(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<導電性高分子分散液>
本発明の一態様における導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、イソシアヌレート系化合物と、前記導電性複合体を分散させる分散媒とを含有する。
前記導電性高分子分散液は、必要に応じて、バインダ成分、その他の添加剤を含有してもよい。
【0012】
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
【0013】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子の中でも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
前記π共役系導電性高分子は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
ポリアニオンとは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリメタクリルオキシベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボン酸基を有する高分子が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、帯電防止性をより高くできることから、スルホン酸基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。
本明細書における質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定し、標準物質をポリスチレンとして求めた値である。
【0015】
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下の範囲であることがより好ましく、100質量部以上500質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなるのを防ぎ、導電性が不足することを防ぐことができ、また、導電性高分子分散液における導電性複合体の分散性を高めることができる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であると、π共役系導電性高分子の含有量が少なくなるのを防ぎ、充分な導電性を得ることができる。
ポリアニオンの含有割合は、導電性複合体の総質量に対し、1〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましい。
【0016】
ポリアニオンが、π共役系導電性高分子に配位してドープすることによって導電性複合体を形成する。
ただし、本態様におけるポリアニオンにおいては、全てのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープすることはなく、ドープに寄与しない余剰のアニオン基を有するようになっている。
【0017】
イソシアヌレート系化合物は、上記式(1)で表される化合物である。前記イソシアヌレート系化合物は、導電性向上機能と酸化防止機能とを有する。
式(1)におけるR
1,R
2,及びR
3は、各々独立して、水素原子又は任意の置換基である。
任意の置換基としては、例えば、炭素数1〜100のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜100のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、炭素数6〜100のアリール基(例えば、フェニル基等)等が挙げられる。これら置換基は、さらに置換基(例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミノ基、トリアルコキシシリル基等)を有してもよい。アルキル基、アルコキシ基、アリール基の炭素数には置換基の炭素数は含まれない。なかでも、任意の置換基としては、置換基を有するアルキル基が好ましい。
イソシアヌレート系化合物の具体例としては、例えば、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
前記イソシアヌレート系化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
イソシアヌレート系化合物の含有量は、導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、5質量部以上5000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上1000質量部以下であることがより好ましい。イソシアヌレート系化合物の含有量が前記下限値以上であれば、導電層の導電性をより向上させることができ、大気中での導電性低下をより抑制できる。一方、イソシアヌレート系化合物の含有量が前記上限値以下であれば、導電性複合体の含有割合低下による導電性低下を抑制できる。
【0019】
本態様における分散媒は、前記導電性複合体を分散させる液であり、水、有機溶剤、又は、水と有機溶剤との混合液である。本明細書において「分散」とは、化合物が分散媒中に微粒子の状態で散在していることをいう。なお、イソシアヌレート系化合物、アミン化合物、エポキシ化合物、及びバインダ成分は分散媒に溶解又は分散する。
有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。これら有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、アリルアルコール等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロプレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
【0020】
バインダ成分は、π共役系導電性高分子及びポリアニオン以外の化合物であり、熱可塑性樹脂、又は、導電層形成時に硬化する硬化性のモノマー又はオリゴマーである。熱可塑性樹脂はそのままバインダ樹脂となり、硬化性のモノマー又はオリゴマーは硬化により形成した樹脂がバインダ樹脂となる。
前記バインダ成分は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
バインダ成分由来のバインダ樹脂の具体例としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン等が挙げられる。
【0021】
バインダ成分が熱可塑性樹脂である場合、バインダ樹脂は、導電性高分子分散液中に分散可能な水分散性樹脂が好ましい。水分散性樹脂は、エマルション樹脂又は水溶性樹脂である。
エマルション樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等であって、乳化剤によってエマルションにされたものが挙げられる。
また、水溶性樹脂は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂であって、カルボキシ基やスルホ基等の酸基又はその塩を有するものが挙げられる。本明細書において、水溶性とは、25℃の蒸留水に、樹脂が水溶液の総質量に対して1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上溶解することである。
【0022】
硬化性のモノマー又はオリゴマーは、熱硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよいし、光硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよい。ここで、モノマーとは、重合体を形成するための単量体のことである。オリゴマーは、質量平均分子量が100以上1万未満の重合体のことである。なお、質量平均分子量が1万を超えるポリマーは、硬化性を有さない。
硬化性のモノマーとしては、例えば、アクリルモノマー、エポキシモノマー、オルガノシロキサン等が挙げられる。アクリルモノマーとしては、ビスフェノールA・エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等のアクリレート類、テトラエチレングリコールジメタクリレート、アルキルメタクリレート、アリルメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート類、ダイアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ビニルホルムアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、アクリロイルピペリジン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド等のアクリル(メタクリル)アミド類、2−クロロエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル等のビニルエーテル類、酪酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類の単官能モノマー並びに多官能モノマーが挙げられる。硬化性のオリゴマーとしては、例えば、アクリルオリゴマー、エポキシオリゴマー、シリコーンオリゴマー(硬化型シリコーン)等が挙げられる。アクリルオリゴマーとしては上記のアクリルモノマーを重合させたもの、イソシアネートを反応させてウレタン化したもの等が挙げられる。硬化型シリコーンとしては、付加硬化型シリコーン、縮合化硬化型シリコーン、紫外線硬化型シリコーンが挙げられる。
バインダ成分としてアクリルモノマー又はアクリルオリゴマーを用いた場合には、加熱又は光照射により容易に硬化させることができる。バインダ成分としてオルガノシロキサン又はシリコーンオリゴマーを用いた場合には、導電層に離型性を付与することができる。
付加硬化型のオルガノシロキサン又はシリコーンオリゴマーは、酸化防止剤の添加によって硬化阻害を起こすことがある。しかし、前記イソシアヌレート系化合物は、付加硬化型のオルガノシロキサン又はシリコーンオリゴマーの硬化を阻害しにくいため、バインダ成分として付加硬化型のオルガノシロキサン又はシリコーンオリゴマーを用いる場合に好適である。
【0023】
硬化性のモノマー又はオリゴマーを用いた場合には、硬化触媒を添加することが好ましい。例えば、熱硬化性のモノマー又はオリゴマーを用いた場合には、加熱によりラジカルを発生させる熱重合開始剤を添加することが好ましく、光硬化性のモノマー又はオリゴマーを用いた場合には、光照射によりラジカルを発生させる光重合開始剤を用いることが好ましい。また、オルガノシロキサン又はシリコーンオリゴマーを用いた場合には、硬化用の白金触媒を用いることが好ましい。
【0024】
バインダ成分の含有割合は、導電性複合体の固形分(不揮発分)100質量部に対して、100質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、100質量部以上5000質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上1000質量部以下であることがさらに好ましい。バインダ成分の含有割合が前記下限値以上であれば、製膜性と膜強度を向上させることができる。しかし、バインダ成分の含有割合が前記上限値以下であると、導電性複合体の含有割合が低下するのを防ぎ、導電性が低下するのを防ぐことができる。
【0025】
導電性高分子分散液には、公知の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前記ポリアニオン、前記イソシアヌレート系化合物及び前記バインダ成分以外の化合物からなる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、又はエポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。ただし、本態様の導電性高分子分散液では、前記イソシアヌレート系化合物によって導電層の大気中での経時的な導電性低下を抑制できるので、前記酸化防止剤を含まなくてもよい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0026】
導電性高分子分散液が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、通常、導電性複合体の固形分100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲内である。
【0027】
本発明者が調べた結果、前記イソシアヌレート系化合物を含有する導電性高分子分散液から形成した導電層は、大気中での経時的な導電性低下が充分に抑制され、また、本質的な導電性が高くなることがわかった。これは、前記イソシアヌレート系化合物が酸化防止機能及び導電性向上機能の両方を有しているためと推測される。
【0028】
本発明の導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、及びトリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートからなる群から選択される少なくとも1種のイソシアヌレート系化合物と、前記導電性複合体を分散させる分散媒とを含有することが好ましい。
本発明の導電性高分子分散液は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体と、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、及びトリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートからなる群から選択される少なくとも1種のイソシアヌレート系化合物と、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、及び芳香族炭化水素系溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の分散媒とを含有することが好ましい。
【0029】
本発明の導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、及びトリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートからなる群から選択される少なくとも1種のイソシアヌレート系化合物と、前記導電性複合体を分散させる分散媒と、アミン化合物、エポキシ化合物、及びバインダ成分からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを含有することが好ましい
【0030】
本発明の導電性高分子分散液は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体と、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、及びトリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートからなる群から選択される少なくとも1種のイソシアヌレート系化合物と、前記導電性複合体を分散させる分散媒と、アミン化合物とを含有することが好ましい。
本発明の導電性高分子分散液は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体と、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、及びトリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートからなる群から選択される少なくとも1種のイソシアヌレート系化合物と、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、及び芳香族炭化水素系溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の分散媒と、トリブチルアミン、及びトリオクチルアミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミン化合物とを含有することが好ましい。
【0031】
本発明の導電性高分子分散液は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体と、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、及びトリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートからなる群から選択される少なくとも1種のイソシアヌレート系化合物と、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、及び芳香族炭化水素系溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の分散媒と、エポキシ化合物とを含有することが好ましい。
【0032】
本発明の導電性高分子分散液は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体と、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、及びトリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートからなる群から選択される少なくとも1種のイソシアヌレート系化合物と、前記導電性複合体を分散させる分散媒と、バインダ成分とを含有することが好ましい。
本発明の導電性高分子分散液は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体と、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、及びトリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートからなる群から選択される少なくとも1種のイソシアヌレート系化合物と、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、及び芳香族炭化水素系溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の分散媒と、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂、及びシリコーンからなる群から選択される少なくとも1種のバインダ成分とを含有することが好ましい。
本発明の導電性高分子分散液は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体と、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、及びトリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートからなる群から選択される少なくとも1種のイソシアヌレート系化合物と、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、及び芳香族炭化水素系溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の分散媒と、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂、及びシリコーンからなる群から選択される少なくとも1種のバインダ成分とを含有し、前記イソシアヌレート系化合物の含有量が、前記導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下であることが好ましい。
【0033】
<導電性高分子分散液の製造方法>
本態様の導電性高分子分散液は、下記(a)〜(c)のいずれかの方法で製造できる。
(a)π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液に前記イソシアヌレート系化合物を添加するイソシアヌレート系化合物添加工程(a)を有する方法。
(b)π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液を乾燥させて乾燥体を得る乾燥工程と、前記乾燥体にアミン化合物及び有機溶剤を添加して導電性混合液を調製する導電性混合液調製工程(b)と、前記導電性混合液に前記イソシアヌレート系化合物を添加するイソシアヌレート系化合物添加工程(b)とを有する方法。
(c)π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液にエポキシ化合物を添加して導電性複合体を析出させて析出物を形成させる析出工程と、前記析出物を回収する回収工程と、回収した析出物に有機溶剤を添加して導電性混合液を調製する導電性混合液調製工程(c)と、前記導電性混合液に前記イソシアヌレート系化合物を添加するイソシアヌレート系化合物添加工程(c)とを有する方法。
【0034】
製造方法(a)〜(c)における導電性複合体の水系分散液は、ポリアニオンの水系溶液に、π共役系導電性高分子を構成するモノマーを添加し、酸化重合させることによって得られる。また、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液は、市販のものを用いてもよい。
【0035】
製造方法(b)における導電性複合体の水系分散液の乾燥方法としては、凍結乾燥又は噴霧乾燥が好ましい。導電性複合体の水系分散液を凍結乾燥又は噴霧乾燥して得た乾燥体は、有機溶剤に分散させやすい。
製造方法(b)において、乾燥体に添加したアミン化合物は、ポリアニオンのアニオン基、特にドープに関与しない余剰のアニオン基に配位又は結合して、導電性複合体を疎水化することができる。疎水化された導電性複合体は有機溶剤に対する分散性が高くなる。
乾燥体に、アミン化合物及び有機溶剤を添加した後には、高圧ホモジナイザー等を用いて、高い剪断力を付与しながら攪拌することが好ましい。
【0036】
アミン化合物は、アミノ基を有する化合物であり、アミノ基が、ポリアニオンのアニオン基と反応する。
アミン化合物としては、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩のいずれであってもよい。また、アミン化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アミン化合物は、炭素数2以上12以下の直鎖、もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、炭素数7以上12以下のアラルキル基、炭素数2以上12以下のアルキレン基、炭素数6以上12以下のアリーレン基、炭素数7以上12以下のアラルキレン基、及び炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基から選択される置換基を有していてもよい。
具体的な1級アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
具体的な2級アミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、ジナフチルアミン等が挙げられる。
具体的な3級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリナフチルアミン等が挙げられる。
具体的な4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩、テトラベンジルアンモニウム塩、テトラナフチルアンモニウム塩等が挙げられる。アンモニウムの対となる陰イオンとしてはヒドロキシドイオンが挙げられる。
これらアミン化合物のうち、導電性複合体の有機溶剤に対する分散性がより高くなることから、3級アミンが好ましく、トリブチルアミン、トリオクチルアミンがより好ましい。
【0037】
アミン化合物の含有割合は、導電性複合体を100質量部とした際に、10質量部以上300質量部以下であることが好ましく、50質量部以上150質量部以下であることがより好ましい。アミン化合物の含有割合が前記下限値以上であれば、導電性複合体の有機溶剤に対する分散性がより高くなり、前記上限値以下であれば、導電性の低下を防ぐことができる。
【0038】
製造方法(c)におけるエポキシ化合物は、ポリアニオンのアニオン基、特にドープに関与しない余剰のアニオン基に配位又は結合して、導電性複合体を疎水化することができる。疎水化された導電性複合体は有機溶剤に対する分散性が高くなるが水に対する分散性は低下するため、エポキシ化合物と反応した導電性複合体は水中で析出して析出物となる。析出物は、ろ過などにより回収される。
【0039】
エポキシ化合物は、エポキシ基を有する化合物であり、エポキシ基がポリアニオンのアニオン基と反応する。エポキシ化合物はモノマー、オリゴマーを含まない。
エポキシ化合物の具体例としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、脂肪酸変性エポキシ、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、エチレンオキシドフェノールグリシジルエーテル、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、アジピン酸グリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート等が挙げられる。ここで「C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル」とは、炭素数12及び13の高級アルコール混合物と、グリシジルアルコールとから形成されるエーテルを意味する。
これらエポキシ化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
エポキシ化合物の含有割合は、導電性複合体を100質量部とした際に、10質量部以上300質量部以下であることが好ましく、50質量部以上150質量部以下であることがより好ましい。エポキシ化合物の含有割合が前記下限値以上であれば、導電性複合体の有機溶剤に対する分散性がより高くなり、前記上限値以下であれば、導電性の低下を防ぐことができる。
【0041】
<導電性フィルムの製造方法>
図1に示すように、本発明の導電性フィルム10は、フィルム基材1と、導電性高分子分散液から形成される導電層2と有する。
本発明の一態様の導電性フィルムの製造方法は、少なくとも、上記導電性高分子分散液をフィルム基材の少なくとも一方の面に塗工する塗工工程を有する。
導電性フィルムの製造方法により、フィルム基材と、フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された導電層とを備える導電性フィルムが得られる。
【0042】
フィルム基材としては、プラスチックフィルムを用いることができる。
プラスチックフィルムを構成するフィルム基材用樹脂としては、例えば、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのフィルム基材用樹脂の中でも、安価で機械的強度に優れる点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0043】
導電性フィルムを構成するフィルム基材の平均厚みとしては、5〜400μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましい。導電性フィルムを構成するフィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
本明細書における平均厚さは、任意の10箇所について厚さをシックネスゲージで測定し、その測定値を平均した値である。
【0044】
(導電層)
導電層は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、前記イソシアヌレート系化合物とを含有する。
導電層の平均厚さとしては、10nm以上5000nm以下であることが好ましく、20nm以上1000nm以下であることがより好ましく、30nm以上500nm以下であることがさらに好ましい。導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層を容易に形成できる。
【0045】
塗工工程において導電性高分子分散液を塗工する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた塗工方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
上記のうち、簡便に塗工できることから、バーコーターを用いることがある。バーコーターにおいては、種類によって塗工厚が異なり、市販のバーコーターでは、種類ごとに番号が付されており、その番号が大きい程、厚く塗工できるものとなっている。
【0046】
導電性高分子分散液が、バインダ成分を含まない場合、又は、バインダ成分として熱可塑性樹脂からなるバインダ樹脂を含む場合には、塗工工程後、塗工した導電性高分子分散液を乾燥させ、分散媒を除去して導電層を形成する。これにより導電性フィルムを得る。
塗工した導電性高分子分散液を乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上150℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。
【0047】
導電性高分子分散液が、バインダ成分として熱硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、塗工工程後、塗工した導電性高分子分散液を加熱し、硬化させて導電層を形成する。これにより導電性フィルムを得る。
導電性高分子分散液が、バインダ成分として光硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、塗工工程後、塗工した導電性高分子分散液に紫外線又は電子線を照射し、硬化させて導電層を形成する。これにより導電性フィルムを得る。
【0048】
上記導電性フィルムの製造方法では、前記イソシアヌレート系化合物を含有する導電性高分子分散液を用いるため、大気中での経時的な導電性低下が充分に抑制されていると共に本質的な導電性が高い導電性フィルムを容易に製造できる。
【実施例】
【0049】
(製造例1)
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法によりポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。さらに、得られたろ液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。
この限外ろ過操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0050】
(製造例2)
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、1.2質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散液(PEDOT−PSS水分散液)を得た。
【0051】
(製造例3)
上記PEDOT−PSS水分散液1000gを凍結乾燥して、12gの凍結乾燥体を得た。
【0052】
(製造例4)
イソプロパノール1000gに、製造例3で得た4.0gの凍結乾燥体と、3.5gのトリオクチルアミンを添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、導電性混合液を得た。
【0053】
(製造例5)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液100gにメタノール300g及びエポキシ化合物(共栄社化学株式会社製エポライトM−1230、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル)25gを添加し、60℃で4時間加熱攪拌した。このとき、エポキシ化合物がPSSのスルホン酸基に反応するため、スルホン酸基が消失し、PEDOT−PSSの水分散性が低下してPEDOT−PSSが析出した。これにより形成した析出物を濾過により回収した。前記析出物1.575gを315gのメチルエチルケトンに添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散して導電性混合液を得た。
【0054】
(実施例1)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液10gに、メタノール80gと、バインダ成分(互応化学工業株式会社製プラスコートRZ−105、水分散ポリエステル、固形分濃度25質量%の水溶液)10gと、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート0.5g(PEDOT−PSS固形分100質量部に対して417質量部)を添加して、導電性高分子分散液を得た。
次いで、導電性高分子分散液を、No.2のバーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)に塗布して、塗布膜を形成した。
その塗布膜を、乾燥温度120℃、乾燥時間1分で加熱乾燥し、分散媒を除去して、導電性フィルムを得た。
【0055】
(比較例1)
トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
【0056】
<評価>
導電性フィルムの作製後1時間以内に測定した表面抵抗値(初期表面抵抗値)と、温度25℃且つ湿度50%に調整された大気下で15日間放置した後の表面抵抗値(15日間経過後表面抵抗値)とを測定した。測定結果を表1に示す。
その測定の際、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリティック製ハイレスタ)を用い、印加電圧を10Vとした。
実施例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が小さく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていた。
比較例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が大きく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていなかった。
【0057】
【表1】
【0058】
(実施例2)
製造例4で得た導電性混合液81.25gに、ウレタンアクリレート(根上工業株式会社製アートレジンUN−904M、固形分濃度80質量%のメチルエチルケトン溶液)3.75gと、ジアセトンアルコール15gと、光重合開始剤(BASF製イルガキュア127)0.075gと、トリス(2−アク
リロイルオキシエチル)イソシアヌレート0.3g(PEDOT−PSS固形分100質量部に対して92.3質量部)を添加して、導電性高分子分散液を得た。
次いで、導電性高分子分散液を、No.2のバーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)に塗布して、塗布膜を形成した。
その塗布膜を、乾燥温度120℃、乾燥時間1分で加熱乾燥し、分散媒を除去して、
紫外線を照射し、塗布膜を硬化させ、導電性フィルムを得た。
【0059】
(比較例2)
トリス(2−アク
リロイルオキシエチル)イソシアヌレートを添加しなかったこと以外は実施例2と同様にして導電性フィルムを得た。
【0060】
<評価>
導電性フィルムの作製後1時間以内に測定した表面抵抗値(初期表面抵抗値)と、温度25℃且つ湿度50%に調整された大気下で5日間放置した後の表面抵抗値(5日間経過後表面抵抗値)とを測定した。測定結果を表2に示す。
その測定の際、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリティック製ハイレスタ)を用い、印加電圧を10Vとした。
実施例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が小さく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていた。
比較例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が大きく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていなかった。
【0061】
【表2】
【0062】
(実施例3)
製造例5で得た導電性混合液85gに、ポリエステル(東洋紡株式会社バイロン240、固形分濃度20質量%のメチルエチルケトン溶液)15gと、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート0.3g(PEDOT−PSS固形分100質量部に対して70.6質量部)を添加して、導電性高分子分散液を得た。
次いで、導電性高分子分散液を、No.2のバーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)に塗布して、塗布膜を形成した。
その塗布膜を、乾燥温度120℃、乾燥時間1分で加熱乾燥し、分散媒を除去して、導電性フィルムを得た。
【0063】
(実施例4)
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの添加量を0.6g(PEDOT−PSS固形分100質量部に対して141質量部)に変更したこと以外は実施例3と同様にして導電性フィルムを得た。
【0064】
(比較例3)
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを添加しなかったこと以外は実施例3と同様にして導電性フィルムを得た。
【0065】
<評価>
導電性フィルムの作製後1時間以内に測定した表面抵抗値(初期表面抵抗値)と、温度25℃且つ湿度50%に調整された大気下で5日間放置した後の表面抵抗値(5日間経過後表面抵抗値)とを測定した。測定結果を表3に示す。
その測定の際、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリティック製ハイレスタ)を用い、印加電圧を10Vとした。
実施例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が小さく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていた。
比較例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が大きく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていなかった。
【0066】
【表3】
【0067】
(実施例5)
製造例5で得た導電性混合液4.5gに付加硬化型シリコーン(信越化学工業社製KS−3703T、固形分濃度30質量%、トルエン溶液)15gと、トルエン25.5gと、メチルエチルケトン58.5gと、硬化用白金触媒(信越化学工業社製CAT−PL−50T)0.03gと、トリアリルイソシアヌレート0.09g(PEDOT−PSS固形分100質量部に対して400質量部)を添加して、導電性高分子分散液を得た。
次いで、導電性高分子分散液を、No.8のバーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)に塗布して、塗布膜を形成した。
その塗布膜を、温度150℃、時間1分で加熱して、乾燥させると共に硬化させて、導電性フィルムを得た。
【0068】
(比較例4)
トリアリルイソシアヌレートを添加しなかったこと以外は実施例5と同様にして導電性フィルムを得た。
【0069】
<評価>
導電性フィルムの作製後1時間以内に測定した表面抵抗値(初期表面抵抗値)と、温度25℃且つ湿度50%に調整された大気下で1日間放置した後の表面抵抗値(1日間経過後表面抵抗値)とを測定した。測定結果を表4に示す。また、形成後の導電層の表面を指の腹で強く擦った後の表面状態を目視で観察した。その観察結果も表4に示す。
その測定の際、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリティック製ハイレスタ)を用い、印加電圧を10Vとした。
実施例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が小さく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていた。
比較例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が大きく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていなかった。
【0070】
【表4】
【0071】
(実施例6)
製造例5で得た導電性混合液100gにトリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート0.1g(PEDOT−PSS固形分100質量部に対して20質量部)を添加して導電性高分子分散液を得た。
次いで、導電性高分子分散液を、No.2のバーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)に塗布して、塗布膜を形成した。
その塗布膜を、乾燥温度120℃、乾燥時間1分で加熱乾燥し、分散媒を除去して、導電性フィルムを得た。
【0072】
(実施例7)
トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートをトリアリルイソシアヌレートに変更したこと以外は実施例6と同様にして導電性フィルムを得た。
【0073】
(実施例8)
トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートをトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートに変更したこと以外は実施例6と同様にして導電性フィルムを得た。
【0074】
(実施例9)
トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートをトリグリシジルイソシアヌレートに変更したこと以外は実施例6と同様にして導電性フィルムを得た。
なお、実施例9は参考例である。
【0075】
(実施例10)
トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートをトリス(2−アク
リロイルオキシエチル)イソシアヌレートに変更したこと以外は実施例6と同様にして導電性フィルムを得た。
【0076】
(実施例11)
トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートをトリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートに変更したこと以外は実施例6と同様にして導電性フィルムを得た。
なお、実施例11は参考例である。
【0077】
(比較例5)
トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートを添加しなかったこと以外は実施例6と同様にして導電性フィルムを得た。
【0078】
<評価>
導電性フィルムの作製後1時間以内に測定した表面抵抗値(初期表面抵抗値)と、温度25℃且つ湿度50%に調整された大気下で5日間放置した後の表面抵抗値(5日間経過後表面抵抗値)とを測定した。測定結果を表5に示す。
その測定の際、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリティック製ハイレスタ)を用い、印加電圧を10Vとした。
実施例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が小さく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていた。
比較例の導電性フィルムは、初期表面抵抗値が大きく、しかも経時的な導電性低下が抑制されていなかった。
【0079】
【表5】