【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、代替エネルギ装置であって、好ましくは、上記欠点の1又は2以上を、少なくとも部分的に、回避する装置を提供することにある。さらに、そのような代替エネルギ装置を含む代替エネルギシステムであって、好ましくは、上記欠点の1又は2以上を、少なくとも部分的に、回避するシステムを提供することも本発明の一態様である。さらに、電気及び/又はエネルギキャリアを貯蔵及び再生する代替方法であって、好ましくは、上記欠点の1又は2以上を、少なくとも部分的に、回避する方法の提供もまた本発明の一態様である。
【0007】
一日周期の電力貯蔵には電池が最も効率的であろう。一方、季節スケールの貯蔵には、豊富に存在する元素に基づく人工燃料への変換を必要とするであろう。これらの二つの方向は、常に、別個のソリューション、あるいは、むしろ競合するソリューションとして扱われてきた。
【0008】
ここで、我々は、Ni−Fe電池は、極めて効率的な、一体化された電池電解器(integrated battery-electrolyser)として作動するよう改良可能であることを示す。我々は、電池の全容量に加え、等量、又は、より多量の電荷が、81%以上の総合エネルギ効率で水素の製造に使用し得ることを見出した。ナノ構造のNiOOH、及び、還元されたFeからなる充電された電池の電極は、それぞれ、効率的な酸素及び水素発生触媒として作動し、電池がフル充電されたとき、水素を生成する。このようにして、当該デバイスの作動時間は、電池の充電時間を超えて拡大する。したがって、ガス生成の形で、有用なエネルギ貯蔵をなおも行うことができる。再生可能な電気の生産が減少したとき、電池は充電されており、放電・電力供給に使用される。電力供給が変動したとしても、当該デバイスの全期間にわたる稼働が可能となる。これは、一のデバイスとして一体化されていない、単一の電池又は単一の電解装置とは対照的である。さらに、電池の過電圧により費消される熱は(特に、環境への熱損失を低減するために、断熱及び熱管理が適用される場合)、直接、水素の発生に使用される。これに関し、水の電解による水素及び酸素の生成には熱の供給が必要であることに留意されたい。断熱及び熱管理システムには、一体化された電池電解器の周囲に断熱、及び、任意に冷却が含まれる。このような断熱及び熱管理は、充電及び水素発生期における電流により、例えば60℃までの加熱を可能とするものであっても、温度を60℃未満に維持するように制限するものであってもよい。したがって、特にエネルギ装置には、熱管理システムであって、機能性ユニット(後記参照)を5〜95℃の範囲から選択された温度、特に10〜75℃、好ましくは15〜70℃、或いは、例えば最大60℃に維持するように構成されたものを含むものであってもよい。
【0009】
我々の結果は、日周及び季節周期の電力貯蔵に対応する一体化された電池電解器であって、豊富な元素であるFe、Ni及びKOH(及び任意にLiOH及びNaOH)に基づく水ベース電解質の一体化された電池・電解器を示す。これは、無制限に切り替え可能な昼間用電力貯蔵装置として、そして夜間用電力源として、フルタイムに近い適用性を有する、低コストで本質的にフレキシブルなデバイスにおける堅牢なグリッドスケールエネルギ貯蔵ソリューションを提供する。
【0010】
ニッケル鉄電池(Ni-Fe battery)はJungnerとEdisonによって導入された。負極にはFe(OH)
2が存在し、これは充電時にFeに還元される:Fe(OH)
2+2e
− → Fe+2OH
−(−0.877V vs. SHE)。一方、陽極にはNi(OH)
2が存在し、これは充電時にプロトンを放出する:Ni(OH)
2 +OH
− → NiOOH + H
2O + e
−(+0.49V vs. SHE)。電池の開路電位は1.37Vであり、これは6MのKOH電解液から水を分解させるのに必要な最小電位よりも高い。このため、正常な動作の下において、既に、水を水素と酸素に分解するリスクがあり、エネルギ損失、及び電解質の遅い損失を招く。次に、正極では、4OH
− → O
2 + 2H
2O + 4e
−の反応(+0.40 vs.SHE)が起こり得、一方、負極では、2H
2O +2e
− → H
2+2OH
−の反応(−0.83 vs. SHE)が起こり得る。また、Fe+2H
2O→Fe(OH)
2+H
2の反応は、自発的な自己放電をもたらすことが知られている。Ni(OH)
2とFe(OH)
2はより早い充放電速度を達成可能とするためナノ構造化される。H
+をNi(OH)
2中に貯蔵する理論容量は上記反応では289mAh/gに相当する。OH
−をFe(OH)
2中に貯蔵する理論容量は596mAh/gに相当する。
【0011】
アルカリ電解器は、水素及び酸素の生成に使用することができ、その効率(生成した水素のHHV(higher heating value、高位発熱量)を印加した電気エネルギで除した値)は、典型的には71%である。主たる活性成分は、Ni金属系正極(Ni metal based positive electrode)と、アルカリ電解液中のイオンを透過させつつ酸素から水素を分離するダイアフラム(diaphragm)又はセパレータによって分離されたNi(又はNi被覆された鉄)負極である。金属電極は、より高いガス生産速度のため、その多孔質構造(ラネーニッケル:Raney nickel)に基づき、広い表面積を有する。加えて、PtやPt−Ruなどの貴金属を負極に組み込むことが可能であり、これにより、水素製造に必要な過電圧を、例えば80℃、電極表面電流値0.5A/cm
2において200mVから50mVに低下させることができる。ダイアフラムはセラミック複合体であってよく、電解質は、やはり、強アルカリ溶液、特にKOH溶液であってよい。アルカリ電解器の効率はO
2及びH
2の生成の過電圧、電荷輸送、ガス輸送、並びに電極表面上の気泡形成によって制限される。
【0012】
したがって、本発明は、第1の態様において、エネルギ装置(energy apparatus)、特に、電気エネルギ貯蔵機能と電解機能の両方を備えたエネルギ装置であって、当該装置(システム)が機能性ユニットを備え、当該機能性ユニットが:
− 第1セル電極(a first cell electrode)と、(塩基性の)第1セル水性液(a (basic) first cell aqueous liquid、「液」)及び第1セルガス(a first cell gas)のための1又は2以上の第1セル開口(first cell openings)を含む第1セル(a first cell)であって、特に、第1セル電極が鉄系電極(iron based electrode)を含む第1セル;
− 第2セル電極(a second cell electrode)と、(塩基性の)第2セル水性液(a (basic) second cell aqueous liquid、「液」)及び第2セルガス(a second cell gas)のための1又は2以上の第2セル開口(second cell openings)を含む第2セル(a second cell)であって、特に、第2セル電極がニッケル系電極(nickel based electrode)を含む第2セル;
− セパレータであって、第1セルと第2セルが当該セパレータを共有し、当該セパレータはO
2及びH
2の1又は2以上が一方のセルから他方のセルに移動するのをブロックするように構成されるとともに、一価水酸化物(OH
−)、一価ナトリウム(Na
+)、一価リチウム(Li
+)及び一価カリウム(K
+)の1又は2以上に対する透過性を有するセパレータ;
−前記第1セル電極との電気接続中の第1の電気接続(a first electrical connection)、及び、前記第2セル電極との電気接続中の第2の電気接続(a second electrical connection);
を含むものを提供する。当該エネルギ装置は、さらに、次の1又は2以上を任意に含む。
− 前記第1セル水性液及び第2セル水性液のうちの1又は2以上の、前記機能性ユニットへの導入を制御するよう構成された水性液制御システム;
− 前記機能性ユニットからの第1セルガス及び第2セルガスの1又は2以上を貯蔵するように構成された貯蔵システム;
− (a)前記機能性ユニット中の第1セルガスの圧力、(b)前記貯蔵システム中の第1セルガスの圧力、(c)前記機能性ユニット中の第2セルガスの圧力、及び、(d)前記貯蔵システム中の第2セルガスの圧力、のうちの1又は2以上を制御するよう構成された圧力システム;
− 充電制御ユニットであって、外部電力源から受電するように構成され、かつ、当該電力を、少なくとも充電時間の一部において、前記機能性ユニットに対し、特に第1セル電極と第2セル電極の電位差1.37V超、例えば1.48V超、場合によっては2.0Vまで、で供給するように構成された充電制御ユニット;
− 電気により稼働されるべき受容体(a receiver)と、前記電気接続とを機能的に結合(coupling)するための第1コネクタユニット、並びに、前記第1セルガス及び第2セルガスのいずれか1又は2以上が供給されるデバイスと、前記貯蔵システムとを機能的に接続するための第2コネクタユニット;
− 水性液制御システム、貯蔵システム、圧力システム、及び充電制御ユニットの1又は2以上(特に、そのすべて)を制御するように構成された制御システム(「コントローラ」)。
【0013】
本発明のように、電池及び電解器を組み合わせて一の装置とすることには、重要な利点が多数存在する。
【0014】
例えば、通常、Ni−Fe電池の動作において、過電圧の印加及び水の分解は、損失因子と考えられているが、ここでは、そのエネルギは電解過程に利用され、より高い総合効率をもたらす。電池を充電し、水を電解する際に放散される熱は、水素及び酸素の生成に必要とされる。この必要とされる熱は、液体の水を気体のH
2及びO
2に分解する際のエントロピーの増加の結果である。エントロピーdSの増加は、反応を継続するのに必要とされる熱量TdSに対応し、ギブスの自由エネルギのdGを供給するにほぼ等しい。したがって、システムにより供給されるエネルギは、全体として、dG+TdS=dHに等しく、ここで、dGは電力として、TdSは熱として提供される。
【0015】
さらに、水素の生成は、鉄電極のFe金属への化学還元の際に起こり、その後、所望の期間にわたって継続する。バッテリ機能は優れて可逆的に動作し、このように過充電された時に、明らかにそのフル容量に達する。しかしながら、元来、Ni−Fe電池は、このようにフル充電されることはない。なぜならば、過電圧の発生、気体生成及び電解質補充の必要性のため、エネルギ効率が低いからである。ところが、ここではこれが意図的に行われ(各サイクルにおいて電力が十分に供給される場合)、これにより、明らかに電池電解器の寿命が現実に増加する。このような過充電が許容され、かつ、意図的に実施されることは、パワーエレクトロニクスをも相対的に単純化する。なぜならば、通常の電池システムにおいては、個々のセルレベルで過充電が防止され、電池セル管理に、より厳格性が要求されるからである。
【0016】
しかも、電池の機能に関し、高容量のエネルギ貯蔵(数kWh又はMWh、或いはそれ以上の容量)の達成に、多数の大容積電池セルが必要となる。これにより、電極アセンブリーの内部に広い活性表面積が自動的に達成され、電解機能に資することになる。
【0017】
さらに、電解器として、高すぎない過電圧で高電流密度に到達するために、表面積がより大きく、かつ、より粗く又はより多孔性のNi系電極を使用することができる。実際、そのような多孔性又は粗面領域は、蓄電用のNiをより多量に含有する電池で可能なものよりも小さくなる。また、従来のアルカリ電気分解器には、依然として、貴金属が触媒として含まれるが、本電池電解器には必要でない。
【0018】
本電池電解器の別の利点は、液体電解質に印加されている圧力で水素及び酸素を生成し得ることである。これは、水の加圧に対する低いエネルギ需要、及び、小さい過剰電位により、直接高圧の水素を製造が可能であることを意味する。そのような電気化学的な水素の製造は、機械的な水素ガスの圧縮より、有意に、より効率的であることに留意されたい。
【0019】
電極の電流密度は、電極の幾何学的表面積に基づき、0.001〜10A/cm
2の範囲であってよく、より一般的には、0.1〜2A/dm
2であってよい。さらに、電極(の寸法)は、充電電流0.2及び2A/dm
2において、それぞれ10時間以内又は1時間以内に(それらが)フル充電されるようなものであるため、本電池電解器が到達する電流密度は、典型的な電池の充電より高い点にも留意されたい。電解器では400mA/cm
2まで、又は2000mA/cm
2までの、より高い電流密度が使用されるので、本バトライザー(battolyser)は、より厚い陽極及び負極(すなわち、例えば、電極表面積に基づき、800又は4000mAh/cm
2までの貯蔵容量のもの)を有していてもよい。約5時間のフル充電時間は、太陽光発電からの電力を用いて昼間に行うセルの充電に適合し、さらに、水素を製造するための時間を残す。電池の電極において広い活性表面積が利用可能であるため、そのような電流密度では、電解の過剰電位は低いままにとどまる。これにより、より高いエネルギ効率がもたらされる(典型的な電解器は、2.0Vで作動するのに対し、本明細書に規定する電池電解器は、水素生成時、1.48V乃至2.0Vで作動する。)残りの過剰電圧は、水素及び酸素の生成に必要とされる。
【0020】
また、白金/ルテニウムのような貴金属は、Fe系負極又はNi系正極のいずれにおいても必要とされない(低コスト化)。しかし、所望の場合には、貴金属が適用されてもよい。
【0021】
さらに、電池電解デバイス(a battery and electrolyser device)は、エネルギの貯蔵に柔軟であるという利点を有する。電池が満充電になっても、なお多量のエネルギをガスとして保存することができる。太陽光発電システムの場合、電池のサイズは、夜間使用に必要な電力に適するサイズであって、余剰電力は、例えば、その後、冬期に使用するための気体として貯蔵するに適するサイズのものとされうることは明らかであろう。電力グリッド(electricity grid)の場合、電池電解器の存在は、迅速な応答のシンク(a rapid response sink)と電流源の両者が現に利用可能との利点を有する。太陽光や風力による電力の生産が変動し、電力が過剰又は過小に生産されたとき、電力グリッドの安定性のため、電力の取り込み及び供給において柔軟な資産が必要とされる。本装置は、電池機能を有しているので、電気の取り込みから電気の供給に切り替わるスイッチング時間は特に短い。
【0022】
さらに、二重目的装置の経済的利点は、その使用の時間充填率が非常に高くなり得ることである。電池は昼間(充電)も夜間(放電)も動き、完全に充電されても(なお)水素と酸素を生成するので、アイドル状態にはならない。再生可能エネルギで稼働する電解器は、それが実際に何時間使用されるであろうかは、常に計算上のボトルネックとなる。なぜならば、通常、効率損失を伴う水素への転化が開始する前に、まず、電池が充電され、その後においてのみ電解器のスイッチが投入されるからである。 通常のNi−Fe電池では、Ni(OH)
2の単位重量当たりの蓄電量は理論上の最大値289mAh/gに制限されるが、本電池電解器では当該電荷の何倍もが、水素としても保存され、単位貯蔵エネルギあたりの総コストを低減することができる。
【0023】
最後に、電極材料は、とにかく存在することが必要であるから、電池の電池電解器への変換に要する追加コストはそれほど高くない。圧力システムとセパレータ/ダイアフラムは、追加費用を要するが、別々に電池及び電解器を構築する場合より少ないであろう。システムは、また、2セットのパワーエレクトロニクスの代わりに、1セットのみを備え、これを連続使用するものであってもよい。
【0024】
上記のとおり、本エネルギ装置は、電気エネルギ貯蔵機能及び電解機能を有する。したがって、本装置は、電池と電解器の組合せである。電池を充電することで、電池は使用準備ができ、さらに水素を生成する。電池が満たされている場合でも、水素の生成を継続することができる。これにより充電された電池と、水素が提供される。これは、例えば、装置のエネルギやエネルギキャリアがまったく消費されていない時にも、行われ得る。用語「エネルギ」は、特に電気エネルギに関連する。用語「エネルギ担体」は、特に、水素ガス(H
2)に関し、これは燃料、例えば、エンジンの直接駆動用の燃料として使用可能であるばかりでなく、燃料電池による発電に間接的に使用することができる。したがって、本装置は、特に、電気車両及び/又は水素(及び/又は酸素)車両の充電・充填ポイントとして使用することができる(以下も参照)。
【0025】
本装置は、機能性ユニットを含む。しかし、エネルギ装置の一実施形態において、本装置はまた、複数の機能性ユニットを含んでいてもよい。例えば、電位差を増大させるために、2以上の機能性ユニットが(電気的に)直列に配置されていてもよい。しかし、例えば、電流を増大させるため、2以上の機能性ユニットが並列に配置されてもよい。さらに、2以上の機能性ユニットが存在する場合、直列配置と並列配置の組み合わせを適用することができる。
【0026】
特に、当該機能性ユニットは、第1セル電極(a first cell electrode)と、第1セル水性液(a first cell aqueous liquid)及び第1セルガス(a first cell gas)のための1又は2以上の第1セル開口(first cell openings)を含む第1セル(a first cell)であって、特に、第1セル電極が鉄系電極を含む第1セル、並びに、第2セル電極(a second cell electrode)と、第2セル水性液(a second cell aqueous liquid)及び第2セルガス(a second cell gas)のための1又は2以上の第2セル開口(second cell openings)を含む第2セル(a second cell)であって、特に、第2セル電極がニッケル系電極を含む第2セル、を含む。
【0027】
各セルは、少なくとも、それぞれの水性液を導入するための開口部を含む。使用される水性液は、特に、塩基性の水性液であり、例えば、KOH、LiOH及びNaOHの1又は2以上を含む。特に、OH
−の濃度は、少なくと3mol/lである、特に、水中の水酸化物(特に、KOH、NaOH及びLiOHの1又は2以上)の濃度は、4.5〜8.4mol/lの範囲である(KOHの場合、25〜47重量%)。したがって、これらの開口は、循環電解質と、KOH、NaOH及び/又はLiOHの選択された濃度を維持するために添加された水の入口として、それぞれ、構成されていてもよい。
【0028】
セル内の第1セル水性液及び第2セル水性液は、特に、アルカリ性であり、例えば、少なくともOH濃度0.1mmol/lOH、特に、少なくとも3mol/lOHであり、さらには、特に、少なくとも3mol/lOH、例えば、少なくとも約6mol/lOHである。セル内の液体は、水性液制御システムからの液体で補充することができる。補充する新鮮な水は必ずしもアルカリ性でなくてもよい。セル中のアルカリは、実質的に消耗しないこともあるからである。なお、「セル水性液(cell aqueous liquid)」は、電解質、電解液と記載することがある。
【0029】
また、各セルはさらなる開口を含んでいてもよく、特に、水性液の除去及び/又はガスの除去のために構成された開口を含んでいてもよい。両者が同一の開口から流出する構造であってもよい。第1セルガスは特にH
2ガスを含み、第2セルガスは特にO
2を含む。セル中の水性液及びセルガスは、同じ開口から流出してもよい。あるいは、又は、これに加えて、2以上の開口を使用してもよく、例えば、1つを水性液除去用、1つをガス除去用としてもよい。
【0030】
各セルが2つの開口部を有するとき、水性液は各セルを通って流れてもよく、その際、流れはガスの除去、冷却(又は加熱)を補助し、必要な場合、水を補充する。電極の表面積1cm
2あたりの印加電流に応じ、電流(体積/面積/時間)は、例えば、約0.3μl/cm
2/h〜3.5ml/cm
2/hの範囲内であってよい(前者の値は約0.001A/cm
2に相当し、後者の値は約10A/cm
2に相当する。本明細書の他の箇所も参照)。
【0031】
さらに、各セルは電極を含む。
【0032】
第1セルは第1電極を含み、第1電極は、特に、鉄系電極を含む。エジソン(Edison)のNi−Fe電池と同様に、鉄系電極は、充電状態で本質的にFe(金属)を、放電状態で本質的にFe(OH)
2を含むことができる。
【0033】
鉄系電極は、特に、以下のような手順に従って製造される。鉄は、最初に、希H
2SO
4に溶解され、硫酸第一鉄を生成する。後者は、再結晶により精製され、1070〜1120Kで焙焼される。焙焼物は十分に水洗され、ついで乾燥される。乾燥物は1020〜1070Kで水素により化学的還元のために処理され、再び、970〜1070Kで部分酸化される。後者のプロセスで、鉄粉とマグネタイトの混合物が生成する。当該混合物は添加物(Cu、FeS、HgOなど)とブレンドされ、ニッケルメッキした有孔スチールシート(perforated-steel sheet)から作られたポケットに入れられる。ポケットは、負極の形成に好適なニッケルメッキ鋼板上に固定される。鉄系電極はChakkaravarthyらがJournal of Power Sources, 35 (1991) 21-35(本文献は、参照のため、ここに組み入れられる)に記載のように、ニッケルメッキ鋼から作製した有孔ポケット(perforated pockets)を使用して、製造される。活性鉄材料は、さらに焼結により結合されていてもよく、或いは、代替的にPTFE又はポリエチレンによって結合されていてもよい。代替的に又は追加的に、第1電極は、カーボンやNi等の導電性添加剤を含む。しばしば記載されているNi−Fe電池とは異なり、本発明では、硫化物(FeS、硫化ビスマス、HgO等)やその他の水素発生を抑制する添加剤は使用しないか、或いは、低減された濃度で使用される。なぜならば、本発明の電池電解器は、低減された過電圧における水素の生成を目指すものであるからである。さらに、水素生成時の過電圧を低減するための添加剤は少量(a small mass percentage)でよく、例えば、Feと共沈したNi−Mo−Zn、或いはNi−S−Co、Ti
2Ni、窒素ドープグラフェン、Ni−Mo−N、Ni(OH)
2のナノ粒子、Ni−Cr、ナノ結晶Ni
5P
4、Ru、RuO
2、AgNi、希元素(Pd、Pt等)であってよい。電極をプレスする間における多孔性の維持は、電極に例えばNaClを添加してプレスし、次いでNaClを浸出して孔を形成することによって行うことができる。ポケット内における全電極厚さは2〜5mm、特に約3.5mmである。「第1電極」との用語は、複数の第1電極に関連することもある。
【0034】
第2セルは、第2電極を含み、第2電極は、特に、ニッケル系電極を含む。ニッケル系電極は、充電状態において、基本的にNiOOHを、放電状態において、基本的にNi(OH)
2を含んでいてもよい。
【0035】
ニッケル系電極は、特に、前記Journal of Power Sources誌中の焼結多孔性Ni(OH)
2に関する箇所に記載の方法で製造され、当該文献は、参照のため、ここに組み入れられる。焼結電極は、高負荷ないし極高負荷用として意図されている。カルボニルニッケル粉末が、適切な基板の両側に埋め込まれ、約1120Kの還元雰囲気下で焼結され、多孔質マトリックスが製造される。基板は、以下の材料:ニッケル網又はニッケルメッキ軟鋼網、穿孔ニッケル箔又はニッケルメッキ穿孔軟鋼箔、ニッケル繊維マット又はニッケルメッキ鋼繊維マット、のものであってよい。カルボニルニッケル粉末の両側埋め込みは、黒鉛モールドを用いて、乾燥条件下で焼結する前に行われる。このプロセスは「乾燥粉末焼結(dry powder sintering)」又は「ルース焼結(loose sintering)」である。「湿潤スラリー焼結(Wet slurry sintering)」は別のアプローチであり、適切なコンシステンシーのニッケル粉末スラリーが使用される。これらの方法により、一定の厚みと80〜90%の気孔率の安定したプレートが製造される。真空含浸又は電気化学的方法により、水酸化ニッケル及び水酸化コバルトが、ニッケル板の細孔中に組み込まれる。代替的に又は付加的に、本発明の第2電極は、Co添加剤をまったく含まないか、通常のNi−Fe電池と比較して少量しか含まない。平衡電位及び酸素生成を抑制する目的で、Ni−Fe電池のNi(OH)
2電極にはCoがしばしば添加されるが、本発明では、この抑制は不要である。代替的に又は付加的に、第2電極は、炭素又はNiのような導電性添加物を含む。「第2電極」との用語は、複数の第2電極に関連することもある。さらに、酸素生成のための過電圧を低減するため電極からNiOOHに隣接して、酸素発生触媒を添加することができる。これらは、少量(low weight percentage)のスピネル型CO
3O
4、又はスピネル型のNiCo
2O
4、又は、Ni及びLaをドープしたCo
3O
4、LiをドープしたCo
3O
4、La
0.5Sr
0.5CoO
3、Ni
0.2Co
0.8LaO
3、(Pr
0.5Ba
0.5)CoO
3−x、Ni
1−xFe
x(OH)
2等のようなNi−Fe水酸化物、又はNiO/NiFe
2O
4であってよい。代替として、Journal of Power Sources 203 (2012) 177- 183に報告されているように、Ni(OH)
2中のNiの25%までを、Alで置換して、容量及び電気化学活性をより高めてもよい。
【0036】
第1セル及び第2セルはセパレータを共有しているが、両者は当該セパレータにより互いに分離されている。それ故、液体が一方のセルから他方のセルに当該セパレータを介して流れないことがあり得る。しかし、セパレータは、特定のイオン等、例えば、OH
−イオン、中性H
2O、一価のナトリウム(Na
+)、一価のリチウム(Li
+)、一価のカリウム(K
+)等の少なくとも1又は2以上に対して透過性であってもよい。それ故、第1セル及び第2セルは、セパレータを共有し、セパレータはO
2及びH
2の1又は2以上が一方のセルから他方に輸送されるのをブロックする一方、OH
−イオン、中性H
2O、一価のナトリウム(Na
+)、一価のリチウム(Li
+)及び一価のカリウム(K
+)のうちの少なくとも1又は2以上、特にその全てに対して透過性を有するよう構成される。それ故、特にセパレータは、比較的高いイオン伝導度と比較的低いイオン抵抗性を有していてもよい。例えば、イオン抵抗性は、30重量%のKOH水溶液(30℃)中において≦0.3Ωcm
2である。セパレータは、例えば、当該技術分野において電解膜(electrolysis membrane)として知られているような薄膜を含むことができる。薄膜の例には、例えば、Zirfon(Agfa社製)等のアルカリ性の耐性ポリマー膜及びポリマー複合膜が含まれる。そのような膜は、例えば、セラミック微粒子(酸化ジルコニウム)が埋め込まれたポリマーマトリックスから構成されていてもよい。この本体は、モノフィラメントポリフェニレンサルファイド(PPS)又はポリプロピレン(PP)繊維製のメッシュ生地により内部補強されている。それは約0.15μmの制御された細孔径、及び、約2±1バール(過剰圧)のバブルポイント(これは、薄膜の1側面のガス圧であって、液体が存在する他側面に泡を形成させるのに必要な圧力として特に定義される)を有する。そのような薄膜は永久的に親水性であってよく、好ましくは水に濡れ、最も一般的な電解質である金属酸化物が混合されていてよい。そのような薄膜は、強アルカリ(6MのKOHまで)中で、110℃まで安定であってもよい。孔径のサイズは、例えば約0.05〜0.3μmの範囲内(例えば、0.15μm)であってよく、厚さは、例えば、約100〜1000μmの範囲内(例えば約500μm)であってよい。セパレータと各電極との間に、それぞれのスペーサが配置されていてもよい。これらのスペーサは、水性液の輸送のため、及び、各電極への水性液のアクセスを提供するため、開口を含んでいてもよい。
【0037】
このようにして、本明細書に示す開口部を除いて実質的に閉じている機能性ユニットが提供される。電気的に接続するため、電極は、外部から機能性ユニットへのアクセスを可能とする電気接続に繋がれていてもよい。したがって、機能性ユニットは、第1セル電極との電気接続のための第1電気接続、及び、第2セル電極との電気的接続のための第2電気接続をさらに含むことができる。
【0038】
機能性ユニットの良好な処理のために、装置は、1又は2以上の水性液制御システム、ガス貯蔵システム、圧力システム、充電制御ユニット、第1コネクタユニット、第2コネクタユニット、及び制御ユニットを含んでいてもよい。さらに、装置は、熱管理システム及び/又は断熱部を追加的に含むことができる。特に、エネルギ装置は、これら要素のすべてを含む。
【0039】
したがって、一実施形態において、エネルギ装置は、第一セル水性液及び第2セル水性液の1又は2以上の機能性ユニットへの導入をコントロールするように構成された水性液制御システムをさらに含むことができる。そのような水性液制御システムは、1又は2以上の弁を含んでいてもよい。さらに、そのような水性液制御システムは――運転中に――給水管と機能的に接続されていてもよい。水性液は、圧力システム(下記も参照)と組み合わせて、加圧下に機能性ユニット(さらに下記も参照)に供給されてもよい。さらに、水性液制御システムは、苛性アルカリ、例えば、NaOH、LiOH及びKOHの1又は2以上、特に、少なくともKOH、の貯蔵装置を含むことができる。水性液制御システムは、独立して、第1セル及び第2セルに液体を提供することができる。さらに、水性液制御システムは、第1セル及び/又は第2セルからの流出液を受容し、第1液及び/又は第2液の少なくとも一部を再利用するように構成された還流システムを含むことができる。用語「水性液制御システム」は、複数の水性液制御システムを指すことがある。
【0040】
また、一実施形態において、エネルギ装置は、前記機能性ユニットからの第1セルガス及び第2セルガスの1又は2以上を貯蔵するように構成された貯蔵装置をさらに含んでいてもよい。したがって、貯蔵は、機能性ユニットの外部で行われてもよい。この目的のため、装置は、H
2及び/又はO
2を貯蔵するように構成された貯蔵システムを含んでいてもよい。装置は、H
2を貯蔵するように構成された貯蔵システムを少なくとも含む。貯蔵システムは、圧力システム(下記も参照)と組み合わせて、加圧下(さらに下記も参照)に、第1セルガス及び第2セルガスの1又は2以上を貯蔵するように構成されていてもよい。用語「貯蔵システム」はまた、複数の貯蔵システムを指すことがある。
【0041】
したがって、一実施形態において、エネルギ装置は、(a)機能性ユニット中の第1セルガスの圧力、(b)貯蔵システム中の第1セルガスの圧力、(c)機能性ユニット中の第2セルガスの圧力、及び、(d)貯蔵システム中の第2セルガスの圧力、のうちの1又は2以上を制御するように構成された圧力システムを含むことができる。この目的のために、圧力システムは、ポンプ、弁等を含むことができる。一実施形態において、加圧システムは本質的に1又は2以上のバルブを含む。用語「圧力システム」は、圧力システムの複数を指すことがある。特に、2以上の異なるタイプの流体の加圧が必要な場合、2又はそれ以上の独立した加圧システムが適用されてもよい。
【0042】
さらに別の実施形態において、エネルギ装置は、外部電力源から電力を受け取るように構成された充電制御ユニット(下記も参照)であって、当該外部電力を前記機能性ユニットに、少なくとも充電時間の一部分において、第1セル電極と第2セル電極の電位差が18℃で1.55V、40℃で1.50V(すなわち、実際上少なくとも1.50V)を超えるような電流(「電流強度」と表記されることもある)で供給するように構成された充電制御ユニットを含んでいてもよい。放電された状態から出発すると、電流は、まず、主として電池の充電に適用される。この電流を適用することにより、電池がほぼフル充電される前に、電圧は18℃で1.65V、40℃で1.55V(すなわち、実際上少なくとも1.55V)に達する。電池容量に達した後、より多くの水素が漸増的に生成し、ついで、電圧は18℃で1.75V、40℃で1.62V(すなわち、実際上少なくとも1.62V)に達することができる。電池機能充電及び電解ガス生成のエネルギ効率は、放電時間中の電池出力電流と電圧の積、プラス、全サイクル期間にわたる充電と(自己)放電中に生成された水素ガス量のHHV(higher heating value、高位発熱量)の積分値を、充電時における入力電流とその電圧との積の積分値で除した値として計算される。総合エネルギ効率に関し、非常に良好な結果が明らかに達成され、これは、Ni−Feの完全公称充電における通常の電圧上限である1.65V(18℃)又は1.55V(40℃)(すなわち、実際上少なくとも1.55V)より高い電圧で充電したときも同様であり、特に、Ni電極及びFe電極の公称容量をはるかに上回る電流で充電・挿入したときも同様である。充電制御ユニットは、高電圧を必要な電圧に変換するための電子デバイス及び/又は交流を直流に変換する電子デバイスを含んでいてもよい。特に、エネルギ装置の一実施形態において、充電制御ユニットは、充電期間の少なくとも一部において、第1セル電極と第2セル電極の電位差が1.4〜1.75Vの範囲となるように選択された電流で、前記機能性ユニットに対して電力を供給するように構成される。電池の電気化学的可逆性、ガス生成量、及び総合エネルギ効率の観点より、最善の結果が、上記電圧範囲のセル電位となる電流を適用することにより、達成される。
【0043】
放電に関しては、セルが、好ましくは1.10Vを下回ることのないレベルで放電を継続した場合に、最良の結果が得られる。制御システムは、必要に応じて充電制御ユニットと組み合わせて、機能性ユニットの放電を制御するように構成されていてもよい。放電は、産業施設や車両対して、電気エネルギを使用して行うことができる。しかし、代替的に又は追加的に、機能性ユニットは、電力グリッドに対して放電することもできる。
【0044】
さらに、充電制御ユニットは、充電時間の少なくとも一部において、Ahで表される公称電池容量Cを最小2hで除した値、すなわち、C/時(C/time)が「時間>2h」(time>2h)に対応する電流で、機能性ユニットに対して電力を供給するように構成されていてもよい。そのような印加電流は、第1セル電極と第2セル電極の電位差として、特に、1.37Vを超える値をもたらすことがあるが、その最大値は、特に、2.0Vを超えるべきでない。
【0045】
上述のとおり、装置は、断熱材、特に機能性ユニットからの熱エネルギの損失を低く維持するように構成された断熱材をさらに含むことができる。さらに、当該装置は、当該機能性ユニットの温度を所定の最高温度と等しいか又はそれより低い温度、例えば95℃またはそれより低い温度に維持するように構成された熱管理システムを含むことができる。したがって、一実施形態、特に、大規模なシステム(例えば、10キロワット以上)において、セルの温度を監視し、温度が設定上限値の60℃を超えて上昇したとき、適用される充放電電流を低減することができる。コントロールに関し、熱管理システムは、少なくとも部分的に、制御システムに含まれていてもよい。また、熱絶縁は、熱管理システムに含まれていてもよい。
【0046】
上記のとおり、エネルギ装置は、直列又は並列に配置された複数の機能性素子を含んでいてよく、それらは、電位差を増大させ(直列)、又は供給される電荷を増大させる(並列)。
【0047】
一実施形態において、エネルギ装置は、電気的に駆動される受容体(a receiver)及び電気接続器を機能的に結合するための第1コネクタユニットを備えていてもよい。デバイスの一例は、自動車であり得る(以下も参照)。したがって、当該装置は、特に、そのようなデバイスに接続可能な(電気)プラグ又はソケットを含みうる。第1コネクタは、電力を本発明の装置から受容体(a receiver)、例えば、外部デバイス(例えば、そのようなデバイスの電池)、又は、電力グリッドに伝達するように特に構成されている。用語「第1コネクタユニット」は、複数の第1コネクタユニットをも指すことがある。
【0048】
一実施形態において、エネルギ装置は、第2コネクタユニットを備えていてもよく、この第2コネクタユニットは、前記貯蔵システムからの第1セルガス及び第2セルガスの1又は2以上が供給されるデバイスと機能的に接続される。したがって、当該装置は、そのようなデバイスと接続可能な(水素ガス)プラグ又はソケットを含むことができる。第2コネクタは、貯蔵システムからの水素を、受容体(a receiver)、例えば、そのようなデバイスの水素貯蔵ユニットのような外部デバイス)、又は、ガスグリッドに移送するように特に構成されている。用語「第2コネクタユニット」は、複数の第2コネクタユニットをも指すことがある。ガスのための上記受容体は、必ずしも電気のための上記受容体とは同じではないことに留意されたい。
【0049】
さらに、一実施形態において、エネルギ装置は、水性液制御システム(利用可能な場合)の1又は2以上を制御するように構成された制御システム、貯蔵システム(利用可能な場合)、圧力システム(利用可能な場合)、及び充電制御ユニット(利用可能な場合)をさらに含んでいてもよい。当該制御システムは、特に、装置及び個々の要素、特に水性液制御システム、貯蔵システム、圧力システム、及び充電制御ユニットを制御するように構成される。このようにして、充電及び電解プロセスが、最大効率に最適化され得る。とりわけ、外部電力源の利用可能性、並びに、電力及び/又は水素ガスの消費量に依存する効率を最適化することができる。したがって、エネルギ装置の特定の実施形態において、制御システムは、充電制御ユニットを、機能性ユニットの充電状態及び外部電力源からの電力の利用可能性の関数として制御するように構成される。さらに、制御システムは、充電制御ユニットを、機能性ユニットの充電状態、ガスの貯蔵状態(満杯か、さらに充填可能か)、及び外部電力源からの電力の利用可能性の関数として制御するように構成される。充電制御ユニットは、必要に応じて、電気を電力グリッドに送り返すように構成することもできる。制御システムは、特に、エネルギ装置の動作条件を、1又は2以上の(本明細書に示す装置のような)クライアントの電力需要及び/又はガス需要及び/又は(グリッド内の)電力の利用可能性の関数として制御するように構成されてもよい。したがって、制御システムは、なかんずく、温度、液体の流れ、電位差、電圧信号等の1又は2以上を、外部需要の存在量及び/又は外部需要のタイプ(H
2及び/又は電力)の関数として制御してもよい。
【0050】
電池電解器における重要なコスト決定要素は、ニッケル金属含有量である(ニッケルは鉄より実質的に高価である)。この理由のため、一実施態様において、活性Fe系電極の公称容量に関し、Ni(OH)
2材料の量を大幅に低減することができる。それ故、Ni系カソードは、Ni(OH)
2 + OH
− ⇒ NiOOH + H
2O + e
−の反応に利用可能なFe系電極の例えば50%、又は僅か10%のみ、の容量を有してもよい。したがって、一実施形態において、Ni系電極は、Fe系電極の80〜10%の範囲の容量を有する。その結果、充電中にO
2の生成が早く始まり、その間に負極ではFe(OH)
2 +4e
− ⇒ Fe + 4OH
− の反応がなお続き、鉄が生成することになる。電位はその後、それ以前より高い入力電位に上昇し、より多くの酸素が生成される。酸素は、その後、放電時にNi電極で正常反応 NiOOH + H
+ + e
− ⇒ Ni(OH)
2 が生起するのに加えて、NiOOH/Ni(OH)
2の表面で O
2 +2H
2O + 4e
− ⇒ 4OH
− の酸素還元反応が起こる際に使用するため、収集される。このような反応は、酸素分子の還元に要する酸化還元電位及び過電圧が低いことから、 NiOOH + H
+ + e
− ⇒ Ni(OH)
2 の単独反応より若干低い電位で起こる。このようにして、総合エネルギ効率の若干の低下を伴うが、電極中のNi量の低減が可能である。過剰のFeの形成後において、Fe(OH)が枯渇したとき、水素の生成が続いて起こるが、併存する Fe + 2H
2O ⇒ Fe(OH)
2 + H
2 の連続的な「自己放電反応」を介しても水素ガスが生成する。それゆえ、Ni(OH)
2 の量の選択は、材料コスト対エネルギ効率に従って経済的に考慮されることになる。Ni(OH)
2 及びFe(OH)
2 の充電の理論容量は、それぞれ、289mAh/g及び596mAh/gである。したがって、エネルギ装置の一実施形態において、第1電極は鉄系電極材料の活性質量に応じた第1容量を有し、第2電極は、ニッケル系電極材料の活性質量に応じた第2容量を有する。ここで、ニッケル系電極の第2の容量は、鉄系電極の第1容量の90%より低く、特定の実施形態においては、残余の容量は、このニッケル系電極における酸素の水への還元から生じる。
【0051】
さらなる態様において、本発明はまた、本明細書に規定するエネルギ装置を含むシステムを提供する。そのようなシステムはさらに、動力源、特に電力源を含んでいてもよい。したがって、本発明の一実施形態は、本明細書に規定するエネルギ装置と、外部動力(電気)源とを含む。当該動力源は機能性ユニットの充電(すなわち、電池への充電)に使用してもよい。当該装置は、機能的に商用電力源に接続されてもよい。また、当該装置は、ローカルな発電機に機能的に接続されていてもよい。例えば、バイオマス製造プラント、又は、バイオマス集積サイトは、バイオマスを電気に変換するデバイスを備えていてもよく、これを上記装置への電力供給に使用してもよい。同様に、ローカルな風力タービン(単数又は複数)、ローカルな太陽光発電(単数又は複数)、又は、ローカルな水力タービン(単数又は複数)が、上記装置への電力供給に使用され得る。もちろん、そのような外部電源はまた、電力インフラに統合されていてもよく、当該電力インフラには、様々な再生可能発電所及び従来型の発電所が含まれていてもよい。それ故、一実施形態において、外部電源は太陽電池、風力タービン、及び水力タービンの1又は2以上を含む。したがって、エネルギ装置は、電気エネルギグリッド、H
2ガスグリッド、及び、O
2ガスグリッドの1又は2以上を含むことができる。
【0052】
用語「エネルギ装置」はまた、エネルギ装置の複数を指すこともある。したがって、一実施形態において、エネルギシステムは、複数のエネルギ装置及び複数の外部電源を含んでいてもよい。これらのエネルギ装置及び外部電力源は、送電網を介するなどにより、機能的に関連する。例えば、一実施形態において、エネルギ装置は、高速道路や一般道路に沿って互いに離れて配置される。エネルギシステムは、さらに、電力グリッドを含むことができる。特に、外部電源は、この電力グリッドと機能的に結合されてもよい。また、産業、住宅等も、そのような電力グリッドに機能的に結合していてもよい。したがって、一実施形態において、エネルギシステムは、複数のエネルギ装置及び複数の外部電源、ならびに、電力グリッドを含む。
【0053】
さらなる態様において、本発明は、電気エネルギと、水素(H
2)及び酸素(O
2)の1又は2以上とを、単一の電池電解器に貯蔵する方法を提供する。特に、本発明は、電気エネルギと、水素(H
2)及び酸素(O
2)の1又は2以上とを、本明細書に規定のエネルギ装置に貯蔵する方法であって、当該方法において、第1セル水性液、第2セル水性液及び外部電源からの電力を機能性ユニットに供給し、これにより、充電された機能性ユニットと、貯蔵システムに蓄えられた水素(H
2)及び酸素(O
2)の1又は2以上とを提供し、その際、機能性ユニットの充電時間の少なくとも一部において、第1セル電極と第2セル電極の電位差が、特に1.37Vを超える値、とりわけ少なくとも1.55Vを超える値で充電されることを含む方法を提供する。さらに特に、少なくとも充電時間の一部において、第1セル電極と第2セル電極の電位差が1.50〜2.0Vの範囲内であって、例えば、1.55〜1.75Vの範囲内又は少なくとも1.6Vを超える値となるように、電流密度が選択される。さらに、電流密度は、0.001〜10A/cm
2の範囲から選択することができる。
【0054】
したがって、一実施形態において、第1セル電極と第2セル電極との電位差が、少なくとも充電時間の一部において、1.50〜2.0Vの範囲内であって、例えば、1.55〜1.75Vの範囲内又は少なくとも1.6Vとなるように選択される。さらに、電流密度は特に0.001〜10A/cm
2の範囲内、例えば0.001〜2A/cm
2の範囲内から選択されてもよい。したがって、一実施態様において、充電制御部は、少なくとも充電時間の一部において、前記機能性ユニットに対して、前記電力を、第1セル電極と第2セル電極の電位差が1.6〜2.0Vの範囲内にあり、かつ、電流密度が0.001〜10A/cm
2の範囲内で供給するように構成され得る。本明細書において、面積(area)との用語は、当技術分野で知られているように、電極の外部面積(external area)を指す。例えば、ニッケル材料又は鉄材料で1cm
2の面積(area)を有する電極は、ニッケル材料又は鉄材料は非常に大きい表面積(surface area)を有しうるとの事実にかかわらず、1cm
2の外部面積(external area)を有する。特に、外部面積は、有孔金属ポケット(perforated metal pockets)の外表面により規定される。本明細書では、「外部面積」という用語に代えて、「幾何学的表面積」(geometrical surface area)との用語を用いることもできる。内部電極材料は、特にナノ構造であり、このため、例えば、m
2/gの範囲の非常に大きい表面積を有してもよいが、ここでは、特に、断面積(cross-sectional area)((一又は複数の)電極の平面に平行な断面)で表わす。特に、すべての電流は、セパレータを通過して流れることも必要であるので、これも定義に使用することができ、セパレータはそれぞれの金属ポケット(すなわち、それぞれの電極の表面)の外部形状とほぼ同じ表面積を有する。
【0055】
さらに別の実施形態において、当該方法は、第1セルの第1圧力及び第2セルの第2圧力を少なくとも200バール、例えば200〜800バールの範囲に維持することを含んでもよい。さらに、当該方法はまた、貯蔵装置の圧力を1バール超、例えば、最大800バール、特に200〜800バールの範囲に維持することを含むことができる。上述のとおり、第1セル及び第2セル内の圧力は、互いに独立して制御することができる。同様に、H
2及びO
2の両者を貯蔵する場合、貯蔵装置中のH
2及びO
2の両者の圧力は、所望の場合、独立して制御することができる。
【0056】
充電中、機能性ユニットの温度は、特に−10〜+60℃の範囲、さらに特には、少なくとも10℃の温度に保たれる。この目的のために、エネルギ装置は、温度制御ユニットを含んでいてもよい。特に、制御ユニットは、温度が設定限界を超えて上昇したときに印加電流を低減することにより、機能要素の温度を制限するように構成されていてもよい。さらに、当該装置、特に機能性ユニットは、熱的分離(thermal isolation)を含むことができる。
【0057】
エネルギ装置及び/又はエネルギシステムは、実施形態において、デバイス(a device)への電力、水素(H
2)及び酸素(O
2)の1又は2以上の供給に使用することができる。そのようなデバイスは、例えば、電池(電力用電池)、又は、そのような電池を組み込んだデバイス(たとえば、車両)であってもよい。そのようなデバイスはまた、水素貯蔵ユニット、又はそのような水素貯蔵ユニットを含むデバイスであってもよい。さらに、そのようなデバイスは、製造工程で酸素を用いる装置(an apparatus)であってもよい。したがって、一実施形態において、エネルギ装置及び/又はエネルギシステムは、その駆動エネルギを水素又は電力源の1又は2以上から得るエンジンを搭載した電動機つき車両に対して、電力、水素(H
2)の1又は2以上を供給するために使用される。当該車両は、例えば、水素、電力、又はその両方を必要とする車であってもよい。しかしながら、他の一実施形態において、上記デバイスは、例えば、製造プロセス(化学的水素化、アンモニア合成、化学的還元等)において酸素及び/又は水素を使用する装置のような産業用オブジェクト(industrial object)に含まれていてもよい。そのような産業用オブジェクトは、特に電力、水素及びは酸素の1又は2以上を利用するように特に構成されていてもよい。
【0058】
エネルギ装置及び/又はエネルギシステムは、特に、電池機能中に電気を貯蔵するのにも、水素として貯蔵するのにも、使用される。そのようなものとして、例えば、変動する再生可能電力源からの余剰電力の貯蔵に使用され、かつ、貯蔵したエネルギを、その後生じる需要に対して、電力又は水素として供給するのに使用される。
【0059】
とりわけ、本発明は、変動する(又は間欠的な)電気エネルギ、並びに、水素(H
2)及び酸素(O
2)をエネルギ装置に貯蔵する方法を提供し、当該方法は、第1セル水性液、第2セル水性液及び外部電力源からの電力を機能性ユニットに供給し、これにより、充電した機能性電池ユニット、並びに、貯蔵システムに貯蔵した水素(H
2)及び酸素(O
2)の1又は2以上を提供し、その際、当該機能性ユニットが、その充電時間の少なくとも一部において、第1セル電極と第2セル電極との電位差が1.37Vより大きい値で充電されることを含む。