特許第6775132号(P6775132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775132
(24)【登録日】2020年10月8日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/36 20060101AFI20201019BHJP
   B65D 47/20 20060101ALI20201019BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   B65D47/36 100
   B65D47/20 111
   B65D1/02 111
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-52673(P2016-52673)
(22)【出願日】2016年3月16日
(65)【公開番号】特開2017-165452(P2017-165452A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】樽野 真輔
【審査官】 佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−155333(JP,A)
【文献】 特開平07−112749(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0225117(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102013106966(DE,A1)
【文献】 国際公開第2015/080015(WO,A1)
【文献】 特開2015−131676(JP,A)
【文献】 実開平02−045967(JP,U)
【文献】 実開昭62−191667(JP,U)
【文献】 特開2015−105094(JP,A)
【文献】 特表2015−515420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/36
B65D 1/02
B65D 47/20
B65D 47/24
B65D 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層容器と内袋とを有し、内袋に収容される内容物の減少に伴って前記内袋が外層容器から剥離して収縮する二重容器であって、
口部がシール部材でシールされるとともに、口部に逆止弁を有するキャップが装着されており、
前記キャップは、シール部材に向かって突出形成された突出部を有する中栓部材を有し、
前記突出部は、先端が先尖形状とされるとともに、その中途位置から中栓部材の流出側に貫通する内容物通路が形成され、
前記キャップをねじ込むことにより、前記中栓部材の突出部が前記シール部材を突き破り、開封され、
前記シール部材は、周囲が前記口部と内キャップに挟み込まれた状態で固定され、
前記内キャップは、前記突出部と対向する位置に孔部が形成され、前記キャップをねじ込んだ際に、先尖形状の突出部の周面が、前記内キャップの孔部の周縁に当接することを特徴とする二重容器。
【請求項2】
前記逆止弁は、前記突出部に形成された内容物通路の流出側の開口部を開閉することを特徴とする請求項1記載の二重容器。
【請求項3】
前記シール部材は、ポリプロピレン層、アルミニウム層、ポリプロピレン層がこの順に積層された多層膜であることを特徴とする請求項1または2記載の二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重容器に関するものであり、特に、シール部材により密閉された新規な二重容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外層容器と内袋とを有し且つ内容物の減少に伴って内袋が収縮する容器本体と、外層容器と内袋の間の中間空間と容器本体の外部空間との間の空気の出入りを調節する逆止弁とを備える二重容器(いわゆる積層剥離容器)が知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0003】
特許文献1に開示される積層剥離容器では、容器本体の口部に取り付けるキャップに弁が内蔵されている。特許文献2に開示される積層剥離容器では、外殻の胴部の内側に弁が設けられている。
【0004】
また、積層剥離容器では、内袋内の内容物が空気に触れることがないという利点を有し、そのために、内容物の注出後に、内袋内に空気が逆流しなようキャップに逆止弁を設けることも行われ、さらには、保存時の密閉性を確保するために、口部をアルミシールすることも提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
【0005】
特許文献3には、酸素非透過性で且弾性復元力を有するチューブ本体の口部を酸素非透過性のシール材で閉塞し、注出孔を有する栓筒体を口部に着脱自在に装着し、該栓筒体の注出孔をチューブ本体内の負圧で閉弁される弁体で開閉するようにすると共に、キャップを栓筒体に被嵌し、シール材を除去して口部を開封するようにしたチューブ容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−35557号公報
【特許文献2】特開平4−267727号公報
【特許文献3】特開平7−112749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献3に記載されるようなシール材による閉塞は、保存性の確保という点で有効な手段であるが、その開封を、特許文献3に記載されるような筒状の切断刃で行うと、種々の不都合が生ずるおそれがある。例えば、切断後にシール材の破片がそのまま切断刃に付着して、流路を塞いでしまうおそれがある。また、筒状の切断刃でシール材を開封した場合、密閉性を維持することが難しい。開封後にも密閉性を維持するためには、切断刃の外周面を口部の内周面に密着させる必要があるが、そのためには切断刃の成形精度を高める必要があり、コスト増に繋がる。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、保存時の気密性を維持することができ、開封時の不都合を解消することができ、開封後にも密閉性を維持することが可能な二重容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するために、本発明の二重容器は、外層容器と内袋とを有し、内袋に収容される内容物の減少に伴って前記内袋が外層容器から剥離して収縮する二重容器であって、口部がシール部材でシールされるとともに、口部に逆止弁を有するキャップが装着されており、前記キャップは、シール部材に向かって突出形成された突出部を有する中栓部材を有し、前記突出部は、先端が先尖形状とされるとともに、その中途位置から中栓部材の流出側に貫通する内容物通路が形成され、前記キャップをねじ込むことにより、前記中栓部材の突出部が前記シール部材を突き破り、開封され、前記シール部材は、周囲が前記口部と内キャップに挟み込まれた状態で固定され、前記内キャップは、前記突出部と対向する位置に孔部が形成され、前記キャップをねじ込んだ際に、先尖形状の突出部の周面が、前記内キャップの孔部の周縁に当接することを特徴とする。
【0010】
口部をシール部材でシールすることにより、保存時の密閉性が確実に確保される。また、先端が先尖形状とされ、その中途位置から中栓部材の流出側に貫通する内容物通路が形成された突出部によりシール部材を開封することで、破片の付着による流路閉塞等の障害が抑制される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保存時の気密性を維持することができ、開封時の不都合を解消することができ、開封後にも密閉性を維持することが可能な二重容器を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の二重容器の構造を示す斜視図である。
図2図1に示す二重容器の概略断面図である。
図3】外層及び内層の層構成を示す断面図である。
図4】二重容器の使用方法を示す図である。
図5】キャップ装着部の概略断面図であり、シール部材が未開封状態の図である。
図6】中栓部材に設けられた突出部の概略底面図である。
図7】キャップ装着部の概略断面図であり、シール部材が開封状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した二重容器の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の二重容器1は、いわゆる積層剥離容器であり、容器本体2を主体とするものであり、容器本体2は、内容物を収容する収容部3と、収容部3から内容物を吐出する口部4を備えている。また、図2に示すように、容器本体2は、収容部3及び口部4において、外殻である外層容器11と内袋12を備えており、内容物の減少に伴って内袋12が収縮する。
【0015】
外層容器11と内袋12は、多層パリソンとしてブロー成形に供され、一体に接合された状態で成形されるが、その使用形態としては、例えば使用前に予め外層容器11から内袋12を剥離しておき、内袋12が外層容器11に接するまで内容物を充填する。内容物を押し出すことで、円滑に内袋12が収縮する。あるいは、内袋12が外層容器11に接合された状態のままとし、内容物の排出に伴って内袋12が外層容器11から剥離して収縮するようにしてもよい。
【0016】
容器本体2の層構成についてさらに説明すると、容器本体2は、前記の通り、外層容器11と内袋12を備え、外層容器11は、復元性が高くなるように、内袋12よりも肉厚に形成されている。
【0017】
外層容器11は、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びその混合物などで構成される。外層容器11は、単層又は複数層構成であり、その最内層と最外層の少なくとも一方に滑剤を含有することが好ましい。外層容器11が単層構成の場合、その単層が最内層であり且つ最外層であるので、その層に滑剤を含有させればよい。外層容器11が2層構成の場合、容器内面側の層が最内層となり、容器外面側の層が最外層となるので、その少なくとも一方に滑剤を含有させればよい。外層容器11が3層以上で構成される場合、最も容器内面側の層が最内層であり、最も容器外面側の層が最外層となる。外層容器11は、図3に示すように、最内層11bと最外層11aの間にリプロ層11cを備えることが好ましい。リプロ層とは、容器の成形時に発生するバリをリサイクルして使用した層をいう。外層容器11が複数層構成の場合、その最内層と最外層の両方に滑剤を含有することが好ましい。
【0018】
滑剤としては、一般に滑剤として市販されているものを使用することができ、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪族アマイド系、金属石鹸系の何れであってもよく、2種以上を併用してもよい。炭化水素系滑剤としては、流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックスなどが挙げられる。脂肪酸系滑剤としては、ステアリン酸やステアリルアルコールなどが挙げられる。脂肪族アマイド系滑剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドの脂肪酸アミドや、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドのアルキレン脂肪酸アミドなどが挙げられる。金属石鹸系滑剤としては、ステアリン酸金属塩などが挙げられる。
【0019】
外層容器11の最内層は、内袋12に接触する層であり、外層容器11の最内層に滑剤を含有させることによって外層容器11と内袋12の間の剥離性を向上させることができる。一方、外層容器11の最外層は、ブロー成形の際に金型に接触する層であり、外層容器11の最外層に滑剤を含有させることによって離型性を向上させることができる。
【0020】
外層容器11の最内層と最外層の一方又は両方は、プロピレンと別のモノマーとの間のランダム共重合体で形成することができる。これによって、外殻である外層容器11の形状復元性・透明性・耐熱性を向上させることができる。
【0021】
ランダム共重合体は、プロピレン以外のモノマーの含有量が、50mol%よりも小さいものであり、5〜35mol%が好ましい。この含有量は、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30mol%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。プロピレンと共重合されるモノマーとしては、ポリプロピレンのホモポリマーに比べた場合のランダム共重合体の耐衝撃性を向上させるものであればよく、エチレンが特に好ましい。プロピレンとエチレンのランダム共重合体の場合、エチレンの含有量は、5〜30mol%が好ましく、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30mol%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ランダム共重合体の重量平均分子量は、10〜50万が好ましく、10〜30万がさらに好ましい。この重量平均分子量は、具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0022】
また、ランダム共重合体の引張弾性率は、400〜1600MPaが好ましく、1000〜1600MPaが好ましい。引張弾性率がこのような範囲の場合に、形状復元性が特に良好であるからである。引張弾性率は、具体的には例えば、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600Mpaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
なお、容器が過度に硬いと、容器の使用感が悪くなるため、ランダム共重合体に、例えば、直鎖状低密度ポリエチレンなどの柔軟材料を混合して外層容器11を構成してもよい。ただし、ランダム共重合体に対して混合する材料は、ランダム共重合体の有効な特性を大きく阻害することのなきよう、混合物全体に対して50重量%未満となるように混合することが好ましい。例えば、ランダム共重合体と直鎖状低密度ポリエチレンとを85:15の重量割合で混合した材料により外層容器11を構成することができる。
【0024】
内袋12は、容器外面側に設けられたEVOH層13aと、EVOH層12aの容器内面側に設けられた内面層12bと、EVOH層12aと内面層12bの間に設けられた接着層12cを備える。EVOH層12aを設けることで、ガスバリア性、及び外層容器11からの剥離性を向上させることができる。
【0025】
EVOH層12aは、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂からなる層であり、エチレンと酢酸ビニル共重合物の加水分解により得られる。EVOH樹脂のエチレン含有量は、例えば25〜50mol%であり、酸素バリア性の観点から32mol%以下が好ましい。エチレン含有量の下限は、特に規定されないが、エチレン含有量が少ないほどEVOH層12aの柔軟性が低下しやすいので25mol%以上が好ましい。また、EVOH層12aは、酸素吸収剤を含有することが好ましい。酸素吸収剤をEVOH層12aに含有させることにより、EVOH層12aの酸素バリア性をさらに向上させることができる。
【0026】
EVOH樹脂の融点は、外層容器11を構成するランダム共重合体の融点よりも高いことが好ましい。外気導入孔15は、加熱式の穿孔装置を用いて外層容器11に形成することが好ましいが、EVOH樹脂の融点をランダム共重合体の融点よりも高くすることによって、外層容器11に外気導入孔15を形成する際に、孔が内袋13にまで到達することを防ぐ。この観点から、(EVOHの融点)−(ランダム共重合体層の融点)の差は大きい方がよく、15℃以上であることが好ましく、30℃以上であることが特に好ましい。この融点の差は、例えば5〜50℃であり、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0027】
内面層12bは、二重容器1の内容物に接触する層であり、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びその混合物などのポリオレフィンからなり、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンからなることが好ましい。内面層12bを構成する樹脂の引張弾性率は、50〜300MPaが好ましく、70〜200MPaが好ましい。引張弾性率がこのような範囲の場合に、内面層13bが特に柔軟であるからである。引張弾性率は、具体的には例えば、具体的には例えば、50、100、150、200、250、300Mpaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
接着層12cは、EVOH層12aと内面層12bとを接着する機能を有する層であり、例えば上述したポリオレフィンにカルボキシル基を導入した酸変性ポリオレフィン(例:無水マレイン酸変性ポリエチレン)を添加したものや、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)である。接着層12cの一例は、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンと、酸変性ポリエチレンの混合物である。
【0029】
また、収容部3の肩部においては、外層容器11に凹部7aが形成され、ここに大気導入孔15が穿設されている。大気導入孔15は、外層容器11にのみ設けられた貫通孔であり、内袋12には到達していない。そして、この大気導入孔15から空気が導入されることで、外殻である外層容器11と内袋12の間に中間空間21が形成される。すなわち、中間空間21と外部空間は、この大気導入孔15によって互いに連通されることになる。
【0030】
大気導入孔15には、弁部材5が設けられており、弁部材5は、外気導入孔15に挿通され且つ外気導入孔15に対してスライド移動可能な軸部5aと、軸部5aの中間空間21側に設けられ且つ軸部5aよりも断面積が大きい蓋部5cと、軸部5aの外部空間S側に設けられ且つ弁部材5が中間空間21に入り込むことを防ぐ係止部5bを備える。
【0031】
蓋部5cは、外層容器11を圧縮した際に外気導入孔15を実質的に閉塞させるように構成され、軸部5aに近づくにつれて断面積が小さくなる形状になっている。また、係止部5bは、外層容器11が圧縮された後に復元する際に中間空間21に空気が導入可能なように構成される。外層容器11を圧縮すると、中間空間21内の圧力が外圧よりも高くなって、中間空間21内の空気が外気導入孔15から外部に漏れ出す。この圧力差と空気の流れによって蓋部5cが外気導入孔15に向かって移動し、蓋部5cが外気導入孔15を閉塞する。蓋部5cが軸部5aに近づくにつれて断面積が小さくなる形状であるので、蓋部5cが容易に外気導入孔15に嵌って外気導入孔15を閉塞する。
【0032】
この状態で外層容器11をさらに圧縮すると、中間空間21内の圧力が高まり、その結果、内袋12が圧縮されて、内袋12内の内容物が吐出される。また、外層容器11への圧縮力を解除すると、外層容器11が自身の弾性によって復元しようとする。この際、蓋部5cが外気導入孔15から離れて、外気導入孔15の閉塞が解除されて、中間空間21内に外気が導入される。また、係止部5bが外気導入孔15を塞いでしまわないように、係止部5bには外層11に当接する部位に突起5dが設けられており、突起5dが外層容器11に当接することによって、外層容器11と係止部5bの間に隙間が設けられる。なお、突起5dを設ける代わりに、係止部5bに溝を設けることによって係止部5bが外気導入孔15を閉塞させることを防いでもよい。
【0033】
次に、逆止弁5を有する二重容器1の使用時の動作を説明する。
【0034】
図4(a)〜(c)に示すように、内容物が充填された製品を傾けた状態で外層容器11の側面を握って圧縮して内容物を吐出させる。使用開始時は、内袋12と外層容器11の間に実質的に隙間がない状態であるので、外層容器11に加えた圧縮力は、そのまま内袋12の圧縮力となり、内袋12が圧縮されて内容物が吐出される。
【0035】
キャップ30は、逆止弁を内蔵しており、内袋12内の内容物を吐出させることはできるが、内袋12内に外気が逆流することはない。そのため、内容物の吐出後に外層容器11へ加えていた圧縮力を除くと、外層容器11が自身の復元力によって元の形状に戻ろうとするが、内袋12はしぼんだままで外層容器11だけが膨張することになる。そして、図4(d)に示すように、内袋12と外層容器11の間の中間空間21内が減圧状態となり、外層容器11に形成された外気導入孔15を通じて中間空間21内に外気が導入される。中間空間21が減圧状態になっている場合、弁部材5は、大気導入孔15に押し付けられないので、外気の導入が妨げられない。
【0036】
次に、図4(e)に示すように、再度、外層容器11の側面を握って圧縮した場合、弁部材5が大気導入孔15に当接して閉塞することによって、中間空間21内の圧力が高まり、外層容器11に加えた圧縮力は中間空間21を介して内袋12に伝達され、この力によって内袋12が圧縮されて内容物が吐出される。内容物の吐出後に外層容器11へ加えていた圧縮力を除くと、図4(f)に示すように、外層容器11は、外気導入孔15から中間空間21に外気を導入しながら、自身の復元力によって元の形状に復元される。
【0037】
容器本体2の構成は以上の通りであり、容器本体2においては、口部4に雄ネジ部が設けられており、雄ネジ部には、雌ネジを有するキャップ30が取り付けられる。以下、キャップ30の取り付け部の構成について詳述する。
【0038】
キャップ30は、容器本体2の口部4に取り付けられるものであり、図5に示すように、容器本体2の口部4に直接固定された内キャップ31と、この内キャップ31の外周面に設けられた雄ネジ部31aにネジ止めされるキャップ本体32と、逆止弁33、注出口を有するノズル部34、及びヒンジ等を介して前記注出口を覆う蓋部(図示は省略する)とから構成される。
【0039】
内キャップ31は、容器本体2の口部4に対してネジ止め、あるいは打栓により取り付けられており、口部4を覆う天板部31bを有しており、当該天板部31bの中央部には円形の孔31cが設けられている。この円形の孔31cの内周面は、キャップ本体32の中栓部材に設けられた突起部の周面の円錐形状に対応して、上に向かって拡径するような傾斜面とされている。
【0040】
内キャップ31の天板部31bと容器本体2の口部4の先端面の間には、シール部材40が介在されており、容器本体2の口部4は、このシール部材40でシールされた状態となっている。シール部材40は、例えば、予め内キャップ31の天板部31bの下面に貼り付けておき、内キャップ31を容器本体2の口部4に装着した状態で超音波を印加することにより、口部4に対して固定されている。勿論、これに限らず、例えば高周波シール等の手法によりシール部材40を口部4に対して固定することも可能である。
【0041】
シール部材40は、内容物が充填された二重容器1を密閉し、保存性を良好なものとするために口部4をシールするものであり、ガスバリア性や水蒸気バリア性等、外気等に対してバリア性を有する材質で形成する必要がある。したがって、シール部材40はアルミニウム等で形成することが好ましい。
【0042】
本実施形態では、シール部材40を、ポリプロピレン層、アルミニウム層、ポリプロピレン層をこの順に積層した3層構造としている。シール部材40を3層構造とすることで、シール部材40を超音波溶着等により容器本体2の口部4をシールすることが可能である。
【0043】
キャップ本体32は、内周面に雌ネジ部32aを有しており、これを内キャップ31の外周面に形成された雄ネジ部31aにネジ込むことにより固定されている。また、キャップ本体32には、内キャップ31の上方位置に流路を遮断する形で中栓部材41が形成されており、その中央部に突出部42が形成されている。
【0044】
前記突出部42は、シール部材に向かって(下方に向かって)突出形成されており、その先端が先尖形状(円錐形状)とされるとともに、その中途位置から中栓部材の流出側に貫通する内容物通路42aが形成されている。図6は、この突出部42を下方から見た平面図(したがって底面図)であり、本例の場合、先端42bから基端部の間の円錐形状の周面の2箇所に開口する形で内容物通路42aの開口部42cが形成されている。
【0045】
また、前記突出部42に形成された内容物流路42aは、中栓部材41の流出側に貫通しているが、その流出側の開口部42dには、逆止弁33のバルブ33aが当接し、開閉操作されるようになっている。
【0046】
さらに、キャップ本体32の内容物流出側には、前記逆止弁33を覆って注出口34aを有するノズル部34が取り付けられており、内容物がこの注出口34aから取り出される。なお、ノズル部34の注出口34aを覆ってヒンジキャップが取り付けられるが、ここでは図示は省略する。
【0047】
以上の構成を有するキャップ取り付け部においては、保存時には、図5に示すように、容器本体2の口部4がシール部材40によりシールされ、密閉状態が保たれているので、内容物の劣化等が最小限に抑えられる。
【0048】
一方、開封時には、キャップ本体32をネジ込み、中栓部材41の中央部に形成された突出部42をシール部材40に向かって前進させ、その先端でシール部材40を突き破ることで開封を行う。したがって、前記キャップ本体32は、保存時には、前記内キャップ31に対して突出部42の先端がシール部材40に突き当たらない位置までネジ込んでおき、開封時にさらにネジ込んで開封操作可能なようにしておく。そのために、例えば保存時には、キャップ本体32のネジ込みが前記突出部42の先端がシール部材40に突き当たらない位置で留まるように、内キャップ31の雄ネジ部31aにストッパ部材等を設けておくことが好ましい。このようにしておけば、保存時にキャップ本体32がネジ込まれることがなく、不用意に開封されることがなくなる。使用時には、前記ストッパ部材を取り除き、キャップ本体32をネジ込むようにすればよい。
【0049】
図7は、シール部材40の開封状態を示す図である。開封時には、シール部材40は中栓部材41に設けられた突出部42に先端部により突き破られ、開封される。この時、突出部42の先端が先尖形状(円錐形状)であり、また、内容物流路42aの開口部42cが突出部42の外周面の中途部に位置しているため、シール部材40の切断片が不用意に前記開口部42cを塞ぐことがなく、流路が確実に確保される。
【0050】
また、前記突出部42でシール部材40を開封した状態において、突出部42の円錐形状の外周面が内キャップ31の孔31cの内周面に当接した状態となる。突出部42の基端部の径を内キャップ31の孔31cの最大径よりも大きく設定しておけば、突出部42の径や内キャップ31の孔31cの径の成形精度が不十分であっても、確実に突出部42の円錐形状の外周面を内キャップ31の孔31cの開口縁に当接させることができ、この部分の密閉性を維持することが可能である。二重容器においては、容器内への空気の逆流はできる限り避けることが要求されることが多く、開封後にも開封部分以外の箇所での密閉性が確保されることは、きわめて重要である。
【0051】
シール部材40が開封された状態では、容器本体2の口部4において、突出部42に設けられた内容物流路42aとノズル部34の注出口34aを介して外部と連通可能な状態となり、内容物の注出が可能になる。例えば、外層容器11を圧縮すると、容器本体2の内圧が上がり、内容物流路42aの開口部42cに当接していた逆止弁33のバルブ33aが、開口部42cから離間し、内容物流路42aの開口部42cが開放される。その結果、内容物は、シール40を突き破った突出部42の内容物通路42aを通り、ノズル部34の注出口34aから外部へと注出される。外層容器11の圧縮を開放すると、容器本体2の内圧が下がり、内容物流路42aの開口部42cに逆止弁33のバルブ33aが当接し、密閉状態となる。
【0052】
以上、本発明を適用した実施形態について説明してきたが、本発明がこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1 二重容器
2 容器本体
3 収容部
4 口部
5 弁部材
11 外層容器
12 内袋
15 外気導入孔
30 キャップ
31 内キャップ
31c 孔
32 キャップ本体
33 逆止弁
33a バルブ
40 シール部材
41 中栓部材
42 突出部
42a 内容物流路
43 ノズル部
43a 注出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7