーサーコーティング組成物、実施例14の下地塗装組成物(塗料L1〜L6)、及び実施例15の仕上塗装コーティング組成物から調製した:
【0103】
試験パネルの調製:
12枚のリン酸亜鉛化鋼鉄パネル(Chemetallからの(登録商標)Gardobond 26S 6800 OC)を、以下の条件の下、実施例12によるCED塗料でコーティングした:
CED浴温度:30℃
堆積時間:2分間
電圧:300V
【0104】
コーティングしたパネル全てを、周囲温度で30分間フラッシュオフさせ、その後180℃で20分間焼付けた。全てのパネルに関して、CED層の乾燥膜厚は22μmであった。次のステップにおいて、実施例13bのプライマーサーフェーサーコーティング組成物を12枚のパネル全てに適用し(乾燥膜厚30μm)、フラッシュオフステップ(23℃で10分間)の後、165℃で20分間焼付けた。第3のステップにおいて、12枚のパネルを、実施例14の下地塗装組成物でオーバーコーティングした(塗料L1〜L6、塗料L1〜L6全てについて各2枚のパネル)。下地塗装層(乾燥膜厚10μm)を23℃で10分間フラッシュオフさせ、その後80℃で10分間焼付けた。最後に、全てのパネルを、実施例15の仕上塗装組成物でオーバーコーティングし(乾燥膜厚50μm)、140℃で20分間焼付けた。
【0105】
パネル調製の詳細な概要
【表3】
【0106】
パネル1〜6(P1、P2、…P6)は、DIN EN ISO20567−1に従うストーンチップ試験(2×500gのチップ、0.2MPa=2バールの空気圧で輸送)に供し、パネル1a〜6a(P1a、P2a、…P6a)は、DIN EN ISO6270−2に従う耐湿性試験(一定の湿度の凝縮環境、試験期間は240時間)を実行するのに使用した。試験時間後、これらのパネルは、23℃及び65%の相対湿度において1時間再生処理させ、その後DIN EN ISO4628−2(瑕疵の量及びサイズ、ならびに見かけ上の一様の変化の強度の指定−第2部:膨れ度合いの評価)に従ってこれらのパネルを評価した。
得られた結果を表4に示す。
【0107】
試験結果
【表4】
【0108】
この比較から、下地塗装層の調製において使用されたポリウレタン−ビニルポリマーハイブリッド分散液について、主成分として疎水性修飾ポリエステルを使用することで、ストーンチップ試験(層間の接着力を示す)及び耐湿性の両方が顕著に改善されることが示される。これは当業者も予期できなかったことであろう。