特許第6775207号(P6775207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6775207
(24)【登録日】2020年10月8日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】船倉乾燥システムおよび船倉乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   B63J 2/08 20060101AFI20201019BHJP
   B63B 25/08 20060101ALN20201019BHJP
【FI】
   B63J2/08
   !B63B25/08 Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-67812(P2020-67812)
(22)【出願日】2020年4月3日
【審査請求日】2020年4月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305027331
【氏名又は名称】田渕海運株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520120363
【氏名又は名称】株式会社プロテック
(73)【特許権者】
【識別番号】520119828
【氏名又は名称】下ノ江造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 稔章
(72)【発明者】
【氏名】小林 武史
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳典
(72)【発明者】
【氏名】永吉 裕史
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−043823(JP,A)
【文献】 特開2016−002839(JP,A)
【文献】 特開2003−307336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63J 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物が積載される船倉を備える貨物船において、前記船倉の内面を乾燥するための船倉乾燥システムであって、
前記船倉内の空気よりも、温度が高く、圧力が高く、相対湿度が低い高温低湿度圧縮空気を生成する乾燥空気生成装置と、
前記船倉と前記乾燥空気生成装置とを流体接続し、前記乾燥空気生成装置から前記船倉内に前記高温低湿度圧縮空気を導くように配置される配管と
を備え
前記貨物船が、複数の船倉を備え、
前記配管は、前記複数の船倉を直列に流体接続して、前記複数の船倉のうちの上流側の1つの船倉に前記高温低湿度圧縮空気を導くことにより、前記1つの船倉から排出された前記高温低湿度圧縮空気が、前記1つの船倉に直列に流体接続された下流側の他の船倉内に順に導かれるように配置されている、
船倉乾燥システム。
【請求項2】
貨物が積載される船倉を備える貨物船において、前記船倉の内面を乾燥するための船倉乾燥システムであって、
前記船倉内の空気よりも、温度が高く、圧力が高く、相対湿度が低い高温低湿度圧縮空気を生成する乾燥空気生成装置と、
前記船倉と前記乾燥空気生成装置とを流体接続し、前記乾燥空気生成装置から前記船倉内に前記高温低湿度圧縮空気を導くように配置される配管と
を備え、
前記貨物船が、少なくとも2つの船倉を含む船倉の組を複数備え、
それぞれの前記船倉の組に含まれる少なくとも2つの船倉は、それぞれに貫通孔が設けられ、前記貫通孔を介して互いに流体接続されており、
前記配管は、複数の船倉の組を直列に流体接続して、前記複数の船倉の組のうちの上流側の1つの船倉の組の少なくとも2つの船倉内に前記高温低湿度圧縮空気を導くことにより、前記1つの船倉の組の少なくとも2つの船倉から排出された前記高温低湿度圧縮空気が、前記1つの船倉の組に直列に流体接続された下流側の他の船倉の組の少なくとも2つの船倉内に順に導かれるように配置されている、
船倉乾燥システム。
【請求項3】
前記乾燥空気生成装置が、
大気中の空気を圧縮して圧縮空気を生成するための圧縮機と、
前記圧縮空気を冷却することで前記圧縮空気の水分量を低下させて低水分圧縮空気を生成するための冷却器と、
前記低水分圧縮空気を前記船倉内の空気よりも高い温度に加熱することで、前記低水分圧縮空気の相対湿度を前記船倉内の空気の相対湿度よりも下げて、高温低湿度圧縮空気を生成するための加熱器と
を備える、請求項1または2記載の船倉乾燥システム。
【請求項4】
前記乾燥空気生成装置は、生成した前記高温低湿度圧縮空気を、窒素ガス以外のガスを除去するためのガスフィルタを通過させることにより、窒素ガスを生成することができるように構成され、
前記乾燥空気生成装置は、前記高温低湿度圧縮空気および前記窒素ガスを切り替えて前記配管に送り込むことができるように構成される、
請求項1〜のいずれか1項に記載の船倉乾燥システム。
【請求項5】
貨物が積載される船倉を備える貨物船において、前記船倉の内面を乾燥するための方法であって、
前記船倉内の空気よりも、温度が高く、圧力が高く、相対湿度が低い高温低湿度圧縮空気を生成することと、
配管を介して前記高温低湿度圧縮空気を前記船倉内に導くことと
を含み、
前記貨物船が、複数の船倉を備え、
前記高温低湿度圧縮空気を前記船倉内に導くことが、
前記配管を介して前記複数の船倉を互いに直列に流体接続することと、
前記複数の船倉のうちの上流側の1つの船倉内に前記高温低湿度圧縮空気を導くことにより、前記1つの船倉から排出された前記高温低湿度圧縮空気を、前記1つの船倉に直列に流体接続された下流側の他の船倉内に順に導くことと
を含む、方法。
【請求項6】
貨物が積載される船倉を備える貨物船において、前記船倉の内面を乾燥するための方法であって、
前記船倉内の空気よりも、温度が高く、圧力が高く、相対湿度が低い高温低湿度圧縮空気を生成することと、
配管を介して前記高温低湿度圧縮空気を前記船倉内に導くことと
を含み、
前記貨物船が、少なくとも2つの船倉を含む船倉の組を複数備え、
それぞれの前記船倉の組に含まれる少なくとも2つの船倉は、それぞれに貫通孔が設けられ、前記貫通孔を介して互いに流体接続されており、
前記高温低湿度圧縮空気を前記船倉内に導くことが、
前記配管を介して前記複数の船倉の組を互いに直列に流体接続することと、
前記複数の船倉の組のうちの上流側の1つの船倉の組の少なくとも2つの船倉内に前記高温低湿度圧縮空気を導くことにより、前記1つの船倉の組の少なくとも2つの船倉から排出された前記高温低湿度圧縮空気を、前記1つの船倉の組に直列に流体接続された下流側の他の船倉の組の少なくとも2つの船倉内に順に導くことと
を含む、方法。
【請求項7】
前記高温低湿度圧縮空気を生成することが、
大気中の空気を圧縮して圧縮空気を生成することと、
前記圧縮空気を冷却することで前記圧縮空気中の水分量を低下させて低水分圧縮空気を生成することと、
前記低水分圧縮空気を前記船倉内の空気よりも高い温度に加熱することで、前記低水分圧縮空気の相対湿度を前記船倉内の空気の相対湿度よりも下げて、前記高温低湿度圧縮空気を生成することと
を含む、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
請求項のいずれか1項に記載の方法を実施することにより前記船倉の内面を乾燥した後に、前記配管を介して窒素ガスを前記船倉内に導くことをさらに含む、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船倉乾燥システムおよび船倉乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、原油や化学薬品などの液体貨物を海上輸送する液体貨物船は、さまざまな種類の液体貨物を輸送する場合がある。液体貨物船では、液体貨物の種類を変更する際に、コンタミネーションや化学変化により液体貨物に変質が生じることを避けるために、船倉を洗浄する必要がある。船倉は、たとえば特許文献1に開示されるように、洗浄液、海水、清水を用いて洗浄される。たとえば、船倉の内面に水分が残っていると、あるいは、船倉の内面で結露が生じて水分が付着していると、次に積載する液体貨物が水分と混ざって変質する可能性があり、液体貨物の種類によっては爆発する危険性すらある。したがって、少なくとも液体貨物を積載する前には、船倉の内面を乾燥する必要がある。それは、液体貨物に限らず、液体貨物以外の貨物を輸送する貨物船にも当てはまる。
【0003】
貨物船の船倉内の乾燥は、特許文献1に開示されているように、自然乾燥や乾燥空気による高速乾燥により実施され、あるいは、特許文献2に開示されているように、温風を送風することにより実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−149597号公報
【特許文献2】特開平11−342897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、一般的な乾燥空気や温風を使用するこれらの方法では、十分な乾燥効率が得られず、乾燥に時間がかかってしまう。さらに、液体貨物船には複数の船倉が設けられている場合があり、複数ある船倉の1つずつを別個に乾燥すると非常に効率が悪く、また、複数ある船倉のそれぞれに別個に乾燥装置を設けるとコストが高くなってしまう。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、貨物船の船倉の内面を効率よく乾燥することができる船倉乾燥システムおよび船倉乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の船倉乾燥システムは、貨物が積載される船倉を備える貨物船において、前記船倉の内面を乾燥するための船倉乾燥システムであって、前記船倉内の空気よりも、温度が高く、圧力が高く、相対湿度が低い高温低湿度圧縮空気を生成する乾燥空気生成装置と、前記船倉と前記乾燥空気生成装置とを流体接続し、前記乾燥空気生成装置から前記船倉内に前記高温低湿度圧縮空気を導くように配置される配管とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記乾燥空気生成装置が、大気中の空気を圧縮して圧縮空気を生成するための圧縮機と、前記圧縮空気を冷却することで前記圧縮空気の水分量を低下させて低水分圧縮空気を生成するための冷却器と、前記低水分圧縮空気を前記船倉内の空気よりも高い温度に加熱することで、前記低水分圧縮空気の相対湿度を前記船倉内の空気の相対湿度よりも下げて、高温低湿度圧縮空気を生成するための加熱器とを備えることが好ましい。
【0009】
前記貨物船が、複数の船倉を備え、前記配管は、前記複数の船倉を直列に流体接続して、前記複数の船倉のうちの上流側の1つの船倉に前記高温低湿度圧縮空気を導くことにより、前記1つの船倉から排出された前記高温低湿度圧縮空気が、前記1つの船倉に直列に流体接続された下流側の他の船倉内に順に導かれるように配置されていることが好ましい。
【0010】
また、前記貨物船が、少なくとも2つの船倉を含む船倉の組を複数備え、それぞれの前記船倉の組に含まれる少なくとも2つの船倉は、それぞれに貫通孔が設けられ、前記貫通孔を介して互いに流体接続されており、前記配管は、複数の船倉の組を直列に流体接続して、前記複数の船倉の組のうちの上流側の1つの船倉の組の少なくとも2つの船倉内に前記高温低湿度圧縮空気を導くことにより、前記1つの船倉の組の少なくとも2つの船倉から排出された前記高温低湿度圧縮空気が、前記1つの船倉の組に直列に流体接続された下流側の他の船倉の組の少なくとも2つの船倉内に順に導かれるように配置されていることが好ましい。
【0011】
また、前記乾燥空気生成装置は、生成した前記高温低湿度圧縮空気を、窒素ガス以外のガスを除去するためのガスフィルタを通過させることにより、窒素ガスを生成することができるように構成され、前記乾燥空気生成装置は、前記高温低湿度圧縮空気および前記窒素ガスを切り替えて前記配管に送り込むことができるように構成されることが好ましい。
【0012】
本発明の船倉乾燥方法は、貨物が積載される船倉を備える貨物船において、前記船倉の内面を乾燥するための方法であって、前記船倉内の空気よりも、温度が高く、圧力が高く、相対湿度が低い高温低湿度圧縮空気を生成することと、配管を介して前記高温低湿度圧縮空気を前記船倉内に導くこととを含むことを特徴とする。
【0013】
また、前記高温低湿度圧縮空気を生成することが、大気中の空気を圧縮して圧縮空気を生成することと、前記圧縮空気を冷却することで前記圧縮空気中の水分量を低下させて低水分圧縮空気を生成することと、前記低水分圧縮空気を前記船倉内の空気よりも高い温度に加熱することで、前記低水分圧縮空気の相対湿度を前記船倉内の空気の相対湿度よりも下げて、前記高温低湿度圧縮空気を生成することとを含むことが好ましい。
【0014】
また、前記貨物船が、複数の船倉を備え、前記高温低湿度圧縮空気を前記船倉内に導くことが、前記配管を介して前記複数の船倉を互いに直列に流体接続することと、前記複数の船倉のうちの上流側の1つの船倉内に前記高温低湿度圧縮空気を導くことにより、前記1つの船倉から排出された前記高温低湿度圧縮空気を、前記1つの船倉に直列に流体接続された下流側の他の船倉内に順に導くこととを含むことが好ましい。
【0015】
また、前記貨物船が、少なくとも2つの船倉を含む船倉の組を複数備え、それぞれの前記船倉の組に含まれる少なくとも2つの船倉は、それぞれに貫通孔が設けられ、前記貫通孔を介して互いに流体接続されており、前記高温低湿度圧縮空気を前記船倉内に導くことが、前記配管を介して前記複数の船倉の組を互いに直列に流体接続することと、前記複数の船倉の組のうちの上流側の1つの船倉の組の少なくとも2つの船倉内に前記高温低湿度圧縮空気を導くことにより、前記1つの船倉の組の少なくとも2つの船倉から排出された前記高温低湿度圧縮空気を、前記1つの船倉の組に直列に流体接続された下流側の他の船倉の組の少なくとも2つの船倉内に順に導くこととを含むことが好ましい。
【0016】
また、前記船倉乾燥方法を実施することにより前記船倉の内面を乾燥した後に、前記配管を介して窒素ガスを前記船倉内に導くことをさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、貨物船の船倉の内面を効率よく乾燥することができる船倉乾燥システムおよび船倉乾燥方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る船倉乾燥システムの一例を模式的に示す上面図である。
図2図1の船倉乾燥システムの船倉の組を示す図であり、図1のA方向から見た矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る船倉乾燥システムおよび船倉乾燥方法を説明する。ただし、以下に示す実施形態は一例であり、本発明の船倉乾燥システムおよび船倉乾燥方法は、以下の例に限定されることはない。
【0020】
<船倉乾燥システム>
本実施形態の船倉乾燥システム1は、図1に示されるように、貨物が積載される船倉Cを備える貨物船Sにおいて、船倉Cの内面を乾燥するために使用される。船倉乾燥システム1は、船倉Cの内面に付着した水分の少なくとも一部または全部を気化させることにより、船倉Cの内面に付着した水分の量を減少させ、または船倉Cの内面に付着した水分を取り除く。
【0021】
貨物船Sは、貨物を船倉C内に積載し、積載した貨物を海上輸送する船である。貨物船Sが海上輸送する貨物としては、特に限定されることはなく、原油や化学薬品などの液体貨物が例示される。特に貨物が液体の場合は、水分が混ざることにより汚染されやすく、あるいは、水分と化学反応して変質する可能性があり、船倉Cの内面に付着した水分を除去する必要性が高い。したがって、本実施形態の船倉乾燥システム1は、液体貨物を積載して海上輸送する液体貨物船に好適に採用される。以下では、その液体貨物船を例に挙げて、船倉乾燥システム1を説明する。ただし、船倉乾燥システム1は、船倉の内面を乾燥する必要のある貨物船であれば、液体貨物船に限定されることはなく、他の種類の貨物を積載する貨物船にも適用することができる。
【0022】
船倉C(「カーゴタンク」とも呼ばれる)は、貨物船Sに設けられ、積載された貨物を収容する。船倉Cは、貨物を収容するための空間を内部に有し、空間を囲繞する壁面により区画される。船倉Cは、貨物船Sに積載される貨物の種類や量に応じて、貨物船Sに設けられる数や大きさが適宜設定される。貨物船Sは、単一の船倉を備えていてもよいし、図1に示された例のように、複数(図示された例では10)の船倉C11〜C52を備えていてもよい。また、貨物船Sは、以下でも詳しく述べるように、少なくとも2つの船倉を含む船倉の組C1〜C5を複数備えていてもよい。船倉Cでは、貨物を入れ替える際の洗浄によって内面に水分が付着する場合もあるし、内部の空気と内面(壁面)との温度差により結露して内面に水分が付着する場合もある。このような水分は、貨物を汚染する要因となり得るし、貨物(特に化学薬品)と化学反応して爆発する危険性すらある。したがって、船倉Cでは、貨物を積載する前に、内面に付着した水分が除去されることが好ましい。
【0023】
複数の船倉C11〜C52は、図1に示された例では、船首側から船尾側に向かって(図中左から右へ)2列に並んで配置されている。そして、右舷側(図中上側)の船倉C11、C21、C31、C41、C51のそれぞれは、左舷側(図中下側)の船倉C12、C22、C32、C42、C52のそれぞれと連通されて、船倉の組C1、C2、C3、C4、C5を形成している。ただし、複数の船倉C11〜C52の配置は、図示された例に限定されることはなく、複数の船倉C11〜C52は、船倉の組を構成することなくそれぞれが独立していてもよいし、3つ以上の船倉が船倉の組を形成するように配置されてもよい。
【0024】
複数の船倉C11〜C52のそれぞれは、図1および図2に示された例では、互いに同様の構造を有している。船倉C11を例に挙げて説明すると、船倉C11は、貨物が収容される空間を画定する側壁W1、底壁W2および上壁W3と、船倉C12と連通するため側壁W1に設けられた貫通孔Hとを備えている。船倉Cの内面とは、側壁W1、底壁W2および上壁W3の内部空間と接する面のことをいう。船倉C11は、船倉C12と、それぞれの貫通孔H、Hを介して連通され、船倉の組C1を形成する。他の船倉の組C2〜C5についても同様である。このように、少なくとも2つの船倉が、後述する配管3とは別の貫通孔Hを介して連通されることで、両者の内部にある流体が均等に混ざる。なお、本実施形態の船倉乾燥システム1が適用可能な船倉Cは、貨物を収容する空間を有し、その空間を囲繞する内面を有するものであればよく、図示された例に限定されることはない。
【0025】
つぎに、図1を参照して、本実施形態の船倉乾燥システム1を説明する。船倉乾燥システム1は、図1に示されるように、乾燥空気を生成する乾燥空気生成装置2と、船倉Cと乾燥空気生成装置2とを流体接続する配管3とを備えている。船倉乾燥システム1は、乾燥空気生成装置2から配管3を介して乾燥空気を船倉C内に導くことにより、船倉Cの内面を乾燥する。船倉乾燥システム1は、本実施形態では、貨物船Sに設置されて使用されるが、貨物船S以外の船や陸上に設置されて使用されてもよい。
【0026】
乾燥空気生成装置2は、船倉C内の空気よりも、温度が高く、圧力が高く、相対湿度が低い高温低湿度圧縮空気を生成する。高温低湿度圧縮空気は、船倉C内に導かれることで、船倉Cの内面の近傍に流れて、船倉Cの内面に付着した水分を気化させて水蒸気として取り込む。高温低湿度圧縮空気は、船倉C内の空気よりも温度が高く、相対湿度が低いことにより、船倉Cの内面に付着した水分を水蒸気として取り込むための容量が大きく、また船倉C内の空気よりも圧力が高いことにより、船倉C内に送り込まれた時に膨張して、船倉Cの内面の近傍に素早く到達することができる。これにより、高温低湿度圧縮空気は、船倉C内の内面に付着した水分を素早く気化させ、船倉C内の内面を効率よく乾燥することができる。
【0027】
高温低湿度圧縮空気の温度、圧力および相対湿度は、たとえば船倉C内で水分が付着している内面の近傍(たとえば、内面から10cm以内が好ましく、50cm以内がより好ましく、100cm以内がよりさらに好ましい)の空気を基準に設定することができる。船倉Cの内面に付着した水分が気化せずに残存したり、結露することにより新たに水分が付着したりするのは、船倉Cの内面の近傍に存在する空気の影響が大きい。したがって、高温低湿度圧縮空気の温度、圧力および相対湿度は、船倉C内で水分が付着している内面の近傍の空気を基準に設定することが好ましい。ただし、高温低湿度圧縮空気の温度、圧力および相対湿度は、船倉C内であれば、他の場所の空気を基準にしてもよい。
【0028】
高温低湿度圧縮空気の温度、圧力および相対湿度は、船倉C内の空気とともに、船倉C外の大気中の空気を基準に設定することもできる。高温低湿度圧縮空気の温度は、たとえば、大気中の空気よりも高い温度に設定することができ、より具体的には、大気中の空気の温度が25℃以下の場合は、28℃以上、大気中の空気の温度が25℃以上の場合は、大気中の温度+3℃以上に設定することができる。また、高温低湿度圧縮空気の圧力は、たとえば、大気圧よりも高い圧力に設定することができ、より具体的には、好ましくは2気圧以上、より好ましくは4気圧以上、よりさらに好ましくは8気圧以上に設定することができる。ただし、高温低湿度圧縮空気の圧力は、取り扱いの容易さの観点から、それ以上の圧力を有するガスが高圧ガスとして定義される圧力(10気圧)よりも低いことが好ましい。高温低湿度圧縮空気の相対湿度は、たとえば、大気中の空気よりも低い相対湿度に設定することができ、より具体的には、大気中の空気の相対湿度に応じて、50RH%以下、好ましくは30RH%以下、より好ましくは10RH%以下、よりさらに好ましくは5RH%以下に設定することができる。
【0029】
高温低湿度圧縮空気の温度、圧力および相対湿度は、たとえば船倉C内の所定の場所に、および/または船倉C外の大気中に設けられた、温度、圧力および相対湿度のそれぞれを計測するためのセンサの計測結果からフィードバックされて、リアルタイムで調整されてもよいし、予め計測された温度、圧力および相対湿度の値に基づいて設定されてもよい。
【0030】
乾燥空気生成装置2は、船倉C内の空気よりも、温度が高く、圧力が高く、相対湿度が低い高温低湿度圧縮空気を生成することができればよく、その構成は特に限定されることはない。乾燥空気生成装置2は、本実施形態では、図1に示されるように、大気中の空気を圧縮するための圧縮機21と、圧縮機21により圧縮された空気を冷却するための冷却器22と、冷却器22により冷却された空気を加熱するための加熱器23とを備える。乾燥空気生成装置2はさらに、圧縮機21により圧縮された空気に含まれるオイルを除去するためのオイルフィルタを備えていてもよい。乾燥空気生成装置2は、オイルフィルタを備えることで、よりクリーンな高温低湿度圧縮空気を生成することができる。
【0031】
圧縮機21は、大気中の空気を圧縮して圧縮空気を生成する。圧縮機21により大気中の空気を圧縮することで、船倉C内に高い圧力の乾燥空気を送り込むことができ、船倉Cの内面を効率よく乾燥することができる。圧縮機21により生成される圧縮空気の圧力は、少なくとも大気圧(および船倉C内の空気の圧力)よりも高ければよく、特に限定されることはないが、船倉Cの内面を効率よく乾燥するという観点から、好ましくは2気圧以上、より好ましくは4気圧以上、よりさらに好ましくは8気圧以上とすることができる。ただし、圧縮空気の圧力は、取り扱いの容易さの観点から、それ以上の圧力を有するガスが高圧ガスとして定義される圧力(10気圧)よりも低いことが好ましい。圧縮機21としては、大気中の空気を圧縮することができれば、特に限定されることはないが、スクリューコンプレッサを好適に採用することができる。圧縮機21としてスクリューコンプレッサを採用することで、圧縮空気を効率よく生成することができる。
【0032】
冷却器22は、圧縮空気を冷却することで圧縮空気の水分量を低下させて低水分圧縮空気を生成する。冷却器22により冷却される温度は、圧縮されて高温になった圧縮空気に含まれる水分量を低下させることができればよく、特に限定されることはないが、たとえば大気温度(および船倉C内の空気の温度)よりも低い温度、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、よりさらに好ましくは5℃以下の温度が採用される。冷却器22は、圧縮空気を冷却することができれば、特に限定されることはなく、たとえば冷却水や他の冷媒と熱交換させることにより、圧縮空気を冷却してもよい。
【0033】
加熱器23は、低水分圧縮空気を船倉C内の空気よりも高い温度に加熱することで、低水分圧縮空気の相対湿度を船倉C内の空気の相対湿度よりも下げて、高温低湿度圧縮空気を生成する。このように、圧縮空気を一度冷却して圧縮空気の水分量を減らした上で、さらに加熱して圧縮空気の相対湿度を下げることで、圧縮空気の水蒸気の受け入れ容量をより大きくすることができる。したがって、このようにして生成される高温低湿度圧縮空気は、船倉Cの内面に付着した水分をより多く気化させ、船倉Cの内面をより効率的に乾燥することができる。加熱器23は、低水分圧縮空気を船倉C内の空気よりも高い温度に加熱することができれば、特に限定されることはなく、たとえば冷却器22によって冷却される前の圧縮空気と熱交換させることにより、低水分圧縮空気を加熱してもよい。その場合、冷却器22によって圧縮空気を冷却する前に、熱交換によって圧縮空気が冷却されるので、冷却器22の冷却のためのエネルギー消費を抑えることができる。
【0034】
乾燥空気生成装置2は、図1に示されるように、生成した高温低湿度圧縮空気を、窒素ガス以外のガス(たとえば酸素ガス)を除去するためのガスフィルタ4(たとえば活性炭フィルタ)を通過させることにより、純度の高い窒素ガスを生成することができるように構成されていてもよい。乾燥空気生成装置2は、バルブV1、V2の開閉操作を行なうことで、高温低湿度圧縮空気および窒素ガスを切り替えて配管3に送り込むことができるように構成される。乾燥空気生成装置2は、バルブV1を開放して、バルブV2を閉鎖した状態で、高温低湿度圧縮空気を配管3に送り込み、高温低湿度圧縮空気により船倉Cの内面を乾燥した後に、バルブV1を閉鎖して、バルブV2を開放した状態で、窒素ガスを生成し、生成した窒素ガスを配管3に送り込み、それによって船倉C内の空気を窒素ガスと置換することができる。船倉Cの内面に水分がほぼ無い状態とした上で、船倉C内を窒素ガス(不活性ガス)で充填することにより、たとえば爆発の危険性のある液体貨物を船倉C内に安全に積載することができる。このように、同じ乾燥空気生成装置2により、高温低湿度圧縮空気および窒素ガスを切り替えて配管3に送り込むことができるので、それぞれの気体を生成するための装置を別々に設ける場合と比べて、設備費用を抑えることができるとともに、設置スペースを小さくすることができる。
【0035】
配管3は、高温低湿度圧縮空気などの気体を所定の場所まで導くための管である。配管3は、図1に示されるように、船倉Cと乾燥空気生成装置2とを流体接続し、乾燥空気生成装置2から船倉Cに高温低湿度圧縮空気(および後述する窒素ガス)を導くように配置される。配管3はさらに、船倉C内の気体を船倉C外へ排出するように配置される。配管3は、本実施形態では、液体貨物を船倉C内に送り込み、船倉C外に送り出すための送排液管31と、気体を船倉C内に送り込み、船倉C外に送り出すための給排気管32とを活用して配置される。このように既存の配管設備を活用することで、船倉Cの内面を乾燥するために新たな配管を設置する必要がなく、設備費用を抑えることができる。ただし、配管3は、既存の送排液管31および給排気管32とは別に設けられてもよい。
【0036】
配管3は、本実施形態では、図1に示されるように、複数の船倉の組C1〜C5を直列に流体接続するように配置される。より具体的に説明すると、配管3の送排液管31は、一端側がバルブV1またはV2を介して乾燥空気生成装置2に流体接続される送排液主管310と、送排液主管310から分岐して各船倉の組C1〜C5に流体接続される送排液枝管311〜315とを備え、配管3の給排気管32は、一端側が船倉Cの外部の大気に流体接続される給排気主管320と、給排気主管320から分岐して各船倉の組C1〜C5に流体接続される給排気枝管321〜325とを備えている。そして、図示されるように、第1の送排液枝管311と第2の送排液枝管312との間の送排液主管310の部分(図中の2点鎖線部分)、第3の送排液枝管313と第4の送排液枝管314との間の送排液主管310の部分(図中の2点鎖線部分)、第2の給排気枝管322と第3の給排気枝管323との間の給排気主管320の部分(図中の2点鎖線部分)、および第4の給排気枝管324と第5の給排気枝管325との間の給排気主管320の部分(図中の2点鎖線部分)が分断されている。これにより、複数の船倉の組C1〜C5のうちの上流側の1つの船倉の組C1の少なくとも2つの船倉C11、C12内に高温低湿度圧縮空気を導くことにより、1つの船倉の組C1の少なくとも2つの船倉C11、C12から排出された高温低湿度圧縮空気が、1つの船倉の組C1に直列に流体接続された下流側の他の船倉の組C2〜C5の少なくとも2つの船倉C21、C22〜C51、C52内に順に送り込まれる。なお、最初の船倉から排出されて引き続く船倉に導かれる高温低湿度圧縮空気は、最初の船倉に導かれた際の高温低湿度圧縮空気の状態から変化している(たとえば圧力が低下している)可能性があるが、ここでは、最初に導かれた高温低湿度圧縮空気から変化した気体も含めて高温低湿度圧縮空気と呼ぶ。
【0037】
高温低湿度圧縮空気の流れをさらに具体的に説明すると、乾燥空気生成装置2で生成された高温低湿度圧縮空気は、開放されたバルブV1を介して、送排液主管310および第1の送排液枝管311を通って第1の船倉の組C1の船倉C11、C12の両方に導かれる。このとき、船倉C11、C12は、互いに貫通孔H、Hを介して連通しているので、たとえ第1の送排液枝管311によって互いに均等に高温低湿度圧縮空気が導入されなくても、貫通孔H、Hを介して高温低湿度圧縮空気が双方においてより均等に混ざり合う。したがって、船倉C11、C12の両方の内面がより均等に乾燥する。つぎに、第1の船倉の組C1の船倉C11、C12に導かれた高温低湿度圧縮空気の一部が、船倉C11、C12から排出されて、第1の給排気枝管321、給排気主管320および第2の給排気枝管322を通って第2の船倉の組C2の船倉C21、C22の両方に導かれる。このときも、船倉C21、C22は、互いに貫通孔H、Hを介して連通されているので、たとえ第2の給排気枝管322によって互いに均等に高温低湿度圧縮空気が導入されなくても、貫通孔H、Hを介して高温低湿度圧縮空気が双方においてより均等に混ざり合う。続いて、同様に、第2の船倉の組C2に導かれた高温低湿度圧縮空気の一部が、第2の船倉の組C2から排出されて、第2の送排液枝管312、送排液主管310および第3の送排液枝管313を通って第3の船倉の組C3の船倉C31、C32の両方に導かれ、第3の船倉の組C3に導かれた高温低湿度圧縮空気の一部が、第3の船倉の組C3から排出されて、第3の給排気枝管323、給排気主管320、第4の給排気枝管324を通って第4の船倉の組C4の船倉C41、C42の両方に導かれ、第4の船倉の組C4に導かれた高温低湿度圧縮空気の一部が、第4の船倉の組C4から排出されて、第4の送排液枝管314、送排液主管310および第5の送排液枝管315を通って第5の船倉の組C5の船倉C51、C52の両方に導かれ、第5の船倉の組C5に導かれた高温低湿度圧縮空気の一部が、第5の船倉の組C5から排出されて、第5の給排気枝管325および給排気主管320を通って船倉Cの外部の大気に排出される。
【0038】
このように、直列に流体接続された複数の船倉の組C1〜C5の上流から下流にかけて順に高温低湿度圧縮空気が導かれることにより、上流の船倉の組で船倉の内面の乾燥に寄与することなく排出された高温低湿度圧縮空気を下流の船倉の組で船倉の内面を乾燥するために有効利用できるので、複数の船倉の組に別々に高温低湿度圧縮空気を送り込む場合と比べて、高温低湿度圧縮空気の使用量を少なくすることができ、効率よく複数の船倉の組の船倉の内面を乾燥することができる。そして、2つの船倉を1つの船倉の組とした上で、その2つの船倉を、配管とは別に貫通孔を介して連通することで、2つの船倉の内面をより均等に乾燥して、複数の船倉の内面を効率よく乾燥することができる。また、複数の船倉C11〜C52のそれぞれに対して別個に枝管を設けるのではなく、1つの船倉の組に対して1つの枝管を設ければよいので、配管3をコンパクトに配置することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、2つの船倉を含む船倉の組の複数が直列に流体接続されているが、3つ以上の船倉を含む船倉の組の複数が直列に流体接続されてもよい。また、船倉が船倉の組を形成することなく、配管3が、複数の船倉C11〜C52を直列に流体接続して、複数の船倉のうちの上流側の1つの船倉に高温低湿度圧縮空気を導くことにより、1つの船倉から排出された高温低湿度圧縮空気が、1つの船倉に直列に流体接続された下流側の他の船倉内に順に導かれるように配置されてもよい。それにより、直列に流体接続された複数の船倉C11〜C52の上流から下流にかけて順に高温低湿度圧縮空気が導かれることにより、上流の船倉の内面の乾燥に寄与することなく排出された高温低湿度圧縮空気を下流の船倉の内面を乾燥するために有効利用できるので、複数の船倉に別々に高温低湿度圧縮空気を送り込む場合と比べて、高温低湿度圧縮空気の使用量を少なくすることができ、効率よく複数の船倉の内面を乾燥することができる。
【0040】
以上において、乾燥空気生成装置2により生成された高温低湿度圧縮空気が配管3を介して船倉Cに導かれることを説明したが、乾燥空気生成装置2は、高温低湿度圧縮空気にかえて窒素ガスを配管3に送り込むことにより、高温低湿度圧縮空気と同じように船倉C内に窒素ガスを導くこともでき、それによって船倉C内の空気を窒素ガスと置換することができる。さらに、乾燥空気生成装置2は、複数の船倉の組C1〜C5が配管3により直列に流体接続されている場合や、複数の船倉C11〜C52が配管3により直列に流体接続されている場合において、配管3を介して上流側の船倉内に窒素ガスを送り込むことで、上流側から下流側へと順に窒素ガスが導かれて、複数の船倉C11〜C52内の空気を窒素ガスと効率よく置換することができる。
【0041】
<船倉乾燥方法>
つぎに、図1を参照しながら、本実施形態の船倉乾燥方法を説明する。以下の説明では、理解しやすいように、上述した船倉乾燥システムを例に挙げながら、本実施形態の船倉乾燥方法を説明するが、本実施形態の船倉乾燥方法は、上述した船倉乾燥システムを使用することなく実施することもできる。また、以下では、船倉乾燥システムに関連して説明した要素と同じ要素は、特に言及しない限り、上述したのと同一の機能や特性を有するものとする。
【0042】
本実施形態の船倉乾燥方法は、貨物が積載される船倉Cを備える貨物船Sにおいて、船倉Cの内面を乾燥するための方法である。この船倉乾燥方法では、船倉C内の空気よりも、温度が高く、圧力が高く、相対湿度が低い高温低湿度圧縮空気を生成することと、配管3を介して高温低湿度圧縮空気を船倉C内に導くこととを含んでいる。高温低湿度圧縮空気は、船倉C内に導かれることで、船倉Cの内面の近傍に流れて、船倉Cの内面に付着した水分を気化させて水蒸気として取り込む。高温低湿度圧縮空気は、船倉C内の空気よりも温度が高く、相対湿度が低いことにより、船倉Cの内面に付着した水分を水蒸気として取り込むための容量が大きく、また船倉C内の空気よりも圧力が高いことにより、船倉C内に送り込まれた時に膨張して、船倉Cの内面の近傍に素早く到達することができる。これにより、高温低湿度圧縮空気は、船倉C内の内面に付着した水分を素早く気化させ、船倉C内の内面を効率よく乾燥することができる。
【0043】
高温低湿度圧縮空気を生成する方法は、特に限定されることはないが、まず、大気中の空気を圧縮して圧縮空気を生成することから開始される。空気の圧縮は、特にその方法は限定されないが、効率性の観点から、たとえばスクリューコンプレッサを用いて行うことができる。生成された圧縮空気は、オイルを除去するためのオイルフィルタを通過させることにより、包含するオイルが除去されてもよい。つぎに、圧縮空気を冷却することで圧縮空気中の水分量を低下させて低水分圧縮空気を生成することが行なわれる。圧縮空気の冷却は、特にその方法は限定されないが、たとえば冷却水や他の冷媒と熱交換することにより行なうことができる。最後に、低水分圧縮空気を船倉C内の空気よりも高い温度に加熱することで、低水分圧縮空気の相対湿度を船倉C内の空気の相対湿度よりも下げて、高温低湿度圧縮空気を生成することが行なわれる。低水分圧縮空気の加熱は、特にその方法は限定されることはないが、たとえば冷却される前の圧縮空気と熱交換することにより行なうことができる。圧縮空気を一度冷却して圧縮空気の水分量を減らした上で、さらに加熱して圧縮空気の相対湿度を下げることで、圧縮空気の水蒸気の受け入れ容量をより大きくすることができる。したがって、このようにして生成される高温低湿度圧縮空気は、船倉Cの内面に付着した水分をより多く気化させ、船倉Cの内面をより効率的に乾燥することができる。
【0044】
高温低湿度圧縮空気を船倉C内に導く際に、配管3を介して複数の船倉C11〜C52を互いに直列に流体接続して、複数の船倉C11〜C52のうちの上流側の1つの船倉内に高温低湿度圧縮空気を導くことにより、1つの船倉から排出された高温低湿度圧縮空気を、1つの船倉に直列に流体接続された下流側の他の船倉内に順に導いてもよい。このように、直列に流体接続された複数の船倉C11〜C52の上流から下流にかけて順に高温低湿度圧縮空気が導かれることにより、上流の船倉の内面の乾燥に寄与することなく排出された高温低湿度圧縮空気を下流の船倉の内面を乾燥するために有効利用できるので、複数の船倉に別々に高温低湿度圧縮空気を送り込む場合と比べて、高温低湿度圧縮空気の使用量を少なくすることができ、効率よく複数の船倉の内面を乾燥することができる。
【0045】
また、高温低湿度圧縮空気を船倉C内に導く際に、少なくとも2つの船倉を1つの船倉の組として、配管3を介して複数の船倉の組C1〜C5を互いに直列に流体接続して、複数の船倉の組C1〜C5のうちの上流側の1つの船倉の組C1の少なくとも2つの船倉C11、C12内に高温低湿度圧縮空気を導くことにより、1つの船倉の組C1の少なくとも2つの船倉C11、C12から排出された高温低湿度圧縮空気を、1つの船倉の組C1に直列に流体接続された下流側の他の船倉の組C2〜C5の少なくとも2つの船倉C21、C22〜C51、C52内に順に導いてもよい。このように、直列に流体接続された複数の船倉の組C1〜C5の上流から下流にかけて順に高温低湿度圧縮空気が導かれることにより、上流の船倉の組で船倉の内面の乾燥に寄与することなく排出された高温低湿度圧縮空気を下流の船倉の組で船倉の内面を乾燥するために有効利用できるので、複数の船倉の組に別々に高温低湿度圧縮空気を送り込む場合と比べて、高温低湿度圧縮空気の使用量を少なくすることができ、効率よく複数の船倉の組の船倉の内面を乾燥することができる。そして、2つの船倉を1つの船倉の組とした上で、その2つの船倉を、配管3とは別の貫通孔Hを介して連通することで、2つの船倉の内面をより均等に乾燥して、複数の船倉の内面を効率よく乾燥することができる。
【0046】
上述した船倉乾燥方法を実施することにより船倉Cの内面を乾燥した後に、配管3を介して窒素ガスを船倉C内に導いてもよい。それによって、船倉C内の空気を窒素ガスと置換することができる。上述した船倉乾燥方法により船倉Cの内面に水分がほぼ無い状態とした上で、船倉C内を窒素ガス(不活性ガス)で充填することにより、たとえば爆発の危険性のある液体貨物を船倉C内に安全に積載することができる。複数の船倉C11〜C52が配管3により直列に流体接続されている場合や、複数の船倉の組C1〜C5が配管3により直列に流体接続されている場合において、配管3を介して上流側の船倉内に窒素ガスを送り込むことで、上流側から下流側へと順に窒素ガスが導かれて、複数の船倉C11〜C52内の空気を窒素ガスと効率よく置換することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 船倉乾燥システム
2 乾燥空気生成装置
21 圧縮機
22 冷却器
23 加熱器
3 配管
31 送排液管
310 送排液主管
311〜315 第1〜第5の送排液枝管
32 給排気管
320 給排気主管
321〜325 第1〜第5の給排気枝管
4 窒素ガス以外のガスを除去するためのガスフィルタ
C 船倉
C1〜C5 第1〜第5の船倉の組
C11〜C52 船倉
H 貫通孔
S 貨物船
V1、V2 バルブ
W1 側壁
W2 底壁
W3 上壁
【要約】
【課題】貨物船の船倉の内面を効率よく乾燥することができる船倉乾燥システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の船倉乾燥システムは、貨物が積載される船倉Cを備える貨物船Sにおいて、船倉Cの内面を乾燥するための船倉乾燥システム1であって、船倉C内の空気よりも、温度が高く、圧力が高く、相対湿度が低い高温低湿度圧縮空気を生成する乾燥空気生成装置2と、船倉Cと乾燥空気生成装置2とを流体接続し、乾燥空気生成装置2から船倉C内に高温低湿度圧縮空気を導くように配置される配管3とを備えることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2