特許第6774970号(P6774970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許67749701,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタンの合成方法
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  • 特許6774970-1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタンの合成方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774970
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタンの合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/02 20060101AFI20201019BHJP
   C07C 17/278 20060101ALI20201019BHJP
   C07C 17/10 20060101ALI20201019BHJP
   C07C 19/10 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   C07C17/02
   C07C17/278
   C07C17/10
   C07C19/10
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-562686(P2017-562686)
(86)(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公表番号】特表2018-516269(P2018-516269A)
(43)【公表日】2018年6月21日
(86)【国際出願番号】EP2016062235
(87)【国際公開番号】WO2016193248
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2019年4月26日
(31)【優先権主張番号】15305853.2
(32)【優先日】2015年6月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アンテヌッチ, エマヌエーラ
(72)【発明者】
【氏名】ボーサッロン, ロイク
(72)【発明者】
【氏名】ミッレファンティ, ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】トルテッリ, ヴィート
(72)【発明者】
【氏名】ヴェントゥリーニ, フランチェスコ
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/139352(WO,A1)
【文献】 特開2006−342059(JP,A)
【文献】 特表2011−509268(JP,A)
【文献】 米国特許第02716141(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第103664503(CN,A)
【文献】 特開2005−046651(JP,A)
【文献】 特開2006−001881(JP,A)
【文献】 特表2001−521816(JP,A)
【文献】 MILLER, William T.,The Mechanism of Fluorination. III. Fluorine Atom Reactions. The Olefin Dimerization Reaction,J. Am. Chem. Soc.,1957年,Vol.79, No.12,3084-3089
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/02
C07C 17/10
C07C 17/278
C07C 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の反応:
[a]1,2,3,4−テトラクロロブタンのフッ素化、又は
[b]1,2,3,4−テトラクロロ−1,4−ジフルオロ−1,3−ブタジエンのフッ素化、又は
[c]1,2−ジクロロジフルオロエチレンのフッ素化二量体化、
のうちの1つを含む、1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタンの製造方法であって、前記方法がマイクロリアクター中で行われる、方法。
【請求項2】
前記方法が気相中、液相中、又は液/気相中で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記気相が、フッ素、窒素、ヘリウム、アルゴン、CO、CF、C、Cから選択される少なくとも1種の気体を含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記液相が、クロロフルオロカーボン;パーハロアルカン;パーハロオレフィン;パーフルオロポリエーテル;パーフルオロエーテル;及びパーフルオロトリアルキルアミンから選択される少なくとも1種の溶媒を含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
反応[a]が、80℃〜300℃の温度でマイクロリアクターを保持することによって行われる、請求項に記載の方法。
【請求項6】
反応[b]が、−10℃〜+50℃の温度でマイクロリアクターを保持することによって行われる、請求項に記載の方法。
【請求項7】
反応[c]が、−150℃〜+0℃の温度でマイクロリアクターを保持することによって行われる、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年6月4日に出願された欧州特許出願公開第15305853.2号からの優先権を主張するものであり、この出願の全ての内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、マイクロリアクター中での1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタン(「A316」としても知られる)は、特には半導体の微細加工のためのエッチングガスとして半導体産業で使用される安定なガスであるヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン(「C4F6」又は「HFBD」としても知られる)の合成における中間体化合物として使用されている。
【0004】
ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン及びその中間体であるA316の合成方法は、既に当該技術分野で開示されている。
【0005】
米国特許出願公開第2009/0216053号明細書(昭和電工株式会社)には、(1)希釈ガスの存在下、気相中で、臭素原子、ヨウ素原子および塩素原子からなる群から選択される1つの原子とそれぞれが結合している4個の炭素原子を有する化合物を、フッ素ガスと反応させて、生成物(A)を含む混合物を合成する工程と、(2)溶媒の存在下で、工程(1)で合成した化合物(A)から金属によってフッ素原子以外のハロゲンを脱離させることを含む工程と、を含む、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンの製造方法が開示されている。製造工程は、好ましくは、希釈ガスの存在下、気相中で、1,2,3,4−テトラクロロブタンを、フッ素ガスと反応させて、1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタンを含む混合物を合成する工程(1)と、溶媒の存在下で、工程(1)で得た1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタンを金属により脱クロロ化する工程(2)を含む。
【0006】
同様に、米国特許出願公開第20110071325号明細書(昭和電工株式会社)には、溶媒の存在下かつ触媒の不存在下で、複数の反応器を使用して1,2,3,4−テトラクロロブタンにフッ素ガスを供給して、1,2,3,4−テトラクロロブタンとフッ素ガスとを互いに反応させることであって、1つの反応器から排出された一部又は全ての未反応フッ素ガスが前記1つの反応器とは異なる反応器に導入されることを含む、1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタンの製造方法が開示されている。
【0007】
米国特許第8536387号明細書(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)には、(A)式(II)CY”Y=CY’Cl(式中、Y、Y’、及びY”は同じ又は異なり、同時にHではないことを条件としてH、Cl、又はBrである)のクロロオレフィンから出発し、フッ素化二量体化及び単体フッ素によるフッ素化の二段階を行う、式(V)CF−CFYII−CFYII−CF(式中、Y及びYIIは同じ又は異なり、同時にHではないことを条件としてH、Cl、又はBrであってもよい)のフルオロ−ハロ−ブタンの合成工程と、(B)式(V)のフルオロ−ハロ化合物の脱ハロゲンまたは脱ハロゲン化水素によりパーフルオロ−1,3−ブタジエン化合物を得る工程と、を含む、パーフルオロ−1,3−ブタジエンの合成方法が開示されている。
【0008】
米国特許第2716141号明細書(WILLIAM T.MILLER)8/23/1955には、塩素及び/又はフッ素で完全に置換された脂肪族化合物の合成方法が開示されている。より具体的には、パーハロブタンの合成方法は、式CR=CRの少なくとも1種の化合物を50℃未満の温度で単体フッ素と反応させることであって、各Rが塩素、フッ素、パーフルオロ非環式基、及びパーフルオロクロロ非環式基であることを含む。
【0009】
また、単体フッ素とパーハロ−オレフィンとの反応の一般的な機構は、MILLER,W.T.,et al.The mechanism of fluorination.III.Fluorine atom reactions.The olefin dimerization reaction .Journal of American Chemical Society.June 20,1957,vol.79,p.3084−3089によって示されている。この機構は、フッ素原子の中間体の形成と共に対で生成する、拡散で制御されるフリーラジカルの組み合わせによる、二量体付加生成物の生成を示している。
【0010】
国際公開第99/22857号パンフレット(BRITISH NUCLEAR FUELS PLC)には、マイクロリアクターを使用して2つの流体間の化学反応を行う方法が開示されている。フッ素化反応は、マイクロリアクター中で行うことができるとされている化学反応の広範囲のリストの中に列挙されている。しかし、第1にこの特許出願には、フッ素化反応とは異なるものであるとして知られているフッ素化二量体化反応については記載されていない。更に、この特許出願には塩素原子を有する試薬から出発するフッ素化反応について記載されていない。実際、この種類の反応は特有の懸念事項を有することが知られている。例えば、MILLER,W.T.,et al.The mechanism of fluorination.III.Fluorine atom reactions.The olefin dimerization reaction.Journal of American Chemical Society.June 20,1957,vol.79,p.3084−3089から、塩素含有オレフィンの場合、フッ素IIIによる塩素の置換に対応するものと、フッ素IVによる塩素の付加に対応するものの、様々な量の副生成物が通常生成することが知られている。
【発明の概要】
【0011】
出願人は、1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタン(A316)が当該技術分野で公知の方法によって合成できるにもかかわらず、上で引用した先行技術文献中で開示されている方法の生産能力が約1Kg/h*m〜約200Kg/h*mであることに注目した。
【0012】
しかし、半導体産業における1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタン(A316)の需要が増加していることから、出願人は今回、工業的生産のコストをできるだけ低く保ちながらも従来の方法と比較して高い生産能力を有するA316の製造方法を提供するという課題に向き合った。
【0013】
それを行う中で、出願人は、フッ素化及びフッ素化二量体化の反応は、これらが非常に高い又は非常に低い温度を必要とすることとフッ素及びフッ化水素などの腐食性の試薬のため、特に過酷な環境で行われることを十分認識していた。これらの過酷な条件は、マイクロリアクターが使用される場合、典型的には1mm未満の直径を有するマイクロチャネルが腐食してその結果詰まる場合があり、これはプロセスの中断を生じさせ、マイクロリアクターの追加的なメンテナンスを必要とさせ得ることから厄介である。
【0014】
出願人は、驚くべきことに、1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタン(A316)の合成がマイクロリアクター中で行われる場合、当該技術分野で公知の合成で得られる生産能力よりも著しく高い生産能力を得られることを見出した。より具体的には、当該技術分野で公知の合成に対して10倍滞留時間が短縮されるという事実にも関わらず、生産能力が数百キロからトンへと増加する。
【0015】
更に、出願人は、1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタン(A316)の合成が、マイクロチャネルの腐食及び詰まりを生じさせることなしにマイクロリアクターの中で行えることを見出した。
【0016】
かくして、第1の態様においては、本発明は、1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタンの製造方法であって、前記方法がマイクロリアクター中で行われる方法に関する。
【0017】
有利には、本発明の方法は爆発が起こりにくいことから、従来の合成よりも安全である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】マイクロリアクターの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書及び下の請求項において:
− 用語「生産能力」は、化学反応において生成物が得られる速度の割合を意味し、より具体的にはこれは、例えば時間当たり、及び反応器又はマイクロリアクターの立方メートル当たりに製造される1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタン(A316)のKg又はトンで表される量を指すために使用される。したがって、用語「生産能力」は、化学反応で得られる生成物の量を示す用語「収率」とは異なる。
− 「滞留時間」という表現は、反応体積とマイクロリアクターの中に供給される気相の体積流量との間の比率を指すことが意図されている。プロセスが気相で行われる場合、反応は気相で生じ、反応体積はマイクロリアクターの中へ入る気体の体積に相当する。プロセスが液/気相又は液相で行われる場合、反応はそれぞれ気相と液相との間の界面で、及び液相中で生じ、両方の場合で反応体積はマイクロリアクターの中へ入る液相の体積に相当する。
− 用語「マイクロリアクター」(「マイクロ構造反応器」又は「マイクロチャネルリアクター」としても知られる)は、典型的には1mm未満の断面寸法を有する閉じ込め構造の中で化学反応が生じる装置を意味することが意図されている。前記閉じ込め構造は、典型的には、1mm未満の断面寸法を有する流路であるマイクロチャネル(微細な「フローダクト」とも呼ばれる)である。
【0020】
マイクロリアクターは、液相のみ(この場合はこれらは「マイクロミキサー」とも呼ばれる)、気相のみ、及び液/気相での反応のために使用することができる。
【0021】
図1を参照すると、マイクロリアクター(M1)は、液及び/又は気相の反応物の反応チャネル(図示せず)の中への入口(L1、L2)と、最終生成物を取り出すための少なくとも1つの出口(L3)とを含む。必要に応じて、マイクロリアクター(M1)は、伝熱媒体及び熱交換器(E1、E2)のための少なくとも1つの入口(L4)及び少なくとも1つの出口(L5)も含む。
【0022】
典型的には、反応流路は、典型的には長手方向に配置される少なくとも1つのマイクロチャネルを含む反応プレート(図示せず)と接続されている。好ましくは、反応プレートは少なくとも5本のマイクロチャネル、より好ましくは少なくとも10本のマイクロチャネルを含む。典型的には、マイクロリアクターは最大10,000本のマイクロチャネルを含む。
【0023】
マイクロチャネルは、典型的にはマニホールド又はヘッダーチャネル(図示せず)によって1つ以上の入口及び/又は出口と連結される。マイクロチャネルは、例えば直列に、又は平行に、又は他の構成で連結されていてもよい。
【0024】
マイクロチャネルの断面は、長方形、正方形、台形、円形、半円形、楕円形、三角形、U字形等であってもよい。また、マイクロチャネルは、フィンや溝等などの、断面形状を変更する壁の延長部又は挿入部を含んでいてもよい。マイクロチャネル断面の形状及び/又は大きさは、その長さ方向に変化していてもよい。例えば、高さ又は幅は、マイクロチャネル自体の長さの一部又は全体にわたって、比較的大きい寸法から比較的小さい寸法へと次第に小さくなっていてもよく、又はその逆であってもよい。
【0025】
好ましくは、マイクロチャネルは1μm〜1000μm、好ましくは5μm〜800μm、より好ましくは10μm〜500μmの少なくとも1つの断面寸法を有する。好ましい実施形態においては、前記少なくとも1つの断面寸法は、最も大きい断面寸法であるかマイクロチャネルの直径である。
【0026】
好ましくは、前記マイクロチャネルは1cm〜約10m、より好ましくは5cm〜約5m、更に好ましくは10cm〜約3mの長さを有する。
【0027】
マイクロチャネルの寸法及び全体の長さの選択は、マイクロリアクターの中への反応物の必要とされる滞留時間、多相成分間の接触時間、及び他のパラメーターに応じて当業者が行うことができる。
【0028】
典型的には、マイクロリアクターは、非常に大きい表面対容積比を有しており、そのため従来の反応器と比較して向上した熱及び物質の移動速度を示す。好ましくは、マイクロリアクターの表面対容積比は4,000〜40,000m/mである。
【0029】
好ましくは、マイクロリアクターは入口(複数可)及び出口(複数可)の他に、マイクロチャネルを流通する溶液もしくは流体への又はこれらからの制御された熱の除去又は導入のための、バルブ、混合手段、分離手段、流れ切り替え流路、熱流束制御手段(熱交換流路等)、ポンプ(類)、チャンバー、又はマイクロチャネルなどの他のマイクロチャネルプロセスの制御の特徴を含む。マイクロリアクターは、圧力、温度、及び流れの検知要素などのプロセス制御要素も含んでいてもよい。
【0030】
マイクロリアクターの温度は、例えば伝熱流体を使用することによって制御することができる。行われる反応に応じて、マイクロリアクターは好ましくは−150℃〜+300℃、より好ましくは−110℃〜200℃の温度で保持される。
【0031】
好ましくは、本発明の方法は連続モードで、すなわちマイクロリアクターに反応物を連続的に供給することによって行われる。
【0032】
マイクロリアクターは、並流又は向流で用いることができる。好ましくは、マイクロリアクターは並流で用いられる。すなわち、反応物は上部の入口から底部の出口まで流れた。
【0033】
10000〜30000m/mの表面対容積比を有し、並流で運転される、流下液膜式マイクロリアクター(FFMR)を使用することで非常に良好な結果が得られた。典型的には、前記流下液膜式マイクロリアクターは、互いに隣接して配置されている複数のマイクロチャネルを含む少なくとも1つの反応プレートを含む。
【0034】
好ましくは、本発明の方法は、ハロアルカン又は(パー)ハロオレフィンをフッ素化又はフッ素化二量体化する工程を含む。
【0035】
用語「ハロアルカン」における接頭辞「ハロ」は、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されているアルカンを指すことが意図されており、前記ハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素から選択され、より好ましくは塩素及び臭素から選択され、更に好ましくは塩素である。
用語「(パー)ハロオレフィン」の中で括弧に挟まれて使用される接頭辞「(パー)」は、オレフィンが完全に又は部分的にハロゲン化されていてもよいことを示すことが意図されている。
【0036】
好ましくは、本発明の方法は、気相中、液相中、又は気−液相中で行われる。
【0037】
より好ましくは、前記気相は、フッ素、窒素、ヘリウム、アルゴン、CO、CF、C、Cから選択される少なくとも1種の気体を含む。
【0038】
より好ましくは、前記液相は、クロロフルオロカーボン;1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタン(A316)などのパーハロアルカン;1,2,3,4−テトラクロロ−1,4−ジフルオロ−1,3−ブタジエン及び1,2−ジクロロ−ジフルオロ−エチレンなどのパーハロオレフィン;パーフルオロポリエーテル;パーフルオロエーテル;及びパーフルオロトリアルキルアミン;から選択される少なくとも1種の溶媒を含む。
【0039】
好ましくは、フッ素化工程は、フッ化水素などのフッ素源の存在下で前記ハロアルカン又は前記(パー)ハロオレフィンを反応させることによって行われる。
【0040】
より好ましくは、前記方法は、1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタンを得るために、次の反応:
[a]1,2,3,4−テトラクロロブタンのフッ素化、又は
[b]1,2,3,4−テトラクロロ−1,4−ジフルオロ−1,3−ブタジエンのフッ素化、又は
[c]1,2−ジクロロジフルオロエチレンのフッ素化二量体化、
のうちの1つを含む。
【0041】
好ましくは、反応[a]は気相中又は液/気相中で行われ、前記気相及び前記液相は上で定義した通りである。より好ましくは、前記気相は、窒素又はヘリウムとの混合物としてのフッ素を含む。より好ましくは、前記液相は1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタン(A316)を含む。
【0042】
好ましくは、反応[a]は例えばフッ化水素などのフッ素源の存在下で行われる。
【0043】
好ましくは、反応[a]における滞留時間は0.01〜0.5秒の範囲である。
【0044】
好ましくは、反応[a]は、80℃〜300℃、より好ましくは100℃〜275℃の温度でマイクロリアクターを保持することによって行われる。
【0045】
好ましくは、反応[b]は上で定義した通りの液/気相中で行われる。より好ましくは、前記気相は、フッ素とヘリウムとの混合物を含む。より好ましくは、前記液相は1,2,3,4−テトラクロロ−1,4−ジフルオロ−ブタジエンを含む。
【0046】
好ましくは、反応[b]における滞留時間は0.01〜0.5秒の範囲である。
【0047】
好ましくは、反応[b]は、−10℃〜+50℃、より好ましくは0℃〜25℃の温度でマイクロリアクターを保持することによって行われる。
【0048】
好ましくは、反応[c]は上で定義した通りの液/気相中で行われる。より好ましくは、前記気相は、フッ素とヘリウムとの混合物を含む。より好ましくは、前記液相は1,2−ジクロロジフルオロ−エチレンを含む。
【0049】
好ましくは、反応[c]における滞留時間は0.01〜0.5秒の範囲である。
【0050】
好ましくは、反応[c]は、−150℃〜0℃、より好ましくは−100℃〜−65℃、更に好ましくは−95℃〜−85℃の温度でマイクロリアクターを保持することによって行われる。
【0051】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0052】
本発明は、以下の実験項に含まれる実施例によってより詳細に本明細書で以下に説明される。実施例は、例示的であるに過ぎず、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0053】
実験項
原料および方法
1,2,3,4−テトラクロロブタン(ClCH−CHCl−CHCl−CHCl)は、米国特許出願公開第2013/0116483号明細書(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY S.P.A.)に記載の手順に従って、1,3−ブタジエンのクロロ化によって合成した。
1,2,3,4−テトラクロロ−1,4−ジフルオロ−1,3−ブタジエン(FClC=CCl−CCl=CFCl)は、上で引用した米国特許第8,536,387号明細書に記載の手順に従って合成した。
1,2−ジクロロジフルオロエテン(CFCl=CFCl、「A1112」とも呼ばれる)は、上で引用した米国特許出願公開第2013/0116483号明細書に記載の手順に従って合成した。
トリクロロフルオロメタン(CClF、Freon(登録商標)11とも呼ばれる)はChemos GmbHから入手し、そのまま使用した。
希釈剤として使用される際の1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタン(FClC−CFCl−CFCl−CFCl)は、上で引用した米国特許出願公開第2009/0216053号明細書又は米国特許出願公開第2011/0071325号明細書に記載の手順に従って合成した。
【0054】
以降の実施例では、約20000m/mの表面対容積比を有し、5つのU字形の溝(それぞれ約80μLの容積を有する)と、溝の上部に位置する密閉されたガスチャンバーとを含むInstitut fuer Mikrotechnik Mainz GmbHにより供給された流下液膜式マイクロリアクター(FFMR)を使用した。マイクロリアクターは、並流で用いた。すなわち、反応物は上部の入口から底部の出口まで流れた。また、マイクロリアクターの入口は気体供給ライン及び液体供給ラインと接続した。マイクロリアクターは、伝熱流体を使用して、以降の実施例で詳しく開示されている通りに適切に冷却又は加熱した。また、マイクロリアクターに入る前に、気体と液体の両方が2つの熱交換器を使用して適切に冷却又は加熱された。排出冷却液、及び生成物を含む二相の流れは、2つの別個のポートからマイクロリアクターを出た。
【0055】
実施例1及び1Cでは、滞留時間は表1に報告されている反応体積と、反応器の中に供給される全ての反応物の気相全体の体積流量との間の比率として計算した。
実施例2、3、4、2C、3C及び4Cでは、滞留時間は表1に報告されている反応体積と、フッ素及び窒素の気相全体の体積流量との間の比率として計算した。
【0056】
実施例1[反応a]
約250℃に保持されているマイクロリアクターに、2.23mol/hの窒素で希釈されている272mmol/hのフッ素と、1.3mol/hのHFと、44mmol/hの1,2,3,4−テトラクロロブタンとを供給した。
【0057】
反応は気相で生じた。反応の終了時、得られた生成物を液相に濃縮し、これをその後分析した。
【0058】
反応物の滞留時間、最終生成物A316の量、生産能力、及び反応体積は下の表1に報告されている。
【0059】
実施例2[反応a]
約120℃に保持されているマイクロリアクターに、気相として窒素で希釈されている(1:1)6Nl/hのフッ素と、60mmol/hの希釈剤としての1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタンと、50mmol/hのHFと、液相としての20mmol/hの1,2,3,4−テトラクロロブタンとを供給した。
【0060】
反応は気相と液相との間の界面で生じた。反応の終了時、生じた生成物は液相として得た。これはその後更に処理することなしに分析した。
【0061】
反応物の滞留時間、最終生成物A316の量、生産能力、及び反応体積は下の表1に報告されている。
【0062】
実施例3[反応b]
約10℃に保持されているマイクロリアクターに、33.5mmol/hのヘリウムで希釈されている120mmol/hのフッ素と、41.2mmol/hの1,2,3,4−テトラクロロ−1,4−ジフルオロ−1,3−ブタジエンとを供給した。
【0063】
反応は気相と液相との間の界面で生じた。反応の終了時、フッ素の変換率は定量的であることが分かった。
【0064】
反応物の滞留時間、生成物A316の量、生産能力、及び反応体積は下の表1に報告されている。
【0065】
実施例4[反応c]
マイクロリアクターに、569mmol/hのヘリウムで希釈されている33.5mmol/hのフッ素と、263mmol/hの1,2−ジクロロ−ジフルオロ−エチレンとを供給した。
【0066】
液体入口温度は−104℃(−112℃〜−103℃の範囲)であり、気体入口温度は−107℃(−110℃〜−106℃の範囲)であった。マイクロリアクターの温度は−87℃〜−95℃の間に保持した。
【0067】
反応は液相と気相との間の界面で生じた。反応の終了時、フッ素の変換率は定量的であることが分かった。
【0068】
反応物の滞留時間、生成物A316の量、生産能力、及び反応体積は下の表1に報告されている。
【0069】
比較例1C
反応[a]は、本明細書の下で開示の手順に従って標準的な反応器の中で行った。
【0070】
250℃に保持されている0.2Lの管型反応器に、44mmol/hの1,2,3,4−テトラクロロブタンと、2.23mol/hの窒素で希釈されている272mmol/hのフッ素と、1.34mol/hのHFとを連続的に供給した。
【0071】
反応物の滞留時間、生成物A316の量、生産能力、及び反応体積は下の表1に報告されている。
【0072】
比較例2C
反応[a]は、本明細書の下で開示の手順に従って標準的な反応器の中で行った。
【0073】
撹拌下、20gのHFと、380gの希釈剤としての1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタンと、100gの1,2,3,4−テトラクロロ−ブタンとが入っている約35℃に保持されている反応器に、3Nl/hのFと3Nl/hのNとを含む気相混合物を21時間供給した。
【0074】
反応物の滞留時間、生成物A316の量、生産能力、及び反応体積は下の表1に報告されている。
【0075】
比較例3C
反応[b]は、米国特許第8,536,387号明細書に開示の手順及び本明細書の下で開示の手順に従って、標準的な反応器の中で行った。
【0076】
撹拌下、50mlのCFOCFClCFClが入っている約10℃に保持されている反応器に、2.7Nl/hのFと0.75Nl/hのNとを含む気相混合物、及び9.4g/hの液体の1,2,3,4−テトラクロロ−1,4−ジフルオロ−1,3−ブタジエンを1時間供給した。
【0077】
反応物の滞留時間、生成物A316の量、生産能力、及び反応体積は下の表1に報告されている。
【0078】
比較例4C
反応[c]は、本明細書の下で開示の手順に従って標準的な反応器の中で行った。
【0079】
1,2,3,4−テトラクロロ−ヘキサフルオロ−ブタンの合成は、上で引用したMiller T.らにより開示の方法に従って行った。
【0080】
撹拌下、約−75℃に保持されている0.25Lの容積を有する反応器に、溶媒としての165gのFreon(登録商標)11で希釈されている107gの1,2−ジクロロジフルオロエテンを添加した。
【0081】
0.49mol/hの窒素で希釈されている0.49molの窒素を、引き続き7時間混合物の中に吹き込んだ。
【0082】
反応物の滞留時間、生成物A316の量、生産能力、及び反応体積は下の表1に報告されている。
【0083】
図1