特許第6774958号(P6774958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6774958質量分析計のロバスト性を向上させるためのRF/DCフィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774958
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】質量分析計のロバスト性を向上させるためのRF/DCフィルタ
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/42 20060101AFI20201019BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   H01J49/42
   G01N27/62 G
【請求項の数】20
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-550836(P2017-550836)
(86)(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公表番号】特表2018-511917(P2018-511917A)
(43)【公表日】2018年4月26日
(86)【国際出願番号】IB2016051611
(87)【国際公開番号】WO2016157032
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2019年3月20日
(31)【優先権主張番号】62/141,466
(32)【優先日】2015年4月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ヘイガー, ジェイムズ
【審査官】 小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−531862(JP,A)
【文献】 特表2010−526413(JP,A)
【文献】 特表2012−532427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J49/00−49/48
G01N27/60−27/70
27/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析計システムであって、
イオンを発生させるためのイオン源と、
イオンガイドチャンバであって、前記イオンガイドチャンバは、前記イオン源によって発生されるイオンを受容するための入口オリフィスと、イオンを前記イオンガイドチャンバから少なくとも1つの質量分析器を格納する真空チャンバの中に伝送するための少なくとも1つの出射開口とを備える、イオンガイドチャンバと、
前記イオンガイドチャンバ内に配置される多極イオンガイドであって、前記多極イオンガイドは、
i)前記入口オリフィスに隣接して配置される近位端から前記出射開口に隣接して配置される遠位端まで延在する四重極ロッドセットであって、前記四重極ロッドセットは、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドを備え、各ロッドは、中心縦軸から離間され、かつ前記中心縦軸に並んで延在する、四重極ロッドセットと、
ii)前記四重極ロッドセットの少なくとも一部に沿って、前記中心縦軸から離間され、かつ前記中心縦軸に並んで延在する複数の補助電極であって、前記複数の補助電極は、前記補助電極が、前記四重極ロッドセットのロッドによって相互から分離されるように、かつ前記補助電極がそれぞれ、前記第1の対のロッドの単一ロッドおよび前記第2の対のロッドの単一ロッドに隣接するように、前記四重極ロッドセットのロッド間に介在される、複数の補助電極と、
を備え、前記複数の補助電極は、その長さに沿って実質的に一定断面を備える、多極イオンガイドと、
前記多極イオンガイドに結合され、i)第1の周波数および第1の位相における前記第1の対のロッドへの第1のRF電圧と、ii)前記第1の周波数に等しい第2の周波数および前記第1の位相と反対の第2の位相における前記第2の対のロッドへの第2のRF電圧と、iii)前記補助電極のそれぞれへの補助電気信号であって、前記補助電極のそれぞれに印加される補助電気信号は、実質的に同じである、補助電気信号とを提供するように動作可能な電力供給源と、
を備え、前記補助電気信号は、高m/zイオンの伝送を防止するためのDC信号およびRF信号を備える、質量分析計システム。
【請求項2】
前記電力供給源は、前記第1のRF電圧を前記第1の対のロッドに提供するように動作可能な第1の電圧源と、前記第2のRF電圧を前記第2の対のロッドに提供するように動作可能な第2の電圧源と、RF電圧を前記補助電極に提供するように動作可能な補助RF電圧源およびDC電圧を前記補助電極に提供するように動作可能な補助DC電圧源のうちの少なくとも1つとを備える、請求項1に記載の質量分析計システム。
【請求項3】
前記補助電気信号は、前記四重極ロッドセットが維持されるDCオフセット電圧と異なるDC電圧を備える、請求項1に記載の質量分析計システム。
【請求項4】
前記多極イオンガイドから伝送されるイオンを減衰させるように、前記補助電極に提供される前記DC電圧を調節するように構成される、コントローラをさらに備える、請求項3に記載の質量分析計システム。
【請求項5】
前記多極イオンガイドから伝送されるイオンのm/z範囲を調節するように、前記補助電極に提供される前記DC電圧を調節するように構成される、コントローラをさらに備える、請求項3に記載の質量分析計システム。
【請求項6】
イオンが前記出射開口を通して前記真空チャンバの中に実質的に伝送されないように、前記第1の対のロッドに提供される第1のRF電圧、前記第2の対のロッドに印加される第2のRF電圧、および前記補助電極に提供されるDC電圧のうちの少なくとも1つを調節するように構成される、コントローラをさらに備える、請求項3に記載の質量分析計システム。
【請求項7】
前記補助電気信号は、第3の周波数および第3の位相におけるRF信号を備える、請求項1に記載の質量分析計システム。
【請求項8】
前記補助電気信号はさらに、前記四重極ロッドセットが維持されるDCオフセット電圧と異なるDC電圧を備える、請求項7に記載の質量分析計システム。
【請求項9】
前記電力供給源はさらに、補完電気信号を前記四重極ロッドセットのロッドのうちの少なくとも1つに提供するように動作可能であ、前記補完電気信号は、DC電圧およびAC励起信号のうちの1つである、請求項1に記載の質量分析計システム。
【請求項10】
前記補助電極は、前記四重極ロッドセットの長さ未満の長さを有し、
前記システムはさらに、前記補助電極の第1のセットから軸方向にオフセットされる補助電極の第2のセットを備え、
前記電力供給源は、実質的に同じ第2の補助電気信号を前記補助電極の第2のセットのそれぞれに提供するように動作可能であ、前記第2の補助電気信号は、前記補助電極の第1のセットに提供される補助信号と異なる、
請求項1に記載の質量分析計システム。
【請求項11】
イオンを処理する方法であって、
イオン源によって発生されるイオンをイオンガイドチャンバの入口オリフィスを通して受容することと、
イオンを前記イオンガイドチャンバ内に配置される多極イオンガイドを通して伝送することであって、前記多極イオンガイドは、
i)前記入口オリフィスに隣接して配置される近位端から前記イオンガイドチャンバの出射開口に隣接して配置される遠位端まで延在する四重極ロッドセットであって、前記四重極ロッドセットは、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドを備え、各ロッドは、中心縦軸から離間され、かつ前記中心縦軸に並んで延在する、四重極ロッドセットと、
ii)前記四重極ロッドセットの少なくとも一部に沿って、前記中心縦軸から離間され、かつ前記中心縦軸に並んで延在する複数の補助電極であって、前記複数の補助電極は、前記補助電極が、前記四重極ロッドセットのロッドによって相互から分離されるように、かつ前記補助電極がそれぞれ、前記第1の対のロッドの単一ロッドおよび前記第2の対のロッドの単一ロッドに隣接するように、前記四重極ロッドセットのロッド間に介在される、複数の補助電極と、
を備え、前記複数の補助電極は、その長さに沿って実質的に一定断面を備えることと、
第1の周波数および第1の位相における前記第1の対のロッドへの第1のRF電圧を印加することと、
前記第1の周波数に等しい第2の周波数および前記第1の位相と反対の第2の位相における前記第2の対への第2のRF電圧を印加することと、
実質的に同じ補助電気信号を前記補助電極のそれぞれに印加することであって、前記補助電気信号は、高m/zイオンの伝送を防止するためのDC信号およびRF信号を備える、ことと、
イオンを前記多極イオンガイドから前記出射開口を通して少なくとも1つの質量分析器を格納する真空チャンバの中に伝送することと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記イオンガイドチャンバを約1mTorr〜約10mTorrの範囲内の圧力に維持することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
実質的に同じ補助電気信号を前記補助電極のそれぞれに印加することは、前記補助電極に、前記四重極ロッドセットが維持されるDCオフセット電圧と異なるDC電圧を印加することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記多極イオンガイドから伝送されるイオンを減衰させるように、前記補助電極に提供されるDC電圧を調節することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記多極イオンガイドから伝送されるイオンのm/z範囲を調節するように、前記補助電極に提供されるDC電圧を調節することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の対のロッドに提供される第1のRF電圧、前記第2の対のロッドに印加される第2のRF電圧、および前記補助電極に提供されるDC電圧のうちの少なくとも1つを調節し、前記出射開口を通した前記真空チャンバの中へのイオンの伝送を停止することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
実質的に同じ補助電気信号を前記補助電極のそれぞれに印加することは、第3の周波数および第3の位相におけるRF信号を印加することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
実質的に同じ補助電気信号を前記補助電極のそれぞれに印加することはさらに、前記補助電極に、前記四重極ロッドセットが維持されるDCオフセット電圧と異なるDC電圧を印加することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
補完電気信号を前記四重極ロッドセットのロッドのうちの少なくとも1つに印加することであって、前記補完電気信号は、DC電圧およびAC励起信号のうちの1つである、ことをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記補助電極のそれぞれに印加される前記補助電気信号は、前記多極イオンガイドを通して伝送されているイオンのクラスタ分離を助長するように選択される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2015年4月1日に出願された米国仮出願第62/141,466号からの優先権の利益を主張するものであり、該仮出願の全体の内容は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、質量分析計に関し、より具体的には、イオンを伝送するために多極イオンガイドを利用する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
質量分析計(MS)は、定量的および定質的用途の両方を伴う、試験基質の基本組成を判定するための解析技法である。例えば、MSは、未知の化合物を同定するために、分子中の元素の同位体組成を判定するために、およびその断片化を観察することによって特定の化合物の構造を判定するために、ならびにサンプル中の特定の化合物の量を定量化するために、使用されることができる。
【0004】
質量分析法では、サンプル分子は、概して、イオン源を使用してイオンに変換され、次いで、1つまたはそれを上回る質量分析器によって分離および検出される。大部分の大気圧イオン源に関して、イオンは、真空チャンバ内に配置されるイオンガイドへの入射に先立って、入口オリフィスを通して通過する。従来の質量分析計システムでは、イオンガイドに印加される無線周波数(RF)信号は、イオンが、質量分析器が配置される、後続のより低い圧力の真空チャンバの中に移送されるにつれて、イオンガイドの中心軸に沿って、衝突冷却および半径方向集束を提供する。大気圧におけるイオン化(例えば、化学イオン化、エレクトロスプレーによって)は、概して、サンプル中の分子をイオン化する高効率手段であるため、着目検体のイオンだけではなく、干渉/汚染イオンおよび中性分子も、大量に生成され得る。イオンガイドに入射する着目イオンの数を増加させるために、イオン源とイオンガイドとの間の入口オリフィスのサイズを増加させる(それによって、潜在的に、MS器具の感度を増加させる)ことが望ましくあり得るが、そのような構成も同様に、より多くの望ましくない分子が、真空チャンバと、潜在的に、着目イオンの軌道が電場によって精密に制御される、高真空チャンバの内側深くに位置する、下流の質量分析器段とに入射することを可能にし得る。望ましくないイオンおよび中性分子の伝送は、これらの下流の要素を汚損/汚染し得、それによって、質量分析解析に干渉する、および/または高真空チャンバ内の侵襲的成分の清掃によって必要となるコストの増加もしくはスループットの低下につながる。今日の大気圧イオン化源を用いて分析されている、より大量のサンプル装填量および生物学的ベースのサンプルの汚染性質のため、清潔な質量分析器を維持することは、重要な懸念のままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
故に、下流の質量分析器中の汚染を低減させるための改良された方法およびシステムの必要性が、残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願人の教示の種々の実施形態のある側面によると、イオンを発生させるためのイオン源と、イオン源によって発生されるイオンを受容するための入口オリフィスと、イオンをイオンガイドチャンバから、少なくとも1つの質量分析器(例えば、三連四重極、線形イオントラップ、四重極飛行時間型、Orbitrap、または他のフーリエ変換質量分析計等)を格納する、真空チャンバの中に伝送するための少なくとも1つの出射開口とを有する、イオンガイドチャンバとを備える、質量分析計システムが、提供される。種々の側面によると、イオンガイドチャンバは、全て非限定的実施例であるが、約1mTorr〜約10mTorrの範囲内の圧力に維持されることができる一方、真空チャンバは、より低い圧力(例えば、1×10−4Torr未満、約5×10−5Torr)に維持されることができる。いくつかの側面では、イオンガイドチャンバは、四重極ロッドの圧力×長さが2.25×10−2Torr−cmを上回るような圧力に維持されることができる。本システムはまた、イオンガイドチャンバ内に配置される多極イオンガイドであって、i)入口オリフィスに隣接して配置される近位端から出射開口に隣接して配置される遠位端まで延在する四重極ロッドセットであって、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドを備え、各ロッドは、中心縦軸から離間され、かつそれに並んで延在する、四重極ロッドセットと、ii)四重極ロッドセットの少なくとも一部に沿って、中心縦軸から離間され、かつそれに並んで延在する複数の補助電極(例えば、T形状電極)(例えば、補助電極の長さは、四重極ロッドセットの長さの約50%未満、約33%未満、約10%未満である)とを備える、多極イオンガイドを備えることができる。種々の側面では、複数の補助電極は、補助電極が、四重極ロッドセットのロッドによって相互から分離されるように、かつ補助電極がそれぞれ、第1の対のロッドの単一ロッドおよび第2の対のロッドの単一ロッドに隣接するように、四重極ロッドセットのロッド間に介在される。種々の側面では、本システムはまた、多極イオンガイドに結合され、第1の周波数および第1の位相における第1の対のロッドへの第1のRF電圧と、第1の周波数に等しい第2の周波数および第1の位相と反対の第2の位相における第2の対のロッドへの第2のRF電圧と、補助電極のそれぞれへの実質的に同じ補助電気信号とを提供するように動作可能な電力供給源を備える。一例として、電力供給源は、第1のRF電圧を第1の対のロッドに提供するように動作可能な第1の電圧源と、第2のRF電圧を第2の対のロッドに提供するように動作可能な第2の電圧源と、RF電圧および/またはDC電圧を補助電極に提供するように動作可能な少なくとも1つの補助RF電圧源とを備えることができる。種々の実施形態では、多極イオンガイドは、質量分析計システム内のQ0として機能することができる。
【0007】
本教示の種々の側面によると、補助電気信号は、四重極ロッドセットが維持されるDCオフセット電圧と異なる、DC電圧であることができる。いくつかの関連側面では、例えば、本システムはまた、i)多極イオンガイドから伝送されるイオンを減衰させるように、補助電極に提供されるDC電圧を調節する、ii)多極イオンガイドから伝送されるイオンのm/z範囲を調節するように、補助電極に提供されるDC電圧を調節する、および/またはiii)イオンが真空チャンバの中に実質的に伝送されない(例えば、多極イオンガイドから出射開口を通した伝送を停止する)ように、第1の対のロッドに提供される第1のRF電圧、第2の対のロッドに印加される第2のRF電圧、および補助電極に提供されるDC電圧のうちの少なくとも1つを調節するように構成される、コントローラを備えることができる。例えば、電圧を調節することによって、多極イオンガイドは、イオン源から受容されたイオンの5%未満、2%未満、1%未満、または0%を伝送するように構成されることができる。
【0008】
本教示の種々の側面によると、補助電気信号は、加えて、または代替として、RF信号、例えば、第3の周波数(例えば、第1の周波数と異なる)および第3の位相におけるRF電圧を備えることができる。関連側面では、補助電気信号は、RF信号と、四重極ロッドセットが維持されるDCオフセット電圧と異なる、DC電圧の両方を備えることができる。
【0009】
種々の側面では、電力供給源はさらに、補完電気信号を四重極ロッドセットのロッドのうちの少なくとも1つに提供するように動作可能であることができ、補完電気信号は、DC電圧および/またはAC励起信号のうちの1つである。一例として、電力供給源は、双極DC場、四重極DC場、またはイオンビーム内のイオンのいくつかと共鳴もしくはほぼ共鳴する補完AC場を使用して共鳴励起を発生させるように、補完電気信号を四重極ロッドセットに提供するように動作可能であることができる。
【0010】
補助電極は、本教示の種々の側面によると、種々の構成を有することができる。一例として、補助電極は、丸形またはT形状であることができる。いくつかの側面では、T−電極は、その全長に沿って、一定T形状断面積を有することができる。種々の側面では、補助電極は、四重極ロッドセットの長さの半分未満(例えば、33%未満、10%未満)の長さを有することができ、四重極ロッドセットの長さに沿った種々の場所に(例えば、四重極ロッドセットの近位3分の1、真ん中の3分の1、または遠位3分の1のうちの1つまたはそれを上回るものに)配置されることができる。いくつかの側面では、本システムは、四重極ロッドセットの長さに沿って相互から軸方向にオフセットされた2セットの補助電極を備えることができる。関連側面では、例えば、電力供給源は、実質的に同じ第2の補助電気信号を補助電極の第2のセットの電極のそれぞれに提供するように動作可能であることができ、第2の補助電気信号は、補助電極の第1のセットに提供される補助信号と異なる。非限定的実施例として、補助電極の第1のセットに印加される補助信号は、四重極ロッドセットが維持されるDCオフセット電圧と異なる、DC電圧を備えることができる一方、第2の補助信号は、RF信号を備えることができる。
【0011】
本出願人の教示のある実施形態の種々の側面によると、イオン源によって発生されるイオンをイオンガイドチャンバの入口オリフィスを通して受容するステップと、イオンをイオンガイドチャンバ内に配置される多極イオンガイドを通して伝送するステップであって、多極イオンガイドは、i)入口オリフィスに隣接して配置される近位端からイオンガイドチャンバの出射開口に隣接して配置される遠位端まで延在する四重極ロッドセットであって、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドを備え、各ロッドは、中心縦軸から離間され、かつそれに並んで延在する、四重極ロッドセットと、ii)四重極ロッドセットの少なくとも一部に沿って、中心縦軸から離間され、かつそれに並んで延在する複数の補助電極とを備える、ステップとを含む、イオンを処理する方法が、提供される。複数の補助電極は、補助電極が、四重極ロッドセットのロッドによって相互から分離されるように、かつ補助電極がそれぞれ、第1の対のロッドの単一ロッドおよび第2の対のロッドの単一ロッドに隣接するように、四重極ロッドセットのロッド間に介在されることができる。本方法はまた、第1の周波数および第1の位相における第1の対のロッドへの第1のRF電圧を印加するステップと、第1の周波数に等しい第2の周波数および第1の位相と反対の第2の位相における第2の対のロッドへの第2のRF電圧を印加するステップと、実質的に同じ補助電気信号を補助電極のそれぞれに印加するステップとを含むことができる。イオンは、多極イオンガイドから出射開口を通して少なくとも1つの質量分析器(例えば、三連四重極、線形イオントラップ、四重極飛行時間型、Orbitrap、または他のフーリエ変換質量分析計等)を格納する真空チャンバの中に伝送されることができる。いくつかの側面では、本方法はまた、下流の真空チャンバが維持される圧力(例えば、1×10−4Torr未満、約5×10−5)より高くあり得る、約1mTorr〜約10mTorrの範囲内の圧力にイオンガイドチャンバを維持するステップを含むことができる。いくつかの側面では、イオンガイドチャンバは、四重極ロッドの圧力×長さが2.25×10−2Torr−cmを上回るような圧力に維持されることができる。
【0012】
種々の側面によると、実質的に同じ補助電気信号を補助電極のそれぞれに印加するステップは、四重極ロッドセットが維持されるDCオフセットと異なる電圧である、DC電圧を複数の電極のそれぞれに印加するステップを含むことができる。関連側面では、例えば、本方法はさらに、多極イオンガイドから伝送されるイオンを減衰させるように(例えば、イオン電流を低減させるため)、および/または多極イオンガイドから伝送されるイオンのm/z範囲を調節するように、補助電極に提供されるDC電圧を調節するステップを含むことができる。いくつかの側面では、本方法はさらに、第1の対のロッドに提供される第1のRF電圧、第2の対のロッドに印加される第2のRF電圧、および補助電極に提供されるDC電圧のうちの少なくとも1つを調節することによって、多極イオンガイドによって受容されたイオンの出射開口を通した伝送を防止するステップを含むことができる。
【0013】
本教示の種々の側面によると、実質的に同じ補助電気信号を補助電極のそれぞれに印加するステップは、第3の周波数(例えば、第1の周波数と異なる)および第3の位相におけるRF信号を印加するステップを含むことができる。関連側面では、RF信号と、四重極ロッドセットが維持されるDCオフセット電圧と異なる、DC電圧は両方とも、補助電気信号として印加されることができる。
【0014】
種々の側面では、本方法はまた、補完電気信号を四重極ロッドセットのロッドのうちの少なくとも1つに印加するステップであって、補完電気信号は、DC電圧およびAC励起信号のうちの1つである、ステップを含むことができる。一例として、四重極ロッドに印加される補完電気信号は、加えて、双極DC場、四重極DC場、またはイオンビーム内のイオンのいくつかと共鳴もしくはほぼ共鳴する補完AC場を使用して共鳴励起を発生させるために有効であることができる。
【0015】
いくつかの側面では、補助電極に印加される補助電気信号は、多極イオンガイドを通して伝送されているイオンのクラスタ分離を助長するように選択されることができる。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
質量分析計システムであって、
イオンを発生させるためのイオン源と、
イオンガイドチャンバであって、前記イオン源によって発生されるイオンを受容するための入口オリフィスと、イオンを前記イオンガイドチャンバから少なくとも1つの質量分析器を格納する真空チャンバの中に伝送するための少なくとも1つの出射開口とを備える、イオンガイドチャンバと、
前記イオンガイドチャンバ内に配置される多極イオンガイドであって、
i)前記入口オリフィスに隣接して配置される近位端から前記出射開口に隣接して配置される遠位端まで延在する四重極ロッドセットであって、前記四重極ロッドセットは、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドを備え、各ロッドは、中心縦軸から離間され、かつそれに並んで延在する、四重極ロッドセットと、
ii)前記四重極ロッドセットの少なくとも一部に沿って、前記中心縦軸から離間され、かつそれに並んで延在する複数の補助電極であって、前記複数の補助電極は、前記補助電極が、前記四重極ロッドセットのロッドによって相互から分離されるように、かつ前記補助電極がそれぞれ、前記第1の対のロッドの単一ロッドおよび前記第2の対のロッドの単一ロッドに隣接するように、前記四重極ロッドセットのロッド間に介在される、複数の補助電極と、
を備える、多極イオンガイドと、
前記多極イオンガイドに結合され、i)第1の周波数および第1の位相における前記第1の対のロッドへの第1のRF電圧と、ii)前記第1の周波数に等しい第2の周波数および前記第1の位相と反対の第2の位相における前記第2の対のロッドへの第2のRF電圧と、iii)前記補助電極のそれぞれへの補助電気信号であって、前記補助電極のそれぞれに印加される補助電気信号は、実質的に同じである、補助電気信号とを提供するように動作可能な電力供給源と、
を備える、質量分析計システム。
(項目2)
前記電力供給源は、前記第1のRF電圧を前記第1の対のロッドに提供するように動作可能な第1の電圧源と、前記第2のRF電圧を前記第2の対のロッドに提供するように動作可能な第2の電圧源と、RF電圧を前記補助電極に提供するように動作可能な補助RF電圧源およびDC電圧を前記補助電極に提供するように動作可能な補助DC電圧源のうちの少なくとも1つとを備える、項目1に記載の質量分析計システム。
(項目3)
前記補助電気信号は、前記四重極ロッドセットが維持されるDCオフセット電圧と異なる、DC電圧を備える、項目1に記載の質量分析計システム。
(項目4)
前記多極イオンガイドから伝送されるイオンを減衰させるように、前記補助電極に提供される前記DC電圧を調節するように構成される、コントローラをさらに備える、項目3に記載の質量分析計システム。
(項目5)
前記多極イオンガイドから伝送されるイオンのm/z範囲を調節するように、前記補助電極に提供される前記DC電圧を調節するように構成される、コントローラをさらに備える、項目3に記載の質量分析計システム。
(項目6)
イオンが前記出射開口を通して前記真空チャンバの中に実質的に伝送されないように、前記第1の対のロッドに提供される第1のRF電圧、前記第2の対のロッドに印加される第2のRF電圧、および前記補助電極に提供されるDC電圧のうちの少なくとも1つを調節するように構成される、コントローラをさらに備える、項目3に記載の質量分析計システム。
(項目7)
前記補助電気信号は、第3の周波数および第3の位相におけるRF信号を備える、項目1に記載の質量分析計システム。
(項目8)
前記補助電気信号はさらに、前記四重極ロッドセットが維持されるDCオフセット電圧と異なる、DC電圧を備える、項目7に記載の質量分析計システム。
(項目9)
前記電力供給源はさらに、補完電気信号を前記四重極ロッドセットのロッドのうちの少なくとも1つに提供するように動作可能であって、前記補完電気信号は、DC電圧およびAC励起信号のうちの1つである、項目1に記載の質量分析計システム。
(項目10)
前記補助電極は、前記四重極ロッドセットの長さ未満の長さを有し、
前記システムはさらに、前記補助電極の第1のセットから軸方向にオフセットされる補助電極の第2のセットを備え、
前記電力供給源は、実質的に同じ第2の補助電気信号を前記補助電極の第2のセットのそれぞれに提供するように動作可能であって、前記第2の補助電気信号は、前記補助電極の第1のセットに提供される補助信号と異なる、
項目1に記載の質量分析計システム。
(項目11)
イオンを処理する方法であって、
イオン源によって発生されるイオンをイオンガイドチャンバの入口オリフィスを通して受容するステップと、
イオンを前記イオンガイドチャンバ内に配置される多極イオンガイドを通して伝送するステップであって、前記多極イオンガイドは、
i)前記入口オリフィスに隣接して配置される近位端から前記イオンガイドチャンバの出射開口に隣接して配置される遠位端まで延在する四重極ロッドセットであって、前記四重極ロッドセットは、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドを備え、各ロッドは、中心縦軸から離間され、かつそれに並んで延在する、四重極ロッドセットと、
ii)前記四重極ロッドセットの少なくとも一部に沿って、前記中心縦軸から離間され、かつそれに並んで延在する複数の補助電極であって、前記複数の補助電極は、前記補助電極が、前記四重極ロッドセットのロッドによって相互から分離されるように、かつ前記補助電極がそれぞれ、前記第1の対のロッドの単一ロッドおよび前記第2の対のロッドの単一ロッドに隣接するように、前記四重極ロッドセットのロッド間に介在される、複数の補助電極と、
を備える、ステップと、
第1の周波数および第1の位相における前記第1の対のロッドへの第1のRF電圧を印加するステップと、
前記第1の周波数に等しい第2の周波数および前記第1の位相と反対の第2の位相における前記第2の対への第2のRF電圧を印加するステップと、
実質的に同じ補助電気信号を前記補助電極のそれぞれに印加するステップと、
イオンを前記多極イオンガイドから前記出射開口を通して少なくとも1つの質量分析器を格納する真空チャンバの中に伝送するステップと、
を含む、方法。
(項目12)
前記イオンガイドチャンバを約1mTorr〜約10mTorrの範囲内の圧力に維持するステップをさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
実質的に同じ補助電気信号を前記補助電極のそれぞれに印加するステップは、前記補助電極に、前記四重極ロッドセットが維持されるDCオフセットと異なる電圧であるDC電圧を印加するステップを含む、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記多極イオンガイドから伝送されるイオンを減衰させるように、前記補助電極に提供されるDC電圧を調節するステップをさらに含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記多極イオンガイドから伝送されるイオンのm/z範囲を調節するように、前記補助電極に提供されるDC電圧を調節するステップをさらに含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記第1の対のロッドに提供される第1のRF電圧、前記第2の対のロッドに印加される第2のRF電圧、および前記補助電極に提供されるDC電圧のうちの少なくとも1つを調節し、前記出射開口を通した前記真空チャンバの中へのイオンの伝送を停止するステップをさらに含む、項目14に記載の方法。
(項目17)
実質的に同じ補助電気信号を前記補助電極のそれぞれに印加するステップは、第3の周波数および第3の位相におけるRF信号を印加するステップを含む、項目11に記載の方法。
(項目18)
実質的に同じ補助電気信号を前記補助電極のそれぞれに印加するステップはさらに、前記補助電極に、前記四重極ロッドセットが維持されるDCオフセットと異なるDC電圧を印加するステップを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
補完電気信号を前記四重極ロッドセットのロッドのうちの少なくとも1つに印加するステップであって、前記補完電気信号は、DC電圧およびAC励起信号のうちの1つである、ステップをさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目20)
前記補助電極のそれぞれに印加される前記補助電気信号は、前記多極イオンガイドを通して伝送されているイオンのクラスタ分離を助長するように選択される、項目11に記載の方法。
【0016】
本出願人の教示のこれらおよび他の特徴が、本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の前述および他の目的ならびに利点は、添付の図面を参照して、以下の発明を実施するための形態からより完全に理解されるであろう。当業者は、以下に説明される図面が、例証目的のためだけのものであることを理解するであろう。図面は、本出願者の教示の範囲をいかようにも限定することを意図するものではない。
【0018】
図1図1は、概略図において、本出願者の教示の種々の実施形態の一側面による、補助電極を備える多極イオンガイドを含む、QTRAP(R)QqQ質量分析計システムを図示する。
図2図2は、概略図において、図1の質量分析計システムにおいて使用するための、本教示の種々の側面による、例示的多極イオンガイドの断面図を描写する。
図3図3は、図2の多極イオンガイドの一部の例示的プロトタイプを描写する。
図4図4Aは、本教示の種々の側面による、質量分析計システムによって処理された322Daのm/zを有するイオンに関する例示的データを描写する。図4Bは、本教示の種々の側面による、質量分析計システムによって処理された622Daのm/zを有するイオンに関する例示的データを描写する。図4Cは、本教示の種々の側面による、質量分析計システムによって処理された922Daのm/zを有するイオンに関する例示的データを描写する。
図5図5A−Cは、本教示の種々の側面による、イオンを処理するための質量分析計システムによって発生された例示的質量スペクトルを描写する。
図6図6A−Dは、本教示の種々の側面による、イオンを処理するための質量分析計システムによって発生された例示的質量スペクトルを描写する。
図7図7A−Cは、本教示の種々の側面による、イオンを処理するための質量分析計システムによって発生された例示的質量スペクトルを描写する。
図8図8A−Fは、本教示の種々の側面による、イオンを処理するための質量分析計システムによって発生された例示的質量スペクトルを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
明確にするために、以下の議論は、そうすることが便宜的または適切である場合、ある具体的詳細を省略しながら、本出願者の教示の実施形態の種々の側面を詳説するであろうことを理解されたい。例えば、代替実施形態における同様または類似特徴の議論は、若干、簡略化され得る。周知の考えまたは概念もまた、簡潔にするために、さらに詳細に論じられない場合がある。当業者は、本出願者の教示のいくつかの実施形態が、実施形態の完全な理解を提供するためだけに本明細書に記載される、具体的に説明される詳細のあるものを全ての実装において要求しない場合もあることを認識するであろう。同様に、説明される実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、一般的常識に従って、代替または変形例を受け入れる余地があり得ることが明白となるであろう。以下の発明を実施するための形態は、本出願者の教示の範囲をいかようにも限定するものと見なされないものとする。
【0020】
用語「約」および「実質的に同じ」は、本明細書で使用されるように、例えば、実世界における測定または取扱手順を通して、これらの手順における不注意による誤差を通して、電気要素の製造における差異/瑕疵を通して、電気損失を通して生じ得る、数値量における変動だけではなく、そのような変動が先行技術によって実践される既知の値を包含しない限り、均等物であるとして当業者によって認識されるであろう変動を指す。典型的には、用語「約」は、記載される値の1/10、例えば、±10%だけ、記載される値または値の範囲より多いもしくは少ないことを意味する。例えば、約+3V DCの電圧を要素に印加することは、+2.7V DC〜+3.3V DCの電圧を意味し得る。同様に、値が、「実質に同じ」であると述べられる場合、値は、最大5%だけ異なり得る。用語「約」および「実質的に同じ」によって修飾されるかどうかにかかわらず、請求項に列挙される定量値は、列挙される値の均等物、例えば、生じ得るが、当業者によって均等物であると認識されるであろう、そのような値の数値量における変動を含む。
【0021】
本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法は、多くの異なる質量分析計システムと併用されることができるが、そのような使用のための例示的質量分析計システム100が、図1に概略的に図示される。質量分析計システム100は、本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法の実施形態に従う使用のための1つの可能性として考えられる質量分析計器具を表すにすぎず、他の構成を有する質量分析計も全て、同様に、本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法に従って使用されることができることを理解されたい。
【0022】
図1に描写される例示的実施形態に概略的に示されるように、質量分析計システム100は、概して、James W. HagerおよびJ. C. Yves Le Blancによって共著され、Rapid Communications in Mass Spectrometry(2003;17:1056−1064)において発表された「Product ion scanning using a Q−q−Qlinear ion trap (Q TRAP(R)) mass spectrometer」と題された記事(参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に概して説明され、本教示の種々の側面に従って修正されるようなQTRAP(R)Q−q−Qハイブリッド線形イオントラップ質量分析計を備える。本明細書に開示されるシステム、デバイス、および方法に従って修正され得る、他の非限定的例示的質量分析計システムは、例えば、「Collision Cell for Mass Spectrometer」と題された米国特許第7,926,681号(参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に見出され得る。限定ではないが、本明細書に説明されるものおよび当業者に公知のその他を含む、他の構成もまた、本明細書に開示されるシステム、デバイス、および方法と併用されることができる。
【0023】
図1に示されるように、例示的質量分析計システム100は、イオン源102と、第1の真空チャンバ112内に格納される多極イオンガイド120(すなわち、Q0)と、第2の真空チャンバ114内に格納される1つまたはそれを上回る質量分析器と、検出器116とを備えることができる。例示的第2の真空チャンバ114は、3つの質量分析器(すなわち、Q1とQ2との間のオリフィスプレートIQ2と、Q2とQ3との間のIQ3とによって分離される、伸長ロッドセットQ1、Q2、およびQ3)を格納するが、より多いまたはより少ない質量分析器要素が、本教示に従って、システム内に含まれることもできることを理解されたい。便宜上、伸長ロッドセットQ1、Q2、およびQ3は、概して、本明細書では、四重極(すなわち、それらは、4つのロッドを有する)と称されるが、伸長ロッドセットは、任意の他の好適な多極構成、例えば、六重極、八重極等であることができる。また、1つまたはそれを上回る質量分析器は、全て非限定的実施例であるが、三連四重極、線形イオントラップ、四重極飛行時間型、Orbitrap、または他のフーリエ変換質量分析計のいずれかであることを理解されたい。
【0024】
図1に示されるように、例示的質量分析計システム100は、加えて、特定のMS用途に応じて、種々の異なる動作モードのために、RF、AC、および/またはDC成分を伴う電位を四重極ロッド、種々のレンズ、および補助電極に印加し、質量分析計システム100の要素を構成するように、コントローラ103によって制御され得る、1つまたはそれを上回る電力供給源(例えば、RF電力供給源105およびDC電力供給源107)を含むことができる。コントローラ103はまた、実行されるタイミングシーケンスの共同制御を提供するために、種々の要素に連結されることができることを理解されたい。故に、コントローラは、本明細書のその他で論じられるように、質量分析計システム100を制御するために、協働方式で種々の構成要素に給電する電源に制御信号を提供するように構成されることができる。
【0025】
Q0、Q1、Q2、およびQ3は、当技術分野において公知のように、例えば、開口レンズIQ1、IQ2、およびIQ3によって分離され、大気圧下に排気される、隣接するチャンバ内に配置されることができる。一例として、機械的ポンプ(例えば、ターボ分子ポンプ)が、真空チャンバを適切な圧力まで排気するために使用されることができる。出射レンズ115は、Q3と検出器116との間に位置付けられ、検出器116の中へのイオン流動を制御することができる。いくつかの実施形態では、短太ロッドのセットもまた、近隣の対の四重極ロッドセット間に提供され、四重極間のイオンの移送を促進することができる。短太ロッドは、Brubakerレンズとして役割を果たすことができ、例えば、レンズがオフセット電位に維持される場合、隣接するレンズの近傍に形成され得る、任意のフリンジ場との相互作用を最小限にすることに役立つことができる。非限定的実施例として、図1は、イオンの流動をQ1の中に集束させるためのIQ1とQ1との間の短太ロッドSTを描写する。同様に、短太ロッドSTは、例えば、伸長ロッドセットQ2の上流および下流にも含まれる。
【0026】
イオン源102は、イオンを発生させるための任意の公知のまたは今後開発されるイオン源であって、本教示に従って修正されることができる。本教示と併用するために好適なイオン源の非限定的実施例として、とりわけ、大気圧化学イオン化(APCI)源、エレクトロスプレーイオン化(ESI)源、連続イオン源、パルスイオン源、誘導結合プラズマ(ICP)イオン源、マトリクス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)イオン源、グロー放電イオン源、電子衝突イオン源、化学イオン化源、または光イオン化イオン源が挙げられる。
【0027】
質量分析計100の動作の間、イオン源102によって発生されるイオンは、オリフィスプレート104およびスキマ106(すなわち、入口オリフィス112a)内の開口を通して連続的に通過させ、狭小かつ非常に集束されたイオンビームをもたらすことによって、コヒーレントイオンビームの中に抽出されることができる。種々の実施形態では、約1Torr〜約4Torrのおおよその範囲内の圧力まで排気され得るが、他の圧力も、本目的または他の目的のために使用され得る、中間圧力チャンバ110が、オリフィスプレート104とスキマ106との間に位置することができる。いくつかの実施形態では、イオンは、ガス動態および無線周波数場の組み合わせを使用して、イオンビームの付加的集束および微調整を提供するために、1つまたはそれを上回る付加的真空チャンバおよび/または四重極(例えば、QJet(R)四重極または他のRFイオンガイド)を横断することができる。
【0028】
イオン源102によって発生されるイオンは、入口オリフィス112aを通して伝送され、本教示に従って、望ましくないイオン(例えば、干渉/汚染イオン、高質量イオン)がより低い圧力の真空チャンバ114の中に伝送されることを防止しながら、さらなる処理のために、イオン源102から受容されたイオンの一部を下流の質量分析器の中に伝送するように動作し得る、多極イオンガイド120(すなわち、Q0)に入射する。例えば、本教示の種々の側面によると、以下に詳細に論じられるように、多極イオンガイド120は、多極イオンガイド120の構成要素への種々のRFおよび/またはDC電位の印加に応じて、着目イオンが、衝突冷却され(例えば、真空チャンバ112の圧力と併せて)、さらなる処理のために、出射開口112bを通して下流の質量分析器の中に伝送される一方、望ましくないイオンが、多極イオンガイド120内で中性化され、それによって、下流の処理ステップにおける汚染および/または干渉の潜在的源を低減させ得るように、四重極ロッドセット130と、多極イオンガイド120の一部に沿って延在し、四重極ロッドセット130のロッド間に介在される、複数の補助電極140とを備えることができる。その中に多極イオンガイド120が格納される、真空チャンバ112は、チャンバを衝突冷却を提供するために好適な圧力まで排気するように動作可能な機械的ポンプ(図示せず)と関連付けられることができる。例えば、真空チャンバは、約1mTorr〜約10mTorrのおおよその範囲内の圧力まで排気されることができるが、他の圧力も、本目的または他の目的のために使用されることができる。例えば、いくつかの側面では、真空チャンバ112は、四重極ロッドの圧力×長さが2.25×10−2Torr−cmを上回るような圧力に維持されることができる。レンズIQ1(例えば、オリフィスプレート)が、Q0の真空チャンバと隣接するチャンバとの間に配置され、2つのチャンバ112、114を隔離することができる。
【0029】
Q0からレンズIQ1の出射開口112bを通して伝送された後、イオンは、イオンガイドチャンバ112のものより低く維持され得る圧力まで排気され得る真空チャンバ114内に位置し得る、隣接する四重極ロッドセットQ1に入射することができる。非限定的実施例として、真空チャンバ114は、約1×10−4Torr未満(例えば、約5×10−5Torr)の圧力に維持されることができるが、他の圧力も、本目的または他の目的のために使用されることができる。当業者によって理解されるであろうように、四重極ロッドセットQ1は、着目イオンおよび/または着目イオンの範囲を選択するように動作され得る、従来の伝送RF/DC四重極質量フィルタとして動作されることができる。一例として、四重極ロッドセットQ1は、質量分解モードで動作するための好適なRF/DC電圧が提供されることができる。理解されるはずであるように、Q1の物理特性および電気特性を考慮して、印加されるRFおよびDC電圧に関するパラメータが、Q1が選定されるm/z率の伝送窓を確立し、これらのイオンが概して妨害されずにQ1を横断し得るように、選択されることができる。しかしながら、窓外のm/z率を有するイオンは、四重極内で安定した軌道を達成せず、四重極ロッドセットQ1を横断することを防止されることができる。本動作モードは、Q1に関する1つの可能性として考えられる動作モードにすぎないことを理解されたい。一例として、Q1とQ2との間のレンズIQ2は、四重極ロッドセットQ1がイオントラップとして動作されるように、Q1よりはるかに高いオフセット電位に維持されることができる。そのような様式では、入射レンズIQ2に印加される電位は、Q1内にトラップされたイオンが、例えば、イオントラップとしても動作され得る、Q2の中に加速され得るように、選択的に降下される(例えば、質量選択的に走査される)ことができる。
【0030】
四重極ロッドセットQ1を通して通過するイオンは、示されるように、加圧されたコンパートメント内に配置され得、約1mTorr〜約10mTorrのおおよその範囲内の圧力において、衝突セルとして動作するように構成され得るが、他の圧力も、本目的または他の目的のために使用され得る、レンズIQ2を通して隣接する四重極ロッドセットQ2の中に通過することができる。好適な衝突ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等)が、ガス入口(図示せず)を用いて提供され、イオンビーム内のイオンを熱平衡化および/または断片化することができる。いくつかの実施形態では、四重極ロッドセットQ2ならびに入射および出射レンズIQ2およびIQ3への好適なRF/DC電圧の印加は、随意の質量フィルタ処理を提供することができる。
【0031】
Q2によって伝送されるイオンは、IQ3によって上流と出射レンズ115によって下流とに境界される、隣接する四重極ロッドセットQ3の中に通過することができる。当業者によって理解されるであろうように、四重極ロッドセットQ3は、Q2のものと比較して低動作圧力、例えば、約1×10−4Torr未満(例えば、約5×10−5Torr)で動作されることができるが、他の圧力も、本目的または他の目的のために使用されることができる。当業者によって理解されるであろうように、Q3は、いくつかの様式において、例えば、走査RF/DC四重極として、または線形イオントラップとして、動作されることができる。Q3を通した処理または伝送に続いて、イオンは、検出器116の中に出射レンズ115を通して伝送されることができる。検出器116は、次いで、本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法に照らして、当業者に公知の様式において動作されることができる。当業者によって理解されるであろうように、本明細書の教示に従って修正される任意の公知の検出器が、イオンを検出するために使用されることができる。
【0032】
ここで図2および3を参照すると、図1の例示的多極イオンガイド120が、より詳細に描写される。最初に、図2に関して、多極イオンガイド120は、図1に描写される補助電極140の場所を横断する断面概略図で描写される。示され、前述のように、多極イオンガイド120は、概して、入口オリフィス112aに隣接して配置される近位入口端から出射開口112bに隣接して配置される遠位出口端まで延在する、4つのロッド130a、bのセットを備える。ロッド130a、bは、イオンガイド120の中心軸を囲繞し、それに沿って延在し、それによって、それを通してイオンが伝送される、空間を画定する。当技術分野において公知のように、四重極ロッドセット130を形成する、ロッド130a、bはそれぞれ、中心軸の両側のロッドが、それに実質的に同じRF信号が印加される、ロッド対をともに形成するように、RF電力供給源に結合されることができる。すなわち、ロッド対130aは、第1の周波数および第1の位相における第1のRF電圧を第1の対のロッド130aに提供する、第1のRF電力供給源に結合されることができる。一方、ロッド対130bは、第2の周波数(第1の周波数と同一であり得る)であるが、第1の対のロッド130aに印加されるRF信号と位相が反対である、第2のRF電圧を提供する、第2のRF電力供給源に結合されることができる。当業者によって理解されるであろうように、DCオフセット電圧もまた、四重極ロッドセット130のロッド130a、bに印加されることができる。
【0033】
図2に示されるように、多極イオンガイド120は、加えて、同様に中心軸に沿って延在する、四重極ロッドセット130のロッド間に介在される複数の補助電極140を含む。図2に示されるように、各補助電極140は、四重極ロッドセット130のロッド130a、bによって別の補助電極140から分離されることができる。さらに、補助電極140はそれぞれ、第1の対のロッド130aと第2の対のロッド130bに隣接して、かつその間に配置されることができる。以下に詳細に論じられるように、補助電極140はそれぞれ、本明細書のその他に説明されるように、多極イオンガイド120からのイオンの伝送を制御または操作するように、補助電気信号を補助電極140に提供するために、RFおよび/またはDC電力供給源(例えば、図1の電力供給源105および107)に結合されることができる。非限定的実施例として、一実施形態では、四重極ロッドセット130a、bのロッドに印加されるDCオフセット電圧に等しいDC電圧が、補助電極140に印加されることができる。補助電極140に印加されるそのような同等DC電圧は、多極イオンガイドが従来のコリメート四重極イオンガイドとして機能するであろうように、多極イオンガイド120内のイオンによって被られる半径方向力に実質的に影響を及ぼさないであろうことを理解されたい。代替として、本教示の種々の側面によると、四重極ロッドセット130のロッド130a、bは、第1の周波数および第1の位相において第1の対のロッド130aに印加される第1のRF電圧と、第2の周波数であるが、第2の対のロッド130bに印加される位相と反対である、(例えば、第1のRF電圧と同一振幅(V0−p)の)第2のRF電圧とを用いて、DCオフセット電圧に維持されるが、全て非限定的実施例であるが、i)DCオフセット電圧と異なるが、RF成分を伴わない、DC電圧と、ii)第3の振幅および周波数(例えば、第1の周波数と異なる)および第3の位相におけるものであるが、DC電圧がDCオフセット電圧と同等である、RF信号と、iii)DCオフセット電圧と異なるDC電圧と第3の振幅および周波数ならびに第3の位相におけるRF信号の両方とを含む、種々の補助電気信号が、補助電極140に印加されることができる。さらに、本教示の種々の側面による、補助電極140に印加される補助RFおよび/またはDC信号は、四重極イオンガイド内のイオンの半径方向振幅を増加させるために利用される、当技術分野において公知の他の技法と組み合わせられることができることを理解されたい。そのような例示的技法として、全て非限定的実施例であるが、双極DC印加、四重極DC印加、および四重極のロッドに印加される補完AC信号であって、イオンビーム内のイオンのいくつかと共鳴もしくはほぼ共鳴する、AC信号を使用する、共鳴励起が挙げられる。
【0034】
本教示に照らして、補助電極140は、種々の構成を有することができることが理解されるであろう。一例として、補助電極140は、種々の形状(例えば、丸形、T形状)を有することができるが、T形状電極は、長方形ベース140aからイオンガイド120の中心軸に向かうステム140bの延在部が、補助電極の最内伝導性表面が中心軸により近接して配置される(例えば、イオンガイド120内の場の強度を増加させるために)ことを可能にするため、好ましくあり得る。種々の側面では、T形状電極は、ステム140bの最内半径方向表面が補助電極140の全長に沿って中心軸から実質的に一定距離のままであるように、その長さに沿って実質的に一定断面を有することができる。丸形補助電極(または他の断面形状のロッド)もまた、本教示の種々の側面に従って使用されることができるが、概して、四重極ロッド130a、b間の限定された空間に起因して、四重極ロッド130a、bと比較してより小さい断面積を呈する、および/または中心軸からのその増加される距離に起因して、より大きい補助電位の印加を要求するであろう。
【0035】
前述のように、補助電極140は、四重極ロッド130a、bの全長に沿って延在する必要はない。例えば、補助電極140は、四重極ロッドセット130の長さの半分未満(例えば、33%未満、10%未満)の長さを有することができる。従来のQ0四重極のロッド電極は、約10cm〜約30cmの範囲内の縦軸に沿った長さを有することができる一方、補助電極140は、全て非限定的実施例であるが、10mm、25mm、または50mmの長さを有することができる。さらに、図1は、四重極ロッドセット130の近位端と遠位端との間の中間あたりに配置される補助電極140を描写するが、補助電極140は、本描写される例示的実施形態と比較してより近位またはより遠位に位置付けられることもできる。一例として、補助電極140は、四重極ロッドセット130の近位3分の1、中央3分の1、または遠位3分の1のいずれかに配置されることができる。実際、補助電極140の比較的により短い長さのため、四重極ロッドセット130a、bは、補助電極140の複数のセットを中心軸に沿った種々の位置に収容することができることを理解されたい。一例として、本教示の範囲内において、質量分析計システム100は、第1の補助電気信号(例えば、ロッド130a、bのDCオフセット電圧と異なるDC電圧)が印加され得る、補助電極の第1の近位セットと、第2の補助電気信号(例えば、RF成分を有する)が印加され得る、補助電極の1つまたはそれを上回る遠位セットとを含むことができる。
【0036】
ここで図3を参照すると、例示的プロトタイプのイオンガイド120の一部が、描写される。図3に示されるように、イオンガイド120は、ベース部分140aと、そこから延在するステム部分140bとを有する、4つのT形状電極140を備える。10mmの長さであって、約6mmの長さのステム140bを有する、電極140は、本教示の種々の側面によると、四重極ロッドセット130の所望の場所に搭載され得る、搭載リング142に結合されることができる。非限定的実施例として、例示的搭載リング142は、四重極ロッドセット130のロッドに(例えば、想像線として示される四重極130aと)しっかりと係合するための切り欠きを備える。示されるように、RF電力供給源105および/またはDC電力供給源107に結合され得る、単一導線144もまた、実質的に同じ補助電気信号が補助電極140のそれぞれに印加されるように、補助電極140のそれぞれに電気的に結合されることができる。
【実施例】
【0037】
前述のように、種々のRFおよび/またはDC信号が、本教示によると、多極イオンガイド120から下流の真空チャンバ114の中へのイオンの伝送を制御または操作するように、補助電極140に印加されることができる。前述の教示は、ここで、本教示を限定するのではなく、実証することを前提として、i)ロッド130a、bに印加されるDCオフセット電圧と異なるDC電圧(RF成分を伴わない)が、図2の例示的補助T形状電極140に印加され、ii)RF信号が、図2の例示的補助T形状電極140に印加され(電極140に印加されるDC電圧は、DCオフセット電圧と同等である)、iii)ロッド130a、bに印加されるDCオフセット電圧と異なるDC電圧と、RF信号の両方が、図2の例示的補助T形状電極140に印加される、以下の実施例を使用して実証されるであろう。
【0038】
最初に、図4A−Cを参照すると、Q0の四重極ロッド(長さ約18cmを有する)の近位入口端から下流約12cmに位置する、長さ約50mmを有する補助T形状電極140を含むように本教示に従って修正された、4000QTRAP(R)システム(SCIEXによって市販)を通した種々のイオンの伝送を実証する、例示的データが、描写される。Q0の四重極ロッドは、−10V DCオフセットに維持され、異なる振幅(すなわち、189V0−p、283V0−p、378V0−p、および567V0−p)の種々のRF信号が、四重極ロッドに印加された。四重極ロッドに印加される主駆動RFは、約1MHzであって、隣接する四重極ロッドに印加される信号は、相互に位相が反対であった。
【0039】
図4A−Cは、それぞれ、補助電極に印加されるDC電圧がDCオフセット電圧(すなわち、−10V DC)から調節されるにつれて、多極イオンガイドを通して322Da、622Da、および922Daのm/zを呈する、イオンの伝送の変化を描写する。例えば、ここで図4Aを具体的に参照すると、322Daのm/zを有するイオンの伝送は、四重極ロッドに印加される種々のRF信号毎に、DCオフセット電圧から約±10〜15V DCの補助DC電圧(すなわち、約−18〜22V DCおよび+12〜15V DC)において実質的に停止される。しかしながら、図4Bおよび4Cに示されるように、増加されるm/zのイオンに関するDCカットオフは、四重極ロッドに印加されるRFの振幅に応じて実質的に変動する(概して、V0−pが増加するにつれて、ますますより高い補助DC電圧が、多極イオンガイドを通したイオンの伝送を停止するために要求される)。一例として、922Daのm/zを有するイオンに関して、カットオフは、189V0−pでは、DCオフセット電圧から約±10V DC(すなわち、−20V DCおよび0V DC)である一方、567V0−pでは、カットオフは、DCオフセット電圧から約±25V DC(すなわち、−35V DCおよび+15V DC)である。これらの実施例に照らして、四重極ロッドセットおよび/または補助DC信号に印加されるRF電圧は、下流の質量分析器への全イオンの伝送を実質的に阻止するように、調節されることができる(例えば、コントローラ103を介して)ことを理解されたい。非限定的実施例として、補助DC電圧は、イオン源によって発生される実質的に全イオンのカットオフポイントを超えて、DCオフセット電圧から調節されることができる。前述のデータはまた、四重極ロッドに印加されるRF信号の振幅が、多極イオンガイドを通したイオンの伝送を防止するように、補助DC電圧とDCオフセット電圧との間の差異の増加と別個に、またはそれと連動して同時に減少されることができることを示す。故に、本教示による方法およびシステムは、例えば、検体が連続イオン源(例えば、液体クロマトグラフィの勾配溶出の初めまたは後の部分における)に送達されているサンプル中に存在しないことが既知である、および/または下流の質量分析器(例えば、イオントラップデバイス)がイオンガイドを通して以前に伝送されたイオンを処理している、時間周期の間、下流の質量分析器の中へのイオンの流動を停止する(例えば、汚染をさらに低減させる)ことができる。
【0040】
図4A−Cを継続して参照すると、約−10V DCの補助DC電圧では、イオンガイド内の電場は、多極イオンガイドが従来のコリメート四重極として機能するであろうように(すなわち、補助電極が存在さえしないであろうかのように)、補助DC電圧によって実質的に改変されないであろうことを理解されたい。本教示の種々の側面による方法およびシステムは、望ましくないイオン(例えば、本明細書のその他で、以下の図5A−Cに関して具体的に論じられるように、高m/zの干渉/汚染イオン)の伝送を低減させるために効果的であり得るが、図4A−Cは、驚くことに、イオンガイドを通した全体的イオン伝送が、補助DC信号がDCオフセット電圧から調節されるにつれて、従来のコリメート四重極と比較して増加され得ることを実証する。すなわち、図4A−Cに示されるように、全体的検出されたイオン電流は、最初に、補助DC電圧がDCオフセット電圧に維持されるときに発生されるイオン電流と比較して、補助DC電圧によって増加される。任意の特定の理論によって拘束されるわけではないが、イオン電流の本増加は、補助DC信号によって引き起こされたイオンガイド内のイオンのクラスタ分離の増加に起因し得ると考えられる。これらの重く帯電されたクラスタは、従来のコリメート四重極Q0内で中性化される、および/またはQ0を通した下流の真空チャンバの中への伝送に続き、下流の光学要素および質量分析器を汚染し得る一方、本教示の種々の側面による方法およびシステムは、驚くことに、イオンガイド内のこれらの帯電されたクラスタをクラスタ分離し、それによって、イオンをそこから解放し、潜在的に、典型的には従来のシステム内で喪失される、着目イオンの伝送/検出を可能にすることによって、感度を増加させるために使用されることができる。
【0041】
ここで図5A−Cを参照すると、Q0の四重極ロッド(長さ約18cmを有する)の近位入口端から約12cm下流に位置する、長さ約50mmを有する補助T形状電極を含むように本教示の種々の側面に従って修正された、4000QTRAP(R)システムを通したイオン化された標準(Agilent ESI Tuning Mix、G2421!、Agilent Technologies)の伝送に続く例示的質量スペクトルが、描写される。Q0の四重極ロッドは、−10V DCオフセットに維持され、189V0−pのRF信号が、四重極ロッドに印加された。四重極ロッドに印加される主駆動RFは、約1MHzであって、隣接する四重極ロッドに印加される信号は、相互に位相が反対であった。
【0042】
図5Aの質量スペクトログラムを生成するために、補助電極は、イオンガイドが従来のコリメート四重極として実質的に機能されるように、−10V DC(すなわち、四重極ロッドの同一DCオフセット電圧)に維持された。図5Bに関して、補助DC電圧は、補助ロッドの電圧を−15V DC(ΔV=DCオフセットに対して−5VDC)まで減少させることによって、DCオフセット電圧から調節された。すなわち、四重極ロッドと比較すると、補助電極は、イオン源によって発生される正イオンに5Vより誘引性であった。図5Cのスペクトログラムを得るために、補助DC電圧は、−19V DC(ΔV=−9V DC)までさらに減少された。RF信号は、補助電極に印加されなかった。
【0043】
図5B図5Aを比較すると、DCオフセット電圧に対して補助DC電圧を調節する(この場合、減少させ、補助電極を正イオンにより誘引性にする)ことによって、図5Bの構成は、高m/zイオンをフィルタ処理するために効果的であったことが観察され得る。例えば、識別可能ピークが、図5Aでは、1518.86Daおよび1521.66Daに存在するが、これらのピークは、図5Bには存在しない。実際、図5Bでは、約1400Daを上回るm/zにおいて、判別可能信号はない。
【0044】
図5C図5Bを比較すると、DCオフセット電圧に対して補助DC電圧をさらに減少させることによって、高m/zイオンはさらにフィルタ処理されることが観察される。例えば、識別可能ピークが、図5Bでは、921.25Daに存在するが、本ピークは、図5Cでは存在しない。実際、図5Cでは、約900Daを超えると、判別可能信号はない。また、低m/zイオンのフィルタ処理増加もまた、図5C図5Bを比較すると観察され得るが、本効果は、高域通過フィルタ効果ほど顕著ではないことに留意されたい。例えば、図5Bでは、235.66Daに存在する識別可能ピークは、図5Cでは存在しない。したがって、本教示の種々の側面によるイオンガイドは、補助DC信号を調節し、それによって、潜在的に、干渉/汚染イオンが下流の質量分析器に伝送されることを防止することによって、低域通過フィルタ(図5Bにおけるように)として、および/または帯域通過フィルタ(図5Cにおけるように)として動作されることができることが理解されるであろう。
【0045】
ここで図6A−Dを参照すると、図5A−Cを参照して前述のように実質的に修正された、4000QTRAP(R)システムを通したイオン化された標準(Agilent ESI Tuning Mix、G2421!、Agilent Technologies)の伝送に続く、例示的質量スペクトルが、描写される。しかしながら、図6A−Dの質量スペクトルを得るために、283V0−pのRF信号が、四重極ロッドに印加された(依然として、−10V DCオフセットに維持される)。図6A−Dの実験条件はさらに、電圧を減少させる(すなわち、補助DC信号を−10VDCオフセットに対してより負にする)のではなく、補助DC電圧が、図6Bにおけるように0V DC(ΔV=DCオフセットに対して10V DC)、図6Cにおけるように+5V DC(ΔV=+15V DC)、および図6Dにおけるように+9V DC(ΔV=+19V DC)まで補助ロッドの電圧を増加させることによって、DCオフセット電圧から調節されたという点において異なる。すなわち、四重極ロッドと比較して、補助電極は、イオン源によって発生される正イオンにより反発性となった。図6A−6Dを比較すると、イオンガイドは、補助電極が四重極電極に対してますます正(すなわち、正イオンにより反発性)になるにつれて、低m/zイオンをより良好にフィルタ処理することが認められる。したがって、本教示の種々の側面によるイオンガイドは、補助DC信号をより正にし、それによって、潜在的に、干渉/汚染低m/zイオンが下流の質量分析器に伝送されることを防止することによって、高域通過フィルタとして動作されることが理解されるであろう。
【0046】
種々の側面によると、本教示によるイオンガイドは、代替として、または加えて、RF信号が、多極イオンガイド120から下流の真空チャンバ114の中へのイオンの伝送を制御または操作するよう、補助電極に印加されるように、RF電力供給源に結合されることができる。ここで図7A−Cを参照すると、Q0の四重極ロッド(長さ約18cmを有する)の近位入口端から約12cm下流に位置する、長さ約10mmを有する補助T形状電極を含むように本教示の種々の側面に従って修正された、4000QTRAP(R)システムを通したイオン化された標準(Agilent ESI Tuning Mix、G2421!、Agilent Technologies)の伝送に続く、例示的質量スペクトルが、描写される。Q0の四重極ロッドは、−10V DCオフセットに維持され、283V0−pのRF信号が、四重極ロッドに印加された。四重極ロッドに印加される主駆動RFは、約1MHzであって、隣接する四重極ロッドに印加される信号は、相互に位相が反対であった。
【0047】
図7Aの質量スペクトログラムを生成するために、補助電極は、イオンガイドが従来のコリメート四重極として実質的に機能されるように、−10V DC(すなわち、四重極ロッドの同一DCオフセット電圧)に維持された(すなわち、補助RF信号は、印加されなかった)。図7Bに関して、補助DC電圧もまた、−10V DCに維持されたが、同じ補助RF信号が、周波数80kHzにおいて300Vp−pで補助電極のそれぞれ(例えば、図2および3の4つの電極140)に印加された。同様に、図7Cに関しても、補助DC電圧は、−10V DCに維持され、同じ補助RF信号が、周波数80kHzにおいて350Vp−pで補助電極のそれぞれに印加された。図7A−Cを比較すると、補助電極に印加されるRF信号の振幅の増加は、スペクトルの低m/z部分に殆ど乃至全く影響を及ぼさずに、高m/zイオンを質量スペクトルから除去するためにますます効果的となり得ることが観察される。例えば、識別可能ピークが、図7Aでは、2116.22Daに存在するが、本ピークは、図7Bでは、大幅に減衰される。図7C図7Bを比較すると(補助RF信号の振幅を350Vp−pから300Vp−pに増加後)、高m/zイオンがさらにフィルタ処理されることが観察される。例えば、識別可能ピークが、図7Bでは、920.77Daおよび1522.36Daに存在するが、これらのピークは、図7Cでは存在しない。実際、図7Cでは、約900Daを超えると、判別可能信号はない。したがって、本教示の種々の側面によるイオンガイドでは、補助電極に印加されるRF信号は、高m/zイオンが下流の質量分析器に伝送されることを防止し、それによって、潜在的に、イオン源によって発生されるイオン中に存在する干渉/汚染イオンの影響を防止するように調節されることができることが理解されるであろう。
【0048】
さらに、本教示の種々の側面によると、補助電極に印加される補助DC信号および補助RF信号は両方とも、多極イオンガイドからのイオンの伝送を制御または操作するように調節されることができる。ここで図7Aおよび図8A−Fを参照すると、例示的質量スペクトルは、DCおよびRF補助信号の両方への調節の影響を描写する。前述のように、図7Aの質量スペクトログラムを生成するために、補助電極は、イオンガイドが従来のコリメート四重極として実質的に機能されるように、−10V DC(すなわち、四重極ロッドの同一DCオフセット電圧)に維持された(すなわち、補助RF信号は、印加されなかった)。図8A図7Bと同じ)では、補助DC電圧は、−10V DCに維持されたが、周波数80kHzで300Vp−pにおける同じ補助RF信号が、補助電極のそれぞれに印加された。図8B−Eのイオンスペクトルに関して、補助RF信号は、周波数80kHzにおいて300Vp−pに維持された一方、電極に印加される補助DC電圧は、それぞれ、図8Bにおけるように−25V DC(ΔV=DCオフセットに対して−15V DC)、図8Cにおけるように−30V DC(ΔV=−20V DC)、図8Dにおけるように−36V DC(ΔV=−26V DC)、図8Eにおけるように−38V DC(ΔV=−28V DC)、および図8Fにおけるように−45V DC(ΔV=−35V DC)に減少された。付随のデータおよび本教示に照らして、RFおよびDC補助信号は両方とも、本明細書に説明される種々の側面に従ってイオンガイドによる所望のフィルタ処理を提供するように調節(例えば、調整)されることができることが、当業者によって理解されるであろう。非限定的実施例として、図8A−Fのデータは、RF信号の印加が、高m/zイオンのフィルタ処理のために要求される補助DC電圧の振幅を低減させることができる一方、低m/zイオンが、概して影響されないままであることを実証することを理解されたい(−19V DCの補助DC電圧(ΔV=DCオフセットに対して−9V DC)における実質的低m/z除去を描写する、図5Cと比較して)。
【0049】
当業者は、本明細書に説明される実施形態および実践の多くの均等物を把握する、または日常的にすぎない実験を使用して解明可能であろう。一例として、種々の構成要素の寸法および種々の構成要素に印加される特定の電気信号に関する明示的値(例えば、振幅、周波数等)は、単に、例示であって、本教示の範囲を限定することを意図するものではない。故に、本発明は、本明細書に開示される実施形態を限定するものではなく、法律の下で可能な限り広範囲であるように解釈されるべきである、以下の請求項から理解されるものとすることを理解されたい。
【0050】
本明細書で使用される見出しは、編成目的のためにすぎず、限定として解釈されない。本出願人の教示は、種々の実施形態と併せて説明されたが、本出願人の教示が、そのような実施形態に限定されることを意図するものではない。対照的に、本出願人の教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替、修正、および均等物を包含する。
図1
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