特許第6774946号(P6774946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774946
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】粒子状吸水剤
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20201019BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20201019BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20201019BHJP
   A61F 5/44 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   B01J20/26 D
   B01J20/28 Z
   A61F13/53 300
   A61F5/44 H
【請求項の数】14
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2017-526458(P2017-526458)
(86)(22)【出願日】2016年7月1日
(86)【国際出願番号】JP2016069715
(87)【国際公開番号】WO2017002972
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2017年12月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-132985(P2015-132985)
(32)【優先日】2015年7月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】大森 康平
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 一司
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸弥
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/040530(WO,A1)
【文献】 特開2005−111474(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/005114(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/126079(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/052537(WO,A1)
【文献】 特開2016−028116(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/158976(WO,A1)
【文献】 特開平07−088171(JP,A)
【文献】 特表2009−531467(JP,A)
【文献】 特開平04−175319(JP,A)
【文献】 特開平05−112654(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/041969(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/34
C08J 3/00−3/28
A61F 13/53
A61F 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とし、多価アルコール化合物、アルキレンカーボネート化合物から選択される少なくとも1種の表面架橋剤で表面架橋されていると共に、下記(1)〜(3)の物性を満たし、CRCが23g/g〜50g/gである、粒子状吸水剤。
(1)粒子径が150μm以上850μm未満である粒子の割合;90重量%以上
(2)粒子径が500μm以上600μm未満である粒子の弾性率指数(EMI);5500以上
(3)Rec.CRC/CRCで規定されるリカバリー率;1.05〜1.20
【請求項2】
上記(3)におけるリカバリー率が1.05〜1.16である、請求項1に記載の粒子状吸水剤。
【請求項3】
上記(2)における弾性率指数(EMI)が6000〜9500である、請求項1又は2に記載の粒子状吸水剤。
【請求項4】
AAP(加圧下吸水倍率)が20g/g以上である、請求項1〜3の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項5】
SFC(食塩水流れ誘導性)が10×10−7・cm・s・g−1以上である、請求項1〜4の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項6】
ボルテックス法による吸水時間が42秒以下である、請求項1〜5の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項7】
FSR(自由膨潤速度)が0.28g/(g・s)以上である、請求項1〜6の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項8】
粒子径が150μm未満である粒子の割合が5重量%以下である、請求項1〜の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項9】
下記(4)の物性を更に満たす、請求項1〜の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
(4)粒子径が425μm以上500μm未満である粒子の弾性率指数(EMI);4500以上
【請求項10】
下記(5)の物性を更に満たす、請求項に記載の粒子状吸水剤。
(5)粒子径が300μm以上425μm未満である粒子の弾性率指数(EMI);3500以上
【請求項11】
(a)粒子径が150μm以上300μm未満である粒子の割合が5重量%〜50重量%、
(b)粒子径が300μm以上425μm未満である粒子の割合が10重量%〜60重量%、
(c)粒子径が425μm以上500μm未満である粒子の割合が5重量%〜50重量%、
(d)粒子径が500μm以上600μm未満である粒子の割合が5重量%〜50重量%、
(e)粒子径が600μm以上850μm未満である粒子の割合が0.1重量%〜50重量%
であり、上記(a)〜(e)にそれぞれ示す粒子径の粒子の割合の合計が90重量%〜100重量%である、請求項1〜10の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項12】
重量平均粒子径(D50)が300μm〜500μmであり、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45であることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載の粒子状吸水剤を含有する、吸収体。
【請求項14】
請求項1〜12の何れか1項に記載の粒子状吸水剤を含有する、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状吸水剤に関する。更に詳細には、非常に優れた吸水特性及び通液性を示す粒子状吸水剤に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂(SAP/Super Absorbent Polymer)は、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤であり、紙オムツや生理用ナプキン等の吸収性物品、農園芸用の保水剤、工業用の止水剤等、様々な用途に利用されている。
【0003】
近年、これらの紙オムツや生理用ナプキン、失禁パット等の衛生用品は、高機能化かつ薄型化が進み、該衛生用品一枚あたりの吸水剤の使用量や、吸水剤と親水性繊維等とからなる吸収体全体に対する吸水剤の含有量が増加する傾向にある。つまり、嵩比重の小さい親水性繊維を少なくし、吸水性に優れ、かつ、嵩比重の大きい吸水剤を多く使用することで、吸収体における吸水剤の比率を高め、吸水量を低下させることなく、衛生用品を薄型化することを検討している。
【0004】
しかしながら、このような親水性繊維の比率を低くして吸水剤の含有量を増加させた衛生用品は、単純に液体を貯蔵するという観点からは好ましい傾向であるものの、実際の使用状況における液体の分配及び拡散を考えた場合には、むしろ問題が生じる。
【0005】
吸水剤は吸水することにより柔らかいゲル状となるため、単位体積あたりの吸水剤の量が多くなることで、吸水するとゲルブロッキングという現象をひき起こし、衛生用品中の液の拡散性を劇的に低下させてしまう。その結果、液体が到達し難くなった衛生用品の中心付近から遠いところに配置された吸水剤は有効に機能せず、吸水剤の含有量を増加させた効果が十分に現れず、実使用条件下での衛生用品の吸収能力は、理論量に対して大きく低下してしまう。
【0006】
このような問題を回避し、吸収体の吸収能力を維持するためには親水性繊維と吸水剤との比率はおのずと制限され、衛生用品の薄型化にも限界が生じていた。
【0007】
衛生用品中でのゲルブロッキングの改善を評価する指標として用いられるのは、例えば、加圧下での吸水特性を示す加圧下吸水倍率(Absorbency Against Pressure :AAP又はPerformance Under Pressure:PUP)や、食塩水流れ誘導性(Saline Flow Conductivity:以下、SFCと略す/特許文献1)等が挙げられる。
【0008】
ゲルブロッキングを改善することができる公知の技術として、表面処理により吸水剤の内部と外部とで架橋密度を変える技術、表面処理と、通液性向上剤としての無機微粒子や多価金属塩等の無機化合物やカチオン性高分子化合物とを組み合わせる技術、吸水性能、特に液の拡散性を改善する技術、表面架橋処理の反応環境を制御する技術が知られている(特許文献1〜39)。
【0009】
また、近年は開発途上国での紙オムツ使用率も向上傾向にあり、こういった貧困国においては、オムツ購入費用削減の観点から、一度使用した紙オムツを軽く水洗いして再度使用したいという要求が高まる可能性が考えられる。更に、先進国においては高齢化社会が到来しているが、近年の高齢者は過去と比較して飲酒者の割合が増大しており、オムツ常用者に関して、水のように薄い尿を排した後に、通常の尿を排する可能性が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許6297319号公報(2001年8月2日公開)
【特許文献2】米国特許6372852号公報(2002年4月16日公開)
【特許文献3】米国特許6265488号公報(2001年7月24日公開)
【特許文献4】米国特許6809158号公報(2004年8月26日公開)
【特許文献5】米国特許4734478号公報(1988年3月29日公開)
【特許文献6】米国特許4755562号公報(1988年7月5日公開)
【特許文献7】米国特許4824901号公報(1989年4月25日公開)
【特許文献8】米国特許6239230号公報(2001年3月29日公開)
【特許文献9】米国特許6559239号公報(2003年3月6日公開)
【特許文献10】米国特許6472478号公報(2002年10月29日公開)
【特許文献11】米国特許6657015号公報(2003年12月2日公開)
【特許文献12】米国特許5672633号公報(1997年9月30日公開)
【特許文献13】欧州特許公開第0940149号公報(1999年9月8日公開)
【特許文献14】国際公開第2006/033477号パンフレット(2006年3月30日公開)
【特許文献15】米国特許7201941号公報(2005年3月3日公開)
【特許文献16】米国特許4783510号公報(1988年11月3日公開)
【特許文献17】欧州特許第1824910号公報(2007年8月29日公開)
【特許文献18】国際公開第2002−100451号パンフレット(2002年12月19日公開)
【特許文献19】米国特許5610208号公報(1997年3月11日公開)
【特許文献20】国際公開第92/000108号パンフレット(1992年9月1日公開)
【特許文献21】国際公開第98/49221号パンフレット(1998年11月5日公開)
【特許文献22】国際公開第00/53644号パンフレット(2000年9月14日公開)
【特許文献23】国際公開第00/53664号パンフレット(2000年9月14日公開)
【特許文献24】国際公開第01/074913号パンフレット(2001年10月11日公開)
【特許文献25】国際公開第2002/020068号パンフレット(2002年3月14日公開)
【特許文献26】国際公開第2002/022717号パンフレット(2002年3月21日公開)
【特許文献27】国際公開第2005/080479号パンフレット(2005年9月1日公開)
【特許文献28】国際公開第2007/065834号パンフレット(2007年6月14日公開)
【特許文献29】国際公開第2008/092842号パンフレット(2008年8月7日公開)
【特許文献30】国際公開第2008/092843号パンフレット(2008年8月7日公開)
【特許文献31】国際公開第2008/110524号パンフレット(2008年9月18日公開)
【特許文献32】国際公開第2009/080611号パンフレット(2009年7月2日公開)
【特許文献33】日本国公告特許公報「特公平4−46617号公報」(1986年11月14日公開)
【特許文献34】国際公開第00/46260号パンフレット(2000年8月10日公開)
【特許文献35】欧州特許第1191051号明細書(2002年3月27日公開)
【特許文献36】国際公開第2011/117263号パンフレット(2011年9月29日公開)
【特許文献37】国際公開第09/125849号パンフレット(2009年10月15日公開)
【特許文献38】韓国特許第2011/0049072号明細書(2011年5月12日)
【特許文献39】日本国公表特許公報「特表2011−527360号公報」(2011年10月27日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記背景を鑑みると、近い将来において、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体用途として使用した場合、一度膨潤した後であっても、液の取込速度が維持され、かつ、液の戻り量が少ない粒子状吸水剤の需要が急増することが予想される。
【0012】
また、近年は高齢者のオムツ使用者が増加しており、子供用紙オムツと比較して高荷重下で尿を吸収する性能が必要となるため、近い将来において、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体用途として使用した場合、高加圧下であっても液の取り込み速度に優れ、かつ、液の戻り量が少ない粒子状吸水剤の需要が急増することも予想される。
【0013】
しかし、上記特許文献に開示された製造方法によって、吸水性樹脂の通液性及び加圧下吸収倍率の向上が図られているものの、一度純水で膨潤させた後の物性向上の検討については、現状では未だ充分ではなく、更なる物性の向上が必要である。更に、高荷重下の吸収性能向上の検討については、未だ充分ではなく、更なる物性の向上が必要である。
【0014】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、紙オムツ等の吸収性物品の吸収性能を阻害することなく、吸水性樹脂を複数回使用し、更に高荷重下で使用しても通液性及び加圧下吸水倍率が維持される粒子状吸水剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、特定の粒度分布を有する粒子状吸水剤において、生理食塩水での吸水倍率と、純水で膨潤した後に再度生理食塩水に浸漬した際の吸水倍率との比を特定範囲に制御することによって、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体用途として使用した場合、一度膨潤・収縮した後であっても、高荷重下の条件であっても液の取込速度が維持され、かつ、液の戻り量が少ない粒子状吸水剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明に係る粒子状吸水剤は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とし、表面架橋されていると共に、下記(1)〜(3)の物性を満たす、粒子状吸水剤である。
【0017】
(1)粒子径が150μm以上850μm未満である粒子の割合;90重量%以上
(2)粒子径が500μm以上600μm未満である粒子の弾性率指数(EMI);5500以上
(3)Rec.CRC/CRCで規定されるリカバリー率;1.05〜1.20
また、本発明に係る吸収体は、上記の粒子状吸水剤を含有する吸収体である。
【0018】
更に、本発明に係る吸収性物品は、上記の粒子状吸水剤を含有する吸収性物品である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る粒子状吸水剤は、純水での膨潤を経た後であっても高い加圧下吸水倍率及び通液性を示す。このように、本発明に係る粒子状吸水剤、並びに粒子状吸水剤を使用した吸収体及び吸収性物品は、一度膨潤させた後であっても、高荷重下であっても、液の取込速度が維持され、かつ、液の戻りが少ないという特性を示すため、より優れた物性を有する紙オムツ、生理用ナプキン及び医療用捕血剤等の吸収性物品を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】AAP(加圧下吸水倍率)及びRec.AAP(リカバリーAAP)の測定に用いる装置の断面図である。
図2】SFC(食塩水流れ誘導性)及びRec.SFC(リカバリーSFC)の測定に用いる装置の断面図である。
図3】SFC(食塩水流れ誘導性)及びRec.SFC(リカバリーSFC)の測定に用いる装置の断面図である。
図4】粒子状吸水剤の弾性率の測定に用いる装置の一部を示す外観図である。
図5】拡散吸収時間の測定に用いる測定装置の構造を示す概略図である。
図6】拡散吸収時間の測定に用いる測定装置の上蓋及びトレーの外観図である。図6(a)は上蓋の上面図であり、図6(b)は上蓋の側面図であり、図6(c)はトレーの上面図であり、図6(d)はトレーの側面図である。
図7】Rec.CRC/CRC(リカバリー率)とEMI(弾性率指数)との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る粒子状吸水剤及び当該粒子状吸水剤の製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更、実施することができる。
【0022】
具体的には、本発明は下記各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲において種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0023】
〔1〕用語の定義
(1−1)「吸水性樹脂」
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を意味する。ここで、「水膨潤性」とは、ERT441.2−02にて規定されるCRC(遠心分離機保持容量)が5g/g以上であることをいい、「水不溶性」とは、ERT470.2−02にて規定されるExt(水可溶分)が50重量%以下であることをいう。
【0024】
上記吸水性樹脂は、その用途に応じて適宜設計が可能であり、特に限定されるものではないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた、親水性架橋重合体であることが好ましい。また、全量(100重量%)が重合体である形態に限定されず、上記性能を維持する範囲内において、表面架橋されたものや添加剤等を含んでいる組成物であってもよい。
【0025】
上記「吸水性樹脂」は、上記親水性架橋重合体を粉砕して粉末状とした樹脂であり、便宜上、本明細書中において、表面処理又は表面架橋を行う前の吸水性樹脂を「吸水性樹脂粉末」、表面処理又は表面架橋を行った後の吸水性樹脂を「吸水性樹脂粒子」と称する。
【0026】
更に、各工程で得られる形状が異なる吸水性樹脂(形状として、例えば、シート状、繊維状、フィルム状、ゲル状等が挙げられる)であっても、添加剤等を含有した吸水性樹脂組成物であっても、本明細書中においては「吸水性樹脂」と総称する。また、最終製品としての吸水性樹脂を「粒子状吸水剤」と称する。
【0027】
(1−2)「ポリアクリル酸(塩)」
本発明における「ポリアクリル酸(塩)」とは、グラフト成分を必要に応じて含んでおり、繰り返し単位として、アクリル酸、その塩、またはその組み合わせ(本明細書中ではこれらをまとめて「アクリル酸(塩)」と称する)を主成分とする重合体を意味する。
【0028】
具体的には、本発明における「ポリアクリル酸(塩)」は、重合に用いられる総単量体(内部架橋剤を除く)のうち、アクリル酸(塩)を必須に50モル%〜100モル%、好ましくは70モル%〜100モル%、更に好ましくは90モル%〜100モル%、特に好ましくは実質100モル%含む重合体をいう。
【0029】
また、重合体としてポリアクリル酸塩を用いる場合は、水溶性塩を必ず含んでおり、上記水溶性塩(中和塩)の主成分としては、一価の塩が好ましく、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩がより好ましく、アルカリ金属塩が更に好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0030】
(1−3)「EDANA」及び「ERT」
「EDANA」とは、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称であり、「ERT」とは、欧州標準(ほぼ世界標準)である吸水性樹脂の測定方法(EDANA Recommended Test Methods)の略称である。なお、本発明においては、特に断りのない限り、ERT原本(公知文献:2002年改定)に準拠して測定を行う。
【0031】
(1−3−1)「CRC」(ERT441.2−02)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、吸水性樹脂の無加圧下での吸水倍率(「吸水倍率」と称する場合もある)を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.20gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で3分間、水切りした後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。
【0032】
(1−3−2)「AAP」(ERT442.2−02)
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、吸水性樹脂の加圧下での吸水倍率を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.90gを大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して、1時間、2.06kPa(0.3psi)荷重下で膨潤させた後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。なお、ERT442.2−02では、Absorption Under Pressureと表記されているが、実質的に同一内容である。また、荷重条件を、目的に応じて4.83kPa(0.7psi)に変更することもある。
【0033】
(1−3−3)「Ext」(ERT470.2−02)
「Ext」は、Extractablesの略称であり、吸水性樹脂の水可溶分(水可溶成分量)を意味する。具体的には、吸水性樹脂1.0gを0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、500rpmで16時間攪拌した後、水溶液に溶解した物質の量(単位;重量%)のことをいう。水可溶分の測定には、pH滴定が用いられる。
【0034】
(1−3−4)「PSD」(ERT420.2−02)
「PSD」は、Particle Size Distributionの略称であり、篩分級により測定される、吸水性樹脂の粒度分布を意味する。なお、重量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、米国特許第7638570号に記載された「(3)Mass−Average Particle Diameter(D50) and Logarithmic Standard Deviation(σζ) of Particle Diameter Distribution」と同様の方法で測定する。
【0035】
(1−4)その他の物性
(1−4−1)「SFC」
本発明における「SFC」とは、Saline Flow Conductivity(食塩水流れ誘導性)の略称であり、荷重2.07kPaにおける吸水性樹脂に対する0.69重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性(単位;×10−7・cm・s・g−1)を意味する。SFCの値が大きいほど、吸水性樹脂は、高い液透過性を有することとなる。米国特許第5849405号明細書に記載されたSFC試験方法に準じて測定される。
【0036】
(1−4−2)「FSR」
本発明における「FSR」とは、Free Swell Rate(自由膨潤速度)の略称であり、吸水性樹脂1gが0.9重量%塩化ナトリウム水溶液20gを吸水するときの速度(単位;g/(g・s))を意味する。
【0037】
(1−4−3)「Vortex」
本発明における「Vortex」とは、JIS K7224に記載の「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」に準じて求めた吸水時間であり、吸水性樹脂2gが0.9重量%塩化ナトリウム水溶液50gを吸水するのに要する時間(単位;秒)のことをいう。
【0038】
(1−4−4)「Rec.CRC」
本発明における「Rec.CRC(リカバリーCRC)」とは、吸水性樹脂を一度、純水で膨潤させた後、遠心分離機を用いて水切り(又はエタノール置換した後に風乾)し、その後、0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液で再度膨潤させたときの、無加圧下吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。なお、具体的な測定方法は実施例で説明する。
【0039】
また、上記CRCとの比(Rec.CRC/CRC)を「リカバリー率」と称する。
【0040】
(1−4−5)「Rec.AAP」
本発明における「Rec.AAP(リカバリーAAP)」とは、純水での膨潤を経た吸水性樹脂の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対する加圧下吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。なお、具体的な測定方法は実施例で説明する。
【0041】
(1−4−6)「Rec.SFC」
本発明における「Rec.SFC(リカバリーSFC)」とは、純水での膨潤を経た吸水性樹脂の、荷重2.07kPaにおける吸水性樹脂に対する0.69重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性(単位;×10−7・cm・s・g−1)のことをいう。なお、具体的な測定方法は実施例で説明する。
【0042】
(1−4−7)「弾性率指数(Elastic Modulus Index)」
本発明における「弾性率指数」とは、弾性率を膨潤ゲル粒子の理論表面積及びCRCで補正した値であり、吸水性樹脂の性能を判断する指標となる値である。また、本明細書では、弾性率指数を「EMI」と略記する場合もある。なお、上記「膨潤ゲル粒子」とは、吸水性樹脂を純水によって膨潤させて得られた膨潤ゲルの粒子である。また、具体的な測定方法は実施例で説明する。
【0043】
(1−4−8)「拡散吸収時間」
本発明における「拡散吸収時間」とは、吸水性樹脂または、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液での膨潤を経た吸水性樹脂の、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液75gに対する加圧下吸水時間(単位;秒)のことをいう。上記水溶液が、膨潤を経ていない吸水性樹脂に全て吸収された時間を1回目の拡散吸収時間、1回目の上記水溶液の投入開始から10分後に、2回目の上記水溶液の投入を行い、上記水溶液が、一度の膨潤を経た吸水性樹脂に全て吸収された時間を2回目の拡散吸収時間、同様に、10分間隔で上記水溶液の投入を行い、上記水溶液が、二度の膨潤を経た吸水性樹脂に全て吸収された時間を3回目の拡散吸収時間とした。なお、具体的な測定方法は実施例で説明する。
【0044】
(1−5)その他
本明細書中において、範囲を示す「X〜Y」は、「X以上、Y以下」を意味する。重量の単位である「t(トン)」は、「Metric ton(メトリック トン)」を意味し、更に、特に注釈のない限り、「ppm」は「重量ppm」を意味する。「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」、「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。更に、「〜酸(塩)」は「〜酸及び/又はその塩」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0045】
〔2〕粒子状吸水剤の物性
本発明に係る粒子状吸水剤は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とし、表面架橋されていると共に、下記(1)〜(3)の物性を満たす、粒子状吸水剤である。
【0046】
(1)粒子径が150μm以上850μm未満である粒子の割合;90重量%以上
(2)粒子径が500μm以上600μm未満である粒子の弾性率指数(EMI);5500以上
(3)Rec.CRC/CRCで規定されるリカバリー率;1.05〜1.20
以下、本発明に係る粒子状吸水剤の物性について、詳細に説明する。
【0047】
(2−1)CRC(遠心分離機保持容量)
本発明に係る粒子状吸水剤のCRCは、好ましくは23g/g以上、より好ましくは25g/g以上、更に好ましくは26g/g以上である。上限値は、高値ほど好ましく特に限定されないが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは50g/g以下、より好ましくは40g/g以下である。
【0048】
したがって、本発明における上記CRCは、上記上下限の範囲内で適宜選択することができる。例えば、23g/g〜50g/g、23g/g〜40g/g、25g/g〜40g/g、26g/g〜50g/g等が挙げられる。
【0049】
なお、上記CRCを23g/g以上とすることで、吸収量が多くなり、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体として好適となる。また、上記CRCを45g/g以下とすることで、尿や血液等の体液等を吸収する速度が速くなるため、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に好適となる。上記CRCは、内部架橋剤や表面架橋剤等で制御することができる。
【0050】
(2−2)AAP(加圧下吸水倍率)
本発明に係る粒子状吸水剤のAAPは、好ましくは15g/g以上、より好ましくは17g/g以上、更に好ましくは20g/g以上、特に好ましくは22g/g以上、最も好ましくは23g/g以上である。上限値は、高値ほど好ましく特に限定されないが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは30g/g以下である。
【0051】
したがって、本発明における上記AAPは、上記上下限の範囲内で適宜選択することができる。例えば、15g/g〜30g/g、17g/g〜30g/g、20g/g〜30g/g、23g/g〜30g/g等が挙げられる。
【0052】
上記AAPが15g/g以上であれば、粒子状吸水剤に圧力が加わった際の液の戻り(通称リウェット:Re−Wet)が少なくなるため、好ましい。上記AAPは、粒度や表面架橋剤等で制御することができる。
【0053】
(2−3)Ext(水可溶分)
本発明に係る粒子状吸水剤のExtは、通常50重量%以下であり、好ましくは35重量%以下、より好ましくは25重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。下限値については特に限定されないが、好ましくは0重量%、より好ましくは0.1重量%程度である。
【0054】
したがって、本発明における上記Extは、上記上下限の範囲内で適宜選択することができる。例えば、0重量%〜50重量%、0重量%〜25重量%、0.1重量%〜35重量%、0.1重量%〜15重量%等が挙げられる。
【0055】
上記Extが50重量%以下であれば、ゲル強度が強く、液透過性に優れたものとなる。また、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体に使用された場合、吸収体に圧力が加わった際の液の戻り(リウェット:Re−Wet)が少ない粒子状吸水剤となる。上記Extは、内部架橋剤等で制御することができる。
【0056】
(2−4)PSD(粒度分布)
本発明に係る粒子状吸水剤のPSDとして、粒子径が150μm以上850μm未満である粒子の割合は、90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは97重量%以上、更に好ましくは98重量%(上限は100重量%)である。また、粒子径が150μm以上710μm未満である粒子の割合は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは97重量%以上、特に好ましくは98重量%(上限は100重量%)である。
【0057】
より具体的に、粒子径が150μm以上300μm未満である粒子の割合は、5重量%以上、好ましくは7重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%(上限は50重量%)である。粒子径が300μm以上425μm未満である粒子の割合は、10重量%以上、好ましくは12重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%(上限は60重量%)である。粒子径が425μm以上500μm未満である粒子の割合は、5重量%以上、好ましくは7重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%(上限は50重量%)である。粒子径が500μm以上600μm未満である粒子の割合は、5重量%以上、好ましくは7重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%(上限は50重量%)である。粒子径が600μm以上850μm未満である粒子の割合は、0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%(上限は50重量%)である。このとき、上述した粒子径の粒子の割合の合計が90重量%〜100重量%であることが好ましく、95重量%〜100重量%であることが、より好ましい。
【0058】
また、粒子径が150μm未満である粒子の割合は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは4重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。なお、「粒子径が150μm未満である粒子」とは、目開き150μmのJIS標準篩(JIS Z8801−1(2000)で規定)を通過することができる粒子状吸水剤のことを指す。
【0059】
上記粒子径が150μm未満である粒子の割合を5重量%以下とすることで、粒子状吸水剤を製造する際、粒子状吸水剤に含まれる微粒子の飛散による安全衛生上の問題を確実に防止することができ、得られる粒子状吸水剤の物性を向上させることができるため、好ましい。
【0060】
また、粒子径が850μm以上である粒子の割合は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。
【0061】
また、D50(重量平均粒子径)は、好ましくは200μm〜600μm、より好ましくは300μm〜500μm、更に好ましくは320μm〜480μm、特に好ましくは340μm〜460μmの範囲内で適宜設定される。
【0062】
上記D50(重量平均粒子径)を200μm〜600μmとすることで、通液性及び吸水速度の優れた粒子状吸水剤を得ることができる。かような粒子状吸水剤を紙オムツ等の吸収性物品の吸収体に用いた場合、液漏れ等を防止することができるため、好ましい。
【0063】
更に、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は、好ましくは0.20〜0.50、より好ましくは0.25〜0.45、更に好ましくは0.27〜0.43、特に好ましくは0.29〜0.41の範囲内で適宜設定される。
【0064】
上記σζ(粒度分布の対数標準偏差)を0.20〜0.50とすることで、通液性及び吸水速度の優れた粒子状吸水剤を得ることができるため、好ましい。
【0065】
(2−5)SFC(食塩水流れ誘導性)
本発明に係る粒子状吸水剤のSFCは、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上、更により好ましくは50以上、特に好ましくは70以上、最も好ましくは90以上である。上限値については特に限定されないが、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下である。
【0066】
したがって、本発明における上記SFCは、上記上下限の範囲内で適宜選択することができる。例えば、10〜3000、30〜3000、70〜2000等が挙げられる。
【0067】
上記SFCが10以上であれば、通液性が高く、吸収体に利用された場合、液の取り込み速度がより優れた粒子状吸水剤を得ることができるため、好ましい。なお、SFCの単位は(×10−7・cm・s・g−1)である。
【0068】
(2−6)FSR(自由膨潤速度)
本発明に係る粒子状吸水剤のFSRは、好ましくは0.28以上、より好ましくは0.30以上、更に好ましくは0.35以上である。上限値は、高値ほど好ましく特に限定されないが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは1.0以下である。
【0069】
したがって、本発明における上記FSRは、上記上下限の範囲内で適宜選択することができる。例えば、0.28〜1.0、0.35〜1.0等が挙げられる。
【0070】
上記FSRが上記範囲内であれば、粒子状吸水剤を吸収体に使用する場合、液がより十分に吸収され液漏れを生じないため、好ましい。なお、FSRの単位はg/(g・s)である。
【0071】
(2−7)Vortex(吸水時間)
本発明に係る粒子状吸水剤のVortexは、好ましくは42秒以下、より好ましくは40秒以下、更に好ましくは35秒以下、特に好ましくは30秒以下、最も好ましくは25秒以下である。下限値は、0秒超であればよく特に限定されないが、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上である。
【0072】
したがって、本発明における上記Vortexは、上記上下限の範囲内で適宜選択することができる。例えば、0秒超42秒以下、5秒〜40秒、10秒〜30秒等が挙げられる。
【0073】
上記Vortexが42秒以下であれば、粒子状吸水剤を吸収体に使用する場合、液がより十分に吸収され液漏れを生じないため、好ましい。
【0074】
(2−8)Rec.CRC(リカバリーCRC)
本発明に係る粒子状吸水剤のRec.CRCは、好ましくは24g/g以上、より好ましくは26g/g以上、更に好ましくは27g/g以上である。上限値は、高値ほど好ましく特に限定されないが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは54g/g以下、より好ましくは48g/g以下、更に好ましくは47g/g以下、特に好ましくは42g/g以下である。
【0075】
したがって、本発明における上記Rec.CRCは、上記上下限の範囲内で適宜選択することができる。例えば、24g/g〜54g/g、26g/g〜48g/g、27g/g〜47g/g、27g/g〜42g/g等が挙げられる。
【0076】
なお、上記Rec.CRCを24g/g以上とすることで、吸収量が多くなり、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体として好適となる。また、上記Rec.CRCを54g/g以下とすることで、尿や血液等の体液等を吸収する速度が速くなるため、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に好適となる。
【0077】
(2−9)Rec.AAP(リカバリーAAP)
本発明に係る粒子状吸水剤のRec.AAPは、好ましくは10g/g以上、より好ましくは12g/g以上、更に好ましくは15g/g以上である。上限値は、高値ほど好ましく特に限定されないが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは30g/g以下、より好ましくは25g/g以下である。
【0078】
したがって、本発明における上記Rec.AAPは、上記上下限の範囲内で適宜選択することができる。例えば、10g/g〜30g/g、12g/g〜30g/g、12g/g〜25g/g、15g/g〜25g/g等が挙げられる。
【0079】
上記Rec.AAPが10g/g以上であれば、一度膨潤させた後であっても粒子状吸水剤に圧力が加わった際の液の戻り(通称リウェット:Re−Wet)が少なくなるため、好ましい。
【0080】
(2−10)Rec.SFC(リカバリーSFC)
本発明に係る粒子状吸水剤のRec.SFCは、好ましくは5以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、特に好ましくは10以上である。
【0081】
上記Rec.SFCが5以上であれば、一度膨潤させた後であっても、通液性が高く、吸収体に利用された場合、液の取り込み速度がより優れた粒子状吸水剤を得ることができるため、好ましい。なお、Rec.SFCの単位は(×10−7・cm・s・g−1)である。
【0082】
(2−11)Rec.CRC/CRC(リカバリー率)
本発明に係る粒子状吸水剤のRec.CRC/CRCは、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.06以上、更に好ましくは1.07以上、特に好ましくは1.08以上である。上限値は、好ましくは1.20以下、より好ましくは1.18以下、更に好ましくは1.16以下、特に好ましくは1.15以下である。
【0083】
したがって、本発明における上記Rec.CRC/CRCは、上記上下限の範囲内で適宜選択することができる。例えば、1.05〜1.20、1.05〜1.16、1.06〜1.16、1.08〜1.15等が挙げられる。
【0084】
(2−12)EMI(弾性率指数)
本発明に係る粒子状吸水剤は、弾性に富み、良好なリカバリー率を有し、吸水特性及び通液性に優れている。したがって、当該「弾性」について、「弾性率」を用いて評価することが好ましい。しかしながら、当該弾性率は、粒子状吸水剤の吸水倍率によって変化することが判明している。そのため、粒子状吸水剤の弾性は、吸水倍率の影響を考慮した指標とすることが好ましい。
【0085】
また、実施例に示したように、本発明における弾性率は、測定対象の膨潤ゲル粒子をレオメーターのディッシュ面とパラレルプレート面とで挟持し、荷重を掛けることによって測定されるが、当該膨潤ゲル粒子に粒度分布が存在すると、粒子径の大きい膨潤ゲル粒子が先に当接するため、粒子径の小さい膨潤ゲル粒子は挟持されないという現象が生じ、正確な弾性率が測定できないという問題がある。
【0086】
そこで本発明者らは、上記弾性率を、粒子状吸水剤の吸水倍率及び膨潤ゲル粒子の理論表面積を用いて補正した「EMI(弾性率指数)」なるパラメータが、本発明に係る粒子状吸水剤の弾性を的確に表すことができ、更に当該粒子状吸水剤の吸水性能と相関した値であることを見出した。なお、EMI(弾性率指数)の求め方は実施例で説明する。
【0087】
本発明に係る粒子状吸水剤のEMIは、上述したように、粒度分布を有していると、正確な弾性率を測定することができない。そこで、本発明では、測定対象の粒子状吸水剤を一旦分級し、粒子径を揃えた後に、粒度ごとに弾性率を測定し、EMI(弾性率指数)を算出している。
【0088】
なお、上記EMI(弾性率指数)は、各粒度において、上記リカバリー率(Rec.CRC/CRC)が1.05〜1.20を満たす範囲内で、高値であるほど好ましく、その結果として、Rec.AAP及びRec.SFCも高くなる。つまり、本発明の粒子状吸水剤は、水での膨潤を経た後であっても吸水特性や通液性を維持している。
【0089】
以下、粒度ごとのEMIの好ましい範囲を説明する。
【0090】
(2−12−1)粒子径が600μm以上710μm未満である粒子のEMI
弾性率測定時の分級操作で得られた、粒子径が600μm以上710μm未満である粒子のEMI(弾性率指数)は、好ましくは5500以上、より好ましくは6000以上、更に好ましくは6500以上、特に好ましくは7000以上、最も好ましくは7500以上である。上限値は、好ましくは15500以下、より好ましくは11500以下、更に好ましくは9500以下、特に好ましくは8500以下、最も好ましくは8000以下である。
【0091】
(2−12−2)粒子径が500μm以上600μm未満である粒子のEMI
弾性率測定時の分級操作で得られた、粒子径が500μm以上600μm未満である粒子のEMI(弾性率指数)は、5500以上、好ましくは6000以上、より好ましくは6500以上、更に好ましくは7000以上である。上限値は、好ましくは15000以下、より好ましくは11000以下、更に好ましくは9500以下、より更に好ましくは9000以下、特に好ましくは8000以下、最も好ましくは7500以下である。
【0092】
(2−12−3)粒子径が425μm以上500μm未満である粒子のEMI
弾性率測定時の分級操作で得られた、粒子径が425μm以上500μm未満である粒子のEMI(弾性率指数)は、好ましくは4500以上、より好ましくは5000以上、更に好ましくは5500以上、特に好ましくは6000以上、最も好ましくは6500以上である。上限値は、好ましくは14500以下、より好ましくは10500以下、更に好ましくは8500以下、特に好ましくは7500以下、最も好ましくは7000以下である。
【0093】
(2−12−4)粒子径が300μm以上425μm未満である粒子のEMI
弾性率測定時の分級操作で得られた、粒子径が300μm以上425μm未満である粒子のEMI(弾性率指数)は、好ましくは3500以上、より好ましくは4000以上、更に好ましくは4500以上、特に好ましくは5000以上、最も好ましくは6000以上である。上限値は、好ましくは14000以下、より好ましくは10000以下、更に好ましくは8000以下、特に好ましくは7000以下、最も好ましくは6500以下である。
【0094】
(2−12−5)粒子径が150μm以上300μm未満である粒子のEMI
弾性率測定時の分級操作で得られた、粒子径が150μm以上300μm未満である粒子のEMI(弾性率指数)は、好ましくは3500以上、より好ましくは4000以上である。上限値は、好ましくは13500以下、より好ましくは9500以下、更に好ましくは4500以下である。
【0095】
以上、本発明に係る粒子状吸水剤は、(1)粒子径が150μm以上850μm未満である粒子の割合が90重量%以上であり、(2)粒子径が500μm以上600μm未満である粒子のEMI(弾性率指数)が5500以上であり、(3)Rec.CRC/CRCが1.05〜1.20である場合に、純水での膨潤後の物性低下が極力抑えられ、Rec.AAPが15g/g以上、Rec.SFCが5×10−7・cm・s・g−1以上という優れた物性を示す。
【0096】
一方、上記(1)及び(3)の要件のみ、又は、上記(2)及び(3)の要件のみを満たす粒子状吸水剤の場合は、何れも、Rec.AAP及びRec.SFCの両方が優れた値を示すものではなかった。
【0097】
(2−13)拡散吸収時間
本発明に係る粒子状吸水剤の1回目の拡散吸収時間は、2.07kPa荷重下において、好ましくは26秒以下、より好ましくは24秒以下であり、2回目の拡散吸収時間は、好ましくは37秒以下、より好ましくは35秒以下であり、3回目の拡散吸収時間は、好ましくは67秒以下、より好ましくは65秒以下である。6.21kPa荷重下における1回目の拡散吸収時間は、好ましくは39秒以下、より好ましくは35秒以下であり、2回目の拡散吸収時間は、好ましくは75秒以下、より好ましくは70秒以下であり、3回目の拡散吸収時間は、好ましくは160秒以下、より好ましくは140秒以下である。拡散吸収時間を比較することで、高圧力下での液の取込み性の評価を行うことができる。拡散吸収時間がより短い場合、膨潤を経た後であっても高い加圧下吸水倍率を示すことがわかる。
【0098】
〔3〕粒子状吸水剤の製造方法
以下、本発明の粒子状吸水剤の製造方法について説明する。当該製造方法は、上述した粒子状吸水剤が得られる製造方法であればよく、特に限定されないが、例えば、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液を重合して、含水ゲル状架橋重合体が得られる重合工程が含まれる製造方法であることが好ましい。当該製造方法によって、上述した物性を有する粒子状吸水剤が効率よく得られる。
【0099】
(3−1)単量体水溶液の作製工程
本工程は、アクリル酸(塩)を主成分として含む水溶液(以下、「単量体水溶液」と称する)を作製する工程である。なお、得られる粒子状吸水剤の吸水性能が低下しない範囲で、単量体のスラリー液を使用することもできるが、本項では便宜上、単量体水溶液について説明する。
【0100】
また、上記「主成分」とは、アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が、重合反応に供される単量体(内部架橋剤は除く)全体に対して、通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上(上限は100モル%)であることをいう。
【0101】
(アクリル酸(塩))
本発明では、得られる粒子状吸水剤の物性及び生産性の観点から、単量体として好ましくはアクリル酸及び/又はアクリル酸塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)が用いられる。
【0102】
上記アクリル酸としては、公知のアクリル酸が使用される。当該公知のアクリル酸は、接触気相酸化法で得られるガス状のアクリル酸を水等の溶媒で捕集し、その後、蒸留及び/又は晶析を利用して精製して得られたものであり、重合禁止剤や不純物等の微量成分が含まれる。
【0103】
上記重合禁止剤としては、特に限定されないが、好ましくはメトキシフェノール類、より好ましくはp−メトキシフェノール類が用いられる。当該重合禁止剤は、アクリル酸の重合性や粒子状吸水剤の色調の観点から、アクリル酸中の濃度として、好ましくは200ppm以下、より好ましくは10ppm〜160ppm、更に好ましくは20ppm〜100ppmの範囲内で適宜設定される。
【0104】
上記不純物としては、特に限定されないが、酢酸やプロピオン酸、フルフラール等の有機化合物の他、米国特許出願公開第2008/0161512号に記載されたアクリル酸中の不純物が本発明にも適用される。
【0105】
上記アクリル酸塩は、上記アクリル酸を下記塩基性化合物で中和したものであるが、市販のアクリル酸塩(例えば、アクリル酸ナトリウム)でもよく、粒子状吸水剤の製造プラント内でアクリル酸を中和して得られたものでもよい。
【0106】
(塩基性化合物)
本発明において「塩基性化合物」とは、塩基性を示す化合物を指し、例えば、水酸化ナトリウム等が挙げられる。なお、例えば、市販の水酸化ナトリウムには、不純物として亜鉛、鉄、鉛等の重金属がppmオーダーで含まれており、厳密には塩基性組成物ということもできるが、本発明では塩基性化合物の範疇に含まれるものとする。
【0107】
上記塩基性化合物として、具体的には、アルカリ金属の炭酸塩や炭酸水素塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられる。中でも、得られる粒子状吸水剤の物性の観点から、好ましくは強塩基性を示す塩基性化合物が選択される。つまり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。なお、上記塩基性化合物は、取扱性の観点から、水溶液状態とすることが好ましい。
【0108】
(中和)
上記アクリル酸塩として、粒子状吸水剤の製造プラント内でアクリル酸を中和したものを使用する場合、当該中和を行う時機としては特に限定されず、アクリル酸に対する中和(重合前)、又は、アクリル酸の架橋重合中での中和(重合中)、アクリル酸を架橋重合して得られる含水ゲル状架橋重合体に対する中和(重合後)の何れかを選択又は併用することができる。なお、上記中和は、連続式でもバッチ式でもよく特に限定されないが、生産効率等の観点から、連続式が好ましい。
【0109】
本発明においてアクリル酸(塩)を使用する場合、その中和率としては、特に限定されないが、単量体の酸基に対して、好ましくは10モル%〜100モル%、より好ましくは30モル%〜95モル%、更に好ましくは45モル%〜90モル%、特に好ましくは60モル%〜80モル%の範囲内で適宜設定される。当該中和率を当該範囲内とすることで、粒子状吸水剤の吸水倍率の低下を抑制することができ、加圧下吸水倍率の高い粒子状吸水剤を得ることができる。
【0110】
上記中和率の好ましい範囲は、上記重合前、重合中、重合後の何れにおいても適用される。また、最終製品としての粒子状吸水剤についても、同様に適用される。なお、中和を行う装置や、中和温度、滞留時間等の中和条件については、国際公開第2009/123197号や米国特許出願公開第2008/0194863号に記載された内容が本発明にも適用される。
【0111】
(他の単量体)
本発明においては、上述したアクリル酸(塩)に加えて、米国特許出願公開第2005/0215734号に記載された単量体(以下、「他の単量体」と称する)を、必要に応じて、アクリル酸(塩)と併用することができる。当該他の単量体としては、特に限定されないが、水溶性又は疎水性の不飽和単量体が挙げられる。
【0112】
なお、上記他の単量体を併用する場合、その使用量は、単量体全体に対して、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%以下の範囲内で適宜設定される。
【0113】
(内部架橋剤)
本発明の内部架橋剤として、米国特許第6241928号に記載された内部架橋剤が本発明に適用される。これらの中から反応性を考慮して1種又は2種以上の内部架橋剤が選択される。
【0114】
また、得られる粒子状吸水剤の吸水性能等の観点から、好ましくは重合性不飽和基を2個以上有する化合物、より好ましくは下記乾燥温度で熱分解性を示す化合物、更に好ましくは(ポリ)アルキレングリコール構造単位を有する重合性不飽和基を2個以上有する化合物が、上記内部架橋剤として用いられる。
【0115】
上記重合性不飽和基としては特に限定されないが、好ましくはアリル基、(メタ)アクリレート基、より好ましくは(メタ)アクリレート基が挙げられる。また、上記(ポリ)アルキレングリコール構造単位としては特に限定されないが、好ましくはポリエチレングリコールであり、n数として好ましくは2〜100、より好ましくは6〜50の範囲内で適宜選択される。
【0116】
また、上記内部架橋剤は水溶性であることが好ましく、25℃の水100gに対して、好ましくは0.1g以上、より好ましくは1g以上の溶解度を示すことが好ましい。
【0117】
従って、本発明で用いられる内部架橋剤として、好ましくは(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート又は(ポリ)アルキレングリコールトリ(メタ)アクリレートであり、より好ましくは(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートである。
【0118】
上記内部架橋剤の使用量は、単量体全体に対して、好ましくは0.001モル%〜5モル%、より好ましくは0.002モル%〜2モル%、更に好ましくは0.04モル%〜1モル%、特に好ましくは0.06モル%〜0.5モル%、最も好ましくは0.07モル%〜0.2モル%の範囲内で適宜設定される。
【0119】
上記使用量を上記範囲内とすることで、所望する粒子状吸水剤が得られる。なお、上記使用量が0.001モル%未満の場合、ゲル強度が低下し、水可溶分が増加する傾向にあるため、好ましくない。また、上記使用量が5モル%を超える場合、吸水倍率が低下する傾向にあるため、好ましくない。
【0120】
本発明では、所定量の内部架橋剤を予め単量体水溶液に添加しておき、重合と同時に架橋反応する方法が好ましく適用される。一方、当該手法以外に、重合中や重合後に内部架橋剤を添加して後架橋する方法や、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル架橋する方法、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を用いた放射線架橋する方法等を採用することもできる。また、これらの手法を併用することもできる。
【0121】
(その他、単量体水溶液に添加される物質)
本発明において、得られる粒子状吸水剤の物性向上の観点から、下記の物質を単量体水溶液の作製時に添加することもできる。
【0122】
具体的には、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子を、好ましくは50重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下(下限は0重量%)で添加したり、炭酸塩、アゾ化合物、気泡等の発泡剤、界面活性剤、連鎖移動剤等を、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下(下限は0重量%)で添加したりすることができる。
【0123】
また、本発明において、得られる粒子状吸水剤の色調安定性(高温高湿下での長期保存時の色調安定性)又は耐尿性(ゲル劣化防止)の観点から、好ましくはキレート剤、α‐ヒドロキシカルボン酸化合物、無機還元剤、より好ましくはキレート剤を単量体水溶液の作製時に添加することもできる。
【0124】
上記キレート剤等の使用量は、粒子状吸水剤に対して、好ましくは10ppm〜5000ppm、より好ましくは10ppm〜1000ppm、更に好ましくは50ppm〜1000ppm、特に好ましくは100ppm〜1000ppmの範囲内で適宜設定される。
【0125】
なお、上記キレート剤として、具体的には米国特許第6599989号や国際公開第2008/090961号に開示されているキレート剤が、本発明に適用される。中でも、アミノカルボン酸系金属キレート剤、又は多価リン酸系化合物が好ましく使用される。
【0126】
上記物質は、単量体水溶液に添加される形態のみならず、重合途中で添加される形態でもよいし、これらの形態を併用することもできる。
【0127】
なお、親水性高分子として水溶性樹脂又は吸水性樹脂を使用する場合には、グラフト重合体又は吸水性樹脂組成物(例えば、澱粉−アクリル酸重合体、PVA−アクリル酸重合体等)が得られる。これらの重合体、吸水性樹脂組成物も本発明の範疇である。
【0128】
(単量体成分の濃度)
本工程において、単量体水溶液を作製する際に、上記の各物質が添加される。当該単量体水溶液中の単量体成分の濃度としては特に限定されないが、粒子状吸水剤の物性の観点から、好ましくは10重量%〜80重量%、より好ましくは20重量%〜75重量%、更に好ましくは30重量%〜70重量%、特に好ましくは40重量%〜60重量%の範囲内で適宜設定される。
【0129】
また、重合形態として、水溶液重合又は逆相懸濁重合を採用する場合、水以外の溶媒を必要に応じて併用することもできる。この場合、溶媒の種類は特に限定されない。
【0130】
なお、上記「単量体成分の濃度」とは、下記(式1)で求められる値であり、単量体水溶液の重量には、グラフト成分や吸水性樹脂、逆相懸濁重合における疎水性溶媒の重量は含めない。
【0131】
【数1】
(3−2)重合工程
本工程は、上記単量体水溶液の作製工程で得られる、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液を重合させて、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)を得る工程である。
【0132】
上記重合工程を行うにあたり、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤や、紫外線や電子線等の活性エネルギー線等を用いることができる。
【0133】
また、ラジカル重合開始剤を用いる場合、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸等の還元剤を併用してレドックス重合としても良いが、好ましくは、アゾ化合物や過酸化物から選ばれる熱分解性ラジカル開始剤が使用され、水溶性(25℃の水100gに対して、好ましくは1g以上、より好ましくは10g以上溶解するもの)の重合開始剤が使用される。
【0134】
上記ラジカル開始剤は、重合工程の反応系に添加されることが好ましい。上記「重合工程の反応系」は、水溶性不飽和単量体の重合が起こりうる反応系であって、含水ゲルを生じることができる反応系を意味する。それゆえ「重合工程の反応系」の構成としては、水溶性不飽和単量体を含んでいれば、特に限定されず、内部架橋剤、連鎖移動剤、又はα−ヒドロキシカルボン酸(塩)等を含んでいても良い。
【0135】
上記ラジカル重合開始剤を添加する時期としては、上記重合工程前及び/又は重合工程途中であり、重合工程後は含まれない。
【0136】
なお、本明細書中において、「重合工程前」とは、単量体の重合が開始される前を意味する。また、「重合工程途中」とは、単量体の重合が開始されてから終了するまでの期間を意味する。また、「重合工程後」とは、単量体の重合が終了した時以降を意味する。
【0137】
単量体の重合が開始したかどうかは、重合によって生じる重合体の温度上昇から判断することができる。具体的には、温度上昇が、3℃以上(好ましくは5℃以上)であれば単量体の重合が開始したと判断することができる。
【0138】
また、単量体の重合が終了したかどうかは、重合時の温度上昇がピークに到達すること、及び残存単量体の量が5重量%以下になること等から判断することができる。
【0139】
これらのラジカル重合開始剤の使用量(特に熱分解性ラジカル開始剤)は、全単量体に対して、好ましくは0.051モル%〜1.000モル%、より好ましくは0.054モル%〜0.2000モル%、更に好ましくは0.058モル%〜0.1000モル%の範囲内で適宜設定される。
【0140】
(重合形態)
本発明における上記重合工程では、バルク重合、逆相懸濁重合、又は沈澱重合を行うことも可能であるが、性能面や重合の制御の容易さから、単量体の水溶液又は水分散液を用いて水溶液重合を行うことが好ましい。かかる重合方法は、例えば、米国特許第4625001号、同第4769427号、同第4873299号、同第4093776号、同第4367323号、同第4446261号、同第4683274号、同第4690996号、同第4721647号、同第4738867号、同第4748076号、米国特許出願公開第2002/40095号等に記載されている。
【0141】
このように、本発明における重合工程では、噴霧液滴重合又は逆相懸濁重合によって粒子状含水ゲルを得てもよいが、得られる粒子状吸水剤の通液性(SFC)及び吸水速度(FSR)並びに重合制御の容易性等の観点から、水溶液重合が好適に採用される。
【0142】
当該水溶液重合は、タンク式(サイロ式)の無攪拌重合でもよいが、好ましくはニーダー重合又はベルト重合、より好ましくは連続水溶液重合、更に好ましくは高濃度連続水溶液重合、特に好ましくは高濃度・高温開始連続水溶液重合が採用される。
【0143】
なお、攪拌重合とは、含水ゲル(重合率が好ましくは10モル%以上、より好ましくは50モル%以上である含水ゲルを指す)を攪拌、特に攪拌及び細分化しながら重合することを意味する。無攪拌重合の前後において、単量体水溶液(重合率が0〜10モル%未満)を適宜攪拌してもよい。
【0144】
上記連続水溶液重合として、例えば、米国特許第6987171号、同第6710141号等に記載の連続ニーダー重合や、米国特許第4893999号、同第6241928号、米国特許出願公開第2005/215734号等に記載の連続ベルト重合が挙げられる。これらの水溶液重合によって、高い生産性で粒子状吸水剤を製造することができる。
【0145】
なお、高濃度連続水溶液重合においては、単量体濃度(固形分)を好ましくは35重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは45重量%以上(上限は飽和濃度)の範囲内で適宜設定される。また、高温開始連続水溶液重合においては、重合開始温度を好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上(上限は沸点)の範囲内で適宜設定される。高濃度・高温開始連続水溶液重合は、これらの重合を組み合わせたものである。
【0146】
上記高濃度・高温開始連続水溶液重合については、米国特許第6906159号、同第7091253号等に開示されている。当該重合方法によって、白色度の高い粒子状吸水剤が得られ、更に工業的なスケールでの生産が容易なため、好ましい。
【0147】
従って、本発明の製造方法における重合方法は、1ライン当りの生産量が多い巨大スケールでの製造装置に好ましく適用される。なお、上記生産量としては、好ましくは0.5t/hr以上、より好ましくは1t/hr以上、更に好ましくは5t/hr以上、特に好ましくは10t/hr以上の範囲内で適宜設定される。
【0148】
上記重合は、空気雰囲気下においても実施することができるが、着色防止の観点から、水蒸気、窒素又はアルゴン等の不活性ガス雰囲気(例えば、酸素濃度1容積%以下)下にて実施することが好ましい。更には単量体又は単量体を含む溶液中の溶存酸素を不活性ガスで置換(脱気)(例えば、酸素1mg/l未満)した後に、重合することが好ましい。このような脱気を行っても単量体の安定性に優れ、重合前のゲル化が起らず、より高物性で高白色の粒子状吸水剤を提供することができる。
【0149】
使用される不活性ガスの量は、モノマー全量に対して、好ましくは0.005重量%〜0.2重量%、より好ましくは0.01重量%〜0.1重量%、更に好ましくは0.015重量%〜0.5重量%の範囲内で適宜設定される。また、使用される不活性ガスとしては、窒素が好ましい。
【0150】
また、本発明における重合工程では、必要に応じて界面活性剤及び/又は分散剤を用いてもよい。界面活性剤及び/又は分散剤を用いることで、重合中の吸水性樹脂中に気泡を安定的に懸濁させることができる。また、界面活性剤及び/又は分散剤の種類又は量を適宜調節することにより、所望の物性を有する粒子状吸水剤を得ることができる。界面活性剤は非高分子界面活性剤であり、分散剤は高分子分散剤であることが好ましい。また、界面活性剤及び/又は分散剤は、重合前又は重合時のモノマー水溶液の温度が50℃以上となるよりも前の段階で添加されていることが好ましい。界面活性剤及び/又は分散剤の使用量は、種類に応じて適宜決定することができる。
【0151】
また、重合工程では、例えば、高濃度の単量体を含む単量体水溶液を用いて薄層重合を行う方法(方法1)及び減圧下にて発泡重合を行う方法(方法2)が行われてもよい。
【0152】
方法1について、高濃度の単量体水溶液を用いて薄層重合を行えば、温度を制御しやすく、その結果、含水ゲル状架橋重合体の分子量を均一にしやすく、上述した物性を有する粒子状吸水剤をより効率良く得ることができる。上記単量体水溶液における単量体の濃度は、好ましくは35重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは45重量%以上の範囲内で適宜設定される。
【0153】
また、薄層重合を行う方法としては、単量体水溶液をガラス板で挟んで重合を行う方法が挙げられる。この場合のガラス板同士の距離(即ち、単量体水溶液の層の厚さ)は、好ましくは1mm〜10mm、より好ましくは3mm〜7mmの範囲内で適宜設定される。また、重合を行う際の温度は、好ましくは40℃〜70℃、より好ましくは50℃〜60℃の範囲内で適宜設定される。
【0154】
方法2について、重合工程を減圧下で行えば、重合時の除熱が行いやすく、その結果、ポリマーの分子量を均一にしやすく、上述した物性を有する粒子状吸水剤をより効率良く得ることができる。この場合、重合工程は、密閉された容器内で行われることが好ましい。また、該密閉された容器内の圧力は、好ましくは95kPa以下、より好ましくは90kPa以下、更に好ましくは85kPa以下、特に好ましくは80kPa以下の範囲内で適宜設定される。
【0155】
(3−3)ゲル粉砕工程
本工程は、上記重合工程で得られた含水ゲルをゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル(以下、「粒子状含水ゲル」と称する)を得る、任意の工程である。
【0156】
上記重合工程で得られた含水ゲルはそのまま乾燥することもできるが、重合時又は重合後、必要に応じてゲル粉砕機(ニーダー、ミートチョッパー、カッターミル等)を用いてゲル粉砕され粒子状とされる。
【0157】
なお、上記ゲル粉砕の好ましい形態として、国際公開第2011/126079号等に開示される条件等を本発明に好ましく適用することもできる。
【0158】
(3−4)乾燥工程
本工程は、上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲルを所望する範囲の樹脂固形分まで乾燥させて、乾燥重合体を得る工程である。
【0159】
なお、上記「樹脂固形分」とは、乾燥減量(試料1gを180℃で3時間加熱した際の重量変化)から求められる値であり、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。
【0160】
本工程における乾燥方法として、特に限定されないが、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥、高温の水蒸気を利用した高湿乾燥等の乾燥方法が採用される。中でも、乾燥効率の観点から、熱風乾燥が好ましく、通気ベルト上で熱風乾燥を行うバンド乾燥がより好ましい。
【0161】
上記熱風乾燥を行う場合、熱風の風量は、好ましくは0.01m/秒〜10m/秒、より好ましくは0.1m/秒〜5m/秒の範囲内で適宜設定される。
【0162】
また、本工程における乾燥温度は、好ましくは100℃〜250℃、より好ましくは130℃〜220℃、更に好ましくは150℃〜200℃の範囲内で適宜設定される。
【0163】
上記乾燥温度を100℃以上とすることで、吸水性樹脂内部のポリマー鎖を変化させることができ、その結果として得られる粒子状吸水剤の諸物性を向上させることができる。また、上記乾燥温度を250℃以下とすることで、吸水性樹脂へのダメージを低減することができ、その結果として得られる粒子状吸水剤の水可溶分の上昇を抑制することができる。
【0164】
また、本工程における乾燥時間は、好ましくは10分〜120分、より好ましくは20分〜90分、更に好ましくは30分〜60分の範囲内で適宜設定される。
【0165】
上記乾燥時間を10分以上とすることで、吸水性樹脂内部のポリマー鎖を変化させることができ、その結果として得られる粒子状吸水剤の諸物性を向上させることができる。また、上記乾燥時間を120分以下とすることで、吸水性樹脂へのダメージを低減することができ、その結果として得られる粒子状吸水剤の水可溶分の上昇を抑制することができる。
【0166】
上記乾燥温度及び乾燥時間は、粒子状含水ゲルの表面積、含水率及び乾燥機の種類に依存し、得られる粒子状吸水剤の含水率が所望する範囲内となるように、適宜選択される。なお、上記乾燥温度は熱媒の温度(例えば、熱風乾燥の場合は熱風の温度)で規定するが、マイクロ波乾燥等、熱媒温度で規定できない乾燥方法の場合は、被乾燥物の温度で規定する。また、上記乾燥温度は、一定温度でもよく、乾燥途中で適宜変化させてもよい。
【0167】
(3−5)粉砕工程及び分級工程
本工程は、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体を粉砕(粉砕工程)し、所望する範囲の粒度に調整(分級工程)して、吸水性樹脂粉末を得る工程である。なお、粒子状吸水剤のPSD(粒度分布)が上記(2−4)の範囲を満たすように、本工程が行われる。また、本工程は、粉砕対象物が乾燥工程を経ている点で、上記(3−2)ゲル粉砕工程と異なる。
【0168】
上記乾燥重合体の粉砕時に用いられる機器(粉砕機)としては、特に限定されないが、例えば、ロールミル、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機や、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が挙げられ、必要に応じて併用される。中でも、粒度分布の制御の観点から、ロールミルが好ましい。
【0169】
また、上記粉砕後の粒度調整方法(分級方法)は、特に限定されないが、例えば、JIS標準篩(JIS Z8801−1(2000))を用いた篩分級や気流分級等が挙げられる。
【0170】
(3−6)表面架橋工程
本工程は、上述した工程を経て得られる吸水性樹脂粉末の表面層(吸水性樹脂粉末の表面から数10μmまでの部分)に、更に架橋密度の高い部分を設ける工程であり、混合工程、加熱処理工程及び冷却工程(任意)から構成されている。当該表面架橋工程において、吸水性樹脂粉末の表面でラジカル架橋や表面重合、表面架橋剤との架橋反応等が行われ、表面架橋された吸水性樹脂粉末(以下、「吸水性樹脂粒子」と称する)が得られる。
【0171】
一般的に表面架橋された吸水性樹脂は、膨潤した後に圧力をかけたとしても、その際に生じる液の戻り量が少なく、AAPやSFCを向上させることができる。
【0172】
本発明に係る粒子状吸水剤についても同様のことが言え、当該粒子状吸水剤が吸収性物品の吸収体に使用された場合、圧力が加わった際の液の戻り量(リウェット)が少なく、更に液の取込速度に優れる吸収体を得ることができるため、好ましい。
【0173】
(共有結合性表面架橋剤)
本発明で使用される表面架橋剤としては、特に限定されないが、有機又は無機の表面架橋剤が挙げられる。中でも、粒子状吸水剤の物性や表面架橋剤の取扱性の観点から、カルボキシル基と反応する有機表面架橋剤(脱水縮合性表面架橋剤)が好ましい。例えば、米国特許第7183456号に開示される1種又は2種以上の表面架橋剤が挙げられる。より具体的には、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、ハロエポキシ化合物、多価アミン化合物又はそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、オキサゾリジノン化合物、アルキレンカーボネート化合物、環状尿素化合物等が挙げられる。中でも、本発明の効果の観点から、多価アルコール化合物、アルキレンカーボネート化合物、オキサゾリジノン化合物から選択される少なくとも1種の脱水エステル反応性表面架橋剤を使用することが好ましい。
【0174】
上記表面架橋剤の使用量(複数の表面架橋剤を使用する場合はその合計の使用量)は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0.001重量部〜10重量部、より好ましくは0.01重量部〜5重量部の範囲内で適宜設定される。
【0175】
また、上記表面架橋剤は水溶液として吸水性樹脂粉末に添加することが好ましく、この場合、水の使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜20重量部、より好ましくは0.5重量部〜10重量部の範囲内で適宜設定される。更に必要に応じて、親水性有機溶媒を併用してもよく、その使用量としては、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下の範囲内で適宜設定される。なお、当該親水性有機溶媒としては、メチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;エチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。
【0176】
また、後述の「多価金属塩添加工程」で添加される多価金属塩を、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは5重量部以下の範囲内で、表面架橋剤(水溶液)に混合したり、別途、混合工程で添加したりすることもできる。
【0177】
(混合工程)
本工程は、上記吸水性樹脂粉末と上記表面架橋剤とを混合して加湿混合物を得る工程である。当該混合方法については特に限定されないが、例えば、予め表面架橋剤溶液を作製しておき、当該溶液を吸水性樹脂粉末に対して、好ましくは噴霧又は滴下して、より好ましくは噴霧して、混合する方法が挙げられる。
【0178】
上記混合を行う装置としては、特に限定されないが、好ましくは高速攪拌型混合機、より好ましくは高速攪拌型連続混合機が挙げられる。なお、当該混合機の回転数は、好ましくは100rpm〜10000rpm、より好ましくは300rpm〜2000rpmの範囲内で適宜設定される。また、混合装置における加湿混合物の滞留時間は、好ましくは180秒以内、より好ましくは0.1秒〜60秒、更に好ましくは1秒〜30秒の範囲内で適宜設定される。
【0179】
(加熱処理工程)
本工程は、上記混合工程から排出された加湿混合物を加熱して、吸水性樹脂粉末の表面上で架橋反応を起こさせる工程である。
【0180】
上記架橋反応を行う装置としては、特に限定されないが、好ましくはパドルドライヤーが挙げられる。また、上記架橋反応における加熱処理時の加熱温度は、使用される表面架橋剤の種類に応じて適宜設定されるが、好ましくは40℃〜250℃、より好ましくは150℃〜250℃の範囲内で適宜設定される。
【0181】
上記加熱処理温度が40℃以上であれば、AAPやSFC等の吸水特性をより改善することができる。また、上記加熱処理温度が250℃以下であれば、吸水性樹脂粉末の劣化及びそれに伴う各種物性の低下を防ぐことができる。
【0182】
また、上記架橋反応における加熱処理時の加熱処理時間は、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは5分〜1時間の範囲内で適宜設定される。
【0183】
(冷却工程)
本工程は、上記加熱処理工程後に必要に応じて設置される任意の工程であり、加熱処理された混合物を所定の温度まで強制冷却する工程である。
【0184】
上記冷却を行う装置としては、特に限定されないが、加熱処理工程と同一仕様の装置を使用することが好ましく、パドルドライヤーがより好ましい。熱媒を冷媒に変更することで、冷却装置として使用できるためである。なお、上記加熱処理された混合物は、該冷却工程において、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜70℃の範囲に、必要に応じて強制冷却される。なお、冷却工程以降で分級工程(「整粒工程」と称する場合もある)を行う場合には、上記分級工程で述べた条件を満たすように、冷却することが好ましい。また、加熱処理された混合物を便宜上、「吸水性樹脂粒子」と称する。
【0185】
(その他の表面架橋)
上記の表面架橋剤を用いる表面架橋に代わって、ラジカル重合開始剤を用いる表面架橋方法(米国特許第4783510号、国際公開第2006/062258号)、又は吸水性樹脂の表面で単量体を重合する表面架橋方法(米国出願公開第2005/048221号、同第2009/0239966号、国際公開第2009/048160号)を用いることもできる。
【0186】
(3−7)多価金属塩添加工程
本工程は、上記表面架橋工程を経て得られた吸水性樹脂粒子に、多価金属塩を添加する工程である。本工程は、上記表面架橋時又は表面架橋後に行うことが好ましい。吸水性樹脂粒子に、多価金属塩、好ましくは3価の水溶性多価金属塩を添加することで、AAPを大きく低下させることなく、SFCを向上させた粒子状吸水剤が得られるため、好ましい。
【0187】
上記多価金属塩は、水溶液として添加することが好ましい。その場合、当該水溶液中の多価金属塩の濃度としては、吸水性樹脂内部への浸透、拡散を抑制するため、飽和濃度に対して、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上(上限は飽和濃度)の範囲内で適宜設定される。
【0188】
また、上記多価金属塩の水溶液中に、上述した親水性有機溶媒や、乳酸等の有機酸又はその塩を共存させることもできる。この場合、少なくとも多価金属塩の吸水性樹脂内部への浸透、拡散が抑制され、混合性も向上するため、好ましい。
【0189】
本工程で用いられる多価金属塩としては、例えば、Zn、Be、Mg、Ca、Sr、Al、Fe、Mn、Ti、Zr、Ce、Ru、Y、Cr等から選ばれる金属の硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物(塩化物等)等が挙げられる。更に、特開2005−11317号に開示されている多価金属塩についても、本発明に適用される。
【0190】
上述した多価金属塩の中でも、3価の水溶性多価金属塩を用いることが最も好ましい。当該3価の水溶性多価金属塩としては、例えば、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、アルミン酸ナトリウム、塩化鉄(III)、塩化セリウム(III)、塩化ルテニウム(III)、塩化イットリウム(III)、塩化クロム(III)等が挙げられる。
【0191】
また、尿等の被吸収液の溶解性の観点から、結晶水を有する塩を使用することが好ましい。中でも、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、ビス硫酸カリウムアルミニウム、ビス硫酸ナトリウムアルミニウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、アルミン酸ナトリウム等のアルミニウム化合物が好ましく、硫酸アルミニウムがより好ましく、硫酸アルミニウムの水溶液が更に好ましい。なお、硫酸アルミニウム水溶液を使用する場合、硫酸アルミニウムの濃度が飽和濃度の90%以上であることが特に好ましい。また、これらは1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0192】
上記多価金属塩の添加量は、上記吸水性樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは0.001重量%〜5重量%、より好ましくは0.01重量%〜1重量%の範囲内で適宜設定される。
【0193】
〔4〕粒子状吸水剤の用途
本発明に係る粒子状吸水剤の用途は、特に限定されないが、好ましくは紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パット等の吸収性物品の吸収体用途が挙げられる。中でも、紙オムツ1枚あたりの吸水性樹脂の使用量が多い「高濃度オムツ」に使用される場合、優れた性能を発揮する。
【0194】
なお、上記「吸収体」とは、少なくとも本発明に係る粒子状吸水剤を含み、その他の吸収性材料(例えば、パルプ繊維等の繊維状物)を任意に含む、上記吸収性物品の構成部品となるものをいう。
【0195】
上記吸収性物品における、吸収体中の吸水性樹脂の含有量(コア濃度;粒子状吸水剤と繊維状物との合計量に対する当該粒子状吸水剤の含有量)は、好ましくは30重量%〜100重量%、より好ましくは40重量%〜100重量%、更に好ましくは50重量%〜100重量%、更により好ましくは60重量%〜100重量%、特に好ましくは70重量%〜100重量%、最も好ましくは75重量%〜95重量%の範囲内で適宜設定される。
【0196】
〔5〕本発明の態様
すなわち、本発明は以下の態様であり得る。
1.ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とし、表面架橋されていると共に、下記(1)〜(3)の物性を満たす、粒子状吸水剤。
(1)粒子径が150μm以上850μm未満である粒子の割合;90重量%以上
(2)粒子径が500μm以上600μm未満である粒子の弾性率指数(EMI);5500以上
(3)Rec.CRC/CRCで規定されるリカバリー率;1.05〜1.20
2.上記(3)におけるリカバリー率が1.05〜1.16である、1の粒子状吸水剤。
3.上記(2)における弾性率指数(EMI)が6000〜9500である、1又は2の粒子状吸水剤。
4.AAP(加圧下吸水倍率)が20g/g以上である、1〜3の何れか1つの粒子状吸水剤。
5.SFC(食塩水流れ誘導性)が10×10−7・cm・s・g−1以上である、1〜4の何れか1つの粒子状吸水剤。
6.ボルテックス法による吸水時間が42秒以下である、1〜5の何れか1つの粒子状吸水剤。
7.FSR(自由膨潤速度)が0.28g/(g・s)以上である、1〜6の何れか1つの粒子状吸水剤。
8.共有結合性表面架橋剤によって表面架橋されている、1〜7の何れか1つの粒子状吸水剤。
9.粒子径が150μm未満である粒子の割合が5重量%以下である、1〜8の何れか1つの粒子状吸水剤。
10.下記(4)の物性を更に満たす、1〜9の何れか1つの粒子状吸水剤。
(4)粒子径が425μm以上500μm未満である粒子の弾性率指数(EMI);4500以上
11.下記(5)の物性を更に満たす、10の粒子状吸水剤。
(5)粒子径が300μm以上425μm未満である粒子の弾性率指数(EMI);3500以上
12.(a)粒子径が150μm以上300μm未満である粒子の割合が5重量%〜50重量%、
(b)粒子径が300μm以上425μm未満である粒子の割合が10重量%〜60重量%、
(c)粒子径が425μm以上500μm未満である粒子の割合が5重量%〜50重量%、
(d)粒子径が500μm以上600μm未満である粒子の割合が5重量%〜50重量%、
(e)粒子径が600μm以上850μm未満である粒子の割合が0.1重量%〜50重量%
であり、上記(a)〜(e)にそれぞれ示す粒子径の粒子の割合の合計が90重量%〜100重量%である、1〜11の何れか1つの粒子状吸水剤。
13.重量平均粒子径(D50)が300μm〜500μmであり、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45であることを特徴とする1〜12の何れか1つの粒子状吸水剤。
14.1〜13の何れか1つの粒子状吸水剤を含有する、吸収体。
15.1〜13の何れか1つの粒子状吸水剤を含有する、吸収性物品。
【0197】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0198】
以下、実施例に従って本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されて解釈されるものではない。また、本発明の特許請求の範囲又は実施例に記載の諸物性は、特に記載のない限り、室温(20℃〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、EDANA法及び以下の測定法に従って求めた。
【0199】
更に、実施例及び比較例に提示される電気機器は、200V又は100V、60Hzの電源を使用した。なお、便宜上、「リットル」を「L」、「重量%」を「wt%」と記載することがある。また、粒子状吸水剤の物性測定や実施例で用いられる純水は、特に断りのない限り、ISO03696 Grade2相当のものを使用した。
【0200】
[粒子状吸水剤の物性測定]
以下、本発明に係る粒子状吸水剤について、その物性の測定方法を説明する。なお、測定対象が、粒子状吸水剤以外である場合、例えば、吸水性樹脂粉末である場合は、物性測定の説明中の「粒子状吸水剤」を「吸水性樹脂粉末」に読み替えて適用する。
【0201】
(1)CRC(遠心分離機保持容量)
本発明に係る粒子状吸水剤のCRCは、EDANA法(ERT441.2−02)に準拠して測定した。
【0202】
(2)AAP(加圧下吸水倍率)
本発明に係る粒子状吸水剤のAAPは、EDANA法(ERT442.2−02)に準拠して、装置(図1)を利用して、測定した。なお、荷重条件を4.83kPa(0.7psi)に変更して測定した。
【0203】
(3)Ext(水可溶分)
本発明に係る粒子状吸水剤のExtは、EDANA法(ERT470.2−02)に準拠して測定した。
【0204】
(4)PSD(粒度分布)、D50(重量平均粒子径)、σζ(粒度分布の対数標準偏差)
本発明に係る粒子状吸水剤のPSDは、EDANA法(ERT420.2−02)に準拠して測定した。また、D50及びσζは、米国特許第7638570号に記載された「(3)Mass−Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」に準拠して測定した。
【0205】
(5)SFC(食塩水流れ誘導性)
本発明に係る粒子状吸水剤のSFCは、米国特許第5669894号に開示された測定方法に準拠して、装置(図2)を利用して、測定した。
【0206】
(6)FSR(自由膨潤速度)
本発明に係る粒子状吸水剤のFSRは、国際公開第2009/016055号に開示された測定方法に準拠して測定した。
【0207】
(7)Vortex(吸水時間)
本発明に係る粒子状吸水剤のVortexは、以下の手順により測定した。
【0208】
即ち、0.90重量%に予め調整した塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)1.000重量部に、食品添加物である食用青色1号(CAS番号:3844−45−9)0.02重量部を添加して青色に着色し、生理食塩水の液温を30℃に調整した。
【0209】
次に、上記、青色に着色した生理食塩水50mlを容量100mlのビーカーに計り取り、長さ40mm、太さ8mmの円筒型テフロン(登録商標)製マグネット式撹拌子を用いて、600rpmの条件下で撹拌しながら、粒子状吸水剤2.0gを投入した。
【0210】
なお、吸水時間を測定する際の始点、終点については、JIS K 7224(1996年度)「高吸水性樹脂の吸水速度試験方法 解説」に記載されている基準に準じた。
【0211】
(8)Rec.CRC(リカバリーCRC)
本発明に係る粒子状吸水剤のRec.CRCは、以下の手順により測定した。
【0212】
即ち、粒子状吸水剤0.100gを秤量し、上記(1)CRCの測定で使用したものと同じ材質の不織布製の袋(80mm×100mm)に均等に入れヒートシールした。その後、25℃±3℃に調温した純水中に浸漬した。90分経過後、上記粒子状吸水剤が入った袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製遠心分離機/形式;H‐122)を用いて、250Gで3分間、水切りを行った。
【0213】
続いて、上記水切りした粒子状吸水剤が入った袋を、25℃±3℃に調温した0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液1000ml中に浸漬した。1時間経過後、当該粒子状吸水剤が入った袋を引き上げ、別の0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液500ml中に浸漬した。合計の浸漬時間が3時間となるまで、当該操作を繰り返し行った。その後、粒子状吸水剤が入った袋を引き上げ、上記遠心分離機を用いて、250Gで3分間、水切りを行った。続いて、粒子状吸水剤が入った袋の重量W3(g)を測定した。
【0214】
同様の操作を、粒子状吸水剤を入れずに行い、そのときの袋の重量W4(g)を測定した。下記(式2)にしたがって、Rec.CRCを算出した。
【0215】
【数2】
(9)Rec.AAP(リカバリーAAP)
本発明に係る粒子状吸水剤のRec.AAPは、上記(2)AAPの測定で用いる装置(図1)を利用して、以下の手順により測定した。
【0216】
即ち、図1に示したステンレス製400メッシュの金網102が貼り付けられた直径60mmのプラスチック製円筒セル101に粒子状吸水剤0.900gを均一に散布し、プラスチック製ピストン104及び錘105を載せ、当該測定装置の重量Wa(g)を測定した。
【0217】
続いて、上記測定装置を純水400mlが入ったプラスチック製容器(縦9cm×横14cm×高さ5cm)中に1時間静置させた。当該操作によって、粒子状吸水剤は1時間、純水中に浸漬したことになる。
【0218】
その後、錘105を載せたまま円筒セル101をプラスチック製容器から取り出し、エタノール(特級)100mlが入った別のプラスチック製容器(縦9cm×横14cm×高さ5cm)中に移し替え、12時間静置させた。当該操作によって、粒子状吸水剤は12時間、エタノール中に浸漬したことになる。
【0219】
上述したエタノール浸漬後、錘105を載せたまま円筒セル101をプラスチック製容器から取り出し、直径90mmの濾紙(ADVANTEC東洋(株)、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を20枚重ねたものの上に移動させ、3日間静置した。
【0220】
次に、金属バット106内にガラスフィルター107を置き、0.9%塩化ナトリウム水溶液109をガラスフィルターの高さまで注いだ。ガラスフィルター107上に濾紙108を置き、その上に上述した純水での膨潤、エタノールでの収縮を経た粒子状吸水剤の入った円筒セル101を錘105を載せたまま置き、通常のAAP測定方法と同じ手法にて、1時間0.9%塩化ナトリウム水溶液で膨潤させた。測定終了後、測定装置の重量Wb(g)を測定した。
【0221】
上記操作で得られた上記Wa、Wbから下記(式3)にしたがって、Rec.AAPを算出した。
【0222】
【数3】
(10)Rec.SFC(リカバリーSFC)
本発明に係る粒子状吸水剤のRec.SFCは、上記(5)SFCの測定で用いる装置(図2)を利用して、以下の手順により測定した。
【0223】
即ち、図2に示したステンレス製400メッシュの金網252が貼り付けられた直径60mmのプラスチック製円筒セル251に、粒子状吸水剤0.900gを均等に散布し、底面にステンレス製400メッシュの金網255が貼り付けられ、直径9mmの穴257が均一に21個開けられた直径59mmのプラスチック製ピストン256を載せた。その後、円筒セル251上にピストン256の支柱が通る穴及び樹脂製配管204が通る穴のあけられた蓋260を載せ、ピストン下面に2.07kPaの圧力がかかるように重さを調整した錘261をピストン256上に載せた。当該測定装置を純水400mlが入ったプラスチック製容器(縦9cm×横14cm×高さ5cm)中に1時間浸漬させた。その後、エタノール(特級)100mlを入れたプラスチック製容器(縦9cm×横14cm×高さ5cm)に、測定装置を移し替え、12時間静置させた。
【0224】
エタノール中で静置後、上記測定装置をプラスチック製容器から取り出し、直径90mmの濾紙(ADVANTEC東洋(株)、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を20枚重ねたものの上に移動させ、3日間静置した。その後、金属バット262内にガラスフィルター263を置き、下記組成の人工尿264をガラスフィルターの高さまで注いだ。ガラスフィルター263上に上述した純水での膨潤、エタノールでの収縮を経た粒子状吸水剤の入った円筒セル251を錘261を載せたまま置き、1時間膨潤させた。
【0225】
なお、上記人工尿は、塩化カルシウム2水和物0.25g、塩化カリウム2.0g、塩化マグネシウム6水和物0.50g、硫酸ナトリウム2.0g、リン酸2水素アンモニウム0.85g、リン酸水素2アンモニウム0.15g及び純水994.25gを混合したものを用いた。
【0226】
上記人工尿での膨潤後、支持台253上に測定装置を置き、樹脂製配管204を蓋260から円筒セル251内部に差し込んだ。樹脂製配管204は直径5mmのガラス管202が貫通したゴム栓でふさがれた容器201と繋がっており、容器201中には0.69%塩化ナトリウム水溶液203が満たされている。また、支持台253は、円筒セル251下面とガラス管202下部の高低差が5cmになるように調整してあり、コック205を開くと円筒セル251の下面から高さ5cmまで0.69%塩化ナトリウム水溶液203が注がれるように調整してある。樹脂製配管204を円筒セル251中に差し込んだ後、コック205を開けて0.69%塩化ナトリウム水溶液を注ぎ、通常のSFCと同様にRec.SFCを測定した。
【0227】
(11)Rec.CRC/CRC(リカバリー率)
本発明に係る粒子状吸水剤のRec.CRC/CRCは、上記(1)に記載された手法により求めたCRC、及び上記(8)に記載された手法により求めたRec.CRCから、下記(式4)に基づいて、算出した。
【0228】
【数4】
(12)EMI(弾性率指数)
[弾性率]
(手順1.粒子状吸水剤の分級)
目開きが710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、150μmである6つのJIS標準篩(THE IIDA TESTING SIEVE;径8cm)を用いて、粒子状吸水剤10gを分級した。分級は、振動分級機(IIDA SIEVE SHAKER/Type;ES−65型、回転数;60Hz、230rpm、衝撃数;60Hz、130rpm/SER.No.0501)で5分間篩い分けることで実施した。
【0229】
当該手順1によって、粒度別に分級された粒子状吸水剤を得た。なお、例えば、目開き500μmのJIS標準篩上に残存している粒子状吸水剤は、500μm以上600μm未満の粒子径を有していることになる。
【0230】
(手順2.粒子状吸水剤の膨潤)
上記手順1で得られた粒度別に分級された粒子状吸水剤について、下記(式5)に従って算出して得られた量(添加量)を、容量10mlのプラスチック製容器に入れ、純水8.0gを加えて16時間浸漬させて膨潤した。
【0231】
【数5】
なお、上記(式5)は、膨潤後のゲル粒子の重量が2.0gとなる量を算出する式であり、(式5)中のCRCdwは、純水で膨潤させた際のCRC(遠心分離機保持容量)のことである。
【0232】
また、上記CRCdwは、上記(1)CRCの測定において、0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液の代わりに純水を使用し、試料量を0.2gから0.05gに、浸漬時間を30分間から16時間に、それぞれ変更して測定することで求められる。
【0233】
(手順3.弾性率の測定)
上記手順2で得られた膨潤した粒子状吸水剤(以下、「膨潤ゲル」と称する)について、レオメーター(アントンパール社製;MCR301)(図4参照)を用いて、当該膨潤ゲルの弾性率を測定した。以下、図4を用いて、測定方法を詳細に説明する。
【0234】
先ず、レオメーター300のディッシュ301(内径;51mm、深さ;10mm/アルミニウム製)に、上記手順2で得られた膨潤ゲル302を膨潤液(純水)ごと投入し、当該膨潤ゲル302がディッシュ301内で均等に配置するようにならした。なお、ディッシュ301はレオメーター300に固定されており、レオメーター300及びディッシュ301は厳密に水平となるように設置されている。
【0235】
続いて、回転軸304が垂直に設置されたパラレルプレート303(直径;50mm/アルミニウム製)をディッシュ301に嵌入した後、当該回転軸304を図4の矢印方向に回転させて、膨潤ゲル302に振動を与えた。以下の測定条件にて貯蔵弾性率を測定した。
【0236】
<測定条件>
測定モード ;振動(動的)測定
歪み(strain);0.02%
角周波数 ;10rad/s
測定開始時 ;パラレルプレート52が膨潤ゲル51に接触した時点
垂直荷重 ;10N〜40N/非連続的に荷重
測定時間が100秒経過するごとに5Nずつ増加させる
測定間隔 ;5秒
測定点数 ;20点×7荷重条件
測定時間 ;700秒(=5秒×20点×7荷重条件)。
【0237】
上記測定を、手順1で得られた各粒度の粒子状吸水剤に対して行った。なお、上記測定で使用するディッシュ301及びパラレルプレート303は、毎回新品を使用するか、又は、使用後十分に洗浄し、乾燥したものを磨きクロス(トラスコ中山株式会社製、基材;綿、研磨剤;A砥材(粒度;#15000)、ワックス入り)で磨いてから再度洗浄したものを使用した。
【0238】
上記測定で得られた貯蔵弾性率のうち、測定時間600秒〜700秒(荷重としては40N)で得られる計20点の測定値について、その相加平均値を本発明の弾性率G’(単位;Pa)とした。
【0239】
[弾性率指数(EMI;Elastic Modulus Index)の算出]
上記CRC、CRCdw及び弾性率の値を用いて、下記(式6)〜(式14)に基づいて、弾性率指数(EMI)を算出した。当該弾性率指数は、弾性率G’を膨潤ゲルの理論表面積及びCRCで補正した値であり、粒子状吸水剤の性能を判断する指標となる値である。以下、弾性率指数をEMIと略記する。
【0240】
【数6】
上記(式6)中、「CRC」は、上記弾性率の測定における手順1を行う前の粒子状吸水剤について測定した値であり、その測定方法は(1)に記載した通りである。また、「膨潤ゲル」は、上記弾性率の測定における手順2で得られるものである。
【0241】
また、EMIの算出に必要となる数値(A)〜(I)は、下記(式7)〜(式14)に基づいて算出される。
【0242】
【数7】
【0243】
【数8】
【0244】
【数9】
【0245】
【数10】
【0246】
【数11】
【0247】
【数12】
【0248】
【数13】
【0249】
【数14】
(13)拡散吸収時間
本発明に係る粒子状吸水剤の拡散吸収時間は、拡散吸収時間測定装置(図5および図6)を利用して、以下に記載する方法によって、拡散吸収時間[sec]を測定した。測定には、図5に外観の概略を示す拡散吸収時間測定装置を用いた。
【0250】
まず、内寸が横401mm、縦151mm、高さ30mm、外寸が横411mm、縦161mm、高さ35mmのアクリル樹脂製トレー401の中央部に、両端からそれぞれ50mmあけて、幅10mm、長さ300mmの両面テープ(ニチバン株式会社製、両面テープ ナイスタックNW−10)402を横方向のそれぞれの内壁に沿って貼り付けた。これらの両面テープ402上に、厚み0.1mm、横300mm、縦150mmのティッシュペーパー(日本製紙クレシア製 キムワイプ L−100を上記寸法に切断した物)403を皺のないように貼り付けた。
【0251】
次に、木材粉砕パルプ2.7gを超音波加湿装置(株式会社ニッポー製NP−408;霧化能力600g/hr)を用いて、5秒間ミストを噴霧して加湿した。当該加湿したパルプと粒子状吸水剤13.5g±0.010gとをフードプロセッサー(Panasonic製MK−K48P)に入れ、5秒間粉砕、混合し吸収体を得た。なお、パルプと粒子状吸水剤との混合が均等でない場合は、混合時間を延長した。
【0252】
上記操作で得られた吸収体を、ティッシュペーパー403上で、アクリル樹脂製トレー401の横方向のそれぞれの内壁から15mm内側の部分、横300mm、縦120mmの範囲均一に敷き詰めた。なお、散布前には静電気が発生しないようにアクリル樹脂製トレー401の壁面に静電気防止処置を行った。
【0253】
散布した吸収体404の上にトップシート405を載置した。トップシート405の位置は、アクリル樹脂製トレー401の内壁からの距離が横方向で左右同等、縦方向で上下同等になるように配置した。
【0254】
トップシート405には、ユニ・チャーム株式会社製、商品名マミーポコテープタイプ、Lサイズ(2014年6月に日本にて購入、パッケージ底面の番号:404088043)から取り出したシートを使用した。取り出したシートのサイズは縦14cm、横39cm、重さは3.3g〜3.6gであった。接着剤によって、オムツ中のパルプなどが付着しているため、十分に除去してから使用した。
【0255】
トップシート405の上に、横390mm、縦90mm、厚み0.63mmのサイズの金網406(JIS金網、ステンレス製、20メッシュ)を載置した。この金網406の上にさらに、中央部に内径30mmの円筒形の投入孔407を有するアクリル樹脂製の上蓋408(横400mm、縦150mm、厚み20mm、円筒部の高さ100mm)を載置した。
【0256】
図6は拡散吸収時間の測定に用いる測定装置の上蓋及びトレーの外観を示す図であり、(a)は上蓋の上面図であり、(b)は上蓋の側面図であり、(c)はトレーの上面図であり、(d)はトレーの側面図である。
【0257】
図6の(a)において、aは投入孔407の内径、b及びcはそれぞれ上蓋408の横及び縦の寸法を表す。図6の(b)において、dは投入孔407の円筒部の高さ、eは上蓋408の厚みに対応する。
【0258】
図6の(c)は、アクリル樹脂製トレー401におけるティッシュペーパー403の位置関係を示している。図6の(c)において、f及びgはティッシュペーパー403が縦方向のそれぞれの内壁から50.5mm内側の部分に位置することを示し、hはティッシュペーパー403の横の寸法(300mm)を示している。iはアクリル樹脂製トレー401の横の内寸(401mm)、jはアクリル樹脂製トレー401の縦の内寸及びティッシュペーパー403の縦の寸法(151mm)を示している。kはアクリル樹脂製トレー401の横方向における内寸と外寸との差(5mm)を示している。lはアクリル樹脂製トレー401の縦方向における内寸と外寸との差(5mm)を示している。
【0259】
また、図6の(d)において、mはアクリル樹脂製トレー401の横の外寸(411mm)を示し、nはアクリル樹脂製トレー401の高さ(35mm)を示す。
【0260】
この上蓋408の上にさらに、吸収体404に均等に荷重がかかるように錘409を載置した。この際、上記金網406、アクリル樹脂製の上蓋408及び錘409の総重量が7485g、又は22770gになるように錘409の重さなどを調整した(荷重の圧力は吸収体の設置面積に対しては2.07kPa、6.21kPaとなる)。
【0261】
拡散吸収時間測定装置400の投入孔407から37±0.5℃に温度を調整した0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液(好ましくは、1000gに対して0.04gの青色1号で着色しても良い)75gを5秒間で投入した。投入された塩化ナトリウム水溶液は金網406を透過しながら金網406上を拡散し、吸収体404によって吸収された。金網406上のメッシュの目開きの間に保持された液がすべて吸収された時間を1回目の拡散吸収時間[sec]とした。
【0262】
続いて、1回目の上記水溶液の投入開始から10分後に、2回目の上記水溶液の投入を行い、金網406のメッシュの目開きの間に保持された水溶液が全て吸収された時間を2回目の拡散吸収時間[sec]とした。同様に、10分間隔で上記水溶液の投入を行い、金網406のメッシュの目開きの間に保持された水溶液が全て吸収された時間を3回目の拡散吸収時間[sec]とした。
【0263】
[実施例1]
内径50mm、容量120mLのポリプロピレン製容器にアクリル酸23.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量(Mw)523)0.135g(0.080モル%)、2.0重量%のジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液0.071g、イオン交換水22.2g及び48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液9.6gを混合し、溶液(A)を作製した。
【0264】
45℃に調温した上記溶液(A)を、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液9.8gを開放系で約5秒間かけて加えて混合し、単量体水溶液(1)を作製した。なお、該混合の過程で発生した中和熱及び溶解熱によって、該単量体水溶液(1)の液温が約80℃まで上昇した。
【0265】
続いて、得られた単量体水溶液(1)の温度が78℃になった時点で、4.5重量%の過硫酸ナトリウム水溶液1.01gを加え、約3秒間攪拌した。その後、得られた反応液(1)をステンレス製シャーレ内に開放系で注いだ。
【0266】
上記ステンレス製シャーレのサイズは、内径88mm及び高さ20mmであった。なお、上記ステンレス製シャーレの表面温度を、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000、(株)井内盛栄堂製)を用いて、予め50℃まで加熱した。
【0267】
上記反応液(1)の供給後、速やかに、排気口を有するガラス製容器で上記ステンレス製シャーレを覆い、ケース内の圧力がゲージ圧で85kPaになるように真空ポンプで吸引した。なお、ケース外の圧力は101.3kPa(常圧)であった。
【0268】
上記反応液(1)を上記ステンレス製シャーレに注いだ後、しばらくして重合が開始した。該重合は、水蒸気を発生しながら上方に向かって四方八方に膨張発泡しながら進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了した。
【0269】
その後3分間、重合容器(すなわち、ガラス製容器でステンレス製シャーレを覆ったもの)内に保持した後、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)(1)を取り出した。
【0270】
得られた含水ゲル(1)を、以下の仕様を有するスクリュー押出機(ミートチョッパー)を用いてゲル粉砕した。当該スクリュー押出機は、その先端部に多孔板を備え、該多孔板の直径は82mm、孔径8.0mm、孔数33個、厚み9.5mmであった。また、ゲル粉砕の条件として、含水ゲル(1)の投入量は約360g/分、ゲル投入と平行して90℃の脱イオン水を50g/分で添加しながら、ゲル粉砕を行った。
【0271】
上記ゲル粉砕された含水ゲル(1)を目開き850μmのステンレス製金網上に広げ、190℃で30分間熱風乾燥を行った。続いて、該乾燥操作で得られた乾燥重合体(1)をロールミル(有限会社井ノ口技研社製、WML型ロール粉砕機)で粉砕した後、目開き710μm及び目開き175μmのJIS標準篩を用いて分級した。
【0272】
上記の操作により固形分96.4重量%、重量平均粒子径(D50)395μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(1)を得た。吸水性樹脂粉末(1)のCRC(遠心分離機保持容量)は38.6g/g、Ext(水可溶分)は10.8重量%、粒子径が150μm未満である粒子の割合は1.2重量%であった。
【0273】
得られた吸水性樹脂粉末(1)100重量部に対して、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部、純水6.0重量部及びポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)0.001重量部(吸水性樹脂粉末に対して10ppm)からなる表面架橋剤溶液(1)を均一に混合した。
【0274】
その後、得られた加湿混合物(1)を密閉容器に入れて、80℃で6時間保温した後、212℃で35分間程度、得られる吸水性樹脂粒子のCRCが26.7g/g〜27.7g/gの範囲内になるように加熱処理した。
【0275】
上記加熱処理後、得られた吸水性樹脂粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1)を得た。
【0276】
上記表面架橋された吸水性樹脂粒子(1)の100重量部に対して、27重量%の硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)1重量部、60重量%の乳酸ナトリウム水溶液0.3重量部及び1,2−プロピレングリコール0.025重量部からなる混合液1.325重量部添加した。
【0277】
上記添加後、無風条件下、60℃で30分間にわたって乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、解砕された粒子30gを直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に加え、直径6mmのガラスビーズ10gを加えペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488、装置詳細は特開平9−235378号公報に開示されている)に取り付け、800cycle/min(CPM)で10分間、振盪した。
【0278】
10分間の振盪後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去し、粒子状吸水剤(1)を得た。
【0279】
上記得られた粒子状吸水剤(1)について、「Rec.CRC/CRC」、「Rec.AAP」、「Rec.SFC」及び「EMI」を測定、算出した。その結果を表1に示す。また、粒度別の弾性率測定結果を表2に示す。
【0280】
[実施例2]
実施例1において、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量(Mw)523)の量を0.135g(0.080モル%)から0.101g(0.060モル%)に変更し、得られる吸水性樹脂粒子のCRCが29.5g/g〜30.5g/gの範囲内となるように加熱処理を行った以外は、実施例1と同様の操作を行って、粒子状吸水剤(2)を得た。
【0281】
上記得られた粒子状吸水剤(2)について、「Rec.CRC/CRC」、「Rec.AAP」、「Rec.SFC」及び「EMI」を測定、算出した。その結果を表1に示す。また、粒度別の弾性率測定結果を表3に示す。
【0282】
[比較例1]
実施例1において、ケース内の圧力を常圧(101.3kPa)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較粒子状吸水剤(1)を得た。
【0283】
上記得られた比較粒子状吸水剤(1)について、「Rec.CRC/CRC」、「Rec.AAP」、「Rec.SFC」及び「EMI」を測定、算出した。その結果を表1に示す。また、粒度別の弾性率測定結果を表4に示す。
【0284】
[比較例2]
実施例1において、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量(Mw)523)の量を0.135g(0.080モル%)から0.338g(0.200モル%)に変更し、更に表面処理工程を行わなかった以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較粒子状吸水剤(2)を得た。
【0285】
上記得られた比較粒子状吸水剤(2)について、「Rec.CRC/CRC」、「Rec.AAP」、「Rec.SFC」及び「EMI」を測定、算出した。その結果を表1に示す。また、粒度別の弾性率測定結果を表5に示す。
【0286】
[比較例3]
2013年5月に日本で購入した紙オムツ(プロクター・アンド・ギャンブル社製:商品名「Pampers さらさらケアパンツ」)から吸水性樹脂を取り出し、比較粒子状吸水剤(3)とした。
【0287】
上記得られた比較粒子状吸水剤(3)について、「Rec.CRC/CRC」、「Rec.AAP」、「Rec.SFC」及び「EMI」を測定、算出した。その結果を表1に示す。また、粒度別の弾性率測定結果を表6に示す。
【0288】
[比較例4]
2014年12月にパキスタンで購入した紙オムツ(オンテックス社製:商品名「Canbebe」)から吸水性樹脂を取り出し、比較粒子状吸水剤(4)とした。
【0289】
上記得られた比較粒子状吸水剤(4)について、「Rec.CRC/CRC」、「Rec.AAP」、「Rec.SFC」及び「EMI」を測定、算出した。その結果を表1に示す。また、粒度別の弾性率測定結果を表7に示す。
【0290】
[比較例5]
2013年6月にベルギーで購入した紙オムツ(プロクター・アンド・ギャンブル社製:商品名「Pampers Easy Up Pants」、サイズ4Maxi)から吸水性樹脂を取り出し、比較粒子状吸水剤(5)とした。
【0291】
上記得られた比較粒子状吸水剤(5)について、「Rec.CRC/CRC」、「Rec.AAP」、「Rec.SFC」及び「EMI」を測定、算出した。その結果を表1に示す。また、粒度別の弾性率測定結果を表8に示す。
【0292】
[比較例6]
2013年2月にポーランドで購入した紙オムツ(プロクター・アンド・ギャンブル社製:商品名「Pampers Cruisers」、サイズ4Maxi)から吸水性樹脂を取り出し、比較粒子状吸水剤(6)とした。
【0293】
上記得られた比較粒子状吸水剤(6)について、「Rec.CRC/CRC」、「Rec.AAP」、「Rec.SFC」及び「EMI」を測定、算出した。その結果を表1に示す。また、粒度別の弾性率測定結果を表9に示す。
【0294】
[比較例7]
2011年10月にインドネシアで購入した紙オムツ(ユニ・チャーム社製:商品名「Mamy Poko Pants」、サイズL)から吸水性樹脂を取り出し、比較粒子状吸水剤(7)とした。
【0295】
上記得られた比較粒子状吸水剤(7)について、「Rec.CRC/CRC」、「Rec.AAP」、「Rec.SFC」及び「EMI」を測定、算出した。その結果を表1に示す。また、粒度別の弾性率測定結果を表10に示す。
【0296】
[比較例8]
2013年4月にトルコで購入した紙オムツ(キンバリー・クラーク社製:商品名「HUGGIES」、サイズ4Maxi)から吸水性樹脂を取り出し、比較粒子状吸水剤(8)とした。
【0297】
上記得られた比較粒子状吸水剤(8)について、「Rec.CRC/CRC」、「Rec.AAP」、「Rec.SFC」及び「EMI」を測定、算出した。その結果を表1に示す。また、粒度別の弾性率測定結果を表11に示す。
【0298】
[比較例9]
実施例1において、得られた加湿混合物(1)を80℃で6時間保温せずに速やかに212℃で35分間程度、得られる吸水性樹脂粒子のCRCが26.7g/g〜27.7g/gの範囲内になるように加熱処理した以外は実施例1と同様の操作を行って、比較粒子状吸水剤(9)を得た。上記得られた比較粒子状吸水剤(9)について、「Rec.CRC/CRC」、「Rec.AAP」、「Rec.SFC」及び「EMI」を測定、算出した。その結果を表1に示す。また、粒度別の弾性率測定結果を表12に示す。
【0299】
[実施例3]
実施例1で得られた粒子状吸水剤(1)を用いて拡散吸収時間を測定した。測定結果を表13に示す。
【0300】
[比較例10]
比較例1で得られた比較粒子状吸水剤(1)を用いて拡散吸収時間を測定した。測定結果を表13に示す。
【0301】
[比較例11]
比較例9で得られた比較粒子状吸水剤(9)を用いて拡散吸収時間を測定した。測定結果を表13に示す。
【0302】
【表1】
【0303】
【表2】
【0304】
【表3】
【0305】
【表4】
【0306】
【表5】
【0307】
【表6】
【0308】
【表7】
【0309】
【表8】
【0310】
【表9】
【0311】
【表10】
【0312】
【表11】
【0313】
【表12】
【0314】
【表13】
(まとめ)
図7は、実施例及び比較例で得られた各粒子状吸水剤について、横軸に「Rec.CRC/CRC」、縦軸に「EMI(600/500)」をプロットしたグラフである。なお、各プロットの表記は、実;実施例、比;比較例、「Rec.AAP」の値/「Rec.SFC」の値を示している。また、上記「EMI(600/500)」は、粒子径が500μm以上600μm未満である粒子についての弾性率指数を意味する。
【0315】
図7に示したように、本発明に係る粒子状吸水剤(実1、実2)はリカバリー率(Rec.CRC/CRC)が1.05〜1.20の範囲内であり、弾性率指数(EMI)(600/500)が5500以上を示すが、何れもRec.AAPが15g/g以上、Rec.SFCが5×10−7・cm3・s・g−1以上と、優れた値となっている。
【0316】
一方、比較粒子状吸水剤では、リカバリー率は高値であるものの、弾性率指数が低いもの(比1、比3、比4、比7、比8)や、逆に、弾性率指数は高値であるものの、リカバリー率が低いもの(比2、比5、比6、比9)が見られ、これらは何れもRec.AAP及びRec.SFCが小さくなっていることが認められた。この要因について以下のことが考えられる。
【0317】
Rec.AAP及びRec.SFCは一度純水で膨潤させるため、実使用よりも極端に高い膨潤倍率を経て表面架橋層がダメージを受けた後の加圧下膨潤倍率、通液性を評価している。つまり、Rec.AAP及びRec.SFCの高い粒子状吸水剤は、複数回にわたって尿等を吸収する場合において、更には一度使用した紙オムツを水洗いしても、吸水性能の低下が抑制されると考えられる。
【0318】
また、弾性指数に優れているので、高加圧条件でも高い吸水性能が期待され、実施例3、比較例10及び比較例11に示されるように、本発明の粒子状吸収剤は22kg以上の高荷重下においても、拡散吸収速度に優れることが分かる。
【0319】
すなわち、本発明の手法により得られる粒子状吸水剤が、リカバリー率(Rec.CRC/CRC)が1.05〜1.20、粒子径が500μm以上600μm未満の粒子の弾性率指数(EMI)が5500以上を満たすことで、純水膨潤時の物性低下を極力抑えることができ、Rec.AAPが15g/g以上、Rec.SFCが5×10−7・cm・s・g−1以上という優れた値を示したと解釈される。
【0320】
また、実施例3、比較例10、比較例11より、上記条件をすべて満たす、実施例3の粒子状吸水剤を吸収体に使用した場合、高荷重下においても吸水性能の低下を抑制できることが分かる。
【0321】
これにより、本発明の粒子状吸水剤が吸収体に使用された場合、高い圧力下においても液の取込み性に優れ、高性能な吸収体を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0322】
本発明に係る粒子状吸水剤、及び本発明に係る製造方法により製造された粒子状吸水剤は、紙オムツ、生理用ナプキン及び医療用捕血剤等の吸収性物品の吸収体用途に有用である。また、ペット尿吸収剤、携帯トイレの尿ゲル化剤及び青果物等の鮮度保持剤、肉類及び魚介類のドリップ吸収剤、保冷剤、使い捨てカイロ、電池用ゲル化剤、植物や土壌等の保水剤、結露防止剤、止水剤やパッキング剤、並びに人工雪等の種々の用途にも使用できる。
【符号の説明】
【0323】
100;測定装置
101;円筒セル
102;金網
103;粒子状吸水剤
104;ピストン
105;錘
106;金属バット
107;グラスフィルター
108;濾紙
109;0.9%塩化ナトリウム水溶液
200;測定装置
201;容器
202;ガラス管
203;0.69%塩化ナトリウム水溶液
204;樹脂製配管
205;コック
250;測定装置
251;円筒セル
252;金網
254;粒子状吸水剤
255;金網
256;ピストン
257;穴
260;蓋
261;錘
262;金属バット
263;グラスフィルター
264;人工尿
300;レオメーター
301;ディッシュ(収容部)
302;膨潤ゲル
303;パラレルプレート(板状体)
304;回転軸
400;拡散吸収時間測定装置
401;アクリル樹脂製トレー
402;両面テープ
403;ティッシュペーパー
404;吸収体
405;トップシート
406;金網
407;投入孔
408;上蓋
409;錘
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7