【実施例】
【0142】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0143】
[実施例1]マウス人工染色体ベクター構築を目的とした染色体改変のためのマウス染色体保持DT40細胞の作製
マウス人工染色体ベクター構築のため、微小核形成率の高いマウスA9細胞を介して、相同組換え頻度の高いニワトリDT40細胞へマウス染色体を移入する。
【0144】
[A]A9細胞とマウス繊維芽細胞(Bsd;mChr−Neo)のハイブリッド細胞樹立
薬剤耐性遺伝子(neo耐性遺伝子)で標識されたマウス10番染色体及び16番染色体を含有するマウス繊維芽細胞であるmouse embryonic fibroblast(mChr10−Neo、mChr16−Neo)と公知のマウスA9細胞にブラストサイジンS耐性遺伝子であるBsd遺伝子を挿入したmouse A9(Bsd)とを細胞融合し、薬剤耐性遺伝子で標識されたマウス染色体を保持するマウスA9雑種細胞であるmouse A9xmouse embryonic fibroblast hybrid(Bsd;mChr10−Neo及びBsd;mChr16−Neo)を樹立する(
図1)。薬剤耐性遺伝子で標識されたマウス染色体を微小核細胞融合法により相同組換頻度の高いニワトリDT40細胞へ導入するために、微小核形成率が高いことが知られているマウスA9細胞に薬剤耐性遺伝子で標識されたマウス染色体を細胞融合によって導入する。
【0145】
[A.1]細胞融合及び二重薬剤耐性クローンの単離
G418耐性遺伝子であるneo遺伝子をマウス染色体上に挿入したマウス繊維芽細胞であるmouse embryonic fibroblast(mChr10−Neo及びmChr16−Neo)と、ブラストサイジンS耐性遺伝子であるBsd遺伝子が挿入されているマウスA9細胞であるmouse A9(bsd)をそれぞれPBS(−)で細胞表面を洗浄後、トリプシン添加によって細胞を分散し、培養液(10%FBS、DMEM)に懸濁し、それぞれの細胞1x10
6個を培養用フラスコ(25cm
2)に同時に植え込み、一日間培養する。PBS(−)で細胞表面を2回洗浄した後に3mlのPEG(1:1.4)溶液[5g,PEG1000,cat:165−09085,wakoを無血清DMEM6mlに溶解させ、ジメチルスルホキシド1mlを加えて濾過滅菌する]で1分間処理し、さらに3mlのPEG(1:3)溶液[5g,PEG1000,cat:165−09085,wakoを無血清DMEM15mlに溶解させて濾過滅菌する]に換えて1分間処理した。PEG溶液を吸引後、無血清DMEMで3回洗浄し、通常の培養液(10%FBS、DMEM)で一日間培養した。PBS(−)で細胞表面を洗浄後、トリプシン添加によって細胞を分散し、G418及びブラストサイジンSを含む二重選択培養液(10%FBS、DMEM)に懸濁した細胞をプラスチック培養皿に植え込み、2〜3週間選択培養した。mChr10−Neoでは4回の細胞融合で得た各合計9個の耐性コロニーを単離し増殖させ、mChr16−Neoでは4回の細胞融合で得た各合計10個の耐性コロニーを単離し増殖させ、ランダムに選択したクローンを以降に用いた(クローン名:mouse A9xmouse embryonic fibroblast hybrid(bsd;mChr10−neo及びbsd;mChr16−neo))。
【0146】
[B]薬剤耐性遺伝子で標識されたマウス染色体のDT40細胞への導入
薬剤耐性遺伝子で標識されたマウス染色体を含有するマウスA9雑種細胞であるmouse A9xmouse embryonic fibroblast hybrid(bsd;mChr10−neo及びbsd;mChr16−neo)から薬剤耐性遺伝子で標識されたマウス染色体をニワトリ由来であるDT40細胞へ導入する(
図2)。人工テロメア(TTAGGG)n配列(サイズ:約1kb)の挿入による染色体部位特異的切断であるテロメアトランケーション、及び相同組換によりマウス染色体にDNA配列挿入部位であるloxP配列の挿入を効率的に行うために、薬剤耐性遺伝子で標識されたマウス染色体を微小核細胞融合法により相同組換頻度の高いDT40細胞へ導入する。
【0147】
[B.1]微小核細胞融合及び薬剤耐性クローンの単離
染色体改変を効率的に行うために、マウス染色体をA9雑種細胞クローンであるA9xmouse embryonic fibroblast hybrid(bsd;mChr10−neo及びbsd;mChr16−neo)から相同組換え頻度の高いニワトリ由来細胞であるDT40へ移入した。フラスコ×24で培養していたドナー細胞であるA9xmouse embryonic fibroblast hybrid(bsd;mChr10−neo及びbsd;mChr16−neo)がそれぞれのフラスコにおいて70%コンフルエントになった時点で、コルセミド処理(コルセミド0.05μg/ml、20%FCS、DMEM)を37℃、5%CO
2の条件下にて48時間行った。コルセミド処理が終了したら、フラスコ内のmediumをアスピレートし、そのフラスコの9分目までをサイトカラシンBで満たした。フラスコを大型高速遠心機(BECKMAN)専用の容器に挿入し、温湯(34℃)をフラスコが隠れない程度に加え、遠心(Rortor ID10.500、8,000rpm、1h、34℃)をした。遠心終了後、サイトカラシンBを回収し、各フラスコ内のペレットを、それぞれ2mlの無血清培地DMEMにて15mlチューブに回収した。8μm→5μm→3μmフィルターの順にゆっくりとフィルトレーションした後、それぞれのチューブを遠心(2000rpm、5分、R.T)し、上清をアスピレートした後、各チューブのペレットをまとめて5mlの無血清培地DMEMに回収、懸濁し、遠心(2000rpm、5分)をした。
【0148】
レシピエント細胞であるDT40細胞は浮遊細胞であるため、一度付着状態にする必要がある。DT40を6穴プレート(Nunc)のうちの1穴に付着させるために50μg/mlに調整したポリ−L−リジン(SIGMA)1.5mlで1穴を37℃、オーバーナイトでインキュベートすることでコーティングした。ポリ−L−リジンを回収し、プレートをPBS(−)で洗浄し、約1x10
7個のDT40細胞を2mlの無血清培養液(DMEM)でプレートに静かに播種した。プレートごと遠心機(Beckman)にセットし、37℃、1200rpm、3分間遠心して付着DT40にした。
【0149】
精製した微小核細胞をPHA−P(SIGMA)を含む無血清培養液2mlに再度懸濁し、無血清培養液(DMEM)を除去した付着DT40上に静かに播種した。プレートを37℃、1200rpm、3分間遠心した。上清を除去し、PEG1000(Wako)[5gのPEG1000を無血清DMEM培地に完全に溶解し、ジメチルスルホキシドを1ml添加して濾過滅菌する]溶液を1mlで正確に1分間融合した。無血清培養液(DMEM)を4mlで4回洗浄し、通常のDT40の培養液3mlでピペッティングして、付着DT40を浮遊状態に戻し、37℃、24穴プレート2枚に播種し、オーバーナイトでインキュベートした。G418を1500μg/mlになるように加え、3〜4週間選択培養した。A9xmouse embryonic fibroblast hybrid(bsd;mChr10−neo)#4、A9xmouse embryonic fibroblast hybrid(bsd;mChr16−neo)#2の微小核細胞融合で得た各合計10及び2個の耐性コロニーを単離し増殖させ、以降の解析を行った(クローン名:DT40(mChr10−neo)及びDT40(mChr16−neo))。
【0150】
[B.2]薬剤耐性クローンの選別
[B.2.1]FISH解析
上記で得られたDT40(mChr10−neo)及びDT40(mChr16−neo)のクローンについてShinoharaらの報告(Human Molecular Genetics,10:1163−1175,2001)に記された方法でマウスcot−1 DNAをプローブにしたFISH解析を行ったところDT40(mChr10−neo)1及びDT40(mChr16−neo)3において、それぞれ90%、93%で正常核型(2n)あたりのマウス染色体数が1コピーであったため、以降のステップに用いた。
【0151】
[実施例2]マウス10番染色体改変によるマウス人工染色体(10MAC)の構築
マウス人工染色体ベクターを構築するにあたり、内在の遺伝子を可能な限り削除することが必要である。相同組換え効率の高いニワトリDT40細胞内においてテロメアトランケーションという方法で内在遺伝子を含むマウス10番染色体長腕の大部分を削除する。
【0152】
[A]ニワトリDT40細胞内におけるマウス10番染色体領域セントロメア近傍から遠位のテロメアトランケーションによる部位特異的切断
マウス人工染色体ベクターとして導入目的遺伝子以外の内在遺伝子は少ない方が実験系に及ぼす影響が軽減され、かつ内在遺伝子のうちインプリント遺伝子のようにマウス個体発生に遺伝子発現量の変化による影響を及ぼす遺伝子を極力残さないことが必要であるので、マウス長腕の大部分を削除する(
図3)。
【0153】
[A.1]テロメアトランケーションベクター作製
短腕近位部位特異的切断用の基本ベクターにはpBS−TEL/puroコンストラクト(Kuroiwa et al.Nature Biotech 2002)を用いた。
pBS−TEL/puroのEcoRIサイトにセルフアニーリングした合成オリゴ(Sigma)を挿入した。合成オリゴの配列を以下に示す。
EcoRI-AscI-EcoRI:5’-AATTCGGCGCGCCG-3’(配列番号1)
GenBankデータベースより得た(NC_000076.6)マウス10番染色体長腕近位の塩基配列から相同組換え標的配列を設計した。DT40(mChr10−neo)1からゲノムDNAを抽出して鋳型とし、相同組換え標的配列をPCR増幅するためのプライマーの配列を以下に示す。
AscI_m10T F2:5'-TCGAGGCGCGCCAGCCTTCTAGGGAACAGGAGATGTTCAA-3' (配列番号2)
BamHI_m10T R3:5'-TCGAGGATCCGCCTTGAGTGGGGTTCTAGTCATCTTTC-3' (配列番号3)
【0154】
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃6分を35サイクル行ったPCR産物をAscIとBamHI(NEB)で消化して、アガロースゲルにより分離し精製後、AscI及びBamHI消化したpBS−TEL/puroにクローニングした(ベクター名:pBS−TEL/puro_10MAC)。ターゲティングベクター、標的配列、及び相同組換えにより生じる染色体アレルを
図4に示した。
【0155】
[A.2]相同組換え体の選別
マウス10番染色体領域近位から遠位において部位特異的切断を行うベクターは上述のpBS−TEL/puro_10MACを用いてトランスフェクションを行い、ピューロマイシン耐性クローンの単離及び相同組換え体の選別を行った。
【0156】
得られたクローンからDNAを抽出しそれを鋳型にPCRを行い、部位特異的切断の確認を行った。プライマー配列を以下に示す。
m10 F6:5'-AACTACCCAGTTCTGCATTTGGTGTGAG-3' (配列番号4)
m10 R6: 5'- ATCAGTCATCAGTACCCCCAACCTCTCT-3' (配列番号5)
m10 F6 (前出)
PuroI:5'-GAGCTGCAAGAACTCTTCCTCACG-3' (配列番号6)
【0157】
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはKOD FX (TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃8分を35サイクル行った。
Plekhg1 F:5'- TGGATGGGTTTCAATGCCACT-3' (配列番号7)
Plekhg1 R:5'- GGCATTCTCCCCTGTTGTGG-3' (配列番号8)
Gm8155 F:5'- ACCCCTCGAACCCCTATTGC-3' (配列番号9)
Gm8155 R:5'- CACGCCATCGGTGATGGATA-3' (配列番号10)
Iyd F:5'- TGGGATGACCCCCACTTCTTT-3' (配列番号11)
Iyd R:5'- TTTTGGCCTCTTGCCCCATA-3' (配列番号12)
【0158】
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、94℃30秒、60℃30秒、72℃30秒を35サイクル行った。
【0159】
その結果、マウス10番染色体領域を切断できた3クローンを確認した(クローン名:DT40(10MAC))。ターゲティングベクター、標的配列、及び相同組換えにより生じる染色体アレルを
図4に示した。
【0160】
[A.3]Two−color FISH解析による薬剤耐性クローンの選別
上記で得られたDT40(10MAC)の3クローンについてShinoharaらの報告(Human Molecular Genetics,10:1163−1175,2001)に記された方法でマウスcot−1 DNA及びPGKPuro plasmidをプローブにしたFISH解析を行ったところ3クローンすべてにおいてマウス10番染色体の長腕部分がセントロメア近傍で切断されていることを確認した(
図5)。以降のステップではクローンT5−26,T6−37を用いた。
【0161】
[実施例3]マウス人工染色体ベクター10MAC1の構築
マウス人工染色体10MACにDNA挿入配列としてGFP−PGKneo−loxP−3’HPRTタイプのloxP配列を挿入することでマウス人工染色体ベクター10MAC1を構築し、遺伝子搭載を行うためのhprt欠損CHO細胞株へ導入する。
【0162】
[A]マウス人工染色体10MACへのGFP−PGKneo−loxP−3’HPRTタイプのloxP配列の挿入によるマウス人工染色体ベクター10MAC1構築
マウス人工染色体10MACへ遺伝子搭載サイトloxP及び、その存在をモニター可能なGFP発現ユニットを搭載する。
【0163】
[A.1]GFP−PGKneo−loxP−3’HPRTタイプのloxPターゲティングベクター作製
DT40(10MAC)にloxP配列を挿入するための基本プラスミドにはV913(Lexicon genetics)を用いた。loxP挿入部位であるマウス10番染色体のDNA配列はGenBankデータベースより得た(NC_000076.6)。薬剤耐性クローンからゲノムDNAを抽出して鋳型とし、相同組換えの二つの標的配列の増幅に用いたプライマーの配列を以下に示す。
KpnI_m10 LA F:5'- TCGAGGTACCTCTAAGTCAGGGAAAGATCCCCTTCTTG-3' (配列番号13)
XhoI_m10 LA R:5'- TCGACTCGAGGACCATGAAGATGGTCCAACTAAAGCAA-3' (配列番号14)
SalI_m10 RA F:5'- TCGAGTCGACCACTGCTCTTTCTTTAGTTACATGCAGCCC-3' (配列番号15)
NotI_m10 RA R:5'- TCGAGCGGCCGCATTCTTGCCAAGCTACTCTTCCGAGCTA-3' (配列番号16)
【0164】
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃3分及び5分を35サイクル行った。
【0165】
それぞれのPCR産物をKpnI(NEB)とXhoI(NEB)及びSalI(NEB)とNotI(NEB)で消化して、アガロースゲルにより分離し精製後、V913のKpnI/XhoIあるいはSalI/NotIサイトにクローニングした(ベクター名:V913−m10LARA)。3’HPRT−loxPはV820(Lexicon genetics)のXbaIサイトにオリゴ合成したloxP配列をクローニングした。HPRT遺伝子の3番目から9番目のエクソンである3’HPRT−loxPをV907(Lexicon genetics)のEcoRIとAscIにクローニングした(ベクター名:X3.1)。さらにX3.1のKpnIサイトとEcoRIサイトにKpnIとNotIにより切り出したPGKneo配列をクローニングした(ベクター名:X4.1)。X4.1からKpnIとAscIにより切り出したPGKneo−loxP−3’HPRTをV913のKpnIサイトとAscIサイトにクローニングした(ベクター名:pVNLH)。pVNLHのEcoRVサイトにNotIとSalI消化後に平滑化を行ったHS4−CAG−EGFP−HS4(大阪大学、岡部博士及びNIH、Felsenfeld博士より分与)をクローニングした(ベクター名:pVGNLH)。pVGNLHからSalIとAscIにより切り出したGFP−PGKneo−loxP−3’HPRTカセットをV913−m10LARAのXhoIサイトとAscIサイトにクローニングした(ベクター名:p10MAC1)。ターゲティングベクター、標的配列及び相同組換えにより生じる染色体アレルを
図6に示す。
【0166】
[A.2]トランスフェクション及びG418耐性クローンの単離
ニワトリDT40細胞の培養は10%ウシ胎仔血清(ギブコ、以下「FBS」で記す)、1%ニワトリ血清(ギブコ)、10−4M 2−メルカプトエタノール(シグマ)を添加したRPMI1640培地(ギブコ)中で行った。DT40(10MAC)T5−26、T6−37の約10
7個の細胞を無添加RPMI1640培地で一回洗浄し、0.5mlの無添加RPMI1640培地に懸濁し、制限酵素NotI(TAKARA)で線状化したターゲティングベクターp10MAC1を25μg加え、エレクトロポレーション用のキュベット(バイオラッド)に移し、室温で10分間静置した。キュベットをジーンパルサー(バイオラッド)にセットし、550V、25μFの条件で電圧印加した。室温で10分間静置後、24時間培養した。G418(1.5mg/ml)を含む培地に交換し、96穴培養プレート2枚に分注して約2週間の選択培養を行った。T5−26,T6−37各2回のトランスフェクションで得た各24、20個の耐性コロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:DT40(10MAC1))。
【0167】
[A.3]相同組換体の選別
[A.3.1]PCR解析
G418耐性株のゲノムDNAを抽出して鋳型として組換え体を選別するため、以下のプライマーを用いてPCRを行い、マウス10番染色体上で部位特異的に組換え起こっているかを確認した。そのプライマー配列を以下に示す。
m10 F1:5'- TGAGAAATACCGAATGGCAGAGAAACAC-3' (配列番号17)
EGFP-F(L):5'- CCTGAAGTTCATCTGCACCA-3' (配列番号18)
kj neo:5'- CATCGCCTTCTATCGCCTTCTTGACG-3' (配列番号19)
m10 R2:5'- GAGAGGAGGGAAGCTTGATGAGAAAATG-3' (配列番号20)
KpnI m10 LA F (前出)
XhoI m10 LA R (前出)
【0168】
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃5分、8分、2.5分を35サイクル行った。
その結果DT40(10MAC)T5−26、T6−37について、各8、3クローンについて目的の組換えが行われていることが示唆された。
【0169】
[A.3.2]two−color FISH解析
上記から得られたDT40(10MAC1)において、two−color FISH解析を松原ら(FISH実験プロトコール、秀潤社、1994)に従い行った。マウスcot−1 DNA及びGFP−PGKneo−loxP−3’HPRT(pVGNLH)カセットをプローブにしてFISH解析を行ったところ、loxP配列がターゲティングされたマウス10番染色体断片のセントロメア付近にプローブ由来のFITCシグナルが検出され、かつネガティブコントロールのターゲティングする前のマウス10番染色体断片(DT40(10MAC))では現れなかったシグナルが検出されたことから、部位特異的に組換えが起こったことが視覚的に確かめられた(
図7)。これらの結果から、マウス人工染色体ベクター10MAC1を保持するDT40細胞クローンが得られたと結論できた。以降のステップでは、DT40(10MAC1)T5−26 L1−2、T5−26 L2−3、T6−37 L1−5の3クローンを用いることとした。
【0170】
[B]マウス人工染色体ベクター10MAC1含有DT40細胞から10MAC1のCHO細胞への導入
CHO細胞を介してマウス人工染色体ベクター10MAC1をマウスES細胞に導入するため、或いはCHO細胞内でマウス人工染色体ベクター10MAC1のDNA配列挿入部位であるloxPを介して安定に目的遺伝子(群)等、例えばCYP3Aクラスター、ヒト抗体遺伝子などを挿入するため、CHO細胞に導入する。
【0171】
[B.1]微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
ドナー細胞であるDT40(10MAC1)を用いて、上記と同様にCHO hprt欠損細胞(ヒューマンサイエンス研究資源バンクより入手、登録番号JCRB0218)であるCHO(HPRT
−)に微小核細胞融合法を行う。微小核細胞融合で得たG418耐性コロニーを単離し増殖させ、以降の解析を行う(クローン名:CHO(HPRT
−;10MAC1))。
【0172】
[B.2]薬剤耐性クローンの選別
[B.2.1]PCR解析
G418耐性株のゲノムDNAを抽出して鋳型として組換え体を選別するため、以下のプライマーを用いてPCRを行い、マウス人工番染色体ベクター10MAC1がCHO細胞に導入できているかを確認した。そのプライマー配列を以下に示す。
m10 F6 (前出)
PuroI (前出)
m10 F1 (前出)
EGFP-F(L) (前出)
kj neo (前出)
m10 R2 (前出)
【0173】
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃8分、2.5分を35サイクル行う。その結果、PCR陽性のクローンについて以降の解析を行った。
【0174】
[B.2.2]mono−color FISH解析
上記で得られたCHO(HPRT
−;10MAC1)クローンについてShinoharaらの報告(Human Molecular Genetics,10:1163−1175,2001)に記された方法でマウスcot−1 DNAをプローブにしたFISH解析を行い、マウス人工染色体ベクター10MAC1がCHO細胞に導入されていることを確認した。結果、1クローンについてCHO内で10MAC1が独立して安定に保持されていることを確認した(
図8)。
[C]10MAC1への組換え挿入確認
10MAC1の組換え配列であるLoxP−3’HPRTが機能するか動作確認を行う。
[C.1]MAC1へのCre/loxPシステムによる環状DNAの挿入
CHO(HPRT
−;10MAC1)を6cm dishでコンフルエントになるように培養を行った。Lipofectamine2000を用いてメーカーのプロトコールに従い、Cre発現プラスミド(ベクター名:pBS185)および5’HPRT−LoxPのプラスミドを共導入した。遺伝子導入24時間後細胞を10cmdish10枚に継代培養し、さらに24時間後からHATで薬剤選択を行った。得られた薬剤耐性クローン24クローンについて以降の解析を行った。
[C.2]薬剤耐性クローンの解析
期待された部位特異的組換えが起こり、5’HPRT−LoxPを保持した環状DNAが挿入されると10MAC1でHPRT遺伝子の再構成が起こり、HAT耐性になる。薬剤耐性クローンからDNAを抽出し、この組換えのつなぎ目を検出するPCRを行った。使用したプライマーを以下に示す。
TRANS L1:5'-TGGAGGCCATAAACAAGAAGAC-3' (配列番号21)
TRANS R1:5'-CCCCTTGACCCAGAAATTCCA-3' (配列番号22)
これらプライマーについては、LA taq(Takara)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、94℃10秒、60℃30秒、72℃3分を30サイクル行った。その結果、すべての薬剤耐性24クローンについてPCR陽性であったころから、得られた薬剤耐性クローンについて高効率で部位特異的組換えによる環状DNAの挿入が起こっていることが示された。
【0175】
[実施例4]マウス16番染色体改変によるマウス人工染色体(16MAC)の構築
マウス人工染色体ベクターを構築するにあたり、内在の遺伝子を可能な限り削除することが必要である。相同組換え効率の高いニワトリDT40細胞内においてテロメアトランケーションという方法で内在遺伝子を含むマウス16番染色体長腕部を削除する。
【0176】
[A]ニワトリDT40細胞内におけるマウス16番染色体領域セントロメア近傍から遠位のテロメアトランケーションによる部位特異的切断
マウス人工染色体ベクターとして導入目的遺伝子以外の内在遺伝子は少ない方が実験系に及ぼす影響が軽減され、かつ内在遺伝子のうちインプリント遺伝子のようにマウス個体発生に遺伝子発現量の変化による影響を及ぼす遺伝子を極力残さないことが必要であるので、マウス長腕の大部分を削除する(
図3)。
【0177】
[A.1]テロメアトランケーションベクター作製
短腕近位部位特異的切断用の基本ベクターにはpBS−TEL/puroコンストラクト(Kuroiwa et al.Nature Biotech 2002)を用いた。
GenBankデータベースより得たマウス16番染色体長腕近位の塩基配列から相同組換え標的配列を設計した。DT40(mChr16−neo)3からゲノムDNAを抽出して鋳型とし、相同組換え標的配列をPCR増幅するためのプライマーの配列を以下に示す。
BamHI_m16T F2:5'-TCGAGGATCCGGGAGTAATTTTCAATCCTTGAGGCAGA-3' (配列番号23)
BglII_m16T R2:5'-TCGAAGATCTCATCAGTGTACACCACAATCCCATCTGT-3' (配列番号24)
【0178】
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃7分を35サイクル行ったPCR産物をBamHIとBglII(NEB)で消化して、アガロースゲルにより分離し精製後、BamHI消化したpBS−TEL/puroにクローニングした(ベクター名:pBS−TEL/puro_16MAC)。ターゲティングベクター、標的配列、及び相同組換えにより生じる染色体アレルを
図9に示した。
【0179】
[A.2]相同組換え体の選別
マウス16番染色体領域近位から遠位において部位特異的切断を行うベクターは上述のpBS−TEL/puro_16MACを用いてトランスフェクションを行い、ピューロマイシン耐性クローンの単離及び相同組換え体の選別を行った。
【0180】
得られたクローンからDNAを抽出しそれを鋳型にPCRを行い、部位特異的切断の確認を行った。プライマー配列を以下に示す。
m16 F5: 5'-cctcttcttgacggttaccacattttgc-3' (配列番号25)
PuroI (前出)
【0181】
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃9分を35サイクル行った。
Vmn1r-ps137 F:5'- TGAATTGGTCCCTCCTGCTCA-3'(配列番号26)
Vmn1r-ps137 R:5'- CAGGCCATGAGACCCAGACA-3'(配列番号27)
Mefv F:5'- TCCTCGGAGAATGGCTCCTG-3'(配列番号28)
Mefv R:5'- GGCAGGTTGATGGGAACTGG-3'(配列番号29)
Slx4 F:5'- AACCAGGGTCCCCATCCTGT-3'(配列番号30)
Slx4 R:5'- TGGGCTGGTTTCAATGCTGA-3'(配列番号31)
Gm4106 F:5'- GTGTGGCCATGGCTGGAGTA-3'(配列番号32)
Gm4106 R:5'- TGTTCCTCTGCTGCCACTCG-3'(配列番号33)
Gm35974 F:5'- ACCCAGCCACTCCCACCATA-3'(配列番号34)
Gm35974 R:5'- AAGGGCATGGCTATCCCACA-3'(配列番号35)
【0182】
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、94℃30秒、60℃30秒、72℃30秒を35サイクル行った。
【0183】
その結果、マウス10番染色体領域切断を示唆する3クローンを確認した(クローン名:DT40(16MAC))。これらのクローンについて切断箇所が異なることが確認され、2パターン存在することが示唆された。想定される切断後のアレル2パターンを
図10に示した。
【0184】
[A.3]Mono−color FISH解析による薬剤耐性クローンの選別
上記で得られたDT40(16MAC)の3クローンについてShinoharaらの報告(Human Molecular Genetics,10:1163−1175,2001)に記された方法でマウスcot−1 DNAをプローブにしたFISH解析を行ったところ3クローンすべてにおいてマウス16番染色体の長腕部分がセントロメア近傍で切断されていることを確認した(
図11)。
【0185】
[実施例5]マウス人工染色体ベクター16MAC1の構築
マウス人工染色体16MACにDNA挿入配列としてGFP−PGKneo−loxP−3’HPRTタイプのloxP配列を挿入することでマウス人工染色体ベクター16MAC1を構築し、遺伝子搭載を行うためのhprt欠損CHO細胞株へ導入する。
【0186】
[A]マウス人工染色体ベクター16MACへのGFP−PGKneo−loxP−3’HPRTタイプのloxP配列の挿入
[A.1]GFP−PGKneo−loxP−3’HPRT タイプのloxPターゲティングベクター作製
切断部位が異なる2種の16MACに対して異なる配列を標的としたターゲティングベクターを構築した。
【0187】
タイプ1として、テロメアトランケーションに用いた相同配列を標的としたターゲティングベクターを構築した。
【0188】
DT40(16MAC)にloxP配列を挿入するための基本プラスミドにはV913(Lexicon genetics)を用いた。loxP挿入部位であるマウス16番染色体のDNA配列はGenBankデータベースより得た(NC_000082.6)。薬剤耐性クローンからゲノムDNAを抽出して鋳型とし、相同組換えの二つの標的配列の増幅に用いたプライマーの配列を以下に示す。
KpnI_m16 HAtLA F:5'- TCGAGGTACCGGGAGTAATTTTCAATCCTTGAGGCAGA-3' (配列番号36)
XhoI_m16 HAtLA R:5'- TCGACTCGAGTGGCACTGACCCCTTAATTACGTACAGA-3' (配列番号37)
SalI_m16 HAtRA F:5'- TCGAGTCGACAAAGATTTGCATCCTTGGCCATGACTC-3' (配列番号38)
NotI_m16 HAtRA R:5'- TCGAGCGGCCGCCATCAGTGTACACCACAATCCCATCTGT-3' (配列番号39)
【0189】
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃4分を35サイクル行った。
【0190】
それぞれのPCR産物をKpnI(NEB)とXhoI(NEB)及びSalI(NEB)とNotI(NEB)で消化して、アガロースゲルにより分離し精製後、V913のKpnI/XhoIあるいはSalI/NotIサイトにクローニングした(ベクター名:V913−m16HA)。3’HPRT−loxPはV820(Lexicon genetics)のXbaIサイトにオリゴ合成したloxP配列をクローニングした。HPRT遺伝子の3番目から9番目のエクソンである3’HPRT−loxPをV907(Lexicon genetics)のEcoRIとAscIにクローニングした(ベクター名:X3.1)。さらにX3.1のKpnIサイトとEcoRIサイトにKpnIとNotIにより切り出したPGKneo配列をクローニングした(ベクター名:X4.1)。X4.1からKpnIとAscIにより切り出したPGKneo−loxP−3’HPRTをV913のKpnIサイトとAscIサイトにクローニングした(ベクター名:pVNLH)。pVNLHのEcoRVサイトにNotIとSalI消化後に平滑化をおこなったHS4−CAG−EGFP−HS4(大阪大学、岡部博士及びNIH、Felsenfeld博士より分与)をクローニングした(ベクター名:pVGNLH)。pVGNLHからSalIとAscIにより切り出したGFP−PGKneo−loxP−3’HPRTカセットをV913−m10LARAのXhoIサイトとAscIサイトにクローニングした(ベクター名:p16HAMAC1)。ターゲティングベクター、標的配列及び相同組換えにより生じる染色体アレルを
図12に示す。
【0191】
タイプ2として、残存するマウス16番染色体近位配列を標的としたターゲティングベクターを構築した。
【0192】
DT40(16MAC)にloxP配列を挿入するための基本プラスミドにはV913(Lexicon genetics)を用いた。loxP挿入部位であるマウス16番染色体のDNA配列はGenBankデータベースより得た(NC_000082.6)。薬剤耐性クローンからゲノムDNAを抽出して鋳型とし、相同組換えの二つの標的配列の増幅に用いたプライマーの配列を以下に示す。
KpnI_m16 GmLA F:5'- TCGAGGTACCAAGAACAAGCTTCAGAACACAGCCAGAC-3' (配列番号40)
XhoI_m16 GmLA R:5'- TCGACTCGAGAACTTGTCACACAGATCCTACTGGAGGTG-3' (配列番号41)
SalI_m16 GmRA F:5'- TCGAGTCGACCCACAGACTGAAGCAATTGACCTCAAAAG-3' (配列番号42)
NotI_m16 GmRA R:5'- TCGAGCGGCCGCAAAGCAGTTATCCGCTATTTGGGACCTT-3' (配列番号43)
【0193】
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃4分を35サイクル行った。
【0194】
それぞれのPCR産物をKpnI(NEB)とXhoI(NEB)及びSalI(NEB)とNotI(NEB)で消化して、アガロースゲルにより分離し精製後、V913のKpnI/XhoIあるいはSalI/NotIサイトにクローニングした(ベクター名:V913−m16Gm)。3’HPRT−loxPはV820(Lexicon genetics)のXbaIサイトにオリゴ合成したloxP配列をクローニングした。HPRT遺伝子の3番目から9番目のエクソンである3’HPRT−loxPをV907(Lexicon genetics)のEcoRIとAscIにクローニングした(ベクター名:X3.1)。さらにX3.1のKpnIサイトとEcoRIサイトにKpnIとNotIにより切り出したPGKneo配列をクローニングした(ベクター名:X4.1)。X4.1からKpnIとAscIにより切り出したPGKneo−loxP−3’HPRTをV913のKpnIサイトとAscIサイトにクローニングした(ベクター名:pVNLH)。pVNLHのEcoRVサイトにNotIとSalI消化後に平滑化を行ったHS4−CAG−EGFP−HS4(大阪大学、岡部博士及びNIH、Felsenfeld博士より分与)をクローニングした(ベクター名:pVGNLH)。pVGNLHからSalIとAscIにより切り出したGFP−PGKneo−loxP−3’HPRTカセットをV913−m10LARAのXhoIサイトとAscIサイトにクローニングした(ベクター名:p16GmMAC1)。ターゲティングベクター、標的配列及び相同組換えにより生じる染色体アレルを
図13に示す。
【0195】
[A.2]トランスフェクション及びG418耐性クローンの単離
ニワトリDT40細胞の培養は10%ウシ胎仔血清(ギブコ、以下「FBS」で記す)、1%ニワトリ血清(ギブコ)、10−4M 2−メルカプトエタノール(シグマ)を添加したRPMI1640培地(ギブコ)中で行った。DT40(16MAC)T1−14、T2−64、T2−65の約10
7個の細胞を無添加RPMI1640培地で一回洗浄し、0.5mlの無添加RPMI1640培地に懸濁し、制限酵素NotI(TAKARA)で線状化したターゲティングベクターp10MAC1を25μg加え、エレクトロポレーション用のキュベット(バイオラッド)に移し、室温で10分間静置した。キュベットをジーンパルサー(バイオラッド)にセットし、550V、25μFの条件で電圧印加した。室温で10分間静置後、24時間培養した。G418(1.5mg/ml)を含む培地に交換し、96穴培養プレート2枚に分注して約2週間の選択培養を行った。p16HAMAC1、p16GmMAC1ベクターそれぞれ1回のトランスフェクションで得た各12個の耐性コロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:DT40(16MAC1HA及び16MAC1Gm))。
【0196】
[A.3]相同組換体の選別
[A.3.1]PCR解析
G418耐性株のゲノムDNAを抽出して鋳型として組換え体を選別するため、以下のプライマーを用いてPCRを行い、マウス16番染色体上で部位特異的に組換えが起こっているかを確認した。そのプライマー配列を以下に示す。
パターン1(p16MAC1HA):
m16 F5 (前出)
EGFP-F(L) (前出)
kjneo (前出)
PuroI (前出)
【0197】
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃7.5分を35サイクル行った。
【0198】
その結果DT40(16MAC)T1−14由来、5クローンについて目的の組換えが行われていることが示唆された。(クローン名:DT40(16MAC1HA))
パターン2(p16GmMAC1):
m16 F6:5'- CATGCACATTTGCTTACACACAGAGGTT-3' (配列番号44)
EGFP-F(L) (前出)
kjneo (前出)
m16 R7:5'- ATCTGGGCACTGGGGTACAACTGTTAAT-3' (配列番号45)
【0199】
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃7.5分を35サイクル行った。
【0200】
その結果DT40(16MAC)T2−64、T2−65由来、各11、9クローンについて目的の組換えが行われていることが示唆された(クローン名:DT40(16MAC1Gm))。
【0201】
[A.3.2]two−color FISH解析
上記から得られたDT40(16MAC1HA及び16MAC1Gm)において、two−color FISH解析を松原ら(FISH実験プロトコール、秀潤社、1994)に従い行った。マウスcot−1 DNA及びGFP−PGKneo−loxP−3’HPRT(pVGNLH)カセットをプローブにしてFISH解析を行ったところ、loxP配列がターゲティングされたマウス10番染色体断片のセントロメア付近にプローブ由来のFITCシグナルが検出され、かつネガティブコントロールのターゲティングする前のマウス16番染色体断片(DT40(16MAC)T1−14、T2−64、T2−65)では現れなかったシグナルが検出されたことから、部位特異的に組換えが起こったことが視覚的に確かめられた(
図14)。これらの結果から、マウス人工染色体ベクター16MAC1HA及び16MAC1Gmを保持するDT40細胞クローンが得られたと結論できた。
【0202】
[B]マウス人工染色体ベクター16MAC1HA及び16MAC1Gm含有DT40細胞から16MAC1HA及び16MAC1GmのCHO細胞への導入
CHO細胞を介してマウス人工染色体ベクター16MAC1HA及び16MAC1GmをマウスES細胞に導入するため、或いはCHO細胞内でマウス人工染色体ベクター16MAC1HA及び16MAC1GmのDNA配列挿入部位であるloxPを介して安定に目的遺伝子(群)等、例えばCYP3Aクラスター、ヒト抗体遺伝子などを挿入するため、CHO細胞に導入する。
【0203】
[B.1]微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
ドナー細胞であるDT40(16MAC1HA)及びDT40(16MAC1Gm)を用いて、上記と同様にCHO hprt欠損細胞(ヒューマンサイエンス研究資源バンクより入手、登録番号JCRB0218)であるCHO(HPRT
−)に微小核細胞融合法を行う。微小核細胞融合で得たG418耐性コロニーを単離し増殖させ、以降の解析を行う(クローン名:CHO(HPRT
−;16MAC1HA及び16MAC1Gm))。
【0204】
[B.2]薬剤耐性クローンの選別
[B.2.1]PCR解析
G418耐性株のゲノムDNAを抽出して鋳型として組換え体を選別するため、以下のプライマーを用いてPCRを行い、マウス人工番染色体16MAC1HA及び16MAC1GmがCHO細胞に導入できているかを確認する。そのプライマー配列を以下に示す。16MAC1HAの確認:
m16 F5 (前出)
EGFP-F(L) (前出)
kjneo (前出)
PuroI (前出)
16MAC1Gmの確認
m16 F6 (前出)
EGFP-F(L) (前出)
kjneo (前出)
m16 R7 (前出)
【0205】
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃7.5分を35サイクル行う。PCR陽性のクローンについて以降の解析を行う。
【0206】
[B.2.2]mono−color FISH解析
上記で得られたCHO(HPRT
−;16MAC1HA及び16MAC1Gm)クローンについてShinoharaらの報告(Human Molecular Genetics,10: 1163−1175,2001)に記された方法でマウスcot−1 DNAをプローブにしたFISH解析を行い、マウス人工染色体ベクター16MAC1HA及び16MAC1GmがCHO細胞に導入されていることを確認する。
【0207】
[実施例6]マウス人工染色体ベクターのマウス個体における安定性評価
10MAC1、10MAC1HA、10MAC1GmのマウスES細胞での安定性を検証し、さらに各マウス人工染色体ベクターを導入した子孫伝達マウスを作製することで、個体組織での安定性を検証する。
【0208】
[A]各マウス人工染色体ベクター含有CHO細胞からマウスES細胞へマウス人工染色体ベクター10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gmの導入
マウスES細胞及びマウス個体内でのマウス人工染色体ベクター10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gmの安定性を検証するために、各マウス人工染色体10MAC1、16MAC1HA、16MAC1GmをマウスES細胞に導入し、各マウス人工染色体ベクター10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gm含有キメラマウスならびに子孫伝達マウスを作製する。
【0209】
[A.1]微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
レシピエント細胞であるCHO(HPRT
−;10MAC1)、CHO(HPRT
−;16MAC1HA)、CHO(HPRT
−;16MAC1Gm)を細胞培養皿で培養し、コンフルエントになった時点で20%FBS、0.1μg/mlコルセミドを添加したF12培地に交換し、さらに48時間培養後に20%FBS、0.1μg/mlコルセミドを添加したF12培地で培地交換し、さらにオーバーナイトでインキュベートしてミクロセルを形成させる。培養液を除去し、予め37℃で保温したサイトカラシンB(10μg/ml,シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、34℃、8000rpm、1時間の遠心を行った。ミクロセルを無血清DMEM培地に懸濁し、8μm,5μm,3μmフィルターにて精製した。精製後、2000rpm,10分間遠心し、無血清DMEM培地5mlに懸濁した。ミクロセルを5mlの無血清DMEM培地に懸濁し、8μm,5μm,3μmフィルターにて精製する。精製後、2000rpm,10分間遠心する。
【0210】
ドナー細胞にはC57B6系統マウスのES細胞であるB6−ES、及びB6−ES細胞に6TG処理を行ったHPRT欠損株であるB6(HPRT
−)、及びC57B6xCBA系統F1マウスのES細胞であるTT2F、及びTT2F細胞に6TG処理を行ったHPRT欠損株であるKO56(HPRT
−)を用いる。培養には、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium−high glucose:SIGMA)に、10%FCS、LIF(Muerin Leukemia Inhibitory Factor)、1×10
‐5M 2−ME(2−メルカプトエタノール:SIGMA)、L−グルタミン(3.5g/ml:GIBCO)、Sodium pyruvate solution(3.5g/ml:GIBCO)、MEM Nonessential amino acid(0.125mM:GIBCO)を添加し、5% CO
2、37℃にて培養を行う。マウスES細胞をPBS(−)で細胞表面を2回洗浄後にトリプシン処理により細胞を分散させ、DMEM培地に10%FBSを添加した培養液で回収し、1500rpmで遠心し、上清を除去し、無血清培養液5mlに再度懸濁し、ミクロセルの遠心後のペレットを含む無血清培地に静かに添加し、さらに1200rpmで遠心する。上清を除去し、PEG1000(Wako)溶液[5gのPEG1000を無血清DMEM培地に完全に溶解し、ジメチルスルホキシドを1ml添加して濾過滅菌する]を0.5mlで正確に1分30秒間融合した。13mlの無血清培養液(DMEM)を静かに添加し、1200rpmで遠心する。上清を除去し、通常のマウスES細胞の培養液を添加し、マイトマイシン処理したG418耐性マウス胎生線維芽細胞をフィーダー細胞として使用し、直径10cm細胞培養皿2枚に播種し、オーバーナイトでインキュベートする。G418を250μg/mlになるように加え、3〜4週間選択培養する(クローン名:B6−ES(10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gm)及びB6(HPRT
−;10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gm)及びTT2F(10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gm)及びKO56(HPRT
−;10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gm))。その結果、得られたTT2F(10MAC1)の薬剤耐性コロニー13クローンを単離し増殖させ、以降の解析を行った。
【0211】
[A.2]薬剤耐性クローンの選別
[A.2.1]PCR解析
G418耐性株のゲノムDNAを抽出して鋳型として組換え体を選別するため、以下のプライマーを用いてPCRを行い、各マウス人工番染色体ベクターがマウスES細胞に導入できているかを確認する。そのプライマー配列を以下に示す。
10MAC1の確認:
m10 F6 (前出)
PuroI (前出)
m10 F1 (前出)
EGFP-F(L) (前出)
kj neo (前出)
m10 R2 (前出)
【0212】
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃8分、2.5分を35サイクル行った。その結果得られたPCR陽性9クローンについて以降の解析を行う。
16MAC1HAの確認:
m16 F5 (前出)
EGFP-F(L) (前出)
kjneo (前出)
PuroI (前出)
16MAC1Gmの確認:
m16 F6 (前出)
EGFP-F(L) (前出)
kjneo (前出)
m16 R7 (前出)
【0213】
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃7.5分を35サイクル行う。PCR陽性のクローンについて以降の解析を行う。
【0214】
[A.2.2]mono−color FISH解析
上記で得られたB6−ES(MAC1)及びB6(HPRT
−;10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gm)及びTT2F(10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gm)及びKO56(HPRT
−;10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gm)のクローンについてShinoharaらの報告(Human Molecular Genetics,10:1163−1175,2001)に記された方法でマウス minor satellite DNAをプローブにしたFISH解析を行う。各マウス人工染色体ベクターが保持されていることを確認する。また、正常核型である内在マウス染色体の本数がB6−ESの場合40本、またはKO56の場合39本であることを確認する。結果を受けて、マウス人工染色体ベクター10MAC1、16MAC1HA、16MAC1GmがマウスES細胞に導入できたと結論付ける。TT2F−ES(10MAC1)PCR陽性9クローンについてFISH解析を行った結果、2クローンについてMAC1を高保持で正常核型のクローンであることが確認できた(
図15)。
【0215】
[B]各マウス人工染色体ベクター10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gmの安定性
[B.1]マウス人工染色体ベクター10MAC1、16MAC1HA、16MAC1GmのCHO細胞における安定性
上記で得られたCHOクローン(例えばCHO(HPRT
−;10MAC1)上記実施例3で取得)について0〜25PDLの非選択培養下での長期培養後におけるFISH解析により10MAC1保持細胞の割合を計測する。
【0216】
[B.2]マウス人工染色体ベクター10MAC1、16MAC1HA、16MAC1GmのマウスES細胞における安定性
上記で得られたマウスESクローン(例えばKO56(10MAC1)及びTT2F(10MAC1)上記実施例6[A]で取得できる)について0〜100PDLの非選択培養下での長期培養後におけるFISH解析により10MAC1保持細胞の割合を計測する。
【0217】
[B.3]マウス人工染色体ベクター10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gmを保持するキメラマウスの作製
上記実施例6[A]で得られたES細胞クローンを用いてTomizukaらの方法(Nature Genet.16:133,1997)でキメラマウスを作製した。宿主としてはMCH(ICR)(白色、日本クレア社より購入)の雌雄交配により得られる8細胞期胚を用いる。注入胚を仮親に移植した結果生まれる仔マウスは毛色によりキメラであるかどうかを判定できる。10MAC1保持ESクローンTT2F(10MAC1)(例えば他にKO56 10MAC1、上記実施例6[A]で取得できる)を注入した胚を仮親に移植した。出生したキメラマウスについて毛色により(毛色に濃茶色の部分の認められる)キメラ率を判定した。これにより、マウス人工染色体ベクター10MAC1を保持するES細胞株(KO56及びTT2F)がキメラ形成能を保持しているか、すなわちマウス個体の正常組織に分化する能力を保持していることを確認した。
【0218】
[B.4]各種マウス人工染色体ベクター10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gmを保持するキメラマウスからの10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gmの子孫伝達
上記[B.3]で作製された雌キメラマウス(キメラ率約100%)をMCH(ICR)(白色、日本クレア社より購入)雄マウスと交配する。キメラマウスより誕生した仔マウスについてGFP蛍光により各種マウス人工染色体ベクターの保持を検討した。各マウス人工染色体が子孫伝達されたマウス系統をTC(10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gm)と呼ぶ。TT2F(MAC1)由来キメラから得られた子孫伝達個体について全身でGFP蛍光タンパクが発現が確認できる個体を得た(
図16)。
【0219】
[B.5]TC(10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gm)マウス系統の体細胞における10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gmの安定性
[B.5.1]実体蛍光顕微鏡観察
上記で得られたTC(10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gm)マウスのうち雄及び雌について脳、胸腺、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、小腸、筋肉、精巣(または卵巣)を実体蛍光顕微鏡観察下にて観察し、全ての組織にてGFP陽性を観察する。
【0220】
[B.5.2]血液系細胞のFACS解析
B細胞(CD19)、T細胞(CD4,CD8)、巨核球(CD41)に対する特異的抗体(Becton,Dickinson and Company)を用いて、骨髄ならびに脾臓細胞におけるGFP陽性率を検討する。
【0221】
[B.5.3]蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)解析
また上記と同様の個体から調製した尻尾繊維芽細胞を用いて、Shinoharaらの報告(Human Molecular Genetics,10:1163−1175,2001)に記された方法でマウスマイナーサテライト(minor satellite)DNAをプローブにしたFISH解析を行い、視覚的にMACの存在を確認し、宿主染色体とは独立して維持されていることを確認する。
【0222】
[実施例7]新規マウス人工染色体ベクターを用いたヒト抗体産生(IGHK−NAC)マウス及びラットの作製
10MAC1、16MAC1HA、16MAC1Gm各マウス人工染色体ベクターの機能性評価から、使用するベクターを絞り(選抜したマウス人工染色体を「NAC」と呼ぶ)、ヒト抗体遺伝子(IGH、IGK)を搭載し、ヒト抗体産生マウス及びラットの作製を行う(
図17)。10MAC1を選択し、NACとして以降の実験を行った。
【0223】
[A]NACを保持するCHO細胞への改変ヒト2番染色体の移入
改変ヒト2番染色体保持CHO細胞より改変ヒト2番染色体をNAC保持CHO細胞に導入する。
【0224】
[A.1]微小核細胞融合法による改変ヒト2番染色体のNAC保持Hprt欠損CHO細胞への移入
ドナー細胞である改変ヒト2番染色体CHO細胞(CHO hChr2LF)を細胞培養皿で培養し、コンフルエントになった時点で20%FBS、0.1μg/mlコルセミドを添加したF12培地に交換し、さらに48時間培養後に20%FBS、0.1μg/mlコルセミドを添加したF12培地で培地交換し、さらにオーバーナイトでインキュベートしてミクロセルを形成させる。培養液を除去し、予め37℃で保温したサイトカラシンB(10μg/ml,シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、34℃、8000rpm、1時間の遠心を行う。微小核(「ミクロセル」ともいう)を無血清DMEM培地に懸濁し、8μm,5μm,3μmフィルターにて精製する。精製後、ミクロセルをDMEMで調製した0.05mg/ml PHA−P(シグマ)溶液2mLに懸濁し、6cm細胞培養皿でコンフルエントになったレシピエントであるNAC保持Hprt欠損CHO細胞株に、培養液を除いた後添加する。15分インキュベートして微小核をCHO細胞に張り付ける。その後、PEG1000(Wako)溶液[5gのPEG1000を無血清DMEM培地6mLに完全に溶解し、ジメチルスルホキシドを1ml添加して濾過滅菌する]を1mlで正確に1分融合する。5mLの無血清DMEMでPEGを除去するために4回ウオッシュ操作を行った後、CHO培養液を添加する。24時間後、10cm細胞培養皿10枚に細胞を播種し、8μg/mLブラストサイジンSを添加し、10日選択培養を行った。得られた薬剤耐性株ついて以降の解析を行った。
【0225】
[A.2]PCR解析による薬剤耐性クローンの選別
ブラストサイジンS耐性株のゲノムを抽出し、鋳型としてPCR解析を行い、改変ヒト2番染色体の保持を確認する。そのプライマー配列を以下に示す。
改変ヒト2番染色体loxP配列確認プライマー:
cos138 sp L:5’-CTGAGAAGAGTCATTGTTTATGGTAGACT-3’ (配列番号46)
cos138 sp R:5’- ATCCCCATGTGTATCACTGGCAAACTGT-3’ (配列番号47)
x6.1cosRa L:5’-GGGGAATAAACACCCTTTCCAAATCCTC-3’(配列番号48)
x6.1cosRa R:5’- ACCAAGTAACCGATCAAACCAACCCTTG-3’ (配列番号49)
【0226】
cos138 sp L, cos138 sp Rのプライマーについては、Accuprime Taq DNA polymerase(Thermo Fisher Scientific)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は94℃2分の熱変性後、94℃15秒、60℃15秒、68℃5分を35サイクル行う。
【0227】
x6.1cosRa L,x6.1cosRa Rのプライマーについては、KOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃12分を30サイクル行う。
改変ヒト2番染色体FRT配列確認プライマー:
kD9 tcLa L:5’-TGAGAACACAGGGGTCTCCATTCTGACT-3’ (配列番号50)
kD9 tcLa R:5’-ACAATCAACAGCATCCCCATCTCTGAAG-3’ (配列番号51)
kD9 tcRa L:5’-GACGTGCTACTTCCATTTGTCACGTCCT-3’ (配列番号52)
kD9 tcRa R:5’-TGGTCACTGAAGCTTTCCATCTGCTCTT-3’ (配列番号53)
【0228】
これらプライマーについては、KOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃5分を35サイクル行う。
【0229】
加えて、ヒト2番染色体上のプライマーを用い領域が保持されているかを確認する。そのプライマー配列を以下に示す。
D2S177 F:5’-AGCTCAGAGACACCTCTCCA-3’ (配列番号54)
D2S177 R:5’-CTGTATTAGGATACTTGGCTATTGA-3’ (配列番号55)
FABP1-F:5’-TATCAAGGGGGTGTCGGAAATCGTG-3’ (配列番号56)
FABP1-R:5’-ACTGGGCCTGGGAGAACCTGAGACT-3’ (配列番号57)
EIF2AK3-F:5’-AGGTGCTGCTGGGTGGTCAAGT-3’ (配列番号58)
EIF2AK3-R:5’-GCTCCTGCAAATGTCTCCTGTCA-3’ (配列番号59)
RPIA-F:5’-CTTACCCAGGCTCCAGGCTCTATT-3’ (配列番号60)
RPIA-R:5’-CTCTACCTCCCTACCCCATCATCAC-3’ (配列番号61)
IGKC-F:5’-TGGAAGGTGGATAACGCCCT-3’ (配列番号62)
IGKC-R:5’-TCATTCTCCTCCAACATTAGCA-3’ (配列番号63)
IGKV-F:5’-AGTCAGGGCATTAGCAGTGC-3’ (配列番号64)
IGKV-R:5’-GCTGCTGATGGTGAGAGTGA-3’ (配列番号65)
Vk3-2 F:5’-CTCTCCTGCAGGGCCAGTCA-3’ (配列番号66)
Vk3-2 R:5’-TGCTGATGGTGAGAGTGAACTC-3’ (配列番号67)
D2S159_1 F:5’-CTCTAACTGAATCAAGGGAATGAAC-3’ (配列番号68)
D2S159_1 R:5’-AGCAGTTTGAGTTTAGGATGAAGG-3’ (配列番号69)
TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。
PCR陽性であったクローンについて以降の解析を行った。その結果、改変ヒト2番染色体とNAC(新規人工染色体ベクター)が維持されているクローンを取得した。
【0230】
[A.3]two−color FISH解析
上記の結果よりPCR陽性クローンについて、two−color FISH解析を松原ら(FISH実験プロトコール、秀潤社、1994)に従い行う。Human cot−1 DNA及びMouse cot−1 DNAをプローブにしてFISH解析を行い、改変ヒト2番染色体及びNACが宿主染色体と独立して安定に維持されていることを確認した(
図18)。
【0231】
[B]転座クローニングによるヒト2番染色体IGK領域のマウス人工染色体ベクター(NAC)への搭載
NACを保持するCHO細胞において、ヒト2番染色体上IGK領域をNACへ転座クローニングする。転座クローニングにはCre/loxPシステムを用い、ヒト2番染色体とNACを相互転座させることで、IGK領域をNACに搭載する(
図19)。
【0232】
[B.1]Cre発現によるHAT耐性染色体組換え体の取得
NACにはloxPサイトが搭載されており、Cre組換え酵素存在下で改変ヒト2番染色体のloxPサイトと組換えが起こるようになっている。また、組換えが起こると副産物となるNACに載らないヒト2番染色体領域の5’HPRTと副産物となるNAC末端の3’HPRTが連結して、HPRT遺伝子の再構成が起こり、CHO(hprt−/−)はHAT耐性を獲得する。
【0233】
改変ヒト2番染色体とNACを保持するHprt欠損CHO細胞について、10cm細胞培養皿においてコンフルエントになった時に、18μgのCre発現プラスミド(ベクター名:pBS185)をLipofectamine2000(Thermo Fisher Scientific)を用いてメーカーの手順を参照して加える。添加後6時間経過したら、培養液を交換し、24時間後に、10cm細胞培養皿10枚に播種し、1×HAT(シグマ)、4μg/mL Blasticidinで薬剤選択を行う。得られた薬剤耐性株を以降の解析に用いる。
【0234】
[B.2]PCR解析による薬剤耐性クローンの選別
HAT耐性株のゲノムDNAを抽出して鋳型として相互転座クローンを選別するため、以下のプライマーを用いてPCRを行い、ヒト2番染色体断片とNAC上で染色体相互転座が起こっているかを確認する。そのプライマー配列を以下に示す。
TRANS L1 (前出)
TRANS R1 (前出)
KJneo:5'-CATCGCCTTCTATCGCCTTCTTGACG-3’(配列番号70)
PGKr-2:5'-ATCTGCACGAGACTAGTGAGACGTGCTA-3’(配列番号71)
【0235】
これらプライマーについては、LA taq(Takara)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、94℃10秒、60℃30秒、72℃3分を30サイクル行う。
【0236】
加えて、ヒト2番染色体領域とFRT配列が維持されているかどうかPCRを行う。プライマーを以下に示す。
【0237】
ヒト2番染色体領域確認プライマー:
D2S177 F (前出)
D2S177 R (前出)
FABP1-F (前出)
FABP1-R (前出)
EIF2AK3-F (前出)
EIF2AK3-R (前出)
RPIA-F (前出)
RPIA-R (前出)
IGKC-F (前出)
IGKC-R (前出)
IGKV-F (前出)
IGKV-R (前出)
Vk3-2 F (前出)
Vk3-2 R (前出)
D2S159_1 F (前出)
D2S159_1 R (前出)
TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。
【0238】
ヒト2番染色体上FRT配列確認プライマー:
kD9 tcLa L (前出)
kD9 tcLa R (前出)
kD9 tcRa L (前出)
kD9 tcRa R (前出)
これらプライマーについては、KOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃5分を35サイクル行う。PCR陽性クローンについて以降の解析を行う。
【0239】
[B.3]two−color FISH解析
PCR陽性クローンについてHuman cot−1 DNA及びMouse cot−1 DNAをプローブにしてFISH解析を行う。NACと改変ヒト2番染色体が相互転座をおこしかつ、IGK領域がNACに搭載されたIGK−NAC、副産物が独立して保持されていることを確認する。このクローンをCHO IGK−NACと呼ぶ。
【0240】
[C]IGK−NACの改変ヒト14番染色体保持CHO(hprt−/−)細胞株への移入
作製したIGK−NACを、改変ヒト14番染色体を保持するCHO(hprt−/−)細胞株へ移入し、FRT/Flpシステムによる組換えを起こさせIGH領域をIGK−NACに搭載し、IGHK−NACを作製する(
図20)。
【0241】
[C.1]微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
ドナー細胞であるCHO IGK−NACを細胞培養皿で培養し、コンフルエントになった時点で20%FBS、0.1μg/mlコルセミドを添加したF12培地に交換し、さらに48時間培養後に20%FBS、0.1μg/mlコルセミドを添加したF12培地で培地交換し、さらにオーバーナイトでインキュベートしてミクロセルを形成させる。培養液を除去し、予め37℃で保温したサイトカラシンB(10μg/ml,シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、34℃、8000rpm、1時間の遠心を行う。微小核(「ミクロセル」ともいう)を無血清DMEM培地に懸濁し、8μm,5μm,3μmフィルターにて精製する。精製後、ミクロセルをDMEMで調製した0.05mg/ml PHA−P(シグマ)溶液2mLに懸濁し、6cm細胞培養皿でコンフルエントになったレシピエントであるCHO hprt−/− 14FRTを、培養液を除いた後添加する。15分インキュベートして微小核をCHO細胞に張り付ける。その後、PEG1000(Wako)溶液[5gのPEG1000を無血清DMEM培地6mLに完全に溶解し、ジメチルスルホキシドを1ml添加して濾過滅菌する]を1mlで正確に1分融合する。5mLの無血清DMEMでPEGを除去するために4回ウオッシュ操作を行った後、CHO培養液を添加する。24時間後、10cm細胞培養皿10枚に細胞を播種し、600μg/mL G418と6μg/mL Blasticidinを添加し、10日選択培養を行う。得られた薬剤耐性株ついて以降の解析を行う。
【0242】
[C.2]PCR解析による薬剤耐性クローンの選別
IGK−NACが改変ヒト14番染色体を保持するCHO(hprt−/−)株に移入されているか、改変ヒト14番染色体は維持されているかを確認するためにPCR解析を行う。以下に用いるプライマーを示す。
IGK−NACの確認プライマー:
KJneo (前出)
PGKr-2 (前出)
これらプライマーについては、LA taq(Takara)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、94℃10秒、60℃30秒、72℃3分を30サイクル行う。
【0243】
IGK−NAC上のFRT挿入部位確認プライマー:
kD9 tcLa L (前出)
kD9 tcLa R (前出)
kD9 tcRa L (前出)
kD9 tcRa R (前出)
これらプライマーについては、KOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃5分を35サイクル行う。
【0244】
ヒト2番染色体領域確認プライマー:
D2S177 F (前出)
D2S177 R (前出)
EIF2AK3-F (前出)
EIF2AK3-R (前出)
RPIA-F (前出)
RPIA-R (前出)
IGKC-F (前出)
IGKC-R (前出)
IGKV-F (前出)
IGKV-R (前出)
Vk3-2 F (前出)
Vk3-2 R (前出)
TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。
【0245】
改変ヒト14番染色体上FRT配列確認プライマー:
14TarC_La F:5’-AGCAATTAGGGCCTGTGCATCTCACTTT-3’(配列番号72)
14TarC_La R:5’-CCAGCTCATTCCTCCCACTCATGATCTA-3’(配列番号73)
14TarC_Ra F:5’-CATCTGGAGTCCTATTGACATCGCCAGT-3’(配列番号74)
14TarC_Ra R:5’-CTTATTCCTCCTTCTGCCCACCCTTCAT-3’(配列番号75)
これらプライマーについては、KOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃6分を35サイクル行う。
【0246】
ヒト14番染色体領域確認プライマー:
MTA1-F3:5’-AGCACTTTACGCATCCCAGCATGT-3’(配列番号76)
MTA1-R3:5’-CCAAGAGAGTAGTCGTGCCCCTCA-3’(配列番号77)
ELK2P2-F:5’-CCCACTTTACCGTGCTCATT-3’(配列番号78)
ELK2P2-R:5’-ATGAAGGTCCGTGACTTTGG-3’(配列番号79)
g1(g2)-F:5’-ACCCCAAAGGCCAAACTCTCCACTC-3’(配列番号80)
g1(g2)-R:5’-CACTTGTACTCCTTGCCATTCAGC-3’(配列番号81)
VH3-F:5’-AGTGAGATAAGCAGTGGATG-3’(配列番号82)
VH3-R:5’-CTTGTGCTACTCCCATCACT-3’(配列番号83)
CH3F3:5’-AGGCCAGCATCTGCGAGGAT-3’(配列番号84)
CH4R2:5’-GTGGCAGCAAGTAGACATCG-3’(配列番号85)
TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒もしくは56℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。PCR陽性のクローンを以降の解析に用いた。
【0247】
[C.3]two−color FISH解析
選別したクローンについて、Human cot−1 DNA及びMouse cot−1 DNAをプローブにしてFISH解析を行い、IGK−NACと改変ヒト14番染色体が独立して、1コピーずつ維持されていることを確認し、以降のステップに用いる。
【0248】
[D]FRT/Flp組換えシステムを用いたIGHK−NACの構築
IGK−NACと改変ヒト14番染色体をFRT/Flpシステムで相互転座させることで、IGK−NAC上にヒト14番染色体由来IGH領域を転座クローニングし、IGHK−NACを構築する。
【0249】
[D.1]FLP発現によるHAT耐性染色体組換え体の取得
IGK−NAC上のFRTサイトと改変ヒト14番染色体上のFRTサイトを用いて、FLP組換え酵素存在下で相互転座を起こさせる。また、組換えが起こるとIGHK−NAC上では、5’HPRTと3’HPRTが連結して、HPRT遺伝子の再構成が起こり、HAT耐性を獲得する。IGK−NACと改変ヒト14番染色体を保持するCHO(hprt−/−)株が、10cm細胞培養皿においてコンフルエントになった時に18μgのFLP発現プラスミドをLipofectamine2000(Thermo Fisher Scientific)を用いてメーカーの手順を参照して加える。添加後6時間経過したら、培養液を交換し、24時間後に、10cm細胞培養皿10枚に播種し、1×HAT、6μg/mL Blasticidinで薬剤選択を行う。得られたHAT耐性クローンについて以降の解析を行う。
【0250】
[D.2]PCR解析による薬剤耐性クローンの選別
FRT/FLPシステムを用いて期待した相互転座が起こり、IGHK−NACが構築されているか確認するため、薬剤耐性クローンのDNAを抽出し、鋳型としてPCR解析を行う。用いるプライマーを以下に示す。
相互転座連結部位の確認プライマー:
TRANS L1 (前出)
TRANS R1 (前出)
CMVr-1:5’- CCTATTGGCGTTACTATGGGAACATACG-3’(配列番号 86)
PGKr-2 (前出)
KJneo (前出)
PGKr-2 (前出)
これらプライマーについては、LA taq(Takara)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、94℃10秒、60℃30秒、72℃3分を30サイクル行う。
【0251】
ヒト2番染色体領域確認プライマー:
D2S177 F (前出)
D2S177 R (前出)
EIF2AK3-F (前出)
EIF2AK3-R (前出)
RPIA-F (前出)
RPIA-R (前出)
IGKC-F (前出)
IGKC-R (前出)
IGKV-F (前出)
IGKV-R (前出)
Vk3-2 F (前出)
Vk3-2 R (前出)
TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。
【0252】
ヒト14番染色体領域確認プライマー:
MTA1-F3 (前出)
MTA1-R3 (前出)
ELK2P2-F (前出)
ELK2P2-R (前出)
g1(g2)-F (前出)
g1(g2)-R (前出)
VH3-F (前出)
VH3-R (前出)
CH3F3 (前出)
CH4R2 (前出)
これらプライマーを用いたPCRについて、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒もしくは56℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。PCR陽性のクローンについて以降の解析を行う。
【0253】
[D.3]two−color FISH解析
選別したクローンについて、Human cot−1 DNA及びMouse cot−1 DNAをプローブにしてFISH解析を行う。副産物であるNACに載らないヒト14番染色体に、余分なヒト2番染色体領域が転座して染色体が長くなっていれば、相互転座が起こったことが示唆される。さらに、プローブとしてBACクローンCH17−405H5(IGK領域:CHORI)とCH17−262H11(IGH領域:CHORI)及びCH17−216K2(IGK領域:CHORI)とCH17−212P11(IGH領域:CHORI)の組み合わせを用いてtwo−color FISH解析を行い、実際IGHK−NACが構築されているか詳細に解析する。IGHK−NACと考えられる染色体が1コピーで独立して存在していることが確認できたクローンを以降用いる。
【0254】
[E]IGHK−NACのCHO K1細胞株への移入
IGHK−NAC及びIGHK−NAC構築のための相互転座の際に形成された副産物の両方にNeo耐性遺伝子がのっており、微小核細胞融合法で目的の細胞に移入した際、G418で薬剤選択するとIGHK−NACもしくは副産物がそれぞれあるいは両方移入された細胞を取得することになる。NAC上にはEGFPが搭載されているので、目的の細胞にIGHK−NACが移入されているか確認することが可能であるが、染色体導入が効率的に行えるドナー細胞でかつIGHK−NACのみを保持する細胞を作製するため、IGHK−NACをCHO K1細胞株に移入する。
【0255】
[E.1]微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離:染色体移入による、IGHK−NACのみを保持する細胞株を作製する。
ドナー細胞であるCHO IGHK−NACを細胞培養皿で培養し、コンフルエントになった時点で20%FBS、0.1μg/mlコルセミドを添加したF12培地に交換し、さらに48時間培養後に20%FBS、0.1μg/mlコルセミドを添加したF12培地で培地交換し、さらにオーバーナイトでインキュベートしてミクロセルを形成させる。培養液を除去し、予め37℃で保温したサイトカラシンB(10μg/ml,シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、34℃、8000rpm、1時間の遠心を行った。微小核(「ミクロセル」ともいう)を無血清DMEM培地に懸濁し、8μm,5μm,3μmフィルターにて精製する。精製後、ミクロセルをDMEMで調製した0.05mg/ml PHA−P(シグマ)溶液2mLに懸濁し、6cm細胞培養皿でコンフルエントになったレシピエントであるCHO K1細胞株に、培養液を除いた後添加する。15分インキュベートして微小核をCHO細胞に張り付ける。その後、PEG1000(Wako)溶液[5gのPEG1000を無血清DMEM培地6mLに完全に溶解し、ジメチルスルホキシドを1ml添加して濾過滅菌する]を1mlで正確に1分融合する。5mLの無血清DMEMでPEGを除去するために4回ウオッシュ操作を行った後、CHO培養液を添加する。24時間後、10cm細胞培養皿10枚に細胞を播種し、800μg/mL G418を添加し、10日選択培養を行った。得られた薬剤耐性株については、IGHK−NAC上GFP遺伝子の蛍光タンパク発現を確認し、以降の解析に用いる。
【0256】
[E.2]PCR解析による薬剤耐性クローンの選別
IGHK−NACがCHO K1細胞株に移入されていることを確認するため、薬剤耐性クローンのDNAを抽出し、それを鋳型としてPCR解析を行う。用いるプライマーを以下に示す。
相互転座連結部位確認プライマー:
TRANS L1 (前出)
TRANS R1 (前出)
CMVr-1 (前出)
PGKr-2 (前出)
KJneo (前出)
PGKr-2 (前出)
これらプライマーについては、LA taq(Takara)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、94℃10秒、60℃30秒、72℃3分を30サイクル行う。
【0257】
ヒト2番染色体領域確認プライマー:
EIF2AK3-F (前出)
EIF2AK3-R (前出)
RPIA-F (前出)
RPIA-R (前出)
IGKC-F (前出)
IGKC-R (前出)
IGKV-F (前出)
IGKV-R (前出)
Vk3-2 F (前出)
Vk3-2 R (前出)
TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。
【0258】
ヒト14番染色体領域確認プライマー:
MTA1-F3 (前出)
MTA1-R3 (前出)
ELK2P2-F (前出)
ELK2P2-R (前出)
g1(g2)-F (前出)
g1(g2)-R (前出)
VH3-F (前出)
VH3-R (前出)
CH3F3 (前出)
CH4R2 (前出)
これらプライマーを用いたPCRについて、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒もしくは56℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。PCRの結果からIGHK−NACのみ保持していることを示唆したクローンについて以降の解析を行う。
【0259】
[E.3]two−color FISH解析
選別したクローンについて、Human cot−1 DNA及びMouse cot−1 DNAをプローブにしてFISH解析を行い、期待通りIGHK−NACのみを保持していることを確認する。加えて、プローブとしてBACクローンCH17−405H5(IGK領域:CHORI)とCH17−262H11(IGH領域:CHORI)及びCH17−216K2(IGK領域:CHORI)とCH17−212P11(IGH領域:CHORI)の組み合わせを用いてtwo−color FISH解析を行い、実際IGHK−NACが構築されているか詳細に解析する。
【0260】
[F]マウスES細胞へのIGHK−NACの移入
ヒト抗体産生マウスを作製するためにはIGHK−NACをマウスES細胞に移入し、受精卵8細胞期にインジェクションし、キメラマウスを作製し、IGHK−NACを子孫伝達させることが必要である。IGHK−NACを保持したマウスES細胞の作製を行う。
【0261】
[F.1]微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
ドナー細胞は、CHO K1 IGHK−NACを用いる。ドナー細胞を細胞培養皿で培養し、コンフルエントになった時点で20%FBS、0.1μg/mlコルセミドを添加したF12培地に交換し、さらに48時間培養後に20%FBS、0.1μg/mlコルセミドを添加したF12培地で培地交換し、さらにオーバーナイトでインキュベートしてミクロセルを形成させる。培養液を除去し、予め37℃で保温したサイトカラシンB(10μg/ml,シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、34℃、8000rpm、1時間の遠心を行う。微小核(「ミクロセル」ともいう)を無血清DMEM培地に懸濁し、8μm,5μm,3μmフィルターにて精製する。精製後、2000rpm,10分間遠心した。2000rpm,10分間遠心し、無血清DMEM培地5mlに懸濁する。さらに2000rpm,10分間遠心した。レシピエント細胞には、マウスES細胞HKD31 6TG−9(マウスのIgh及びIgk遺伝子が破壊されている。国際公開WO98/37757号に記載)及びXO ES9(抗体遺伝子は破壊されていない。)を用いる。培養には、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium−high glucose:SIGMA)に、10%FCS、LIF(Murine Leukemia Inhibitory Factor)、1×10
‐5M 2−ME(2−メルカプトエタノール:SIGMA)、L−グルタミン(3.5g/ml:GIBCO)、Sodium pyruvate溶液(3.5g/ml:GIBCO)、MEM非必須アミノ酸(0.125mM:GIBCO)を添加し、5%CO
2、37℃にて培養をおこなう。10cm細胞培養皿でコンフルエントになったマウスES細胞をPBS(−)で細胞表面を2回洗浄後にトリプシン処理により細胞を分散させ、DMEM培地に10%FBSを添加した培養液で回収し、1500rpmで遠心し、上清を除去し、無血清培養液5mlに再度懸濁し、ミクロセルの遠心後のペレットを含む無血清培地に静かに添加し、さらに1200rpmで遠心する。上清を除去し、PEG1000(Wako)溶液[5gのPEG1000を無血清DMEM培地に完全に溶解し、ジメチルスルホキシドを1ml添加して濾過滅菌する]を0.5mlで正確に1分30秒間融合する。13mlの無血清培養液(DMEM)を静かに添加し、1200rpmで遠心した。上清を除去し、通常のマウスES細胞の培養液を添加し、マイトマイシン処理したG418耐性マウス胎生線維芽細胞をフィーダー細胞として使用し、直径10cm細胞培養皿2枚に播種し、オーバーナイトでインキュベートする。G418を250μg/mLになるように加え、3〜4週間選択培養する。薬剤耐性かつEGFP陽性株について以降の解析を行う。
【0262】
[F.2]PCR解析による薬剤耐性クローンの選別
IGHK−NACが各種マウスES細胞株に移入されていることを確認するため、薬剤耐性クローンのDNAを抽出し、それを鋳型としてPCR解析を行う。用いるプライマーを以下に示す。
相互転座連結部位確認プライマー:
TRANS L1 (前出)
TRANS R1 (前出)
KJneo (前出)
PGKr-2 (前出)
これらプライマーについては、LA taq(Takara)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、94℃10秒、60℃30秒、72℃3分を30サイクル行う。
【0263】
ヒト2番染色体領域確認プライマー:
EIF2AK3-F (前出)
EIF2AK3-R (前出)
RPIA-F (前出)
RPIA-R (前出)
IGKC-F (前出)
IGKC-R (前出)
IGKV-F (前出)
IGKV-R (前出)
Vk3-2 F (前出)
Vk3-2 R (前出)
TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。
【0264】
ヒト14番染色体領域確認プライマー:
MTA1-F3 (前出)
MTA1-R3 (前出)
ELK2P2-F (前出)
ELK2P2-R (前出)
g1(g2)-F (前出)
g1(g2)-R (前出)
VH3-F (前出)
VH3-R (前出)
CH3F3 (前出)
CH4R2 (前出)
これらプライマーを用いたPCRについて、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒もしくは56℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。PCRの結果からIGHK−NACを保持していることを示唆したクローンについて以降の解析を行う。
【0265】
[F.3]two−color FISH解析
Human cot−1 DNA及びMouse cot−1 DNAをプローブにしてFISH解析を行い、IGHK−NACの独立保持と宿主の核型が正常であることを確認する。期待した結果が得られたクローンについてキメラマウス作製に用いる。
【0266】
[G]ラットES細胞へのIGHK−NACの移入
ヒト抗体産生ラットを作製するためにはIGHK−NACをラットES細胞に移入し、8細胞期胚にインジェクションし、キメララットを作製し、IGHK−NACを子孫伝達させることが必要である。
【0267】
[G.1]微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
CHO K1 IGHK−NACをドナーとして、上記F.1記載のようにマウスES細胞への微小核細胞融合法と同様の手法を用いてラットES細胞へのIGHK−NACの導入を行う。融合後、オーバーナイトでインキュベーションし、G418を150μg/mLになるように加え、3〜4週間選択培養する。薬剤耐性及びGFP陽性を示す株を選別し、以降の解析を行う。
【0268】
[G.2]PCR解析による薬剤耐性クローンの選別
IGHK−NACがラットES細胞株に移入されていることを確認するため、薬剤耐性クローンのDNAを抽出し、それを鋳型としてPCR解析を行う。用いるプライマーを以下に示す。
相互転座連結部位確認プライマー:
TRANS L1 (前出)
TRANS R1 (前出)
KJneo (前出)
PGKr-2 (前出)
これらプライマーについては、LA taq(Takara)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、94℃10秒、60℃30秒、72℃3分を30サイクル行う。
【0269】
ヒト2番染色体領域確認プライマー:
EIF2AK3-F (前出)
EIF2AK3-R (前出)
RPIA-F (前出)
RPIA-R (前出)
IGKC-F (前出)
IGKC-R (前出)
IGKV-F (前出)
IGKV-R (前出)
Vk3-2 F (前出)
Vk3-2 R (前出)
TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。
【0270】
ヒト14番染色体領域確認プライマー:
MTA1-F3 (前出)
MTA1-R3 (前出)
ELK2P2-F (前出)
ELK2P2-R (前出)
g1(g2)-F (前出)
g1(g2)-R (前出)
VH3-F (前出)
VH3-R (前出)
CH3F3 (前出)
CH4R2 (前出)
これらプライマーを用いたPCRについて、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒もしくは56℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。PCRの結果からIGHK−NACを保持していることを示唆したクローンについて以降の解析を行う。
【0271】
[G.3]two−color FISH解析
Human cot−1 DNA及びMouse cot−1 DNAをプローブにしてFISH解析を行い、期待通りIGHK−NACを独立保持しており、ラットESの正常核型(42本)を維持していることが確認できた株についてキメララット作製に用いる。
【0272】
[H]IGHK−NACを保持したマウスの作製
IGHK−NACを保持したマウスの作製及び、解析を行う。過程で得られたキメラについても解析を行う。
【0273】
[H.1]キメラマウスの作製
得られたIGHK−NACを保持するマウスES細胞を用いて(ジーンターゲティング、実験医学、1995)の手法に従い、キメラマウスを作製する。宿主としてはMCH(ICR)(白色、日本クレア社より購入)の雌雄交配により得られる桑実胚及び8細胞期胚を用いる。注入胚を仮親に移植した結果生まれる仔マウスは毛色によりキメラであるかどうかを判定できる。
【0274】
[H.2]キメラマウスのIGHK−NAC保持解析
誕生後3週以上を経たキメラマウスから(勝木元也,発生工学実験マニュアル,講談社サイエンティフィク,1987)に記された方法に従い尻尾を取得し、Puregene DNA Isolation Kit(Qiagen)を用いてゲノムDNAを抽出する。上記G.2記載のプライマー及びPCR条件により、PCR解析を行い、IGHK−NAC保持を確認する。
さらに、キメラマウスから採血を行った後、細胞固定を行い標本作製し、Human cot−1及びMouse minor satellite DNAをプローブとしてFISH解析を行うことで、IGHK−NACを保持した細胞を染色体レベルで確認する。
【0275】
[H.3]IGHK−NACを保持するES細胞由来キメラマウスにおけるヒトIGM発現評価
HKD31マウスES細胞はマウスIgh,Igk遺伝子が破壊されている。Bリンパ球の発生に必須な抗体μ鎖遺伝子ノックアウトマウスは体液性免疫を担う成熟Bリンパ球が欠損していることにより抗体を産生することができない。したがって、HKD31マウスES細胞は、キメラマウスにおいて成熟B細胞になれない。キメラマウス作製に用いるIGHK−NAC保持HKD31マウス細胞について、IGHK−NACからヒトIGMが発現すれば、この欠損を救済可能で、GFP陽性のB細胞を検出することができる。これにより、IGHK−NAC上のIGM遺伝子の機能的発現が間接的に検証できる。キメラマウスより血液を採取し、マウスCD45R(B220)に対する抗体染色を用い、マウスB細胞をフローサイトメーターにより検出する。CD45RとGFP共陽性の細胞が存在するか解析を行うことで、IGHK−NAC由来IGMの機能的発現を確認することができる。ヒトIGMとマウスCD45R(B220)に対する抗体を用いて、血液細胞を染色し、ヒトIGM、CD45R、GFP陽性の細胞を確認する。末梢血を採血し、ヘパリンPBSの入ったチューブに血液を移し、転倒混和して氷冷する。遠心(2000rpm、3分、4℃)の後、上清除去後、各種抗体を添加し、4℃で30分反応させ、5%牛胎仔血清を添加したPBS(5%FBS/PBS)により洗浄する。最後の遠心後、ペレットに1.2%Dextran/生理食塩水を加え、タッピング後、室温で45分静置し、赤血球を自然沈降させる。上清を新しいチューブに移し、2000rpm、3分、4℃で遠心後上清除去し、ペレットに室温の溶血剤(0.17M NH
4Cl)を加え、5分静置する。2000rpm、3分、4℃で遠心し、5%FBS/PBSで洗浄した後500μlの5%FBS/PBSで懸濁したものを解析サンプルとし、フローサイトメーターにより解析する。
【0276】
[H.4]キメラマウス血清中のヒト抗体検出
キメラマウスにおいて、ヒト抗体遺伝子軽鎖、重鎖、各種アイソタイプ発現確認を目的として、血清中のヒト抗体濃度をエンザイムリンクドイムノソルベントアッセイ(ELISA)を用いて測定する。ELISAは以下に記載されている方法に従う。富山・安東、単クローン抗体実験マニュアル、講談社、1987;安東・千葉、単クローン抗体実験操作入門、講談社、1991;石川、超高感度酵素免疫測定法、学会出版センター、1993:Ed Harlow and David Lane,Antibodies A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988;A.Doyle and J.B.Griffiths,Cell&Tissue Culture:Laboratory Procedures,John Wiley&Sons Ltd.,1996。これらの文献に記載の方法を参考にして、測定系によっては反応時間や温度を4℃で終夜行うなどの改良を行う。特定の抗体検出については、kitを用いて実施する。ヒト抗体(hγ、hμ、hκ、hγ1、hγ2、hγ3、hγ4、hα、hε、hδ)の発現及び血清中の濃度を測定する。基本的な操作を以下に示す。
【0277】
測定しようとするヒト免疫グロブリンに対する抗体を希釈し、ELISAプレートを4℃で一晩コーティングする。血清試料の測定では、ブロッキング、試料及び標識抗体の希釈に5%牛胎仔血清を添加したPBSを用いる。コーティングしたプレートを洗浄した後、ブロッキングを1時間以上行う。プレートを洗浄後、試料を加えて30分以上インキュベートするプレート洗浄後、希釈した酵素標識抗ヒト及びマウス免疫グロブリン抗体を加えて、1時間以上インキュベートした後、プレートを洗浄し基質液を加えて発色させる。また測定系によって、基本的には同じ操作で、ビオチン標識した抗体を用い、プレート洗浄後これにアビジン−酵素複合体を加えてインキュベートした後洗浄し基質液を加える。マイクロプレートリーダーで吸光度を測定する。血清中の濃度の測定には濃度既知の標準を段階希釈してELISAをサンプルと同時に行い、検量線を引いて解析することで濃度を特定できる。
【0278】
[H.5]ヒト抗体の発現解析及び配列同定
キメララット脾臓由来RNAからcDNAを合成し、ヒト抗体遺伝子可変領域クローニングと塩基配列決定を行う。方法は国際公開WO98/37757号に記されている方法同様実施することで解析、評価できる。
【0279】
[H.6]抗原特異的ヒト抗体産生応答の評価
キメラマウスについて、抗原特異的ヒト抗体価の増加が見られるかを評価する。方法は特許(国際公開WO98/37757号)に記されている方法同様にヒト血清アルブミンで免疫し、抗体力価の上昇を解析する。
【0280】
[I]IGHK−NACを保持するキメラマウスからのIGHK−NACの子孫伝達
[I.1]IGHK−NAC子孫伝達
上記[H]で作製される雌キメラマウス(キメラ率約100%)をICR雄マウスと交配し、誕生した仔マウスについて、ES細胞由来のIGHK−NACの優性遺伝形質である、GFPの蛍光を観察する。GFPの蛍光が観察されれば、マウス個体においてIGHK−NACが子孫伝達し、安定に保持されていることが確認できる。IGHK−NACが子孫伝達されたマウス系統をmTC(IGHK−NAC)と呼ぶ。
[I.2]IGHK−NACを保持するマウスのIGHK−NAC保持確認
mTC(IGHK−NAC)について(実施例7)[H.2]同様解析を行うことでIGHK−NACの子孫伝達を詳細に確認できる。
[I.3]IGHK−NACを保持するマウスのヒト抗体産生能評価
mTC(IGHK−NAC)について(実施例7)[H.4][H.5][H.6]同様に評価する。
【0281】
[J]IGHK−NACを保持するラットの作製
IGHK−NACを保持したラットの作製及び、解析を行う。過程で得られたキメラについても解析を行う。
[J.1]キメララットの作製
上記実施例7[G]で得られたIGHK−NAC保持ラットES細胞クローンを用いてHirabayashiらの方法(Mol Reprod Dev. 2010 Feb;77(2):94.doi:10.1002/mrd.21123.)でキメララットを作製した。宿主としてはCrlj:WIラット(白色、日本チャールスリバー社より購入)の雌雄交配により得られる胚盤胞期胚を用いた。注入胚を仮親に移植した結果生まれる仔ラットは毛色によりキメラであるかどうかを判定できる。ES細胞由来のIGHK−NACの優性遺伝形質である、GFPの蛍光も産まれて間もない時期に観察し、ES細胞の寄与を確認する。
[J.2]IGHK−NACを保持するES細胞由来キメララットのIGHK−NAC保持確認
上記[H.2]同様に解析を行い、IGHK−NAC保持をより詳細に確認する。血液細胞についてHuman cot−1及びMouse cot−1 DNAをプローブとして用い、FISH解析を実施する。
[J.3]キメララットのヒト抗体産生能評価
キメララットについて(実施例7) [A.4][A.5][A.6]同様に評価する。
【0282】
[K]IGHK−NACを保持するキメララットからのIGHK−NACの子孫伝達
[K.1]IGHK−NACを保持するキメララットからのIGHK−NACの子孫伝達
上記[J]で作製されたキメララット(キメラ率約100%)とCrlj:WIラットを交配し、誕生した仔ラットについてES細胞由来のIGHK−NACの優性遺伝形質である、GFPの蛍光を観察する。GFPの蛍光が観察され、ラット個体においてIGHK−NACが子孫伝達し、安定に保持されていることを確認する。IGHK−NACが子孫伝達されたラット系統をrTC(IGHK−NAC)と呼ぶ。
[K.2]IGHK−NACを保持するラットのIGHK−NAC保持確認
rTC(IGHK−NAC)について[J.2]同様解析を行うことでIGHK−NACの子孫伝達を詳細に確認できる。
[K.3]IGHK−NACを保持するラットのヒト抗体産生能評価
rTC(IGHK−NAC)について(実施例7)[H.4][H.5][H.6]同様に評価する。
【0283】
[実施例8]新規マウス人工染色体ベクターを用いたヒト抗体産生(IGHL−NAC)マウス及びラットの作製
ヒト抗体遺伝子(IGH、IGL)をNACへ搭載することでIGHL−NACを構築し、IGHL−NACを保持したヒト抗体産生マウス及びラットの作製を行う(
図21)。
【0284】
[A]NACを保持するCHO細胞への改変ヒト22番染色体の移入
改変ヒト22番染色体保持CHO細胞より改変ヒト22番染色体をNAC保持CHO細胞に導入する。
【0285】
[A.1]微小核細胞融合法による改変ヒト22番染色体のNAC保持Hprt欠損CHO細胞への移入
ドナー細胞である改変ヒト22番染色体CHO細胞(CHO hChr22LF)を細胞培養皿で培養し、コンフルエントになった時点で20%FBS、0.1μg/mlコルセミドを添加したF12培地に交換し、さらに48時間培養後に20% FBS、0.1μg/mlコルセミドを添加したF12培地で培地交換し、さらにオーバーナイトでインキュベートしてミクロセルを形成させる。培養液を除去し、予め37℃で保温したサイトカラシンB(10μg/ml,シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、34℃、8000rpm、1時間の遠心を行う。微小核(「ミクロセル」ともいう)を無血清DMEM培地に懸濁し、8μm,5μm,3μmフィルターにて精製する。精製後、ミクロセルをDMEMで調製した0.05mg/ml PHA−P(シグマ)溶液2mLに懸濁し、6cm細胞培養皿でコンフルエントになったレシピエントであるNAC保持Hprt欠損CHO細胞株に、培養液を除いた後添加する。15分インキュベートして微小核をCHO細胞に張り付ける。その後、PEG1000(Wako)溶液[5gのPEG1000を無血清DMEM培地6mLに完全に溶解し、ジメチルスルホキシドを1ml添加して濾過滅菌する]を1mlで正確に1分融合する。5mLの無血清DMEMでPEGを除去するために4回ウオッシュ操作を行った後、CHO培養液を添加する。24時間後、10cm細胞培養皿10枚に細胞を播種し、8μg/mLブラストサイジンSを添加し、10日選択培養を行った。得られた薬剤耐性株ついて以降の解析を行う。
【0286】
[A.2]PCR解析による薬剤耐性クローンの選別
ブラストサイジンS耐性株のゲノムを抽出し、鋳型としてPCR解析を行い、改変ヒト2番染色体の保持を確認する。そのプライマー配列を以下に示す。
改変ヒト22番染色体loxP配列確認プライマー:
22CeT La L:5’-CCTGCCTTCTTGTTTCAGCTCTCAACTG-3’(配列番号87)
22CeT La R:5’-GACGTGCTACTTCCATTTGTCACGTCCT-3’(配列番号88)
22CeT Ra L:5’-ATCCCCATGTGTATCACTGGCAAACTGT-3’(配列番号89)
22CeT Ra R:5’-ACACTTTAGTCCCTGTCCCCTCAACGAG-3’(配列番号90)
PCRは、サーマルサイクラーとしてTakara社製のTP600を、PCR酵素はKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃5分を35サイクル行う。
【0287】
改変ヒト22番染色体FRT配列確認プライマー:
22TeT La L:5’-TGCAGGTATCTGTTGGTGTCCCTGTTTT-3’(配列番号91)
22TeT La R:5’-GACGTGCTACTTCCATTTGTCACGTCCT-3’(配列番号92)
22TeT Ra L:5’-AGCAGAGCTCGTTTAGTGAACCGTCAGA-3’(配列番号93)
22TeT Ra R:5’-CTGTCCTATCCTTGCAGCTGTCTTCCAG-3’(配列番号94)
PCRは、サーマルサイクラーとしてTakara社製のTP600を、PCR酵素はKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃5分を35サイクル行えば組換えが確認する。
【0288】
加えて、ヒト2番染色体上のプライマーを用い領域が保持されているかを確認する。そのプライマー配列を以下に示す。
553P-F:5’-AGATCTCTTGAGCCCAGCAGTTTGA-3’(配列番号95)
553P-R:5’-TGAAGTTAGCCGGGGATACAGACG-3’(配列番号96)
PPM1F L:5’-AACGGCAGCCAAACCAAAGA-3’(配列番号97)
PPM1F R:5’-ACCAGGACTGGCTGGGCATA-3’(配列番号98)
IGLVI-70 L:5’-AGTCTGCGCTGACCCAGGAA-3’(配列番号99)
IGLVI-70 R:5’-TTGAGCCAGAGAAGCGGTCA-3’(配列番号100)
GNAZ L:5’-TCCACTTGGGGGTCTGCATT-3’(配列番号101)
GNAZ R:5’-TGGTGCTGAGCAGCTGTGTG-3’(配列番号102)
LIF L:5’-TGGGACTTAGGTGGGCCAGA-3’(配列番号103)
LIF R:5’-GCCTCCCCAAGAGCCTGAAT-3’(配列番号104)
hVpreB1-F:5’-TGTCCTGGGCTCCTGTCCTGCTCAT-3’(配列番号105)
hVpreB1-Rm:5’-GGCGGCGACTCCACCCTCTT-3’(配列番号106)
hVpreB3-F:5’-CACTGCCTGCCCGCTGCTGGTA-3’(配列番号107)
hVpreB3-R:5’-GGGCGGGGAAGTGGGGGAGAG-3’(配列番号108)
hL5-F:5’-AGCCCCAAGAACCCAGCCGATGTGA-3’(配列番号109)
hL5-R:5’-GGCAGAGGGAGTGTGGGGTGTTGTG-3’(配列番号110)
344-F:5’-ATCATCTGCTCGCTCTCTCC-3’(配列番号111)
344-R:5’-CACATCTGTAGTGGCTGTGG-3’(配列番号112)
350P-F:5’-ACCAGCGCGTCATCATCAAG-3’(配列番号113)
350P-R:5’-ATCGCCAGCCTCACCATTTC-3’(配列番号114)
IgL-F:5’-GGAGACCACCAAACCCTCCAAA-3’(配列番号115)
IgL-Rm:5’-GAGAGTTGGAGAAGGGGTGACT-3’(配列番号116)
SERPIND1 L:5’-ACCTAGAGGGTCTCACCTCC-3’(配列番号117)
SERPIND1 R:5’-CCCTGGACATCAAGAATGG-3’(配列番号118)
これらプライマーを用いたPCRについて、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、63、62、60、56、55、50℃のいずれかで30秒、72℃1分を35サイクル行う。
PCR陽性クローンについて以降の解析を行う。
【0289】
[A.3]two−color FISH解析
PCR解析陽性クローンについて、Human cot−1 DNA及びMouse cot−1 DNAをプローブにしてFISH解析を行い、NACと改変ヒト22番染色体が独立して保持されている陽性細胞を選別する。
【0290】
[B]転座クローニングによるヒト22番染色体IGL領域のマウス人工染色体ベクター(NAC)への搭載
NACを保持するCHO細胞において、ヒト22番染色体上IGK領域をNACへ転座クローニングする。転座クローニングにはCre/loxPシステムを用い、ヒト2番染色体とNACを相互転座させることで、IGL領域をNACに搭載する(
図22)。
【0291】
[B.1]Cre発現によるHAT耐性染色体組換え体の取得
NACにはloxPサイトが搭載されており、Cre組換え酵素存在下で改変ヒト2番染色体のloxPサイトと組換えが起こるようになっている。また、組換えが起こると副産物となるNACに載らないヒト2番染色体領域の5’HPRTと副産物となるNAC末端の3’HPRTが連結して、HPRT遺伝子の再構成が起こり、CHO(hprt−/−)はHAT耐性を獲得する。
改変ヒト2番染色体とNACを保持するHprt欠損CHO細胞について、10cm細胞培養皿においてコンフルエントになった時に、18μgのCre発現プラスミド(ベクター名:pBS185)をLipofectamine2000(Thermo Fisher Scientific)を用いてメーカーの手順を参照して加える。添加後6時間経過したら、培養液を交換し、24時間後に、10cm細胞培養皿10枚に播種し、1×HAT(シグマ)、4μg/mL Blasticidinで薬剤選択を行う。得られた薬剤耐性株を以降の解析に用いる。
【0292】
[B.2]PCR解析による薬剤耐性クローンの選別
HAT耐性株のゲノムDNAを抽出して鋳型として相互転座クローンを選別するため、以下のプライマーを用いてPCRを行い、ヒト2番染色体断片とNAC上で染色体相互転座が起こっているかを確認する。そのプライマー配列を以下に示す。
TRANS L1 (前出)
TRANS R1 (前出)
KJneo (前出)
PGKr-2 (前出)
これらプライマーについては、LA taq(Takara)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、94℃10秒、60℃30秒、72℃3分を30サイクル行う。
【0293】
FRT挿入部位が維持されているか確認するためのプライマーを以下に示す。
22TeT La L (前出)
22TeT La R (前出)
22TeT Ra L (前出)
22TeT Ra R (前出)
PCRは、サーマルサイクラーとしてTakara社製のTP600を、PCR酵素はKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃5分を35サイクル行う。
【0294】
また、ヒト22番染色体領域についてPCR解析を行う。以下に配列を示す。
553P-F (前出)
553P-R (前出)
PPM1F L (前出)
PPM1F R (前出)
IGLVI-70 L (前出)
IGLVI-70 R (前出)
GNAZ L (前出)
GNAZ R (前出)
LIF L (前出)
LIF R (前出)
hVpreB1-F (前出)
hVpreB1-Rm (前出)
hVpreB3-F (前出)
hVpreB3-R (前出)
hL5-F (前出)
hL5-R (前出)
344-F (前出)
344-R (前出)
350P-F (前出)
350P-R (前出)
IgL-F (前出)
IgL-Rm (前出)
SERPIND1 L (前出)
SERPIND1 R (前出)
これらプライマーを用いたPCRについて、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、63、62、60、56、55、50℃のいずれか30秒、72℃1分を35サイクル行う。
【0295】
[B.3]two−color FISH解析
Human cot−1 DNA及びMouse cot−1 DNAをプローブにしてFISH解析を行い、NACと改変ヒト22番染色体が相互転座をおこしかつ、IGL領域がNACに搭載されたIGL−NAC、副産物が独立して保持されていることを確認する。選別した陽性細胞(CHO IGL−NACと命名する)について、以下の実験を行う。
【0296】
[C]IGL−NACの改変ヒト14番染色体保持CHO(hprt−/−)細胞株への移入
作製したIGL−NACを、改変ヒト14番染色体を保持するCHO(hprt−/−)細胞株へ移入し、FRT/Flpシステムによる組換えを起こさせIGH領域をIGL−NACに搭載し、IGHL−NACを作製する。
【0297】
[C.1]微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
ドナー細胞であるCHO IGL−NACを細胞培養皿で培養し、コンフルエントになった時点で20%FBS、0.1μg/mlコルセミドを添加したF12培地に交換し、さらに48時間培養後に20%FBS、0.1μg/mlコルセミドを添加したF12培地で培地交換し、さらにオーバーナイトでインキュベートしてミクロセルを形成させる。培養液を除去し、予め37℃で保温したサイトカラシンB(10μg/ml,シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、34℃、8000rpm、1時間の遠心を行う。微小核(「ミクロセル」ともいう)を無血清DMEM培地に懸濁し、8μm,5μm,3μmフィルターにて精製する。精製後、ミクロセルをDMEMで調製した0.05mg/ml PHA−P(シグマ)溶液2mLに懸濁し、6cm細胞培養皿でコンフルエントになったレシピエントであるCHO hprt−/−14FRT(PCT/JP2017/039441に記載)、培養液を除いた後添加する。15分インキュベートして微小核をCHO細胞に張り付ける。その後、PEG1000(Wako)溶液[5gのPEG1000を無血清DMEM培地6mLに完全に溶解し、ジメチルスルホキシドを1ml添加して濾過滅菌する]を1mlで正確に1分融合する。5mLの無血清DMEMでPEGを除去するために4回ウオッシュ操作を行った後、CHO培養液を添加する。24時間後、10cm細胞培養皿10枚に細胞を播種し、600μg/mL G418と6μg/mLブラストサイジン(Blasticidin)を添加し、10日選択培養を行う。得られた薬剤耐性株ついて以降の解析を行う。
【0298】
[C.2]PCR解析による薬剤耐性クローンの選別
IGL−NACが改変ヒト14番染色体を保持するCHO(hprt−/−)株に移入されているか、改変ヒト14番染色体は維持されているかを確認するためにPCR解析を行う。以下に用いるプライマーを示す。
IGL−NACの確認プライマー:
KJneo (前出)
PGKr-2 (前出)
これらプライマーについては、LA taq(Takara)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、94℃10秒、60℃30秒、72℃3分を30サイクル行う。
【0299】
FRT挿入部位が維持されているか確認するためのプライマーを以下に示す。
22TeT La L (前出)
22TeT La R (前出)
22TeT Ra L (前出)
22TeT Ra R (前出)
PCRは、サーマルサイクラーとしてTakara社製のTP600を、PCR酵素はKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃5分を35サイクル行う。
【0300】
また、ヒト22番染色体領域についてPCR解析を行う。以下に配列を示す。
553P-F (前出)
553P-R (前出)
PPM1F L (前出)
PPM1F R (前出)
IGLVI-70 L (前出)
IGLVI-70 R (前出)
GNAZ L (前出)
GNAZ R (前出)
LIF L (前出)
LIF R (前出)
hVpreB1-F (前出)
hVpreB1-Rm (前出)
hVpreB3-F (前出)
hVpreB3-R (前出)
hL5-F (前出)
hL5-R (前出)
344-F (前出)
344-R (前出)
350P-F (前出)
350P-R (前出)
IgL-F (前出)
IgL-Rm (前出)
SERPIND1 L (前出)
SERPIND1 R (前出)
これらプライマーを用いたPCRについて、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、63、62、60、56、55、50℃のいずれかで30秒、72℃1分を35サイクル行う。
【0301】
ヒト14番染色体領域の確認プライマー:
MTA1-F3 (前出)
MTA1-R3 (前出)
ELK2P2-F (前出)
ELK2P2-R (前出)
g1(g2)-F (前出)
g1(g2)-R (前出)
VH3-F (前出)
VH3-R (前出)
CH3F3 (前出)
CH4R2 (前出)
これらプライマーを用いたPCRについて、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒もしくは56℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。
【0302】
改変ヒト14番染色体上FRT挿入部位の確認プライマー:
14TarC_La F (前出)
14TarC_La R (前出)
14TarC_Ra F (前出)
14TarC_Ra R (前出)
これらプライマーについては、KOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃6分を35サイクル行う。
この結果を受けて、クローンを選別し、以降の実験を進める。
【0303】
[C.3]two−color FISH解析
Human cot−1 DNA及びMouse cot−1 DNAをプローブにしてFISH解析を行い、IGL−NACと改変ヒト14番染色体が独立して、1コピーずつ維持されているクローンを確認する。陽性細胞(CHO #14 IGL−NACと命名)を選択し以降の実験を行う。
【0304】
[D]FRT/Flp組換えシステムを用いたIGHL−NACの構築
IGL−NACと改変ヒト14番染色体をFRT/Flpシステムで相互転座させることで、IGL−NAC上にヒト14番染色体由来IGH領域を転座クローニングし、IGHL−NACを構築する(
図23)。
【0305】
[D.1]FLP発現によるHAT耐性染色体組換え体の取得
IGL−NAC上のFRTサイトと改変ヒト14番染色体上のFRTサイトを用いて、FLPo組換え酵素存在下で相互転座を起こさせる。また、組換えが起こるとIGHL−NAC上では、5’HPRTと3’HPRTが連結して、HPRT遺伝子の再構成が起こり、HAT耐性を獲得する。CHO#14IGL−NACについて、10cm細胞培養皿においてコンフルエントになった時に18μgのFLP発現プラスミドをLipofectamine2000(Thermo Fisher Scientific)を用いてメーカーの手順を参照して加える。添加後6時間経過したら、培養液を交換し、24時間後に、10cm細胞培養皿10枚に播種し、1×HAT、8μg/mL Blasticidinで薬剤選択を行う。
得られたHAT耐性クローンを以降の解析に用いる。
【0306】
[D.2]PCR解析による薬剤耐性クローンの選別
FRT/FLPシステムを用いて期待した相互転座が起こり、IGHK−NACが構築されているか確認するため、薬剤耐性クローンのDNAを抽出し、鋳型としてPCR解析を行う。用いるプライマーを以下に示す。
相互転座連結部位の確認プライマー:
TRANS L1 (前出)
TRANS R1 (前出)
CMVr-1 (前出)
PGKr-2 (前出)
KJneo (前出)
PGKr-2 (前出)
これらプライマーについては、LA taq(Takara)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、94℃10秒、60℃30秒、72℃3分を30サイクル行う。
【0307】
ヒト22番染色体領域についてPCR解析を行う。以下に配列を示す。
553P-F (前出)
553P-R (前出)
PPM1F L (前出)
PPM1F R (前出)
IGLVI-70 L (前出)
IGLVI-70 R (前出)
GNAZ L (前出)
GNAZ R (前出)
LIF L (前出)
LIF R (前出)
hVpreB1-F (前出)
hVpreB1-Rm (前出)
hVpreB3-F (前出)
hVpreB3-R (前出)
hL5-F (前出)
hL5-R (前出)
344-F (前出)
344-R (前出)
350P-F (前出)
350P-R (前出)
IgL-F (前出)
IgL-Rm (前出)
これらプライマーを用いたPCRについて、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、63、62、60、56、55、50℃のいずれかで30秒、72℃1分を35サイクル行う。
【0308】
ヒト14番染色体領域の確認プライマー:
MTA1-F3 (前出)
MTA1-R3 (前出)
ELK2P2-F (前出)
ELK2P2-R (前出)
g1(g2)-F (前出)
g1(g2)-R (前出)
VH3-F (前出)
VH3-R (前出)
CH3F3 (前出)
CH4R2 (前出)
これらプライマーを用いたPCRについて、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒もしくは56℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。
PCR結果によりクローンを選別し、以降の実験に用いる。
【0309】
[D.3]two−color FISH解析
プローブとしてBACクローンCH17−424L4(IGL領域)とCH17−262H11(IGH領域)及びCH17−95F2(IGL領域)とCH17−212P11(IGH領域)の組み合わせを用いてtwo−color FISH解析を行い、実際IGHL−NACが構築されているか詳細に解析する。NAC上にそれぞれ、IGL領域とIGH領域の存在を示すシグナルが観察されたものを陽性とし、IGHL−NACが構築されていることを確認(CHO IGHL−NACと命名)しクローンを選別し、以降の実験を行う。
【0310】
[E]IGHL−NACのCHO K1細胞株への移入
IGHL−NAC及びIGHL−NAC構築のための相互転座の際に形成された副産物の両方にNeo耐性遺伝子が載っており、微小核細胞融合法で目的の細胞に移入した際、G418で薬剤選択するとIGHL−NACもしくは副産物がそれぞれあるいは両方移入された細胞を取得することになる。NAC上にはEGFPが搭載されているので、目的の細胞にIGHL−NACが移入されているか確認することが可能であるが、染色体導入が効率的に行えるドナー細胞でかつIGHL−NACのみを保持する細胞を作製するため。IGHL−NACをCHO K1細胞株に移入する。
【0311】
[E.1]微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離:IGHL−NACのCHO K1株への移入
ドナー細胞であるCHO IGHL−NACを細胞培養皿で培養し、コンフルエントになった時点で20%FBS、0.1μg/mlコルセミドを添加したF12培地に交換し、さらに48時間培養後に20%FBS、0.1μg/mlコルセミドを添加したF12培地で培地交換し、さらにオーバーナイトでインキュベートしてミクロセルを形成させる。培養液を除去し、予め37℃で保温したサイトカラシンB(10μg/ml,シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、34℃、8000rpm、1時間の遠心を行った。微小核(「ミクロセル」ともいう)を無血清DMEM培地に懸濁し、8μm,5μm,3μmフィルターにて精製する。精製後、ミクロセルをDMEMで調製した0.05mg/ml PHA−P(シグマ)溶液2mLに懸濁し、6cm細胞培養皿でコンフルエントになったレシピエントであるCHO K1細胞株に、培養液を除いた後添加する。15分インキュベートして微小核をCHO細胞に張り付ける。その後、PEG1000(Wako)溶液[5gのPEG1000を無血清DMEM培地6mLに完全に溶解し、ジメチルスルホキシドを1ml添加して濾過滅菌する]を1mlで正確に1分融合する。5mLの無血清DMEMでPEGを除去するために4回ウオッシュ操作を行った後、CHO培養液を添加する。24時間後、10cm細胞培養皿10枚に細胞を播種し、800μg/mL G418を添加し、10日選択培養を行う。得られた薬剤耐性株について以降の解析を行う。
【0312】
[E.2]PCR解析による薬剤耐性クローンの選別
IGHL−NACがCHO K1細胞株に移入されていることを確認するため、薬剤耐性クローンのDNAを抽出し、それを鋳型としてPCR解析を行った。用いたプライマーを以下に示す。
相互転座連結部位確認プライマー:
TRANS L1 (前出)
TRANS R1 (前出)
CMVr-1 (前出)
PGKr-2 (前出)
KJneo (前出)
PGKr-2 (前出)
これらプライマーについては、LA taq(Takara)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、94℃10秒、60℃30秒、72℃3分を30サイクル行う。
【0313】
ヒト22番染色体領域についてPCR解析を行う。以下に配列を示す。
553P-F (前出)
553P-R (前出)
PPM1F L (前出)
PPM1F R (前出)
IGLVI-70 L (前出)
IGLVI-70 R (前出)
hVpreB1-F (前出)
hVpreB1-Rm (前出)
hVpreB3-F (前出)
hVpreB3-R (前出)
hL5-F (前出)
hL5-R (前出)
344-F (前出)
344-R (前出)
350P-F (前出)
350P-R (前出)
IgL-F (前出)
IgL-Rm (前出)
これらプライマーを用いたPCRについて、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、63、62、60、56、55、50℃のいずれかで30秒、72℃1分を35サイクル行う。
【0314】
ヒト14番染色体領域の確認プライマー:
MTA1-F3 (前出)
MTA1-R3 (前出)
ELK2P2-F (前出)
ELK2P2-R (前出)
g1(g2)-F (前出)
g1(g2)-R (前出)
VH3-F (前出)
VH3-R (前出)
CH3F3 (前出)
CH4R2 (前出)
これらプライマーを用いたPCRについて、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒もしくは56℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。PCR解析陽性細胞株について以降の解析を行う。
【0315】
[E.3]two−color FISH解析
Human cot−1 DNA及びMouse cot−1 DNAをプローブにしてFISH解析を行い、IGHL−NACを1コピー独立して保持していることを確認する。
さらに、プローブとしてBACクローンCH17−424L4 (IGL領域)とCH17−262H11(IGH領域)及びCH17−95F2 (IGL領域)とCH17−212P11(IGH領域)の組み合わせを用いてtwo−color FISH解析を行い、IGHL−NACの構造を詳細に解析する。NAC上にそれぞれ、IGL領域とIGH領域の存在を示すシグナルが観察されたものを陽性(CHO K1 IGHL−NACと命名)として、以降の実験に用いる。
【0316】
[F]マウスES細胞へのIGHL−NACの移入
ヒト抗体産生マウスを作製するためにはIGHL−NACをマウスES細胞に移入し、受精卵8細胞期にインジェクションし、キメラマウスを作製し、IGHL−NACを子孫伝達させることが必要である。
【0317】
[F.1]微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
ドナー細胞は、CHO K1 IGHL−NACを用いる。実施例7[F.1]と同様の手法を用いて微小核細胞融合を行い、EGFP陽性かつ薬剤耐性株を取得し、以降の解析を行う。
【0318】
[F.2]PCR解析による薬剤耐性クローンの選別
IGHL−NACがマウスES細胞株に移入されていることを確認するため、薬剤耐性クローンのDNAを抽出し、それを鋳型としてPCR解析を行う。用いるプライマーを以下に示す。
相互転座連結部位確認プライマー:
TRANS L1 (前出)
TRANS R1 (前出)
KJneo (前出)
PGKr-2 (前出)
これらプライマーについては、LA taq(Takara)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、94℃10秒、60℃30秒、72℃3分を30サイクル行う。
【0319】
ヒト22番染色体領域についてPCR解析を行う。以下に配列を示す。
553P-F (前出)
553P-R (前出)
PPM1F L (前出)
PPM1F R (前出)
IGLVI-70 L (前出)
IGLVI-70 R (前出)
hVpreB1-F (前出)
hVpreB1-Rm (前出)
hVpreB3-F (前出)
hVpreB3-R (前出)
hL5-F (前出)
hL5-R (前出)
344-F (前出)
344-R (前出)
350P-F (前出)
350P-R (前出)
IgL-F (前出)
IgL-Rm (前出)
これらプライマーを用いたPCRについて、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、63、62、60、56、55、50℃のいずれか30秒、72℃1分を35サイクル行う。
【0320】
ヒト14番染色体領域の確認プライマー:
MTA1-F3 (前出)
MTA1-R3 (前出)
ELK2P2-F (前出)
ELK2P2-R (前出)
g1(g2)-F (前出)
g1(g2)-R (前出)
VH3-F (前出)
VH3-R (前出)
CH3F3 (前出)
CH4R2 (前出)
これらプライマーを用いたPCRについて、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒もしくは56℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。PCR解析陽性細胞株について以降の解析を行う。
【0321】
[F.3]two−color FISH解析
Human cot−1 DNA及びMouse cot−1 DNAをプローブにしてFISH解析を行い、IGHL−NACのみを保持しており、マウスESの正常核型を維持していることを確認する。
プローブとしてBACクローンCH17−95F2(IGL領域)とCH17−262H11(IGH領域)及びCH17−424L4(IGL領域)とCH17−212P11(IGH領域)の組み合わせを用いてtwo−color FISH解析を行い、実際IGHL−NACが構築されているか詳細に解析する。NAC上にそれぞれ、IGL領域とIGH領域の存在を示すシグナルが期待した位置に観察されたものを陽性細胞株(HKD31 IGHL−NAC)とし、インジェクションに用いる。
【0322】
[G]ラットES細胞へのIGHL−NACの移入
ヒト抗体産生ラットを作製するためにはIGHL−NACをラットES細胞に移入し、受精卵8細胞期にインジェクションし、キメラマウスを作製し、IGHL−NACを子孫伝達させることが必要である。
【0323】
[G.1]微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
実施例7[F.1]に記載のようにマウスES細胞への微小核細胞融合法と同様の手法を用いてラットES細胞へのIGHL−NACの導入を行う。ドナー細胞は、CHO K1 IGHL−NACを用いる。融合後、オーバーナイトでインキュベーションし、G418を150μg/mLになるように加え、3〜4週間選択培養する。結果GFP陽性かつ薬剤耐性のクローンを以降の解析に用いる。
【0324】
[G.2]PCR解析による薬剤耐性クローンの選別
IGHL−NACがラットES細胞株に移入されていることを確認するため、薬剤耐性クローンのDNAを抽出し、それを鋳型としてPCR解析を行う。用いたプライマーを以下に示す。
相互転座連結部位確認プライマー:
TRANS L1 (前出)
TRANS R1 (前出)
KJneo (前出)
PGKr-2 (前出)
これらプライマーについては、LA taq(Takara)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、94℃10秒、60℃30秒、72℃3分を30サイクル行った。
【0325】
ヒト22番染色体領域についてPCR解析を行う。以下に配列を示す。
553P-F (前出)
553P-R (前出)
PPM1F L (前出)
PPM1F R (前出)
IGLVI-70 L (前出)
IGLVI-70 R (前出)
hVpreB1-F (前出)
hVpreB1-Rm (前出)
hVpreB3-F (前出)
hVpreB3-R (前出)
hL5-F (前出)
hL5-R (前出)
344-F (前出)
344-R (前出)
350P-F (前出)
350P-R (前出)
IgL-F (前出)
IgL-Rm (前出)
これらプライマーを用いたPCRについて、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、63、62、60、56、55、50℃のいずれか30秒、72℃1分を35サイクル行う。
【0326】
ヒト14番染色体領域確認プライマー:
MTA1-F3 (前出)
MTA1-R3 (前出)
ELK2P2-F (前出)
ELK2P2-R (前出)
g1(g2)-F (前出)
g1(g2)-R (前出)
VH3-F (前出)
VH3-R (前出)
CH3F3 (前出)
CH4R2 (前出)
これらプライマーを用いたPCRについて、TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒もしくは56℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。PCR解析陽性細胞株について以降の解析を行う。
【0327】
[G.3]two−color FISH解析
Human cot−1 DNA及びMouse cot−1 DNAをプローブにしてFISH解析を行い、IGHL−NACを1コピー独立して保持しており、ラットESの正常核型(42本)を維持していることを確認する。プローブとしてBACクローンCH17−95F2(IGL領域)とCH17−262H11(IGH領域)及びCH17−424L4(IGL領域)とCH17−212P11(IGH領域)の組み合わせを用いてtwo−color FISH解析を行い、IGHL−NACの構造をさらに詳しく解析する。NAC上にそれぞれ、IGL領域とIGH領域の存在を示すシグナルが期待した位置に観察されたものを陽性細胞株(rESIGHL−NACと命名)とし、インジェクションに用いる。
【0328】
[H]IGHL−NACを保持するマウス及びラットの作製と子孫伝達個体の作製
IGHL−NACを保持するマウス及びラットES細胞を用い、(実施例7)[H][I][J][K]同様に操作を行うことで、IGHL−NACを保持した子孫伝達マウス及び、ラットを作製することができる。子孫伝達マウス、ラット及び過程で得られたキメラマウスについても、(実施例7)[H.4][H.5][H.6]同様に解析を行い、IGHL−NAC保持及び抗体発現(hλも含む)を確認する。作製されたIGHL−NAC保持マウス及びラット系統をそれぞれmTC(IGHL−NAC)、rTC(IGHL−NAC)と呼ぶ。
【0329】
[実施例9]完全ヒト抗体産生マウスの作製
IGHK−NAC及びIGHL−NACを保持するマウスと、マウスIgh,及びIgk遺伝子が破壊されており、かつIgl変異を持つ(Iglの発現が低くなる変異を持つ)マウスを交配させ、ヒト抗体産生マウスを作製する。
【0330】
[A]Igh及びIgk遺伝子欠損、Igl低発現マウスの作製
ヒト抗体産生マウスを作製するため、マウス抗体遺伝子を欠損または低発現しているマウスを作製する。
【0331】
[A.1]Igh及びIgk遺伝子欠損、Igl低発現マウスの作製
HKD31(マウスIgh、Igkの遺伝子破壊が破壊されている)マウスESより得られたマウス系統と、マウスIgl低発現の変異を持つCD−1(ICR、チャールズリバーより購入)を交配して、Igh及びIgk遺伝子欠損、Igl低発現マウスを作製する。
CD−1由来のマウスIglc変異はPCR−RFLP解析により確認する。
以下のプライマーを用いてPCRを行う。
mIglc1VnC L:5’-CCTCAGGTTGGGCAGGAAGA-3’(配列番号119)
J3C1:5’-GACCTAGGAACAGTCAGCACGGG-3’(配列番号120)
TaqポリメラーゼはAmpli Taq Gold(Applied Biosystems)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は95℃10分の熱変性後、95℃30秒、60℃30秒、72℃1分を35サイクル行う。
PCRプロダクトをKpnI−HF(NEB)で処理し、電気泳動後、PCRプロダクトの切断が認められないものを変異アレル保持として判定する。Igλ変異が両アレルで認められるマウス(「LD系統」と呼ぶ。)を交配にて獲得する。
【0332】
[A.2]マウス抗体遺伝子の発現評価
マウス抗体が発現消失及びほぼ発現していないことをフローサイトメトリー(FCM)解析及びELISAによって、評価する。
実施例7[H.3]で述べたように、Igh遺伝子が破壊されており、Igμの発現がなくなるとB細胞ができず、B細胞の有無を判定することで、Igh遺伝子欠損が評価できる。FCM解析は以前の報告(Proc Natl Acad Sci U S A.2000 Jan 18;97(2):722−7.)同様行い、B細胞欠失が見られた個体について、マウスIgh欠損と判定する。マウスIgh、Igκが破壊されていると考えられるマウス(HKD系統と呼ぶ。)とIgλ変異マウスとの交配を進め、Igh、Igκが破壊されかつIgλ変異を両アレルにもつマウス(HKLD系統と呼ぶ。)を得る。
また、得られたマウスについて、マウスIghに加え、Igk,Iglの発現も以前の報告(Proc Natl Acad Sci U S A.2000 Jan 18;97(2):722−7)と同様に、ELISAを行い、発現消失及び低発現であることを確認する。
【0333】
[A.3]ヒト抗体産生マウスの作製
IGHK−NAC保持マウスもしくはIGHL−NAC保持マウスとマウスIghKO、IgkKO、Igl変異マウスを交配し、完全ヒト抗体産生マウスを作製する。
【0334】
[B]完全ヒト抗体産生マウスの評価
[B.1]FACS解析
IGHK−NACもしくはIGHL−NACを保持するB細胞の存在確認を目的としてフローサイトメトリー解析を行う。ヒトIGMとマウスCD45R(B220)に対する抗体を用いて、血液細胞を染色し、ヒトIGM、CD45R、GFP陽性の細胞を確認する。ヘパリンコートキャピラリ―を用いて、眼窩より採血し、ヘパリンPBSの入ったチューブに血液を移し、転倒混和して氷冷。遠心2000rpm、3分、4℃、の後、上清除去後、各種抗体を添加し、4℃で30分反応させ、5%牛胎仔血清を添加したPBS(5%FBS/PBS)により洗浄する。最後の遠心後、ペレットに1.2%Dextran/生理食塩水を加え、タッピング後、室温で45分静置し、赤血球を自然沈降させる。上清を新しいチューブに移し、2000rpm、3分、4℃で遠心後上清除去し、ペレットに室温の溶血剤(0.17M NH
4Cl)を加え、5分静置する。2000rpm、3分、4℃で遠心し、5%FBS/PBSで洗浄した後500μlの5%FBS/PBSで懸濁したものを解析サンプルとし、フローサイトメーターにより解析する。
【0335】
[B.2]ヒト抗体の発現解析
ヒト抗体遺伝子軽鎖、重鎖、各種アイソタイプ発現確認を目的として、ELISAにより測定する。(実施例7)[H.4]に記載した方法同様、マウスの抗体発現の有無確認も含め、マウス抗体(mγ、mμ、mκ、mλ)、ヒト抗体(hγ、hμ、hκ、hλ、hγ1、hγ2、hγ3、hγ4、hα、hε、hδ)の発現及び血清中の濃度を測定する。
【0336】
[B.3]ヒト抗体の発現解析及び配列同定
ヒト抗体産生マウス脾臓由来RNAからcDNAを合成し、ヒト抗体遺伝子可変領域クローニングと塩基配列決定を行う。(実施例7)[H.5]と同様に実施することで解析、評価できる。
【0337】
[B.4]抗原特異的ヒト抗体産生応答の評価
ヒト抗体産生マウスについて、抗原特異的ヒト抗体産生応答が見られるかを評価する。(実施例7)[H.6]に記載した方法同様にヒト血清アルブミンで免疫し、抗体力価の上昇を解析する。
【0338】
[B.5]ヒト抗体産生マウスからのヒト抗体産生ハイブリドーマの取得
特許(国際公開WO98/37757号)に記載されている方法同様にヒト抗体産生ハイブリドーマの取得ができる。
【0339】
[実施例10]完全ヒト抗体産生ラットの作製
IGHK−NAC及びIGHL−NACを保持するラットと、ラットIgh,Igk,Iglが破壊されたKOラットを交配させ、ヒト抗体産生ラットを作製する。
【0340】
[A]ヒト抗体産生ラットの作製及び評価
[A.1]ヒト抗体産生ラットの作製
IGHK−NACもしくはIGHL−NACを保持したラット系統とラットIgh、Igκ、Igλ遺伝子が破壊されたラット系統を交配することで、ヒト抗体産生ラットを作製できる。
【0341】
[A.2]FACS解析
IGHK−NACもしくはIGHL−NACを保持するB細胞の確認を行う。(実施例14)[B.1]と同様の方法で実施し、抗体は抗ラットCD45R(B220)抗体を用い、溶血剤は0.15M NH
4Clを用いる。
【0342】
[A.3]ヒトIgの発現解析
ELISAによるヒト抗体遺伝子軽鎖、重鎖、各種アイソタイプ発現確認を目的として、(実施例7)[H.4]]と同様に解析を行うことでヒト抗体産生を評価することができる。抗ラット免疫グロブリン抗体を用いてラット抗体(rγ、rμ、rκ、rλ)の発現も評価する。
【0343】
[A.4]ヒト抗体の発現解析及び遺伝子配列同定
上記の(実施例7)[H.5]と同様の方法を用いて、抗体遺伝子配列決定、解析、評価を行うことができる。
【0344】
[A.5]抗原特異的ヒト抗体産生応答の評価
(実施例7)[H.6]の記載と同様に実施し、評価することができる。
【0345】
[A.6]ヒト抗体産生ラットからのヒト抗体産生ハイブリドーマの取得
(実施例9)[B.5]の記載と同様の方法で実施し、ヒト抗体産生ハイブリドーマの取得ができる。
【0346】
[実施例11]マウス人工染色体ベクター10MAC2、10MAC3の構築
マウス人工染色体10MACにDNA挿入配列としてPGKneo−5’HPRT−loxPおよびGFP−PGKneo−5’HPRT−loxPタイプのloxP配列を挿入することでマウス人工染色体ベクター10MAC2、10MAC3を各々構築し、環状DNAを介した遺伝子搭載を行うためのhprt欠損CHO細胞株へ導入し、動作確認を行う。
【0347】
[A]マウス人工染色体10MACへのPGKneo−5’HPRT−loxPおよびGFP−PGKneo−5’HPRT−loxPタイプのloxP配列の挿入によるマウス人工染色体ベクター10MAC2、10MAC3の構築
マウス人工染色体10MACに遺伝子搭載サイトloxPのみを搭載した10MACおよび遺伝子搭載サイトloxPとその存在をモニター可能なGFP発現ユニットを搭載した10MACを構築する。
【0348】
[A.1] PGKneo−5’HPRT−loxPおよびGFP−PGKneo−5’HPRT−loxPタイプのloxPターゲティングベクターの作製
DT40(10MAC)にloxP配列を挿入するための基本プラスミドにはV907(Lexicon genetics)を用いた。loxP挿入部位であるマウス10番染色体のDNA配列はGenBankデータベースより得た(NC_000076.6)。薬剤耐性クローンからゲノムDNAを抽出して鋳型とし、相同組換えの二つの標的配列の増幅に用いたプライマーの配列を以下に示す。
NotI_m10 LA F:5'- TCGAGCGGCCGCTCTAAGTCAGGGAAAGATCCCCTTCTTG -3' (配列番号121)
SalI_m10 LA R:5'- TCGAGTCGACGACCATGAAGATGGTCCAACTAAAGCAA -3' (配列番号122)
ClaI_m10 RA F:5'- TCGAATCGATCACTGCTCTTTCTTTAGTTACATGCAGCCC -3' (配列番号123)
ClaI_m10 RA R:5'- TCGAATCGATATTCTTGCCAAGCTACTCTTCCGAGCTA -3' (配列番号124)
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃3分及び5分を35サイクル行った。
PGKneo−5’HPRT−loxPのターゲティングベクターの作製。
V907のEcoRIサイトにPGKneoをクローニングした。AscIサイトとClaIサイトに5’HPRT−loxPを挿入した。ClaI m10 RA FとClaI m10 RA RのPCR産物をClaI(NEB)で消化して、アガロースゲルにより分離し精製後、V907のClaIサイトにクローニングした(ベクター名:V907−PGKneo−5’HPRT−loxP−m10RA)。NotI_m10 LA FとSalI_m10 LA RのPCR産物をNotI(NEB)とSalI(NEB)で消化して、アガロースゲルにより分離し精製後、V907−PGKneo−5’HPRT−loxP−m10RAのNotI/SalIサイトにクローニングした(ベクター名:p10MAC2)。
GFP−PGKneo−5’HPRT−loxPのターゲティングベクターの作製。V907−PGKneo−5’HPRT−loxP―m10RAのNotI/SalIサイトににCAG−EGFPをクローニングした。NotI_m10 LA FとSalI_m10 LA RのPCR産物をNotI(NEB)とPspOMI(NEB)で消化して、アガロースゲルにより分離し精製後、V907−EGFP−PGKneo−5’HPRT−loxP―m10RAのNotIサイトにクローニングした(ベクター名:p10MAC3)。
ターゲティングベクター、標的配列及び相同組換えにより生じる染色体アレルを
図24、25に示す。
【0349】
[A.2]トランスフェクション及びG418耐性クローンの単離
ニワトリDT40細胞の培養は10%ウシ胎仔血清(ギブコ、以下「FBS」で記す)、1%ニワトリ血清(ギブコ)、10−4M 2−メルカプトエタノール(シグマ)を添加したRPMI1640培地(ギブコ)中で行った。DT40(10MAC)T5−26の約10
7個の細胞を無添加RPMI1640培地で一回洗浄し、0.5mlの無添加RPMI1640培地に懸濁し、制限酵素NotI(TAKARA)で線状化したターゲティングベクターp10MAC2もしくはp10MAC3を25μg加え、エレクトロポレーション用のキュベット(バイオラッド)に移し、室温で10分間静置した。キュベットをジーンパルサー(バイオラッド)にセットし、550V、25μFの条件で電圧印加した。室温で10分間静置後、24時間培養した。G418(1.5mg/ml)を含む培地に交換し、96穴培養プレート2枚に分注して約2週間の選択培養を行った。T5−26,T6−37各2回のトランスフェクションで得た各24、20個の耐性コロニーを単離し増殖させ、以後の解析を行った(クローン名:DT40(10MAC2)およびDT40(10MAC3))。
【0350】
[A.3]相同組換体の選別
[A.3.1]PCR解析
G418耐性株のゲノムDNAを抽出して鋳型として組換え体を選別するため、以下のプライマーを用いてPCRを行い、マウス10番染色体上で部位特異的に組換え起こっているかを確認した。そのプライマー配列を以下に示す。
DT40(10MAC2)
m10 F1 (前出)
NAC R1:5'- CTCTTCAGCAATATCACGGGTAGCCAAC -3' (配列番号125)
NAC F1:5'- TGCTTGCATTGTATGTCTGGCTATTCTG -3' (配列番号126)
m10 R2 (前出)
m10 F6 (前出)
Puro I (前出)
DT40(10MAC3)
m10 F1 (前出)
EGFP-R:5'- TGCTCAGGTAGTGGTTGTCG -3' (配列番号127)
NAC F1 (前出)
m10 R2 (前出)
m10 F6 (前出)
Puro I (前出)
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃5分もしくは6分を35サイクル行った。
その結果DT40(10MAC2)およびDT40(10MAC3)について各14、11クローンについて目的の組換えが行われていることが示唆された。
【0351】
[A.3.2]two−color FISH解析
上記から得られたDT40(10MAC2)およびDT40(10MAC3)において、two−color FISH解析を松原ら(FISH実験プロトコール、秀潤社、1994)に従い行った。マウスcot−1 DNA及び5’-HPRT-loxP(X6.1)カセットをプローブにしてFISH解析を行ったところ、loxP配列がターゲティングされたマウス10番染色体断片のセントロメア付近にプローブ由来のFITCシグナルが検出されたことから、部位特異的に組換えが起こったことが視覚的に確かめられた(
図26、27)。これらの結果から、マウス人工染色体ベクター10MAC2および10MAC3を保持するDT40細胞クローンが得られたと結論できた。以降のステップでは、DT40(10MAC2) #8、DT40(10MAC3)#12の各1クローンを用いることとした。
【0352】
[B]マウス人工染色体ベクター10MAC2および10MAC3含有DT40細胞から10MAC2および10MAC3のCHO細胞への導入
CHO細胞内でマウス人工染色体ベクター10MAC2もしくは10MAC3のDNA配列挿入部位であるloxP配列を介して目的遺伝子(群)を保持した環状DNAを挿入するため、或いはCHO細胞を介して目的の遺伝子が搭載されたマウス人工染色体ベクター10MAC2もしくは10MAC3をマウスES細胞等に導入するためにCHO細胞に導入する。
【0353】
[B.1]微小核細胞融合と薬剤耐性クローンの単離
ドナー細胞であるDT40(10MAC2)およびDT40(10MAC3)を用いて、上記と同様にCHO hprt欠損細胞(ヒューマンサイエンス研究資源バンクより入手、登録番号JCRB0218)であるCHO(HPRT
−)に微小核細胞融合法を行った。微小核細胞融合で得たG418耐性コロニーを単離し増殖させ、以降の解析を行った(クローン名:CHO(HPRT
−;10MAC2)およびCHO(HPRT
−;10MAC3))。
【0354】
[B.2]薬剤耐性クローンの選別
[B.2.1]PCR解析
G418耐性株のゲノムDNAを抽出して鋳型として組換え体を選別するため、以下のプライマーを用いてPCRを行い、マウス人工番染色体ベクター10MAC2および10MAC3がCHO細胞に導入できているかを確認した。そのプライマー配列を以下に示す。
CHO(HPRT
−;10MAC2)
m10 F1 (前出)
NAC R1 (前出)
NAC F1 (前出)
m10 R2 (前出)
m10 F6 (前出)
Puro I (前出)
CHO(HPRT
−;10MAC3)
m10 F1 (前出)
EGFP-R (前出)
NAC F1 (前出)
m10 R2 (前出)
m10 F6 (前出)
Puro I (前出)
PCRは、サーマルサイクラーとしてPerkin−Elmer社製のGeneAmp9600を、TaqポリメラーゼはKOD FX(TOYOBO)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,dGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いた。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、98℃15秒、68℃5分もしくは6分を35サイクル行った。PCR陽性のクローン各12、10クローン得られたため以降の解析を行った。
【0355】
[B.2.2]mono−color FISH解析
上記で得られたCHO(HPRT
−;10MAC2)および(HPRT
−;10MAC3)に関して選抜した各6クローンについてShinoharaらの報告(Human Molecular Genetics,10: 1163−1175,2001)に記された方法でマウスcot−1 DNAをプローブにしたFISH解析を行い、マウス人工染色体ベクター10MAC2および10MAC3がCHO細胞に導入されていることを確認した。解析結果よりMAC2が安定に独立して保持されている1クローンおよびMAC3が安定かつ独立して保持されている2クローンを確認した(
図28、29)。
【0356】
[C]MAC2およびMAC3への環状DNAの挿入確認
作製したMAC2およびMAC3への環状DNAの組換え挿入が動作するか検証を行った。
[C.1]MAC2およびMAC3へのCre/loxPシステムによる環状DNAの挿入
CHO(HPRT
−;10MAC2)および(HPRT
−;10MAC3)を6cm dishでコンフルエントになるように培養を行った。Lipofectamine2000を用いてメーカーのプロトコールに従い、CHO(HPRT
−;10MAC2)にはCre発現プラスミド(ベクター名:pBS185)およびLoxP-3’HPRT-EGFPのプラスミド(ベクター名:X3.1−I−EGFP-I)を共導入し、CHO(HPRT
−;10MAC3)にはpBS185およびLoxP-3’HPRT-tdtomatoのプラスミド(ベクター名:X3.1−I−tdtomato-I)を共導入した。遺伝子導入24時間後細胞を10cmdish10枚に継代培養し、さらに24時間後からHATで薬剤選択を行った。得られた薬剤耐性クローンについて以降の解析を行う。
【0357】
[C.2]薬剤耐性クローンの解析
期待された部位特異的組換えが起こり、LoxP-3’HPRTを保持した環状DNAが挿入されると10MAC2および10MAC3でHPRT遺伝子の再構成が起こり、HAT耐性になる。薬剤耐性クローンからDNAを抽出し、この組換えのつなぎ目を検出するPCRを行う。使用したプライマーを以下に示す。
TRANS L1 (前出)
TRANS R1 (前出)
これらプライマーについては、LA taq(Takara)を用い、バッファーやdNTPs(dATP,dCTP,DGTP,dTTP)は添付のものを推奨される条件に従って用いる。温度、サイクル条件は98℃1分の熱変性後、94℃10秒、60℃30秒、72℃3分を30サイクル行う。その結果で、部位特異的組換えによる環状DNAの挿入効率を評価する。