特許第6775135号(P6775135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775135
(24)【登録日】2020年10月8日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】ドライバ状態検出装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/107 20060101AFI20201019BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20201019BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   A61B5/107 300
   G08G1/16 A
   G08B21/02
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-100978(P2016-100978)
(22)【出願日】2016年5月20日
(65)【公開番号】特開2017-205368(P2017-205368A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504177284
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】中畑 洋一朗
(72)【発明者】
【氏名】岩下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】一杉 正仁
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−280061(JP,A)
【文献】 特開2015−021912(JP,A)
【文献】 特表2007−524134(JP,A)
【文献】 特開2016−027452(JP,A)
【文献】 特開2009−045418(JP,A)
【文献】 特開2007−022428(JP,A)
【文献】 特開平07−057172(JP,A)
【文献】 特開2013−252764(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0214105(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/107
A61B 5/16−5/18
G08G 1/16
G08B 21/02
B60K 28/06
B60W 40/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の室内に配置され、運転者を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された前記運転者の画像から、前記運転者の腰部と頭頂部とを結ぶ直線の鉛直方向に対する傾斜角である頭頂角を判定する姿勢判定部と、
予め定められた前傾側の第1閾値角度及び後傾側の第2閾値角度を保存する記憶部と、
前記運転者の頭頂角が前記前傾側の第1閾値角度から前記後傾側の第2閾値角度までの範囲外のときは、前記運転者が異常状態になっていると判定する状態判定部と、
前記車両の速度を検出する車速センサと、
前記車速センサにより検出された前記車両の速度が所定速度以下であって、かつ、前記運転者の頭頂角が前記後傾側の第2閾値角度より後方に傾いているときに、前記運転者の頭頂角が前記後傾側の第2閾値角度より後方に傾いている状態の継続時間をカウントする計時部と、
を備え
前記状態判定部は、前記計時部によりカウントされた前記継続時間が所定時間以上になると、前記運転者が異常状態になっていると判定する、
ライバ状態検出装置。
【請求項2】
車両の室内に配置され、運転者を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された前記運転者の画像から、前記運転者の腰部と頭頂部とを結ぶ直線の鉛直方向に対する傾斜角である頭頂角と、前記運転者の胴体の鉛直方向に対する傾斜角であるトルソー角と、を判定する姿勢判定部と、
予め定められた前傾側の第1閾値角度及び後傾側の第2閾値角度を保存する記憶部と、
前記運転者の頭頂角が前記前傾側の第1閾値角度より前方に傾いているときは、前記運転者が異常状態になっていると判定し、
前記運転者の頭頂角が前記後傾側の第2閾値角度より後方に傾いているときは、前記運転者の頭頂角と前記運転者のトルソー角とを比較し、
前記運転者の頭頂角が前記運転者のトルソー角より後方に傾いているときは、前記運転者が異常状態になっていると判定する状態判定部と、
を備えるドライバ状態検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、運転者の異常状態を検出するドライバ状態検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の脈拍、体温等の生体情報を検出し、検出した生体情報から運転者の体調等を推定する技術が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、車両座席のアームレスト部や機器を作動させるための操作スイッチに、生体情報を検出するセンサが組み込まれている。これによって、生体情報を検出する際に運転者に拘束感を与えないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−247649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、センサを用いて運転者の生体情報を正確に検出するためには、センサを運転者に密着させておく必要がある。このため、生体情報を検出するセンサを用いる限りは、運転者に拘束感を与えることは避けられない。そこで、生体情報を検出するセンサを用いることなく、簡易に運転者の異常状態を検出することが望まれている。
【0005】
ここに開示された技術は、生体情報を検出するセンサを用いることなく、簡易に運転者の異常状態を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、ここに開示された技術の一態様は、車両の室内に配置され、運転者を撮像する撮像部と、前記撮像部により撮像された前記運転者の画像から、前記運転者の腰部と頭頂部とを結ぶ直線の鉛直方向に対する傾斜角である頭頂角を判定する姿勢判定部と、予め定められた前傾側の第1閾値角度及び後傾側の第2閾値角度を保存する記憶部と、前記運転者の頭頂角が前記前傾側の第1閾値角度から前記後傾側の第2閾値角度までの範囲外のときは、前記運転者が異常状態になっていると判定する状態判定部と、前記車両の速度を検出する車速センサと、前記車速センサにより検出された前記車両の速度が所定速度以下であって、かつ、前記運転者の頭頂角が前記後傾側の第2閾値角度より後方に傾いているときに、前記運転者の頭頂角が前記後傾側の第2閾値角度より後方に傾いている状態の継続時間をカウントする計時部と、を備え、前記状態判定部は、前記計時部によりカウントされた前記継続時間が所定時間以上になると、前記運転者が異常状態になっていると判定するものである。
【0007】
この態様では、撮像部により撮像された運転者の画像から、運転者の腰部と頭頂部とを結ぶ直線の鉛直方向に対する傾斜角である頭頂角が姿勢判定部により判定される。判定された運転者の頭頂角が、前傾側の第1閾値角度から後傾側の第2閾値角度までの範囲外のときは、運転者が異常状態になっていると状態判定部により判定される。運転者の頭頂角が前傾側の第1閾値角度から後傾側の第2閾値角度までの範囲外ということは、正常な運転姿勢から逸脱しており、運転者が正常状態ではないと考えられる。したがって、本態様によれば、生体情報を検出するセンサを用いることなく、簡易に運転者の異常状態を検出することができる。
また、一般に、車両の速度が所定速度以下の低速の場合には、運転者は、後方に首を曲げてヘッドレストにもたれるなどの正常な運転姿勢から逸脱した姿勢をとることがあり得る。そこで、この態様では、車速センサにより検出された車両の速度が所定速度以下であって、かつ、運転者の頭頂角が後傾側の第2閾値角度より後方に傾いているときに、運転者の頭頂角が後傾側の第2閾値角度より後方に傾いている状態の継続時間が、計時部によりカウントされる。
そして、計時部によりカウントされた継続時間が所定時間以上になると、正常な運転姿勢から逸脱した状態が長過ぎると考えられるため、運転者が異常状態になっていると状態判定部により判定される。したがって、本態様によれば、車両の速度を考慮して、運転者の異常状態を検出することができる。
【0008】
上述の課題を解決するために、ここに開示された技術の他の態様は、車両の室内に配置され、運転者を撮像する撮像部と、前記撮像部により撮像された前記運転者の画像から、前記運転者の腰部と頭頂部とを結ぶ直線の鉛直方向に対する傾斜角である頭頂角と、前記運転者の胴体の鉛直方向に対する傾斜角であるトルソー角と、を判定する姿勢判定部と、予め定められた前傾側の第1閾値角度及び後傾側の第2閾値角度を保存する記憶部と、前記運転者の頭頂角が前記前傾側の第1閾値角度より前方に傾いているときは、前記運転者が異常状態になっていると判定し、前記運転者の頭頂角が前記後傾側の第2閾値角度より後方に傾いているときは、前記運転者の頭頂角と前記運転者のトルソー角とを比較し、前記運転者の頭頂角が前記運転者のトルソー角より後方に傾いているときは、前記運転者が異常状態になっていると判定する状態判定部と、を備えるものである。
【0009】
この態様では、撮像部により撮像された運転者の画像から、運転者の腰部と頭頂部とを結ぶ直線の鉛直方向に対する傾斜角である頭頂角と、運転者の胴体の鉛直方向に対する傾斜角であるトルソー角とが、姿勢判定部により判定される。運転者の頭頂角が前傾側の第1閾値角度より前方に傾いているときは、正常な運転姿勢から逸脱しており、運転者が正常状態ではないと考えられるため、運転者が異常状態になっていると状態判定部により判定される。
【0010】
運転者の頭頂角が後傾側の第2閾値角度より後方に傾いているときは、運転者の頭頂角と運転者のトルソー角とが比較される。運転者の頭頂角が運転者のトルソー角より後方に傾いているときは、運転者の首が胴体より後ろに傾いて、正常な運転姿勢から逸脱しており、運転者が正常状態ではないと考えられるため、運転者が異常状態になっていると状態判定部により判定される。したがって、本態様によれば、生体情報を検出するセンサを用いることなく、簡易に運転者の異常状態を検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
このドライバ状態検出装置によれば、運転者の頭頂角が前傾側の第1閾値角度から後傾側の第2閾値角度までの範囲外のときは、運転者が異常状態になっていると判定されるため、生体情報を検出するセンサを用いることなく、簡易に運転者の異常状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態のドライバ状態検出装置が搭載された車両の構成を概略的に示すブロック図である。
図2】頭頂角を説明する図である。
図3】トルソー角を説明する図である。
図4】頭頂角の実測データの一例を示す図である。
図5】ドライバ状態検出動作の一例を示すフローチャートである。
図6】ドライバ状態検出動作の一例を示すフローチャートである。
図7】剖検の例から推定された事故直前における運転者の運転姿勢を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本開示に係る一態様の着眼点)
まず、本開示に係る一態様の着眼点が説明される。交通事故の死亡原因の一つに、運転中における運転者の体調の急変がある。運転者の体調の急変の要因には、脳血管疾患及び心疾患等の種々の疾患が含まれており、体調の急変により運転が継続できなくなった運転者の状態は一定ではない。
【0017】
このような運転者の体調不良を、脈拍又は眼球の動きなどの生体情報から判断することは困難である。しかも、上述のように、生体情報を検出するセンサを用いることなく、簡易に運転者の状態を検出することが望まれている。
【0018】
図7は、剖検の例から推定された事故直前における運転者の運転姿勢を概略的に示す図である。図7に示されるように、運転席1に着座している運転者2は、ステアリングホイール3に寄りかかって、通常の運転姿勢に比べて前傾姿勢になっている。運転中に体調が急変した運転者2は、事故を回避するための行動を実行できていない場合が多い。したがって、運転者2は、体調の急変により意識レベルが低下し、場合によっては意識を失っていると思われる。このため、図7に示されるように、運転者2は、通常の運転姿勢から逸脱した前傾姿勢になっていると考えられる。上述の考察に鑑みて、以下に説明される本開示の一態様が考え出された。
【0019】
(実施の形態)
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態が説明される。なお、各図では、同様の要素には同様の符号が付され、適宜、説明が省略される。
【0020】
図1は、本実施の形態のドライバ状態検出装置が搭載された車両の構成を概略的に示すブロック図である。車両10は、例えば4輪自動車である。車両10は、図1に示されるように、車内カメラ101、車速センサ103、操作スイッチ106、ブレーキペダル107、ステアリングセンサ108、警報音発生器201、ハザードフラッシャー202、運転支援装置203、電子制御ユニット(ECU)300を備える。
【0021】
車内カメラ101(撮像部の一例)は、車両10の室内の例えば助手席側のフロントピラーに、車内カメラ101の光軸が車両10の運転者用シートを向くように取り付けられる。車内カメラ101は、車両10の運転者を横方向から撮像する。車内カメラ101は、撮像した画像データをECU300に出力する。
【0022】
代替的に、車内カメラ101は、車両10の室内の運転者用シートの横方向の天井に、車内カメラ101の光軸が車両10の運転者用シートを向くように取り付けられてもよい。さらに代替的に、複数のカメラが、助手席側のフロントピラー、車両10の室内の天井等に、各々の光軸が車両10の運転者用シートを向くように取り付けられてもよい。
【0023】
車速センサ103(環境検出部の一例)は、車両10の走行速度を検出する。車速センサ103は、検出した車両10の走行速度をECU300に出力する。操作スイッチ106は、作動している警報音発生器201を停止させるためのもので、運転者により操作される。ブレーキペダル107は、ブレーキを作動させるためのもので、運転者の足により操作される。ステアリングセンサ108は、ステアリングホイールに配置され、運転者によりステアリングホイールに加えられるトルクを検出する。
【0024】
警報音発生器201は、例えばブザー又はベルを含み、運転者に対する警報音を発生する。ハザードフラッシャー202は、橙色の全て(例えば4個)の方向指示灯を一斉に点滅させる。運転支援装置203は、運転者による車両10の運転を支援する。運転支援装置203は、自動的にブレーキを作動させて車両10を減速又は停止させる機能を有してもよい。運転支援装置203は、ステアリングホイールを制御することにより車両10に車線を維持させる機能を有してもよい。
【0025】
ECU300は、車両10の全体の動作を制御する。ECU300は、中央演算処理装置(CPU)310、メモリ320、その他の周辺回路を含む。メモリ320(記憶部の一例)は、例えば、フラッシュメモリなどの半導体メモリ、ハードディスク、又は他の記憶素子で構成される。メモリ320は、プログラムを保存するメモリ、データを一時的に保存するメモリ等を含む。メモリ320は、予め定められた前傾側の第1閾値角度θt1及び後傾側の第2閾値角度θt2をプログラムの一部として保存している。第1閾値角度θt1及び第2閾値角度θt2は後に詳述される。なお、メモリ320は、プログラムを保存する領域、データを一時的に保存する領域を備えた単一のメモリで構成されていてもよい。
【0026】
CPU310は、メモリ320に保存されているプログラムに従って動作することにより、姿勢判定部311、状態判定部312、計時部314、運転制御部315として機能する。
【0027】
姿勢判定部311は、車内カメラ101により撮像された画像データから、例えばテンプレートマッチングによって、運転者を抽出する。姿勢判定部311は、抽出した運転者の頭頂角及びトルソー角を判定する。
【0028】
図2は、頭頂角を説明する図である。図3は、トルソー角を説明する図である。図2図3では、運転者用シート21に着座し、ステアリングホイール22を握って車両を運転している運転者23を横から見た状態が示されている。
【0029】
頭頂角θ1は、腰の下端24と頭頂部28とを結んだ直線29の鉛直線27に対する傾斜角である。トルソー角は、胴体の鉛直方向に対する傾斜角である。具体的には、トルソー角θ2は、腰の下端24と首の付け根25とを結んだ直線26の鉛直線27に対する傾斜角である。
【0030】
姿勢判定部311は、テンプレートマッチング等によって抽出した運転者23の腰の下端24と頭頂部28とを検出して、頭頂角θ1を判定する。姿勢判定部311は、さらに首の付け根25を検出して、トルソー角θ2を判定する。
【0031】
本実施形態では、図2図3に示されるように、腰の下端24に対して首の付け根25又は頭頂部28が前方に水平な場合に(−90度)とし、腰の下端24に対して首の付け根25又は頭頂部28が後方に水平な場合に(+90度)としている。すなわち、本実施形態では、運転者23が前傾姿勢の場合に頭頂角θ1及びトルソー角θ2を負の値に設定し、後傾姿勢の場合に頭頂角θ1及びトルソー角θ2を正の値に設定している。運転者23が正常に運転しているときは、通常、図2図3に示されるように、頭頂角θ1及びトルソー角θ2は正の値になっている。
【0032】
図1に戻って、状態判定部312は、姿勢判定部311により判定された運転者23の頭頂角θ1及びトルソー角θ2と、メモリ320に保存されている前傾側の第1閾値角度θt1及び後傾側の第2閾値角度θt2とを用いて、運転者23が異常状態になっているか否かを判定する。
【0033】
図4は、頭頂角θ1の実測データの一例を示す図である。図4には、運転中に一定時間ごとに計測された運転者の頭頂角を積算した結果が示されている。図4の横軸は頭頂角θ1を表し、縦軸は計測された頻度を表す。図4の下図は、低頻度の頭頂角θ1の頻度数を明瞭に表すために、上図の縦軸を拡大した図である。図4の下図に示されるように、頭頂角θ1は、θt1≦θ1≦θt2の範囲に含まれている。
【0034】
そこで、メモリ320には、θt1が予め定められた前傾側の第1閾値角度として保存され、θt2が予め定められた後傾側の第2閾値角度として保存されている。図4から分かるように、前傾側の第1閾値角度θt1は負の値であり、後傾側の第2閾値角度θt2は正の値である。
【0035】
図1に戻って、状態判定部312は、姿勢判定部311により判定された運転者23の頭頂角θ1がメモリ320に保存されている前傾側の第1閾値角度θt1未満であるか否かを判定する。状態判定部312は、頭頂角θ1が第1閾値角度θt1未満であれば、運転者23が異常状態になっていると判定する。
【0036】
状態判定部312は、頭頂角θ1が第1閾値角度θt1以上であれば、頭頂角θ1がメモリ320に保存されている後傾側の第2閾値角度θt2を超えているか否かを判定する。状態判定部312は、頭頂角θ1が第2閾値角度θt2以下であれば、運転者23が異常状態になっていないと判定する。
【0037】
状態判定部312は、頭頂角θ1が第1閾値角度θt2を超えていれば、頭頂角θ1がトルソー角θ2より大きいか否かを判定する。状態判定部312は、頭頂角θ1がトルソー角θ2より大きければ、車速センサ103により検出された車両10の速度が所定速度Vt(本実施形態では、例えばVt=0km/h)以下である(つまり車両10は停止している)か否かを判定する。
【0038】
車両10の速度が所定速度Vt以下の場合には、頭頂角θ1がトルソー角θ2より大きい状態が所定時間Tt(本実施形態では、例えばTt=30秒)以上継続すると、状態判定部312は、運転者23が異常状態になっていると判定する。そこで、計時部314は、頭頂角θ1がトルソー角θ2より大きいと判定された時点からの継続時間をカウントする。
【0039】
運転制御部315は、運転者23が異常状態になっていると状態判定部312により判定されると、ハザードフラッシャー202を作動させ、全ての方向指示器を点滅させて、他車に注意を促す。運転制御部315は、運転支援装置203を制御して、運転者の運転を支援する。運転制御部315は、例えばブレーキを動作させて、車両10を減速又は停止させてもよい。運転制御部315は、ステアリングホイール22を制御して、車両10が走行している車線を維持してもよい。
【0040】
図5図6は、ドライバ状態検出動作の一例を示すフローチャートである。例えば車両10のエンジンが始動されると、例えば一定の時間間隔で、図5図6に示される動作が実行される。
【0041】
ステップS501において、CPU310は、車速センサ103の検出値を読み込み、メモリ320に保存する。ステップS502において、姿勢判定部311は、車内カメラ101により撮像された画像データから、例えばテンプレートマッチングによって、運転者23の画像を抽出する。姿勢判定部311は、抽出した運転者23の画像から、運転者23の頭頂角θ1を判定する。
【0042】
ステップS503において、状態判定部312は、ステップS502で姿勢判定部311により判定された頭頂角θ1が前傾側の第1閾値角度θt1未満であるか否かを判定する。頭頂角θ1が前傾側の第1閾値角度θt1未満であれば(ステップS503でYES)、状態判定部312は、運転者23が異常状態になっていると判定して、処理をステップS601(図6)に進める。一方、頭頂角θ1が前傾側の第1閾値角度θt1以上であれば(ステップS503でNO)、状態判定部312は、処理をステップS504に進める。
【0043】
ステップS504において、状態判定部312は、頭頂角θ1が後傾側の第2閾値角度θt2を超えているか否かを判定する。頭頂角θ1が後傾側の第2閾値角度θt2を超えていれば(ステップS504でYES)、状態判定部312は、処理をステップS505に進める。一方、頭頂角θ1が後傾側の第2閾値角度θt2以下であれば(ステップS504でNO)、状態判定部312は、運転者23が異常状態ではないと判定して、図5図6に示される動作を終了する。
【0044】
ステップS505において、姿勢判定部311は、ステップS502で抽出した運転者23の画像から、運転者23のトルソー角θ2を判定する。ステップS506において、状態判定部312は、頭頂角θ1がトルソー角θ2より大きいか否かを判定する。頭頂角θ1がトルソー角θ2より大きければ(ステップS506でYES)、状態判定部312は、処理をステップS507に進める。一方、頭頂角θ1がトルソー角θ2以下であれば(ステップS506でNO)、状態判定部312は、運転者23が異常状態ではないと判定して、図5図6に示される動作を終了する。
【0045】
ステップS507において、状態判定部312は、車速センサ103により検出された車両10の速度が所定速度Vt以下であるか否かを判定する。車両10の速度が所定速度Vt以下であれば(ステップS507でYES)、状態判定部312は、処理をステップS508に進める。一方、車両10の速度が所定速度Vtを超えていれば(ステップS507でNO)、状態判定部312は、運転者23が異常状態になっていると判定して、処理をステップS601(図6)に進める。
【0046】
ステップS508において、計時部314は、経過時間をカウントする。この経過時間は、車両10の速度が所定速度Vt以下であると判定された時点(ステップS507でYES)からの経過時間であるが、実質的には、頭頂角θ1がトルソー角θ2より大きいと判定された時点(ステップS506でYES)からの経過時間であると見なすことができる。
【0047】
ステップS509において、計時部314は、カウントしている経過時間が所定時間Ttに達したか否かを判定する。経過時間が所定時間Ttに達していれば(ステップS509でYES)、計時部314は、処理をステップS601(図6)に進める。一方、経過時間が所定時間Ttに達していなければ(ステップS509でNO)、計時部314は、処理をステップS506に戻す。
【0048】
図8のステップS601において、状態判定部312は、運転者が異常状態になっていると判定し、警報音発生器201を作動させて、運転者23に注意を促す。
【0049】
ステップS602において、状態判定部312は、ステップS601の警報音発生器201の作動に対して、運転者23の反応があるか否かを判定する。状態判定部312は、例えば操作スイッチ106が操作されて警報音発生器201がオフにされると、運転者23の反応があると判定する。状態判定部312は、ブレーキペダル107が操作されると、運転者23の反応があると判定してもよい。状態判定部312は、ステアリングセンサ108の検出値に基づき、ステアリングホイール22が操作されたと判定すると、運転者23の反応があると判定してもよい。
【0050】
運転者23の反応があると判定すると(ステップS602でYES)、状態判定部312は、図5図6に示される動作を終了する。一方、運転者23の反応がないと判定すると(ステップS804でNO)、状態判定部312は、処理をステップS603に進める。
【0051】
ステップS603において、運転制御部315は、ハザードフラッシャー202を作動させて、ハザードランプ(橙色の4個の方向指示器)を点滅させる。続くステップS604において、運転制御部315は、運転支援装置203を作動させる。その後、図5図6に示される動作は終了する。
【0052】
以上説明されたように、本実施形態では、車内カメラ101により撮像された運転者23の画像から、運転者23の頭頂角θ1が判定される。判定された頭頂角θ1が前傾側の第1閾値角度θt1未満であれば(ステップS503でYES)、運転者23が異常状態になっていると判定されて、警報音発生器201が作動される。
【0053】
また、本実施形態では、判定された頭頂角θ1が後傾側の第2閾値角度θt2を超えていれば(ステップS504でYES)、頭頂角θ1とトルソー角θ2とが比較され(ステップS506)、頭頂角θ1がトルソー角θ2以下であれば(ステップS506でNO)、運転者23が異常状態でないと判定される。一方、頭頂角θ1がトルソー角θ2より大きければ(ステップS506でYES)、車両10の速度が所定速度Vt(例えばVt=0km/h)以下であるか否かが判定される(ステップS507)。
【0054】
この場合、頭頂角θ1が後傾側の第2閾値角度θt2を超えているので、トルソー角θ2も後方に傾いていると考えられる。このとき、後方に傾くトルソー角θ2は、運転者用シート21(図2)の背面部で規制される。したがって、頭頂角θ1がトルソー角θ2より大きいということは、運転者用シート21(図2)の背面部より後方に運転者23の頭が傾いていることを表す。言い換えると、運転者23は、通常の運転姿勢から逸脱した姿勢をとっていることを意味する。但し、車両10が停止している場合には、運転者23が休憩のために、このような姿勢をとっていることも考えられる。
【0055】
そこで、本実施形態では、車両10の速度が所定速度Vt(本実施形態では、例えばVt=0km/h)以下であれば(ステップS507でYES)、経過時間がカウントされる。経過時間のカウント中に、車両10の速度が所定速度Vtを超えると(ステップS507でNO)、運転者23が異常状態になっていると判定されて、警報音発生器201が作動される。
【0056】
一方、所定時間Tt(本実施形態では、例えばTt=30秒)が経過すると(ステップS509でYES)、運転者23が異常状態になっていると判定されて、警報音発生器201が作動される。
【0057】
したがって、本実施形態によれば、生体情報を検出するセンサを用いることなく、簡易に運転者23の異常状態を検出することができる。
【0058】
(変形された実施の形態)
(1)図5図6において、ステップS505〜S509を省略し、運転者23の頭頂角θ1が後傾側の第2閾値角度θt2を超えていれば(ステップS504でYES)、処理をステップS601に進めるようにしてもよい。すなわち、運転者23の頭頂角θ1が、前傾側の第1閾値角度θt1から後傾側の第2閾値角度θt2までの範囲外であれば、状態判定部312は、運転者23が異常状態になっていると判定してもよい。この場合には、姿勢判定部311は、運転者23のトルソー角θ2を判定しなくてもよい。この実施形態でも、生体情報を検出するセンサを用いることなく、簡易に運転者23の異常状態を検出することができる。
【0059】
(2)図5図6において、ステップS507〜S509を省略し、頭頂角θ1がトルソー角θ2より大きければ(ステップS506でYES)、処理をステップS601に進めるようにしてもよい。この実施形態でも、運転者用シート21(図2)の背面部より後方に運転者23の頭が傾いているという、通常の運転姿勢から逸脱した姿勢をとっている運転者23を異常状態になっていると判定することができる。
【0060】
(3)姿勢判定部311は、判定した運転者23の頭頂角θ1をメモリ320に蓄積するようにしてもよい。状態判定部312は、前傾側の第1閾値角度θt1を、メモリ320に蓄積された頭頂角θ1の変動範囲の下限値に書き換えてもよい。状態判定部312は、後傾側の第2閾値角度θt2を、メモリ320に蓄積された頭頂角θ1の変動範囲の上限値に書き換えてもよい。これによって、前傾側の第1閾値角度θt1と、後傾側の第2閾値角度θt2とを、車両10を使用する運転者23に適合した値に更新することができる。
【0061】
(4)上記実施形態では、所定速度VtをVt=0km/hとしているが、これに限られない。所定速度Vtを例えば10km/h以下の低速に設定してもよい。
【符号の説明】
【0062】
101 車内カメラ
103 車速センサ
311 姿勢判定部
312 状態判定部
314 計時部
320 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7