(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加飾工程では、前記ホイール意匠面の外縁に沿って描画される輪郭線と、前記ホイール意匠面において前記外縁を除く内側部分に描画される面状塗り部とにより、前記ホイール意匠面の全面に前記加飾層を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ホイールの加飾方法。
前記加飾層は、前記ホイール意匠面の外縁に沿って描画される輪郭線と、前記ホイール意匠面において前記外縁を除く内側部分に描画される面状塗り部と、を有することを特徴とする請求項4又は5記載の車両用ホイールの加飾装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る車両用ホイールAの加飾方法は、
図1〜
図7に示すように、車輌(図示しない)に装着した状態でホイール本体A1の表側に配置される三次元形状のホイール意匠面Dに対し、描画,模様,記号,文字などの加飾層dを形成するための塗装方法である。
ホイール本体A1は、例えばアルミニウム合金などの軽合金やそれに類似する材料で鍛造・スピニングなどにより、ハブ部1とディスク部2とリム部3が成形される。ハブ部1は、ホイール本体A1において車軸(図示しない)が装着されるハブ穴1aを有する中央の円筒部位である。ディスク部2は、ホイール本体A1においてハブ部1の周縁に設けられる環状部位である。リム部3は、ホイール本体A1においてディスク部2の周縁に設けられる外周の環状部位である。
ホイール本体A1の種類には、ハブ部1とディスク部2が一体構造のものや、ディスク部2とリム部3が分割構造のものなどがある。
ホイール本体A1において三次元形状のホイール意匠面Dは、ホイール本体A1を車輌に装着した状態で、外側から見えるハブ部1からディスク部2を介してリム部3に亘り連なるように形成される。三次元形状のホイール意匠面Dには、ホイール本体A1の表側中心部分となるディスク部2の一部又は全部やハブ部1がリム部3よりも凹んだデザイン(コンケイブ)が含まれる。
三次元形状のホイール意匠面Dにおいて加飾層dは、ハブ部1,ディスク部2,リム部3の全てに亘るように形成される場合や、ハブ部1,ディスク部2,リム部3のうち一部のみに形成される場合もある。
【0008】
ディスク部2の形状には、スポークタイプやフィンタイプなどがある。スポークタイプやフィンタイプなどのほとんどは、ハブ穴1aを中心としたホイール本体A1の周方向へ回転対称な形状に形成される。スポークタイプの場合には5〜9回(回転)対称の形状が多く、フィンタイプの場合には、5〜10回(回転)対称の形状が多い。
ディスク部2の具体例として
図1〜
図3や
図4〜
図7に示される場合には、5回(回転)対称のスポークタイプである。
またディスク部2の他の例として図示しないが、4回未満の(回転)対称や6回以上の(回転)対称のスポークタイプ、又はフィンタイプなどを用いることも可能である。
つまり、三次元形状のホイール意匠面Dは、ディスク部2のタイプが異なっても図示例のようにディスク部2がホイール本体A1の周方向へ回転対称な形状であれば、ホイール意匠面Dを周方向へ回転対称な単一形状の部位に分割して、これら複数の分割部位D1を個別に加飾することが可能になる。このようにホイール意匠面Dの回転対称な複数の分割部位D1に対して部分的な加飾を順次行い、最終的には複数の分割部位D1のすべてに亘り加飾を繰り返すことで、連続的な加飾層dが完成する。
【0009】
さらにホイール本体A1の全面には、前処理として防食性を高めるなどの目的で、アルカリ脱脂やノンクロム処理などの化成処理が施される。化成被膜層(図示しない)を形成したホイール本体A1の水洗い及び乾燥後に、防食やレベリングの目的でプライマー塗料を塗装してプライマー層(図示しない)が形成される。また必要に応じて化成処理の前にバレル研磨などのポリッシュ仕上げなどを行う場合もある。
このようなホイール本体A1の全面に対する前処理が行われた後に、多種類のホイール意匠面Dに対応した加飾塗装を行い、ホイール本体A1の全面に対する後処理が行われる。
その一例としては、化成被膜及びプライマー層の上に、ベース色の有色塗料を塗装することで有色のベース色層(図示しない)が形成され、その上には後述する加飾層dが形成される。加飾層dの上には、後処理としてトップクリア塗装やカラークリア塗装などでトップコート層(図示しない)が形成される。
その他の例としては、ポリッシュ仕上げの後に化成被膜及びプライマー層が形成され、プライマー層の上に鏡面ベースのクリア塗膜やカラークリア塗膜などで中間層(図示しない)が形成され、その上には後述する加飾層dが形成される。加飾層dの上には、後処理としてトップクリア塗装やカラークリア塗装などでトップコート層(図示しない)が形成される。
またそれ以外の例として、ポリッシュ仕上げ,化成被膜及びプライマー層の上に後述する加飾層dが直接的に形成され、加飾層dの上には、後処理としてトップクリア塗装やカラークリア塗装などでトップコート層を形成するなどの変更も可能である。
後述する加飾層dの具体例としては、所望の描画や図柄、模様、記号、ロゴマーク、文字などの加飾で表現可能な様々なタイプが挙げられ、加飾層dの色としては単色に限らず、複数色や多色も可能である。
【0010】
本発明の実施形態に係る車両用ホイールAの加飾装置Bは、ホイール本体A1のホイール意匠面Dと対向して設けられる塗料の吐出ノズル10と、ホイール本体A1を着脱自在に保持するための保持部材20と、保持部材20に保持されたホイール本体A1又は吐出ノズル10のいずれか一方若しくはホイール本体A1及び吐出ノズル10の両方を相対的に移動させるための相対移動機構と、を主要な構成要素として備えている。
相対移動機構は、保持部材20に保持されたホイール本体A1に対して吐出ノズル10を相対的に移動させるためのノズル駆動部30と、吐出ノズル10に対して保持部材20を相対的に移動させるホイール駆動部41と、を有する。ノズル駆動部30又はホイール駆動部41のいずれか一方、若しくはノズル駆動部30及びホイール駆動部41の両方を作動させることで、吐出ノズル10やホイール本体A1が相対的に移動する。
さらに、保持部材20をホイール本体A1の周方向へ回転移動させる回転用駆動部42と、吐出ノズル10,相対移動機構(ノズル駆動部30やホイール駆動部41),回転用駆動部42を作動制御するための制御部50と、を備えている。
【0011】
また、相対移動機構(ノズル駆動部30やホイール駆動部41)による吐出ノズル10とホイール本体A1の相対的な移動方向は、少なくともホイール意匠面Dに沿った交差する二方向と、ホイール意匠面Dに沿った二方向と交差する方向である。この二方向とは、ホイール意匠面Dと略平行な二次元空間(二次元平面)において、ある一点で交わる二つの方向である。この二方向のうち第一方向としては、ホイール本体A1の中心を通る径方向、ホイール本体A1の中心を通らない径方向と平行な直線方向などが含まれる。
さらに、相対移動機構(ノズル駆動部30やホイール駆動部41)による吐出ノズル10とホイール本体A1の相対的な移動方向には、ホイール意匠面Dに沿った二方向の他に、この二方向と交差するホイール本体A1の軸方向など、吐出ノズル10とホイール意匠面Dが接近及び離隔する方向を含めた三次元方向や、四次元方向以上も含まれる。
なお、保持部材20に対してホイール本体A1は、
図1〜
図3や
図4〜
図7に示されるように、通常、ホイール意匠面Dのある表側が上向きに配置される。
ここで、
図1(a)(b)などに示されるように、ホイール本体A1が水平に配置された状態でホイール本体A1の軸方向を以下「Z方向」という。Z方向と交差又は直交する二方向を以下「XY方向」という。このため、以下の説明や図示例の場合では、ホイール意匠面Dに沿った交差する二方向が「XY方向」となり、二方向と交差又は直交する方向がZ方向となる。
【0012】
吐出ノズル10は、塗料の供給源(図示しない)と連通する塗装ヘッドであり、その先端には、ホイール意匠面Dに向け開口して塗料を吐出する吐出口11が設けられる。
吐出ノズル10の吐出口11は、後述する保持部材20に保持されたホイール本体A1に対して、少なくともホイール本体A1のホイール意匠面Dに沿った交差する二方向(XY方向)へ移動可能に支持されている。その他に吐出口11を、ホイール意匠面Dに沿った二方向(XY方向)と交差する方向(Z方向)などにも移動可能に支持することが可能である。
さらに吐出ノズル10は、供給源から塗料を吐出口11に向けて供給する供給用駆動部(図示しない)を有する。
供給用駆動部は、塗料の供給源と吐出ノズル10を連通させる管路に設けられ、塗料の吐出開始及び停止タイミングや吐出量などを設定可能に構成して、後述する制御部50でコントロールされる。
吐出ノズル10となる塗装ヘッドの具体例としては、塗料となるインクを微滴化し、ホイール意匠面Dへ向け直接に吹き付けるインクジェットヘッドを用いることが好ましい。
詳しく説明すると、インクジェットヘッドの中でも、電気的に変形可能なピエゾ素子を利用した機械的加圧力でインクを吐出させるピエゾ方式で、且つインクジェットヘッドが直交する二方向へ平面的に移動して加飾するマルチパス方式を用いることが好ましい。この場合には、吐出ノズル10の供給用駆動部がピエゾ素子に相当する。また吐出口11となるインクジェットヘッドのノズル径は、直進的な吹き付け距離が長い約40μm以下のものを採用することが好ましい。
【0013】
保持部材20は、ホイール本体A1においてホイール意匠面Dが配置されない裏面側と対向するホイール保持面21を有し、吐出ノズル10に対してホイール保持面21が動いて任意な位置に調整可能なテーブルやステージなどと呼ばれる台などで構成される。
ホイール保持面21は、吐出ノズル10の吐出口11に対して、少なくともホイール意匠面Dに沿った二方向(XY方向)と交差する方向(Z方向)へ傾動するように構成される。ホイール保持面21の傾動方向としては、一軸方向のみに傾動可能な一軸タイプに限らず、二軸方向以上に傾動可能な多軸タイプを用いることも可能である。その他にホイール保持面21を、ホイール意匠面Dに沿った二方向(XY方向)などにも移動可能に構成することが可能である。さらにホイール保持面21は、ホイール本体A1の周方向へ回転移動するように構成される。
ホイール保持面21には、ホイール本体A1の裏面側部位又は周面側部位を仮止めするためのチャック22が設けられ、チャック22は後述する制御部50でコントロールされる。
保持部材20の一例として
図1〜
図7に示される場合には、ホイール保持面21を一軸方向のみ傾動して任意の傾斜角度に調整可能で、且つ周方向へ回動して任意の回転角度に調整可能な傾斜テーブルや傾斜ステージなどを用いている。チャック22としては、ホイール本体A1の周方向へ所定間隔毎に設けられた複数の挟持爪で裏面側のフランジ4を移動不能に挟着固定している。
また、保持部材20の他の例として
図3に示される場合には、ホイール保持面21を二軸方向に傾動して任意の傾斜角度に調整可能で、且つ周方向へ回動して任意の回転角度に調整可能な傾斜テーブルや傾斜ステージなどを用いている。
なお、その他の例として図示しないが、図示例の構造以外のテーブルやステージ又はチャック22を用いることも可能である。
【0014】
ノズル駆動部30は、吐出ノズル10の吐出口11を少なくともホイール本体A1のホイール意匠面Dに沿った交差する二方向(XY方向)へ往復動させ、所望の位置で吐出口11が停止可能な機能を有するアクチュエーターにより構成される。これに加えてノズル駆動部30は、特に三次元形状のホイール意匠面Dが、ホイール本体A1の表側中心部分となるディスク部2の一部又は全部やハブ部1がリム部3よりも凹んだデザイン(コンケイブ)である場合に、ホイール意匠面Dに沿った二方向(XY方向)と交差する方向(Z方向)へ往復動させる。
ノズル駆動部30となるアクチュエーターの具体例としては、X−Yプロッタなどのような2軸に移動可能な機器のみに限らず、XY方向に加えてZ方向を含めた3軸に移動可能な機器や、これに2つの回転傾斜軸を追加した5軸に移動可能な機器も含まれる。
ノズル駆動部30となるアクチュエーターの移動機能は、後述する制御部50でコントロールされる。
制御部50によるノズル駆動部30の作動制御で吐出ノズル10の吐出口11は、
図1(b)などに示されるように、その初期状態でホイール保持面21に保持されたホイール意匠面Dの一部とZ方向へ対向する位置で待機するように設定される。
さらに、制御部50によるノズル駆動部30の作動制御で吐出口11の移動範囲は、
図1〜
図3や
図4〜
図7に示されるように、吐出ノズル10の吐出口11を初期状態の待機位置から、ホイール意匠面Dの周方向へ回転対称な複数の分割部位D1の一つに相当する面積の二次元平面に亘ってXY方向へ移動可能に設定することが好ましい。
また、その他の制御例として図示しないが、ノズル駆動部30による吐出口11の移動範囲として、吐出ノズル10の吐出口11を初期状態の待機位置から、ホイール意匠面Dの全体に相当する面積の二次元平面に亘ってXY方向へ移動可能に設定することも可能である。
【0015】
ホイール駆動部41は、保持部材20のホイール保持面21を少なくともノズル駆動部30による二方向(XY方向)への移動方向と交差する方向(Z方向)へ傾動させるとともに、所望の角度位置でホイール保持面21が傾動停止可能な機能を有するアクチュエーターにより構成される。
ホイール駆動部41となるアクチュエーターの具体例としては、Z方向への傾動可能な機器のみに限らず、XY方向の2軸に移動可能な機器や、XY方向に加えてZ方向を含めた3軸に移動可能な機器や、これに2つの回転傾斜軸を追加した5軸に移動可能な機器も含まれる。
さらに、ホイール駆動部41となるアクチュエーターの少なくとも傾動を含む移動機能は、後述する制御部50でコントロールされる。
ホイール駆動部41により保持部材20のホイール保持面21は、
図1(a)(b)などに示されるように、その初期状態でホイール保持面21に保持したホイール本体A1のホイール意匠面Dが略水平状な角度位置で待機するように設定される。
ホイール駆動部41によるホイール保持面21の傾斜角度は、ホイール保持面21に保持されたホイール本体A1のホイール意匠面Dを、
図2(a)(b)などに示されるように、吐出口11からホイール意匠面Dまでの間隔Cが所定範囲内となる角度に傾動させるように設定される。
吐出口11からホイール意匠面Dまでの間隔Cは、ホイール意匠面Dにおいて吐出口11が最も接近した最短部位DHから吐出口11までの距離C1と、ホイール意匠面Dの最短部位DHからホイール意匠面Dに吐出口11が最も離隔した最長部位DLまでの差(高低差)C2との和になる。最短部位DHと最長部位DLの差(高低差)C2が最小となるようにホイール保持面21を傾動すれば、吐出口11からホイール意匠面Dまでの間隔Cも最小になる。
【0016】
回転用駆動部42は、保持部材20のホイール保持面21をホイール本体A1の周方向へ回転移動させるとともに、所望の角度位置でホイール保持面21が回転停止可能な機能を有するアクチュエーターにより構成される。回転用駆動部42となるアクチュエーターの回転機能は、後述する制御部50でコントロールされる。
回転用駆動部42により保持部材20のホイール保持面21は、
図1(a)(b)などに示される初期状態で、ホイール保持面21に保持されたホイール本体A1のホイール意匠面Dの一部が、吐出ノズル10の吐出口11とZ方向へ対向する位置で待機するように設定している。
回転用駆動部42によるホイール保持面21の回転角度の具体例として図示例の場合には、ホイール意匠面Dの周方向へ回転対称な複数の分割部位D1に対してノズル駆動部30による吐出口11のXY方向への移動が終了する度に、複数の分割部位D1の分割数に相当する角度(図示例では72度)ずつ間欠的に回転させるように設定する。図示例では、ホイール保持面21を72度ずつ間欠的に回転している。これにより、次の分割部位D1の一部が吐出口11とZ方向へ対向するように配置される。
また、その他の回転用駆動部42によるホイール保持面21の回転角度としては、ノズル駆動部30による吐出口11のXY方向への移動と連動して、間欠的又は連続的に回転させるように設定することも可能である。
【0017】
次に、吐出ノズル10によるホイール意匠面Dの塗装方法の一例(第一実施形態)について説明する。
第一実施形態では、
図1(a)(b)〜
図2(a)(b)に示されように、ホイール意匠面Dの全体に亘って面状に描画することにより、略均一な加飾層dを形成している。
詳しく説明すると、マルチパス方式のインクジェットヘッドなどの塗装ヘッドを、ホイール意匠面Dの一端から他端に向けてXY方向へ相対的に移動しながら、吐出口11より塗料をホイール意匠面Dの全体に亘って一様に吐出する(同量の吹き付ける)。これにより、ホイール意匠面Dの全体に加飾層dが略均一な面状に描画される。
図示例の場合には、加飾層dに該当する箇所を粗いドット状(水玉模様)に描画することで、加飾されない箇所と識別可能にしているが、これに限定されず、
図6(a)及び
図7(a)に示される面状塗り部d2と同様な密なドット状の描画に変更することや、ドット同士が連続した塗り潰しに変更することも可能である。
さらに図示例では、ホイール意匠面Dとして複数の分割部位D1毎に加飾層dをそれぞれ略均一な面状に描画しており、複数の分割部位D1に描画した部分的な加飾同士が連なった加飾層dを形成している。
また、その他の例として
図4(a)(b)〜
図7(a)(b)に示されるように複数の分割部位D1に描画した部分的な加飾が分離された加飾層dに変更することも可能である。
【0018】
この第一実施形態では、吐出ノズル10としてマルチパス方式のインクジェットヘッドを用い、吐出口11のノズル径や塗料となるインクの粘度などの変化要因を考慮して吐出実験を行った。
吐出実験では、
図2(a)(b)に示されるように、ホイール駆動部41により保持部材20のホイール保持面21を一軸方向へ傾動させて、吐出口11がホイール意匠面Dに最も接近した最短部位DHと、吐出口11がホイール意匠面Dに最も離隔した最長部位DLとの差(高低差)C2が約70mm以下、好ましくは最短部位DHと最長部位DLの差(高低差)C2が約30mm以下となるように、ホイール保持面21の傾斜角度を設定した。これにより、吐出口11からホイール意匠面Dまでの間隔Cが所定範囲内になった。
さらに加えて、
図3(a)に示されるように、ホイール駆動部41により保持部材20のホイール保持面21を一軸方向へ傾動しても、ホイール意匠面D(分割部位D1)の一部に段差C2′が、ホイール保持面21の傾斜方向とは異なる方向へ生じることがある。
この場合には、
図3(b)に示されるように、ホイール駆動部41により保持部材20のホイール保持面21を一軸方向の傾動に加えて二軸方向へも傾動して、ホイール意匠面D(分割部位D1)の一部に生じた段差C2′が最小となるように再調整した。
またその他の再調整方法として図示しないが、ホイール駆動部41により保持部材20のホイール保持面21を3軸以上の方向へそれぞれ移動することも可能ある。
このような吐出実験の結果は、最短部位DHから最長部位DLまでの差(高低差)C2を約70mm以下とした時に、加飾層dの外縁(エッジ)にボケなどの不鮮明な現象が発生せず、特に最短部位DHと最長部位DLの差(高低差)C2を約30mm以下とした時には、加飾層dの外縁(エッジ)を含めた加飾層dの全体に亘って、ボケなどの不鮮明な現象の発生を確実に防止できて加飾性能に優れることが分かった。
これに対して、最短部位DHと最長部位DLの差(高低差)C2が約70mmを超えると、加飾層dの一部に吐出ムラのおそれがあった。吐出口11から塗料の吐出開始点では問題がなくても、差(高低差)C2が約70mmを超える吐出終点では、吐出ムラが生じて、加飾層dの外縁(エッジ)にボケなどの不鮮明な現象を発生することがあった。
【0019】
そこで、吐出ノズル10によるホイール意匠面Dの描画方法の他の例(第二実施形態)を説明する。
第二実施形態では、
図4(a)(b)〜
図7(a)(b)に示されるように、ホイール意匠面Dを外縁(エッジ)部位と、外縁部位で囲まれた内側部位とに分けてそれぞれ部分的に描画することにより、略均一な加飾層dを形成している。つまり、第二実施形態の加飾層dは、ホイール意匠面Dの外縁に沿って描画される輪郭線d1と、ホイール意匠面Dにおいて外縁を除く内側部分に描画される面状塗り部d2と、を有している。輪郭線d1及び面状塗り部d2の描画順序は、輪郭線d1の描画後に輪郭線d1で囲まれた内側部分に面状塗り部d2を描画するか、又は面状塗り部d2の描画後に面状塗り部d2の外側部分を囲むように輪郭線d1が描画される。
詳しく説明すると、輪郭線d1の描画は、吐出ノズル10としてプロッタ方式のインクジェットヘッドなどの塗装ヘッドを用い、ホイール意匠面Dの外縁に沿って塗装ヘッドをXY方向へ相対的に移動しながら、吐出口11より塗料をホイール意匠面Dの全体に亘って一様に吐出する(同量の吹き付ける)。これにより、ホイール意匠面Dの外縁に沿った略均一な輪郭線d1が形成される。
面状塗り部d2の描画は、マルチパス方式のインクジェットヘッドなどの塗装ヘッドを用い、ホイール意匠面Dの外縁を除く内側部分の一端から他端に向けて、塗装ヘッドをXY方向へ相対的に移動しながら、ホイール意匠面Dの外縁を除く内側部分の全体に亘って吐出口11より塗料を一様に吐出する(同量の吹き付ける)。これにより、ホイール意匠面Dの外縁を除いた内側部分に面状塗り部d2が略均一に形成される。
図示例の場合には、面状塗り部d2に該当する箇所を密なドット状(水玉模様)に描画することで、加飾されない箇所と識別可能にしているが、これに限定されず、
図1(a)及び
図2(a)に示される加飾層dと同様な粗いドット状の描画に変更することや、ドット同士が連続した塗り潰しに変更することも可能である。
さらに図示例では、先に輪郭線d1の描画を行い、輪郭線d1で囲まれた内側部分に面状塗り部d2の描画を行っている。また図示例では、複数の分割部位D1毎に輪郭線d1と面状塗り部d2をそれぞれ形成してしており、複数の分割部位D1に描画した部分的な輪郭線d1及び面状塗り部d2が分離された加飾層dを形成している。
なお、その他の例として
図1(a)(b)〜
図2(a)(b)に示されるように複数の分割部位D1に描画した部分的な輪郭線d1や面状塗り部d2同士が連なった加飾層dに変更することも可能である。
【0020】
制御部50は、吐出ノズル10の供給用駆動部,相対移動機構のノズル駆動部30やホイール駆動部41及び回転用駆動部42とそれぞれ電気的に接続して、数値制御(NC制御)やコンピュータ数値制御(CNC制御)などを行うためのコントローラーである。
このコントローラーがそれ以外にもホイール保持面21のチャック22などとも電気的に接続している。
制御部50となるコントローラーは、その制御回路(図示しない)に予め設定されたNCプログラムなどのプログラムに従って、予め設定されたタイミングで順次それぞれ作動制御している。
【0021】
そして、制御部50の制御回路に設定されたプログラムを、車両用ホイールAを生産するための製造方法として説明する。
本発明の実施形態に係る車両用ホイールAの加飾方法は、前述した前処理を行うための前工程と、ホイール本体A1を保持部材20に対して着脱自在に保持するセット工程と、ホイール本体A1のホイール意匠面Dに沿って吐出ノズル10を移動させながら吐出口11からの塗料で加飾層dを形成する加飾工程と、前述した後処理を行うための後工程と、を主要な工程として含んでいる。
セット工程では、
図1(a)(b)に示されるように、前処理されたホイール本体A1を保持部材20に対して、ホイール意匠面Dが吐出ノズル10と対向するようにセットされて仮止めする。
詳しく説明すると、保持部材20に向けて搬入されたホイール本体A1を、保持部材20のホイール保持面21に対して表側のホイール意匠面Dが吐出ノズル10の吐出ノズル10と対向するように所定位置で位置決めし、チャック22で移動不能に固定する。
【0022】
加飾工程では、相対移動機構のノズル駆動部30又はホイール駆動部41のいずれか一方若しくはノズル駆動部30及びホイール駆動部41の両方の作動により、吐出ノズル10又は保持部材20のいずれか一方若しくは吐出ノズル10及び保持部材20の両方を相対的に移動させている。
図2(a)(b)などに示される場合には、保持部材20の相対的な傾動でホイール意匠面Dが傾斜してから、保持部材20に保持されたホイール本体A1に対して、吐出ノズル10をホイール意匠面Dに沿った交差する二方向(XY方向)へ相対的に移動させる。これと同時に吐出ノズル10の吐出口11から塗料がホイール意匠面Dに向け吐出されて、ホイール意匠面Dに加飾層dを形成する。
詳しく説明すると、先ずホイール駆動部41などにより保持部材20のホイール保持面21を、ホイール意匠面Dに沿った交差する二方向(XY方向)への移動方向と交差する方向(Z方向)へ相対的に傾動させる。これにより、ホイール本体A1のホイール意匠面Dが吐出ノズル10に向け全体的に傾斜して、最短部位DHと最長部位DLの差(高低差)C2を所定範囲(約70mm、好ましくは約30mm)以内に変更する。
次にノズル駆動部30などで吐出ノズル10の吐出口11を、傾斜したホイール意匠面D(分割部位D1)に沿った交差する二方向(XY方向)へ相対的に移動させる。これと同時に吐出ノズル10の供給用駆動部で、吐出口11から塗料がホイール意匠面D(分割部位D1)に向け吐出されて、ホイール意匠面D(分割部位D1)に所望形状の加飾層dを形成する。
特に三次元形状のホイール意匠面Dが、ホイール本体A1の表側中心部分となるディスク部2の一部又は全部やハブ部1がリム部3よりも凹んだデザイン(コンケイブ)である場合には、ノズル駆動部30などによって、ホイール意匠面Dに沿った二方向(XY方向)と交差する方向(Z方向)へ相対的に移動させている。
【0023】
このような本発明の実施形態に係る車両用ホイールAの加飾方法及び加飾装置Bによると、
図2(a)(b)などに示されるように、吐出ノズル10や保持部材20(ホイール保持面21)の相対移動で、吐出ノズル10に対してホイール本体A1のホイール意匠面Dを、ホイール意匠面Dに沿った交差する二方向(XY方向)と交差する方向(Z方向)へ相対的に傾斜させた後に、吐出ノズル10が二方向(XY方向)へ相対的に移動する。
これにより、三次元形状のホイール意匠面Dとなるハブ部1からディスク部2を介してリム部3に亘り、吐出ノズル10の吐出口11とホイール意匠面Dとの間隔Cが所定範囲内に保持される。
これと同時に吐出口11から塗料をホイール意匠面Dに向け吐出して加飾層dがホイール意匠面Dの所定位置に形成される。
したがって、吐出ノズル10又は保持部材20(ホイール保持面21)のいずれか一方の二次元移動と、他方の傾斜のみで三次元形状のホイール意匠面Dを加飾することができる。
その結果、ホイール意匠面の全体に対してディスペンサーを3軸又は5軸に移動可能に支持してNCプログラムで3軸又は5軸の各方向へ移動制御する従来のものに比べ、吐出ノズル10の支持構造などを簡素化できるとともに、吐出ノズル10の移動制御も簡素化できる。 このため、吐出ノズル10の支持構造を含む加飾装置Bの全体的な構造の簡素化と車両用ホイールAのコスト低減化が図れる。
さらに多種類の異なるホイール意匠面Dに対しても、吐出ノズル10の移動制御が簡単で制御設定を簡素化できるとともに、ホイール意匠面Dの僅かな加飾変更があっても制御プログラムを簡単に作成できて利便性に優れる。
【0024】
特に車両用ホイールAの加飾方法は、ホイール意匠面Dが、ホイール本体A1の周方向へ回転対称な複数の分割部位D1を有し、加飾工程では、保持部材20の回転により複数の分割部位D1毎に加飾が繰り返されて、最終的にはホイール意匠面Dの全面に加飾層dを形成することが好ましい。
また車両用ホイールAの加飾装置Bは、保持部材20をホイール本体A1の周方向へ回転移動させる回転用駆動部42を備え、制御部50は、回転用駆動部42による保持部材20の回転に伴い、ホイール本体A1の周方向へ回転対称な複数の分割部位D1毎に加飾が繰り返されて、最終的には前記ホイール意匠面Dの全体に加飾層dが形成されるように制御することが好ましい。
この場合には、保持部材20の回転でホイール意匠面Dの回転対称な複数の分割部位D1毎に加飾層dが順次形成され、加飾の繰り返しで最終的にはホイール意匠面Dの全体に亘り加飾層dが連続的に形成される。
したがって、三次元形状のホイール意匠面Dに対する吐出ノズル10の移動領域を狭範囲に制限することができる。
その結果、三次元形状のホイール意匠面に対するディスペンサーの移動領域がホイール意匠面の全体で広範囲に亘る従来のものに比べ、ホイール意匠面Dに対する吐出ノズル10の支持構造をコンパクト化できて設置場所が制限されず、どこにでも設置可能になって利便性に優れるとともに、車両用ホイールAの更なるコスト低減化も図れる。
【0025】
さらに車両用ホイールAの加飾方法において加飾工程では、ホイール意匠面Dの外縁に沿って描画される輪郭線d1と、ホイール意匠面Dにおいて外縁を除く内側部分に描画される面状塗り部d2とにより、ホイール意匠面Dの全面に加飾層dを形成することが好ましい。
また車両用ホイールAの加飾装置Bにおいて加飾層dは、ホイール意匠面Dの外縁に沿って描画される輪郭線d1と、ホイール意匠面Dにおいて外縁を除く内側部分に描画される面状塗り部d2と、を有することが好ましい。
この場合には、
図4〜7に示されるように、加飾層dの境界部分全体が輪郭線d1によって明瞭に加飾される。
このため、吐出口11からホイール意匠面Dまでの間隔Cが所定範囲内で変化に伴い、面状塗り部d2に対する吐出口11からの塗料の吐出開始点と吐出終点とで多少の吐出ムラが生じても、部分的な加飾ムラが目立たない。
したがって、ホイール意匠面D(分割部位D1)の加飾層dを見切り良く描画することができる。
その結果、三次元形状のホイール意匠面Dの加飾層dが外観が優れ、商品価値の向上が図れる。
【0026】
なお、前示の実施形態では、ホイール意匠面Dにおいてホイール本体A1の周方向へ回転対称な部位を分割した複数の分割部位D1毎に加飾が繰り返される例について説明したが、これに限定されず、ホイール意匠面Dを分割せずに、吐出ノズル10の二方向(XY方向)への移動のみでホイール意匠面Dの全面に所望形状の加飾層dを形成してもよい。
さらに図示例では、複数の分割部位D1毎に輪郭線d1と面状塗り部d2を形成したが、これに限定されず、ホイール意匠面Dを分割せずに、ホイール意匠面Dの全体の外縁に沿って輪郭線d1を形成し、この輪郭線d1で囲まれた内側部分に面状塗り部d2を形成してもよい。
ホイール本体を前記ホイール意匠面が吐出ノズルと対向するように保持部材に対して着脱自在に保持するセット工程と、保持部材に保持されたホイール本体のホイール意匠面に対して吐出ノズルを、ホイール意匠面に沿った交差する二方向へ相対的に移動させながら、吐出ノズルの吐出口から塗料がホイール意匠面に向け吐出されてホイール意匠面に加飾層を形成する加飾工程と、を含み、加飾工程では、吐出ノズル又は保持部材のいずれか一方若しくは吐出ノズル及び保持部材の両方の相対的な移動により、ホイール本体を二方向への移動方向と交差する方向へ相対的に傾斜させて、吐出ノズルの吐出口を、吐出口からホイール意匠面までの間隔が所定範囲内で、且つホイール意匠面に沿って二方向へ相対的に移動させることを特徴とする車両用ホイールの加飾方法。