特許第6775274号(P6775274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775274
(24)【登録日】2020年10月8日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/231 20110101AFI20201019BHJP
   B60R 21/21 20110101ALI20201019BHJP
【FI】
   B60R21/231
   B60R21/21
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-34794(P2016-34794)
(22)【出願日】2016年2月25日
(65)【公開番号】特開2017-149331(P2017-149331A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2019年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智知
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0258954(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0137492(US,A1)
【文献】 特開2016−175513(JP,A)
【文献】 特開平03−279051(JP,A)
【文献】 特開平10−324221(JP,A)
【文献】 特開2009−018639(JP,A)
【文献】 特開平11−170961(JP,A)
【文献】 実開平05−058512(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 − 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に並ぶ二つのシートを対面した状態にできる車両構造であって、
対面した状態にある前記二つのシートの間を横切るように展開する横断エアバッグを備え、
前記横断エアバッグは、前記車両の左右から中央に向って展開する二つの分割エアバッグを含み、
前記二つの分割エアバッグは、
展開完了時に互いに突き合わされる端面を有し、前記端面は前記車両の前後方向に対して斜めになっている、
又は
展開完了時に互いに引っ掛かるように構成される端部を有する、
車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前後方向に並ぶ二つのシートを対面した状態にできる車両構造であって、当該シートの乗員の傷害値を低減できる車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の中には、車両の前後方向に並ぶ二つのシートを対面した状態にできる車両がある。例えば、特許文献1には、フロントシートの後方に、車両の前後方向に並ぶ前側リヤシートと後側リヤシートを備える車両構造であって、前側リヤシートを車両の後方に回転させることで、前側リヤシートと後側リヤシートとを対面させることができる車両構造が開示されている。また、リムジンや一部のタクシーなどのように前側リヤシートと後側リヤシートとが対面した状態で固定された車両構造を備える車両もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−298306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対面した状態にある二つのシートに座る乗員の傷害値を低減する構成は、各シートに備わるシートベルトである。しかし、前面衝突事故や追突事故が発生したとき、前側にあるシートの乗員は仰け反り、後側にあるシートの乗員は前のめりになる。その際、前側にあるシートの乗員の膝が後側にあるシートの乗員の顔面に当たる可能性がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、車両の前後方向に対面した状態にある二つのシートに座る乗員の傷害値を低減できる車両構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両構造は、車両の前後方向に並ぶ二つのシートを対面した状態にできる車両構造であって、対面した状態にある前記二つのシートの間を横切るように展開する横断エアバッグを備える。
【発明の効果】
【0007】
車両の前後方向に対面した状態にある二つのシートの間を横切るように展開する横断エアバッグを設けることで、衝突事故時に両シートに座る乗員の間に横断エアバッグが割り込み、乗員の傷害値を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車室の側方から展開する横断エアバッグを備える車両構造の概略構成図である。
図2】前面衝突事故が発生したときの乗員の動きを説明する説明図である。
図3】突き合わせ式の横断エアバッグの第一形態を示す概略図である。
図4】突き合わせ式の横断エアバッグの第二形態を示す概略図である。
図5】突き合わせ式の横断エアバッグの第三形態を示す概略図である。
図6】車室の床面から展開する横断エアバッグを備える車両構造の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、横断エアバッグを備える本発明の車両構造を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0010】
<実施形態1>
図1は、車両構造1の車室の概略図であって、紙面左側が車両前方FS、紙面右側が車両後方BSである。この車両構造1は、フロントシートの後側に、車両の前後方向に並ぶ前側リヤシート2と後側リヤシート3とを備え、両リヤシート2,3は対面した状態になっている。両リヤシート2,3は、対面した状態で固定されていても良いし、必要に応じて対面させることができるように構成されていても良い。この車両構造1の特徴の一つとして、対面する前側リヤシート2と後側リヤシート3との間を横切るように展開する横断エアバッグ4を備える点を挙げることができる。
【0011】
≪横断エアバッグ≫
図1では、横断エアバッグ4が展開された状態が示されている。本例の横断エアバッグ4は、車両の幅方向の右側にあるドアトリム5Rから矢印の方向(図示しない左側のドアトリムの方向)に向って展開するように構成されている。もちろん、図示しない左側のドアトリムから右側のドアトリム5Rに向って横断エアバッグ4が展開されるようにすることもできる。この横断エアバッグ4は、運転席用エアバッグなどの他のエアバッグと同様に、常時はドアトリム5Rに収納された状態になっており、衝突事故時に展開する。横断エアバッグ4の展開のタイミングを含む作動制御は、他のエアバッグの作動制御と同様に行なえば良い。
【0012】
本例の横断エアバッグ4は、図示するように、右側のドアトリム5Rから展開され、ドアトリム5Rに片持ち状に支持されている。横断エアバッグ4の長さは、車室の幅とほぼ同じとすることが好ましい。また、横断エアバッグ4の横断面形状や太さは適宜選択することができる。
【0013】
横断エアバッグ4の展開位置、即ち車室内で横断エアバッグ4が展開する高さは、図2に示すように、リヤシート2,3に座った乗員2h,3hの膝付近とすることが好ましい。図2は、前面衝突事故の発生前期の乗員2h,3hの動きを示している。前面衝突事故が発生したとき、前側リヤシート2の乗員2hは慣性力で車両前方FSに移動し、乗員2hの背中が前側リヤシート2に押し付けられ、乗員2hの下半身は前側リヤシート2からずり落ちる。一方、後側リヤシート3の乗員3hも慣性力で車両前方FSに移動し、乗員3hの上半身が後側リヤシート3から起き上がる。このとき、乗員2h,3hの膝付近に横断エアバッグ4が展開していると、横断エアバッグ4が乗員2h,3hの膝の移動を抑制することで乗員2h,3hの姿勢の変化を抑制し、姿勢変化に伴って乗員2h,3hにかかる負荷を軽減する。また、乗員2hの膝が横断エアバッグ4に当たることで、乗員2hの膝が乗員3hの頭部に当たるなどの乗員2h,3h同士の接触を抑制できる。
【0014】
前面衝突事故の発生後期には、図2とは逆に、乗員2hの上半身が前側リヤシート2から起き上がり、乗員3hの上半身が後側リヤシート3に押し付けられる。このときにも、横断エアバッグ4は、乗員2h,3hの膝の移動を抑制して乗員2h,3hの負担を軽減すると共に、乗員2h,3h同士の接触を抑制する。
【0015】
<実施形態2>
実施形態1の横断エアバッグ4は、一つのエアバッグが一方のドアトリムに片持ち状に支持されている。これに対して、右側のドアトリムと左側のドアトリムからそれぞれ、分割エアバッグが展開し、車室の中央で二つの分割エアバッグが突き合わされた状態となることで横断エアバッグが形成されるようにしても構わない。
【0016】
図3は、車両前方から車両後方に向って横断エアバッグ4を見たときの突き合わせ式の横断エアバッグ4の概略図である。本例の横断エアバッグ4は、車両の右側(紙面上は左側)のドアトリム5Rから展開される分割エアバッグ4Rと、車両の左側(紙面上は右側)のドアトリム5Lから展開される分割エアバッグ4Lと、で構成されている。両分割エアバッグ4R,4Lは車室の車幅方向の中央で突き合わされることで、車室を横断する横断エアバッグ4となる。この両分割エアバッグ4R,4Lの突き合わせ面は斜めになっており、両分割エアバッグ4R,4Lの突き合わせ状態が解除され難くなっている。突き合わせ面には、ゴム材などを配置しておくことが好ましく、そうすることで突き合わせ状態が解除され難くなる。
【0017】
図4は、図3に示す横断エアバッグ4の下部に窪み40を形成した横断エアバッグ4である。窪み40は、衝突事故時に乗員の膝が配置される部分であって、乗員の膝の位置を安定させる機能を持つ。膝の位置を安定させることができれば、乗員の姿勢変化を抑制し易く、乗員にかかる負荷を低減できる。なお、窪み40は、実施形態1の片持ち状の横断エアバッグ4(図1,2)に適用することもできるし、後述する図5の構成や実施形態3の構成にも適用することができる。
【0018】
図5は、分割エアバッグ4R,4Lの突き合わせ部分が膨張時に引っ掛かって、結合した状態が維持される横断エアバッグ4である。当該突き合わせ部分が引っ掛かりとなり、分割エアバッグ4R,4Lの突き合わせ状態がより解除され難くなる。ここで、分割エアバッグ4R,4Lは、膨らみながら係合されるので、突き合わせ部分が上記引っ掛かる形状となっていても、問題なく両分割エアバッグ4R,4Lが係合される。
【0019】
<実施形態3>
実施形態1,2ではドアトリムから横断エアバッグ4が展開する構成を説明した。しかし、横断エアバッグ4の展開の起点となる位置、即ち通常時に横断エアバッグ4が収納される位置は、ドアトリムに限定されるわけではない。例えば、ピラーから横断エアバッグ4が展開されるようにしても良い。また、車室の天井や床面から横断エアバッグ4が展開する構成とすることもできる。本例では、車室の床面から横断エアバッグ4が展開する例を図6に基づいて説明する。
【0020】
図6に示す車両構造1では、床面から天井に向って横断エアバッグ4が膨らむ構成となっている。この場合も、横断エアバッグ4が前側リヤシート2と後側リヤシート3との間を横切るように展開するので、乗員の傷害値を低減できる。横断エアバッグ4は、ほぼ車幅方向の全長に及ぶ長さを有する一つのエアバッグとすると良い。床面は比較的、横断エアバッグ4の収納スペースを確保し易く、容易に設置できる点で好ましい。
【0021】
<実施形態4>
近年、自動運転の開発が盛んである。自動運転では、運転席とリヤシートとを対面させたり、助手席とリヤシートとを対面させたりすることが考えられる。その場合の乗員の安全性の向上に、実施形態1〜3の構成を適用することもできる。例えば、運転席と助手席を車両後方に向け、リヤシートと対面させる場合、衝突事故時にセンターピラー(Bピラー)や床面、天井などから横断エアバッグが展開され、運転席(助手席)とリヤシートとの間に割り込むように構成する。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の車両構造は、車両の衝突安全性を向上させることに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0023】
1 車両構造 FS 車両前方 BS 車両後方
2 前側リヤシート 2h 乗員
3 後側リヤシート 3h 乗員
4 横断エアバッグ 4R,4L 分割エアバッグ 40 窪み
5R,5L ドアトリム
図1
図2
図3
図4
図5
図6