(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記開操作補助手段が、前記隙間開閉部材の下面に固定されているとともに当該隙間開閉部材よりも内水側に延出されている補助アームと、この補助アームの内水側端部に設置されて前記隙間開閉部材を重量バランスにより外水側に持ち上げて開状態にする開状態保持用ウエイトと、を有する、請求項1または請求項2に記載のフラップゲート用水密構造体。
閉操作補助手段が、前記補助アームの内水側端部に設置されており、水没時の浮力によって前記隙間開閉部材を内水側に引き寄せて前記水門開口部の戸当たりに密接させる密接用フロートを備える、請求項3に記載のフラップゲート用水密構造体。
閉操作補助手段が、前記補助アームの内水側端部に連結されている連結部材と、この連結部材の他端に連結されているとともに前記扉体の内水側面に上下動可能に設けられており、水没時の浮力による上昇にともない前記補助アームの内水側端部を引き上げて前記隙間開閉部材を内水側に引き寄せて前記水門開口部の戸当たりに密接させる密接用フロートと、を備える、請求項3に記載のフラップゲート用水密構造体。
前記開操作補助手段が、上下動可能な昇降ウエイトと、この昇降ウエイトの自重による重力方向の張力を持ち上げ方向に変換する方向変換機構を介して前記隙間開閉部材を外水側に持ち上げて開状態に操作する持ち上げ操作部と、を有する、請求項1または請求項2に記載のフラップゲート用水密構造体。
前記持ち上げ操作部が、揺動可能に支持されているとともに一端部に前記昇降ウエイトが設けられたシーソー部と、このシーソー部の他端部と前記隙間開閉部材とを連結して当該隙間開閉部材を外水側に持ち上げる持ち上げ連結部と、を有する、請求項6または請求項7に記載のフラップゲート用水密構造体。
前記持ち上げ連結部が、剛体により構成されており、前記昇降ウエイトの水没時の浮力によって前記隙間開閉部材を閉状態に操作する閉操作補助手段としても機能する、請求項8に記載のフラップゲート用水密構造体。
重力以外の外力が加わらない状態で水門の開口部を開口する重量バランスで支持されている扉体を備えたフラップゲートであって、前記扉体には請求項1から請求項9のいずれかに記載のフラップゲート用水密構造体が備えられてる、前記フラップゲート。
前記フラップゲートにおける戸当たりには、左右の側部戸当たりの下端隅部に前記隙間開閉部材と当接する隙間開閉部材受け部が設けられている、請求項10に記載のフラップゲート。
前記フラップゲートにおける戸当たりには、下部戸当たりの上面に沿って外水側に連続的に延出形成されるとともに、その上面が平滑に形成されている揺動部損傷防止部材が設けられている、請求項10または請求項11に記載のフラップゲート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載された発明においても水門の設置場所や周辺環境、水門の構造などによって、外部フロートの設置が困難な場合がある。従って、敷段差がなく、しかも外部フロートの設置が困難な場合であっても設置することのできる新たなフラップゲートを開発すべき必要性が生じていた。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであって、重力以外の外力が加わらない状態において、敷段差を設けなくても扉体と水門開口部の底面との間の隙間を大きく取ることができるとともに、閉鎖時には水門開口部との水密性を確保することのできる、フラップゲート用水密構造体およびこれを備えたフラップゲートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るフラップゲート用水密構造体は、敷段差を設けなくても扉体と水門開口部の底面との間に隙間を設け、閉鎖時には水門開口部との水密性を確保するという課題を解決するために、重力以外の外力が加わらない状態で水門の開口部を開口する重量バランスで支持されている扉体を備えたフラップゲートにおける水密構造体であって、前記扉体が前記水門を閉鎖している状態において前記扉体の下端縁部と前記水門の底面との間に隙間を設け、流水方向に揺動して前記隙間を開閉する隙間開閉部材と、この隙間開閉部材を外水側に持ち上げて開状態に操作する開操作補助手段とを有する。
【0011】
また、本発明の一態様として、浮力を用いて開状態に保持されている隙間開閉部材の閉操作を自動的に行うという課題を解決するために、前記開操作補助手段により開状態に保持されている前記隙間開閉部材を、水没時の浮力によって閉状態に操作する閉操作補助手段を有するようにしてもよい。
【0012】
さらに、本発明の一態様として、隙間開閉部材に設けられた補助アームによって前記隙間開閉部材を開状態に保持するという課題を解決するために、前記開操作補助手段が、前記隙間開閉部材の下面に固定されているとともに当該隙間開閉部材よりも内水側に延出されている補助アームと、この補助アームの内水側端部に設置されて前記隙間開閉部材を重量バランスにより外水側に持ち上げて開状態にする開状態保持用ウエイトとを有するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明の一態様として、隙間開閉部材の閉状態における水密性能を向上させるという課題を解決するために、前記閉操作補助手段が、前記補助アームの内水側端部に設置されており、水没時の浮力によって前記隙間開閉部材を内水側に引き寄せて前記水門開口部の戸当たりに密接させる密接用フロートを備えていてもよい。
【0014】
さらに、本発明の一態様として、隙間開閉部材の閉状態における水密性能を向上させるという課題を解決するために、前記閉操作補助手段が、前記補助アームの内水側端部に連結されている連結部材と、この連結部材の他端に連結されているとともに前記扉体の内水側面に上下動可能に設けられており、水没時の浮力による上昇にともない前記補助アームの内水側端部を引き上げて前記隙間開閉部材を内水側に引き寄せて前記水門開口部の戸当たりに密接させる密接用フロートとを備えていてもよい。
【0015】
また、本発明の一態様として、隙間開閉部材に設けられた上下動可能な昇降ウエイトによって前記隙間開閉部材を開状態に保持するという課題を解決するために、前記開操作補助手段が、上下動可能な昇降ウエイトと、この昇降ウエイトの自重による重力方向の張力を持ち上げ方向に変換する方向変換機構を介して前記隙間開閉部材を外水側に持ち上げて開状態に操作する持ち上げ操作部とを有するようにしてもよい。
【0016】
さらに、本発明の一態様として、開状態に保持された隙間開閉部材を浮力により閉状態にし易くするという課題を解決するために、前記昇降ウエイトが、水没時の浮力によって水位上昇にともない上昇する浮揚機能を備えていてもよい。
【0017】
また、本発明の一態様として、隙間開閉部材に設けられた上下動可能な昇降ウエイトによって前記隙間開閉部材を開状態に保持するという課題を解決するために、前記持ち上げ操作部が、揺動可能に支持されているとともに一端部に前記昇降ウエイトが設けられたシーソー部と、このシーソー部の他端部と前記隙間開閉部材とを連結して当該隙間開閉部材を外水側に持ち上げる持ち上げ連結部とを有するようにしてもよい。
【0018】
さらに、本発明の一態様として、隙間開閉部材の閉状態における水密性能を向上させるという課題を解決するために、前記持ち上げ連結部が、剛体により構成されており、前記昇降ウエイトの水没時の浮力によって前記隙間開閉部材を閉状態に操作する前記閉操作補助手段としても機能するようにしてもよい。
【0019】
本発明に係るフラップゲートは、敷段差を設けなくても扉体と水門開口部の底面との間に隙間を設け、閉鎖時には水門開口部との水密性を確保するという課題を解決するために、重力以外の外力が加わらない状態で水門の開口部を開口する重量バランスで支持されている扉体を備えたフラップゲートであって、前記扉体には請求項1から請求項9のいずれかに記載のフラップゲート用水密構造体が備えられてる。
【0020】
また、本発明の一態様として、扉体の閉鎖時の水密性能を確保するという課題を解決するために、前記フラップゲートにおける戸当たりには、左右の側部戸当たりの下端隅部に前記隙間開閉部材と当接する隙間開閉部材受け部が設けられていてもよい。
【0021】
さらに、本発明の一態様として、砲水等の流水が外水側から押し寄せた場合の隙間開閉部材の損傷を抑制するという課題を解決するために、前記フラップゲートにおける戸当たりには、下部戸当たりの上面に沿って外水側に連続的に延出形成されるとともに、その上面が平滑に形成されている揺動部損傷防止部材を有していてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、重力以外の外力が加わらない状態において、敷段差を設けなくても扉体と水門開口部の底面との間の隙間を大きく取ることができるとともに、閉鎖時には水門開口部との水密性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るフラップゲート用水密構造体およびこれを備えたフラップゲートの第一実施形態について図面を用いて説明する。
【0025】
本第一実施形態のフラップゲート1は、軸支された扉体の重量バランスおよび水圧によって水門100の開口部200の開閉を自動的に行うものであり、
図1ないし
図3に示すように、前記開口部200を開閉する扉体2と、この扉体2を支持する扉体支持アーム3と、この扉体支持アーム3を連結させて前記扉体2を揺動自在に支持する揺動支持軸4と、この揺動支持軸4に連結されるウエイトアーム5と、このウエイトアーム5の上端に設けられるバランスウエイト6と、前記扉体2と戸当たり8との水密を確保するフラップゲート用水密構造体7Aと、前記水門100の開口部200に設置される戸当たり8とを有する。以下、各構成について詳細に説明する。
【0026】
扉体2は、水門100の開口部200を開閉する扉であり、本第一実施形態では、前記開口部200の形状に合わせて矩形状に形成されている。この扉体2は、前記開口部200を閉鎖可能にするため左右幅は前記開口部200の左右幅よりも大きく形成されている。上端側は、前記開口部200を閉鎖する状態において前記開口部200の上方縁部より上側に位置するように支持されている。一方、下端側は、
図3に示すように、前記開口部200を閉鎖した状態において、水門100の底面300との間に隙間Cを設けるように支持されている。
【0027】
扉体支持アーム3は、扉体2を支持するアームであり、本第一実施形態では、2本の扉体支持アーム3,3が前記扉体2の外水側面22から連続して上方に延出するように設けられている。
【0028】
揺動支持軸4は、扉体2を流水方向に揺動自在に支持するための軸であり、本第一実施形態では、水門開口部200の上方に設置された軸受けに回動自在に設けられている。この揺動支持軸4には、扉体支持アーム3が固定されており、前記扉体支持アーム3に支持された扉体2を揺動自在に支持している。
【0029】
ウエイトアーム5は、上端にバランスウエイト6を設置するためのアームであり、本第一実施形態では、揺動支持軸4を基端として扉体支持アーム3とは逆方向に延出されている。
【0030】
バランスウエイト6は、扉体2の初期開度を設定する重量バランスを調整するためのものであり、ウエイトアーム5の上端に設置されている。本第一実施形態におけるバランスウエイト6は、扉体2を10度の初期開度でバランスさせる重さに調整されている。ここで初期開度とは、重力以外の外力が加わらない状態でバランスしたときの戸当たり8に対する扉体2の角度である。初期開度を設定することで、外水側の水位が低く、内水側への逆流の生じない通常時において、後述する隙間開閉部材72の下端縁部と水門100の底面300との間に設ける隙間cを大きくして、内水側からの排水が行われるようになっている。なお、初期開度は、特に限定されるものではなく、前記隙間開閉部材72の形状や内水側からの排水量、排水時の水位などに応じて、5度〜20度程度が好ましく、8度〜15度がより好ましく、本第一実施形態では、10度に設定されている。
【0031】
なお、扉体2を支持する重量バランスは、バランスウエイト6を用いずに扉体2の重心位置と支持位置との位置関係によって水門の開口部を開口する重量バランスに調整してもよい。
【0032】
フラップゲート用水密構造体7Aは、水門開口部200の閉鎖時に当該水門開口部200に設置された戸当たり8に密接して水密性を確保するものである。本第一実施形態のフラップゲート用水密構造体7Aは、
図1ないし
図4に示すように、扉体2の内水側面21の外周縁に沿ってフレーム状に形成されたフレーム部71と、前記扉体2の下端縁部23と前記水門100の底面300との間に設けた隙間Cを開閉する隙間開閉部材72と、この隙間開閉部材72を外水側に持ち上げて開状態に操作する開操作補助手段73と、この開操作補助手段73により開状態に保持されている前記隙間開閉部材72を水没時の浮力によって閉状態に操作する閉操作補助手段74とを有する。
【0033】
フレーム部71は、主に、戸当たり8における上部戸当たり81および左右の側部戸当たり82,82に密接して水門開口部200の上端部および左右の側端部との水密を確保するものである。本第一実施形態におけるフレーム部71は、
図4に示すように、扉体2の内水側面21の外周縁に沿った矩形フレーム状に形成されている。上部および左右側部は、上部戸当たり81および左右の側部戸当たり82に密接して水密を確保できるように、断面形状がP字状に形成された、いわゆるP型ゴムによって形成されている。また、フレーム部71の下部は、隙間開閉部材72を固定する固定部711として構成され、扉体2の下端縁に沿って水平状に形成されている。このフレーム部71は、複数のボルト孔712を有しており、ボルトとナットを用いて扉体2の内水側面21に締結固定されている。
【0034】
隙間開閉部材72は、開口部200の閉鎖時に扉体2の下端縁部23と水門100の底面300との間に設けた隙間Cを開閉するものである。本第一実施形態における隙間開閉部材72は、
図3に示すように、フレーム部71の下端縁部から下方に延出するように形成されている。よって、隙間開閉部材72は、フレーム部71を扉体2に固定した場合に前記扉体2の下端縁部23に配置されるようになっている。この隙間開閉部材72は、水圧などの外力を受けると自らの弾性力によりフレーム部71側を基点として流水方向に揺動可能に構成されている。
【0035】
隙間開閉部材72は、主に、天然ゴムや合成ゴムで構成されているところ、これらに炭素材や繊維材等を適宜添加、または混合したゴム素材で構成されることが好ましい。ただし、これらに限定されるものではなく、柔軟性や弾力性を備え、戸当たり8と密接することで水密を確保可能な素材から適宜選択してもよい。また、隙間開閉部材72は弾性変形するものに限定する必要はなく、開操作補助手段73および閉操作補助手段74によって隙間Cの開閉操作ができればよい。
【0036】
なお、隙間開閉部材72は、フレーム部71と同一素材により連続する一体物として形成してもよく、同一素材や別素材にかかわらず別体の部材として形成し、ボルトとナットなどで締結固定したり、接着材により接着固定したりして、両者の組合せにより一体的に構成してもよい。また、隙間開閉部材72は、図示しないが、フレーム部71側の基点にヒンジ(蝶番)等を設けて流水方向に揺動可能に構成してもよい。さらに、隙間開閉部材72は、重力以外の外力が加わらない状態において、外水側に開いた開状態に保持可能な弾性力を備えていてもよい。
【0037】
開操作補助手段73は、隙間開閉部材72を外水側に持ち上げて開状態に操作するものである。本第一実施形態における開操作補助手段73は、上下動可能な昇降ウエイト731と、この昇降ウエイト731の自重による重力方向の張力を持ち上げ方向に変換する方向変換機構を介して前記隙間開閉部材72を外水側に持ち上げて開状態に操作する持ち上げ操作部732とを有する。
【0038】
昇降ウエイト731は、扉体2に対して上下動可能なウエイトであり、本第一実施形態では、
図2に示すように、扉体2の外水面側に左右対称に2つ配置される。本第一実施形態における昇降ウエイト731は、水没時の浮力によって水位上昇にともない上昇する浮揚機能を備えている。具体的には、鋼板によって中空の箱状に形成された外装材と、この外装材の内部に収容され水没時に浮力を発生させやすい発泡スチロール等からなる内装材とから構成されている。また、当該昇降ウエイト731は次に説明する持ち上げ操作部732によって上下動可能に支持されている。
【0039】
なお、昇降ウエイト731の形状は特に限定されるものではなく、昇降可能な形状から適宜選択してもよい。また、昇降ウエイト731の設置数は2つに限定されるものでなく、隙間開閉部材72の開閉操作に必要な重量および浮力が得られる1つ以上の設置数から適宜選択してもよい。
【0040】
持ち上げ操作部732は、昇降ウエイト731の自重による重力方向の張力を持ち上げ方向に変換するものであり、本第一実施形態では、方向変換機構として作用するシーソー部733と、このシーソー部733と隙間開閉部材72とを連結する持ち上げ連結部734とを有する。
【0041】
シーソー部733は、扉体2の外側面に対して垂直に設けられた支持軸735周りに揺動可能なものであり、一端部には昇降ウエイト731が固定されている。前記昇降ウエイト731に浮力が発生していない場合、
図5に示すように、シーソー部733は昇降ウエイト731の自重による重力方向の張力によって当該昇降ウエイト731を固定している側に傾くことで、他端側を持ち上げるようになっている。
【0042】
持ち上げ連結部734は、シーソー部733の支持軸735を挟んで昇降ウエイト731とは逆側の他端部と、隙間開閉部材72の外水側とを連結するものである。つまり、持ち上げ連結部734は、シーソー部733を介することで前記昇降ウエイト731の自重の重力方向の張力を前記隙間開閉部材72に伝達し、当該隙間開閉部材72を持ち上げる。
【0043】
また、本第一実施形態における持ち上げ連結部734は、剛体により構成されることにより、昇降ウエイト731および持ち上げ操作部732は閉操作補助手段74としても機能する。閉操作補助手段74は、開操作補助手段73により開状態に保持されている隙間開閉部材72を、水没時の浮力によって閉状態に操作するものである。つまり、本第一実施形態では、
図6に示すように、昇降ウエイト731が水没する時に発生する浮力によりシーソー部733の昇降ウエイト731側が上昇することにより、持ち上げ連結部734側が下降する。このとき持ち上げ連結部734が可撓性のない剛体により構成されていることで、昇降ウエイト731における浮力が前記隙間開閉部材72を閉方向に揺動させる。そして、前記隙間開閉部材72を戸当たり8に押し付けることにより前記戸当たり8との水密性能を高めるようになっている。
【0044】
また、本第一実施形態における昇降ウエイト731および持ち上げ操作部732には、浮遊物や塵などが付着して重量バランスなどが崩れるのを防止するため、
図1に示すように、扉体2の外水側に保護カバー75が設けられている。
【0045】
なお、昇降ウエイト731および持ち上げ操作部732は、隙間開閉部材72の自重や水圧により戸当たり8との水密性能が確保できる場合には、持ち上げ連結部734は可撓性を有するワイヤーやロープにより構成されていてもよい。
【0046】
戸当たり8は、フラップゲート用水密構造体7Aと密接することにより開口部200の水密状態を確保するためのものであり、前記開口部200に設置される。本第一実施形態における戸当たり8は、
図7に示すように、水門開口部200の上縁部に沿って水平状に形成される上部戸当たり81と、前記水門開口部200の左右縁部に沿って形成される左右の側部戸当たり82と、前記水門100の底面300に沿って形成されているとともに左右の側部戸当たり82から外水側に延設される下部戸当たり83と、左右の側部戸当たり82の下端隅部に傾斜状に設けられる隙間開閉部材受け部84とを有する。
【0047】
上部戸当たり81は、フレーム部71の上部と当接するものであり、水密性を確保するため、外水面側が鉛直面に沿って平坦に形成されている。また、上部戸当たり81の上部には、揺動支持軸4を軸支する軸受けを設置するための軸受け台811が設けられている。
【0048】
側部戸当たり82は、フレーム部71の側部と当接するものであり、上部戸当たり81の左右両端から下方に向けて延設されている。この側部戸当たり82は、上部戸当たり81と同様に、水密性を確保するため外水面側が鉛直面に沿って平坦状に形成されている。
【0049】
下部戸当たり83は、隙間開閉部材72の下端と当接するものであり、側部戸当たり82の下端から外水側に向けて水平状に延設されている。本第一実施形態における下部戸当たり83は、隙間開閉部材72の下端との水密性を確保するため、上面が水平面に沿って平坦状に形成されている。そして、
図3に示すように、前記上面が露出した状態でかつ水門100の底面300と段差ができないように前記水門100の底面300に埋設されている。
【0050】
隙間開閉部材受け部84は、隙間開閉部材72と当接するものであり、具体的には、隙間開閉部材72の左右両端の内水面側と当接するものである。
図7に示すように、左右の側部戸当たり82の下端隅部に傾斜状に設けられている。本第一実施形態における隙間開閉部材受け部84は、側部戸当たり82に対して所定の角度で外水側に傾斜しており、その上面が平坦状に形成されている。
【0051】
次に、本第一実施形態における各構成の作用について説明する。
【0052】
扉体2は、重力以外の外力が加わらない状態において、バランスウエイト6との重量バランスにより水門100の開口部200に対し初期開度に当たる角度で傾斜した状態で支持されている。
【0053】
このとき開操作補助手段73は、
図5および
図8に示すように、隙間開閉部材72を外水側に持ち上げて開状態に操作する。つまり、昇降ウエイト731は自重により重力方向への張力を発生させる。このとき持ち上げ操作部732のシーソー部733は、方向変換機構として作用し前記重力方向への張力を持ち上げ方向へと変換する。この持ち上げ方向へと変換された力は持ち上げ連結部734を介して隙間開閉部材72を外水側に持ち上げる。
【0054】
これにより、隙間開閉部材72は、水門100の底面300(下部戸当たり83)との隙間cを大きく保つことが可能になり、下部戸当たり83と水門100の底面300と間に敷段差を設けなくても排水をスムーズに行うことができる。また、敷段差がないため、内水側から流れる土砂やゴミなどが引っ掛かり、滞留するのを防ぐこともできる。
【0055】
次に、内水側の水位が扉体2の下端よりも高く上昇した場合、
図9に示すように、扉体2は排出される水の水圧によって外水方向に押され、傾斜角度が大きくなる。このときバランスウエイト6は、揺動支持軸4を基点として扉体2とは逆方向に位置しており、扉体2の傾斜角度が大きくなると、揺動支持軸4よりも内水側に位置することになるため扉体2を開口させる方向のトルクを発揮させる。よって、扉体2は、単体で支持されている状態よりも少ない水圧で傾斜角度を大きくすることができ、開口面積が大きくなって排水をスムーズにすることができる。
【0056】
一方、外水側の水位が内水側の水位より上昇した場合、水は水位の低い内水側へ逆流する。扉体2は、逆流する水の水圧によって内水方向に押されて、
図10に示すように、水門開口部200を閉鎖する。このとき、フラップゲート用水密構造体7Aのフレーム部71は、上部戸当たり81および側部戸当たり82に密接する。ただし、この状態ではまだ扉体2の下端縁部23と水門100の底面300との隙間Cであって、隙間開閉部材72の下端と下部戸当たり83との間には隙間cがあり外水側から内水側へ水が流れる。よって、隙間開閉部材72は、当該隙間cを流れる水圧を受ける。
【0057】
また、隙間開閉部材72は、昇降ウエイト731の水没時にはその浮力による持ち上げ方向の力から解放される。よって、隙間開閉部材72は、
図6および
図11に示すように、外水側から受ける水圧によって押されて内水側に揺動する。戸当たり8側に揺動した隙間開閉部材72の下端は、下部戸当たり83に密接する。また、その隙間開閉部材72の左右両端は左右にある隙間開閉部材受け部84に密接する。これにより、扉体2の下端縁部23と水門100の底面300との間の隙間Cが塞がり、外水側から内水側への水の浸入が防止される。
【0058】
また、本第一実施形態における持ち上げ連結部734が、剛体によって構成されているため、昇降ウエイト731および持ち上げ操作部732が閉操作補助手段74として機能する。つまり、この水没時の浮力はシーソー部733の昇降ウエイト731側を持ち上げる。そしてシーソー部733は、昇降ウエイト731側を持ち上げる力を他端側を押し下げる力に変換する。ここで持ち上げ連結部734は、剛体によって構成されているため、押し下げる力が隙間開閉部材72に伝わる。隙間開閉部材72は、この押し下げる力によって戸当たり8と密接する力となり、隙間開閉部材72と戸当たり8との水密性能を高めることができる。
【0059】
以上のような本第一実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
1.隙間開閉部材72が開操作補助手段73により外水側に持ち上げられており、水門100の開口部200を開口している状態において前記隙間開閉部材72と前記水門100の底面300との間の隙間cを大きくとることができるため、内水側から外水側へ流れる排水をスムーズにすることができる。
2.外水側の水位の上昇に伴って水門開口部200が自動的に閉鎖された時には、開操作補助手段73が持ち上げられていた力から解放され、水圧よって隙間開閉部材72が揺動し、下部戸当たり83および隙間開閉部材受け部84に密接するため、内水側への逆流を防止することができる。
3.持ち上げ連結部734が、剛体により構成されているため、昇降ウエイト731および持ち上げ操作部732は閉操作補助手段74として機能し、昇降ウエイト731の水没時の浮力による隙間開閉部材72を戸当たり8側へと押し下げる力によって隙間開閉部材72と戸当たり8との水密性能を高めることができる。
【0060】
次に、本発明の第二実施形態について図面を用いて説明する。なお、前述した第一実施形態で説明した構成と同一または相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0061】
本第二実施形態のフラップゲート用水密構造体7Bは、
図12に示すように、開操作補助手段73として、隙間開閉部材72に設けられた補助アーム736と、この補助アーム736の内水側端部に設置される開状態保持用ウエイト737とを有するとともに、閉操作補助手段74として密接用フロート741を備える。
【0062】
補助アーム736は、内水側端部に開状態保持用ウエイト737を設置することにより隙間開閉部材72を外水側に持ち上げて開状態に操作するためのアームであり、隙間開閉部材72の下面に固定されているとともに当該隙間開閉部材72よりも内水側に延出されている。本第二実施形態における補助アーム736は、
図12および
図13に示すように、断面がL字状に形成されている2本のL字アングル材からなり、左右対称位置に設置されている。
【0063】
開状態保持用ウエイト737は、補助アーム736の内水側端部に設置されており、前記内水側端部を自重より押し下げる力によって隙間開閉部材72を外水側に持ち上げるためのものである。本第二実施形態における開状態保持用ウエイト737は、補助アーム736に架設可能な長さの板状に形成されており、補助アーム736の内水側端部に設置する枚数を調整することで、隙間開閉部材72を外水側に持ち上げる角度を調整できるようになっている。なお、開状態保持用ウエイト737は、その形状や素材等を特に限定されるものではなく、適宜変更・選択してもよい。
【0064】
密接用フロート741は、水没時の浮力によって補助アーム736の内水側端部を引き上げて隙間開閉部材72を内水側に引き寄せて水門開口部200の戸当たり8に密接させるためのものである。密接用フロート741は、水没時に浮力を発生させやすい発泡スチロール等の素材からなり、本第二実施形態では、
図12および
図13に示すように、左右に設けられた補助アーム736に架設可能な長さの板状に形成されている。そして、開状態保持用ウエイト737とともに補助アーム736の内水側端部に設置されている。
【0065】
次に、本第二実施形態における各構成の作用について説明する。
【0066】
隙間開閉部材72は、
図14(a)に示すように、下面に設けられた補助アーム736およびその内水側端部に設けられた開状態保持用ウエイト737や密接用フロート741との重量バランスによって、当該隙間開閉部材72を外水側に持ち上げた状態で保持される。
【0067】
外水側の水位が内水側の水位より上昇した場合、扉体2は、逆流する水の水圧によって内水方向に押されて、
図14(b)に示すように、水門開口部200を閉鎖する。そして、隙間開閉部材72は外水側から内水側へと流れる水圧を受ける。
【0068】
また、内水側の水位が上昇して密接用フロート741が水没すると、密接用フロート741に浮力が生じる。この密接用フロート741の浮力は、補助アーム736の内水側端部を上方に引き上げる。
【0069】
補助アーム736では、内水側端部が引き上げられることにより、隙間開閉部材72の外水側端部を下方に押し下げる。つまり、隙間開閉部材72を閉状態に揺動する力が発揮される。
【0070】
隙間開閉部材72は、水圧および密接用フロート741の浮力によって内水側に押されて揺動し、下部戸当たり83および隙間開閉部材受け部84と密接し、扉体2の下端縁部23と水門100の底面300との隙間Cを閉鎖する。このとき密接用フロート741は、浮力によって隙間開閉部材72を内水側に引き寄せるため、隙間開閉部材72と下部戸当たり83および隙間開閉部材受け部84との密接度は高まる。扉体2の閉鎖時には、内水面側の水位が上昇にともない、外水側との水圧差が小さくなって隙間開閉部材72を内水側に押す水圧が弱まるが、当該密接用フロート741の浮力によって弱まる密接度を補うことができる。
【0071】
以上のような本第二実施形態によれば、補助アーム736の内水側端部に設けられた開状態保持用ウエイト737と隙間開閉部材72との重量バランスによって、前記隙間開閉部材72を外水側に持ち上げることができる。また、密接用フロート741の浮力によって隙間開閉部材72を下部戸当たり83や隙間開閉部材受け部84に密接させる力を高めることができる。
【0072】
次に、本発明の第三実施形態について図面を用いて説明する。なお、前述した第一実施形態および第二実施形態で説明した構成と同一または相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0073】
本第三実施形態のフラップゲート用水密構造体7Cは、第二実施形態とは閉操作補助手段74における密接用フロート741の構成が異なるものである。本第三実施形態における密接用フロート741は、
図15および
図16に示すように、扉体2の内水側面において上下動可能に設けられている。
【0074】
具体的に密接用フロート741は、矩形板状に形成されている。この矩形状の密接用フロート741には、
図16に示すように、左右対称位置に一対の摺動用棒材742が下方に延設されている。一方、扉体2の内水面には、前記摺動用棒材742を挿通可能な大きさの孔を有する摺動支持部材743が固定されており、前記摺動用棒材742は前記摺動支持部材743によって上下方向に摺動可能に支持されている。
【0075】
また、密接用フロート741の内水面側には、当該内水面側を支持する内水面側支持板744が設置されている。この内水面側支持板744と扉体2の内水側面との間に形成される空間は浸水可能に構成されており、扉体2の内水面側の水位の上昇とともに、前記空間内の水位も上昇するようになっている。つまり、前記空間内の密接用フロート741は、扉体2の内水面側の水位の上昇にともなう浮力により上昇することができるように構成されている。この密接用フロート741は、扉体2の内水側面の任意の高さに設置することができ、浮力を発揮させる水位を自由に選択することができるという利点を有する。
【0076】
また、本第三実施形態における密接用フロート741は、連結部材745によって補助アーム736の内水側端部に連結されている。具体的には、前記連結部材745は、ロープやワイヤーなどからなり、一端に補助アーム736の内水側端部が連結されているとともに、他端に密接用フロート741の前記摺動用棒材742の下端部が連結されている。そして、前記密接用フロート741に浮力が生じていない状態においては、補助アーム736の内水側端部に対して張力がかからないように連結されている。一方、水没時の浮力により密接用フロート741が上昇すると、連結部材745に張力が生じ、
図17に示すように、補助アーム736の内水側端部を引き上げるようになっている。
【0077】
そして、本第三実施形態における閉操作補助手段74には、密接用フロート741や連結部材745、補助アーム736等に内水側から流れてきた塵などが引っ掛かり補助アーム736の内水側端部を引き上げの妨げとならないように、扉体2の内水面側全体を覆う保護カバー75が設けられている。
【0078】
以上のような本第三実施形態によれば、第二実施形態と同様に、密接用フロート741の浮力によって補助アーム736の内水側端部を引き上げ、隙間開閉部材72を下部戸当たり83や隙間開閉部材受け部84に密接させる力を高めることができる。
【0079】
次に、本発明の第四実施形態について図面を用いて説明する。なお、前述した第一実施形態ないし第三実施形態で説明した構成と同一または相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0080】
本第四実施形態における昇降ウエイト731は、
図18および
図19に示すように、扉体2の外水側面において上下動可能に設けられている。また、第一実施形態の昇降ウエイト731と同様に、水没時の浮力によって水位上昇にともない上昇する浮揚機能を備える。
【0081】
また、本第四実施形態における持ち上げ操作部732は、昇降ウエイト731の自重による重力方向の張力を持ち上げ方向に変換する滑車738と、前記昇降ウエイト731と隙間開閉部材72とを連結する持ち上げ連結部734とを有する。本第四実施形態における持ち上げ連結部734は、可撓性を有するワイヤーやロープにより構成されている。
【0082】
以上のような本第四実施形態によれば、昇降ウエイト731に浮力が発生していない場合には、昇降ウエイト731の自重による重力方向の張力は、滑車738によって隙間開閉部材72を持ち上げる力となり、前記隙間開閉部材72を外水側に持ち上げて開状態に操作することができる。よって、内水側から外水側へ流れる排水をスムーズにすることができる。
【0083】
一方、昇降ウエイト731が水没して浮力が発生した場合には、隙間開閉部材72は外水側に持ち上げられる力から解放され、外水側から内水側への水圧によって隙間開閉部材72が戸当たり8側に揺動する。これにより隙間開閉部材72が、扉体2の下端縁部23と水門100の底面300との間の隙間Cを閉鎖することで、内水側への逆流を防止することができる。
【0084】
次に、本発明の第五実施形態について図面を用いて説明する。なお、前述した第一実施形態ないし第四実施形態で説明した構成と同一または相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0085】
本第五実施形態における戸当たり8は、
図20および
図21に示すように、下部戸当たり83から下流側に延出形成された揺動部損傷防止部85を有する。この揺動部損傷防止部85は、鉄砲水等の流水が内水側および外水側から押し寄せた場合に、扉体2の閉鎖よりも先に揺動した隙間開閉部材72を当接させるものである。一般的に水門の底面はコンクリート等を打設しただけの粗い面で構成されており、隙間開閉部材72の先端が直接当接して損傷してしまうと水密を確保するのが困難になる。このため揺動部損傷防止部85を設けることで鉄砲水等の流水が押し寄せた場合に、隙間開閉部材72の損傷を防止するようになっている。
【0086】
本第五実施形態における揺動部損傷防止部85は、
図21に示すように、その上面が下部戸当たりの上面とほぼ同一面となるように、前記下部戸当たりの上面に沿って外水側に連続的に延出形成されている。また、揺動部損傷防止部85の上面は、前記下部戸当たりの上面と同様に平滑に形成されている。
【0087】
以上のような本第五実施形態によれば、隙間開閉部材72が扉体2の閉鎖よりも前に揺動しても、その先端は揺動部損傷防止部85に接触し、損傷を防止することができる。
【0088】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、フラップゲート1には、扉体2を強制的に揺動させる油圧シリンダーなどの駆動装置を設けてもよい。
【0089】
また、前述した隙間開閉部材受け部84は、傾斜平面状に形成されており、特に隙間開閉部材72と密接する面は平坦面に形成されているが、これに限定されるものではなく、隙間開閉部材72との密接性を確保できる限り、例えば、凹状湾曲面(
図22(a))、凸状湾曲面(
図22(b))、段状面(
図22(c))等に任意に形成されていてもよい。また、図示しないが隙間開閉部材72の密接面も隙間開閉部材受け部84の形状に応じた形状に形成してもよい。
【0090】
さらに、下部戸当たり83と接する隙間開閉部材72の先端(下端)の形状は、閉鎖時に水門100の底面300(下部戸当たり83)と接する面積が広くなるように、平面状(
図23(a))、円弧状(
図23(b))または膨出させた円弧状(
図23(c))に形成したり、弾力性を高めて接する面積が更に広くなるように先端の内部を中空状(
図23(d))に形成してもよい。
【0091】
また、第二実施形態および第三実施形態の閉操作補助手段74は、いずれか一方を有する構成に限定されるものではなく、両方を有していてもよい。即ち、図示しないが、補助アーム736の内水側端部に直づけされた密接用フロート741と、扉体2の内水面側に上下動可能に設けられた密接用フロート741とを両方有していてもよい。
【課題】 重力以外の外力が加わらない状態において、敷段差を設けなくても扉体と水門開口部の底面との間の隙間を大きく取ることができるとともに、閉鎖時には水門開口部との水密性を確保することのできる、フラップゲート用水密構造体およびこれを備えたフラップゲートを提供する。
【解決手段】 重力以外の外力が加わらない状態で水門100の開口部200を開口する重量バランスで支持されている扉体2を備えたフラップゲート1における水密構造体であって、扉体2が水門100を閉鎖している状態において扉体2の下端縁部23と水門100の底面300との間に隙間Cを設け、流水方向に揺動して隙間Cを開閉する隙間開閉部材72と、この隙間開閉部材72を外水側に持ち上げて開状態に操作する開操作補助手段73とを有する。