(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775215
(24)【登録日】2020年10月8日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】鉄系超伝導永久磁石およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 6/06 20060101AFI20201019BHJP
B22F 3/00 20060101ALI20201019BHJP
C22C 1/04 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
H01F6/06 140
B22F3/00 F
C22C1/04 F
【請求項の数】21
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-551334(P2017-551334)
(86)(22)【出願日】2016年4月1日
(65)【公表番号】特表2018-512737(P2018-512737A)
(43)【公表日】2018年5月17日
(86)【国際出願番号】US2016025648
(87)【国際公開番号】WO2016161336
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2019年4月1日
(31)【優先権主張番号】62/141,659
(32)【優先日】2015年4月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515254998
【氏名又は名称】ザ フロリダ ステイト ユニバーシティー リサーチ ファウンデーション, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】THE FLORIDA STATE UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION, INCORPORATED
(73)【特許権者】
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・ワイス
(72)【発明者】
【氏名】山本 明保
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ヘルストロム
【審査官】
鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−227329(JP,A)
【文献】
特開2014−240521(JP,A)
【文献】
特開2012−214329(JP,A)
【文献】
特開2008−034692(JP,A)
【文献】
特開平10−087328(JP,A)
【文献】
特開2010−070441(JP,A)
【文献】
J. D. Weiss,Evidence for composition variations and impurity segregation at grain boundaries in high current-density polycrystalline K- and Co-doped BaFe2As2 superconducts,Appl. Phys. Lett.,米国,AIP,2014年10月23日,vol.105,no.16,p.162604
【文献】
J. D. Weiss et al,Mechanochemical synthesis of pnictide compounds and superconducting Ba0.6K0.4Fe2As2 bulks with high critical current density,Superconducting Sci. Tech.,米国,IOP Publishing,2013年,vol.26,no.7,p.74003
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/06
B22F 3/00
C22C 1/04
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導多結晶バルクを含む超伝導永久磁石であって、
前記超伝導多結晶バルクは、アルカリ土類金属と、鉄原子と、1つ以上のプニクチドとを含み、
前記超伝導多結晶バルクの結晶粒は、10μmより小さく、
前記超伝導永久磁石は、40Kより低い温度で、最大で1Tより大きい磁場を捕捉でき、
前記超伝導多結晶バルク中には、BaXO3[Xは、Zr、Sn、Hf及びTiからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。]で表される化合物からなる粒径30nm以下のナノ粒子が、1×1021m−3以上の体積密度で分散していない、
超伝導永久磁石。
【請求項2】
前記超伝導永久磁石は、超伝導多結晶バルクディスクのスタックを含む、
請求項1に記載の超伝導永久磁石。
【請求項3】
前記超伝導多結晶バルクは、層状構造を構成する鉄原子の正方格子を含む、
請求項1に記載の超伝導永久磁石。
【請求項4】
前記超伝導多結晶バルクは、1つ以上の多結晶円筒のスタックを更に含む、
請求項1に記載の超伝導永久磁石。
【請求項5】
前記超伝導多結晶バルクは、非テクスチャ構造の多結晶化合物を含む、
請求項1に記載の超伝導永久磁石。
【請求項6】
前記超伝導多結晶バルクは、テクスチャ構造の多結晶化合物を含む、
請求項1に記載の超伝導永久磁石。
【請求項7】
前記永久磁石の所定領域内で、空間的かつ時間的に、略均一に磁場が分布している、
請求項1に記載の超伝導永久磁石。
【請求項8】
前記超伝導多結晶バルクは、ビッカース硬度が1GPaより大きい多結晶化合物を含む、
請求項1に記載の超伝導永久磁石。
【請求項9】
前記超伝導多結晶バルクは、1MPam0.5より大きい破壊靱性を示す多結晶化合物を含む、
請求項1に記載の超伝導永久磁石。
【請求項10】
磁力線群に対して垂直な平面において、磁力線群の中心から前記平面のエッジまでの最短距離が1mm以上10000mm以下である、
請求項1に記載の超伝導永久磁石。
【請求項11】
導電体材料または絶縁体材料との複合材を形成する、
請求項1に記載の超伝導永久磁石。
【請求項12】
超伝導多結晶バルクを含む超伝導永久磁石であって、
前記超伝導永久磁石の前記超伝導多結晶バルクは、少なくとも1つの超伝導多結晶バルクディスクをさらに含み、
前記少なくとも1つの超伝導多結晶バルクディスクは、
層状構造を構成する鉄原子の正方格子と、
1つ以上のプニクチドと、
アルカリ土類金属とを含み、
前記少なくとも1つの超伝導多結晶バルクディスクの結晶粒は、10μmより小さく、
前記超伝導永久磁石は、40Kより低い温度で、最大で1Tより大きい磁場を捕捉でき、
前記超伝導多結晶バルク中には、BaXO3[Xは、Zr、Sn、Hf及びTiからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。]で表される化合物からなる粒径30nm以下のナノ粒子が、1×1021m−3以上の体積密度で分散していない、
超伝導永久磁石。
【請求項13】
前記少なくとも1つの超伝導多結晶バルクディスクは、2つ以上の超伝導多結晶バルクディスクを含む超伝導多結晶バルクディスクのスタックを含む、請求項12に記載の超伝導永久磁石。
【請求項14】
前記超伝導多結晶バルクの半径は、5mm以上である、
請求項1〜13のいずれか1項に記載の超伝導永久磁石。
【請求項15】
請求項1又は請求項12に記載の超伝導永久磁石の製造方法であって、
鉄系粉末を準備するステップと、
前記鉄系粉末を第1容器内で圧縮するステップと、
前記鉄系粉末を第2容器内で熱処理して前記超伝導多結晶バルクを得るステップと、
40Kより低い温度で前記超伝導多結晶バルクを磁化して前記超伝導永久磁石を得るステップと、を含む
方法。
【請求項16】
前記第1容器と前記第2容器は同じ容器である、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1容器と前記第2容器は異なる容器である、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記超伝導多結晶バルクを磁化して前記超伝導永久磁石を得るステップは、
磁場、パルス磁場、電場または電磁場を用いて前記超伝導多結晶バルクを磁化するステップをさらに含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記超伝導多結晶バルクは、層状構造を構成するFeの正方格子を含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記超伝導多結晶バルクは、As、P、S、Se、Te、FまたはOを含むアニオン原子の1つ以上をさらに含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の超伝導永久磁石を備える磁気共鳴装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年4月1日に出願され、発明の名称が“Iron-Pnictide Bulk Superconducting Magnet and Method of Manufacture”である米国仮出願(出願番号:第62/141,659号)を基礎とする優先権を主張する。同仮出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(米国政府の利益に関する声明)
本発明は、米国国立科学財団の材料研究所により与えられた認可番号DMR1306785、DMR1157490の下に、米国政府の支援によりなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、超伝導材料、特に、鉄系超伝導永久磁石材料に関する。
【背景技術】
【0004】
永久磁石が生成可能な磁場は最大1テスラ程度であり、ジェネレータ、モータ、フライホイール、磁気浮揚、磁気共鳴映像法(MRI)および研究用の磁石といったより高磁場が必要となる用途には不十分である。1テスラを超える磁場を生成するためには電磁石を利用する必要があるが、こうした技術を実現するにはコストが大幅に増大する。
【0005】
2008年に鉄系超伝導体が発見されてから、この超伝導体の合成と研究に多くの研究が行われてきた。研究の多くは、鉄系超伝導体が持つさまざまな用途に対する非常に魅力的な特性の報告、例えば異方性が小さいこと(約1〜2)、臨界磁場が大きいこと(90Tより大きい)、および、固有の臨界電流密度(1MAcm
−2(0T,4.2K)より大きい)が動機になって行われている。残念なことに、発見されたすぐ後、鉄系超伝導材料では、YBa
2Cu
3O
7−x(YBCO)などの希土類バリウムクプラート(REBCO)材料と同様に、粒界が電流をブロックすることがわかった(ただし、REBCOよりブロックの程度は低い)。注目すべきことに、細粒の、ランダム配向のKドープBaFe
2As
2(Ba122)が合成されて、約10kAcm
−2(4.2K,10T)の巨視的(global)臨界電流密度を有し、KドープBa122およびSrFe
2As
2(Sr122)のテクスチャ構造の(textured)テープが現在製造されて、Jcがさらに1桁増加している。
【0006】
機械的に強化された超伝導REBCO(Gd−Ba−Cu−O)材料が記録的なレベルの捕捉磁場(最大17.6テスラ)を生成することが当業者に知られているが、これら磁気的に強化された超伝導材料では、当該材料内では粒界が電流をブロックすることから大きさが制限され(半径50mm以下)、当該材料から成るサンプルは単結晶として成長させざるを得ず、これにより粒界がなくなる。超伝導体と対照的に、MgB
2は、固有の電流ブロックを受けないため、直径が大きい多結晶バルクとして製造でき、磁場を捕捉することができる。一方、MgB
2の捕捉磁場は約3Tに制限されることが示されている。これは高磁場用途としては不適当である。
【0007】
したがって、高い形状自由度(geometric versatility)を有し、低温での高磁場の捕捉性が向上した超伝導材料が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、ドープされた超伝導化合物(AE)Fe
2As
2から合成された多結晶材料を提供する。ここで、AEはアルカリ土類金属(Ba、Sr、MgおよびCa)を表す。本発明のバルク材料は、超伝導状態で誘導電流によって磁化され、これによりバルク材料の大きさに対応するバルク捕捉磁化を生じさせることができる。捕捉磁場の大きさは、1Tを超えることが実証されており、技術の進歩により10Tを超えると予想されている。これは、永久磁石および現在知られている他の超伝導多結晶バルクの能力を大きく凌ぐものである。本発明の鉄系多結晶超伝導永久磁石では、超伝導状態に入ると、内部に磁場を励起するための外部電力を加えなくとも、磁場が自発的に励起される。
【0009】
具体的な実施形態では、本発明は、約40Kより低い温度で約1Tより大きい磁場を発生させる鉄系多結晶超伝導永久磁石を提供する。
前記鉄系多結晶は、層状構造を構成するFeの正方格子を含む。
前記鉄系多結晶は、As、P、S、Se、Te、FまたはOを含む、1つ以上のアニオン原子をさらに含んでいてもよい。
【0010】
追加的な実施形態では、鉄系多結晶を含む超伝導永久磁石の製造方法であって、
鉄系粉末を準備するステップと、
前記鉄系粉末を第1容器内で圧縮するステップと、
前記鉄系粉末を第2容器内で熱処理するステップと、
約40Kより低い温度で前記鉄系多結晶を磁化して鉄系多結晶超伝導永久磁石を得るステップと、を含む
方法が提供される。
前記鉄系多結晶を磁化して鉄系多結晶超伝導永久磁石を得るステップは、磁場、パルス磁場、電場または電磁場を用いて前記鉄系多結晶を磁化するステップをさらに含んでいてもよい。
【0011】
したがって、本発明は、高い形状自由度を有し、低温での高磁場の捕捉性が向上した超伝導材料を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明を十分に理解するために、添付の図面に関連付けつつ、以下の詳細な説明を参照する。
【0013】
【
図1A】本発明の実施形態に係る例示的な超伝導永久磁石の多結晶を示す。
【
図1B】本発明に係る鉄系多結晶超伝導永久磁石の結晶構造を示す。
【
図2】本発明の実施形態に係る例示的な鉄系多結晶超伝導永久磁石の磁場に対する寸法を示す。
【
図3A】本発明の実施形態に係る、ディスク形状を有するKドープBa122バルクサンプル(直径10mm、厚さ3.7mm)の研磨表面の光学顕微鏡画像を示す。
【
図3B】本発明の実施形態に係る、サンプルが120mTの下で磁場中冷却された、11Kにおける残留(Happ=0)磁気光学画像を示す。
【
図3C】本発明の実施形態に係る、サンプルが120mTの下で磁場中冷却された、20Kにおける残留(Happ=0)磁気光学画像を示す。
【
図4】5Kで磁場中冷却されたバルクサンプルスタックについての、増加する温度の関数としての捕捉磁場と、サンプルおよびホールプローブの配置の簡易模式図を示す。
【
図5】本発明の実施形態に係る、5Kで得られた磁気ヒステリシスループを示す。
【
図6A】本発明の実施形態に係る、H2での、5Kにおける、捕捉磁場の磁気クリープの時間依存性を示す。
【
図6B】本発明の実施形態に係る、H2での、時間の関数としての、5,10および20Kにおける、正規化された捕捉磁場の磁気クリープを示す。
【
図7A】本発明の実施形態に係る、Ba122、アンドープMgB
2、およびCドープMgB
2バルクについての、印加された磁場に対する臨界電流密度を示す。ここで、破線は、外挿されたデータである。
【
図7B】本発明の実施形態に係る、
図7A中のデータから算出された、KドープBa122およびMgB
2の多結晶バルクについての、半径に対する最大捕捉磁場を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
永久磁石は、その磁気飽和により制限を受けるので、1Tより大きい磁場を生成することはできない。ただし、超伝導体の内部では誘導永久電流がトラップ(捕捉)され、バルク内を流れる電流ループの大きさに相当する磁場(B
trapped)が生成する。
【0016】
ここで、Aは幾何学的因子であり、μ
0は真空の透磁率であり、J
cbulkはバルク臨界電流密度(または巨視的に循環する(globally circulating)臨界電流密度)であり、
rはサンプルの半径である。
高磁場バルク磁石は、高いJ
cbulkと大きい
rを有し、明確に定義された形状を有していることが必要である。したがって、磁場捕捉能力は、J
c(H)(Ba122についてH
c2>90T)と機械的強度により大部分が制限される。
【0017】
現在、機械的に強化されたREBCO材料は、適度な温度(20Kより高温)で17Tより大きい磁場を生成することが記録されている。ただし、粒界(GB)が電流をブロック
するため、当該サンプル
は単結晶として成長
せざるを得ないから、当該材料の大きさは制限される(r≦50mm)。
対照的に、MgB2は、固有の電流ブロックを受けず、また、直径が大きい多結晶バルクとして製造できる。しかし、現在のところ、MgB2は、Hc2(限界Jc(H))が十分に高くなく、高磁場用途に関してYBCOと張り合うことができない。
Ba122は、YBCOおよびMgB2よりもTcとJcが低いにもかかわらず、MgB2の形状自由度を有し、高磁場においてより良好なJc(H)特性を示す。
【0018】
本発明の具体的な実施形態では、Ba、K、FeおよびAsを0.6:0.42:2:2のモル比で組み合わせ、メカノケミカル反応を生じさせ、その後に熱間等方圧加圧法(HIP)により600℃で焼結させた。
2つのHIP熱処理を実施してから再度ミリング加工を実施し、その後、約3gから約5gのBa122のパウダーを圧縮して直径15.9mmのペレットとし、276MPaでの冷間等方圧加圧法(CIP)によりさらに圧縮した。
次に、これらをAg箔でラッピングし、鋼管内に挿入した。鋼管は、予めペレットと箔を合わせた直径を有するように慎重に加工し、真空下で両端に栓をして溶接したものを用いた。
栓は、ペレットに向かって面取りし、鋼管がペレットの周囲を圧縮しやすくなるようにした。
次に、溶融チューブを揺動させかつ冷間等方圧加圧し、サンプルの直径を約10%低下させた。
最後に、熱間等方圧加圧法により、600℃で10時間、再度熱処理を行った。熱処理の後、ダイヤモンドソーを用いて鋼管をスライスし、ペレット表面を露出させた。
25gから2000gの負荷を用いて、ペレットの表面に対して室温でビッカース硬度(HV)の測定を行った。
光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いて、微小なくぼみ(micro-indentations)の検討、測定を行った。
【0019】
磁気光学(MO)イメージングを使用して、120mTをバルクサンプルの表面に垂直に印加した状態で、超伝導状態への磁場中冷却によって誘導された磁化電流によって生成された局所的磁場の形状を画像化した。
クライオスタットの大きさが限られているので、MOイメージングは厚さ3.7mmのサンプルに対して実施した。
次に、スペーサの片面に、トランスバース型極低温ホールセンサを含む直径約10mm、総厚さ約18.4mmのディスク形状122のバルクを積層し、ペレット間の磁束密度を測定した。
スタックの外側端に別のホールセンサを取り付けた。8Tの外部磁場を印加した状態で、ギフォードマクマホン極低温冷却器により約5Kまで冷却し、その後、外部磁場を取り除いた。
磁化を磁場中冷却し、外部磁場をゼロまで低下させた後、バルク内に捕捉された磁束密度を、スペーサの中心で、温度を上昇させつつ(0.2K/分の割合で)、さらに、これとは別に時間の関数として測定した。
磁気ヒステリシスループの測定について、サンプルを5Kまで零磁場冷却し、サンプルスタック中の磁束密度を、増減する外部磁場の関数として記録した。
【0020】
具体的な実施形態では、スケーラブルパウダーインチューブ技術を用いた熱間等方圧加圧法により、本発明の超伝導体を製造した。
ビッカース押込み(Vickers hardness indentation)の結果は、バルク材料が約1GPaより大きい高硬度と約1MPam
0.5より大きい破壊靱性を有することを示している。
サンプル直径が比較的小さく、高磁場中で大きな不可逆磁場(>90T)と小さなJ
Cの減衰とを示すBa
0.6K
0.4Fe
2As
2を用いると、より大きなバルクは、10Tを超える非常に高い磁場を捕捉すると予想される。
【0021】
図1Aは、本発明の実施形態に係る、Fe系超伝導永久超伝導体の多結晶100を示す。永久磁石の多結晶100は、不規則に配列した多結晶105を含んでいる。
多結晶は、テクスチャ構造であっても非テクスチャ構造であってもよい。
図1Bは、Fe系超伝導体(122相)115の多結晶構造を示す。
多結晶構造は、Fe原子125、アルカリ土類金属130およびプニクチド原子135を含んでいる。
【0022】
図2を参照して、本発明の鉄系多結晶超伝導永久磁石200は、磁力線群に対して垂直な平面において、磁力線群205の中心から平面215のエッジまでの最短距離210が約1mm以上約10000mmである。
【0023】
Ba122バルクの機械的特性を調べるために、室温でビッカース硬度を測定した。
HVの平均値は3.5(±0.2)GPaであった。
くぼみの角からクラックが伝播するのが観察された。これは、脆性材料では一般的に起こる。
図3Aは、厚さ3.7mmのバルクの1つの光学像を示している。
サンプル全体にわたって循環するバルク電流が生成する磁束密度を、磁気光学イメージングにより、
図3Bと
図3Cに示している。
図3Bと
図3Cは、120mTの磁場を印加し、
その後サンプルをTcからそれぞれ11Kと20Kまで磁場中冷却し、続けて磁場を取り除いたことにより捕捉された誘導電流により生じる残留磁束密度(H
app=0)を示している。
画像は、巨視的に見て均一である、周縁部での捕捉磁場勾配を示している。
図3Bと
図3Bに示す淡いコントラストは、サンプルの表面に対して垂直な方向の磁束密度が大きいことに対応している。
【0024】
図4は、表面の上に配置されたホールセンサ(H1)とBa122スタックのバルク磁石間に配置されたホールセンサ(H2)とにより、磁場中冷却(H
app=8T)の後に温度を上昇させつつ測定した捕捉磁場(H
app=0での)のグラフを示している。
H2は、H1から3.7mm離れた位置(最大の磁場が生じると予測されるスタックの中央から5.5mmの位置)に配置した。
5Kで、バルクスタックは、外側表面上(H1)で0.68Tの磁場を捕捉し、バルク間(H2)で1.02Tの磁場を捕捉した。
捕捉磁場の大きさは、温度の上昇とともに低下し、Tc(約33K)で消失した。
磁石スタックの全厚さと実験的にH1から得た捕捉磁場を用いて、ビオサバール近似により巨視的電流密度の平均値を求めたところ、約50kAcm
2であった。
これは、T=4.2K、H
app=0.6Tで小さいバルクサンプルに対して局所的磁化測定を行うことにより得られたJ
cに合う。
【0025】
磁場中冷却においては、傾斜率1.8T/hでは、磁束密度のジャンプは観察されなかった。
一例では、磁化した磁石の予期しない急冷により、外部磁場が、2T/secより大きい傾斜率に対応する、H
app=1.5Tから0Tまで急速に(1秒以内で)、除去された。磁束が急激に除去されたにもかかわらず、予想される臨界状態に素早く移行した捕捉磁場の値および磁気クリープの挙動は、H
appがゆっくりと除去された制御プロセス中のデータと同一であった。
【0026】
図5は、当初ゼロ磁場冷却されたバルクサンプルのスタック内部の磁束密度を、外部磁場の大きさを上昇、低下させつつ測定した結果を示す。
この実施形態では、サンプルを5Kまでゼロ磁場冷却し、サンプルスタック内部(H2)での磁束密度を、外部磁場の大きさを上昇、低下させつつ記録した。
差し込み図は、測定した最大磁場(8T)を超えてもヒステリシスループが開いた状態を維持していることを示している。
サンプルは、0.7TのH
appよりも小さい磁場で良好な遮蔽挙動を示した。また、ヒステリシスループは、8T(磁化した磁石の最大印加磁場である)より大きいH
appで開いた状態を維持した(差し込み図を参照)。
【0027】
図6Aは、5Kでの捕捉磁場の時間依存性を示している。
捕捉磁場は、5Kの状態で1日経過させた後、約3%減衰した。
図6Bは、5K、10Kおよび20Kでの捕捉磁場の緩和を正規化して時間の関数として示したグラフである。
磁石のクリープ速度は、熱的に活性化された磁束密度のデピンニングに起因して、維持する温度の上昇とともに増加した。
捕捉磁場は、20Kの状態で1日経過させた後、約7%減衰した。
図6Aと
図6Bに示す磁束のクリープ状態では、大きいKドープBa122の固有の特性に起因して生じる磁場が若干減衰していることが示されている。
超伝導永久磁石として実際に利用する場合、この臨界状態からの調整を行って磁束の状態を熱的に安定化させて約0.1ppm/h未満とし、これにより減衰を大幅に小さくする。
したがって、磁場を捕捉した後、温度、電流および磁場のうち何れかまたはすべてを制御し、臨界状態で生じる磁場よりも安定化した磁場を生成させることができる。
【0028】
バルク磁石は、産業上使用されている一般的なセラミック加工技術である、フライス加工(milling)、CIPおよびHIPを使用したスケーラブルかつ多用途な低コスト技術によって加工された。
パウダーインチューブ技術とその後に行う低温反応により、幾つかのバルクを1回で製造できる。
次に、バルクをスライスして所望の厚さとしてもよい。ここで、HIPの長さと直径により、最大バルク寸法が制限される。
さらに、鋼チューブには補強リングを追加する。この補強リングは、バルクの機械的強度をさらに向上させるように容易に設計可能なものであってよい。バルクの機械的強度の向上は、REBCOバルクを用いた高強度磁場を捕捉する上で非常に重要であることが照明されている。
捕捉磁場と電流との相互作用によりJ
c×Bに比例して大きくなる機械的な力が生じるので、高強度バルクと外部補強が重要である。
高い破壊靱性(Kc)を有する超伝導体は、その脆性破壊する構造に起因して、高磁場用途で用いられることが望ましい。
微小なくぼみの角部から伝播する微小クラックの長さから、以下の式に従って、Kcは大まかに約2.35(±0.14)MPam
0.5であると計算した。
【0030】
ここで、Pは印加する力(単位はN)、Cは、くぼみの中心からクラックの先端までの距離(単位はm)、0.0726は補正係数である。
この破壊靱性は、単結晶MnドープBa122、熱間等方圧加圧法により製造したMgB
2、トップシード溶融成長(top-seeded melt-grown)法により製造したバルクYBCOを凌ぎ、ほぼ多結晶Al
2O
3に等しい。
表1には、YBCOとMgB
2のバルクと比較した場合のBa122の特性をまとめている。
【0031】
MOイメージングで見られる磁束の分布は、バルク内で捕捉された電流がバルクサンプル全体にわたって巨視的に分布していることを示している。
磁化プロセス中、磁化している磁石を急冷したときであっても、ホール効果の測定で磁束なだれ(flux avalanche)は観測されなかった。上述のとおり、これは、Ba122が、MgB2やYBCOのバルクと比べて磁束ジャンプや磁束なだれを起こしにくいことを示している。
これは、金属Ba122バルクの高い熱伝導率に、または、ここでテストされたサンプルのサイズが小さいことに起因する良好な熱安定性に起因する可能性がある。
図3によって支持された高いH
irrは、高磁場を捕捉するためにBa122バルクを使用する可能性を示唆しているが、磁気クリープ速度(5Kで、1日後に3%未満)は、依然としてMgB
2の場合(20Kで1.5%未満)より高い。
【0032】
図7Aは、文献から得られたJ
c(H)のデータ比較を示す。
図7Bは、
図7Aに示すバルクJ
c(H)のデータを用いて計算したKドープBa122とMgB
2の最大B
trappedをrの関数として示している。
この計算は、無限に長い円筒に対して行ったものであり、径方向の磁場依存性Jcを考慮している。
無限に長い円筒形状(A
0=1)では、局所的電流密度j(x)は自己場に起因して径方向x(0<x<r)で変化するが、周方向および長さ方向では変化しない。
したがって、局所的磁束密度b(x)とj(x)は以下の式を用いて計算できる。
【0034】
バルク中央での最大B
trappedはb(r)で与えられる。
文献でのMgB
2バルク磁石は通常はドープされておらず、
図7(b)に示した4.2Kでの高磁場捕捉能力は実証されていないが、CドープMgB
2バルク材料についてJcのデータを含めたものとした。
低磁場でrが小さい場合には、MgB
2はBa122を凌いでいるが、Ba122バルクは、低温で、YBCOの大きさ制限を超えて(r>50mm)非常に高い性能を有し、r≧92mmのサンプルでは20KであってもMgB
2よりも高強度の磁場を捕捉できるだろう。
このような大きなバルクは、エネルギー貯蔵用途における磁気浮上に有用であり、コンパクト磁気共鳴装置において高磁場を提供することができる。
【0035】
磁化されたBa122スタックのバルクの表面で捕捉磁場は、H1で測定して0.68Tであった。
スタック中央での磁場の大きさは、この値の約2倍(約1.36T)であると考えられる。
H1とスタック中央との間に位置するH2で測定した値は1.02Tであった。これは、0.68Tと1.36Tの間の値である。
5mmまでの半径の、予測される1.36Tまでの中央の捕捉磁場は、
図7Bに示された理想的な最大捕捉磁場の約65%である。これはおそらく、サンプルの有限の厚さと、
図7Aに示されたものよりもわずかに低いJ
C(H)の挙動とが原因である。
【0037】
表1:YBCO、MgB
2およびKドープBa122の超伝導特性、機械特性の比較
【0038】
十分に大きいバルクサンプルを用いる場合、Ba122では高磁場用途が非常に有用であるようにも思えるが、現在のBa122のバルクは、磁気クリープ速度がより大きく、低磁場でのJ
cがより小さいことにより、低磁場ではMgB
2に比べて劣っている。
ただし、文献で報告されているBa122、Sr122のJ
c特性が改善していることに鑑みれば、加工と粒子の部分配置をより良好に行うことにより、J
cを改善する余地がまだ十分に存在する。
以下に留意することが重要である。つまり、
図7Bに示す値はJ
c(H)に比例して大きくなるので、Ba122が低磁場であってもMgB
2に十分匹敵するために必要なことは、J
c(H)が適度に改善することである。
【0039】
本発明の方法は、細粒多結晶材料と、より大きなサンプルを生成することができるスケーラブルな技術とを使用することによって、1T(5K)および0.5T(20K)以上の捕捉が可能な第1バルク鉄−プニクチドデモンストレーション磁石の合成に成功している。
磁気光学イメージングは、新規材料が、サンプル全体にわたって循環する巨視的電流を有することを提示している。
捕捉磁場の時間依存性は、磁気クリープ速度が小さいことを示している(5Kで24時間経過させた後、約3%)。
ビッカース押込みは、バルク材料が3.5GPaまでの硬度と、2.35MPam
0.5までの破壊靱性とを有することを示している。
大きいバルクでは、KドープBaFe
2As
2のH
c2が大きくなることを考えれば、より大きい磁場を捕捉することが期待される。
J
c(H)を適度に改善することにより、Ba122バルクは、永久磁石用途において、REBCOおよびMgB
2に対して非常に高い競争力を持つであろう。
【0040】
上で述べた利点および上の説明から明らかとなる利点が効果的に達成されることがわかるだろう。また、上記構成では、本発明の範囲から逸脱することなく特定の変更が成されてよいので、上の説明に含まれ、または添付の図面に示されたすべての事項は説明的であって非制限的であると解釈されることがわかるだろう。
【0041】
また、以下のクレームは、本明細書で説明した本発明の一般的な特徴および具体的な特徴のすべて、言い換えれば、それらの間にあると言える本発明の範囲のすべての記述を包含することを意図していることが理解される。