特許第6775152号(P6775152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775152
(24)【登録日】2020年10月8日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】無人走行体
(51)【国際特許分類】
   G01C 7/06 20060101AFI20201019BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20201019BHJP
   B60G 9/02 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   G01C7/06
   G01C15/00 104A
   B60G9/02
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-53398(P2017-53398)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2018-155637(P2018-155637A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】515102770
【氏名又は名称】ルーチェサーチ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596053585
【氏名又は名称】西日本高速道路エンジニアリング中国株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 豊
(72)【発明者】
【氏名】平坂 直行
(72)【発明者】
【氏名】下野 宗彦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 淳二
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−114324(JP,A)
【文献】 特開2004−330901(JP,A)
【文献】 特開2014−178304(JP,A)
【文献】 特開2016−223862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 7/06
B60G 9/02
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗渠の内部を走行しながら該暗渠の内面を点検する無人走行体であって、
前記暗渠の内面を点検する点検装置が搭載された車体フレームと、
前記車体フレームよりも下方に配設され、車幅方向に延びてその両端部にそれぞれ車輪が設けられるとともに車両前後方向に間隔をあけて配設された複数のシャフトと、
前記車体フレームと前記複数のシャフトとを接続する複数のサスペンションと、
前記複数の車輪に対応して設けられ、該車輪をそれぞれ独立して駆動させる複数の走行モータと、
前記複数の車輪に対応して設けられ、該車輪をそれぞれ独立して方向転換させる複数のステアリングモータと、
一端が前記車体フレームにおける車幅方向の端部寄りの位置に接続され、他端が前記車幅方向の中央寄りの位置で且つ該シャフトの上側部分に接続されるとともに、該シャフトを該車体フレームに対して上下左右に揺動可能に支持する複数の第1リンクと、
一端が前記車体フレームにおける車幅方向の端部寄りの位置に接続され、他端が前記車幅方向の端部寄りの位置で且つ該シャフトの下側部分に接続されるとともに、該シャフトを該車体フレームに対して上下左右に揺動可能に支持する複数の第2リンクとを備えたことを特徴とする無人走行体。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1リンク及び前記第2リンクは、前記車体フレーム及び前記シャフトに対してそれぞれユニバーサルジョイントを介して接続されていることを特徴とする無人走行体。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記シャフトにおける車幅方向の中央寄りの位置には、上方に延びる上部ブラケットが設けられ、
前記第1リンクは、前記上部ブラケットの上端部に接続されていることを特徴とする無人走行体。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1つにおいて、
前記車体フレームには、前記暗渠の内面をレーザー計測するレーザースキャナが搭載されていることを特徴とする無人走行体。
【請求項5】
請求項4において、
前記車体フレームには、前記レーザースキャナの三次元の角速度と加速度を計測する慣性計測部と、該レーザースキャナの移動距離を算出することで位置情報を取得する位置取得部とが設けられ、
前記車体フレームの外部には、前記暗渠の内面の点検作業で得られたデータを処理する外部処理装置が設けられ、
前記外部処理装置は、前記慣性計測部の計測結果及び前記位置取得部の位置情報に基づいて、前記レーザースキャナの計測データを補正する補正部を有することを特徴とする無人走行体。
【請求項6】
請求項5において、
前記慣性計測部は、前記レーザースキャナの近傍に配設されていることを特徴とする無人走行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人走行体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、地盤に埋設された下水道管や農業用排水管の内部を走行しながら、埋設管の変形の有無を点検する管内径変位測定機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、鉛直線上車輪を設けた機器搭載台に対して台車を昇降可能に構成し、鉛直半径検出センサと水平半径検出センサによって被計測管の内径を計測するようにした構成が開示されている。これにより、3方向の計測で被計測管の鉛直方向及び水平方向の内径変位を計測するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−196935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の管内径変位測定機では、被計測管の種類や内部の状況によっては、正確な点検作業を行うことができないという問題がある。
【0006】
具体的に、外圧に対する耐力が高く可撓性に優れている埋設管として、パイプ縦断方向に対して直角方向に波型鋼鈑のセクションを半円形又は円弧形に組み合わせて配置したコルゲート管が道路盛土内に埋設されることがある。
【0007】
ここで、コルゲート状の暗渠の内部は、管底が凹凸面を有していることから、管内径変位測定機が暗渠の内部を走行すると、走行中の機器搭載台が凹凸面に沿って振動してしまい、鉛直半径検出センサの計測値が大きく変動してしまう。
【0008】
また、管底に土砂や砂礫が堆積している場合には、走行中の機器搭載台が土砂や砂礫を乗り越える際に大きく傾いてしまい、機器搭載台を水平姿勢に維持することができない。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、暗渠の内部において、安定した走行が可能な無人走行体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、暗渠の内部を走行しながら該暗渠の内面を点検する無人走行体を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明は、前記暗渠の内面を点検する点検装置が搭載された車体フレームと、
前記車体フレームよりも下方に配設され、車幅方向に延びてその両端部にそれぞれ車輪が設けられるとともに車両前後方向に間隔をあけて配設された複数のシャフトと、
前記車体フレームと前記複数のシャフトとを接続する複数のサスペンションと、
前記複数の車輪に対応して設けられ、該車輪をそれぞれ独立して駆動させる複数の走行モータと、
前記複数の車輪に対応して設けられ、該車輪をそれぞれ独立して方向転換させる複数のステアリングモータと、
一端が前記車体フレームにおける車幅方向の端部寄りの位置に接続され、他端が前記車幅方向の中央寄りの位置で且つ該シャフトの上側部分に接続されるとともに、該シャフトを該車体フレームに対して上下左右に揺動可能に支持する複数の第1リンクと、
一端が前記車体フレームにおける車幅方向の端部寄りの位置に接続され、他端が前記車幅方向の端部寄りの位置で且つ該シャフトの下側部分に接続されるとともに、該シャフトを該車体フレームに対して上下左右に揺動可能に支持する複数の第2リンクとを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明では、第1リンク及び第2リンクによって、車輪が設けられたシャフトを車体フレームに対して上下左右に揺動可能に支持している。ここで、第1リンクは、シャフトの車幅方向の中央寄りの位置で且つシャフトの上側部分に接続される。第2リンクは、シャフトの車幅方向の端部寄りの位置で且つシャフトの下側部分に接続される。
【0013】
このような構成とすれば、シャフトの上下方向のストロークを大きく確保するとともに、シャフトの左右方向のねじれを吸収することができる。これにより、例えば、コルゲート状の暗渠の内部において、障害物や急傾斜等を乗り越えて安定した走行が可能となる。
【0014】
また、複数の車輪に対応して走行モータやステアリングモータを独立して設けたインホイールモータ構造とすることで、前後輪を繋ぐドライブシャフトが不要となり、車体の大きさやレイアウトの変更が容易となる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、
前記第1リンク及び前記第2リンクは、前記車体フレーム及び前記シャフトに対してそれぞれユニバーサルジョイントを介して接続されていることを特徴とするものである。
【0016】
第2の発明では、第1リンク及び第2リンクが、ユニバーサルジョイントを介して車体フレーム及びシャフトに接続される。これにより、第1リンク及び第2リンクの上下左右の揺動動作をスムーズに行うことができる。
【0017】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記シャフトにおける車幅方向の中央寄りの位置には、上方に延びる上部ブラケットが設けられ、
前記第1リンクは、前記上部ブラケットの上端部に接続されていることを特徴とするものである。
【0018】
第3の発明では、上部ブラケットの上端部に第1リンクを接続することで、第1リンクと第2リンクとの高さ方向の離間距離を大きくしている。これにより、シャフトの左右方向のより大きなねじれを吸収することができる。
【0019】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記車体フレームには、前記暗渠の内面をレーザー計測するレーザースキャナが搭載されていることを特徴とするものである。
【0020】
第4の発明では、車体フレームにレーザースキャナを搭載することで、暗渠の内面をレーザー測量によって形状把握するようにしている。これにより、点検装置としてカメラを用いて目視確認のみを行う場合に比べて、より詳細な点検を行うことができる。
【0021】
第5の発明は、第4の発明において、
前記車体フレームには、前記レーザースキャナの三次元の角速度と加速度を計測する慣性計測部と、該レーザースキャナの移動距離を算出することで位置情報を取得する位置取得部とが設けられ、
前記車体フレームの外部には、前記暗渠の内面の点検作業で得られたデータを処理する外部処理装置が設けられ、
前記外部処理装置は、前記慣性計測部の計測結果及び前記位置取得部の位置情報に基づいて、前記レーザースキャナの計測データを補正する補正部を有することを特徴とするものである。
【0022】
第5の発明では、外部処理装置(例えば、作業者が現場に持ち込んだノートパソコンや、別室に設置されているデスクトップパソコン等)によって、慣性計測部で計測されたレーザースキャナの三次元の角速度と加速度に基づいて、レーザースキャナの計測データを補正している。これにより、例えば、コルゲート状の暗渠の内部においても、暗渠の内面形状を精度良く計測することができる。
【0023】
具体的に、レーザースキャナは、レーザーを発射してから暗渠の内面に反射して返ってくるまでの時間を計測して距離を算出するものである。ここで、コルゲート状の暗渠の内部は、管底が凹凸面を有していることから、走行中の車体フレームが凹凸面に沿って振動したときに、レーザースキャナとコルゲート管の内面と間の距離やレーザーの照射方向が変動してしまう。
【0024】
そこで、本発明では、レーザースキャナがどのように振動しているか、つまり、三次元の角速度や加速度を計測しておき、この計測結果に基づいてレーザースキャナの計測データを補正するようにしている。これにより、三次元解析の精度を向上させ、より詳細な計測と調査を実施することができる。
【0025】
また、レーザースキャナの移動距離を算出して位置情報を取得するようにしたから、GPS電波が届かないコルゲート管内においても、正確な位置情報を取得することができる。
【0026】
第6の発明は、第5の発明において、
前記慣性計測部は、前記レーザースキャナの近傍に配設されていることを特徴とするものである。
【0027】
第6の発明では、レーザースキャナの近傍、例えば、レーザースキャナの上方に慣性計測部を配設するようにしたから、レーザースキャナの三次元の角速度や加速度を精度良く計測することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、シャフトの上下方向のストロークを大きく確保するとともに、シャフトの左右方向のねじれを吸収することができ、暗渠の内部において、障害物や急傾斜等を乗り越えて安定した走行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施形態に係る無人走行体の構成を示す斜視図である。
図2】無人走行体の構成を示す平面図である。
図3】車輪を方向転換させた状態を示す平面図である。
図4】車輪が障害物を乗り越えるときの第1リンク及び第2リンクの動きを説明する側面図である。
図5】ユニバーサルジョイントの構成を示す斜視図である。
図6】無人走行体の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0031】
また、図面には、上下や前後左右の方向を矢印で示してある。特に言及しない限り、上下等の方向についてはこれら矢印で示す方向に従って説明する。
【0032】
図1図4に示すように、無人走行体10は、車体フレーム11と、車体フレーム11よりも下方に配設された前輪及び後輪用のシャフト20と、車体フレーム11の周囲を撮影する複数のカメラ40と、レーザー計測用のレーザースキャナ50とを主に備えている。
【0033】
無人走行体10は、コルゲート状の暗渠1(図4参照)の内部を走行しながら暗渠1の内面を点検するためのものであり、本実施形態では、点検装置として、カメラ40とレーザースキャナ50とを用いている。
【0034】
車体フレーム11は、4本のパイプ状の部材を矩形枠状に組み合わせることで構成されている。車体フレーム11の四隅には、車体フレーム11から下方に延びるサスペンションブラケット12が設けられている。サスペンションブラケット12には、サスペンション30の上端部が接続されている。サスペンション30の下端部は、シャフト20の下部に設けられた後述する下部ブラケット17に接続されている。
【0035】
シャフト20は、車幅方向に延びてその両端部にそれぞれ車輪21が設けられている。シャフト20は、車両前後方向に間隔をあけて2つ配設されている。つまり、本実施形態では、四輪駆動の無人走行体10となっている。なお、以下では、前輪側のシャフト20についてのみ説明し、略同様の構成である後輪側のシャフト20については説明を省略する。
【0036】
シャフト20の下部には、下部ブラケット17が設けられている。下部ブラケット17は、シャフト20の車幅方向の両端部寄りの位置にそれぞれ設けられている。下部ブラケット17には、サスペンション30の下端部が接続されるとともに、後述する第2リンク32の前端部も接続されている。
【0037】
サスペンション30は、暗渠1内に堆積した土砂や砂礫等の障害物2(図4参照)に車輪21が乗り上げたときに、シャフト20の上下方向の移動や左右方向のねじれを、バネの伸縮によって吸収するものである。
【0038】
4つの車輪21は、それぞれ独立して駆動可能なインホイールモータ構造となっている。具体的に、4つの車輪21に対応して、4つの走行モータ22と、4つのステアリングモータ23とが設けられている。
【0039】
図2及び図3に示すように、走行モータ22は、モータ軸が車輪21に直結するように連結されており、走行モータ22の駆動に伴って車輪21が回転する。無人走行体10は、走行モータ22の回転方向や回転速度に応じて、前後方向に走行可能となっている。
【0040】
走行モータ22は、シャフト20の車幅方向の両端部にそれぞれ設けられた走行モータ保持ブラケット24に取り付けられている。走行モータ保持ブラケット24は、正面視で車幅方向の内方に開口する断面凹状の部材で形成され、上下方向に延びる中心軸24aを中心に回動可能となっている。
【0041】
走行モータ保持ブラケット24の上面には、車両前方に延びる車輪側リンクレバー26が設けられており、後述するリンク軸28によって引っ張られ又は押し出されることで、車輪21及び走行モータ22が中心軸24aを中心に左右方向に回動するようになっている。
【0042】
ステアリングモータ23は、車輪21を独立して方向転換させるものであり、シャフト20に設けられたステアリングモータ保持ブラケット25に取り付けられている。ステアリングモータ保持ブラケット25は、シャフト20の上部から車両前方に向かって張り出している。
【0043】
ステアリングモータ23は、モータ軸が上方に向かって延びるようにステアリングモータ保持ブラケット25に取り付けられている。ステアリングモータ23のモータ軸の上端部には、モータ側リンクレバー27が設けられている。
【0044】
走行モータ保持ブラケット24の車輪側リンクレバー26と、ステアリングモータ23のモータ側リンクレバー27とは、リンク軸28によって接続されている。そのため、ステアリングモータ23を駆動すると、モータ側リンクレバー27がリンク軸28を介して車輪側リンクレバー26を引っ張る方向又は押し出す方向に回動する。これにより、走行モータ保持ブラケット24を中心軸24aを中心に左右方向に回動させ、車輪21を方向転換させることができる(図3参照)。
【0045】
図4にも示すように、シャフト20の上部には、上部ブラケット16が設けられている。上部ブラケット16は、シャフト20の車幅方向の中央寄りの位置に設けられている。上部ブラケット16は、正面視で上方に開口する断面凹状に形成されている。
【0046】
上部ブラケット16の前側には、無人走行体10の車両前方に光を照射するLEDライト45が取り付けられている。LEDライト45は、光の照射面が車両前方を向くように配設された平板状に形成され、無人走行体10の車両前方を撮影するためのカメラ40の撮影範囲を明るく照らすようにしている。
【0047】
なお、車両前方を照らすLEDライト45の取り付け位置は、上部ブラケット16に限定するものではなく、前方を照らす姿勢でLEDライト45を保持できるのであれば、どの位置に取り付けてもよい。
【0048】
車体フレーム11とシャフト20とは、第1リンク31及び第2リンク32によって接続されている。具体的に、第1リンク31の後端部は、車体フレーム11における車幅方向の端部寄りの位置で且つ前後方向の略中央位置に設けられた車体側ブラケット13に接続されている。車体側ブラケット13は、正面視で下方に開口する断面凹状に形成されている。
【0049】
第1リンク31の前端部は、シャフト20の車幅方向の中央寄りの位置で且つシャフト20の上部に設けられている、上述した上部ブラケット16の上端部に接続されている。
【0050】
第2リンク32の後端部は、車体側ブラケット13に接続されている。第2リンク32の前端部は、シャフト20の車幅方向の両端部寄りの位置で且つシャフト20の下部にそれぞれ設けられている、上述した下部ブラケット17に接続されている。
【0051】
第1リンク31及び第2リンク32は、車体フレーム11及びシャフト20に対して、それぞれユニバーサルジョイント35を介して接続されている。図5に示すように、ユニバーサルジョイント35は、球体部36と、球体部36の球面に沿って摺動可能な湾曲凹面が内周面に形成されたリング状の摺動部37とを有する。
【0052】
図5に示す例では、ユニバーサルジョイント35の球体部36は、前輪側及び後輪側の第1リンク31と第2リンク32に対応して、車体側ブラケット13の左右の壁部に、前後方向に間隔をあけて合計4つ設けられている。球体部36は、締結ボルト38によって車体側ブラケット13に締結されている。摺動部37は、第1リンク31の後端部及び第2リンク32の後端部にそれぞれ設けられ、球体部36に摺動可能に嵌め込まれている。
【0053】
これにより、第1リンク31及び第2リンク32は、球体部36の球面に沿って摺動部37が摺動することで、図4に示すように、シャフト20を車体フレーム11に対して上下左右に揺動可能に支持している。
【0054】
なお、第1リンク31の前端部、第2リンク32の前端部、及びサスペンション30の上端部及び下端部にも、同様にユニバーサルジョイント35が設けられているが、上述した構成と略同じであるため、説明を省略する。
【0055】
このように、第1リンク31は、シャフト20の車幅方向の中央寄りの位置で且つシャフト20の上側部分に接続される一方、第2リンク32は、シャフト20の車幅方向の端部寄りの位置で且つシャフト20の下側部分に接続されている。このように、第1リンク31と第2リンク32との高さ方向の離間距離を大きくしている。
【0056】
このような構成とすれば、シャフト20の上下方向のストロークを大きく確保するとともに、シャフト20の左右方向のねじれを吸収することができる。その結果、図4に示すように、コルゲート状の暗渠1の内部において、車輪21がコルゲート管の凹凸面に沿って移動する際に車体フレーム11が振動したり、障害物2を乗り越えたときに車体フレーム11が上下左右方向に大きく揺動することがなく、車体フレーム11の水平姿勢を維持して安定した走行が可能となる。
【0057】
図6に示すように、車体フレーム11には、コントロールボックス60と、内部パソコン70とが載置されている(図1も参照)。コントロールボックス60には、無人走行体10の各種動作を制御する制御部61と、外部コントローラ80との間で通信を行う通信部62と、各種機器に電力を供給するバッテリー64とが収納されている。
【0058】
暗渠1の外部には、暗渠1の内面の点検作業で得られたデータを処理する外部パソコン75(外部処理装置)と、作業者が無人走行体10を操作するための外部コントローラ80とが配設されている。外部パソコン75には、表示モニタ76が接続されている。
【0059】
通信部62には、車体側アンテナ63が接続されており、外部パソコン75のアンテナ75aや外部コントローラ80のアンテナ80aから出力される制御信号を受信して通信部62に送信する。
【0060】
制御部61は、通信部62の車体側アンテナ63で受信した制御信号に基づいて、走行モータ22、ステアリングモータ23、カメラ40、レーザースキャナ50等の動作制御を行う。
【0061】
内部パソコン70には、カメラ40で撮影された画像データや、レーザースキャナ50でレーザー計測された計測データ等を記憶するために、ハードディスクやメモリ等の記憶部71が設けられている。
【0062】
なお、レーザースキャナ50で得られる情報量が多いので、一旦、内部パソコン70の記憶部71に記憶させて、後から取り出すようにしているが、多量な情報でも、無線で送信できるようになれば、内部パソコン70に蓄積せずに、直接送るようにしても良い。
【0063】
図1にも示すように、車体フレーム11の前側で且つ車幅方向の中央位置には、前側支柱41が立設している。前側支柱41の上端部には、車両前方に向かって延びる前側ロッド42が取り付けられている。
【0064】
前側ロッド42の前端部には、無人走行体10の上下左右方向を撮影するための4つのカメラ40が取り付けられている。4つのカメラ40は、暗渠1の内面を撮影するものである。
【0065】
前側ロッド42におけるカメラ40よりも後方位置には、無人走行体10の上下左右方向に向かって光を照射する4つのLEDライト45が取り付けられている。LEDライト45は、光の照射面がそれぞれ上下左右方向を向くように配設された平板状の照明であり、カメラ40の撮影範囲を明るく照らすようにしている。
【0066】
前側ロッド42は、前側支柱41に対して前後方向に位置調整可能に保持されており、前側ロッド42を前後方向に進退させることで、前側ロッド42に取り付けられているカメラ40やLEDライト45の位置を調整可能となっている。
【0067】
車体フレーム11の後側で且つ車幅方向の中央位置には、後側支柱51が立設している。後側支柱51の上端部には、車両後方に向かって延びる後側ロッド52が取り付けられている。
【0068】
後側ロッド52の後端部には、暗渠1の内面をレーザー計測するレーザースキャナ50が取り付けられている。レーザースキャナ50の上部には、慣性計測装置55(Inertial Measurement Unit:IMU)が取り付けられている。慣性計測装置55は、3軸のジャイロと3方向の加速度計によって、レーザースキャナ50の三次元の角速度と加速度を計測するものである。
【0069】
このように、車体フレーム11にレーザースキャナ50を搭載することで、暗渠1の内面をレーザー測量によって形状把握するようにしている。これにより、点検装置としてカメラ40を用いて目視確認のみを行う場合に比べて、より詳細な点検を行うことができる。
【0070】
後側ロッド52は、後側支柱51に対して前後方向に位置調整可能に保持されており、後側ロッド52を前後方向に進退させることで、後側ロッド52に取り付けられている慣性計測装置55の位置を調整可能となっている。
【0071】
図6に示すように、制御部61には、レーザースキャナ50の移動距離を算出することで位置情報を取得する位置取得部65が設けられている。具体的に、位置取得部65は、走行モータ22の回転数を入力とし、車輪21の外径に基づいて算出される車輪21の1回転当たりの移動距離と、車輪21の回転数とに基づいて、無人走行体10の移動距離、つまり、無人走行体10に設けられたレーザースキャナ50の移動距離を算出している。
【0072】
そして、暗渠1の入口を基準位置として、位置取得部65で算出されたレーザースキャナ50の移動距離を加算していくことで、暗渠1の入口からの距離、つまり、レーザースキャナ50の現在の位置情報を取得することができる。
【0073】
これにより、GPS電波が届かないコルゲート管で構成された暗渠1内においても、正確な位置情報を取得することができる。
【0074】
後側ロッド52におけるレーザースキャナ50よりも前方位置には、斜め後方に向かって傾斜しながら立設するカメラ支持アーム53が取り付けられている。カメラ支持アーム53の下端部は、後側ロッド52に対して前後方向に位置調整可能に保持されている。カメラ支持アーム53の上端部には、無人走行体10の車両前方を撮影するカメラ40が取り付けられている。
【0075】
車両前方を撮影するカメラ40の映像は、通信部62の車体側アンテナ63を介して外部パソコン75に無線通信されて表示モニタ76に表示される。これにより、作業者は、暗渠1の内部の状況をリアルタイムで知ることができ、カメラ40の映像を表示モニタ76で確認しながら、外部コントローラ80の操作部80bを用いて、無人走行体10の操縦を行う。
【0076】
内部パソコン70の記憶部71に記録されている各種データは、点検作業を終えた無人走行体10をコネクタ68を介して外部パソコン75に接続することで、外部パソコン75の記憶部77に転送することができる。
【0077】
例えば、レーザースキャナ50でレーザー計測されたスキャンデータ、慣性計測装置55で計測した計測データ、位置取得部65で取得した位置情報を示す位置データを転送する。
【0078】
ここで、外部パソコン75において、スキャンデータと位置データのみをデータ処理した場合には、暗渠1の内面の形状を正確に把握できないおそれがある。
【0079】
具体的に、レーザースキャナ50は、レーザーを発射してから暗渠1の内面に反射して返ってくるまでの時間を計測して距離を算出するものである。ここで、コルゲート状の暗渠1の内部は、管底が凹凸面を有していることから、走行中の車体フレーム11が凹凸面に沿って振動したり、障害物2を乗り越えるときに、レーザースキャナ50と暗渠1の内面と間の距離やレーザーの照射方向が変動してしまうおそれがある。
【0080】
そこで、本実施形態では、レーザースキャナ50で計測されたデータに慣性計測装置55の計測結果を加味して、スキャナデータを補正することで、レーザースキャナ50の傾き姿勢を考慮した正確なデータを得るようにしている。
【0081】
具体的に、外部パソコン75は、慣性計測装置55の計測結果及び位置取得部65の位置情報に基づいて、レーザースキャナ50の計測データを補正する補正部78を有する。
【0082】
慣性計測装置55では、レーザースキャナ50がどのように振動しているか、つまり、三次元の角速度や加速度が計測される。補正部78では、慣性計測装置55で計測されたレーザースキャナ50の三次元の角速度と加速度に基づいて、レーザースキャナ50の傾き等を考慮しながら、レーザースキャナ50の計測データを補正している。
【0083】
これにより、コルゲート状の暗渠1の内部においても、暗渠1の内面形状を精度良く計測することができ、三次元解析の精度を向上させ、より詳細な計測と調査を実施することができる。
【0084】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0085】
本実施形態では、コルゲート状の暗渠の内部を点検対象としているが、その他にも、円筒状のコンクリート管など、異なる形状の暗渠を点検対象としてもよい。
【0086】
また、本実施形態では、車体フレーム11の下方に、前後方向に間隔をあけて2つのシャフト20を設けた四輪駆動の無人走行体10について説明したが、シャフト20の数を増やすことで、六輪駆動や八輪駆動としてもよい。また、左右の車輪21がクローラータイプのものであってもよい。
【0087】
また、本実施形態では、前側ロッド42に4つのカメラ40や4つのLEDライト45を取り付けて固定しているが、例えば、前側ロッド42に、前側ロッド42の径方向に伸縮可能な図示しない複数の伸縮アームを取り付け、複数の伸縮アームの先端部にカメラ40やLEDライト45を取り付けることで、カメラ40やLEDライト45の位置を径方向に調整可能な構成としてもよい。
【0088】
これにより、暗渠1の内径に応じて、カメラ40やLEDライト45を暗渠1の内面に近付けるように伸ばす等、柔軟な調整を行うことができる。また、径方向の長さが異なる複数の図示しない複数の支持アームを用意しておき、暗渠1の内径に応じて適切な長さの支持アームに交換することで、カメラ40やLEDライト45の位置を調整するようにしてもよい。
【0089】
また、本実施形態では、外部パソコン75に補正部78を設け、内部パソコン70の記憶部71に記憶されているレーザースキャナ50の計測データを、外部パソコン75に転送して補正処理を行うようにしたが、制御部61や内部パソコン70に補正部78を設けて無人走行体10側で計測データを補正できるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明したように、本発明は、暗渠の内部においても、安定して走行することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0091】
1 暗渠
10 無人走行体
11 車体フレーム
16 上部ブラケット
20 シャフト
21 車輪
22 走行モータ
23 ステアリングモータ
30 サスペンション
31 第1リンク
32 第2リンク
35 ユニバーサルジョイント
40 カメラ(点検装置)
50 レーザースキャナ(点検装置)
55 慣性計測装置(慣性計測部)
65 位置取得部
75 外部パソコン(外部処理装置)
78 補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6