特許第6774987号(P6774987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6774987プレカット加工装置、プレカット加工装置の制御装置、及び、プレカット加工プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774987
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】プレカット加工装置、プレカット加工装置の制御装置、及び、プレカット加工プログラム
(51)【国際特許分類】
   B27C 1/14 20060101AFI20201019BHJP
【FI】
   B27C1/14 Z
【請求項の数】4
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2018-135544(P2018-135544)
(22)【出願日】2018年7月19日
(65)【公開番号】特開2020-11458(P2020-11458A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2019年1月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390017385
【氏名又は名称】宮川工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155549
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 敏之
(72)【発明者】
【氏名】中川 活秀
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−094403(JP,A)
【文献】 特開2004−160667(JP,A)
【文献】 特許第5362443(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27C 1/00−1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工材が湾曲している場合に湾曲の方向と湾曲の大きさとに対応した検出結果を出力可能な加工材湾曲検出装置と、
その加工材湾曲検出装置によって検出結果が出力された加工材を加工可能な加工装置と、
その加工装置によって前記加工材を加工して製造される複数の構造部材の加工データと、当該構造部材の配置位置に対応する配置情報とを記憶する部材情報記憶手段と、
前記部材情報記憶手段によって記憶された前記配置情報に基づいて設定される湾曲の方向と、前記加工材湾曲検出装置によって検出された湾曲の方向とを合わせるようにして前記加工データに対応した制御を前記加工装置に対して行って前記加工材を加工する制御装置とを備え、
前記加工材湾曲検出装置によって出力された検出結果と、前記部材情報記憶手段によって記憶された前記配置情報と、前記加工データとに基づいて、前記制御装置が前記加工装置を制御し、前記加工材から前記構造部材を製造可能に構成され、
前記制御装置は、前記加工材湾曲検出装置によって検出された前記湾曲の大きさに応じて異なる種類又は役割の構造部材を製造する制御を実行可能に構成されていることを特徴とするプレカット加工装置。
【請求項2】
加工材が湾曲している場合に湾曲の方向と湾曲の大きさとに対応した検出結果を出力可能な加工材湾曲検出装置と、
その加工材湾曲検出装置によって検出結果が出力された加工材を加工可能な加工装置と、
その加工装置によって前記加工材を加工して製造される複数の構造部材の加工データと、当該構造部材の配置位置に対応する配置情報とを記憶する部材情報記憶手段と、
前記部材情報記憶手段によって記憶された前記配置情報に基づいて設定される湾曲の方向と、前記加工材湾曲検出装置によって検出された湾曲の方向とを合わせるように加工材の向きを変更可能な加工材向き変更手段とを備え、
前記加工材湾曲検出装置によって出力された検出結果と、前記部材情報記憶手段によって記憶された前記配置情報とに基づいた向きに変更した加工材に対して、前記部材情報記
憶手段に記憶された加工データに対応した加工を前記加工装置によって行って複数の構造部材を製造可能に構成され、
前記加工材湾曲検出装置によって検出された前記湾曲の大きさに応じて異なる種類又は役割の構造部材を製造可能に構成されていることを特徴とするプレカット加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプレカット加工装置の動作を制御する制御装置であって、
前記加工材湾曲検出装置によって出力された検出結果に基づいて前記加工材に対しての前記加工データに対応した加工を行って前記構造部材を製造可能に構成されていることを特徴とするプレカット加工装置の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のプレカット加工装置の制御装置の演算処理を実行させることが可能に構成されているプレカット加工プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレカット加工装置、プレカット加工装置の制御装置、及び、プレカット加工プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅などの建築物に用いられる横架材、柱材、羽柄材等の構造部材をプレカット加工によって切削加工して製造する技術が提案されている。このプレカット加工による構造部材の製造技術によれば、CADにより製図することで生成される加工データに対応した多数の構造部材を効率良く製造することができる。
【0003】
この構造部材を製造するために使用される加工材としては、例えば、木を乾燥させて製造される無垢材や、薄板状の木材を接着して製造される集成材が利用されている。この無垢材や集成材を、予め定めた一定の断面形状(例えば、一辺の長さが105mm又は120mmの正方形状)で、予め定めた長さ(例えば、長手方向に3m又は4m)となるように加工して、加工材が製造される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5362443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加工材は、製造上のバラツキや、加工材の変形によって反りなどの湾曲を含んでしまう可能性がある。その湾曲として一定以上の大きな湾曲を含む加工材を用いて構造部材を製造した場合には、加工材に対して正確な加工が行われても構造部材を適切に製造することができない可能性があるという問題点があった。
【0006】
また、一定以上の大きな湾曲を含む加工材は、短く切断して長さの短い構造部材に利用することができる場合があるものの、そのような大きな湾曲を含む加工材が多数製造されて構造部材を製造するプレカット加工の工場に搬入されてしまうと、必要な構造部材の全てを製造することができない可能性が生じてしまうという問題点があった。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、建築物を組み立てるための構造部材として一定以上の大きな湾曲を含む加工材を利用し易くすることが可能なプレカット加工装置、プレカット加工装置の制御装置、及び、プレカット加工プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、請求項1に記載のプレカット加工装置は、
加工材が湾曲している場合に湾曲の方向と湾曲の大きさとに対応した検出結果を出力可能な加工材湾曲検出装置と、
その加工材湾曲検出装置によって検出結果が出力された加工材を加工可能な加工装置と、
その加工装置によって前記加工材を加工して製造される複数の構造部材の加工データと、当該構造部材の配置位置に対応する配置情報とを記憶する部材情報記憶手段と、
前記部材情報記憶手段によって記憶された前記配置情報に基づいて設定される湾曲の方向と、前記加工材湾曲検出装置によって検出された湾曲の方向とを合わせるようにして前記加工データに対応した制御を前記加工装置に対して行って前記加工材を加工する制御装置とを備え、
前記加工材湾曲検出装置によって出力された検出結果と、前記部材情報記憶手段によって記憶された前記配置情報と、前記加工データとに基づいて、前記制御装置が前記加工装置を制御し、前記加工材から前記構造部材を製造可能に構成され、
前記制御装置は、前記加工材湾曲検出装置によって検出された前記湾曲の大きさに応じて異なる種類又は役割の構造部材を製造する制御を実行可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載のプレカット加工装置は、
加工材が湾曲している場合に湾曲の方向と湾曲の大きさとに対応した検出結果を出力可能な加工材湾曲検出装置と、
その加工材湾曲検出装置によって検出結果が出力された加工材を加工可能な加工装置と、
その加工装置によって前記加工材を加工して製造される複数の構造部材の加工データと、当該構造部材の配置位置に対応する配置情報とを記憶する部材情報記憶手段と、
前記部材情報記憶手段によって記憶された前記配置情報に基づいて設定される湾曲の方向と、前記加工材湾曲検出装置によって検出された湾曲の方向とを合わせるように加工材の向きを変更可能な加工材向き変更手段とを備え、
前記加工材湾曲検出装置によって出力された検出結果と、前記部材情報記憶手段によって記憶された前記配置情報とに基づいた向きに変更した加工材に対して、前記部材情報記憶手段に記憶された加工データに対応した加工を前記加工装置によって行って複数の構造部材を製造可能に構成され、
前記加工材湾曲検出装置によって検出された前記湾曲の大きさに応じて異なる種類又は役割の構造部材を製造可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載のプレカット加工装置の制御装置は、請求項1又は2に記載のプレカット加工装置の動作を制御する制御装置であって、前記加工材湾曲検出装置によって出力された検出結果に基づいて前記加工材に対しての前記加工データに対応した加工を行って前記構造部材を製造可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載のプレカット加工プログラムは、請求項3に記載のプレカット加工装置の制御装置の演算処理を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び2に記載のプレカット加工装置によれば、配置情報に基づいて設定される湾曲の方向と加工材湾曲検出装置によって検出された湾曲の方向とを合わせるようにして、加工材から構造部材を製造することができる。このため、一定以上の大きな湾曲を含む加工材については、配置情報に対応して許容される1以上の湾曲の方向に大きな湾曲の方向が向くよう湾曲の方向を合わせて構造部材を製造することができる。よって、建築物を組み立てるための多数の構造部材の中で、一定以上の大きな湾曲を含む加工材を利用可能な構造部材の対象を増やすことができる。従って、一定以上の大きな湾曲を含む加工材であっても、不良品として使用不能と判断したり、短く切断して使用するといった状況を少なくして、多数の構造部材を効率良く製造可能とすることができるという効果がある。
【0013】
また、請求項3に記載のプレカット加工装置の制御装置によれば、請求項1又は2に記載のプレカット加工装置と同様の効果を奏するプレカット加工装置の制御装置を提供することができる。
【0014】
また、請求項4に記載のプレカット加工プログラムによれば、請求項3に記載のプレカット加工装置の制御装置と同様の効果を奏するプレカット加工プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】加工材湾曲検出装置を備えたプレカット加工装置の構成を説明するための模式図
図2】加工材湾曲検出装置を説明するための模式図
図3】加工材湾曲検出装置の支持部の動作を説明するための模式図
図4】湾曲の方向が異なる加工材の湾曲測定の結果を模式的に示す断面図
図5】制御装置によって湾曲測定を実行した加工材から構造部材を製造するための制御を示す説明図
図6】建築物における各種の構造部材による骨格構造を模式的に示す平面図
図7】(A)は、制御装置に記憶された配置情報や湾曲測定に基づく湾曲の方向及び大きさの分類を示す説明図、(B)は、それらの湾曲の方向を合わせる制御を示す説明図
図8】吸着部の動作による桟材の移動方法についての説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、加工材湾曲検出装置4を備えたプレカット加工装置1の構成を説明するための模式図であり、プレカット加工装置1を上面視した状態を示している。なお、以下の説明及び図1以降の図面において、理解の容易のために、理想形状が共通している加工材100の一部に対して異なるアルファベットを付した形(加工材100a〜100k)とし、アルファベットの順に湾曲測定が行われた場合を例示して説明する。
【0017】
プレカット加工装置1は、住宅に使用される柱や梁、羽柄材などの木材(構造部材)を加工する装置であり、木材加工装置2と、加工材投入装置3と、加工材湾曲検出装置4と、加工材回転装置5と、各装置の動作を制御する制御装置6とを備えている。なお、図1においては、制御装置6と、制御装置6によって制御される各装置との間において、センサ等の出力結果の通信や制御指令の通信に使用される通信線を、矢印を付した線によって模式的に示している。
【0018】
木材加工装置2は、一定の断面形状で、予め定めた長さに加工された加工材100に対して、住宅に用いられる部位毎に対応した加工が可能な加工装置である。木材加工装置2は、加工部21と、搬送部22とを備えており、加工材湾曲検出装置4によって検出される加工材100の理想形状とのズレ(以下、「変形状態」ともいう。)としての湾曲の状況に応じた加工を行うように構成されている。
【0019】
加工部21は、切削を行うための工具と、工具を動作させるモータ等の駆動機構とを含んで構成された部位であり、加工部21によって、加工材100に対して、ほぞ、穴、溝等を形成する切削加工や長さを短くするための切断加工が行われる。
【0020】
搬送部22は、加工材100の下側を支持して加工材を移動可能なローラや、ローラの一部を駆動することで加工部21に対して加工材100を移動可能な駆動機構とを含んで構成されている。この搬送部22によって、加工部21の上流側から下流側へ加工材100が搬送されたり、加工部21において加工すべき部位の位置調整が行われる。
【0021】
加工材投入装置3は、加工材100を木材加工装置2に投入する装置であり、供給部11と、待機部12と、退避部13と、移動部14とを備えている。
【0022】
供給部11は、プレカット加工装置1へ最初に加工材100が供給される材料置き場としての部位であり、複数の加工材100が横並びとなり、複数本の加工材100の下側を支持する支持台によって構成されている。供給部11へは、桟材200を介して上下方向に複数段積み重なって積層された桟積み状態で多数の加工材100が供給され、供給部11から加工材湾曲検出装置4へと、加工材100が1つずつ順に搬送される。
【0023】
待機部12は、加工材湾曲検出装置4において湾曲の方向及び大きさの検出(以下、「湾曲測定」ともいう。)が実行された加工材100の下側を支持可能な支持台によって構成されている。待機部12には、湾曲測定が実行された加工材100の一部が加工材湾曲検出装置4から移送され、複数本の加工材100が、その長手方向に直交する方向に一列に配列した状態にして支持される。待機部12には、加工材湾曲検出装置4による湾曲測定の結果に基づいて、理想形状に対して湾曲が予め定めた利用条件を満たすと判定された加工材100が搬入される。例えば、理想形状に対して湾曲の大きさが一定以下であるなど、長さを短くする必要のない加工材100が待機部12に搬入され、この加工材100は、長手方向の長さの半分以上であるなどの製造条件を満たす長さの長い構造部材(長材)の製造に利用される。
【0024】
退避部13は、待機部12と同様に、加工材湾曲検出装置4において湾曲測定が実行された加工材100の下側を支持可能な支持台によって構成されている。退避部13では、加工材100が、その長手方向に直交する方向に一列に配列した状態とされ、湾曲測定が実行された加工材100のうち待機部12に搬送されなかった加工材100が搬入される。この退避部13には、加工材湾曲検出装置4による湾曲測定の結果に基づいて、理想形状に対して湾曲が予め定めた利用条件を満たさないと判定された加工材100が搬入される。退避部13に退避された加工材100は、加工材100の長手方向の長さの半分未満であるなどの製造条件を満たす長さの短い構造部材(短材)の製造に利用される。
【0025】
移動部14は、加工材100を移動させることが可能な装置によって構成され、例えば、加工材100を吸着可能な吸着部14bが先端部分に取り付けられた多関節ロボット14aにより構成されている。なお、図1には、参考のために、吸着部14bの中心と、多関節ロボット14aの上面視における回動の中心に対応する位置に丸印を付して示している。
【0026】
吸着部14bは、図1に一点鎖線で示すように、上面視において、加工材湾曲検出装置4と、供給部11と、待機部12と、退避部13との大部分を含む範囲を移動可能範囲として移動可能に構成され、また、移動可能範囲に木材加工装置2の搬送部22が含むように構成されている。この移動部14によって、供給部11から加工材湾曲検出装置4への加工材100の移動、加工材湾曲検出装置4から待機部12や退避部13への加工材100の移動、及び、待機部12や退避部13から木材加工装置2の搬送部22の一部(加工材回転装置5が設けられる位置)への加工材100の移動が行われる。
【0027】
なお、移動部14は、多関節ロボットに限らず、懸架クレーン等であってもよい。また、移動部14による加工材100の移動において、加工材100を吸着により移動させる構成に限らず、加工材100を把持すること又は加工材100を押圧することで加工材100を移動させる構成であってもよい。また、加工材100としては、必ずしも木材を利用する必要はなく、金属製や樹脂製の加工材を用いてもよく、この場合に、吸着の方法として、吸着部14bの減圧により測定の対象である加工材を吸着して移動してもよいし、電磁気的な作用による吸着を採用してもよい。
【0028】
また、加工材投入装置3において、供給部11、待機部12、及び、退避部13として、必ずしも加工材100を床面から離れた状態で支持するように、支持台などの部材を配置する構成とする必要はなく、加工材100を配置できる空間を、プレカット加工の工場内に確保して床面に加工材100を配置する構成であってもよい。また、加工材投入装置3として、必ずしも待機部12を備える必要はなく、移動部14によって、加工材100を加工材湾曲検出装置4から木材加工装置2の搬送部22に直接的に移動する構成であってもよい。
【0029】
加工材湾曲検出装置4は、加工材100が湾曲している場合に湾曲の方向と湾曲の大きさ)とに対応した検出結果を出力可能な装置である。加工材湾曲検出装置4は、プレカット加工装置1の一部として備えられている。このため、加工材100が製造された直後では真っ直ぐな柱状に加工された加工材100であって、プレカット加工によって構造部材が製造されるまでの間に湾曲が発生したとしても、その湾曲の方向と湾曲の大きさとをプレカット加工が行われる直前に検出し、その湾曲の状況に対応した加工が可能となっている。
【0030】
加工材湾曲検出装置4は、供給部11と待機部12との間に設けられている。また、加工材湾曲検出装置4は、供給部11と退避部13との間に設けられている。加工材100を供給する供給部11から、待機部12又は退避部13を介して木材加工装置2に加工材100が投入される過程において、加工材100の湾曲の方向や湾曲の大きさが検出される。
【0031】
なお、加工材湾曲検出装置4は、供給部11と待機部12の間や、供給部11と退避部13との間に設けられる必要はなく、別の位置に設けてもよい。例えば、加工材湾曲検出装置4の長手方向に交差する両側に対応する位置に待機部12と退避部13とを設けてもよい。また、加工材湾曲検出装置4は、必ずしも加工材投入装置3とは別の装置として設ける必要はなく、加工材投入装置3の一部の装置としてもよい。また、加工材湾曲検出装置4は、加工材100の湾曲の方向と湾曲の大きさだけを検出可能とする必要はなく、加工材100の軸方向において断面形状が回転するように変形した捩れ(ひねり)等の変形状態を含めて検出できる構成であってもよい。
【0032】
また、加工材湾曲検出装置4は、加工材100を木材加工装置2と加工材投入装置3との間に設けて、加工材投入装置3から木材加工装置2へ移動させる間に、加工材100の変形状態を検出する構成であってもよい。また、加工材湾曲検出装置4は、木材加工装置2と一体化され、木材加工装置2への投入後であって加工部21による加工の開始前に、加工材100の変形状態を検出する構成であってもよい。
【0033】
また、加工材湾曲検出装置4には、必ずしも同一の理想形状をした加工材100のみが搬入されて、加工材100のみの湾曲の状況を検出する必要はない。断面形状および長さの少なくとも一方が異なる複数種類の加工材が加工材湾曲検出装置4に搬入され、複数種類の理想形状に形成された加工材の湾曲の状況を検出するようにしてもよい。
【0034】
加工材回転装置5は、加工材100の向きを変更する加工材向き変更手段を実現する機能部であって、加工材100の向きを、加工材湾曲検出装置4で検出される加工材100の湾曲の方向や湾曲の大きさに応じて適宜に回転させる。この加工材回転装置5の詳細については、加工材湾曲検出装置4の構成および動作の説明の後に説明する。
【0035】
なお、加工材回転装置5は、必ずしも木材加工装置2及び加工材投入装置3とは別の装置として設ける必要はなく、木材加工装置2の一部としてもよいし、加工材投入装置3の一部としてもよく、加工材湾曲検出装置4によって加工材100を回転させてもよい。また、加工材100の向きを変更することにより、加工材100の向きと加工部21における加工の向きとの相対関係を変更する構成に限らず、加工材100の向きは変えずに、加工材100の湾曲の方向や湾曲の大きさに応じて加工部21における加工の向き(工具の向き)を変更して加工を行う構成としてもよい。
【0036】
制御装置6は、加工材湾曲検出装置4を含むプレカット加工装置1の各部位を制御する装置である。具体的には、制御装置6は、例えば、パーソナルコンピュータによって構成され、外部機器からのデータ入力を行ったり、入力されたデータを出力する入出力部としてのコネクタ、表示装置、キーボード及びマウス等を備え、また、各種の演算を行う演算処理部としてのCPUや、各種のプログラムや駆動制御の情報を記憶したり、プログラムの実行に必要な情報を記憶したりする記憶部としてのROM、RAM等を備えている。
【0037】
制御装置6の記憶部には、木材加工装置2、加工材投入装置3、加工材湾曲検出装置4及び加工材回転装置5の動作を制御するための各種のプログラムが記憶されている。また、制御装置6には、木材加工装置2によって加工材100を加工して製造される構造部材(例えば、図6に例示する構造部材101〜124)の外形形状に対応した加工データと、構造部材の配置位置に対応する配置情報(例えば、図5に例示する構造部材の種類に対応した情報)とが入出力部を通じて制御装置6に入力され、それらの加工データと配置情報とが記憶部に記憶される。
【0038】
更に、記憶部には、加工材湾曲検出装置4による検出結果に対応した情報であって、湾曲測定が実行された加工材100の湾曲の方向及び湾曲の大きさ等の変形状態に対応した情報(以下、「変形状態情報」ともいう)が記憶される。また、記憶部には、変形状態を分類する変形状態分類プログラムが記憶されており、変形状態情報に基づいて変形状態分類プログラムによって分類された変形状態に対応した変形状態分類情報が記憶される。
【0039】
なお、制御装置6として、木材加工装置2、加工材投入装置3、加工材湾曲検出装置4及び加工材回転装置5の動作の制御を1つのコンピュータで必ずしも行う必要はなく、これに代えて、又はこれに加えて、リレー回路を利用したシーケンサーなどの装置を利用してもよいし、複数のコンピュータで制御を分担する構成であってもよい。例えば、木材加工装置2及び加工材回転装置5を制御するコンピュータと、加工材投入装置3及び加工材湾曲検出装置4を制御するコンピュータとを別々に備え、各コンピュータ間で必要な情報を有線又は無線による通信によって共有可能な構成が挙げられる。
【0040】
次に、図2を主に参照して、加工材湾曲検出装置4について詳細に説明する。図2(A)は、加工材湾曲検出装置4の一例を示す模式図であり、図2(B)は、加工材湾曲検出装置4の他の一例を示す模式図である。なお、図2(A)及び図2(B)においては、加工材100の湾曲測定が実行される測定状態を示しており、また、説明の便宜上、湾曲した変形状態の加工材100を実線で図示し、全く湾曲のない理想形状の加工材100’を一点鎖線で図示している。
【0041】
加工材湾曲検出装置4は、図2(A)に示すように、加工材100を支持する第1支持部30a及び第2支持部30bと、加工材100の表面の位置を検出する表面位置検出手段としての位置検出装置S1,S2a,S2bと、第1支持部動作手段及び第2支持部動作手段として第1支持部30a及び第2支持部30bを動作させる駆動機構34a,34bとを備えている。
【0042】
加工材湾曲検出装置4は、測定状態において、第1支持部30aと第2支持部30bとによって加工材100が支持された状態で、加工材100の表面の位置を位置検出装置S1,S2a,S2bによって検出する。この位置検出装置S1,S2a,S2bの検出結果は制御装置6に入力され、その検出結果に基づいて加工材100の湾曲の状況としての湾曲の方向及び大きさが制御装置6によって検出可能に構成されている。
【0043】
ここで、以下の説明において、第1支持部30aが加工材100を支持する側を前側、第2支持部30bが加工材100を支持する側を後側とし、前側に位置する部位や装置に「a」、後側に位置する部位や装置に「b」を付して説明する。また、加工材100の長手方向に沿って前側から後側を見た軸方向視(図2(A)及び図2(B)において加工材100を左側から右側に見た方向視)を、単に「軸方向視」ともいう。また、図2(A)及び図2(B)に示す測定状態における軸方向視を基準にして、右側に位置する部位や装置に「R」を付し、左側に位置する部位や装置に「L」を付して説明する。
【0044】
第1支持部30aは、測定状態における軸方向視において、略正方形状の断面の中心に相当する加工材100の重心Cよりも左側における下側を支持する左下側支持部31Lと、加工材100の重心Cよりも右側における下側を支持する右下側支持部31Rとを備えている(図3(C)参照)。
【0045】
第1支持部30aは、略Y字形状に形成され、左下側支持部31Lが、略Y字形状の中心部分から左上側に延びる部分によって構成され、右下側支持部31Rが、略Y字形状の中心部分から右上側に延びる部分によって構成されている。また、左下側支持部31Lと右下側支持部31Rの基端側に相当する略Y字形状の中心部分から下側に延びる部分には、第1支持部30aを動作させるための駆動機構34a(駆動回動軸35)が接続され、その接続部分の少し上側を中心にして左下側支持部31Lと右下側支持部31Rとが先端側(斜め上側)に向かって延びる形状に構成されている。これにより、左下側支持部31Lと右下側支持部31Rとを含む第1支持部30aを小型に構成し、且つ、各部分を細長に構成しても重量の嵩む加工材100を支持可能にして破損がし難くすることができる。すなわち、第1支持部30aを低コストで製造し易く、他の部品の配置も容易にすることができる。
【0046】
例えば、第1支持部30aの軸方向視に沿った視線方向(図2の左右方向)における厚みを薄く構成することができるので、加工材湾曲検出装置4の第1支持部30aを、加工材100の下側を支持して加工材100を長手方向に移動可能な複数のローラの間に配置し易くし、搬送装置に加工材湾曲検出装置4を組み合わせ易くすることができる。なお、複数のローラの間に加工材湾曲検出装置4の第1支持部30aを配置する場合には、複数のローラの上側に左下側支持部31Lと右下側支持部31Rとが突出して加工材100を支持可能とし、複数のローラの下側に駆動機構34aの駆動回動軸35が位置するようにして第1支持部30aを構成することが好ましい。
【0047】
左下側支持部31Lには、加工材100に接触して加工材100を支持する部分として、加工材100が位置する側に突出して左下側突出部32L及び左上側突出部33Lが設けられている。また、右下側支持部31Rには、加工材100が位置する側に突出して右下側突出部32R及び右上側突出部33Rが設けられている。
【0048】
各突出部32L,33L,32R,33Rは、第1支持部30aの中心部分から斜め上側に略一定の断面形状(例えば、一辺の長さが2cmの略正方形状)で直線状に延びて形成された腕部分に対して、その腕部分の連続する方向(例えば、左上方向)から直交する反対側の斜め上方(例えば、右上方向)に突出して構成されている。また、各突出部32L,33L,32R,33Rは、加工材100の長手方向に一致して半円形状の中心が連続する半円柱状に突出し、加工材100に対して線状に接触可能に構成されている。
【0049】
各突出部32L,33L,32R,33Rの配置及び突出量は、左下側突出部32L及び左上側突出部33Lに接する接平面と、右下側突出部32R及び右上側突出部33Rに接する接平面とが、理想形状の加工材100’における2つの側面(側面100L,100R)のなす角度と一致することとなる直角(90度)となるように設定されている。
【0050】
第2支持部30bは、第1支持部30aに対して加工材100の長手方向において離間した位置に設けられている。第2支持部30bは、第1支持部30aと同一の形状によって構成され、加工材100の長手方向に沿った軸方向視において、加工材100の重心Cよりも左側における下側を支持する左下側支持部31Lと、加工材100の重心Cよりも右側における下側を支持する右下側支持部31Rとを備えている。
【0051】
第1支持部30aと第2支持部30bは、軸方向視において、互いが同一の位置及び向きとなって重なるようにして動作する。第1支持部30aと第2支持部30bの動作は、制御装置6によって制御される。
【0052】
理想形状の加工材100’は、第1支持部30aと第2支持部30bとに支持された状態において、左下側突出部32L、左上側突出部33L、右下側突出部32R及び右上側突出部33Rの全てに当接して支持可能に構成されている。湾曲した加工材100では、変形状態によっては、全ての突出部32L,32R,33L,33Rのうち一部に当接しない場合があり、左下側突出部32L及び左上側突出部33Lのいずれか一方、または、右下側突出部32R及び右上側突出部33Rのいずれか一方と当接することによって加工材100が支持される場合がある。
【0053】
なお、左下側支持部31Lおよび右下側支持部31Rは、加工材100と線状の部分によって接触する構成に限らず、加工材100と点で接触する構成としてもよく、例えば、各突出部32L,32R,33L,33Rのいずれか又は全てを半球状又は半楕円球状等の突出方向側に向かって次第に断面積が減少する形状にしてもよい。また、各突出部32L,32R,33L,33Rのいずれか又は全ての突出先端部分を平坦面によって構成し、加工材100と面で接触し得る構成としてもよい。また、左下側支持部31Lおよび右下側支持部31Rに対して、それぞれ複数の突出部を設ける構成に限らず、いずれか又は両方に1つの突出部を設ける構成としてもよいし、いずれか又は両方に3以上の突出部を設けるようにしてもよい。
【0054】
また、左下側支持部31Lにおける突出部32L,33Lの先端部分を結ぶ平面状に1つの突出部を構成し、右下側支持部31Rにおける突出部32R,33Rの先端部分を結ぶ平面状に1つの突出部を設けて、矩形の平面状に左下側支持部31Lおよび右下側支持部31Rと加工材100とが接触可能に構成してもよい。この場合には、加工材100の断面形状の大きさや形状が異なる加工材であっても安定した状態で下側を支持し易くすることができる。このため、多様な断面の形状及び大きさに加工された加工材に対しての湾曲測定を実行可能にして汎用性を高めることができる。
【0055】
また、左下側支持部31Lおよび右下側支持部31Rは、各支持部において、上記の2つの接平面がなす角度(交差する角度)が加工材100’の2つの側面が位置する角度と同一である場合に限らず、上記の2つの接平面がなす角度を、加工材100’の2つの側面のなす角度よりも僅か(例えば、1度以上5度以下)に大きく設定して、主として、加工材100を左下側突出部32Lと右下側突出部32Rとで支持し、左上側突出部33Lと右上側突出部33Rとのいずれか一方が、加工材100の配置における回転ずれを抑制するようにしてもよい。また、逆に、加工材100の2つの側面のなす角度よりも僅か(例えば、1度以上5度以下)に小さな角度を2つの接平面がなす角度として設定し、主として、加工材100を左上側突出部33Lと右上側突出部33Rとで支持し、左下側突出部32Lと右下側突出部32Rとのいずれか一方が、加工材100の配置における回転ずれを抑制するようにしてもよい。
【0056】
また、第2支持部30bは、第1支持部30aと必ずしも同一の構成とする必要はなく、加工材100の長手方向に沿った軸方向視において、理想形状の加工材100’が第1支持部30aと第2支持部30bとによって回転不能に安定した状態で支持可能な形状であれば、異なる形状によって構成してもよい。
【0057】
第1支持部30aと、第2支持部30bとは、測定状態として、加工材100の表面の位置が検出される場合に、加工材100の表面のうち加工材100の長手方向に連続する平面状であって略直交する方向側を向く2つの側面100L,100Rの下側を支持する構成とされている。すなわち、左下側突出部32L及び左上側突出部33Lに接する接平面と、右下側突出部32R及び右上側突出部33Rに接する接平面のなす角は、加工材100の断面形状と一致する略直角になるように設計されている。
【0058】
なお、加工材100の断面形状が、図2(A)に示すように正方形である場合に限らず、軸方向視において正八角形等の形状を有する加工材である場合には、離隔する2つの側面であって略直交する方向側を向く2つの側面の下側を支持可能に、左下側支持部31Lと右下側支持部31Rとを構成してもよい。
【0059】
また、加工材100における略直交する方向側を向く2つの側面100L,100Rの下側を支持して湾曲測定を実行する構成に限らず、他の角度をなす2つの側面で加工材の下側を支持して湾曲測定を実行する構成であってもよい。例えば、加工材の断面形状が、正六角形である場合には、左下側突出部32L及び左上側突出部33Lに接する接平面と、右下側突出部32R及び右上側突出部33Rに接する接平面のなす角が略120°に設計され、2つの側面の境界が鉛直方向の下側に位置するように配置されて、隣接する2面が支持される構成としてもよいし、又は、その2つの接平面のなす角が略60°に設計され、下側を向く側面が鉛直方向下側を向くように配置され、その下側を向く側面の両側に位置する離隔した2つの側面が支持される構成としてもよい。
【0060】
位置検出装置S1,S2a,S2bは、第1支持部30aと第2支持部30bとの間に位置する加工材100の一部に対して軸方向視において周方向に離間した少なくとも2箇所の表面の位置を検出し、加工材100が湾曲している(反っている)場合に湾曲の方向と湾曲の大きさとに対応した検出結果を出力可能に構成されている。具体的には、図2(A)に示すように、位置検出装置S1,S2a,S2bが設けられる各位置に配設された2つのレーザ変位計41L,41Rの組合せによって位置検出装置S1,S2a,S2bの各々が構成されている。
【0061】
レーザ変位計41Lとレーザ変位計41Rとは、加工材100の2つの側面100L,100Rの各面に対して一箇所ずつ表面の位置を検出できるように配置され、詳細には、理想形状の加工材100’における表面の位置に対しての偏り(ズレ量)を測定可能に構成されており、これによって、周方向に離間した2箇所の表面の位置を検出できる。
【0062】
なお、表面の位置を検出する側面は、加工材100の下方側にて第1支持部30aと第2支持部30bとによって支持された2つの側面100L,100Rに限らず、別の2つの側面の組合せであってもよく、例えば、加工材100の上方側(右上側と左上側)を向く2つの側面の組合せであってもよく、加工材100の右上側と右下側を向く2つの側面の組合せであってもよい。この場合に,表面の位置を検出する側面として、完全に逆方向を向く2つの側面の組合せとすると、表面の位置に対しての偏り(ズレ量)が同一の方向に沿った測定結果となってしまって測定結果が略一致してしまう可能性があるため、完全に逆方向を向く2つの側面の組合せを除いた2つの側面とすることが好ましく、直交する方向側又は直交する方向側に近い方向側を向く2つの側面の組み合わせとすることが好適である。
【0063】
位置検出装置S1,S2a,S2bを構成するレーザ変位計41L,41Rによって加工材100の表面の位置が検出される場合に、加工材100は、その長手方向が第1支持部30aと第2支持部30bとの離間方向と略同一となるようにして配置される。また、加工材100は、その長手方向の中心位置が第1支持部30aと第2支持部30bとの離間方向の中心位置と略同一となるように配置され、加工材100の両端側に近い位置で、第1支持部30aと第2支持部30bとによって加工材100が支持可能に構成されている。
【0064】
なお、加工材100の輪郭形状(断面形状)が四角形である場合には、異なる2側面に対して表面の位置を検出するが、5角形以上の多角形である場合には、2以上の複数の側面に対して表面の位置を検出して湾曲測定を実行してもよい。また、加工材100の断面形状が楕円形状等の曲面形状を含む場合には、完全に逆方向を向く2箇所の組合せとはならない表面の位置を少なくとも2箇所において検出して湾曲測定を実行してもよく、この場合に、直交する方向側又は直交する方向側に近い方向側を向く2つの表面の位置を検出することが好ましい。
【0065】
位置検出装置S1,S2a,S2bは、第1支持部30aと第2支持部30bとが離間する方向(加工材100’の長手方向)に沿って離れて配列されている。具体的には、左下側を向く側面100Lの表面の位置を測定する3つのレーザ変位計41Lと、右下側を向く側面100Rの表面の位置を測定する3つのレーザ変位計41Rとが第1支持部30aと第2支持部30bとの離間方向に沿って離れた状態で、軸方向視において重なる位置に相当する表面の位置を検出可能に配置されている。
【0066】
このため、3つのレーザ変位計41Lによって、軸方向視において加工材100の左下側を向く側面100Lに対して、長手方向に沿った直線上の3箇所における表面の位置を検出することができ、また、3つのレーザ変位計41Rによって、軸方向視において加工材100の右下側を向く側面100Rに対して、長手方向に沿った直線上の3箇所における表面の位置を検出することができる。
【0067】
3つのレーザ変位計41Lは、加工材100の側面100Lに対して、長手方向に直交する幅方向の中間の位置が検出位置となるように、その高さ及び向きが設定されている。同様に、3つのレーザ変位計41Rについても、加工材100の側面100Rに対して、長手方向に直交する幅方向の中間の位置が検出位置となるように、その高さ及び向きが設定されている。このため、第1支持部30a及び第2支持部30bによる加工材100の長手方向に沿った軸周りの回転ズレがあった場合、すなわち、加工材100が軸方向においてねじれた形状に変形していたとしても、その回転ズレに基づく検出誤差を検出位置が中間位置から離れた場合に比べて抑制できる構成となっている。
【0068】
位置検出装置S1は、第1支持部30aと第2支持部30bとの離間方向(加工材100’の長手方向)に沿ったそれらの中央近傍に位置するように設けられている。これにより、加工材100の側面100L,100Rの中央近傍において表面の位置を検出することができ、一定の曲率で湾曲した場合において最も大きなズレ量として発生することとなる加工材100の中央近傍における理想形状の加工材100’からのズレ量を測定できる。
【0069】
このズレ量の測定としては、加工材100の表面の位置の違い(ズレ)を検出可能なセンサによって構成されていればよく、センサから加工材100の表面までの距離を測定可能な種々のセンサを利用できる。例えば、センサとしてのレーザ変位計41Rから加工材100に向けて光路VRの検査光を射出し、加工材100の表面で反射した光を測定して、加工材100’に対する加工材100の光路VRに沿った方向のズレ量を測定することができる。また、加工材100の表面の位置の検出は、レーザを用いて検出する構成に限らず、非接触型の他の光線(赤外線)などを用いてもよいし、加工材100の表面に接触して表面の位置を検出するものであってもよい。また、加工材100の表面の位置の検出は、必ずしも一点における表面の位置を検出する構成とする必要はなく、2点以上の表面の位置を検出する構成でもよいし、線状に又は面状に表面の位置を検出する構成でもよい。また、加工材湾曲検出装置4に位置検出装置(レーザ変位計)が複数箇所に設けられる場合、共通する構成のセンサを用いてもよいし、方式が異なる複数種類のセンサを組み合わせてもよい。
【0070】
また、加工材100の表面の位置の検出は、各表面の位置を1つの装置(センサ)で検出する必要はなく、複数のセンサ(例えば、リミットスイッチ)によって加工材100の表面の位置を複数に区分けした範囲で検出可能にしてもよい。例えば、理想形状に対して1mmを超えて位置検出装置S1から離れた側に表面が位置している場合にオンとなるスイッチと、理想形状に対して1mmよりも位置検出装置S1に近い方向側に表面が位置している場合にオンとなるスイッチとを別々に設けて、測定状態において、いずれかのスイッチがオンであれば、そのオンとなった側に湾曲していることを検出し、いずれのスイッチもオンでなければ理想形状に対して±1mmの範囲内にズレ量が収まっていることを検出してもよい。
【0071】
第1支持部30aと第2支持部30bとが加工材100の長手方向の両端部が支持された測定状態にして位置検出装置S1で湾曲測定を実行すると、位置検出装置S1(レーザ変位計41L及びレーザ変位計41R)の検出結果に基づいて、加工材100の湾曲の方向と共に、湾曲の大きさを簡便に検出することができる。この場合には、第1支持部30aと第2支持部30bとで支持された距離(支持区間の長さ)に対しての湾曲の大きさを検出することができるので、その支持区間の長さと加工材100の長さとの比率から、加工材100の全長に対しての湾曲の大きさを推定することができる。
【0072】
位置検出装置S2aは、位置検出装置S1と比べて第1支持部30aに近い位置に設けられている。また、位置検出装置S2bは、位置検出装置S1と比べて第2支持部30bに近い位置に設けられている。これら位置検出装置S2a,S2bの検出結果は、例えば、第1支持部30a及び第2支持部30bの近傍において、加工材100の表面の位置を検出し、その位置が予め定めた量以上にずれている場合には、加工材100が正しく第1支持部30aと第2支持部30bとに支持されてなく、正確な表面の位置の測定ができないと判定し、第1支持部30aと第2支持部30bとを動作させて加工材100の支持状態を異ならせて再度の湾曲測定を実行するように、制御装置6のプログラムを構成してもよい。
【0073】
なお、位置検出装置S2a,S2bの検出結果に基づいて、加工材100の配置ズレを検出してもよい。例えば、第1支持部30aにおいて左下側支持部31Lから離れていることを検出し、この配置ズレを考慮して、位置検出装置S1の検出結果を補正するように制御装置6のプログラムを構成してもよい。これにより、加工材100に対しての湾曲測定の再度の実行を省略可能にして、湾曲測定の時間を短くしつつ、加工材100の湾曲の方向及び湾曲の大きさの検出精度を高めることが可能になる。
【0074】
また、加工材100の長手方向に沿った軸を中心とする回転ズレが一定量以上ある場合、位置検出装置S2a,S2bのいずれかの検出結果が一定値以上に大きくなる場合があり、これら位置検出装置S2a,S2bの検出結果に基づいて、加工材100の長手方向に沿った軸を中心とする回転ズレが一定量以上に存在するか否かを検出してもよい。なお、位置検出装置S2a,S2bによって回転ズレについて、より精度良く検出可能に構成してもよく、例えば、長手方向における各位置検出装置S2a,S2bの配置された位置において各側面100L,100Rに対して幅方向に離間した2点以上の表面の位置を検出し、各側面100L,100Rにおける長手方向に沿った両端側における四隅の表面の位置のずれを検出して回転ズレを検出するようにしてもよい。また、各側面100L,100Rにおける長手方向に沿った両端側の少なくとも一方において幅方向における表面の位置を線状に又は面状に検出し、その検出結果を用いて回転ズレを検出するようにしてもよい。
【0075】
また、位置検出装置S2a,S2bは、位置検出装置S1と2つの支持部30a,30bとの間における表面の位置を検出してもよい。この場合には、湾曲の曲率が一定でなかったり、部分的に湾曲が発生している場合や、加工材100の中間部分でなく、長手方向における中間からズレた位置において最も理想形状から大きくズレが生じている場合に、その状況を検出し易くすることができる。なお、位置検出装置S2a,S2bとは、別の位置検出装置を2つの支持部30a,30bの間に更に設けて、支持部30a,30bに正しく支持されているか否かを検出可能とし、且つ、加工材100の中間部分とは別の位置における表面の位置のズレも検出可能としてもよいし、湾曲の状況を更に詳細に検出可能としてもよい。
【0076】
また、加工材100の表面の位置の検出は、支持部30a,30bの間のみにおいて実行する必要はない。例えば、図2(B)に示すように、支持部30a,30bの外側に位置するように位置検出装置S3a,S3bを設けてもよい。この場合には、加工材100の両端に近い位置における表面の位置を測定し、加工材100の中央部分に対しての位置検出装置S1の検出結果と、位置検出装置S3a,S3bによる加工材100の両端側に対しての検出結果とによって加工材100の湾曲の大きさと湾曲の方向とを推定することができる。
【0077】
また、図2(B)に示すように、位置検出装置S3a,S3bに対して、2つの支持部30a,30bに近い側に位置するようにして、別の位置検出装置S4a,S4bを設けてもよい。この場合には、加工材100の湾曲が一定でない場合に、位置検出装置S4a,S4bの検出結果によって湾曲の形状を推定し易くすることができる。又、加工材100よりも長さが短く設定された別の加工材の両端に位置するように位置検出装置S4a,S4bを配置してもよく、この場合には、複数種類の長さに設定された加工材の湾曲について、両端側に近い位置での表面の位置の検出結果を利用した湾曲測定を可能にし、より正確に湾曲の状況を検出することができる。
【0078】
なお、2つの支持部30a,30bの中央部分に位置する位置検出装置S1として、長手方向においてズレた中央部分に近い2以上の表面の位置を検出可能なレーザ変位計を含めて位置検出装置S1を構成してもよい。また、支持部30a,30bの間に位置する位置検出装置S1と、支持部30a,30bの間で位置検出装置よりも両端側に位置する位置検出装置S2a,S2bと、支持部30a,30bの外側に位置する位置検出装置S3a,S3b,S4a,S4bの全てを備える構成としてもよいし、それら位置検出装置の一部を省略して構成してもよい。
【0079】
また、位置検出装置S1,S2a,S2b,S3a,S3b,S4a,S4bの少なくともいずれかを加工材100の長手方向に沿って移動可能とし、この場合には、モータ等を含む動作機構を制御装置6によって制御して電気的に移動可能としてもよいし、作業者が手作業で移動可能に、例えば、スライド式のレールに位置検出装置を取り付けて移動操作を可能としてもよい。また、加工材100の表面の位置が測定される側面100L,100Rの幅方向に電気的に又は作業者の操作で位置検出装置S1,S2a,S2b,S3a,S3b,S4a,S4bを構成するレーザ変位計41L,41Rを移動可能とし、幅の異なる加工材についても幅方向の中心を測定可能としたり、加工材100の幅方向における一端側に近い位置を測定可能としてもよいし、加工材100の幅方向における複数箇所の表面の位置を1つのレーザ変位計によって検出可能としてもよい。
【0080】
また、位置検出装置S1,S2a,S2b,S3a,S3b,S4a,S4bのそれぞれを構成するレーザ変位計41L,41Rの少なくともいずれかを、1つのレーザ変位計によって構成し、加工材100の軸方向視における左右方向へ移動可能に構成してもよい。すなわち、加工材100の下側にて軸方向視で左右方向に位置検出装置を移動可能としてもよく、モータ等を含む駆動機構を制御装置6によって制御して電気的に移動可能として、2つの側面100L,100Rの表面の位置を検出可能としてもよい。
【0081】
また、位置検出装置S1,S2a,S2b,S3a,S3b,S4a,S4bのうち2以上の表面の位置の検出結果に基づいて、加工材100の側面100L,100Rの湾曲の大きさだけでなく、加工材100の側面100L,100Rの湾曲の形状を推定するようにしてもよい。
【0082】
駆動機構34a,34bは、図2に示すように、第1支持部30aと第2支持部30bとを動作させる機構と、その動作をさせるためのモータや空圧シリンダ等の駆動源とを含めて構成された装置である。駆動機構34a,34bは、2つの支持部30a,30bのそれぞれに対して別々に設けられている。なお、駆動機構34a,34bを、2つの支持部30a,30bに対して共通する1つの駆動機構によって構成してもよい。
【0083】
駆動機構34aは、第1支持部30aを動作させる機構であり、第1支持部30aにおける左下側支持部31L(左下側突出部32L及び左上側突出部33L)と右下側支持部31R(右下側突出部32R及び右上側突出部33R)の少なくとも一方を鉛直方向側に動作させることが可能に構成されている。駆動機構34aには、第1支持部30aが一端側に固定された駆動回動軸35が設けられ、この駆動回動軸35の移動と回動とが、制御装置6による駆動源としての空圧シリンダやモータの制御によって制御される。この制御装置6による駆動機構34aの制御によって、第1支持部30aは、軸方向視における加工材100の向きを、上面と下面とが鉛直方向を向くようにした初期状態(図3(A)の状態)から、45度回転した測定状態(図3(C)の状態)へと変化させることが可能に構成されている。
【0084】
駆動機構34bは、駆動機構34aによる第1支持部30aの動作と軸方向視において第2支持部30bが重なるように、第2支持部30bを動作させる機構であり、駆動機構34aと同様に構成されている。制御装置6による駆動機構34bの制御によって、第2支持部30bは、軸方向視における加工材100の向きを、初期状態(図3(A)の状態)から測定状態(図3(C)の状態)へと変化させることが可能に構成されている。
【0085】
制御装置6には、第1支持部30a及び第2支持部30bを動作させるための駆動部の動力源の動作を制御するプログラムが記憶され、位置検出装置S1,S2a,S2bの動作を制御するプログラムが記憶されている。また、制御装置6には、位置検出装置S1,S2a,S2bから出力される表面の位置の測定結果や、それらの測定結果に基づいて検出された湾曲の方向や湾曲の大きさ等が、加工材100の変形状態に対応した変形対応情報として記憶される。また、制御装置6には、位置検出装置S1,S2a,S2bから出力される測定結果に基づいて、湾曲の方向を決定するための演算や、湾曲の大きさを決定するための演算等を行うプログラムが記憶されている。なお、制御装置6による第1支持部30a及び第2支持部30bの動作の制御や位置検出装置S1,S2a,S2bの測定結果に対しての制御の内容については、後述する。
【0086】
次に、駆動機構34a,34bによって動作する第1支持部30a及び第2支持部30bの具体的な動作例について、図3を主に参照して説明する。図3は、加工材湾曲検出装置4の支持部30a,30bの動作を説明するための模式図であり、軸方向視において第1支持部30aによって加工材100の向きが変えられるように動作する過程の各状態を模式的に示している。なお、第2支持部30bは、第1支持部30aと重なる位置となるように動作するものであり、第2支持部30bの動作に関する構成についての図示及び説明は省略する。
【0087】
加工材湾曲検出装置4によって加工材100の湾曲測定が行われる場合、測定の対象となる加工材100は、移動部14(図1参照)によって供給部11(図1参照)から加工材湾曲検出装置4まで移動される。加工材湾曲検出装置4には、図3(A)に示すように、上面と下面とが鉛直方向を向くようにして加工材100の下側を支持可能な載置台(図示せず)が設けられ、その載置台の載置面PS上に加工材100が一旦載置される。この載置台は、例えば、第1支持部30a、第2支持部30b、位置検出装置S1,S2a,S2bが配置された位置に対して加工材100の長手方向においてズレた複数の箇所にて、加工材100の下側を支持する支持部分を設けて構成されている。
【0088】
なお、加工材湾曲検出装置4の載置台は、加工材100の下側を支持するだけの構成であってもよいし、加工材100の長手方向に間隔を空けて配置された複数のローラと、ローラを駆動する駆動機構とを備えて構成され、加工材100を長手方向に移動可能な搬送機構を含むように構成してもよく、この場合には、供給部11から搬送機構を利用して加工材100が湾曲測定の実行される初期状態の位置まで移動する構成としてもよいし、湾曲測定を終えた加工材100が待機部12又は退避部13に近付く別の位置まで移動する構成としてもよい。
【0089】
初期状態において、第1支持部30aは、右下側支持部31R(詳細には、右下側突出部32Rと右上側突出部33Rとの接平面)が載置面PSに略平行であり、左下側支持部31L(詳細には、左下側突出部32Lと左上側突出部33Lとの接平面)が載置面PSに略垂直である初期姿勢をとる。初期状態に加工材100が配置された後には、図3(A)に矢印を付して示すように、駆動回動軸35は、その中心位置が、初期状態に対応する中心位置(初期位置SP)に対して、加工材100の配置される水平方向側に移動しつつ、第1支持部30aを一方側に回動させる方向側に回動する。
【0090】
ここで、駆動回動軸35の水平方向側への移動方向(図3(A)の右方向)は、第1支持部30aを回動させる方向側への回動により加工材100の重心Cが移動することとなる方向(左方向)とは反対の方向に設定されている。このため、加工材100の重心Cの位置が水平方向にズレることを少なくし、第1支持部30aの移動により加工材100の重心Cを鉛直方向側のみに移動し易くすることができる。この水平方向側への移動量は、加工材100の重心Cの位置が水平方向側にほとんど移動しないようにすることが好ましく、例えば、初期状態における加工材100の軸方向視における水平方向側の幅の略10分の1以下とすることがよく、略20分の1以下とすることが好適であり、例えば、一辺の長さが100mmの長さの正方形状の断面形状である場合には、10mm以下とすることが好ましい。
【0091】
第1支持部30aの回動する方向は、加工材100の下側を向く面の一端側(図3(A)の右側)が上昇する方向側とされ、これによって、第1支持部30aの位置と姿勢とが変化し、図3(B)に示すように、加工材100が軸方向視において回転する。この加工材100を回転させるときには、右下側支持部31R(具体的には、右下側突出部32R及び右上側突出部33R)が、鉛直方向の上向きの成分を含む上方向側に移動し、初期状態における加工材100の下面(側面100R)の一端側(図3(B)の右側)を反対側(図3(B)の左側)より大きく上昇させて、加工材100の向きを変化させる。
【0092】
駆動回動軸35の回転量が、初期状態から45度まで到達すると、図3(C)に示すように、加工材100が第1支持部30aによって左右対称に支持された測定状態となる。この測定状態になると、駆動回動軸35の中心位置が加工材100の中心(重心C)の鉛直下方側に位置した状態となって、駆動回動軸35の動作が停止する。このとき、第1支持部30aは、左下側突出部32Lと左上側突出部33Lとの接平面と、右下側突出部32Rと右上側突出部33Rとの接平面とが、載置面PSに対して、いずれも45度傾斜している。このため、加工材100の重心Cが軸方向視においてバランスよく下側に落ち込んで安定した状態に近付け易くすることができ、測定状態における加工材100の支持状態のズレを最小限にすることができる。
【0093】
測定状態となってから、右下側の側面100Rの表面の位置と、左下側の側面100Lの表面の位置とが、位置検出装置S1,S2a,S2bによって検出され、制御装置6に検出結果が入力される。この検出結果の入力によって、加工材100の湾曲の方向と湾曲の大きさとが制御装置6によって検出されて湾曲測定が実行される。この制御装置6による湾曲測定の結果の利用方法については、後述する。
【0094】
湾曲測定が実行された後には、加工材100は、下側を向く2つの側面100L,100Rが斜めに傾いた状態から、いずれかの側面が鉛直下方を向く方向に回転させられる。この回転の方向としては、初期状態の加工材100の向きとなるように戻す方向と、初期状態の加工材100の向きから90度回転した向きとなるように、加工材100を更に回転させる方向とがある。なお、制御装置6には、初期状態の加工材100の向きとなるように戻す方向に動作させる制御と、初期状態の加工材100の向きから90度回転した向きとなるように回転する方向に動作させる制御との両方を設けて、必要に応じて回転する方向を切り替えて制御してもよいし、いずれか一方にのみ回転させる制御によって構成してもよい。
【0095】
初期状態の加工材100の向きに戻す方向に、制御装置6によって制御が行われる場合には、湾曲測定が実行された後、駆動回動軸35が、図3(C)の実線の矢印で示すように、元に戻る方向(図3(C)の左側)に移動しつつ、駆動回動軸35が元に戻る方向(図3(C)の時計周り方向)に回転するように、制御装置6が駆動回動軸35の動作を制御する。これにより、第1支持部30aの位置及び姿勢が、図3(A)に示す初期状態に戻る。その後、湾曲測定が実行された加工材100は、移動部14の動作を制御装置6が制御して、待機部12又は退避部13(図1参照)へと移動する。
【0096】
初期状態の加工材100の向きから90度回転した向きとなるように、加工材100を更に回転させる場合には、図3(C)から図3(E)の一点鎖線の矢印で示す方向に第1支持部30aの位置及び姿勢が制御装置6によって制御される。この場合、制御装置6が駆動回動軸35の動作を制御し、駆動回動軸35が、初期状態から測定状態へ移行する方向(図3(C)の右側)に更に移動しつつ、駆動回動軸35が初期状態から測定状態へ移行する方向(図3(C)の反時計周り)に更に回転させる。この駆動回動軸35の移動と回動によって、図3(D)に示すように、駆動回動軸35は、初期状態から90度回転した状態となり、加工材100の向きも初期状態から90度回転した向きとなる。
【0097】
加工材100の向きが変わった後には、駆動回動軸35を下側に移動させて第1支持部30aを下方へ移動し、その後、図3(E)に示すように、駆動回動軸35を初期状態の位置に近付くように、一方側(図3(E)の左側)に移動させつつ、一方(図3(E)の時計周り)に回転させる。これにより、加工材100と第1支持部30aとが接触しないようにして、加工材100の下側を第1支持部30aが移動可能とすることができる。
【0098】
駆動回動軸35の中心位置が初期位置SPの鉛直方向下側に到達すると、駆動回動軸35を上側に移動させることによって、図3(A)に示す初期状態に第1支持部30aが復帰する。これによって、加工材100を、初期状態の姿勢に対して90度回転した向きにすることができる。この図3(A)〜(E)に示された動作を繰り返すことによって、第1支持部30a及び第2支持部30bの動作を利用して、加工材100を初期状態から180度でも270度でも回転させることができ、いずれの側面であっても、その側面が所定の方向を向くように、加工材100を配置できる。
【0099】
ここで、加工材湾曲検出装置4は、第1支持部30aが初期状態から測定状態へと移行する過程において、第1支持部30aと加工材100との相対位置が変化するように構成されている。具体的には、加工材湾曲検出装置4に加工材100が搬入された初期状態においては、図3(A)に示すように、第1支持部30aの左下側支持部31Lと、右下側支持部31Rとは、いずれも加工材100に当接しない位置に配置される。
【0100】
また、第1支持部30aが初期状態から測定状態へと移行する過程においては、図3(B)に示すように、加工材100に右下側支持部31Rが当接する一方、左下側支持部31Lは当接しない状態(一方側当接状態)を経由し、その後に、左下側支持部31Lにも加工材100が当接して加工材100が支持される。これにより、左下側支持部31Lと、右下側支持部31Rとの間に加工材100を滑るようにして落とし込むことができる。この場合には、左下側支持部31Lと、右下側支持部31Rとが加工材100に接触する順序が不規則であったり、同時に接触したりする場合と比べて、測定状態において加工材100の重心Cが最も下方に位置するように配置させる精度を向上させることが可能となり、高精度での湾曲測定が可能となる。
【0101】
なお、初期状態から測定状態へ至るまでの過程において、左下側支持部31Lが加工材100に当接しない期間は、一定の角度以上とすることが好ましく、例えば、加工材100が少なくとも5度以上回転するまでは、左下側支持部31Lが加工材100に当接しないようにすることが好ましく、これにより、加工材100を滑り落とす際の勢いを付けて加工材100が確実に左下側支持部31Lに当接した状態とし易くすることができる。この角度としては、初期状態から測定状態へ至るまでの角度(例えば、45度)の略5%以上(例えば、3度以上)とすることが好ましく、略10%以上(例えば、5度以上)とすることが好適である。
【0102】
また、初期状態から測定状態へ至るまでの過程において、左下側支持部31Lが加工材100に当接しない期間は、一定の角度以下となるようにすることが好ましく、例えば、加工材100が少なくとも10度を超えて回転した場合には、左下側支持部31Lが加工材100に確実に当接するように構成することが好ましく、これにより、加工材100を滑り落とす際の勢いがつきすぎて加工材100の表面が傷ついたり、加工材100の表面の粗度のバラツキによって加工材100が落ち込まないといった状況を回避することができる。この角度としては、初期状態から測定状態へ至るまでの角度(例えば、45度)の略40%以下(例えば、15度以下)とすることが好ましく、略30%以下(例えば、10度以下)とすることが好適である。
【0103】
なお、初期状態から測定状態へ至るまでの過程における左下側支持部31Lが加工材100に当接しない期間は、左下側支持部31Lおよび右下側支持部31Rと加工材100との接触部分の材質や、駆動機構34aによる第1支持部30aの動作の加速度等を調整して変化させることができる。例えば、左下側支持部31Lおよび右下側支持部31Rにおける加工材100との接触部分に、本体部分とは別の材質で構成した部材を貼り付けて接触部分を金属から樹脂に変更したり、表面処理加工を施したり、駆動機構34aによる第1支持部30aの動作の加速度を変化させたりすることで、当接しない期間の長さを変化させることができる。
【0104】
また、初期状態において、左下側支持部31Lと右下側支持部31Rの少なくとも一方が加工材100に当接する構成であってもよい。例えば、右下側支持部31Rによる加工材100の支持面(右下側突出部32Rと右上側突出部33Rとの接平面)が、載置面PSと略同一となるように、第1支持部30aの上下方向の位置や、右下側突出部32R及び右上側突出部33Rの突出量を設定してもよい。
【0105】
また、初期状態において、加工材100を、必ずしも載置台に載置する必要はなく、第1支持部30a及び第2支持部30bの少なくとも一方によって加工材100が支持されるようにしてもよく、この場合には、載置台を省略してもよい。
【0106】
また、左下側支持部31Lおよび右下側支持部31Rに支持された測定状態で、加工材100が下方向に移動し易くする機構を設けてもよく、例えば、各突出部32L,32R,33L,33Rを、加工材100が測定状態で下方向に移動しやすく回転するローラによって形成してもよい。
【0107】
また、測定状態となる段階において、加工材100に振動が与えられるようにすることは好ましい。例えば、第1支持部30aを測定状態となる段階において急停止させて、加工材100に振動が与えられるようにしてもよい。具体的には、加工材湾曲検出装置4における第1支持部30aや駆動回動軸35等の第1支持部30aの回動させる機構として、空圧で動作するシリンダを設けて、このシリンダが最大にストロークしてストッパに接触した位置を測定状態とするように駆動機構34aを構成してもよい。
【0108】
また、第1支持部30a及び第2支持部30bは、測定状態へ至るまでの過程において加工材100の少なくとも一部を上方側または下方側に移動させられる構成であれば、他の経路を経由して移動をする構成としてもよい。例えば、左下側支持部31Lと右下側支持部31Rとを別々の部材によって構成し、左下側支持部31Lは、図3(C)に示した角度に固定的に配置され、右下側支持部31Rのみが回動動作することで、初期状態から測定状態へと移行して加工材100が第1支持部30a及び第2支持部30bに支持される構成としてもよい。
【0109】
また、必ずしも右下側支持部31Rが、回動動作によって加工材100の向きを変化させる必要はなく、例えば、右下側突出部32Rと、右上側突出部33Rとを、それぞれが上下方向側に移動可能に構成し、右下側突出部32Rより右上側突出部33Rを大きく上方へ移動して初期状態から測定状態に相当する向きに加工材100が回動するようにしてもよい。
【0110】
また、駆動回動軸35は、初期状態から測定状態への移行に際して、移動と回動とを含む動作をする構成としたが、初期状態から測定状態へ単に駆動回動軸35の回動によって第1支持部30a及び第2支持部30bが回動して測定状態となるようにしてもよい。
【0111】
また、初期状態から測定状態へと移行する際に、上方側でなく、下方側へと、左下側支持部31Lおよび右下側支持部31Rのいずれかが移動して、加工材100の向きが変わるようにしてもよく、例えば、図3(A)の初期状態において、加工材100が直接的に第1支持部30aに支持され、その第1支持部30aに支持された状態から、右下側支持部31Rの先端部分に相当する右側部分を中心にして第1支持部30aが反時計回りに略45度回動して、測定状態となるようにしてもよい。
【0112】
また、第1支持部30aと第2支持部30bとは、測定状態としての姿勢を変化させずに移動する構成であってもよく、載置面PSに支持された加工材100に向かって下側から、測定状態の姿勢のままで第1支持部30aと第2支持部30bとが上昇移動して加工材100を支持するようにしてもよい。
【0113】
また、加工材100が第1支持部30a及び第2支持部30bに支持された測定状態において、第1支持部30a及び第2支持部30bを加工材100の長手方向に沿って移動可能として、位置検出装置S1,S2a,S2b,S3a,S3b,S4a,S4b(図2参照)に対して測定状態における加工材100の位置を変化可能に構成し、加工材100の各側面100R,100Lの複数の部位の表面の位置を、位置検出装置S1,S2a,S2b,S3a,S3b,S4a,S4bの少なくとも一部によって検出してもよい。
【0114】
次に、加工材湾曲検出装置4における湾曲の方向及び大きさの検出について、図4を参照して説明する。図4は、湾曲の方向が異なる加工材100の湾曲測定の結果を模式的に示す断面図であり、位置検出装置S1によってズレ量が測定される位置における断面を前側から見た場合を示し、奥側に第2支持部30bが見えた状態を示している。
【0115】
図4(A)及び図4(B)は、加工材100の湾曲の方向が、加工材100の長手方向に垂直な切断面において加工材100の輪郭の一辺に直交する直交方向(一側面に垂直な方向)である場合における測定状態を示す断面図である。図4(C)及び図4(D)は、加工材100の湾曲の方向が、その輪郭の一辺の直交方向とその輪郭の対角線に沿った対角方向との間の方向である場合における測定状態を示す断面図である。図4(E)及び図4(F)は、その輪郭の対角方向である場合における測定状態を示す断面図である。なお、図4(A)から図4(F)までの各図において、湾曲の方向を、加工材100の中心位置(重心Cの位置)からの矢印の方向で示している。
【0116】
測定状態の第1支持部30a及び第2支持部30bに支持された加工材100の2つの側面100L,100Rには、位置検出装置S1を構成するレーザ変位計41L,41R(図2参照)から検査光が各側面100L,100Rに略垂直な光路VL,VRに沿って照射され、各側面100L,100Rの表面の位置に対応した検出結果が出力される。これによって、レーザ変位計41Lでは、光路VLに沿った左下側のズレ量ZLが測定でき、レーザ変位計41Rでは、光路VRに沿った右下側のズレ量ZRが測定できる。
【0117】
なお、図4(A)から図4(F)においては、測定結果としてのズレ量ZL,ZRについて、各図に対応した異なるアルファベットを付し、ズレ量ZLb〜ZLf,ZRa〜ZRfとして例示している。また、レーザ変位計41L,41Rによる測定結果は、側面100L,100Rまでの光路VRに沿った距離が基準断面CSまでの距離よりも遠い場合に正の値をとり、近い場合に負の値をとるように設定している場合を例示している。
【0118】
まず、加工材100が理想形状と一致している場合、第1支持部30aと第2支持部30bとによって支持されている両端側に対して、位置検出装置S1が設けられた間部分の表面の位置は、基準断面CSまでの距離と一致し、ズレ量ZL,ZRが共に0となる。この測定結果が制御装置6に入力されることにより、制御装置6においては、加工材100には、湾曲がなく、湾曲の大きさも、湾曲の方向もないことを識別できる。
【0119】
図4(A)に示すように、加工材100の湾曲の方向が、右下側を向く側面100Rに垂直な方向である場合、その側面100Rが、第2支持部30bの右下側支持部31R(右下側突出部32R及び右上側突出部33R)の一部に重なるように配置される。この場合、位置検出装置S1によって測定される加工材100の断面KSの位置は、理想形状の加工材100’の断面に対応する基準断面CSの位置に対して、当該湾曲の方向に沿って、すなわち、レーザ変位計41Rの光路VRに沿った右下側にずれる。このとき、レーザ変位計41Rで測定されるズレ量ZRは、負の値(−ZRa)となり、レーザ変位計41Lで測定されるズレ量ZL(ZLb)は、0となる。この測定結果によって、加工材100の湾曲の方向は、軸方向視において右下側であることを識別でき、加工材100の湾曲の大きさは、ズレ量ZRaの絶対値に相当することを識別できる。
【0120】
加工材100の湾曲の方向が他の側面に垂直な方向である場合についても、上記した側面100Rに垂直な場合と同様にして、湾曲の大きさと湾曲の方向とを識別することができる。例えば、図4(B)に示すように、左下側を向く側面100Lに垂直な方向である場合について、加工材100の湾曲の方向は、ズレ量ZRが0であること、及び、ズレ量ZLが正の値であることによって右上側であることを識別でき、加工材100の湾曲の大きさは、ズレ量ZLbの絶対値に相当することを識別できる。
【0121】
図4(C)から図4(F)には、加工材100の湾曲の方向が、側面100L,100Rの向く方向とは異なった場合を例示している。この場合には、加工材100の湾曲の方向は、ズレ量ZRと、ズレ量ZLとの大きさの比率によって識別することができ、例えば、図4(E)及び図4(F)に示すように、ズレ量ZRとズレ量ZLとが一致している場合には、側面100L,100Rの方向から略45度傾いた方向(正方形状の断面KSにおける角部分を向く方向)となることを識別できる。
【0122】
また、図4(C)及び図4(D)に示すように、ズレ量ZRとズレ量ZLとが異なる場合、加工材100の湾曲の方向は、側面100L,100Rの向く方向と、それらの方向から略45度傾いた方向との間の方向となる場合である。この場合であっても、ズレ量ZRとズレ量ZLとの大きさの比率によって、加工材100の湾曲の方向と湾曲の大きさとを識別できる。すなわち、湾曲の方向として、正方形状の断面KSの角部分と、側面100L,100Rに垂直な方向との間における斜め方向の角度(側面100L,100Rに対しての傾き)を識別でき、ズレ量ZRとズレ量ZLとが、正の値であるか、負の値であるかによって、具体的な方向を識別できる。
【0123】
このように、加工材100の湾曲の方向は、ズレ量ZLと、ズレ量ZRとの大きさの比率と、正の値であるか、負の値であるかとによって識別することができる。また、加工材100の湾曲の大きさは、ズレ量ZLと、ズレ量ZRとを合成した長さ(具体的には、ズレ量ZLの二乗と、ズレ量ZRの二乗とを加算し、その加算した値の平方根によって算出した大きさ)で推定することができる。
【0124】
なお、ズレ量ZR及びズレ量ZLとして、位置検出装置S1だけでなく、位置検出装置S2a,S2b,S3a,S3b,S4a,S4bの少なくともいずれかの値も利用し、ズレ量ZR及びズレ量ZLを算出するようにしてもよい。例えば、位置検出装置S1と、位置検出装置S3a,S3bの値を利用して湾曲の方向及び湾曲の大きさを算出する場合、位置検出装置S1の測定結果をズレ量ZL1,ZR1、位置検出装置S3a,S3bの測定結果をズレ量ZL3a,ZR3a,ZL3b,ZR3bとすると、ズレ量ZLは、「ZL1ー(ZL3a+ZL3b)/2」によって算出することができ、ズレ量ZRは、「ZR1ー(ZR3a+ZR3b)/2」によって算出することができる。この算出するための演算は、加工材湾曲検出装置4に演算部を設けて実行してもよいし、加工材湾曲検出装置4から制御装置6に測定結果を出力し、制御装置6において演算を行う構成であってもよい。
【0125】
以上説明したように、加工材湾曲検出装置4によれば、加工材100が、第1支持部30aと第2支持部30bとに支持された状態にしてから、位置検出装置S1によって、第1支持部30aと第2支持部30bとの間に位置する加工材100の中央部分に対して軸方向視において周方向に離間した2箇所の表面の位置が検出される。加工材100が理想形状と一致している場合、第1支持部30aと第2支持部30bとによって支持されている両端側に対して、位置検出装置S1が設けられた間部分の表面の位置が位置検出装置S1によって検出され、加工材100に湾曲がなく、湾曲の大きさも、湾曲の方向もないという結果に対応した検出結果が出力される。
【0126】
一方、加工材100が理想形状に対して一定以上の湾曲を含んだ形状となっている場合、第1支持部30aと第2支持部30bとによって支持されている両端側に対して位置検出装置S1が設けられた間部分の表面の位置は、理想形状において位置検出装置S1によって検出された表面の位置とは異なって湾曲の方向側に偏ったものとなる。この表面の位置の偏り(ズレ)に応じて位置検出装置S1は、理想形状における検出結果とは別の検出結果を出力する。この出力された検出結果が制御装置6に入力されると、制御装置6は、加工材100の湾曲の方向と湾曲の大きさとを識別することができる。
【0127】
また、第1支持部30aにおける第1左下側支持部(左下側支持部31L)と第1右下側支持部(右下側支持部31R)が駆動機構34aによって鉛直方向側に動作させることが可能であり、第2支持部30bにおける第2左下側支持部(左下側支持部31L)と第2右下側支持部(右下側支持部31R)が駆動機構34bによって鉛直方向側に動作させることが可能となっている。駆動機構34a,34bによって第1支持部30aと第2支持部30bとが鉛直方向側に動作し、加工材100が軸方向視において回転させられると、加工材100の重心が鉛直方向側において移動し易くなり、その移動後に第1支持部30aと第2支持部30bとが静止し、加工材100が左下側支持部31Lと右下側支持部31Rとによって支持された測定状態となる。この加工材100の重心が移動し易いようにしつつ加工材100の下側を支持する構成により、測定状態において、加工材100の自重により加工材100の重心が下方に移動して安定した状態に近付き易く、加工材100の重心が最大限に下方に位置した状態となり易い。
【0128】
この加工材100の重心が最大限に下方に移動して安定した状態とさせてから、位置検出装置S1によって加工材100の表面の位置を検出することで、理想形状を目指して製造された多量の加工材100を、第1支持部30aと第2支持部30bとによって同様の形で適切な位置に加工材100が支持された状態に近付け易くすることができる。適切な位置に加工材100が支持された状態では、理想形状に対して表面の位置を検出している測定対象の加工材100が湾曲を含む場合に、その湾曲の方向と、湾曲の大きさとに対応して、位置検出装置S1によって検出される加工材100の表面の位置に特定のズレが生じる。よって、適切な位置に加工材100が支持された状態にしてから位置検出装置S1によって加工材の表面の位置を検出することで、加工材100に対しての湾曲の方向と、湾曲の大きさとを正確に検出し易くすることができる。
【0129】
このように、プレカット加工装置1の加工材湾曲検出装置4によれば、第1支持部30aと第2支持部30bとによって加工材100が支持された状態とし、位置検出装置S1によって表面の位置を検出することで加工材100の湾曲の状況としての湾曲の方向と湾曲の大きさとを検出することができる。このため、加工材100が湾曲を含む場合に、湾曲の状況を短時間で検出し易くすることができる。
【0130】
また、駆動機構34a,34bとによって第1支持部30aと第2支持部30bを動作させて適切な位置に加工材100を支持した状態に近付けることができる。このため、位置検出装置S1によって加工材100の表面の位置を検出した場合における湾曲の方向と湾曲の大きさとを正確に検出し易くすることができる。よって、構造部材を製造する場合において、湾曲の状況を検出し易く、湾曲の状況に応じた加工を行い易くすることができる。
【0131】
また、加工材湾曲検出装置4は、第1支持部30aと、第2支持部30bとは、位置検出装置S1によって加工材100の表面の位置が検出される測定状態において、加工材100の表面のうち加工材100の長手方向に連続する平面状であって略直交する方向側を向く2つの側面100L,100Rの下側を、加工材100の中心(重心C)が位置する水平方向における中央側が低くなるように傾いた状態で支持する。このため、平面状の側面100L,100Rに沿って加工材100が、重心Cの位置する中央側に滑り落ちやすく、加工材100の自重を利用して重心が最も下側に位置した状態にし易くすることができる。
【0132】
また、加工材湾曲検出装置4の駆動機構34a,34bは、第1支持部30aと、第2支持部30bとによって支持された加工材100を、軸方向視において回転させることが可能に構成され、加工材湾曲検出装置4を加工材回転装置5として利用することができる。このため、従来の木材回転機能を備えたプレカット加工装置に対して、加工材100の湾曲の状況を検出可能とする機能を低コストで付加し易くすることができる。
【0133】
次に、図5から図7を参照して、プレカット加工装置1において、加工材湾曲検出装置4によって検出された湾曲測定の結果を利用して構造部材を製造する構成について説明する。
【0134】
図5は、制御装置6によって湾曲測定を実行した加工材から構造部材を製造するための制御を示す説明図である。図6は、建築物における各種の構造部材による骨格構造の一例を模式的に示す平面図である。図7(A)は、配置情報に基づいて設定される湾曲の方向及び大きさと、加工材湾曲検出装置4によって検出された湾曲の方向及び大きさとの分類を示す説明図であり、図7(B)は、それらの湾曲の方向を合わせる制御の一例を示す説明図である。
【0135】
プレカット加工装置1は、制御装置6の記憶部に記憶された配置情報に基づいて設定される湾曲の方向(以下、「設定湾曲方向」とも略記する)と、加工材湾曲検出装置4によって検出された湾曲の方向(以下、「検出湾曲方向」とも略記する)とを合わせるようにして制御装置6の記憶部に記憶された加工データに対応した制御を木材加工装置2に対して行って加工材100を加工する制御装置を備える構成である。具体例としては、加工材回転装置5によって、制御装置6の記憶部に記憶された配置情報に基づいて設定される湾曲の方向と、加工材湾曲検出装置4によって検出された湾曲の方向とを合わせるように加工材100の向きを変更可能な構成である。
【0136】
プレカット加工装置1は、各構造部材の製造において、構造部材の設定湾曲方向と加工材100の検出湾曲方向とを合わせるように加工材100を加工することで、湾曲の大きさが一定の値(例えば、構造部材の全長に対する湾曲の大きさの比率で示される値であり0.5mm/3000mm)を超える加工材であっても、長材としての構造部材を製造する素材として利用することを可能にする。すなわち、プレカット加工装置1は、湾曲の大きさだけでなく、湾曲の方向をも考慮して、その利用可能な範囲の拡大を図り、また、建築物における構造部材の種類(役割)に応じて利用可能な範囲を異ならせつつその拡大を図る。
【0137】
制御装置6(図1参照)の記憶部には、配置情報の一部として、建築物を構成する各構造部材の配置位置を識別するための構造部材ごとに異なる構造部材番号と、構造部材の種類に対応する情報とが記憶されている。具体的には、制御装置6の記憶部には、図5に示すように、各構造部材番号に関連付けて、各構造部材の種類に対応した配置情報が記憶され、水平方向を長手方向として配置される横架材101〜106に対しては、例えば「1」、鉛直方向を長手方向として配置される立柱材とに対しては、例えば「2」というように、構造部材の種類としての配置される長手方向(配置の向き)に対応して異なる配置情報が記憶されている。
【0138】
また、制御装置6(図1参照)の記憶部には、配置情報の一部として、立柱材に対して更に種類毎に細かく分類された利用箇所に対応する配置情報が記憶されている。建築物の外輪郭の隅部に配置される隅柱111,118,120,121に対しては、例えば、「1」と、主要空間(部屋、玄関、廊下、階段等)を区画するために配置される区画柱114,117,119,122,124に対しては、例えば、「2」という配置情報が、配置の向きに対応する情報とは別に記憶されている。同様に、窓や扉等の開閉部材131,132を固定するための窓扉柱112,113,115,116と、主要空間内で少なくとも一側面が露出するように配置される露出柱123とに対しても異なる配置情報が割り当てられて記憶されている。
【0139】
ここで、配置情報は、プレカット加工装置1に加工データの一部として入力され、CADにより製図された骨格構造に基づいてCADにより割り当てられてもよいし、入力された加工データの印字内容などの情報に基づいてプレカット加工装置1の制御装置6の制御プログラムによって割り当ててもよいし、作業者が手入力により記憶部に記憶する操作を行ってもよい。例えば、加工データの一部として、構造部材の配置位置を示すように構造部材が設置される両端部分の位置を示す番付(座標位置)を利用して立柱材であるか、横架材であるかを判定して配置情報として利用してもよく、また、ほぞが一方側によって形成される形状に基づいて立柱材の中の隅柱であることを判定して配置情報として利用してもよく、この判定を行うプログラムが制御装置6に設けられていてもよい。
【0140】
制御装置6の記憶部には、配置情報の一部として、各立柱材に対して、接合対象である横架材101等に沿った壁の向きに対応する情報(例えば、東は「1」、北は「2」など)が記憶されている。これにより、壁の向きに沿った方向側に、加工材100の湾曲の方向が一致するようにして、加工材100を加工することができるので、一定以上の大きな湾曲を含む加工材100を用いても、壁の表面を構成する部材に立柱材が接触して、壁の表面が変形するといった問題が生じないようにすることができる。
【0141】
この壁の向きと、立柱材の種類とに基づいて、制御装置6は、許容される湾曲の方向と湾曲の大きさを設定する。湾曲により突出することを許容する向きとしては、具体的には、図6に示すように、各隅柱111については、壁の向きとして、1方向のみに対応した情報が記憶され、その近傍に図示した矢印が指す1方向に対応した配置情報が、壁の向きに対応する情報として記憶されている。
【0142】
各区画柱114等については、その近傍に図示した矢印が指す2方向に対応した配置情報が壁の向きに対応する情報として記憶され、各窓扉柱112等については、その近傍に図示した矢印が指す1方向に対応した配置情報が壁の向きに対応する情報として記憶されている。壁に接して配置されない立柱材としての露出柱123については、矢印が図示されていないように、壁の向きに対応した配置情報が記憶されず、例えば、「0」の情報が記憶されている。
【0143】
なお、制御装置6の記憶部には、構成部材の種類ごとの壁の向きを他の態様で指定する情報が記憶されていてもよい。例えば、隅柱111に対する壁の向きを横架材101の他端側を向く一方向(図6中の右側)のみならず、横架材101に接合される横架材102の接合側の方向(図6中の下側)をも許容する構成であってもよい。
【0144】
また、構造部材の種類ごとに許容される壁の向きが一義的に決定される構成に限らず、同一種類の構造部材であっても配置場所に応じて許容される壁の向きを異ならせる構成であってもよい。例えば、制御装置6の記憶部は、複数の区画柱114が同一の横架材に配置される場合に、近接する2つの区画柱に対して2方向の壁の向きを許容するのではなく、隣接する2つの区画柱の壁の向きを、例えば、一方が右側を許容する場合には他方は左側を許容するように設定湾曲区分を設定する構成であってもよい。
【0145】
また、制御装置6の記憶部には、各構成部材の種類ごとの壁の向きに対応した情報に代えて、接合対象の横架材101等の向きに対応した情報(組立図における配置から抽出できる情報)が記憶されてもよい。また、制御装置6の記憶部には、壁の向きに対応した情報に代えて、構造部材の種類ごとに特徴的な加工形状、例えば、突出方向視でのほぞの幅の長手方向に関する情報(加工データから抽出できる情報)等が記憶されていてもよい。この場合、制御装置6には、専用の情報を記憶しておく必要はなく、加工データを参照してもよい。
【0146】
制御装置6の記憶部には、各構造部材について、各構造部材に対応する配置情報に基づいて、各構造部材等に対する設定湾曲方向を設定するプログラムが記憶されている。具体的には、制御装置6の制御部は、当該プログラムに従って、設定湾曲方向を、図7(A)に示すような1つの湾曲区分A、4つの湾曲区分B1〜B4及び4つの湾曲区分Ca〜Cdから少なくとも1つの湾曲区分を選択することによって設定する。この設定によって、制御装置6の記憶部には、設定湾曲方向を指定する情報として、制御装置6の制御部によって選択された1又は複数の湾曲区分(以下、設定湾曲区分という)が記憶される。但し、制御装置6の制御部は、以下で説明するように、構造部材の種類ごとに異なる設定湾曲区分を設定する。
【0147】
なお、制御装置6の記憶部には、上記の9つの湾曲区分とは異なる複数の湾曲区分を設定し、当該複数の湾曲区分の組合せによって設定湾曲区分を決定するプログラムが記憶されていてもよく、例えば、湾曲区分Aを省略してもよく、または、湾曲区分Ca〜Cdについて湾曲の大きさが2mmから3mmの範囲を省略した異なる形によって湾曲区分を構成してもよい。また、制御装置6の記憶部には、構造部材の種類によって湾曲区分の組み合わせを異ならせるプログラムに限らず、構造部材の種類が異なる一部の種類に対して同一の組み合わせを選択するプログラムが記憶されていてもよく、例えば、区画柱114と露出柱123とに対して同一の湾曲区分の組合せを選択するようにしてもよい。
【0148】
制御装置6の制御部は、各横架材101等に対して、鉛直方向の上向きを湾曲の方向とする一定以上の大きな湾曲を許容するように、設定湾曲区分を設定する。横架材101に対して、図6における紙面の裏側を向く側面を基準(加工時に下側を向く側面)とすると、横架材101の長手方向の中心軸に沿った軸視において、図6における紙面の表側が、鉛直方向の上側であって、図7における上側(ZRの正の値側)に対応する。制御装置6の制御部は、例えば、横架材101について、鉛直方向の上向きの湾曲を許容するために、湾曲区分Aに加えて、4つの湾曲区分B1〜B4のうち上側に対応する2つの隣接する湾曲区分B1及び湾曲区分B2を選択し、更に、4つの湾曲区分Ca〜Cdのうち上側に対応する1つの湾曲区分Cbを選択する。
【0149】
この選択の制御によって、制御装置6の記憶部には、横架材101に対する設定湾曲区分として、湾曲区分A、湾曲区分B1、湾曲区分B2及び湾曲区分Cbの4つの湾曲区分が記憶(設定)される。制御装置6の制御部は、他の横架材102等についても同様に、湾曲区分Aと、4つの湾曲区分B1〜B4のうち各横架材101等の配置方向に基づいて選択されるいずれか2つの隣接する湾曲区分と、湾曲区分Ca〜湾曲区分Cdのうち各横架材の配置方向に基づいて選択される1つの湾曲区分とを選択する。この選択の制御によって、制御装置6の記憶部には、設定湾曲区分として、選択された4つの湾曲区分が記憶される。
【0150】
建築物において、一般的に上面視で中央側ほど荷重が大きく、各横架材101等に対してその長手方向の中央側においてその両端よりも大きな荷重がかかり易くなり、上記のように製造された横架材101等を用いれば、中央側にかかる荷重によって湾曲の大きさが小さくなるように変形させることができ、上記のように製造された横架材101等を用いたとしても、建築物の構造強度を維持することができる。これに対して、各横架材101等の鉛直方向の上向きの方向と加工材100の検出湾曲方向とを合わせずに製造された横架材を採用した場合には、横架材にかかる荷重によって湾曲の大きさが更に大きくなるように変形することにもなり、当該横架材に接合される各種の立柱材を安定的に支持できなくなる可能性が生じる。このために、各横架材101に対する設定湾曲区分として、湾曲区分Aのみならず、湾曲区分B1〜B4のうち鉛直方向の上向きに対応する2つの隣接する湾曲区分や湾曲区分Ca〜Cdのうち鉛直方向の上向きに対応する1つの湾曲区分を選択することによって、鉛直方向の上向きの湾曲の大きさを、上記の一定の値(湾曲区分A)を超える所定の許容範囲(例えば、湾曲区分B1、湾曲区分B2及び湾曲区分Cb)まで許容するようにしている。また、鉛直方向に直交する方向に対しても、上記の一定の値を超える所定の許容範囲(例えば、湾曲区分B1及び湾曲区分B2)まで許容するようにしているが、各横架材101等に沿って形成される壁の表面の垂直方向に所定の突出量以上で突出させないために、湾曲区分B1〜B4からの選択を2つの隣接する湾曲区分に限り、また、湾曲区分Ca〜Cdからの選択を1つの湾曲区分に限ると共に、湾曲区分Pや湾曲区分Qを選択対象としないことで、鉛直方向に対する許容範囲よりも小さい値の範囲に留めている。
【0151】
また、制御装置6の制御部は、各窓扉柱112等に対して、図6において各窓扉柱112等の近傍に図示した矢印の指す方向であって、接合対象の横架材101等に沿って形成される壁のうち開閉部材131等が形成される側の壁の向きに湾曲するものであっても許容するように、設定湾曲区分を設定する。例えば、制御装置6の制御部は、窓扉柱112について、壁の向きが図6に示すように右側の1方向で指定されるために、図7(A)に示すように、湾曲区分Aに加えて、4つの湾曲区分B1〜B4のうち右側に対応する2つの湾曲区分B1及び湾曲区分B4を設定湾曲区分の一部として選択する。更に、4つの湾曲区分Ca〜Cdのうち右側に対応する1つの湾曲区分Caを設定湾曲区分の一部として選択する。この選択によって、制御装置6の記憶部には、設定湾曲区分として、湾曲区分A、湾曲区分B1〜B4の4つの区分と、湾曲区分Caが記憶される。制御装置6の制御部は、他の窓扉柱112等に対しても同様に、湾曲区分Aに加えて、4つの湾曲区分B1〜B4のうち壁の向きに応じた2つの隣接する湾曲区分と、湾曲区分Ca〜Cdのうち壁の向きに応じた1つの湾曲区分とを選択する。この選択の制御によって、制御装置6の記憶部には、設定湾曲区分として、選択された4つの湾曲区分が記憶される。
【0152】
開閉部材131等は、その左右端が、2つの窓扉柱112,113等によって固定されると共に、その上下端が、2つの窓扉柱112,113等に亘って横架されるまぐさ材(図示せず)によって固定される。このとき、窓扉柱112,113等が開閉部材131等側に突出するように湾曲していたとしても、窓扉柱112,113の切欠溝112b,113bに、まぐさ材の両端部分を差し込むことで、まぐさ材や開閉部材131を窓扉柱112,113に安定して固定することができる。
【0153】
これに対して、窓扉柱112,113等が開閉部材131と反対側に突出するように湾曲している場合には、まぐさ材や開閉部材131を安定して固定できなくなる可能性が生じる。このため、各窓扉柱112等に対する設定湾曲区分として、湾曲区分B1〜B4のうち隣接する2つの湾曲区分や湾曲区分Ca〜Cdのうち1つの湾曲区分を選択する。この選択の制御によって、各窓扉柱112等に対して、接合対象である横架材101等に沿って形成される2つの壁の向きのうち開閉部材131等が形成される側の壁の向きの湾曲に対する大きさを、上記の一定の値(湾曲区分A)を超える所定の許容範囲(例えば、湾曲区分B1、湾曲区分B4及び湾曲区分Ca)まで許容する。
【0154】
また、窓扉柱112等に対して外側と内側に取り付けられる壁(外壁、内壁)の連続する方向(図6の矢印方向)に直交する方向(壁の表面に垂直な方向)に対しても、上記の一定の値を超える所定の許容範囲(例えば、湾曲区分B1及び湾曲区分B4)まで、湾曲の大きさを許容するようにしているが、壁の表面に垂直な方向側に窓扉柱112等の一部分が突出しないようにするために、湾曲区分Ca〜Cdからの選択を1つの湾曲区分に限ると共に、湾曲区分Pや湾曲区分Qを選択の対象としないように、制御装置6の選択の制御が行われる。これにより、湾曲の大きさの許容範囲として、壁の連続する方向に対する許容範囲よりも壁の表面に垂直な方向に対する許容範囲を小さい値の範囲に留めている。
【0155】
また、制御装置6の制御部は、各隅柱111等に対して、図6において各隅柱111等の近傍に図示した矢印の示す方向であって、接合対象の横架材101等に沿って形成される壁の向きに湾曲するものであっても許容するように、設定湾曲区分を選択する。例えば、制御装置6の制御部は、隅柱111に対して、図6に示すように、壁の向きが右向きの1方向で指定されるために、図5の左上の表に示すように、湾曲区分Aに加えて、湾曲区分B1〜B4のうち右半分に対応する湾曲区分B1及び湾曲区分B4を選択する。制御装置6の制御部は、他の隅柱118等についても同様にして、湾曲区分Aに加えて、各隅柱118等の近傍の壁の向きに応じて湾曲区分B1〜B4のうち隣接するいずれか2つの湾曲区分を選択する。この選択の制御によって、制御装置6の記憶部には、設定湾曲区分として、湾曲区分Aと、湾曲区分B1〜B4のうち隣接するいずれか2つとに対応する3つの湾曲区分が記憶される。
【0156】
各隅柱111等は、接合対象である横架材101等の端部に設けられ、隅柱111等の外側に位置する外壁は、各隅柱を中心として横架材101が連続する方向と、別の横架材102が配置される方向とに連続する。この場合、各隅柱111等に対する設定湾曲区分として、湾曲区分B1〜B4のうち、接合対象である横架材101が連続する方向に沿った隣接する2つの湾曲区分を選択する。この選択の制御によって、各隅柱111等に対して、接合対象である横架材101等に沿って連続する壁の向きに沿った大きな湾曲を含む加工材100が、上記の一定の値(湾曲区分A)を超える所定の許容範囲(例えば、湾曲区分B1、湾曲区分B4)まで利用可能となる。なお、各隅柱111は、他の立柱材と比べて建築物の構造強度に大きく寄与するため、湾曲区分P及び湾曲区分Qのみならず、湾曲区分Ca〜Cdについても選択対象としないようにすることが好ましい。
【0157】
また、制御装置6の制御部は、各区画柱114等に対しては、図6において各区画柱114等の近傍に図示した矢印の示す方向であって、接合対象である横架材101の一端部から長手方向に沿って他端部を向く一方向を湾曲の方向とする一定以上の大きな湾曲を許容するように、湾曲区分を設定する。例えば、制御装置6の制御部は、区画柱117について、図6において区画柱117の近傍に図示された矢印が示すように、壁の向きが上側及び下側の2方向で指定されるために、湾曲区分Aに加えて、4つの湾曲区分B1〜B4のうち上側に対応する2つの湾曲区分B1及び湾曲区分B2と、下側に対応する2つの湾曲区分B3及び湾曲区分B4とを選択する。更に、4つの湾曲区分Ca〜Cdのうち上側に対応する1つの湾曲区分Cbと、下側に対応する1つの湾曲区分Cdとを選択する。これによって、制御装置6の記憶部には、設定湾曲区分として、湾曲区分A、湾曲区分B1〜B4の4つの区分と、湾曲区分Cb,Cdが記憶される。制御装置6の制御部は、他の区画柱117等に対しても同様に、湾曲区分Aに加えて、4つの湾曲区分B1〜B4と、湾曲区分Ca〜Cdのうち壁の連続する向きに沿った2つの湾曲の方向に対応する湾曲区分、すなわち、湾曲区分Ca及び湾曲区分Ccの組み合わせ、又は、湾曲区分Cb及び湾曲区分Cdの組み合わせを選択する。この選択の制御によって、制御装置6の記憶部には、設定湾曲区分として、選択された7つの湾曲区分が記憶される。
【0158】
また、制御装置6の制御部は、立柱材の中で湾曲の大きさの許容範囲を一番少なく設定している柱の一例としての露出柱123について、湾曲区分Aのみを選択する。図6に示すように、露出柱123の近傍には他の構造部材と異なり矢印が図示されてなく、表面側に壁が設けられない柱として例示している。この種の柱は、建造物の使用者から壁を介さずに直接視認可能な位置に配置される可能性があり、直線状の柱となっているかが使用者によって気にされる可能性があるので、一定以下でしか湾曲していない湾曲区分Aのみを選択する。この選択の制御によって、制御装置6の記憶部には、湾曲区分Aのみが記憶される。制御装置6の制御部は、他の露出柱(図示せず)についても同様にして、湾曲区分Aのみを選択する。この選択の制御によって、制御装置6の記憶部には、設定湾曲区分として、湾曲区分Aのみが記憶される。
【0159】
次に、加工材湾曲検出装置4において検出された湾曲の方向及び大きさに応じた加工材100の分類について説明する。
【0160】
制御装置6の記憶部には、加工材100の湾曲の方向及び大きさを、加工材湾曲検出装置4で検出されたズレ量ZL及びズレ量ZRに基づいて決定するプログラムが記憶されている。具体的には、制御装置6の記憶部には、加工材100を、上記のズレ量ZL及びズレ量ZRの組み合わせによって、湾曲の方向及び大きさで指定される範囲が互いに異なる湾曲区分A、4つの湾曲区分B1〜B4、4つの湾曲区分Ca〜Cd、湾曲区分P、又は、湾曲区分Qに分類するプログラムが記憶されている。制御装置6の制御部は、当該プログラムに従って、各加工材100を、図5の右上の表に示すように、いずれか1つの湾曲区分に割り当てる。この割り当てに基づいて、制御装置6の記憶部には、割り当てられた湾曲区分が記憶される。
【0161】
ここで、各種の湾曲区分について説明する。
【0162】
湾曲区分Aは、図7(A)に示すように、湾曲の方向には依らず、湾曲の大きさ(√(ZL+ZR)に相当)によって既定され、その大きさが一定の値(例えば、0.5mm)以下とする領域であり、具体的には、ZL+ZR≦0.5を満たす領域である。制御装置6においては、この湾曲区分Aに属する加工材100については、全ての種類の構造部材を製造する素材として利用し、また、その湾曲の方向に応じた向きに回転することなく切削加工が行われる。
【0163】
各湾曲区分B1〜B4は、湾曲区分Aよりも湾曲の大きさが大きい領域であり、例えば、湾曲区分B1であれば、ZL+ZR>0.5、0<ZL≦1.0、かつ、0<ZR≦1.0によって既定される領域である。湾曲区分Aが湾曲の大きさを基準にして範囲内と範囲外とを区分したのに対して、直交する2方向のズレ量の大きさ(ズレ量ZLの絶対値及びズレ量ZRの絶対値)の両方が、第1の許容範囲(最大1.0mm)の範囲内であるか否かによって区分した領域として既定されている。制御装置6においては、湾曲区分B1〜B4のいずれかに属する加工材100を、構造部材の種類に応じて許容される湾曲の向きに応じて回転させてから加工することがあり、これにより、一定以上の大きな湾曲を含む加工材100を多様な構造部材の製造に利用することができる。
【0164】
各湾曲区分Ca〜Cdは、湾曲区分B1〜B4に対して、直交する2方向のうちいずれか1方向へのズレ量の大きさが大きい領域であって、例えば、湾曲区分Caであれば、ZL+ZR≦2.0、ZL>1.0、かつ、−1.0≦ZR≦1.0を満たす第1領域と、2.0<ZL+ZR≦3.0、−0.5≦ZR≦0.5、かつ、ZL>1.0を満たす第2領域とを含む領域によって既定される領域である。具体的には、湾曲区分Caの第1領域は、湾曲区分B1〜B4を含む領域に対して、特定の1方向(右側:ズレ量ZLの正の値側)へのズレ量の大きさ(ズレ量ZLの絶対値)を第1の許容範囲よりも大きい第2の許容範囲(最大値2.0mm)にまで拡張した領域であって、湾曲の方向が当該特定の1方向に揃うように近づくにつれて、湾曲の大きさに対する許容範囲が大きくなるように拡張した領域である。制御装置6においては、湾曲区分Ca〜Cdのいずれかに属する加工材100を、構造部材の種類に応じて許容される湾曲の向きに回転させてから加工することがあり、これにより、大きな湾曲を含む加工材100についても構造部材の製造に利用可能とすることができる。
【0165】
また、湾曲区分Ca〜Cdは、各区分において湾曲の大きさが小さな側に設定された第1領域に対して、湾曲の大きさが大きな第3の許容範囲(最大値3.0mm)に設定された第2領域を含むように既定されている。例えば、湾曲区分Caは、側面100L,100Rのそれぞれに垂直なズレ量の大きさのうち、湾曲が大きな特定の1方向(図7(A)の右側:ズレ量ZLの正の値側)へのズレ量の大きさ(ズレ量ZLの絶対値)が、小さな場合と大きな場合とによって、その特定の1方向と直交する別の方向(図7(A)の鉛直方向側であり、側面に垂直なズレ量が小さな方向側)において許容されるズレ量ZRの絶対値が異なっている。すなわち、湾曲の方向が特定の1方向に向かって大きくなった場合に、側面に垂直なズレ量が小さな方向側における湾曲の大きさ(ズレ量の絶対値)に対する許容範囲が、小さく設定されているのである。これにより、特定の1方向(一側面)に対して大きな湾曲を含む加工材100であっても、その大きな湾曲によって構造部材として利用した場合における不都合を少なく抑えることができ、より大きな湾曲を含む加工材100についても構造部材の製造に利用可能とすることができる。
【0166】
湾曲区分Cbについては、上記の特定の1方向を上側(ズレ量ZRの正の値側)とした区分であり、湾曲区分Ccについては、上記の特定の1方向を左側(ズレ量ZLの負の値側)とし、湾曲区分Cdについては、上記の特定の1方向を下側(ズレ量ZRの負の値側)とした区分である。
【0167】
湾曲区分Qは、湾曲の大きさによって既定され、その大きさが第3の許容範囲(最大3.0mm)より大きい領域、具体的には、ZL+ZR>3.0を満たす領域である。湾曲区分Qに属する加工材100は、制御装置6において、長材である構造部材を製造する素材として利用せず、例えば、複数本の構造部材(短材)を製造する素材として利用する。
【0168】
湾曲区分Pは、第3の許容範囲(最大3.0mm)より小さい領域であるが、湾曲区分A、湾曲区分B1〜B4及び湾曲区分Ca〜Cdのいずれにも含まれない領域である。湾曲区分Pに属する加工材100は、制御装置6において、長材である構造部材を製造する素材として利用せず、例えば、短材を製造する素材として利用する。
【0169】
なお、各湾曲区分A,B1〜B4,Ca〜Cdの境界を決定する関係式における数値は、上記の一例に限らず、適宜に設計変更可能である。この境界を決定する数値は、予め制御プログラムに固定値が記憶されてもよいし、制御装置6に対して作業者が手入力で数値を設定可能としてもよいし、又は、加工データの入力と共に、数値が入力されるようにしてもよい。
【0170】
また、湾曲区分A,湾曲区分Ca〜Cdなどの許容範囲を既定する外輪郭において円弧をなす部分は、ZL軸又はZR軸に平行な直線で既定してもよい。また、逆に、湾曲区分B1〜B4などの外輪郭において直線をなす部分についても、湾曲の大きさで既定される円又は円弧により外輪郭を既定してもよい。
【0171】
また、各湾曲区分B1〜B4において、それら全てを含む領域を上下左右に分割することで区画される構成としているが、当該領域を2つの対角線で分割することによって区画する構成であってもよい。
【0172】
また、各湾曲区分Ca〜Cdにおいて、第2領域の特定の一方向に直交する2方向のズレ量を、第1領域よりも小さく制限する構成としているが、その制限をしない構成であってもよい。
【0173】
また、各湾曲区分Ca〜Cdにおいて、特定の一方向に直交する2方向のズレ量(ズレ量ZLの絶対値又はズレ量ZRの絶対値)を、当該方向の境界を折れ線形状として、第1領域と第2領域とで段階的に変化させる構成としているが、当該方向の境界を直線又は湾曲形状として、それらを徐々に変化させる構成であってもよい。
【0174】
また、各湾曲区分Ca〜Cdが第1領域と第2領域とを含む構成に限らず、第1領域と第2領域とを異なる区分として、当該各区分を湾曲区分の割り当ての制御における割り当て対象とする構成であってもよい。
【0175】
また、湾曲区分Qに属する加工材100は、長材である構造部材を製造する素材としては利用しない構成としているが、長材である特定の構造部材を製造する素材として利用する構成であってもよい。
【0176】
また、制御装置6の記憶部には、加工材100から製造する構造部材を決定するプログラムが記憶されている。制御装置6の制御部は、当該プログラムに従って演算処理を実行し、加工材湾曲検出装置4による湾曲の方向及び大きさが検出された各加工材100から製造すべき構造部材を決定し、決定された構造部材と加工材100とを対応付ける情報(加工材番号)が記憶部に記憶される。
【0177】
具体的には、制御装置6の記憶部には、加工材100が属する検出湾曲区分と、構造部材が属する設定湾曲区分とに基づいて、加工材100から製造する構造部材を決定するプログラムが記憶されている。制御装置6の制御部は、加工材100が湾曲区分Aに属する場合には、設定湾曲区分に湾曲区分Aを含む構造部材から1つの構造部材を選択し、加工材100と、選択された構造部材との対応を示す情報を記憶部に記憶する。また、加工材100が4つの湾曲区分B1〜B4のいずれかに属する場合には、設定湾曲区分に湾曲区分B1〜B4のいずれかを含む構造部材から1つの構造部材を選択する。また、加工材100が4つの湾曲区分Ca〜Cdのいずれかに属する場合には、設定湾曲区分に湾曲区分B1〜B4のいずれかを含む構造部材から1つの構造部材を選択する。
【0178】
但し、制御装置6の制御部は、加工材100が湾曲区分P又は湾曲区分Qに属する場合には、長材として製造する横架材101等や、隅柱111等や、窓扉柱112等や、区画柱114等や、露出柱123には割り当てない。
【0179】
制御装置6の記憶部には、加工材100の設定湾曲方向と、加工材100の検出湾曲方向とを合わせるためのプログラムが記憶されている。具体的には、加工材100が属する検出湾曲区分と、構造部材が属する設定湾曲区分とに基づいて、検出湾曲区分を設定湾曲区分に含まれるいずれか1つの湾曲区分に合わせるために必要な回転回数(回転量)を決定するプログラムが記憶されている。例えば、制御装置6の制御部は、図7(B)に示すように、加工材湾曲検出装置4の湾曲測定の結果によって、検出湾曲区分が湾曲区分Cbであると判定された加工材100を、設定湾曲区分が湾曲区分Cbを含まず、湾曲区分Caを含む構造部材に適用する場合、当該プログラムに従って、湾曲区分Cbを湾曲区分Caに合わせるために、加工材100を90度の回転を3回行うことを決定する。この決定に基づいて、制御装置6の記憶部には、当該決定された回転数に対応した情報が記憶され、木材加工装置2によって切削加工が行われる前に、その回転数に対応した回数分、制御装置6が加工材回転装置5を制御して加工材100を回転する。
【0180】
なお、制御装置6の記憶部は、加工材100の設定湾曲方向と、加工材100の検出湾曲方向とを合わせるためのプログラムとして、加工材100の検出湾曲区分と構造部材の設定湾曲区分との比較によって構造部材を選択すると共に回転数(回転量)を決定するプログラムを記憶する場合に限らず、図7(B)に示すように、加工材100の湾曲の方向及び大きさで指定される検出点PKを、所定の回転、例えば、90度を単位とする1又は複数の回転で、設定湾曲区分で指定される領域内に移動させられるか否かによって、構造部材を決定すると共に回転数を決定するプログラムを記憶していてもよい。
【0181】
ここで、制御装置6は、移動部14を制御することによって、加工材湾曲検出装置4により湾曲測定が実行された加工材100が待機部12又は退避部13へと搬送する制御を行う。この搬送する制御を実行する場合に、制御装置6は、図6の左下の表に示すように、搬送された加工材100から製造する構造部材を決定(構造部材番号と加工材番号との対応付け)し、加工部21(図1参照)による加工に先立ち加工材100を回転させる回転数を決定する。
【0182】
この場合において、加工材湾曲検出装置4により湾曲測定が実行された加工材100を特定し、その湾曲測定の結果に対応した回転数で回転の制御が制御装置6によって行われるようにするために、加工材100に個別の情報(加工材個別情報)を記憶(記録)させる構成とし、その個別の情報と、湾曲測定の結果とを対応づけて、制御装置6の制御部に記憶することが好ましい。この方法としては、例えば、加工材に個別のICチップを取り付けて管理してもよいし、加工材湾曲検出装置4により湾曲測定が実行される前、又は、実行後等において、加工材100にバーコードやQRコード(登録商標)を印字し、その印字結果を読み取ることで、加工材100と湾曲測定の結果とを対応づけて制御装置6で記憶し、湾曲測定の結果に対応した加工材100を必要に応じて回転させて加工を行うことは好ましい。
【0183】
退避部13(図1参照)には、加工材湾曲検出装置4により検出された湾曲の方向及び大きさに基づいて、湾曲区分P又は湾曲区分Qに属する加工材100c等が搬送される。この退避部13に搬送された加工材100cに対する短材の加工は、待機部12に搬送された加工材100bに対する長材の加工の後に実行してもよいし、長材の加工と短材の加工とが混在するようにしてもよい。また、異なる湾曲区分に属する加工材100bを混在させて一列に配置する場合に限らず、搬送部22側とその反対側との間で複数の区画を決めて、湾曲区分に応じて区画を異ならせるように配置する構成を採用してもよい。また、加工材100は、一列に配置する構成に限らず、多段に積層させて配置してもよい。また、退避部13を第2の待機部として利用し、湾曲区分に応じて配置場所を待機部12及び第2の待機部から選択する構成としてもよい。
【0184】
以上説明したように、プレカット加工装置1によれば、配置情報に基づいて設定される湾曲の方向と加工材湾曲検出装置4によって検出された湾曲の方向とを合わせるようにして、加工材100から構造部材を製造することができる。このため、一定以上の大きな湾曲を含む加工材100については、配置情報に対応して許容される1以上の湾曲の方向に大きな湾曲の方向が向くよう湾曲の方向を合わせて構造部材を製造することができる。よって、建築物を組み立てるための多数の構造部材の中で、一定以上の大きな湾曲を含む加工材100を利用可能な構造部材の対象を増やすことができる。従って、一定以上の大きな湾曲を含む加工材100であっても、不良品として使用不能と判断したり、短く切断して使用するといった状況を少なくして、多数の構造部材を効率良く製造可能とすることができる。
【0185】
次に、供給部11へ供給された多数の加工材100の積層に使用される桟材200の好適な移動方法について説明する。図8は、吸着部14bの動作による桟材200の移動方法についての説明図であり、図8(A)は、桟材除去部51が一体化された吸着部14bの斜視図であり、図8(B)は、加工材100の移動中における吸着部14bを示した正面図であり、図8(C)は、桟材200の移動中における吸着部14bを示した正面図である。なお、図8(A)から図8(C)においては、移動部14の一部であって多関節ロボット14aの可動部(アーム)の先端部分より先側のみを示し、また、図8(A)においては、状態切替機構53を簡略化して図示している。
【0186】
桟材200は、加工材100を桟積み状態とする際に、上下に重なる加工材100の間に配置され、この桟材200の除去方法については、作業者の手操作によることなく、自動化することが好ましい。しかしながら、桟材200の除去のために専用の装置を設けることはプレカット加工装置1全体としてのコストアップとなってしまうため、他の機能を発揮する装置を利用して、又は、その装置に一部の構成を付加して、桟材200の除去を低コストで自動化可能とすることが好ましい。
【0187】
プレカット加工装置1においては、吸着部14bの移動機構としての多関節ロボット14a(図1参照)及びその動作を制御する制御装置6(図1参照)の動作制御を利用して桟材200を移動可能に構成されている。具体的には、略直方体形状に形成された吸着部14bの長手方向の一端側に、図8(A)に示すように、上下方向に移動動作が可能な桟材除去部51が取り付けられている。
【0188】
具体的には、吸着部14bの長手方向に交差する両側面には、2つの回動部材52が吸着部14bに対して回動可能に取り付けられ、その回動部材52の一端側に桟材除去部51が一体的に取り付けられている。この回動部材52の回動によって、図8(B)に示すように、桟材除去部51は、上側に位置して加工材100を移動可能な加工材移動状態(図8(B)の実線の状態)と、下側に位置して桟材200を移動可能な桟材移動状態(図8(B)の一点鎖線の状態)とに切り替わり可能となっている。この加工材移動状態と桟材移動状態との切り替えは、吸着部14bの上側に取り付けられた状態切替機構53によって制御され、この状態の切り替えの制御が制御装置6によって行われる。状態切替機構53は、例えば、回動部材52の端部に接触して回動部材52に回動力を伝達する動作体54と、その動作体54に接続されて動作体54を上下に移動させる空圧シリンダ55とによって構成されている。
【0189】
桟材除去部51は、吸着部14bの長手方向に沿って厚みを有する横長の薄板状に形成され、その下端部分には、細長く形成されて変形可能な多数の繊維が植え付けられた刷毛(ブラシ)状の桟材接触部56が設けられている。図8(C)に示すように、加工材投入装置3の供給部11の上に桟積み状態の加工材100が供給された状態で、最上段に桟材200が露出された状況において、桟材除去部51(桟材接触部56)を、桟材200の下側に位置する加工材100の上面に接触させながら桟材200を押し出す方向側(図8(C)の矢印方向)に水平移動すると、桟材除去部51が加工材100の長手方向(図8(C)の左右方向)に沿って移動し、この移動動作によって桟材200が桟材除去部51に押されて加工材100の上から除去される。その水平移動を含む桟材除去部51の動作制御は、制御装置6による吸着部14bの移動制御を利用することができる。
【0190】
また、吸着部14bには、桟積み状態の加工材100の位置を検出可能な非接触式のセンサSKが設けられ、そのセンサSKの検出結果を利用して桟材200が露出された状況を検出することができる。例えば、桟積み状態の加工材100について、1段分の加工材100が除去された場合に、残りの加工材100の上面の高さ及び位置を非接触式のセンサSKによって上方側から測定し、桟材200の厚み分だけ、上下の高さ位置が変動することを検出して桟材200が露出された状況を検出することができる。また、桟積み状態の加工材100に対して1段分の加工材100が移送された状況をセンサSKによって、その1段分の加工材100が移動される毎に、桟材200の有無にかかわらず、桟材除去部51を、桟積み状態の加工材100の最上段に沿って移動し、桟材200が露出された状況である場合に桟材200を除去するように構成することもできる。
【0191】
なお、吸着によって加工材100を移動する場合に限らず、加工材100を把持するなどの別の方式によって加工材100を移動する構成であってもよく、この場合であっても、加工材100に接触する接触部分に桟材除去部51を一体的に設けることが好ましい。
【0192】
また、必ずしも吸着部14bに対して桟材除去部51を別に設ける必要はなく、吸着部14bの吸着力によって物体を持ち上げる機能を利用し、桟材200を吸着して除去してもよく、この場合においても、吸着部14bの移動機構と、制御装置6による吸着部14bの移動及び吸着非吸着の状態切替の制御を利用することができるので、低コストで桟材200を除去可能とすることができる。
【0193】
また、桟材200を吸着して移動する構成とした場合には、桟材200を吸着して除去する場合に限らず、加工材100を桟積み状態とする過程において加工材100を1段分並べた後において桟材200を吸着して並べるように桟材200を移動して加工材100を桟積み状態とする機能として利用してもよく、又は、加工材100を加工して製造された構造部材を桟積み状態とする場合に吸着部14bの吸着力を利用して、複数本が横並びとなった構造部材の上に桟材200を載せるように構成してもよい。
【0194】
桟材200を吸着して移動する構成とした場合には、複数本の桟材200を吸着部14bの長手方向に交差する向きで、その長手方向に隙間を空けて複数並ぶようにして吸着させ、桟積み状態の位置から、桟材200を除去してまとめる箇所まで、1回の移動で複数本の桟材200を搬送するようにすることが好ましい。また、桟材200がまとめて保管された箇所から、桟積み状態とする過程において複数本の加工材100の上に桟材200を移動する場合においても、複数本の桟材200をまとめて搬送することが好ましい。
【0195】
なお、本発明は、上記実施形態に限られることはなく、例えば、以下に記載するように変形して実施してもよく、この場合に、以下に記載する各構成を上記実施形態に対して適用してもよく、以下に記載する複数の構成を組み合わせて上記実施形態に対して適用してもよい。
【0196】
上記実施形態においては、プレカット加工装置1および加工材湾曲検出装置4を横架材や柱材の加工に利用する場合について例示したが、羽柄材などの他の構造部材を製造する場合の加工材の湾曲の状況に応じた加工を行う場合に用いてもよい。
【0197】
また、上記実施形態においては、加工材湾曲検出装置4によって木材の湾曲の状況を検出する場合について例示したが、金属材や樹脂材など、他の加工材についての湾曲の状況を検出する場合に用いてもよい。
【0198】
また、上記実施形態におけるプレカット加工装置1による湾曲の状況に応じた加工を行うための湾曲測定は、上記した加工材湾曲検出装置4による湾曲測定に限らず、レーザ光を利用した面形状を測定して湾曲の状況を測定するなどの他の方法による湾曲測定を用いてもよい。
【0199】
また、上記実施形態においては、プレカット加工装置1が備える木材加工装置2に搬入される加工材100に対して湾曲測定を行い、湾曲測定の結果に応じた回転を行って切削加工が行われる場合について説明したが、プレカット加工に限らず、加工材に対して切削加工が行われる別の加工装置に搬入される加工材について、加工材湾曲検出装置4を利用してもよい。また、加工材投入装置3と加工材湾曲検出装置4と加工材回転装置5とを組み合わせて加工材移動装置を構成すると共に、この加工材移動装置を制御する制御装置及び制御プログラム(加工材湾曲検出プログラム)を上記実施形態と同様に構成し、この加工材移動装置によって加工材の湾曲測定を行い、湾曲測定の結果に応じた回転を行って湾曲の状況に応じた切削加工が行われるように加工材を移動可能に構成してもよく、この加工材移動装置を、木材以外の他の材料における加工材を移動する装置として利用してもよい。
【0200】
また、プレカット加工装置1において、設定湾曲方向と、検出湾曲方向とを合わせるようにして、制御装置6の記憶部に記憶された加工データに対応した加工制御を行う構成としては、上記のような加工材100の向きを変更することによってそれらの方向を合わせる構成に限らない。例えば、加工部21における加工方向を制御する、具体的には、加工部21(図1参照)における多関節ロボット等による加工の切削方向を変化させることによって、それらの方向を合わせる構成であってもよい。また、予定された加工順序で構造部材を製造するものの、待機部12(図1参照)に載置された複数の加工材から、検出湾曲方向が次に製造されることが予定された構造部材に対する設定湾曲方向と合った加工材を選択することによって、それらの方向を合わせる構成であってもよい。また、加工材を湾曲の方向や大きさが検出された順序で加工して構造部材を製造するものの、製造が予定された複数の構造部材から、設定湾曲方向が次の加工対象である加工材に対する検出湾曲方向に合った構造部材を選択することによって、それらの方向を合わせる構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0201】
以上説明したように、この発明は、加工材移動装置、加工材移動装置の制御装置、及び、加工材移動プログラムに適している。
【符号の説明】
【0202】
1:プレカット加工装置
2:木材加工装置(加工装置)
3:加工材投入装置(加工材移動手段の一部、加工材移動装置の一部)
4:加工材湾曲検出装置(加工材移動装置の一部)
5:加工材回転装置(加工材移動手段の一部、加工材移動装置の一部)
6:制御装置
30a:第1支持部
30b:第2支持部
31L:左下側支持部(第1左下側支持部、第2左下側支持部)
31R:右下側支持部(第1右下側支持部、第2右下側支持部)
34a,34b:駆動機構(第1支持部動作手段、第2支持部動作手段)
41L,41R:レーザ変位計
S1,S2a,S2b,S3a,S3b,S4a,S4b:位置検出装置(表面位置検出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8