(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
古い映像コンテンツを大画面で精細なディスプレイで表示した場合に、特に際立ってくるのが、画像内に一瞬表示されるスプライス直線や縦キズなどのキズである。しかしながら、現状では、映像フィルムに残されたキズ等の検出及び修復は、依然として目視及び手作業で行われているのが一般的である。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、映像フィルムの修復作業を各段に効率化することができる映像修復システム、映像修復方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る映像修復システムは、
動画を修復する映像修復システムであって、
前記動画を構成する一連の画像のうち、スプライス直線が含まれる画像を検出するスプライス直線検出部と、
前記スプライス直線検出部で検出された検出画像と、前記検出画像の前後の画像との類似度をそれぞれ算出する類似度算出部と、
前記前後の画像のうち、前記検出画像と類似度が高い方の画像から、前記スプライス直線が出現した部分に対応する部分画像を抽出し、
前記検出画像と前記類似度が高い方の画像との水平方向のずれ量を検出し、前記類似度が高い方の画像から抽出された前記部分画像を、水平方向に検出したずれ量だけずらして、抽出された
前記部分画像を、対応する前記検出画像の
前記部分画像と置換して、前記検出画像に含まれるスプライス直線を消去する画像修復部と、
前記画像修復部でスプライス直線が消去された一連の画像をつなげて
前記動画を生成する動画生成部と、
を備える。
【0007】
この場合、前記スプライス直線検出部は、
前記一連の画像から、シーンの切り変わり時点に対応する画像を特定し、
特定された画像の中から、スプライス直線が含まれる画像を検出する、
こととしてもよい。
【0008】
また、前記スプライス直線検出部は、
ハフ変換により、スプライス直線が含まれる画像を検出する、
こととしてもよい。
【0010】
前記画像修復部は、
置換後の画像に、空白がある場合に、その空白に隣接する部分画像を、前記空白に埋め込んで、画像を修復する、
こととしてもよい。
【0011】
前記画像修復部は、
位相限定相関法を用いて前記検出画像と前記類似度が高い方の画像との水平方向のずれ量を検出する、
こととしてもよい。
【0012】
前記画像修復部で修復された部分画像周辺の平滑化を行う画像平滑化部を備える、
こととしてもよい。
【0013】
前記
動画を構成する一連の画像に含まれる縦キズが含まれる画像を検出する縦キズ検出部を備え、
前記画像平滑化部は、
前記縦キズ検出部で検出された縦キズの周辺領域の画像の平滑化を行う、
こととしてもよい。
【0014】
本発明の第2の観点に係る映像修復方法は、
映像修復システムによって動画を修復する映像修復方法であって、
前記動画を構成する一連の画像のうち、スプライス直線が含まれる画像を検出するスプライス直線検出工程と、
前記スプライス直線検出工程で検出された検出画像と、前記検出画像の前後の画像との類似度をそれぞれ算出する類似度算出工程と、
前記前後の画像のうち、前記検出画像と類似度が高い方の画像から、前記スプライス直線が出現した部分に対応する部分画像を抽出し、
前記検出画像と前記類似度が高い方の画像との水平方向のずれ量を検出し、前記類似度が高い方の画像から抽出された前記部分画像を、水平方向に検出したずれ量だけずらして、抽出された
前記部分画像を、対応する前記検出画像の
前記部分画像と置換して、前記検出画像に含まれるスプライス直線を消去する画像修復工程と、
前記画像修復工程でスプライス直線が消去された一連の画像をつなげて
前記動画を生成する動画生成工程と、
を含む。
【0015】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、
動画を修復するコンピュータを、
前記動画を構成する一連の画像のうち、スプライス直線が含まれる画像を検出するスプライス直線検出部、
前記スプライス直線検出部で検出された検出画像と、前記検出画像の前後の画像との類似度をそれぞれ算出する類似度算出部、
前記前後の画像のうち、前記検出画像と類似度が高い方の画像から、前記スプライス直線が出現した部分に対応する部分画像を抽出し、
前記検出画像と前記類似度が高い方の画像との水平方向のずれ量を検出し、前記類似度が高い方の画像から抽出された前記部分画像を、水平方向に検出したずれ量だけずらして、抽出された
前記部分画像を、対応する前記検出画像の
前記部分画像と置換して、前記検出画像に含まれるスプライス直線を消去する画像修復部、
前記画像修復部でスプライス直線が消去された一連の画像をつなげて
前記動画を生成する動画生成部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、映像フィルムに残るスプライス直線と縦キズとを自動的に検出し、検出したスプライス直線と縦キズとを消去して自動的に修復することができる。これにより、映像フィルムの修復作業を各段に効率化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係る映像修復システムは、古い映像フィルムを再生したときに画面に現れるキズを修復する画像処理システムである。
【0019】
図1に示すように、データ記憶部10には、古い映像フィルムをデジタル化して得られた動画データを構成する一連の画像P1、P2、P3、P4、P5、…、Pn(nは自然数)が記憶されている。本実施の形態では、この一連の画像P1〜Pnが修復対象となる。以下では、各画像P1〜PnをショットP1〜Pnとも呼ぶ。本実施の形態では、修復されるキズは、主として、スプライス直線及び縦キズである。
【0020】
スプライス直線は、水平方向に延びるように画面に現れる直線である。スプライス直線は、主として、映像の編集の際にフィルムがカットされ、つなぎ合わせた部分に発生する。
図2では、画像Pnにスプライス直線Sが含まれている。
図2に示すように、スプライス直線Sは、主として映像コンテンツのシーン(場面)の切り替わりにおいて発生し、その発生場所は、画像Pnの上部又は下部となる。
【0021】
縦キズは、画面の垂直方向に延びるキズであり、各画像Pn内の任意の場所に出現する。
図3では、縦キズIの一例が示されている。縦キズIは、映像コンテンツのシーンの切り替わり等に関係なく、ランダムに出現する。
【0022】
図1に戻り、映像修復システム1は、スプライス直線検出部2と、類似度算出部3と、画像修復部4と、縦キズ検出部5と、画像平滑化部6と、動画生成部7と、を備える。
【0023】
スプライス直線検出部2は、動画を構成する一連の画像P1〜PNのうち、スプライス直線Sが含まれる画像Pn(n=1〜N)を検出する。
【0024】
より具体的には、スプライス直線検出部2は、まず、
図4に示すように、一連の画像P1〜PNから、映像コンテンツのシーンの切り変わり時点Ck(kは自然数)に対応する画像Pnを特定する。スプライス直線Sは、主として映像コンテンツのシーンの切り替わりにおいて良く出現するため、本実施の形態では、スプライス直線検出部2は、予めシーンの切り替わり時点Ckを検出し、その時点Ck近傍の画像Pnに絞って、スプライス直線Sの検出を行う。スプライス直線検出部2は、特定された画像P1〜PN、すなわちシーンの切り替わり時点Ck前後の画像Pnの中から、スプライス直線Sが含まれる画像Pnを検出する。
【0025】
スプライス直線Sの検出には、例えばハフ(Hough)変換を用いることができる。Hough変換は、デジタル画像処理で用いられる特徴抽出法の1つであり、画像から直線、円、楕円等の図形を検出する技法である。例えば、
図5(A)に示すように、画像Pnの各画素の位置座標を(x,y)とする。また、画像Pn内におけるスプライス直線Sがある場合に、スプライス直線Sの関係式をy=ax+bとする。Hough変換を行うことにより、スプライス直線Sの関係式の係数a,bを求めることができる。
【0026】
まず、スプライス直線検出部2は、画像Pnにおいて輝度変化の大きな画素点をスプライス直線S上の候補点として検出する。
図5(A)では、(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)、(x4,y4)、・・・が候補点として検出されている様子が示されている。
【0027】
候補点(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)、(x4,y4)、・・・をそれぞれ通過する直線は無数に存在する。スプライス直線検出部2は、抽出された候補点が最も多く通過する直線をスプライス直線Sとして検出する。
【0028】
ここで、
図5(B)に、スプライス直線Sの関係式の係数a,bを座標軸とする平面を示す。スプライス直線検出部2は、
図5(B)に示すように、この平面上で、それぞれ候補点(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)、(x4,y4)、・・・を通過する可能性のある点(a,b)について投票を行っていく。この投票で最も点数の多かった座標(a1,b1)を、スプライス直線Sの直線式の係数a,bとして決定する。
【0029】
図1に戻り、類似度算出部3は、スプライス直線検出部2で検出された検出画像Pnと、検出画像Pnの前後の画像Pn−1、Pn+1との類似度をそれぞれ算出する。ここでは、検出画像Pnとその前後の画像Pn−1、Pn+1について、検出画像Pnとその前の画像Pn−1との類似度と、検出画像Pnとその後の画像Pn+1との類似度がそれぞれ算出される。
【0030】
各画像Pnの類似度は、各画像Pnの輝度値のヒストグラムの相関度に基づいて算出される。例えば、
図6(A)、
図6(B)及び
図6(C)に示すように、類似度算出部3は、画像Pn、Pn−1、Pn+1の輝度値のヒストグラムを得る。さらに、類似度算出部3は、画像Pnの輝度値ヒストグラムと画像Pn−1の輝度値のヒストグラムとの相関度を求め、画像Pnの輝度値ヒストグラムと画像Pn+1の輝度値ヒストグラムとの相関度を求める。輝度値ヒストグラムの相関度が高い画像Pn+1、Pn−1のいずれかが、類似度が高い画像となる。
【0031】
図1に戻り、画像修復部4は、
図7(A)に示すように、前後の画像Pn−1、Pn+1のうち、類似度が高い方の画像P’を選択する。さらに、画像修復部4は、
図7(B)に示すように、類似度が高い方の画像P’から、スプライス直線Sが出現した部分に対応する部分画像PI’を抽出する。さらに、画像修復部4は、抽出された部分画像PI’を、対応する検出画像Pnの部分画像PIと置換して、検出画像Pnに含まれるスプライス直線Sを消去する。
【0032】
なお、スプライス直線Sは、各画像Pnの上端近傍の領域又は下端近傍の領域に現れ、その発生領域は、上端又は下端から一定の範囲に現れるのが一般的である。従って、部分画像PI、PI’を、各画像Pnの上端又は下端における固定大の画像領域とすることができる。このため、スプライス直線Sの位置は、画像の上側に出現しているか、下側に出現しているかを検出するだけでもよい。
【0033】
さらに、画像修復部4は、
図8に示すように、検出画像Pnと類似度が高い方の画像P’との水平方向のずれ量を検出する。そして、画像修復部4は、画像P’から抽出された部分画像PI’を、水平方向に検出したずれ量だけずらして、対応する検出画像Pnの部分画像PIと置換する。ずれ量の検出には、本実施の形態では、位相限定相関法(POC;Phase Only Correlation Method)を用いる。位相限定相関法は、2つの画像の間がどれぐらいずれているか、すなわち画像のシフト量を、各画像の位相画像を用いて推定する方法である。この方法は、2つの画像の位相に注目しそれらの位相の相関を取り、画像の間の「類似度」を測る。
【0034】
位相限定相関法において、画像修復部4は、まず、
図8に示すように、画像Pn、画像P’をそれぞれフーリエ変換して、それぞれのスペクトル成分Fa,Fbを得る。そして、画像修復部4は、スペクトル成分Fa、Fbを振幅スペクトルで割ることで正規化し、逆フーリエ変換することで位相限定画像Fabを得る。位相限定画像Fabでは、位置座標(Δx,Δy)に点が形成されている。この点の位置座標(Δx,Δy)が、画像Pnと画像P’とのx軸方向、y軸方向のずれ量を示している。
【0035】
画像修復部4は、部分画像PI’をx軸方向にΔxだけシフトさせて、画像Pnに埋め込む。この場合、
図9(A)に示すように、空白部分Qが発生する。置換後の画像Pn’に空白部分Qがある場合、画像修復部4は、
図9(B)に示すように、画像P’の空白部分Qに隣接する部分画像RIを、空白部分Qに埋め込んで、画像を修復する。なお、
図9(A)は、Δxが正の場合であるが、Δxが負で、部分画像PI’を左方向にシフトするようにしてもよい。
【0036】
図1に戻り、縦キズ検出部5は、一連の画像P1〜PNに含まれる縦キズIを検出する。具体的には、縦キズ検出部5は、
図10(A)に示すように、各画像Pnにおいて、水平方向の画素の輝度変化を検出して、輝度が急激に変化するエッジ部分を検出し、エッジ部分が垂直方向に繋がっている部分を、縦キズIとして検出する。
【0037】
図1に戻り、画像平滑化部6は、画像修復部4で修復された画像Pnの部分画像PIの周辺領域の平滑化又は縦キズ検出部5で検出された画像Pnの縦キズI周辺の領域の平滑化を行う。この画像の平滑化には、メディアンフィルタが用いられる。メディアンフィルタは、周辺輝度値の大きさを順に並べ、メディアン(中央値)を注目画素に置き換えていくフィルタ処理を行う。
【0038】
このメディアンフィルタを用いることで、画像平滑化部6は、画像Pn内に含まれるノイズを除去することができる。例えば、
図10(B)に示すように、画素値が100である注目画素について周辺の画素の輝度値が、10、15、41、30、34、60、180、130であったとする。この9つの画素の輝度値などを順番に並べ換えると、10、15、30、34、41、60、100、130、180となる。この場合、画像平滑化部6は、中央の注目画素の値を中間値の41とする。これがメディアンフィルタによる平滑化処理である。
【0039】
画像平滑化部6は、
図10(C)に示すように、縦キズI周辺の領域IAに対してメディアンフィルタを適用する。これにより、縦キズIが消去される。また、画像平滑化部6は、
図9(B)に示す画像Pnの部分画像PI’との境界周辺に対してメディアンフィルタを適用する。
【0040】
図1に戻り、動画生成部7は、スプライス直線S及び縦キズIが消去された一連の画像P1〜PNをつなげて動画を生成する。
【0041】
図11は、
図1の映像修復システム1のハードウエア構成を示す。
図11に示すように、映像修復システム1は、制御部31、主記憶部32、外部記憶部33、操作部34及び表示部35を備える。主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35はいずれも内部バス30を介して制御部31に接続されている。
【0042】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)等から構成されている。このCPUが、外部記憶部33に記憶されているプログラム39を実行することにより、
図1に示す映像修復システム1の各構成要素が実現される。
【0043】
主記憶部32は、RAM(Random-Access Memory)等から構成されている。主記憶部32には、外部記憶部33に記憶されているプログラム39がロードされる。この他、主記憶部32は、制御部31の作業領域(データの一時記憶領域)として用いられる。
【0044】
外部記憶部33は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD−RAM(Digital Versatile Disc Random-Access Memory)、DVD−RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリから構成される。外部記憶部33には、制御部31に実行させるためのプログラム39があらかじめ記憶されている。また、外部記憶部33は、制御部31の指示に従って、このプログラム39の実行の際に用いられるデータを制御部31に供給し、制御部31から供給されたデータを記憶する。
【0045】
操作部34は、キーボード及びマウスなどのポインティングデバイス等と、キーボード及びポインティングデバイス等を内部バス30に接続するインターフェイス装置から構成されている。操作部34を介して、操作者が操作した内容に関する情報が制御部31に入力される。
【0046】
表示部35は、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(ElectroLuminescence)などから構成される。操作者が操作情報を入力する場合は、表示部35には、操作用の画面が表示される。
【0047】
なお、制御部31のプログラム39の実行により、
図1に示す映像修復システム1の構成において、スプライス直線検出部2、類似度算出部3、画像修復部4、縦キズ検出部5、画像平滑化部6及び動画生成部7は、制御部31及び主記憶部32に対応し、データ記憶部10は、外部記憶部33に対応する。
【0048】
次に、映像修復システム1の動作について説明する。
【0049】
まず、スプライス直線Sの修復に係る処理について説明する。
図12に示すように、まず、スプライス直線検出部2は、映像コンテンツのシーンの切り替わり時点Ckを検出する(ステップS1)。これにより、
図4に示すように、映像コンテンツのシーンの切り替わり時点Ckが検出される。
【0050】
続いて、スプライス直線検出部2は、映像コンテンツのシーンの切り替わり時点Ckの画像Pnに含まれるスプライス直線Sを、
図5(A)及び
図5(B)に示すように、Hough変換を行って検出する(ステップS2;スプライス直線検出工程)。
【0051】
続いて、スプライス直線検出部2は、スプライス直線Sが有るか否かを判定する(ステップS3)。スプライス直線Sがない場合(ステップS3;No)、映像修復システム1は、スプライス直線Sに係る処理を終了する。一方、スプライス直線Sがあった場合(ステップS3;Yes)、類似度算出部3が、
図6(A)、
図6(B)及び
図6(C)に示すように、画像Pnと前後の画像Pn−1、Pn+1の類似性を比較し、類似性の高い画像を選択する(ステップS4;類似度算出工程)。
【0052】
続いて、類似度算出部3は、類似性の高い画像とのずれがあるか否かを判定する(ステップS5)。類似性の高い画像とのずれがない場合(ステップS5;No)、画像修復部4は、
図7(A)、
図7(B)及び
図7(C)に示すように、画像Pnにおけるスプライス直線Sが存在する部分画像PIを、類似性の高い画像P’の対応する部分画像PI’と置換することで、画像修復を行う(ステップS6;画像修復工程)。
【0053】
一方、類似性の高い画像P’とのずれがあった場合(ステップS5;Yes)、画像修復部4は、
図8に示すように、位相限界推定法を用いて、シフト量Δxを算出する(ステップS7)。続いて、画像修復部4は、
図9(A)に示すように、シフト量Δxだけシフトして画像P’の部分画像PI’を画像Pnの部分画像PIと置換する(ステップS8)。続いて、画像修復部4は、
図9(B)に示すように、画像P’の隣接部分画像RIを、画像Pnの空白部分Qに埋め込んで、画像の埋め合わせを行う(ステップS9)。隣接する部分画像RIが空白部分Qとして最も近似するためである。
【0054】
続いて、画像平滑化部6は、修復した画像に対してメディアンフィルタを用いて平滑化を行う(ステップS10)。続いて、動画生成部7は、これまでに修復された画像を含む動画を生成する(ステップS14;動画生成工程)。
【0055】
次に、縦キズの修復に係る処理について説明する。まず、縦キズ検出部5は、縦キズを検出する(ステップS12)。続いて、縦キズ検出部5は、
図10(A)に示すように、縦キズIがあるか否かを判定する(ステップS13)。縦キズIがなかった場合(ステップS13;No)、動画生成部7は、動画を生成し(ステップS14;動画生成工程)、処理を終了する。一方、縦キズIがあった場合(ステップS13;Yes)、画像平滑化部6は、縦キズがある部分の平滑化を行う(ステップS10)。その後、動画生成部7が、縦キズが除去された画像で、動画を生成する(ステップS14;動画生成工程)。
【0056】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、映像フィルムの動画に残るスプライス直線Sと縦キズIとを自動的に検出し、自動的に修復することができる。これにより、映像フィルムの修復作業を各段に効率化することができる。
【0057】
なお、上記実施の形態では、映像コンテンツのシーンの切り替わり時点Ckを検出し、その時点Ckの画像を対象としてスプライス直線Sを検出した。このようにすれば、スプライス直線Sを検出する画像Pnを絞りこむことができるので、検出に要する時間を短縮することができる。しかしながら、本発明はこれには限られない。すべての画像Pnについてスプライス直線Sを検出するようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、動画における物体の動きに基づく前後の画像Pnの水平方向のずれ量を検出し、そのずれ量Δxに応じて部分画像PI’をずらして置換する。これにより、ずれのない画像修復が可能となる。
【0059】
そして、部分画像PI’をずらして置換したことにより発生する空白部分Qには、
図9(A)及び
図9(B)に示すように、その部分に隣接する部分画像RIを埋め込む。これにより、違和感のない自然な画像修復が可能となる。
【0060】
また、上記実施の形態によれば、上述のような部分画像PI’の置換部分周辺の平滑化を行っているので、画像Pnの一部を置換しつつ、違和感のない画像修復が可能となる。
【0061】
また、上記実施の形態によれば、古い映像フィルムに再生した時に画面に生じる縦キズIを検出し、その縦キズIを自動的に修正する。これにより、映像フィルムの修復作業を各段に効率化することができる。
【0062】
また、上記実施の形態では、スプライス直線Sの検出にHough変換を用い、部分画像の動き検出(ずれ量検出)に位相限定相関法を用い、画像の平滑化にメディアンフィルタ等を用いたが、本発明はこれには限られない。これらの方法とは他の方法で、スプライス直線Sの検出、部分画像の動き検出(ずれ量検出)、画像の平滑化を可能であれば、その方法を適用することができる。
【0063】
その他、映像修復システム1のハードウエア構成やソフトウエア構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0064】
制御部31、主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35及び内部バス30などから構成される映像修復システム1の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する映像修復システム1を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで映像修復システム1を構成してもよい。
【0065】
映像修復システム1の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0066】
搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)にコンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介してコンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0067】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。