(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被測定アンテナ(100)が備える複数のアンテナ素子(T1〜TN)の中から、互いに所定間隔以上離れた一部のアンテナ素子を順次切り替えて選択し、選択した前記一部のアンテナ素子を励振させるアンテナ制御部(16)と、
前記アンテナ制御部により選択される前記一部のアンテナ素子が切り替わるごとに、前記被測定アンテナの近傍界領域の所定の測定平面内に設定された複数の測定位置において、前記一部のアンテナ素子から送信された無線信号を受信するプローブアンテナ(12,26)と、
前記プローブアンテナにより受信された無線信号の振幅及び位相を測定する振幅位相測定部(17)と、
前記振幅位相測定部により測定された振幅及び位相に基づいて、前記被測定アンテナの電磁波放射面(100a)における前記一部のアンテナ素子から送信された無線信号の振幅分布及び位相分布を算出するバックプロジェクション処理部(18)と、
前記バックプロジェクション処理部により算出された振幅分布及び位相分布から、前記電磁波放射面における各前記一部のアンテナ素子の位置に対応する振幅及び位相の値を抽出する振幅位相抽出部(19)と、
前記振幅位相抽出部により抽出された位相の値から、前記電磁波放射面における前記複数のアンテナ素子のそれぞれの位置に対応する位相を算出する第1位相算出部(20)と、を備えるキャリブレーションシステム。
前記プローブアンテナは、第1プローブと、前記測定平面内の水平方向に前記第1プローブを挟んで配置される第2プローブ及び第3プローブと、第4プローブと、前記測定平面内の垂直方向に前記第4プローブを挟んで配置される第5プローブ及び第6プローブと、を含む複数のプローブからなり、
前記振幅位相測定部は、
前記複数のプローブにより受信された無線信号間の位相差を測定するとともに、前記複数のプローブにより受信された無線信号の振幅を測定する振幅位相差測定部(17a)と、
前記振幅位相差測定部により測定された位相差から、隣接する2つの前記測定位置における前記無線信号間の位相差を算出する隣接位相差算出部(17b)と、
前記隣接位相差算出部により算出された位相差から、各前記測定位置における前記無線信号の位相を算出する第2位相算出部(17c)と、を備え、
前記測定平面における前記第1プローブと前記第2プローブの中心間の距離が、前記測定平面における前記第1プローブと前記第3プローブの中心間の距離に比べて、水平方向に隣接する2つの前記測定位置の間隔d1だけ長く、
前記測定平面における前記第4プローブと前記第5プローブの中心間の距離が、前記測定平面における前記第4プローブと前記第6プローブの中心間の距離に比べて、垂直方向に隣接する2つの前記測定位置の間隔d2だけ長いことを特徴とする請求項1に記載のキャリブレーションシステム。
前記第1プローブ、前記第2プローブ、及び前記第3プローブのうちのいずれか1つが、前記第4プローブ、前記第5プローブ、及び前記第6プローブのうちのいずれか1つを兼ねることを特徴とする請求項2に記載のキャリブレーションシステム。
前記被測定アンテナは、各前記アンテナ素子から送信される無線信号の前記被測定アンテナの前記電磁波放射面における振幅及び位相を調整する振幅位相調整手段(103−1〜103−N,104−1〜104−N)を備え、
前記アンテナ制御部は、
前記振幅位相抽出部により抽出された振幅と、あらかじめ定められた振幅の所望値との差に応じて、前記振幅位相調整手段による振幅の調整量を制御する振幅制御部(16c)と、
前記第1位相算出部により算出された位相と、あらかじめ定められた位相の所望値との差に応じて、前記振幅位相調整手段による位相の調整量を制御する位相制御部(16b)を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のキャリブレーションシステム。
前記アンテナ制御部により選択される前記一部のアンテナ素子の放射源間の間隔が、各前記アンテナ素子から送信される無線信号の半波長以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のキャリブレーションシステム。
前記アンテナ制御部により選択される前記一部のアンテナ素子の間に、以降に切り替えて選択される一部のアンテナ素子のいずれかが存在することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のキャリブレーションシステム。
前記複数のアンテナ素子が正方格子状、又は矩形格子状に配列されている場合に、前記アンテナ制御部が、千鳥格子状に配列された前記一部のアンテナ素子を選択することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のキャリブレーションシステム。
被測定アンテナ(100)が備える複数のアンテナ素子(T1〜TN)の中から、互いに所定間隔以上離れた一部のアンテナ素子を順次切り替えて選択し、選択した前記一部のアンテナ素子を励振させるアンテナ制御ステップ(S2,S22)と、
前記アンテナ制御ステップにより選択される前記一部のアンテナ素子が切り替わるごとに、前記被測定アンテナの近傍界領域の所定の測定平面内に設定された複数の測定位置において、前記一部のアンテナ素子から送信された無線信号をプローブアンテナ(12,26)により受信する受信ステップ(S4,S24)と、
前記受信ステップにより受信された無線信号の振幅及び位相を測定する振幅位相測定ステップ(S5,S25,S27〜S29)と、
前記振幅位相測定ステップにより測定された振幅及び位相に基づいて、前記被測定アンテナの電磁波放射面(100a)における前記一部のアンテナ素子から送信された無線信号の振幅分布及び位相分布を算出するバックプロジェクション処理ステップ(S7,S30)と、
前記バックプロジェクション処理ステップにより算出された振幅分布及び位相分布から、前記電磁波放射面における各前記一部のアンテナ素子の位置に対応する振幅及び位相の値を抽出する振幅位相抽出ステップ(S8,S31)と、
前記振幅位相抽出ステップにより抽出された位相の値から、前記電磁波放射面における前記複数のアンテナ素子のそれぞれの位置に対応する位相を算出する第1位相算出ステップ(S10,S33)と、を含むキャリブレーション方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るキャリブレーションシステム及びキャリブレーション方法の実施形態について、図面を用いて説明する。本発明に係るキャリブレーションシステムは、複数のアンテナ素子を含む被測定アンテナから送信される無線信号の振幅及び位相を近傍界で測定し、各アンテナ素子から送信される無線信号の振幅及び位相が既定の値になるように調整(キャリブレーションを実行)するものである。
【0029】
(第1の実施形態)
図1に示すように、被測定アンテナ100は、例えばMassive−MIMOアンテナなどのアレーアンテナであり、分配器101と、SW102−1〜102−Nと、可変移相器103−1〜103−Nと、可変増幅器104−1〜104−Nと、アンテナ素子T1〜TNと、を備える。可変移相器103−1〜103−N及び可変増幅器104−1〜104−Nは、各アンテナ素子T1〜TNから送信される無線信号の被測定アンテナ100の電磁波放射面における振幅及び位相を調整する振幅位相調整手段を構成する。
【0030】
分配器101は、後述する信号発生器15から出力された無線信号を、複数のSW102−1〜102−Nを介して複数の可変移相器103−1〜103−Nに分配するようになっている。
【0031】
SW102−1〜102−Nは、複数のアンテナ素子T1〜TNを個別に励振状態又は非励振状態に切り替えるためのものであり、後述する素子選択部16aからの制御信号に応じて、後段の可変移相器103−1〜103−Nに、分配器101により分配された無線信号を入力するか否かを切り替えるようになっている。
【0032】
可変移相器103−1〜103−Nは、後述する位相制御部16bからの制御信号に応じて、分配器101により分配された無線信号の位相を調整するようになっている。
【0033】
可変増幅器104−1〜104−Nは、可変移相器103−1〜103−Nから出力された位相調整後の無線信号の振幅を調整するものであり、後述する振幅制御部16cからの制御信号に応じて無線信号の振幅を調整し、振幅を調整した無線信号をアンテナ素子T1〜TNに入力するようになっている。
【0034】
なお、
図2に示すように、被測定アンテナ100がSW102−1〜102−Nを備えない場合もある。この場合には、後述する素子選択部16aからの制御信号に応じて、可変増幅器104−1〜104−Nの電源がオン/オフされることで、複数のアンテナ素子T1〜TNが個別に励振状態又は非励振状態に切り替わる。
【0035】
図3に示すように、本実施形態のキャリブレーションシステム1は、アンテナ支持部11と、プローブアンテナ12と、プローブ走査機構13と、走査制御部14と、信号発生器15と、アンテナ制御部16と、振幅位相測定部17と、バックプロジェクション処理部18と、振幅位相抽出部19と、第1位相算出部20と、遠方界指向性算出部21と、表示部22と、操作部23と、制御部24と、を備える。
【0036】
図1及び
図2に示すように、アンテナ制御部16は、素子選択部16aと、位相制御部16bと、振幅制御部16cと、を含む。
【0037】
素子選択部16aは、被測定アンテナ100が備える複数のアンテナ素子T1〜TNの中から、互いに所定間隔以上離れた一部のアンテナ素子を順次切り替えて選択するための制御信号を被測定アンテナ100に出力するものである。一部のアンテナ素子は、素子選択部16aに選択されることにより励振される。被測定アンテナ100がSW102−1〜102−Nを備えている場合には、素子選択部16aはSW102−1〜102−Nに制御信号を出力するようになっている。一方、被測定アンテナ100がSW102−1〜102−Nを備えていない場合には、素子選択部16aは可変増幅器104−1〜104−Nにそれらの電源をオン/オフする制御信号を出力するようになっている。
【0038】
位相制御部16bは、分配器101により分配された無線信号の位相を調整するための制御信号を、可変移相器103−1〜103−Nに出力するようになっている。
【0039】
また、振幅制御部16cは、可変移相器103−1〜103−Nから出力された位相調整後の無線信号の振幅を調整するための制御信号を、可変増幅器104−1〜104−Nに出力するようになっている。
【0040】
信号発生器15は、例えば無変調波信号や広帯域信号(例えばOFDM信号)などの無線信号を発生させ、発生させた無線信号を被測定アンテナ100に出力することにより、無線信号を被測定アンテナ100から送信させる。また、信号発生器15は、被測定アンテナ100への無線信号の出力に同期した同期用信号を振幅位相測定部17に出力するようになっている。
【0041】
図3に示すように、アンテナ支持部11は、被測定アンテナ100をその電磁波放射面100aが所定方向に向いた状態で支持するようになっている。
【0042】
プローブアンテナ12は、アンテナ制御部16により選択される一部のアンテナ素子が切り替わるごとに、被測定アンテナ100の近傍界領域の所定の測定平面P内に設定された複数の測定位置において、一部のアンテナ素子から送信された無線信号の電磁波を受信するようになっている。なお、測定平面Pは、被測定アンテナ100の電磁波放射面100aに対して、被測定アンテナ100から送信される無線信号の3波長程度離れた距離で平行に設けられる。また、これら複数の測定位置は、被測定アンテナ100から送信される無線信号の1/2波長(0.5λ)以下の間隔で測定平面P内の水平方向及び垂直方向に設定される。
【0043】
例えば、プローブアンテナ12は、マイクロ波又はミリ波帯の所定周波数範囲の電磁波を伝搬させる導波路を有し、先端が開放された導波管である。このような導波管としては、導波路の断面形状が長方形の方形導波管や、導波路の断面形状が両側部の高さに対して中央部の高さが小となるダブルリッジ導波管を用いることができる。
【0044】
図4(a)は、プローブアンテナ12として用いられる方形導波管の導波路30の長手方向に垂直な断面を示す図である。方形導波管の外形a×bは、内径w0×h0より大きく、かつ構造物としての強度が得られる範囲で任意である。
【0045】
図4(b)は、プローブアンテナ12として用いられるダブルリッジ導波管の導波路31の長手方向に垂直な断面を示す図である。ダブルリッジ導波管においては、上下の内壁中央から互いに近づく方向に突出する2つの突出部32a,32bが長手方向に連続して形成されている。すなわち、導波路31の中央部31aの高さh1が、その両側部31b,31cの高さh2に対して小に設定されている。
【0046】
このダブルリッジ導波管の場合、中央部31aの幅w1及び高さh1、並びに、両側部31b,31cの幅w2及び高さh2を調整することで、標準の方形導波管の導波路の断面形状より小さい断面形状で、同等の周波数範囲の電磁波を伝搬できるという利点がある。また、ダブルリッジ導波管の幅と高さを同じ形状にすると、開口が広くなり受信感度が上がるという利点がある。
【0047】
プローブ走査機構13は、プローブアンテナ12を被測定アンテナ100の電磁波放射面100aに対向する近傍の測定平面P内でX,Y方向に移動させる。つまり、プローブ走査機構13は、測定平面P内の複数の測定位置にプローブアンテナ12を移動させるようになっている。
【0048】
走査制御部14は、プローブ走査機構13に対して、測定平面P内の全ての測定位置(格子点)にプローブアンテナ12を所定順に移動させる制御を行うようになっている。また、走査制御部14は、プローブアンテナ12が存在する測定位置の位置情報を、バックプロジェクション処理部18や遠方界指向性算出部21に送出するようになっている。
【0049】
振幅位相測定部17は、プローブアンテナ12により受信された無線信号の振幅及び位相を、信号発生器15から出力された同期用信号のタイミングを基準として測定するようになっている。例えば、振幅位相測定部17は、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)、スペクトラムアナライザ、オシロスコープなどにより構成することが可能である。
【0050】
バックプロジェクション処理部18は、特許文献1に開示されているバックプロジェクション法により、振幅位相測定部17により測定された振幅及び位相の値と、走査制御部14から送出された位置情報とに基づいて、アンテナ制御部16の素子選択部16aにより選択された一部のアンテナ素子から送信された無線信号の、電磁波放射面100aにおける振幅分布及び位相分布を算出するようになっている。
【0051】
振幅位相抽出部19は、バックプロジェクション処理部18により算出された振幅分布及び位相分布から、電磁波放射面100aにおける各一部のアンテナ素子の位置に対応する振幅及び位相の値を抽出するものである。例えば、振幅位相抽出部19は、各一部のアンテナ素子の一点に対応する振幅及び位相の値を抽出するようになっている。あるいは、振幅位相抽出部19は、各一部のアンテナ素子の一点を囲む所定領域に対応する振幅及び位相の値の平均値を、各一部のアンテナ素子の位置に対応する振幅及び位相の値として抽出するものであってもよい。
【0052】
第1位相算出部20は、振幅位相抽出部19により抽出された位相の値から、電磁波放射面100aにおける複数のアンテナ素子T1〜TN全てのそれぞれの位置に対応する位相を算出するようになっている。
【0053】
なお、アンテナ制御部16の位相制御部16bは、第1位相算出部20によりアンテナ素子T1〜TNごとに算出された位相と、あらかじめアンテナ素子T1〜TNごとに定められた位相の所望値との差に応じて、可変移相器103−1〜103−Nによる位相の調整量を制御するようになっている。ここで、あらかじめ定められた位相の所望値とは、例えば、全てのアンテナ素子T1〜TNのそれぞれの位置に対応する位相が等位相となるような値である。
【0054】
また、アンテナ制御部16の振幅制御部16cは、振幅位相抽出部19によりアンテナ素子T1〜TNごとに抽出された振幅と、あらかじめアンテナ素子T1〜TNごとに定められた振幅の所望値との差に応じて、可変増幅器104−1〜104−Nによる振幅の調整量を制御するようになっている。ここで、あらかじめ定められた振幅の所望値とは、例えば、全てのアンテナ素子T1〜TNのそれぞれの位置に対応する振幅が等振幅となるような値である。
【0055】
遠方界指向性算出部21は、走査制御部14から出力されたプローブアンテナ12の位置情報と、振幅位相測定部17により測定された振幅及び位相の値とを用いて、遠方界の指向性を算出するようになっている。ここでは、公知の近傍界/遠方界変換法の数値計算を行うことにより遠方界の電界強度分布を推定して、被測定アンテナ100の遠方界での指向性を求めることができる。
【0056】
表示部22は、例えばLCDやCRTなどの表示機器で構成され、制御部24からの制御信号に応じて各種表示内容を表示するようになっている。この表示内容には、被測定アンテナ100の電磁波放射面100aにおける振幅及び位相の測定結果や、被測定アンテナ100の遠方界における指向性の算出結果などが含まれる。さらに、表示部22は、測定条件などを設定するためのボタン、ソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象の表示を行うようになっている。
【0057】
操作部23は、ユーザによる操作入力を行うためのものであり、例えば表示部22の表示画面の表面に設けられたタッチパネルで構成される。あるいは、操作部23は、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されてもよい。例えば、ユーザは、操作部23を用いて各アンテナ素子の振幅及び位相の所望値を入力することができるようになっている。
【0058】
制御部24は、例えばCPU、ROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、キャリブレーションシステム1を構成する上記各部の動作を制御する。
【0059】
なお、振幅位相測定部17、バックプロジェクション処理部18、振幅位相抽出部19、第1位相算出部20、及び遠方界指向性算出部21は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのディジタル回路で構成することや、制御部24による所定のプログラムの実行によりソフトウェア的に構成することが可能である。あるいは、振幅位相測定部17、バックプロジェクション処理部18、振幅位相抽出部19、第1位相算出部20、及び遠方界指向性算出部21は、ディジタル回路によるハードウェア処理と所定のプログラムによるソフトウェア処理とを適宜組み合わせて構成することも可能である。
【0060】
被測定アンテナ100における複数のアンテナ素子T1〜TNは、例えば、
図5(a)に示すような正方格子の格子点、
図5(b)に示すような矩形格子の格子点、
図5(c)に示すような六角格子の格子点、
図5(d)に示すような斜方格子の格子点、
図5(e)に示すような平行体格子の格子点の位置に配置されている。
【0061】
複数のアンテナ素子T1〜TNから送信された無線信号の振幅及び位相を個別に取得するためには、素子選択部16aにより選択される一部のアンテナ素子の放射源間の間隔は、各アンテナ素子から送信される無線信号の半波長(0.5λ)以上であることが望ましい。
【0062】
図6に示すように、被測定アンテナ100は、例えば、0.5λ間隔で16個のアンテナ素子T1〜T16が正方格子状に配置されたアレーアンテナである。この場合、素子選択部16aによるアンテナ素子の選択の組合せは、例えば、アンテナ素子T1,T3,T9,T11(組合せ1)、アンテナ素子T2,T4,T10,T12(組合せ2)、アンテナ素子T5,T7,T13,T15(組合せ3)、アンテナ素子T6,T8,T14,T16(組合せ4)などとすることができる。このように、アンテナ素子を一つ置きに選択する4つの組合せにより、全てのアンテナ素子をカバーすることができる。
【0063】
すなわち、素子選択部16aにより選択される一部のアンテナ素子(例えば組合せ1)の間に、以降に切り替えて選択される一部のアンテナ素子(例えば組合せ2〜4)のいずれかが存在する。このようにして、振幅位相抽出部19にて、組合せ1〜4ごとにアンテナ素子の振幅及び位相が求まる。
【0064】
さらに、素子選択部16aは、例えばアンテナ素子T1,T4,T13,T16(組合せ5)などのように、組合せ1〜4からそれぞれ1つのアンテナ素子を選択する。第1位相算出部20は、振幅位相抽出部19により組合せ5で得られた位相から組合せ1〜4間の位相のずれ量を算出し、このずれ量で組合せ1〜4の位相を補正する。これにより、全てのアンテナ素子T1〜T16について位相が求まる。
【0065】
これは、被測定アンテナ100が備えるアンテナ素子の個数が16個より多くても同様であり、上記のような5回の測定で全てのアンテナ素子T1〜TNに関する振幅及び位相を決定することができる。
【0066】
また、
図6で例に挙げたアレーアンテナは、0.5λ間隔で各アンテナ素子が配置されているとしたが、例えばアンテナ素子の間隔が0.8λ程度あれば、素子選択部16aによるアンテナ素子の選択の組合せを、アンテナ素子T1,T3,T6,T8,T9,T11,T14,T16(組合せA)、アンテナ素子T2,T4,T5,T7,T10,T12,T13,T15(組合せB)のように、千鳥格子状の組合せとすることができる。
【0067】
すなわち、複数のアンテナ素子T1〜T16が、正方格子状、又は矩形格子状に配列されている場合に、アンテナ制御部16の素子選択部16aは、千鳥格子状に配列された一部のアンテナ素子を選択してもよい。
【0068】
さらに、素子選択部16aは、例えばアンテナ素子T1,T15(組合せC)などのように、組合せA,Bからそれぞれ1つのアンテナ素子を選択する。第1位相算出部20は、振幅位相抽出部19により組合せCで得られた位相から組合せA,B間の位相のずれ量を算出し、このずれ量で組合せA,Bの位相を補正する。これにより、3回の測定で全てのアンテナ素子T1〜T16について位相が求まる。
【0069】
以下、
図6に示したアレーアンテナについて、バックプロジェクション処理部18により得られた電磁波放射面100aにおける振幅分布及び位相分布のデータを
図7〜
図13に示す。
【0070】
図7(a),(b)は、初期値として、各アンテナ素子T1〜T16の電磁波放射面100aにおける振幅を一様、位相をランダムとして、全てのアンテナ素子T1〜T16を励振した状態でバックプロジェクション処理を行った結果を示している。図中の黒線の枠は、アンテナ基板と各アンテナ素子T1〜T16の外形を示している。それぞれのアンテナ素子T1〜T16からの放射波が合成されるため、アンテナ素子T1〜T16ごとに振幅及び位相のデータを分離して求めることが困難であることが
図7の例から分かる。
【0071】
図8〜
図12は、上述した組合せ1〜5ごとのバックプロジェクション処理の結果である。
図8(a),(b)の結果からは、アンテナ素子T1,T3,T9,T11に対応する領域において、振幅及び位相のデータがアンテナ素子ごとに分離可能であることが確認できる。また、
図9(a),(b)の結果からは、アンテナ素子T2,T4,T10,T12に対応する領域において、振幅及び位相のデータがアンテナ素子ごとに分離可能であることが確認できる。また、
図10(a),(b)の結果からは、アンテナ素子T5,T7,T13,T15に対応する領域において、振幅及び位相のデータがアンテナ素子ごとに分離可能であることが確認できる。
【0072】
また、
図11(a),(b)の結果からは、アンテナ素子T6,T8,T14,T16に対応する領域において、振幅及び位相のデータがアンテナ素子ごとに分離可能であることが確認できる。さらに、
図12(a),(b)の結果からは、アンテナ素子T1,T4,T13,T16に対応する領域において、振幅及び位相のデータがアンテナ素子ごとに分離可能であることが確認できる。
【0073】
図8〜
図12に示した振幅及び位相のデータに基づいて、アンテナ制御部16の位相制御部16b及び振幅制御部16cにより、全てのアンテナ素子T1〜T16の電磁波放射面100aにおける振幅及び位相が等位相かつ等振幅になるように制御された結果を
図13に示す。
図13より、電磁波放射面100aにおける振幅分布及び位相分布において、アンテナ素子T1〜T16に対応する領域全体(開口面)が等位相かつ等振幅になっていることが確認できる。
【0074】
図14は、アンテナ素子T1〜T16の電磁波放射面100aにおける振幅を一様、位相をランダムとした
図7の振幅分布及び位相分布について、遠方界指向性算出部21により遠方界の指向性を算出した結果を示している。
図14の結果からは、位相がランダムであることから、アレーアンテナの正面方向に無線信号の電波が放射されず、指向性が乱れていることが分かる。
【0075】
一方、
図15は、位相制御部16b及び振幅制御部16cにより、全てのアンテナ素子T1〜T16の電磁波放射面100aにおける振幅及び位相が等振幅及び等位相に制御された
図13の振幅分布及び位相分布について、遠方界指向性算出部21により遠方界の指向性を算出した結果を示している。
図15の結果からは、アレーアンテナの正面方向において、電界面(E面)、磁界面(H面)ともにそろった指向性が確認できるため、キャリブレーションが正常に実施できていることが分かる。
【0076】
以下、本実施形態に係るキャリブレーションシステム1を用いるキャリブレーション方法について、
図16のフローチャートを参照しながら説明する。
【0077】
まず、信号発生器15は、無線信号を被測定アンテナ100に出力するとともに、被測定アンテナ100への無線信号の出力に同期した同期用信号を振幅位相測定部17に出力する(ステップS1)。
【0078】
次に、アンテナ制御部16は、被測定アンテナ100が備える複数のアンテナ素子T1〜TNの中から、互いに所定間隔以上離れた一部のアンテナ素子を励振させる(アンテナ制御ステップS2)。
【0079】
次に、走査制御部14は、プローブ走査機構13によって、プローブアンテナ12を測定平面P内の測定位置に移動させる(プローブ走査ステップS3)。
【0080】
次に、プローブアンテナ12は、プローブ走査ステップS3で移動された測定位置において、アンテナ制御ステップS2で励振された一部のアンテナ素子から出力された無線信号を近傍界領域で受信する(受信ステップS4)。
【0081】
次に、振幅位相測定部17は、受信ステップS4により受信された無線信号の振幅及び位相を測定する(振幅位相測定ステップS5)。
【0082】
次に、制御部24は、測定平面P内の全ての測定位置に対して、振幅及び位相の値が得られたか否かを判断する(ステップS6)。否定判断の場合にはプローブ走査ステップS3に戻る。肯定判断の場合にはステップS7に進む。
【0083】
ステップS7においてバックプロジェクション処理部18は、振幅位相測定ステップS5により測定された振幅及び位相に基づいて、被測定アンテナ100の電磁波放射面100aにおける一部のアンテナ素子から送信された無線信号の振幅分布及び位相分布を算出する(バックプロジェクション処理ステップS7)。
【0084】
次に、振幅位相抽出部19は、バックプロジェクション処理ステップS7により算出された振幅分布及び位相分布から、電磁波放射面100aにおける一部のアンテナ素子の位置に対応する振幅及び位相の値を抽出する(振幅位相抽出ステップS8)。
【0085】
次に、制御部24は、例えば
図8〜
図12に示すようなアンテナ素子T1〜TNの全ての組合せについて、振幅分布及び位相分布が得られたか否かを判断する(ステップS9)。否定判断の場合にはアンテナ制御ステップS2に戻る。肯定判断の場合にはステップS10に進む。
【0086】
ステップS10において第1位相算出部20は、アンテナ素子T1〜TNの全ての組合せについて振幅位相抽出ステップS8により抽出された位相の値から、電磁波放射面100aにおける複数のアンテナ素子T1〜TNのそれぞれの位置に対応する位相を算出する(第1位相算出ステップS10)。
【0087】
次に、位相制御部16bは、第1位相算出ステップS10によりアンテナ素子T1〜TNごとに算出された位相と、あらかじめアンテナ素子T1〜TNごとに定められた位相の所望値との差に応じて、可変移相器103−1〜103−Nによる位相の調整量を制御する。また、振幅制御部16cは、振幅位相抽出ステップS8によりアンテナ素子T1〜TNごとに抽出された振幅と、あらかじめアンテナ素子T1〜TNごとに定められた振幅の所望値との差に応じて、可変増幅器104−1〜104−Nによる振幅の調整量を制御する(ステップS11)。
【0088】
以上説明したように、本実施形態に係るキャリブレーションシステム1は、複数のアンテナ素子T1〜TNの中から、互いに所定間隔以上離れた一部のアンテナ素子のみを順次切り替えて励振させることにより、被測定アンテナ100の複数のアンテナ素子T1〜TNから送信される無線信号の波長に対してアンテナ素子T1〜TN間の間隔が狭い場合であっても、被測定アンテナ100の電磁波放射面100aにおける無線信号の振幅及び位相を測定することができる。
【0089】
また、本実施形態に係るキャリブレーションシステム1は、被測定アンテナ100の複数のアンテナ素子T1〜TNから送信される無線信号の波長に対してアンテナ素子T1〜TN間の間隔が狭い場合であっても、各アンテナ素子から送信される無線信号の振幅及び位相が既定の値になるように調整するキャリブレーションを実行することができる。
【0090】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係るキャリブレーションシステム2について図面を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付して適宜説明を省略する。また、第1の実施形態と同様の動作についても適宜説明を省略する。
【0091】
図17に示すように、本実施形態における被測定アンテナ100は、例えば、複数のアンテナ素子T1〜TNにRF機能(RF回路)を一体化してなるMassive−MIMOアンテナなどのアレーアンテナであり、第1の実施形態の構成に加えてRF回路105を備える。
【0092】
RF回路105は、入力されたOFDM信号などのマルチキャリア信号のベースバンド信号を所望の周波数帯域の無線信号に変換して、分配器101に出力するようになっている。分配器101は、RF回路105から出力された無線信号を、複数のSW102−1〜102−Nを介して複数の可変移相器103−1〜103−Nに分配するようになっている。また、本実施形態においても、第1の実施形態の
図2に示したようなSW102−1〜102−Nを省略した構成が可能である。
【0093】
図18に示すように、本実施形態におけるプローブアンテナ26は、第1プローブと、測定平面P内の水平方向(X方向)に第1プローブを挟んで配置される第2プローブ及び第3プローブと、第4プローブと、測定平面P内の垂直方向(Y方向)に第4プローブを挟んで配置される第5プローブ及び第6プローブと、を含む複数のプローブがアンテナ保持部27に収容されてなる。
【0094】
なお、第1プローブ、第2プローブ、及び第3プローブのうちのいずれか1つは、第4プローブ、第5プローブ、及び第6プローブのうちのいずれか1つを兼ねていてもよい。
【0095】
複数のプローブは、全て同じものであってもよいし、互いに異なるものであってもよい。なお、複数のプローブの開口形状を全て同一にした場合、各プローブの受信感度が同等となり、後述する振幅平均化部17dにおいて振幅の平均化が容易になるという利点がある。
【0096】
例えば、複数のプローブのうちの少なくとも1つは、マイクロ波又はミリ波帯の所定周波数範囲の電磁波を伝搬させる導波路を有し、先端が開放された導波管であってもよい。このような導波管としては、導波路の断面形状が長方形の方形導波管を好適に用いることができる。また、方形導波管の代わりに、導波路の断面形状が両側部の高さに対して中央部の高さが小となるダブルリッジ導波管などの各種の導波管をプローブとして用いることも可能である。
【0097】
図19は、測定平面P内における測定位置と複数のプローブの配置位置(図中の■印)の一例を示す模式図である。
図19に示すように、測定位置は、測定平面PをX方向にΔx=d
1、Y方向にΔy=d
2で格子状に分割した領域の中心位置として表すことができる。ここでは、間隔d
1及びd
2は無線信号の波長λの1/2以下の値であるとしている。なお、d
1とd
2は互いに異なる値であっても等しい値であってもよい。
【0098】
図19に示した例では、プローブアンテナ26は、中央プローブ26c1,c2と、左プローブ26lと、右プローブ26rと、上プローブ26tと、下プローブ26bとからなる。ここで、中央プローブ26c1は第1プローブ、左プローブ26lは第2プローブ、右プローブ26rは第3プローブに相当する。また、中央プローブ26c2は第4プローブ、上プローブ26tは第5プローブ、下プローブ26bは第6プローブに相当する。
【0099】
なお、測定平面Pにおける第1プローブと第2プローブの中心間の距離は、測定平面Pにおける第1プローブと第3プローブの中心間の距離に比べて、水平方向に隣接する2つの測定位置の間隔d
1だけ長くなっている。
【0100】
また、測定平面Pにおける第4プローブと第5プローブの中心間の距離は、測定平面Pにおける第4プローブと第6プローブの中心間の距離に比べて、垂直方向に隣接する2つの測定位置の間隔d
2だけ長くなっている。
【0101】
図20に、測定平面P内における複数のプローブの他の配置例を示す。
図20(a)は、十字型の配置の一例であり、第1プローブ(中央プローブ26c1)が第4プローブ(中央プローブ26c2)を兼ねている。
図20(b)は、T字型の配置の一例であり、第1プローブ(中央プローブ26c1)が第6プローブ(上プローブ26t)を兼ねている。
図20(c)は、L字型の配置の一例であり、第2プローブ(左プローブ26l)が第5プローブ(下プローブ26b)を兼ねている。
【0102】
プローブ走査機構13は、プローブアンテナ26の複数のプローブを測定平面P内の測定位置に移動させるようになっている。
【0103】
走査制御部14は、プローブ走査機構13に対して、測定平面P内の全ての測定位置に各プローブを所定順に移動させる制御を行うようになっている。また、走査制御部14は、各プローブが存在する測定位置の位置情報を、バックプロジェクション処理部18や遠方界指向性算出部21に送出するようになっている。
【0104】
また、本実施形態に係るキャリブレーションシステム2は、複数のプローブのうち、水平方向又は垂直方向に隣り合う2つのプローブで受信された無線信号を選択的に振幅位相測定部17に入力するための切替スイッチ28を備えている。また、切替スイッチ28は、選択する2つのプローブの組み合わせを順次切り替え可能となっている。なお、振幅位相測定部17を構成する測定器の入力ポートの個数が複数のプローブの個数以上である場合には、切替スイッチ28を省略可能である。
【0105】
図21に示すように、本実施形態においては、振幅位相測定部17は、振幅位相差測定部17aと、隣接位相差算出部17bと、第2位相算出部17cと、振幅平均化部17dと、を含む。
【0106】
振幅位相差測定部17aは、プローブ走査機構13により各プローブが測定位置に走査されるごとに、複数のプローブにより受信された無線信号(以下、「受信信号」ともいう)間の位相差を測定するようになっている。
【0107】
すなわち、中央プローブ26c1及び左プローブ26lからの受信信号と、中央プローブ26c1及び右プローブ26rからの受信信号と、中央プローブ26c2及び上プローブ26tからの受信信号と、中央プローブ26c2及び下プローブ26bからの受信信号とが、振幅位相差測定部17aに入力されることになる。これらの受信信号は、切替スイッチ28を使用することにより順次切り替えられて振幅位相差測定部17aに入力されてもよい。
【0108】
また、振幅位相差測定部17aは、複数のプローブにより受信された無線信号の振幅を測定するようになっている。
【0109】
隣接位相差算出部17bは、振幅位相差測定部17aにより測定された位相差から、隣接する2つの測定位置における無線信号間の位相差を算出するようになっている。
【0110】
既に述べたように、中央プローブ26c1と左プローブ26lとの距離が、中央プローブ26c1と右プローブ26rとの距離に対して、水平方向に隣接する2つの測定位置の間隔d
1だけ異なるため、各プローブを互いの相対的な位置関係を維持しながら間隔d
1ずつ水平方向に移動させることにより、水平方向に隣接する2つの測定位置の全てにおいて位相差の測定が可能である。
【0111】
同様に、中央プローブ26c2と上プローブ26tとの距離が、中央プローブ26c2と下プローブ26bとの距離に対して、垂直方向に隣接する2つの測定位置の間隔d
2だけ異なるため、各プローブを互いの相対的な位置関係を維持しながら間隔d
2ずつ垂直方向に移動させることにより、垂直方向に隣接する2つの測定位置の全てにおいて位相差の測定が可能である。
【0112】
第2位相算出部17cは、隣接位相差算出部17bにより算出された位相差から、各測定位置における無線信号の位相を算出する。さらに、第2位相算出部17cは、算出した各測定位置における位相の値をバックプロジェクション処理部18に出力するようになっている。
【0113】
また、
図21に示すように、第2位相算出部17cは、隣接する2つの測定位置について隣接位相差算出部17bにより算出された複数の位相差を平均化する位相差平均化部17eを有していてもよい。この場合、第2位相算出部17cは、位相差平均化部17eにより平均化された位相差から、各測定位置における無線信号の位相を算出することになる。
【0114】
振幅平均化部17dは、振幅位相差測定部17aにより各測定位置において測定された複数の振幅を平均化した値を、バックプロジェクション処理部18に出力するようになっている。振幅平均化部17dは省略可能であるが、キャリブレーションシステム2は、この振幅平均化部17dを備える場合には、更に精度良く振幅の値を算出することができる。
【0115】
遠方界指向性算出部21は、走査制御部14から出力された各プローブの位置情報と、振幅位相差測定部17aにより測定された振幅の値(あるいは、振幅平均化部17dにより平均化された振幅の値)と、第2位相算出部17cにより算出された位相の値とを用いて、遠方界の指向性を算出するようになっている。
【0116】
以下、本実施形態に係るキャリブレーションシステム2を用いるキャリブレーション方法について、
図22のフローチャートを参照しながら説明する。
【0117】
まず、被測定アンテナ100は無線信号を送信する(ステップS21)。
【0118】
次に、アンテナ制御部16は、被測定アンテナ100が備える複数のアンテナ素子T1〜TNの中から、互いに所定間隔以上離れた一部のアンテナ素子を励振させる(アンテナ制御ステップS22)。
【0119】
次に、走査制御部14は、プローブ走査機構13によって、プローブアンテナ26の複数のプローブを測定平面P内の測定位置に移動させる(プローブ走査ステップS23)。
【0120】
次に、プローブアンテナ26の複数のプローブは、プローブ走査ステップS23で移動された測定位置において、アンテナ制御ステップS22で励振された一部のアンテナ素子から出力された無線信号を近傍界領域で受信する(受信ステップS24)。
【0121】
次に、振幅位相差測定部17aは、プローブアンテナ26の複数のプローブのうちの水平方向又は垂直方向に隣り合う2つにより受信された無線信号間の位相差を測定する。また、振幅位相差測定部17aは、プローブアンテナ26の複数のプローブにより受信された無線信号の振幅を測定する(ステップS25)。
【0122】
次に、制御部24は、測定平面P内の全ての測定位置において、位相差及び振幅の値が得られたか否かを判断する(ステップS26)。否定判断の場合にはプローブ走査ステップS23に戻る。肯定判断の場合にはステップS27に進む。
【0123】
ステップS27において隣接位相差算出部17bは、ステップS25により測定された位相差から、隣接する2つの測定位置における無線信号間の位相差を算出する(ステップS27)。
【0124】
次に、第2位相算出部17cは、ステップS27により算出された位相差から、各測定位置における無線信号の位相を算出する(ステップS28)。
【0125】
なお、第2位相算出部17cが位相差平均化部17eを備える場合には、ステップS28において第2位相算出部17cは、ステップS27により算出された隣接する2つの測定位置における複数の位相差を位相差平均化部17eにより平均化する。なお、ステップS28において、この位相差平均化部17eによる平均化処理は省略可能である。
【0126】
次に、振幅位相測定部17が振幅平均化部17dを備える場合には、振幅平均化部17dは、ステップS25で各測定位置において測定された複数の振幅を平均化する(ステップS29)。なお、振幅位相測定部17が振幅平均化部17dを備えていない場合には、振幅位相差測定部17aがステップS25で測定した振幅を出力する。
【0127】
なお、ステップS25,S27〜S29の処理は、振幅位相測定ステップを構成する。
【0128】
次に、バックプロジェクション処理部18は、ステップS28,S29により測定された振幅及び位相に基づいて、被測定アンテナ100の電磁波放射面100aにおける一部のアンテナ素子から送信された無線信号の振幅分布及び位相分布を算出する(バックプロジェクション処理ステップS30)。
【0129】
次に、振幅位相抽出部19は、バックプロジェクション処理ステップS30により算出された振幅分布及び位相分布から、電磁波放射面100aにおける一部のアンテナ素子の位置に対応する振幅及び位相の値を抽出する(振幅位相抽出ステップS31)。
【0130】
次に、制御部24は、例えば
図8〜
図12に示すようなアンテナ素子T1〜TNの全ての組合せについて、振幅分布及び位相分布が得られたか否かを判断する(ステップS32)。否定判断の場合にはアンテナ制御ステップS22に戻る。肯定判断の場合にはステップS33に進む。
【0131】
ステップS33において第1位相算出部20は、アンテナ素子T1〜TNの全ての組合せについて振幅位相抽出ステップS31により抽出された位相の値から、電磁波放射面100aにおける複数のアンテナ素子T1〜TNのそれぞれの位置に対応する位相を算出する(第1位相算出ステップS33)。
【0132】
次に、位相制御部16bは、第1位相算出ステップS33によりアンテナ素子T1〜TNごとに算出された位相と、あらかじめアンテナ素子T1〜TNごとに定められた位相の所望値との差に応じて、可変移相器103−1〜103−Nによる位相の調整量を制御する。また、振幅制御部16cは、振幅位相抽出ステップS31によりアンテナ素子T1〜TNごとに抽出された振幅と、あらかじめアンテナ素子T1〜TNごとに定められた振幅の所望値との差に応じて、可変増幅器104−1〜104−Nによる振幅の調整量を制御する(ステップS34)。
【0133】
以上説明したように、本実施形態に係るキャリブレーションシステム2は、RF回路と一体化した被測定アンテナ100から送信された無線信号に対して、被測定アンテナ100からの同期用信号の供給なしで、近傍界において位相と振幅を測定することができる。このため、本実施形態に係るキャリブレーションシステム2は、第1の実施形態と同様に、被測定アンテナ100の複数のアンテナ素子T1〜TNから送信される無線信号の波長に対してアンテナ素子T1〜TN間の間隔が狭い場合であっても、被測定アンテナ100の電磁波放射面100aにおける無線信号の振幅及び位相を測定することができる。