【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(チーム型研究(CREST))、「エレクトロクロミック型カラー電子ペーパー」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電圧・電流を印可することによって、電気化学的な酸化・還元によって色変化が可逆的に得られるエレクトロクロミック材料が知られている。
【0003】
このようなエレクトロクロミック材料としては、無機材料系や有機材料系がある。無機材料系として、酸化物系(酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化イリジウム、酸化ロジウム、酸化ニッケル、酸化クロムなどの酸化物)、金属錯体系(プルシアンブルー、ルテニウムパープルなどの錯体)、窒化物系(窒化インジウムなど)など、様々な材料系がある。有機材料系としては、ビオロゲン系、ロイコ染料系化合物、テレフタル酸化合物、ポリオキソタングステート、ポリマー系(導電性高分子化合物、メタロ超分子ポリマーなど)など、様々な材料系がある。
【0004】
エレクトロクロミックデバイスでは、エレクトロクロミック材料層と電解質層を電極で挟み、電圧を印可することにより、主に酸化・還元といった電気化学的な反応を利用することで色変化を引き起す。このようなエレクトロクロミックデバイスでは、エレクトロクロミック層には液体型および固体型があり、電解質層には液体型・ゲル型・固体型がある。
【0005】
このようなエレクトロクロミックデバイスの応用としては、電子ペーパー・ディスプレイ・ファインダーなどの表示デバイスや、調光ガラス・電子カーテン・サングラス・防眩ミラーなどの遮光デバイスが知られている。
【0006】
電子ペーパー・ディスプレイとしては、ビオロゲン化合物系を用いたフルカラー電子ペーパー(非特許文献1)や、メタロ超分子ポリマーを用いたカラー電子ペーパー(特許文献1)や、プルシアンブルーを用いたもの(非特許文献2)などがある。ファインダーとしては、酸化物系エレクトロクロミック材料を用いたものがある。調光ガラス・電子カーテン・サングラス・防眩ミラーも実用化されている。
【0007】
また、エレクトロクロミックフィルムに対して、液体もしくは固体の電解質部を先端に取り付けた描具(ペン)を用意して、先端の電解質から発色イオンを注入出して、描画・消去するエレクトロクロミック印字装置がある(特許文献2)。また、適用方法に関して、エレクトロクロミック以外の手法による関連する応用としては、電子ホワイトボードや電子メモ帳(ノート)などがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記電子ペーパーやディスプレイデバイスでは、主にマトリックス形式などの微細で多数の透明電極などの配線構造を組み合わせることにより、エレクトロクロミック材料に対して局所的にスクリーンの厚み方向に電圧・電流を印加することで局所的に色を変えるようにしてディスプレイを実現している。しかし、微細で多数の電極をパターニングする必要があることや、特定の位置に電圧・電流を印可するための駆動用電子回路が必要となる問題がある。
【0011】
また、指やタッチペンで接触した部分の色を変える場合は、電子ペーパーやディスプレイデバイスに対して、別途、タッチスクリーンやタッチパネル(マトリクス・スイッチ、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式など)を用意して、電子ペーパーやディスプレイデバイスに取り付けることにより、タッチ部分の位置情報を電気的に読み取り、その位置情報を基に電子ペーパーやディスプレイで表示するといった複雑な機構が必要であるため、複雑な構造とともに別途駆動用電子回路も必要となり、コストが高くなる。
【0012】
また、調光ガラス・電子カーテン・サングラス・防眩ミラーなどのデバイスでは、透明導電薄膜などの導電性の薄膜シート状電極でエレクトロクロミック材料を挟んだ構造により、スクリーン全体の色を電圧・電流印加により変えることができる。しかし、2次元のシート状の電極を用いているために局所的な電圧・電流印加ができないため、スクリーン全体の色を変えるのみであり、局所的な色の変化はできない。もし、部分的に色を変えたい場合には、上述の電子ペーパーやディスプレイと同様となり、局所電圧・電流印加用の電極のパターニングとそれを駆動する専用の電子回路が必要となる。
【0013】
さらに、指やタッチペンで接触した部分の色を変える場合は、電子ペーパーやディスプレイデバイスと同様に、別途、タッチスクリーン・タッチパネル(マトリクス・スイッチ、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式など)を用意して、調光ガラス・電子カーテン・サングラス・防眩ミラーなどのデバイスに取り付ける必要があるため、複雑な構造とともに別途駆動用電子回路も必要となる。
【0014】
そのため、エレクトロクロミックを用いたタッチ式の電子メモ帳(ノート)、電子ホワイトボードなどの表示デバイスや、局所的な色変化を可能とした調光ガラス・電子カーテン・サングラス・防眩ミラーを作成するには、高コストとなる。
【0015】
また、特許文献2では、エレクトロクロミックフィルムに対して、液体もしくは固体の電解質部を先端に取り付けた描具(ペン)を用意して、先端の電解質から発色イオンを注入出して、描画・消去するエレクトロクロミック印字装置が提案されているが、先端に液体もしくは固体の電解質を取り付けて、その先端から発色イオンを注入する特殊な描具が必要であることが問題である。
【0016】
又、エレクトロクロミックを用いない電子メモ帳としては、現在、感圧式の液晶を利用したものがあるが、(1)白黒のみでカラー化ができない、(2)暗い、(3)部分的な消去ができないため筆記ミスの部分修正が不可能等の問題点を有していた。
【0017】
又、エレクトロクロミックを用いない電子ホワイトボードとしては、ホワイトボード・プロジェクタおよびハード・ソフトウェアを組み合わせた電子ホワイトボードがあるが、複雑で高価なソフトウェアとハードウェアの組み合わせからなり、仕組みが複雑で高額となる。
【0018】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、局所的な電圧・電流のための特別な駆動用電子回路が必要なく、単純な構造で局所的に色変化(着色・消色・変色)させることが可能な
、操作性が良く、耐久性の高いエレクトロクロミック描画・表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、基板と、該基板上に配設される下部導電膜と、該下部導電膜上に配設されるエレクトロクロミック材料及び電解質と、
該エレクトロクロミック材料及び電解質上に配設される導電性膜と、該導電性膜上に絶縁性を有するスペーサーを介して配設される上部透明導電膜と、該上部透明導電膜上に配設される透明フィルムと、前記下部導電膜と上部透明導電膜間に電圧を印加する手段と
、前記エレクトロクロミック材料及び電解質上の導電性膜と下部導電膜の間に電圧を印加する手段と、前記エレクトロクロミック材料及び電解質又は導電性膜に配設される消去用の電極とを備え、前記透明フィルムを上面から押した時に、該透明フィルムが湾曲して前記スペーサーにより形成された隙間が無くなり、前記上部透明導電膜とその下のエレクトロクロミック材料又は電解質が電気的に接触して局所的に通電され、接触点直下のエレクトロクロミック材料にのみ電界が印加され、該エレクトロクロミック材料の色が局所的に変化するように
すると共に、全体の消去を可能にしたことを特徴とするエレクトロクロミック描画・表示装置により、前記課題を解決したものである。
【0020】
本発明は、又、基板と、該基板上に配設される下部導電膜と、該下部導電膜上に配設されるエレクトロクロミック材料及び電解質と、該エレクトロクロミック材料及び電解質上に配設される導電性膜と、導体の描具と、該描具とエレクトロクロミック材料及び電解質間に電圧を印加する手段と、前記エレクトロクロミック材料及び電解質上の導電性膜と下部導電膜の間に電圧を印加する手段と、前記エレクトロクロミック材料及び電解質又は導電性膜に配設される消去用の電極とを備え、前記描具をエレクトロクロミック材料及び電解質に接触させた時に、接触点に局所的に通電され、接触点直下のエレクトロクロミック材料にのみ電界が印加され、該エレクトロクロミック材料の色が局所的に変化するようにすると共に、全体の消去を可能にしたことを特徴とするエレクトロクロミック描画・表示装置により、同様に前記課題を解決したものである。
【0021】
ここで、前記エレクトロクロミック材料を、前記電解質の下又は上に配設することができる。
【0023】
又、前記エレクトロクロミック材料を、メタロ超分子ポリマー又は導電性高分子化合物とすることができる。
【0024】
又、前記エレクトロクロミック材料にカーボンナノチューブを混合することができる。
【0025】
又、前記描具に電源を内蔵することができる。
【0026】
又、前記電圧の大きさや極性を変えることにより、局所的な消去や変色を可能とすることができる。
【0029】
又、前記導電性膜に配設した消去用電極からの距離に応じて、距離が離れる程、高い電圧を印加することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、特別な電極パターン、駆動用電子回路、特殊な描具を用いなくても描画が可能なペン式・タッチ式のエレクトロクロミックデバイスを実現し、エレクトロクロミック材料を用いた装置において指やタッチペン等で触れた部分のみの色を変えるデバイスを提供することができる。本発明では、マトリックス形式による電圧・電流印加を必要としないため、微細で多数の複雑な配線構造を用いなくても、任意の位置の局所的な色を変えることが可能となる。また、本発明の原理に基づくペン式・タッチ式のエレクトロクロミックデバイスでは、局所的な電圧・電流のための特別な駆動用電子回路は必要なく、単純な構造で局所的な色変化(着色・消色・変色)が可能である。また、タッチ部分の位置情報を読み取るタッチパネルやタッチスクリーンなどの電子デバイスは必要なく、タッチ部分の色を直接変えることができ、タッチパネルやタッチスクリーンで必要な位置検知や駆動用の電子回路が一切不要である。更に、特許文献2のような電解質部を先端に取り付けるなどの特殊な描具を用いることなく、任意の位置の局所的な色を変えることが可能となる。これにより、エレクトロクロミック材料を用いたタッチ式又はペン式の電子メモ帳(ノート)、電子ホワイトボードなどの表示デバイスや、局所的な色変化を可能とした調光ガラス・電子カーテン・サングラス・防眩ミラーなどの遮光デバイスなどの新しいデバイスを簡単な構造で低コストに作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を好適に実施するための形態(以下、実施形態という)につき、詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、所謂均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0033】
本発明の第1実施形態に係るタッチ式のエレクトロクロミックデバイスの構成を
図1(A)に示す。この第1実施形態では、透明導電膜などの導電膜(下部導電膜)12を有するガラスやプラスチック基板10上にエレクトロクロミック材料14を配置し、その上に液体状・ゲル状・固体状の電解質16を配置する。電解質16上には、導電性膜18を配置することができる。その上には、絶縁体20やスペーサー22を挟み込んだ上部透明導電膜24付きの透明フィルム26を配置する。
【0034】
図1(B)に示すように、上部透明導電膜24付きの透明フィルム26の上面を導電・非導電の指30やタッチペン等の物体で押し付けた場合、透明フィルム26が湾曲して絶縁体20やスペーサー22により作られている空隙が無くなり、上部透明導電膜24とその下の導電性膜1
8が電気的に接触して、局所的に通電される。ここで、もし、上部透明導電膜24と下部導電膜12の間に電源28から電圧を印加した場合、湾曲により得られた局所的な接点Aから下部導電膜12に向けて電界Bが印可されるため、接点Aの直下のエレクトロクロミック材料14にのみ電界Bが印加されるため、接点A直下のエレクトロクロミック材料14を局所的に色変化(着色、消色、変色)Cさせることができる。
【0035】
本実施形態によれば、タッチ式のエレクトロクロミックデバイスを実現し、エレクトロクロミック材料を用いた装置において、指やタッチペンなどの導電・非導電を問わずあらゆる形状の物体で触れた部分の色を局所的に変えるデバイスを提供することができる。
【0036】
本実施形態によれば、マトリックス形式による電圧・電流印加を必要としないため、微細で多数の複雑な配線構造を用いなくても、任意の位置の局所的な色を変えることが可能となる。
【0037】
本実施形態に基づくタッチ式のエレクトロクロミックデバイスでは、タッチ部分を検知するタッチパネルやタッチスクリーンが不要であり、タッチ部分の色を直接変えることができる。従って、タッチパネルやタッチスクリーンで必要な、位置検知や駆動用の電子回路が一切不要であり、局所的な電圧・電流のための特別な駆動用電子回路は必要なく、単純な構造で局所的な色変化が可能である。
【0038】
また、色変化のために押し付ける物体は、導電性の有無や形状を問わず、あらゆる物体で良い。押し付けに必要な物体には、静電的な導電性が必要ないため、何も装着していない素手や指の他、手袋をしていても良く、導電・非導電を問わずタッチペンや棒状の物体、消しゴムや黒板消しのような接触面積の大きな形状のものなど、導電・非導電を問わず押し付けられればどんな材質や形状でも良い。
【0039】
これにより、エレクトロクロミックを用いたタッチ式の電子メモ帳(ノート)、電子ホワイトボードなどの表示デバイスや、局所的な色変化を可能とした調光ガラス・電子カーテン・サングラス・防眩ミラーなどの新しいデバイスを簡単な構造で低コストに作製することができる。
【0040】
図2に、タッチ式エレクトロクロミックデバイスの動作時の実際の写真を示す。タッチ式エレクトロクロミックデバイスで消色されている状態において、上部透明導電膜付きの透明フィルムを非導電性のタッチペンで押し付けることにより、任意の形状の線や絵を描くことができる。
【0041】
前記基板10は、どのような材料でも良い。ガラス・セラミックス・半導体をはじめとするあらゆる固体材料、PETなどのプラスチック材料など、どのような材料系でも良い。基板10の厚みもどのような厚みでよい。薄い場合は、フレキシブルな装置となり、湾曲が可能なフレキシブルな表示装置や調光装置が可能となる。基板10の色は、透明でもあっても良いし、色があっても、不透明でも良い。特に調光装置のように、透過光を利用する場合は、透明の方が良い。また、透明の場合は、その背後に背景パネルを置いたり、他のディスプレイを配置したりすることも可能であり、背景に置いたものと組み合わせて利用することもできる。色がある場合は、例えば白色の基板を使えば、白色の背景を持つ電子メモ帳(ノート)や電子ホワイトボードのような表示装置の背景として使うこともできる。また、電子メモ帳(ノート)や電子ホワイトボードの場合は、透明の基板を用いて、その背後に着色された背景のフィルムや基板を別途張り付けても良い。
【0042】
基板10上の下部導電膜12は、透明でも良いし、透明でなくても良い。表示装置や調光装置などにおいて光の透過性が必要な場合や背景色を利用する応用では、ITO・酸化物半導体・有機導電膜などの透明導電膜を用いたほうが良い。光の透過性が必要で無い場合は、金属等の不透明の電極でも良い。
【0043】
エレクトロクロミック材料14としては、電圧・電流によって色が変化すれば、どのような材料系のエレクトロクロミック材料でも良い。例えばこのような材料系としては、無機材料系や有機材料系がある。無機材料系としては、例えば、酸化物系(酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化イリジウム、酸化ロジウム、酸化ニッケル、酸化クロムなどの酸化物)、金属錯体系(プルシアンブルー、ルテニウムパープルなどの錯体)、窒化物系(窒化インジウムなど)など、様々な材料系がある。有機材料系としては、例えば、ビオロゲン系、ロイコ染料系化合物、テレフタル酸化合物、ポリオキソタングステート、ポリマー系(導電性高分子化合物、メタロ超分子ポリマーなど)など、様々な材料系がある。導電性高分子化合物とは、化学的あるいは電気化学的ドーピングにより電気伝導性を示す有機ポリマーを指す。メタロ超分子ポリマーとは、鉄、ルテニウム、銅、コバルトなどの遷移金属イオンやユウロピウムなどの遷移金属イオンとそれらに配位可能な部位を2つ以上有する有機配位子が錯形成することで得られるポリマー状超分子を指す。また、エレクトロクロミック層には液体型および固体型があり、いずれの材料系でも良い。
【0044】
エレクトロクロミック材料は、材料に依存して、色変化(着色・消色・変色)に要する電圧や速度が異なる。エレクトロクロミックデバイスでは、色変化の応答性が早い方がより好ましく、高速で色変化が可能なエレクトロクロミック材料を用いた場合、エレクトロクロミックデバイスにおける描画時の速度が向上して操作性向上が可能である。例えば、メタロ超分子ポリマーや導電性高分子化合物では、応答性が約1秒以内の応答性を有しており、描画に適したエレクトロクロミックデバイスとなる。
【0045】
発明者の実験によると、メタロ超分子ポリマーなどのエレクトロクロミック材料とカーボンナノチューブCNTを混ぜることにより、
図3に示す如く、色変化の速度(エレクトロクロミック特性の書き換え速度)の向上、色の保持、色変化のコントラストの向上が確認できた。これは、
図4に示すように、カーボンナノチューブCNTを混ぜたことにより、ポリマーに細孔が形成されたためと考えられる。
【0046】
エレクトロクロミック材料14の上に配置する電解質16としては、液体状・ゲル状・固体状のいずれの電解質でも良い。液体状の電解質の場合は、電解質直上に配置する導電性膜等によって封止することができる。ゲル状・固体状の電解質の場合には、封止することなくエレクトロクロミック材料14上に配置することができる。電解質16の材料系は、エレクトロクロミック材料14の酸化・還元といった電気化学的な反応に必要なイオンの伝導が可能であれば、どのような成分の電解質でも良い。エレクトロクロミック材料層と電解質層を電極で挟み、電圧を印可することにより、主に酸化・還元といった電気化学的な反応を利用することで色変化を引き起すことができればよい。
【0047】
電解質16の上部に配置する導電性膜1
8としては、膜の厚み方向に導電性を有していればよい。電解質16として液体を用いている場合は、この導電性膜18によって液体を封止することができる
。この導電性膜18が
あるので、導電性膜18が無い場合と比べて、電解質16表面の形状、硬さ、弾力性、粘着性、上部透明導電膜24との機械的な接触具合、上部透明導電膜24や電解質16との電気的な接触を改善することができる。例えば、電解質16が機械的に柔らかい場合に、この導電性膜18を付与することによって形状や硬さを付与したり、電解質16の弾力性や粘着性を調整したりすることができる。これにより、電解質16や上部透明導電膜24の機械的な消耗や上部透明導電膜24の貼り付きを抑制したり、タッチパネルの操作感を向上したりすることが可能となる。また、色変化のための電解質16から上部透明導電膜24までの電気的な接触の調整や向上も可能である。また、導電性膜18の仕事関数などの物性値を調整することにより、電解質16から上部透明導電膜24までの酸化・還元に必要な電圧やその速度を調整することが可能であることから、エレクトロクロミック材料14の色変化に必要な電圧値や電流値の調整や改善することもできる。これにより、電解質16・導電性膜18・上部透明導電膜24の耐久性向上・低消費電力化・高速動作化・操作性向上などが可能となる。
【0048】
この電解質16上の導電性膜18は、透光性があり導電性があれば、どのような材質でも良い。特に、このエレクトロクロミックデバイスでは、導電性膜18に対して膜厚方向(面直方向)に電界が印加されて通電する必要があるため、膜厚方向(面直方向)に抵抗が低くなるようにすると、エレクトロクロミックデバイスの色変化の局所性、動作電圧・電流、耐久性、高速性、操作性を改善することができる。そのため、電気抵抗の異方性が無い導電性膜の場合は、導電性膜18の膜厚を薄くする方がエレクトロクロミックデバイスの色変化の局所性、動作電圧・電流、耐久性、高速性、操作性が良くなる。特に、導電性膜の抵抗率が低い材料を用いた場合、導電性膜の膜厚がある程度厚くなって膜厚方向の抵抗が増してくると、電解質の抵抗よりも導電性膜の面内方向の電気抵抗の方が相対的に低くなる傾向となり、導電性膜内の膜の面内方向全体の電位が等電位に近づく。そのため、エレクトロクロミックデバイスの色変化の局所性が失われる傾向にあり、極端な場合は局所的な色変化ができなくなりエレクトロクロミック膜全体の色変化しか得られなくなる。そのため、膜厚方向の抵抗が低い方が好ましく、導電性膜の膜厚を薄くしたほうが色変化の局所性が向上する。もし、電気抵抗に異方性がある導電性膜を用いる場合は、膜厚方向の電気抵抗が低くなるようにするとエレクトロクロミックデバイスの特性が改善する。また、膜厚を十分薄くすることができない場合は、導電性膜の面内方向のシート抵抗がやや高めのものを用いれば、色変化の局所性を維持することができる。
【0049】
この電解質上の導電性膜18の材料としては、透光性があり膜厚方向に導電性があれば、どのような材料でも良い。例えば、主に透明導電膜として使われる材料系であればよい。例えば、透明導電膜として使われるグラファイト・カーボンナノファイバー・カーボンナノチューブ・グラフェンなどのカーボン系材料とそれを含む複合材料、極薄の金属膜や銀ナノファイバーなどの金属系薄膜・ナノワイヤー・微粒子やその複合材料による導電膜、PEDOTなどの有機系導電膜、ITOやZnOなどの酸化物系や半導体系導電膜など、透光性があり導電性があれば、どのような材料でも良い。特に、本発明のエレクトロクロミックデバイスの導電性膜としては、膜厚方向の電界による通電で動作するため、通常の透明導電膜等で要求される面内方向の低いシート抵抗は不要であり、面内方向のシート抵抗の高い導電性膜であっても使用することができる。特に、極薄の薄膜・微粒子・ファイバー・ポリマー形状の導電性膜の場合は、光の透明性を向上させようとするとグレイン・微粒子・ファイバー・ポリマー間の物理的接触が抑制されることによって、面内方向のシート抵抗が高くなる場合があるが、そのような高いシート抵抗の導電性膜であっても、膜厚が薄いなどの理由で膜厚(面直)方向の導電性が確保されていれば、膜厚方向に電界が印加されるため、本発明の導電膜として利用することができる。
【0050】
発明者の実験によると、導電性膜18としてITOを電解質(ゲル)16上に転写することで、
図5(B)に示す如く、導電性膜が無い場合に比べて、
図5(A)に示す如く、電解質16と上部透明導電膜24の貼り付きを防止して、タッチ式上部電極(24)の操作性や耐久性を向上することができた。
【0051】
導電性膜18上には、上部透明導電膜24との間に空隙を設けて電気的な絶縁をするために、パネル枠への絶縁体20やパネル内部へのスペーサー22を形成する。絶縁体20やスペーサー22は、上部透明導電膜24と絶縁されていれば、どのような材料系でも良い。表示装置や調光装置として用いる際に、パネル内部に配置するスペーサーは目立たないほうが良い場合には、スペーサーは透明や白色に近い材料の方が良いが、視認しにくいように非常に小さいスペーサーを用いる場合はどのような色でも問題が無い。また、スペーサー22の形状・幅・高さ・間隔は
、導電性膜18と上部透明導電膜24の電気的な絶縁を取りつつ、指やペン等によってフィルムを押して湾曲させて通電する空隙があれば、ドット状、線状、格子状などの形状でも良く、幅・高さ・間隔などもどのような寸法でも良い。エレクトロクロミックデバイスで用いる電解質16・導電性膜18・上部透明導電膜24の機械的・電気的な性質を鑑みて、スペーサー22の形状・幅・高さ・間隔を決めることにより、エレクトロクロミックデバイスの耐久性向上・低消費電力化・高速動作化・操作性向上を行うことができる。また、後述するパネル全体の色変化(色消去)機能を持たせる場合は、スペーサー下部に導電性を持たせることもできる。
【0052】
スペーサー22上に配置する上部透明導電膜24がコートされた透明フィルム26は、透光性があり、押し付けによって湾曲するフレキシビリティーがあれば良い。
【0053】
上部透明導電膜24は、透明性があり導電性があればどのような材料でも良く、ITO・ZnOなどの酸化物系や半導体系、有機系、金属系、カーボン系などどのような透明導電性の材料系でも良い。特に、面内方向の導電性が高い方が低電圧駆動や高速動作化などが可能である。また、押し付けによっ
て導電性膜18に電気的・物理的に接触させて色変化を得ることから、仕事関数などの材料の特性
によって性能が変わるため
、導電性膜18の材料に応じた上部透明導電膜24の材料の選択によって性能を上げることも可能である。また、押し付けによって透明フィルム26だけではなく上部透明導電膜24にも曲げの歪が印加されることから、曲げに対する耐久性が高い方が好ましい。
【0054】
透明フィルム26の材料は、押し付けによる湾曲が可能なフレキシビリティーがあり、透明性があればどのような材料でも良く、薄いガラスなどの固体材料、PETやPVCなどのプラスチック・ビニール素材など何でも良い。透明フィルム26の厚みも何でもよいが、厚みによってフレキシビリティーや押し付けの感触が変わるため、色変化の局所性やデバイスの操作感が調整可能である。
【0055】
前記上部透明導電膜24・導電性膜18・下部導電膜12としては、一種類の導電膜だけではなく、2種類以上の複数の電極材料を異種材料として薄くコーティングしたものや、パターニングした電極を用いても良い。一例として、導電膜としてITOなどの透明導電膜を用いた場合、
図6に示す第2実施形態のように、その導電膜12、18上に他の種類の導電性の異種材料12B、18Dをドット状に薄くコーティングしたり(
図6の例では、A材料製の下部導電膜12A上にB材料製の下部導電膜12B、C材料製の導電性膜18C上(図では下)にD材料製の導電性膜18D)、ドット状・ライン状・格子状などにパターニングしたりして配置することができる。このように2種類以上の材料により構成された導電膜をエレクトロクロミックデバイスの電極として用いた場合、酸化・還元に必要となる電位(ポテンシャル)や接触抵抗が材料によって異なるため、色変化(着色・消色・変色)の低電圧化・高速化やエレクトロクロミックデバイスの耐久性向上・操作性向上が可能である。例えば、エレクトロクロミック材料では、一種類の電極を用いた場合、電極材料の仕事関数が電極上で一定であり、酸化と還元のしやすさが異なることから、着色と消色で印可電圧や色変化の速度が大きく異なり、例えば着色は低電圧・高速であるが消色は高電圧・低速となるといった場合がある。一方、例えば、
図6のように、下部導電膜12をA材料12AとB材料12Bの2種類の材料を用いて電極を形成した場合、A材料12AとB材料12Bで酸化と還元に必要な電圧や速度が異なることから、酸化と還元に有利な材料が自発的に優位に作用するため、着色と消色の両方の低電圧化・高速化が両立して可能となる。異種材料として細いライン・格子パターンや薄くて小さいドットなどを用いた場合は、透光性のある透明導電材料を用いるのが好ましい一方で、例えば透光性の低い金属材料などを用いても、それらのドットやパターンの間隙を用意することでその間隙から透光性を確保できるため、異種材料としては透光性の有無にかかわらず用いることができる。また、電解質16と接触する電極(例えば導電性膜18など)では、接触抵抗が材料により異なるため、例えば、2種の電極材料(
図6の場合、C材料18CとD材料18D)で電極(導電性膜18)を作ると、接触抵抗の低減が可能であり、低電圧化や速度向上や特性改善が可能となる。同様の2種以上の電極材料の利用は、上部透明導電膜24にも適用することが可能である。
【0056】
また、
図1では、エレクトロクロミック材料14が下部、電解質16が上部となっているが、
図7に示す第3実施形態のように、上下が入れ替わって電解質16が下部、エレクトロクロミック材料14が上部でも良い。
【0057】
エレクトロクロミック材料14は、電圧印加に伴う酸化・還元によって色変化が可逆的に得られるため、印可する電圧の大きさや極性によって色の着色・消色・変色を選択することが可能である。そのため、上部透明導電膜24と下部導電膜12の間の電圧の大きさや極性を変えることによって、色の着色・消色・変色を選択することができる。このため、例えば一例として、前記実施形態において、マイナス2Vで着色、プラス3Vで消色できるエレクトロクロミック材料である場合は、マイナス2Vを印可時に、指やペン等で上部透明フィルム26を押し付けて描画して着色による印字を行ったあと、プラス3Vに切り替えて上部透明フィルム26を押し付けて部分的にこすった部分を消しゴムのように部分的に消色することができる。
図8にタッチ式のエレクトロクロミックデバイスにおける部分消去例を示す。また、その逆で、全体が着色されている状態で、消色するための電圧を印可した後に部分的に上部透明フィルム26を押し付けて消色をして描画した後に、着色する電圧に切り替えたのちに上部透明フィルム26を部分的に押し付けて着色することで描画を消去することも可能である。また、エレクトロクロミック材料では、電圧の大きさによって色が変色するものもあり、その場合は、描画したい色に応じて印加電圧を切り替えたのちに描画することにより、様々な色の描画が可能である。このような部分的な着色・消色・変色は、エレクトロクロミックを用いた電子メモ帳(ノート)、電子ホワイトボードなどの表示デバイスや、局所的な色変化(着色・消色・変色)を可能とした調光ガラス・電子カーテン・サングラス・防眩ミラーなどの遮光デバイスに利用可能である。
【0058】
また、上述した上部透明フィルム26の部分的な押し付けによる部分的消去だけではなく、
図9に示す第4実施形態のように、電解質16上の導電性膜18と下部導電膜12の間に消去用電源32により電圧を印可することにより、スクリーン全体の描画を消去することも可能である。
【0059】
また、
図10に示す第5実施形態のように、共用電源34により、導電性膜18への電圧印加と同時に上部透明導電膜24への電圧印加も可能であり、この場合、上部透明フィルム26の部分的な押し付けにより、スクリーン全体の描画消去のアシストを行うことができる。
【0060】
また、スクリーン全体の消去を行う際、
図9において導電性膜18の面内のシート抵抗が高い場合、導電性膜18に取り付けた電圧端子の近辺のエレクトロクロミック材料14が優先して色変化してしまい、電圧端子から遠いエレクトロクロミック材料の色変化が得られにくくなる。そこで、
図11に示す第6実施形態のように、導電性膜18へ取り付けた消去用電極36からの距離に応じて、距離が離れるほど高い電圧を印可すれば、エレクトロクロミック材料部分において位置に寄らずに色変化に十分な電圧を印可することができる。導電性膜18への消去用電極36からの距離が遠くなるほど、下部導電膜12に印加される電圧が高ければ、どのような回路を用いても良い。例えば一例として、
図11のように、下部導電膜をラインアンドスペースのようなパターン電極12’にしておき、それぞれのパターン電極のライン間を適切な抵抗38でつないだ構造を考える。この場合、消去用電極36から最も遠い部分(スクリーン中心部分)に高い電圧を印加するとともに、スクリーンの端の消去用電極36に近づくにつれて抵抗38による電圧降下を利用して電圧が下がるように抵抗を設計して配置すれば、各パターン電極12’に対して中心に近づくほど高い電圧が印加できるようになるため、スクリーン全体に対して均一な色消去が可能となる。このようなパターン電極12’と抵抗38は、パターン電極のライン数が少ない場合は、通常の抵抗素子を取り付けることが可能であるとともに、ライン数が増えた場合は、シール状・シート状・ペースト状・薄膜状などの抵抗を多数のラインパターンに取り付ければ、疑似的に分布定数的な抵抗回路が容易に得られる。その場合、疑似的な分布定数となる抵抗の分布は、シール状・シート状・ペースト状・薄膜状の抵抗の形状を変えるだけで良いため、省スペースで多数の抵抗をラインパターンに形成可能である。
【0061】
また、スクリーン全体の消去を行う際、
図12に示す第7実施形態のように、電解質16または導電性膜18上に微細な消去用の電極42をとりつけることでスクリーン全体の消去を行うことも可能である。図において、44は消去用電極42用の絶縁層である。ここでは、例えば、
図12の場合、導電性膜18の上に、細いラインアンドスペース(ストライプ)状の消去用電極42を形成している。この消去用電極42に描画パターンを消去するための電圧を印可した場合、消去用電極42から下部導電膜12に向かってわずかに広がりを持った電界が印加されるため、電界の広がりと同程度の間隔でラインアンドスペースの消去用電極42を配置しておけば、スクリーン全体を着色・消色・変色させることができる。消去用電極42の間隔は、スクリーン全体の色変化が得られればどのような間隔でも良いが、描画の際には、その上部にある上部透明導電膜24と透明フィルム26を押し付けることによって電解質16または導電性膜18と電気的に接触させて描画する必要があるため、上部にある透明フィルム26の押しつけによって上部透明導電膜24が消去用電極42間に入り込んで電解質16や導電性膜18と接触できるだけの間隔を用意しておく必要がある。また、ストライプ状の消去用電極42の幅は、スクリーン全体の色変化が得られるように設計すればどのような幅でも良いが、上述のように描画の際に上部透明導電膜24が消去用電極42間に入り込むスペースを確保する必要があることから、消去用電極42の幅を細くしたほうが消去用電極42の間隔を確保しやすい。また、デバイスの透光性を確保するためには、消去用電極42の幅は細い方が良い。また、消去用電極42とその上部の透明導電膜24の間には絶縁性を確保する絶縁膜44が必要となる。この絶縁膜44によって、透明フィルム26を押し付けた際に上部透明導電膜24と消去用電極42の間の電気的な導通が避けられることから、描画の際に透明フィルム26を押し付けた際にも消去用電極42に電圧は印可されず、消去用電極42の直下のストライプ状の部分のエレクトロクロミック材料が誤って描画されることが避けられる。また、消去用電極42の幅は十分細いため、描画の際には透明フィルム26を押し付けた消去用電極42の下部だけは部分的に色変化が得られるため、消去用電極42下部だけが描画できないという問題は避けることができる。消去用電極42とその絶縁膜44は、透光性を確保するため透光性のある材料の方が望ましいが、消去用電極42の幅を視認できないほどに細くできるのであれば、透明性が無くても良い。また、
図12では、消去用電極42とその上部の消去電極用絶縁体44の他にスペーサー22が別途用いられているが、別途スペーサーを用意しなくても消去用電極42と消去電極用絶縁体44自体をスペーサーとして利用することも可能である。
【0062】
図13に、消去用の櫛形の電極を形成したデバイスにおける印字の消去の実験例を示す。着色により印字した文字を櫛形の消去用電極によって消去可能であることが示されている。
【0063】
本発明においては、前記実施形態における上部の透明フィルム26と上部透明導電膜24に代わって、導体の描具を用いることで、電解質16または導電性膜18に描具を使って直接描画できるペン式のエレクトロクロミックデバイスが実現できる。
図14にその一例である第8実施形態を示すが、前記実施形態での透明フィルム26と上部透明導電膜24に代わって、先端が導体となっているペンなどの描具50を手48で持ち、電解質16または導電性膜18に接触させた場合、電界Bが局所的に印可されて接触点A下部のエレクトロクロミック材料14を局所的に色変化(着色・消色・変色)Cさせることができる。ここでは、描具先端の導体部分50Aと下部導電膜12の間を配線(52)して電圧を印可することによって、色変化が可能であり、着色・消色・変色のいずれかは、印加する電圧の極性や大きさで選択することができる。このような電圧の極性や大きさで選択するスイッチは、エレクトロクロミックデバイス側にスイッチを設置することで可能となるほか、リモコンなどによる遠隔での電圧スイッチ機構を導入することも可能である。前記実施形態と同様に、電解質16上の導電性膜18は、有っても良いし無くても良いが、有る場合は、電解質16表面の形状、硬さ、弾力性、粘着性や電解質16との電気的な接触を改善することができる。本実施形態で用いられる導電性膜18・電解質16・エレクトロクロミック材料14・下部導電膜12・基板10に要求される材料の特性は、前記実施形態と同様である。描具50として用いる材質は、先端が導電性を有していればどのような材質・材料でも良く、導電性の金属・導電性ポリマー・カーボン材料・導電性ゴムやそれらの複合材料など、どのような物でも良く、光の透明性なども必要ない。
【0064】
また、
図15は、第8実施形態において、下部導電膜12と描具50の間に設けられた直接の電気配線52を切り離して、接地による電位を介した第9実施形態を示す。接地した電位を介して描具50と下部導電膜12間に電圧を印加している。これにより、描具50からの配線を下部導電膜12と直接配線で接続する必要がなくなり、描具50とエレクトロクロミックデバイスが物理的に接続されていなくても描画が可能となることから、描具の取り回しが容易になり描画しやすくなる。接地の取り方は、どのような方法でも良く、地面、デバイスの筐体、描画者の人体、アース線などでも良く、コロナ放電などの間接的な接地を用いることで物理的な配線することなく接地しても良い。
【0065】
また、この描具によるエレクトロクロミックデバイスでは、印加する電圧による描画した印字の消去を行うことも可能であり、描具を消しゴムのようにして用いることも可能である。さらに、上述の第4〜8実施形態に示したスクリーン全体の消去技術をそのまま利用することができ、
図8に示した部分消去、
図9に示した第4実施形態と同様の導電性膜18を通した消去、
図10に示した第5実施形態と同様の、指30の代わりに描具50によるアシストを用いた導電性膜18による消去、
図11に示した第6実施形態と同様の下部導電膜12’のパターニングによる消去、
図12に示した第7実施形態及び
図13と同様の電解質16・導電性膜18上への消去用電極42/絶縁層44パターニングによる消去が適用できる。
【0066】
また、描具によるペン式のエレクトロクロミックデバイスでは、
図16に示す第10実施形態のように、描具50と人体(描具50を握る手48など)の短絡を利用して、人体を通した接地や電源28との接続が可能である。この場合、人体を、地面、デバイスの筐体、描画者の人体、アース線、コロナ放電などを介して接地または電源28との接続を行うことによって、描具50に対して電気配線を行う必要が無い。人体から接地や電源28への短絡方法は、使用者の靴や着衣等を介した短絡、デバイス筐体や配線等への人体の接触による短絡、導電バンドを介した短絡など、短絡さえすればどのような手法でも良い。本手法により、描具50は、通常のペンのように独立することから物理的な取り回しが容易となり、描画の操作性が向上するとともに、電気配線が不要なことから描具を簡易的な材料や構造で安価に作ることができる。人体を通した配線は、接地に接続することも可能であるし、下部導電膜から配線された電源に接続することも可能である。
【0067】
また、第8〜10実施形態では、下部導電膜12側に電源28を配置していたが、
図17に示す第11実施形態に示す如く、描具50内部に電池等による電源54を配置して描画できるエレクトロクロミックデバイスも作製可能である。この場合、描具自身に電圧の極性や大きさを切り替えるスイッチなどを用意しておけば、描具を持つ手元で着色・消色・変色を選択できるようになり、描画や消去の操作性が向上する。この場合の配線は、第11実施形態のような、描具50の胴体部分への電気配線の他、
図18に示す第12実施形態のような、人体を通した短絡による配線も対象によって使い分け可能である。
【0068】
図19に導電性棒の描具による描画の実験例を示す。描具によって任意の形状を描画することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
(1)電子メモ帳(ノート)に関して、本発明に係るタッチ式またはペン式のエレクトロクロミックデバイスを用いることで、紙を用いない電子メモ帳(ノート)が実現できる。第1〜7実施形態のような透明フィルム26と上部透明導電膜24を有するタッチ式のエレクトロクロミックデバイスでは、指や棒などの導電・非導電を問わずあらゆる形状の物質で描画することが可能であり、メモ帳として利用できる。第8〜12実施形態のようなペン式のエレクトロクロミックデバイスでは、導体のペンを用いることでメモ帳として利用できる。
【0070】
白黒のみでカラー化ができない、描画が暗い、部分的な消去ができないといった問題を有する従来の電子メモ帳に対して、本発明のエレクトロクロミックデバイスでは、カラー化が可能、明るい、部分的な消去が可能といった特徴がある。また、第4〜7実施形態の技術により、スクリーン全体の消去も可能である。エレクトロクロミック材料として、電圧によって変色するものを用いれば、マルチカラー化も可能である。また、タッチ式・ペン式デバイスでは、棒状の描具の他に、消しゴムのような形状のもので消去も可能である。
【0071】
(2)電子ホワイトボードに関して、本発明に係るタッチ式またはペン式のエレクトロクロミックデバイスを用いることで、チョークやホワイトボードマーカーを用いず、クリーンな電子ホワイトボードが実現できる。第1〜7実施形態のような透明フィルム26と上部透明導電膜24を有するタッチ式のエレクトロクロミックデバイスでは、指や棒などの導電・非導電を問わずあらゆる形状の物質で描画することが可能であり、ホワイトボードとして利用できる。第8〜11実施形態のようなペン式では、導体のペンを用いることでホワイトボードとして利用できる。本発明のエレクトロクロミックデバイスでは、カラー化が可能、明るい、部分的な消去が可能といった特徴がある。また、前述の第4〜7実施形態の技術により、スクリーン全体の消去も可能である。エレクトロクロミック材料として、電圧によって変色するものを用いれば、マルチカラー化も可能である。また、タッチ式・ペン式デバイスでは、棒状の描具の他に、ホワイトボード消しのような形状のもので、消去も可能である。また、従来の電子ホワイトボードのように、ホワイトボード・プロジェクタ・ハードウェア・ソフトウェアを組み合わせたような複雑で高価なシステムは必要とせず、単純な構造で安価に作製できる。
【0072】
(3)調光ガラスや電子カーテンに関して、エレクトロクロミック材料は、従来技術より、自動車・航空機・部屋の窓ガラスなどに用いることで、調光ガラスや電子カーテンとして利用されている。しかし、従来のエレクトロクロミックによる調光ガラスや電子カーテンでは、ガラス全体の色変化(着色・調光・消色・変色)のみであり、一部の場所の色変化は得られない。本発明では、ガラスの一部分の着色を指や物体等で触れて変化させることができるため、窓ガラスの一部のみの調光やカーテンが可能である。そのため、例えば、自動車・航空機・部屋の窓ガラスのうち、直射日光部分のみ暗くして直射日光を遮蔽するとともに、風景を楽しみたい部分のガラスのみを一部消色することにより、風景を他にしみながらも直射日光を遮蔽できる。
【0073】
(4)防眩ミラーに関して、従来のエレクトロクロミックによる防眩ミラーでは、ミラー全体または限定された一部分のみの明暗を調整するのみである。一方、本発明によるエレクトロクロミックデバイスを用いた場合、ミラー部分のうち、日光やライトからのまぶしい入射光が照射されるミラーの一部分の反射部分のみ直接触れることによって色変化が可能であり、ミラーの一部に防眩機能を持たせつつ、明瞭な反射像を得ることが可能となる。
【0074】
(5)サングラスに関して、従来のエレクトロクロミックによるサングラスは、サングラス全体の調光のみであったが、本発明のエレクトロクロミックデバイスを用いた場合、触れた部分の色変化が可能であり、サングラスの一部分の遮光等が可能となる。
【0075】
(6)ディスプレイとの融合に関して、本発明のエレクトロクロミックデバイスの背面に液晶ディスプレイなどの表示装置を配置した場合、ディスプレイに対して、自由に絵や文字を描画したり消去したりすることができる。これにより、ディスプレイに対して注意書き・メモなどを表示するデバイスが実現できる。
【0076】
(7)タッチスクリーン(タッチパネル)デバイスとの融合による情報入力端末装置に関して、本発明のエレクトロクロミックデバイスの最前面(タッチ面)の前面にタッチスクリーン(タッチパネル)等のタッチ位置読み取り装置を配置することもできる。この場合、本発明による表示装置とタッチスクリーンによる位置情報を利用して、情報入力をすることも可能である。この場合、さらに背面にディスプレイなどの表示装置を配置した場合は、タッチスクリーンと本発明の表示装置や調光装置を組み合わせた情報端末装置も実現できる。