【実施例】
【0037】
前述のように、種々のRFおよび/またはDC信号が、本教示によると、多極イオンガイド120から下流の真空チャンバ114の中へのイオンの伝送を制御または操作するように、補助電極140に印加されることができる。前述の教示は、ここで、本教示を限定するのではなく、実証することを前提として、i)ロッド130a、bに印加されるDCオフセット電圧と異なるDC電圧(RF成分を伴わない)が、
図2の例示的補助T形状電極140に印加され、ii)RF信号が、
図2の例示的補助T形状電極140に印加され(電極140に印加されるDC電圧は、DCオフセット電圧と同等である)、iii)ロッド130a、bに印加されるDCオフセット電圧と異なるDC電圧と、RF信号の両方が、
図2の例示的補助T形状電極140に印加される、以下の実施例を使用して実証されるであろう。
【0038】
最初に、
図4A−Cを参照すると、Q0の四重極ロッド(長さ約18cmを有する)の近位入口端から下流約12cmに位置する、長さ約50mmを有する補助T形状電極140を含むように本教示に従って修正された、4000QTRAP
(R)システム(SCIEXによって市販)を通した種々のイオンの伝送を実証する、例示的データが、描写される。Q0の四重極ロッドは、−10V DCオフセットに維持され、異なる振幅(すなわち、189V
0−p、283V
0−p、378V
0−p、および567V
0−p)の種々のRF信号が、四重極ロッドに印加された。四重極ロッドに印加される主駆動RFは、約1MHzであって、隣接する四重極ロッドに印加される信号は、相互に位相が反対であった。
【0039】
図4A−Cは、それぞれ、補助電極に印加されるDC電圧がDCオフセット電圧(すなわち、−10V DC)から調節されるにつれて、多極イオンガイドを通して322Da、622Da、および922Daのm/zを呈する、イオンの伝送の変化を描写する。例えば、ここで
図4Aを具体的に参照すると、322Daのm/zを有するイオンの伝送は、四重極ロッドに印加される種々のRF信号毎に、DCオフセット電圧から約±10〜15V DCの補助DC電圧(すなわち、約−18〜22V DCおよび+12〜15V DC)において実質的に停止される。しかしながら、
図4Bおよび4Cに示されるように、増加されるm/zのイオンに関するDCカットオフは、四重極ロッドに印加されるRFの振幅に応じて実質的に変動する(概して、V
0−pが増加するにつれて、ますますより高い補助DC電圧が、多極イオンガイドを通したイオンの伝送を停止するために要求される)。一例として、922Daのm/zを有するイオンに関して、カットオフは、189V
0−pでは、DCオフセット電圧から約±10V DC(すなわち、−20V DCおよび0V DC)である一方、567V
0−pでは、カットオフは、DCオフセット電圧から約±25V DC(すなわち、−35V DCおよび+15V DC)である。これらの実施例に照らして、四重極ロッドセットおよび/または補助DC信号に印加されるRF電圧は、下流の質量分析器への全イオンの伝送を実質的に阻止するように、調節されることができる(例えば、コントローラ103を介して)ことを理解されたい。非限定的実施例として、補助DC電圧は、イオン源によって発生される実質的に全イオンのカットオフポイントを超えて、DCオフセット電圧から調節されることができる。前述のデータはまた、四重極ロッドに印加されるRF信号の振幅が、多極イオンガイドを通したイオンの伝送を防止するように、補助DC電圧とDCオフセット電圧との間の差異の増加と別個に、またはそれと連動して同時に減少されることができることを示す。故に、本教示による方法およびシステムは、例えば、検体が連続イオン源(例えば、液体クロマトグラフィの勾配溶出の初めまたは後の部分における)に送達されているサンプル中に存在しないことが既知である、および/または下流の質量分析器(例えば、イオントラップデバイス)がイオンガイドを通して以前に伝送されたイオンを処理している、時間周期の間、下流の質量分析器の中へのイオンの流動を停止する(例えば、汚染をさらに低減させる)ことができる。
【0040】
図4A−Cを継続して参照すると、約−10V DCの補助DC電圧では、イオンガイド内の電場は、多極イオンガイドが従来のコリメート四重極として機能するであろうように(すなわち、補助電極が存在さえしないであろうかのように)、補助DC電圧によって実質的に改変されないであろうことを理解されたい。本教示の種々の側面による方法およびシステムは、望ましくないイオン(例えば、本明細書のその他で、以下の
図5A−Cに関して具体的に論じられるように、高m/zの干渉/汚染イオン)の伝送を低減させるために効果的であり得るが、
図4A−Cは、驚くことに、イオンガイドを通した全体的イオン伝送が、補助DC信号がDCオフセット電圧から調節されるにつれて、従来のコリメート四重極と比較して増加され得ることを実証する。すなわち、
図4A−Cに示されるように、全体的検出されたイオン電流は、最初に、補助DC電圧がDCオフセット電圧に維持されるときに発生されるイオン電流と比較して、補助DC電圧によって増加される。任意の特定の理論によって拘束されるわけではないが、イオン電流の本増加は、補助DC信号によって引き起こされたイオンガイド内のイオンのクラスタ分離の増加に起因し得ると考えられる。これらの重く帯電されたクラスタは、従来のコリメート四重極Q0内で中性化される、および/またはQ0を通した下流の真空チャンバの中への伝送に続き、下流の光学要素および質量分析器を汚染し得る一方、本教示の種々の側面による方法およびシステムは、驚くことに、イオンガイド内のこれらの帯電されたクラスタをクラスタ分離し、それによって、イオンをそこから解放し、潜在的に、典型的には従来のシステム内で喪失される、着目イオンの伝送/検出を可能にすることによって、感度を増加させるために使用されることができる。
【0041】
ここで
図5A−Cを参照すると、Q0の四重極ロッド(長さ約18cmを有する)の近位入口端から約12cm下流に位置する、長さ約50mmを有する補助T形状電極を含むように本教示の種々の側面に従って修正された、4000QTRAP
(R)システムを通したイオン化された標準(Agilent ESI Tuning Mix、G2421!、Agilent Technologies)の伝送に続く例示的質量スペクトルが、描写される。Q0の四重極ロッドは、−10V DCオフセットに維持され、189V
0−pのRF信号が、四重極ロッドに印加された。四重極ロッドに印加される主駆動RFは、約1MHzであって、隣接する四重極ロッドに印加される信号は、相互に位相が反対であった。
【0042】
図5Aの質量スペクトログラムを生成するために、補助電極は、イオンガイドが従来のコリメート四重極として実質的に機能されるように、−10V DC(すなわち、四重極ロッドの同一DCオフセット電圧)に維持された。
図5Bに関して、補助DC電圧は、補助ロッドの電圧を−15V DC(ΔV=DCオフセットに対して−5VDC)まで減少させることによって、DCオフセット電圧から調節された。すなわち、四重極ロッドと比較すると、補助電極は、イオン源によって発生される正イオンに5Vより誘引性であった。
図5Cのスペクトログラムを得るために、補助DC電圧は、−19V DC(ΔV=−9V DC)までさらに減少された。RF信号は、補助電極に印加されなかった。
【0043】
図5Bと
図5Aを比較すると、DCオフセット電圧に対して補助DC電圧を調節する(この場合、減少させ、補助電極を正イオンにより誘引性にする)ことによって、
図5Bの構成は、高m/zイオンをフィルタ処理するために効果的であったことが観察され得る。例えば、識別可能ピークが、
図5Aでは、1518.86Daおよび1521.66Daに存在するが、これらのピークは、
図5Bには存在しない。実際、
図5Bでは、約1400Daを上回るm/zにおいて、判別可能信号はない。
【0044】
図5Cと
図5Bを比較すると、DCオフセット電圧に対して補助DC電圧をさらに減少させることによって、高m/zイオンはさらにフィルタ処理されることが観察される。例えば、識別可能ピークが、
図5Bでは、921.25Daに存在するが、本ピークは、
図5Cでは存在しない。実際、
図5Cでは、約900Daを超えると、判別可能信号はない。また、低m/zイオンのフィルタ処理増加もまた、
図5Cと
図5Bを比較すると観察され得るが、本効果は、高域通過フィルタ効果ほど顕著ではないことに留意されたい。例えば、
図5Bでは、235.66Daに存在する識別可能ピークは、
図5Cでは存在しない。したがって、本教示の種々の側面によるイオンガイドは、補助DC信号を調節し、それによって、潜在的に、干渉/汚染イオンが下流の質量分析器に伝送されることを防止することによって、低域通過フィルタ(
図5Bにおけるように)として、および/または帯域通過フィルタ(
図5Cにおけるように)として動作されることができることが理解されるであろう。
【0045】
ここで
図6A−Dを参照すると、
図5A−Cを参照して前述のように実質的に修正された、4000QTRAP
(R)システムを通したイオン化された標準(Agilent ESI Tuning Mix、G2421!、Agilent Technologies)の伝送に続く、例示的質量スペクトルが、描写される。しかしながら、
図6A−Dの質量スペクトルを得るために、283V
0−pのRF信号が、四重極ロッドに印加された(依然として、−10V DCオフセットに維持される)。
図6A−Dの実験条件はさらに、電圧を減少させる(すなわち、補助DC信号を−10VDCオフセットに対してより負にする)のではなく、補助DC電圧が、
図6Bにおけるように0V DC(ΔV=DCオフセットに対して10V DC)、
図6Cにおけるように+5V DC(ΔV=+15V DC)、および
図6Dにおけるように+9V DC(ΔV=+19V DC)まで補助ロッドの電圧を増加させることによって、DCオフセット電圧から調節されたという点において異なる。すなわち、四重極ロッドと比較して、補助電極は、イオン源によって発生される正イオンにより反発性となった。
図6A−6Dを比較すると、イオンガイドは、補助電極が四重極電極に対してますます正(すなわち、正イオンにより反発性)になるにつれて、低m/zイオンをより良好にフィルタ処理することが認められる。したがって、本教示の種々の側面によるイオンガイドは、補助DC信号をより正にし、それによって、潜在的に、干渉/汚染低m/zイオンが下流の質量分析器に伝送されることを防止することによって、高域通過フィルタとして動作されることが理解されるであろう。
【0046】
種々の側面によると、本教示によるイオンガイドは、代替として、または加えて、RF信号が、多極イオンガイド120から下流の真空チャンバ114の中へのイオンの伝送を制御または操作するよう、補助電極に印加されるように、RF電力供給源に結合されることができる。ここで
図7A−Cを参照すると、Q0の四重極ロッド(長さ約18cmを有する)の近位入口端から約12cm下流に位置する、長さ約10mmを有する補助T形状電極を含むように本教示の種々の側面に従って修正された、4000QTRAP
(R)システムを通したイオン化された標準(Agilent ESI Tuning Mix、G2421!、Agilent Technologies)の伝送に続く、例示的質量スペクトルが、描写される。Q0の四重極ロッドは、−10V DCオフセットに維持され、283V
0−pのRF信号が、四重極ロッドに印加された。四重極ロッドに印加される主駆動RFは、約1MHzであって、隣接する四重極ロッドに印加される信号は、相互に位相が反対であった。
【0047】
図7Aの質量スペクトログラムを生成するために、補助電極は、イオンガイドが従来のコリメート四重極として実質的に機能されるように、−10V DC(すなわち、四重極ロッドの同一DCオフセット電圧)に維持された(すなわち、補助RF信号は、印加されなかった)。
図7Bに関して、補助DC電圧もまた、−10V DCに維持されたが、同じ補助RF信号が、周波数80kHzにおいて300V
p−pで補助電極のそれぞれ(例えば、
図2および3の4つの電極140)に印加された。同様に、
図7Cに関しても、補助DC電圧は、−10V DCに維持され、同じ補助RF信号が、周波数80kHzにおいて350V
p−pで補助電極のそれぞれに印加された。
図7A−Cを比較すると、補助電極に印加されるRF信号の振幅の増加は、スペクトルの低m/z部分に殆ど乃至全く影響を及ぼさずに、高m/zイオンを質量スペクトルから除去するためにますます効果的となり得ることが観察される。例えば、識別可能ピークが、
図7Aでは、2116.22Daに存在するが、本ピークは、
図7Bでは、大幅に減衰される。
図7Cと
図7Bを比較すると(補助RF信号の振幅を350V
p−pから300V
p−pに増加後)、高m/zイオンがさらにフィルタ処理されることが観察される。例えば、識別可能ピークが、
図7Bでは、920.77Daおよび1522.36Daに存在するが、これらのピークは、
図7Cでは存在しない。実際、
図7Cでは、約900Daを超えると、判別可能信号はない。したがって、本教示の種々の側面によるイオンガイドでは、補助電極に印加されるRF信号は、高m/zイオンが下流の質量分析器に伝送されることを防止し、それによって、潜在的に、イオン源によって発生されるイオン中に存在する干渉/汚染イオンの影響を防止するように調節されることができることが理解されるであろう。
【0048】
さらに、本教示の種々の側面によると、補助電極に印加される補助DC信号および補助RF信号は両方とも、多極イオンガイドからのイオンの伝送を制御または操作するように調節されることができる。ここで
図7Aおよび
図8A−Fを参照すると、例示的質量スペクトルは、DCおよびRF補助信号の両方への調節の影響を描写する。前述のように、
図7Aの質量スペクトログラムを生成するために、補助電極は、イオンガイドが従来のコリメート四重極として実質的に機能されるように、−10V DC(すなわち、四重極ロッドの同一DCオフセット電圧)に維持された(すなわち、補助RF信号は、印加されなかった)。
図8A(
図7Bと同じ)では、補助DC電圧は、−10V DCに維持されたが、周波数80kHzで300V
p−pにおける同じ補助RF信号が、補助電極のそれぞれに印加された。
図8B−Eのイオンスペクトルに関して、補助RF信号は、周波数80kHzにおいて300V
p−pに維持された一方、電極に印加される補助DC電圧は、それぞれ、
図8Bにおけるように−25V DC(ΔV=DCオフセットに対して−15V DC)、
図8Cにおけるように−30V DC(ΔV=−20V DC)、
図8Dにおけるように−36V DC(ΔV=−26V DC)、
図8Eにおけるように−38V DC(ΔV=−28V DC)、および
図8Fにおけるように−45V DC(ΔV=−35V DC)に減少された。付随のデータおよび本教示に照らして、RFおよびDC補助信号は両方とも、本明細書に説明される種々の側面に従ってイオンガイドによる所望のフィルタ処理を提供するように調節(例えば、調整)されることができることが、当業者によって理解されるであろう。非限定的実施例として、
図8A−Fのデータは、RF信号の印加が、高m/zイオンのフィルタ処理のために要求される補助DC電圧の振幅を低減させることができる一方、低m/zイオンが、概して影響されないままであることを実証することを理解されたい(−19V DCの補助DC電圧(ΔV=DCオフセットに対して−9V DC)における実質的低m/z除去を描写する、
図5Cと比較して)。
【0049】
当業者は、本明細書に説明される実施形態および実践の多くの均等物を把握する、または日常的にすぎない実験を使用して解明可能であろう。一例として、種々の構成要素の寸法および種々の構成要素に印加される特定の電気信号に関する明示的値(例えば、振幅、周波数等)は、単に、例示であって、本教示の範囲を限定することを意図するものではない。故に、本発明は、本明細書に開示される実施形態を限定するものではなく、法律の下で可能な限り広範囲であるように解釈されるべきである、以下の請求項から理解されるものとすることを理解されたい。
【0050】
本明細書で使用される見出しは、編成目的のためにすぎず、限定として解釈されない。本出願人の教示は、種々の実施形態と併せて説明されたが、本出願人の教示が、そのような実施形態に限定されることを意図するものではない。対照的に、本出願人の教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替、修正、および均等物を包含する。