特許第6775279号(P6775279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775279
(24)【登録日】2020年10月8日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】洗剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/37 20060101AFI20201019BHJP
   C08F 20/04 20060101ALI20201019BHJP
   C08F 22/00 20060101ALI20201019BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20201019BHJP
   C11D 1/00 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   C11D3/37
   C08F20/04
   C08F22/00
   C09K3/00 103G
   C11D1/00
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-59938(P2015-59938)
(22)【出願日】2015年3月23日
(65)【公開番号】特開2016-180029(P2016-180029A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年12月5日
【審判番号】不服2019-10265(P2019-10265/J1)
【審判請求日】2019年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道尭 大祐
(72)【発明者】
【氏名】坂田 一樹
【合議体】
【審判長】 蔵野 雅昭
【審判官】 瀬下 浩一
【審判官】 天野 斉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−327199(JP,A)
【文献】 特開2007−51179(JP,A)
【文献】 特開2006−241099(JP,A)
【文献】 特開2002−80502(JP,A)
【文献】 特開2012−201854(JP,A)
【文献】 特表2014−502602(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/029484(WO,A1)
【文献】 特表2013−525500(JP,A)
【文献】 特表2002−520263(JP,A)
【文献】 特開2014−205786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸系水溶性重合体を含む粘度調整剤であって、
該粘度調整剤は、界面活性剤を含む洗剤組成物において、カルボン酸系水溶性重合体が界面活性剤100質量%に対して1〜15質量%の割合で用いられるものであり、
該カルボン酸系水溶性重合体は、ポリアクリル酸(塩)、及び/又は、アクリル酸(塩)及びマレイン酸(塩)のコポリマーであり、重量平均分子量が、500〜5500であり、
該界面活性剤は、アニオン性界面活性剤を含み、更にノニオン性界面活性剤を含んでいてもよく、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量が界面活性剤の全量に対して60質量%以上であることを特徴とする粘度調整剤。
【請求項2】
前記カルボン酸系水溶性重合体は、前記洗剤組成物において、カルボン酸系水溶性重合体の有無による下記式(1)で表される粘度の変化率を、330〜1000%とするものであることを特徴とする請求項1に記載の粘度調整剤。
粘度変化率(%)=(A−B)/B×100 (1)
(式中、Aは、界面活性剤を含み、かつ、カルボン酸系水溶性重合体を組成物100質量%に対して1.5質量%含む組成物の粘度を表す。Bは、界面活性剤を含み、カルボン酸系水溶性重合体を含まない組成物の粘度を表す。)
【請求項3】
前記洗剤組成物は、以下の条件の下で測定したときの粘度が、260〜1000mPa・sであることを特徴とする請求項1に記載の粘度調整剤。
[粘度測定条件]
組成物100質量%に対して界面活性剤を14.4質量%及びカルボン酸系水溶性重合体を1.5質量%含み、pHが11である組成物の粘度を測定する。
【請求項4】
前記洗剤組成物は、界面活性剤の含有割合が洗剤組成物100質量%に対して5〜80質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘度調整剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗剤組成物に関する。より詳しくは、粉末洗剤又は液体洗剤等に有用な洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤を主成分とする洗剤は、衣服用、食器用等の様々な種類のものが開発されており、衣服用の洗剤には、粉末状のものの他、近年は液体洗剤も広く用いられるようになってきている。
粉末洗剤を製造する際には、界面活性剤を含む水溶液をスプレードライすることにより粉末化する。この時、良好な嵩密度の粉末を得るためには、界面活性剤水溶液の粘度調整が極めて重要である。また、液体洗剤においても、界面活性剤の粘度調整品は、界面活性剤が流失することなく標的の汚れに直接適用することができるため、粘度を調製することの利点がある。
【0003】
上記粘度調整のための増粘剤として種々のものが検討され、例えば、ペクチン、グアーガム(グァーガム)、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン等の天然物系増粘剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の天然物の変性品及びプロピレングリコール等の化学合成品がよく知られている。
粘度調整剤(増粘剤)を含む洗剤としては、例えば、界面活性剤と、他の洗剤/洗浄剤成分とを含んでなる高粘度水性液体洗剤であって、増粘系として、(a)洗剤全量の0.1〜5重量%のポリマー増粘剤、(b)洗剤全量の0.5〜7重量%のホウ素化合物、および(c)洗剤全量の1〜8重量%の錯生成剤を含むことを特徴とする洗剤が開示されている(特許文献1参照。)。
また、洗浄粉末の製造方法として、約5〜50%のアニオン活性剤と、約1〜50%の非イオン活性剤と、ゼオライト、炭酸ナトリウム及びこれらの混合物からなる群の中から選択される約5〜70%のビルダーとからなる洗浄粉末の噴霧乾燥による製造方法であって、水と、非イオン活性剤と、i)酸形態のアニオン界面活性剤(混合物は更に、前記酸形態を中和してその場でアニオン界面活性剤を生成する中和剤を含んでいる)、及び/又はii)アニオン界面活性剤として含まれているアニオン活性剤と、場合によって粘度調整剤とを含むアニオン−非イオン活性剤混合物を撹拌しながら製造し、該アニオン−非イオン活性剤混合物にビルダー及び場合によって他の洗剤添加物を添加して、含水率が約35重量%を超えず、剪断速度17〜18sec-1、温度135〜195゜Fで測定する粘度が約1000〜20,000cpsの最終スラリー混合物を生成し、該最終混合物を噴霧乾燥することからなる方法が開示されている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001−524584号公報
【特許文献2】特表平8−501118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように粘度調整剤を用いた洗剤や、洗浄粉末の製造方法が開示されているが、増粘剤として特許文献1に記載のキサンタン等は天然の多糖類であるため、長期保存安定性に問題があり、長期保存時に、腐敗やカビの増殖を促進する恐れがあり、さらに、製造ロットにより分子量の振れ幅が大きく、精密な粘度調整が困難であった。また、従来の増粘剤の問題点としては、凝集物の形成が挙げられる。凝集物が生成すると、洗剤成分の偏在化が起こり、均一な洗剤組成物を得ることができず、界面活性剤水溶液が不透明になる(濁りを生じる)という不具合があり、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、長期保存安定性に優れた増粘剤を含み、組成物に含まれる成分が均一である洗剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、洗剤組成物について種々検討したところ、増粘剤(以下、粘度調整剤ともいう)として重量平均分子量が特定の範囲のポリカルボン酸を配合することで界面活性剤水溶液の粘度調整が可能になることを見いだし、また、ポリカルボン酸は長期保存安定性に優れ、かつ、再現性良く増粘効果を発現することができることを見いだした。また、本発明者は、上記界面活性剤水溶液に凝集物は生じず、均一で透明な洗剤組成物とすることができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、界面活性剤を含む洗剤組成物であって、上記組成物は、更にカルボン酸系水溶性重合体を含み、上記カルボン酸系水溶性重合体は、重量平均分子量が、500〜9000である洗剤組成物である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0009】
本発明の洗剤組成物は、界面活性剤とカルボン酸系水溶性重合体とを少なくとも1つずつ含むものである。
上記カルボン酸系水溶性重合体の界面活性剤に対する含有割合は、界面活性剤100質量%に対して1〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜30質量%、更に好ましくは5〜15質量%である。
上記カルボン酸系水溶性重合体の含有割合が上記好ましい範囲であれば、本発明の洗剤組成物の粘度及び後述する粘度変化率をより好適な範囲とすることができる。
【0010】
本発明の洗剤組成物は、以下の条件の下で測定したときの粘度が、260〜1000mPa・sであることが好ましい。
[粘度測定条件]
組成物100質量%に対して界面活性剤を14.4質量%及びカルボン酸系水溶性重合体を1.5質量%含み、pHが11である組成物の粘度を測定する。なお、測定に用いる組成物のpHは、小数第一位を四捨五入して、pH11となればよい。
上記洗剤組成物の粘度が上記範囲であれば、より良好な嵩密度の粉末洗剤又はより充分な粘性を有する液体洗剤を製造することができる。
上記洗剤組成物の粘度として好ましくは260〜1000mPa・sであり、より好ましくは270〜700mPa・sであり、更に好ましくは290〜500mPa・sである。
上記粘度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0011】
上記洗剤組成物のpHは、特に制限されないが、5〜12であることが好ましく、より好ましくは6〜11であり、更に好ましくは7〜11である。
上記pHは、pH計で測定することができる。
【0012】
<カルボン酸系水溶性重合体>
上記カルボン酸系水溶性重合体は、カルボキシル基及び/又はカルボン酸エステル基を有している限り、特に制限されない。
上記カルボン酸系水溶性重合体は、カルボキシル基及び/又はカルボン酸エステル基を有するため、カルボン酸系水溶性重合体が有するカルボキシル基及び/又はカルボン酸エステル基と界面活性剤とが相互作用することにより増粘効果を発揮する。
上記カルボン酸系水溶性重合体は、pHが低くても安定であるため、長期保存安定性に優れ、かつ、増粘剤としての他の合成ポリマーよりも安価であり、経済的にも優れる。また、カルボン酸系水溶性重合体が、カルボキシル基を有する場合には、増粘剤としての効果に加えて、カルボキシル基が汚れ等の粒子に吸着し、分散剤としての効果を発揮することもできる。
【0013】
上記カルボン酸系水溶性重合体は、エチレン性不飽和基とカルボキシル基及び/又はカルボン酸エステル基とを有する単量体(以下、カルボン酸系単量体ともいう)由来の構造単位を有する。
上記エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを有する単量体(以下、カルボキシル基含有単量体ともいう)は、エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを少なくとも1つずつ有するものであれば、制限されず、更にカルボン酸エステル基を有するものもカルボキシル基含有単量体に含まれるものとする。
また、エチレン性不飽和基とカルボン酸エステル基とを有する単量体(以下、カルボン酸エステル基含有単量体ともいう)は、エチレン性不飽和基とカルボン酸エステル基とを少なくとも1つずつ有し、カルボキシル基を有しないものを意味する。
【0014】
上記カルボキシル基含有単量体としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、2−メチレングルタル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の炭素数3〜6の不飽和カルボン酸又はこれらの塩;無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の炭素数4〜6の不飽和カルボン酸無水物等が挙げられる。また、カルボキシル基含有単量体がマレイン酸等のジカルボン酸である場合、後述するアルコールとのハーフエステルであってもよい。
【0015】
上記塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等であることが好ましい。金属塩を形成する金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子が好適であり、また、有機アミン塩としては、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩や、トリエチルアミン塩が好適である。
上記塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、より好ましくは、ナトリウム塩である。
【0016】
上記カルボン酸エステル基含有単量体としては、特に制限されないが、上述のカルボキシル基含有単量体と炭素数1〜30のアルコールとのエステルであることが好ましい。
上記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の脂肪族アルコール類;シクロヘキサノール等の脂環族アルコール類;(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
【0017】
上記カルボン酸系単量体としては、上記化合物の1種又は2種以上を使用することができる。
上記カルボン酸系単量体として、カルボキシル基含有単量体及びカルボン酸エステル基含有単量体の中でも、カルボキシル基含有単量体が好ましい。
また、カルボキシル基含有単量体として好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)、2−メチレングルタル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)である。
【0018】
上記カルボン酸系水溶性重合体の原料となる単量体成分としては、全単量体成分100質量%に対して、カルボン酸系単量体を20質量%以上含有するものであることが好ましい。より好ましくは、50質量%以上であり、更に好ましくは、70質量%以上であり、最も好ましくは、100質量%である。
なお、カルボン酸系単量体が塩型である場合、その質量は、対応する酸型の単量体として質量を計算するものとする。例えば(メタ)アクリル酸ナトリウム由来の構造であれば、(メタ)アクリル酸由来の構造として質量割合を計算する。その他の単量体も同様に単量体が塩型である場合には、酸型の単量体として質量を計算する。
【0019】
上記カルボン酸系水溶性重合体の原料となる単量体成分としては、カルボン酸系単量体の中でもカルボキシル基含有単量体を含むことが好ましく、カルボン酸系単量体の全質量に対するカルボキシル基含有単量体の含有量は、50〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは70〜100質量%であり、更に好ましくは90〜100質量%である。
カルボキシル基含有単量体の含有割合が上記好ましい範囲であれば、カルボン酸系水溶性重合体は、酸密度の高いアニオン性ポリマーとなるため、多価金属による強力なイオン架橋が可能であることから、より優れた増粘効果を発揮することができる。
【0020】
上記カルボン酸系単量体の全質量に対するカルボン酸エステル基含有単量体の含有量は、0〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは0〜30質量%であり、更に好ましくは0〜10質量%である。
【0021】
上記カルボン酸系水溶性重合体は、重合体が水溶性となる限り、カルボン酸系単量体以外のその他の単量体由来の構造単位を有していてもよい。その他の単量体としては、カルボン酸系単量体と共重合することができる限り、特に制限されないが、例えば、アリルエーテル系単量体、スルホン酸基を有する単量体、アミノ基を有する単量体、アリル基、ビニル基又はイソプレニル基及びポリアルキレングリコールを有する単量体、アリル基又はイソプレニル基及び疎水基を有する単量体、アリル基又はイソプレニル基、並びに、ポリアルキレングリコール及び疎水基盤(疎水基)を有する単量体が挙げられる。
【0022】
上記アリルエーテル系単量体としては、例えば、3−(メタ)アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン等が挙げられる。
上記スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等が挙げられる。
上記アミノ基を有する単量体としては、例えば、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環式芳香族炭化水素基とアミノ基とを有するビニル芳香族系アミノ基含有単量体及びこれらの4級化物;ジアリルアミン、ジアリルジメチルアミン等のアリルアミン類及びこれらの4級化物;(i)(メタ)アリルグリシジルエーテル、イソプレニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルのエポキシ環に、(ii)ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−ブチルアミン等のジアルキルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン、モルホリン、ピロール等の環状アミン類等のアミンを反応させることにより得られる単量体及びこれらの4級化物等が挙げられる。
【0023】
上記アリル基、ビニル基又はイソプレニル基及びポリアルキレングリコールを有する単量体としては、例えば、3−(メタ)アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンにエチレンオキサイドを6〜200モル付加させた化合物(3−アリルオキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン等)、ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコールにエチレンオキサイドを1〜300モル付加させた化合物等が挙げられる。
上記アリル基及び疎水基を有する単量体としては、例えば、1−(メタ)アリロキシ−3−ブトキシプロパン−2−オール等が挙げられる。
上記アリル基又はイソプレニル基、並びに、ポリアルキレングリコール及び疎水基盤(疎水基)を有する単量体としては、例えば、アリルグリシジルエーテルに炭素数4〜18のアルキルアルコールへのエチレンオキサイド6〜200モル付加体を付加させた化合物、イソプレノールにエチレンオキサイドを1〜300モル付加させた化合物の末端に炭素数4〜18のアルキルグリシジルエーテルを付加させた化合物等が挙げられる。
その他の単量体がアミノ基を有する単量体の4級化物である場合、4級化剤としては、ハロゲン化アルキル、ジアルキル硫酸等が挙げられる。
その他の単量体がスルホン酸塩等の塩である場合、塩としては、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。
上記その他の単量体としては、上記化合物の1種又は2種以上を使用することができる。
【0024】
上記単量体成分におけるその他の単量体の含有量は、全単量体成分100質量%に対して、0〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは、0〜30質量%であり、更に好ましくは、0〜20質量%であり、特に好ましくは、0〜10質量%であり、最も好ましくは、0質量%である。
【0025】
本発明のカルボン酸系水溶性重合体におけるカルボキシル基は、酸型であっても、塩型であってもよいが、当該カルボン酸系水溶性重合体の全カルボキシル基100モル%に対して、10〜98モル%のカルボキシル基が、塩型であることが好ましい。塩型のカルボキシル基の割合としてより好ましくは40〜97モル%、更に好ましくは70〜96モル%である。後述する製造方法において、重合反応中に中和工程を行うことにより、又は、カルボキシル基の一部が塩型であるカルボン酸系単量体を原料として用いることにより、塩型のカルボキシル基の割合を上記好ましい範囲とする場合には、未反応の単量体をより低減することができ、更に、分子量調整のための連鎖移動剤の効率をより向上させることができる。
【0026】
上記カルボン酸系水溶性重合体の重量平均分子量は、500〜9000である。好ましくは600〜8000であり、より好ましくは700〜7500であり、更に好ましくは800〜7000であり、特に好ましくは900〜6500であり、最も好ましくは1000〜6000である。上記カルボン酸系水溶性重合体の重量平均分子量が上記好ましい範囲であれば、本発明の洗剤組成物の粘度及び後述する粘度変化率をより好適な範囲とすることができる。
上記重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0027】
上記カルボン酸系水溶性重合体は、上記洗剤組成物において、カルボン酸系水溶性重合体の有無による下記式(1)で表される粘度の変化率を、330〜1000%とするものであることが好ましい。
粘度変化率(%)=(A−B)/B×100 (1)
(式中、Aは、界面活性剤を含み、かつ、カルボン酸系水溶性重合体を組成物100質量%に対して1.5質量%含む組成物の粘度を表す。Bは、界面活性剤を含み、カルボン酸系水溶性重合体を含まない組成物の粘度を表す。)
【0028】
上記式(1)の粘度変化率は、洗剤組成物におけるカルボン酸系水溶性重合体の有無による粘度変化率であるため、界面活性剤の含有量は、A及びBにおける含有量が同じであれば、特に制限されないが、組成物100質量%に対して5〜80質量%であることが好ましい。より好ましくは7〜70質量%であり、更に好ましくは10〜60質量%である。
【0029】
上記式(1)の粘度変化率は、例えば、Aとして組成物100質量%に対して界面活性剤を14.4質量%、及び、カルボン酸系水溶性重合体を1.5質量%含む組成物の粘度の値、並びに、Bとして組成物100質量%に対して界面活性剤を14.4質量%含み、カルボン酸系水溶性重合体を含まない組成物の粘度の値を用いて算出することができる。
上記粘度の変化率は、好ましくは330〜1000%であり、より好ましくは350〜900%であり、更に好ましくは370〜800%であり、特に好ましくは390〜700%である。
【0030】
本発明のカルボン酸系水溶性重合体は、リン含有基を有していてもよい。リン含有基は、例えば後述するとおり、本発明のカルボン酸系水溶性重合体を製造する際に、連鎖移動剤として次亜リン酸(塩)等の含リン化合物を使用することにより分子中に導入することができる。リン含有基としては、ホスフィネート基、ホスホネート基、リン酸エステル基等が例示される。
カルボン酸系水溶性重合体に導入されたリン含有基は、例えば31P−NMR分析により検出することができる
【0031】
上記カルボン酸系水溶性重合体は、市販品を用いてもよく、単量体成分を重合することにより製造してもよい。
【0032】
<カルボン酸系水溶性重合体の製造方法>
(単量体成分)
本発明のカルボン酸系水溶性重合体の製造に用いる単量体成分は、上述のカルボン酸系単量体を必須として含み、任意に、その他の単量体を含んでいてもよい。
上記カルボン酸系単量体は、酸型であっても塩型(中和型)であってもよい。
上記単量体成分におけるカルボン酸系単量体及びその他の単量体の含有割合は、上述のとおりである。
【0033】
(中和工程)
上記単量体成分に含まれるカルボン酸系単量体のすべてが酸型、又は、一部が塩型である場合、重合反応中及び/又は重合反応後に中和工程を行ってもよい。
好ましくは重合反応後において中和工程を行うことである。反応後にpHを中性付近に近づけることで、保存容器が金属の場合、腐食等をより充分に抑制することができる。
上記中和工程において、アルカリ成分を用いることが好ましい。
上記アルカリ成分としては、通常用いられているものを使用することができ、具体例としては、WO2011/158945号公報に記載のものと同様のものが挙げられる。
上記アルカリ成分として好ましくはアルカリ金属の水酸化物であり、より好ましくは水酸化ナトリウムである。
上記中和工程で使用されるアルカリ成分の使用量は、上記カルボン酸系水溶性重合体の全カルボキシル基に対するカルボキシル基の塩の割合が上記の範囲になるように設定することができる。
【0034】
(重合開始剤)
本発明のカルボン酸系水溶性重合体は、単量体成分を、重合開始剤(以下、開始剤ともいう)の存在下で重合して得ることが好ましい。
上記重合開始剤としては、通常重合開始剤として用いられているものを使用することができ、例えば、過硫酸塩;過酸化水素;アゾ系化合物;有機過酸化物等が好適である。これらの具体例としては、WO2011/158945号公報に記載のものと同様のものが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。重合体の分子量分布が小さくなる傾向にあるので、1種のみを使用することが好ましい。上記重合開始剤として好ましくは過硫酸塩であり、より好ましくは過硫酸ナトリウムである。
上記重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、全単量体成分1モルに対して、15g以下であることが好ましい。より好ましくは0.1〜12gである。
【0035】
上記重合開始剤の添加方法としては、特に限定はされないが、全使用量に対し、実質的に連続的に滴下する量が必要所定量の50質量%以上であることが好ましく、特に好ましくは80質量%以上であり、全量を滴下することが最も好ましい。このように重合開始剤は連続的に滴下するのが好ましいが、その滴下速度は適宜設定することができる。
【0036】
上記重合開始剤を連続的に滴下して添加する場合の滴下時間についても、特には限定されないが、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、上記過硫酸塩等の比較的分解の早い開始剤を用いる場合には、単量体の滴下終了時間までは滴下することが好ましく、単量体滴下終了後から30分以内に終了することがより好ましく、単量体滴下後5分〜20分以内に終了することが特に好ましい。これにより、重合体における単量体の残量を著しく減じることができる。なお、単量体の滴下終了前に、これら開始剤の滴下を終了しても、重合に特に悪影響を及ぼすものではなく、得られた重合体中における単量体の残存量に応じて設定すれば良い。
【0037】
上記比較的分解の早い開始剤について、滴下終了時間についてのみ好ましい範囲を述べたが、滴下開始時間は何ら限定されるものではなく、適宜設定すれば良い。例えば、場合によっては単量体の滴下開始前に開始剤の滴下を開始しても良いし、特に2種以上の開始剤を併用して用いる併用系の場合においては、一つの開始剤の滴下を開始し、一定の時間が経過してから、又は、終了してから、別の開始剤の滴下を開始しても良い。いずれも、開始剤の分解速度、単量体の反応性に応じて適宜設定すれば良い。
【0038】
(連鎖移動剤)
本発明のカルボン酸系水溶性重合体の製造方法においては、重合開始剤の他に、連鎖移動剤を使用することも可能である。この際使用できる連鎖移動剤としては、分子量の調節ができる化合物であれば特に制限されず、通常連鎖移動剤として用いられているものを使用することができる。具体的には、チオール系連鎖移動剤;ハロゲン化物;第2級アルコール;亜リン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸、次亜リン酸塩等;亜硫酸塩、重亜硫酸塩等の、低級酸化物等が挙げられ、これらの具体例としては、WO2011/158945号公報に記載のものと同様のものが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
上記連鎖移動剤の中でも、次亜リン酸(塩)及び/又は重亜硫酸塩を使用することが好ましい。より好ましくは重亜硫酸塩であり、更に好ましくは重亜硫酸ナトリウムである。
【0039】
上記連鎖移動剤の添加量は、特に制限されないが、全単量体成分1モルに対して、1〜20gであることが好ましい。より好ましくは2〜15gである。1g未満であると、分子量の制御ができないおそれがあり、逆に、20gを超えると、連鎖移動剤が残留したり、重合体純分が低下したりするおそれがある。
【0040】
(分解触媒、還元性化合物)
本発明のカルボン酸系水溶性重合体の製造方法は、重合開始剤等の他に、重合開始剤の分解触媒や還元性化合物(反応促進剤ともいう)を使用(重合系に添加)してもよい。
上記重合開始剤の分解触媒や還元性化合物として作用する化合物としては、重金属イオン(又は重金属塩)が挙げられる。すなわち、本発明のカルボン酸系水溶性重合体の製造方法は、重合開始剤等の他に、重金属イオン(又は重金属塩)を使用(重合系に添加)してもよい。なお、本明細書中、重金属イオンとは、比重が4g/cm以上の金属を意味する。
【0041】
上記重金属イオンとしては、これらの具体例としては、WO2011/158945号公報に記載のものと同様のものが挙げられる。これらの重金属は1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。
上記重金属イオンのイオン価は特に限定されるものではなく、例えば、重金属として鉄が用いられる場合、開始剤における鉄イオンとしては、Fe2+であっても、Fe3+であってよく、これらが組み合わされていてもよい。
上記重金属イオンとして鉄を用いる場合、モール塩(Fe(NH(SO・6HO)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄等の重金属塩等を用いることが好ましい。
【0042】
上記重金属イオンの含有量は、また、重合反応完結時(重合反応後に中和工程を行う場合には中和後)における重合反応液の全質量に対して0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm以上であると、重金属イオンによる効果をより充分に発現することができ、10ppm以下であれば、得られる重合体を色調により優れたものとすることができる。
【0043】
本発明のカルボン酸系水溶性重合体(水溶液)の製造方法は、上記重合開始剤、連鎖移動剤、反応促進剤の他にも、必要に応じてpH調節剤、緩衝剤等を用いることができる。
【0044】
(重合溶液)
本発明のカルボン酸系水溶性重合体は、溶液重合で製造することが好ましい。この際使用できる溶媒は、全溶媒に対して50質量%が水である混合溶媒又は水であることが好ましい。溶媒としては水のみを使用することがより好ましい。ここで重合の際、水とともに使用できる有機溶剤としては、通常用いられているものを使用することができ、具体例としては、WO2011/158945号公報に記載のものと同様のものが挙げられる。
【0045】
重合反応は、好ましくは、重合終了後の固形分濃度(溶液の内、不揮発分の濃度であり、後述する測定方法で測定される)が、重合溶液100質量%に対して10〜70質量%であり、20〜60質量%がより好ましく、30〜50質量%が更に好ましい。
【0046】
(その他の製造条件)
上記重合の際の温度は好ましくは70℃以上であり、より好ましくは75〜110℃であり、更に好ましくは80〜105℃である。
重合反応における反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよい。
反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
【0047】
本発明のカルボン酸系水溶性重合体の製造方法は、全ての使用原料の添加が終了した以後に、単量体の重合率を上げること等を目的として熟成工程を設けても良い。熟成時間は、通常1〜120分間、好ましくは5〜90分間、より好ましくは10〜60分間である。熟成時間が1分間以上であれば、単量体成分が残ることをより充分に抑制することができ、残存単量体、又は、残存単量体に起因して形成される不純物により性能が低下することをより充分に抑制することができる。熟成工程における好ましい重合体溶液の温度は、上記重合温度と同様の範囲である。
【0048】
<界面活性剤>
本発明の洗剤組成物に含まれる界面活性剤は、特に制限されないが、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。界面活性剤として1種のみを使用する場合、アニオン性界面活性が好ましい。また、2種以上を併用する場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
【0049】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸又はエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステル又はその塩、アルケニルリン酸エステル又はその塩等が好適である。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。アニオン性界面活性剤としてより好ましくは、アルキルベンゼンスルホン酸塩である。
【0050】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0051】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシ型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0052】
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量に対して5〜70質量%であり、好ましくは7〜68質量%であり、更に好ましくは10〜65質量%であり、特に好ましくは13〜60質量%である。界面活性剤の配合割合が5質量%以上であれば、より充分な洗浄力を発揮することができ、界面活性剤の配合割合が70質量%以下であれば、経済性にもより優れることとなる。
【0053】
<その他の成分>
本発明の洗剤組成物は、界面活性剤及び増粘剤としてのカルボン酸系水溶性重合体以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、特に制限されないが、洗剤ビルダーや添加剤等が挙げられる。
【0054】
上記洗剤ビルダーとしては、特に制限されないが、例えば、本発明の洗剤組成物に含まれるカルボン酸系水溶性重合体以外の重合体;炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩等のアルカリビルダー;トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ボウ硝、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、ゼオライト等のキレートビルダー;カルボキシメチルセルロース等の多糖類のカルボキシ誘導体等が挙げられる。上記ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、アンモニウム、アミン等が挙げられる。
【0055】
上記洗剤ビルダーとしての重合体は、本発明の洗剤組成物に含まれるカルボン酸系水溶性重合体以外のものであれば特に制限されず、上記カルボン酸系水溶性重合体と組成が異なっていても、重量平均分子量が異なっていても、その両方が異なっていてもよい。洗剤ビルダーとしての重合体としては、例えば、上記カルボン酸系単量体由来の構造を有しない重合体、上記カルボン酸系単量体由来の構造を有し、かつ、重量平均分子量が100以上500未満又は9000よりも大きい重合体が挙げられる。
上記カルボン酸系水溶性重合体以外の重合体としては、アリルエーテル系単量体由来の構造単位を含む重合体、スルホン酸基を有する単量体由来の構造単位を含む重合体、アミノ基を有する単量体由来の構造単位を含む重合体、アリル基及びポリアルキレングリコールを有する単量体由来の構造単位を含む重合体、アリル基及び疎水基を有する単量体由来の構造単位を含む重合体が好ましい。これらの単量体の具体例は上述のとおりである。
上記洗剤ビルダーとしての重合体は、重量平均分子量が9100〜100000であることが好ましい。
上記重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0056】
上記添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
【0057】
本発明の洗剤組成物が上記洗剤用ビルダーとしての重合体を含む場合、洗剤組成物における洗剤用ビルダーとしての重合体の含有量は、特に制限されないが、優れたビルダー性能を発揮しうるという観点からは、洗剤用ビルダーとしての重合体の含有量は、洗剤組成物の全質量に対して、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、更に好ましくは0.4〜5質量%である。
【0058】
上記添加剤と重合体以外のその他の洗剤用ビルダーとの合計の配合割合は、通常、洗浄剤組成物100質量%に対して0.1〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.2〜40質量%であり、更に好ましくは0.3〜35質量%であり、特に好ましくは0.4〜30質量%であり、最も好ましくは0.5〜20質量%以下である。添加剤/他の洗剤ビルダーの配合割合が0.1質量%以上であれば、より充分な洗剤性能を発揮することができ、50質量%以下であれば経済性により優れたものとなる。
【0059】
<洗剤組成物の製造方法>
本発明はまた、界面活性剤を含む洗剤組成物を製造する方法であって、上記製造方法は界面活性剤とカルボン酸系水溶性重合体とを混合する工程を含み、上記カルボン酸系水溶性重合体は、重量平均分子量が、500〜9000である洗剤組成物の製造方法でもある。
上記界面活性剤及びカルボン酸系水溶性重合体の具体例及び好ましい例は、上述のとおりである。
【0060】
上記界面活性剤とカルボン酸系水溶性重合体とを混合する工程(以下、混合工程ともいう)は、特に制限されないが、界面活性剤を含む水溶液(界面活性剤含有水溶液)とカルボン酸系水溶性重合体を含む水溶液とを混合することが好ましい。
上記界面活性剤含有水溶液のpHは、特に制限されないが、5〜12であることが好ましい。界面活性剤含有水溶液のpHがこのような範囲であれば、後述するpHの調整工程を行わずに、得られる洗剤組成物のpHを上述の好ましい範囲とすることができる。
上記pHは、pH計で測定することができる。
【0061】
上記製造方法は、上記混合工程の後に、pH調整工程を行ってもよい。pH調整工程を行う場合、得られる洗剤組成物のpHを上述の好ましい範囲とする限り、特に制限されないが、上述のアルカリ成分、又は、塩酸、硫酸等の無機酸若しくはギ酸、酢酸等の有機酸等を用いて調整することができる。また、洗剤ビルダー及び添加剤等の他の成分を添加する工程により組成物のpHを調整してもよい。
【0062】
上記製造方法は、上述の通り洗剤ビルダー及び添加剤等の他の成分を添加する工程を含んでいてもよい。他の成分の具体例及び好ましい例は、上述のとおりである。
【0063】
上述洗剤組成物の製造方法は、上記混合工程後の組成物の、以下の条件の下で測定したときの粘度が260〜1000mPa・sである洗剤組成物の製造方法であることが好ましい。
[粘度測定条件]
組成物100質量%に対して界面活性剤を14.4質量%及びカルボン酸系水溶性重合体を1.5質量%含み、pHが11である組成物の粘度を測定する。なお、測定に用いる組成物のpHは、小数第一位を四捨五入して、pH11となればよい。
上記組成物の粘度として好ましくは260〜1000mPa・sであり、より好ましくは270〜700mPa・sであり、更に好ましくは290〜500mPa・sである。
上記粘度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【発明の効果】
【0064】
本発明の洗剤組成物は、上述の構成よりなり、長期保存安定性に優れた増粘剤を含み、組成物に含まれる成分が均一であることから、粉末洗剤又は液体洗剤等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0066】
<重量平均分子量の測定条件>
重合体の重量平均分子量の測定は、下記条件で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて行った。
装置:東ソー製 HLC−8320GPC
検出器:RI
カラム:東ソー株式会社製 TSK−guard column、及び、TSK−GEL G3000PWXL2本の計3本を直列
カラム温度:35℃
流速:0.5ml/min
検量線:創和科学社製 POLY SODIUM ACRYLATE STANDARD
溶離液:リン酸二水素ナトリウム12水和物/リン酸水素二ナトリウム2水和物(34.5g/46.2g)の混合物を純水にて5000gに希釈した溶液
検量線:American Polymer Standard Corp.製POLYACRYLIC ACID STANDARD
【0067】
<固形分の測定条件>
電子天秤によって風袋(W1)を精秤したアルミシャーレに、サンプル1.0g(W2)を採取し、純水3mLを加え、軽く揺すって完全に溶解した。同じものを合計3個用意し、170℃に設定した乾燥機中で1時間乾燥させ、取り出したのち即座にデシケーターで5分間放冷した。冷却後精秤(W3)し、下記式(2)によって上記3個のサンプルの固形分を求め、これらの値の平均値を重合体組成物の固形分とする。
固形分(%)=(W3−W1)/W2×100 (2)
【0068】
<製造例1>
American Polymer Standard Corp.製POLYACRYLIC ACID STANDARD PAA1K(ポリアクリル酸、重量平均分子量Mw1300。以下、PAA1Kとも称する。)にイオン交換水を添加し、35%水溶液とした。
【0069】
<製造例2>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたSUS316製の5L釜に、純水320.0gと、モール塩0.0516g(総仕込み量に対する鉄(II)の質量(ここで、総仕込み量とは、重合完結後の中和工程を含む、全ての投入物重量をいう。)に換算すると3ppm)を仕込み、攪拌下、90℃に昇温した(初期仕込み)。
次いで攪拌下、85℃一定状態の重合反応系中に80質量%アクリル酸水溶液(以下、80%AAとも称する。)900.0g、48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、48%NaOHとも称する。)41.7g、15質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下15%NaPSと称する。)133.3g、35質量%重亜硫酸ナトリウム水溶液(以下、35%SBSと称する。)285.7gをそれぞれ別個の滴下ノズルより滴下した。それぞれの滴下時間及び滴下シーケンスについては、80%AAは反応開始から180分間で一定速度、48%NaOHは反応開始から180分間で一定速度、15%NaPSは反応開始から190分間で一定速度、35%SBSは反応開始5分前時点から175分間かけて一定速度、とした。また、滴下開始時間に関して、80%AA、48%NaOH、15%NaPSは同時とした。また、80%AA、48%NaOH、15%NaPSの滴下開始のタイミングを反応開始とした。すべての滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を90℃に保持して熟成し重合を完結せしめた。
その後、48%水酸化ナトリウム水溶液766.7gを添加した。
このようにして、重量平均分子量Mw2000、固形分44.7%の重合体組成物を得た。これにイオン交換水を添加し、35%水溶液とした。
【0070】
<製造例3>
株式会社日本触媒製アクアリックTX172(ポリアクリル酸ナトリウム、重量平均分子量Mw2000、固形分44.2%。以下、TX172とも称する。)にイオン交換水を添加し、35%水溶液とした。
【0071】
<製造例4>
還流冷却器、撹拌機を備えたSUS316製の5L釜に、イオン交換水408.8gと、無水マレイン酸130.9gを仕込み、35〜50℃下200rpmで撹拌することにより、完全に溶解させた。その後、同撹拌条件下において、加熱しながら48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、48%NaOHとも称する。)62.3gを滴下し、中和熱を利用して90℃まで昇温した。内温が90℃に到達した後、その内温を90℃に維持し、80%アクリル酸水溶液(以下、80%AAとも称する。)1081.5g、35%重亜硫酸ナトリウム水溶液(以下、35%SBSとも称する。)381.6g、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、15%NaPSとも称する。)356.2g、および、48%NaOH427.5gをそれぞれ別のノズルより滴下した。それぞれの滴下時間及び滴下シーケンスについては、80%AAは反応開始から180分間で一定速度、35%SBSは反応開始から170分間で一定速度、48%NaOHは反応開始後140分時点から60分間かけて一定速度で滴下した。また、15%NaPSに関しては、反応開始後30分間は158.3gを、反応開始後30分から60分の間は79.2gを、反応開始後60分から190分の間は118.7gとなる量を滴下した。また、滴下開始時間に関して、80%AA、15%NaPS、35%SBSは同時とした。また、80%AA、15%NaPS、35%SBSの滴下開始のタイミングを反応開始とした。すべての滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を90℃に保持して熟成し、重合を完結させた。熟成終了後、48%NaOH673.4gを添加した。このようにして、重量平均分子量Mwが4000、固形分44.4%の重合体組成物を得た。これにイオン交換水を添加し、35%水溶液とした。
【0072】
<製造例5>
株式会社日本触媒製アクアリックYS100(ポリアクリル酸ナトリウム、重量平均分子量Mw5500、固形分44.9%。以下、YS100とも称する。)にイオン交換水を添加し、35%水溶液とした。
【0073】
<比較製造例1>
関東化学株式会社製試薬(特級)であるプロピオン酸にイオン交換水を添加し、35%水溶液とした。
【0074】
<比較製造例2>
関東化学株式会社製試薬(特級)であるクエン酸一水和物にイオン交換水を添加し、35%水溶液とした。
【0075】
<比較製造例3>
株式会社日本触媒製アクアリックHL415(ポリアクリル酸、重量平均分子量Mw11700、固形分45.7%。以下、HL415とも称する。)にイオン交換水を添加し、35%水溶液とした。
【0076】
<比較製造例4>
株式会社日本触媒製アクアリックTL213(アクリル酸ナトリウム(以下、SAとも称する。)及びマレイン酸ナトリウム(以下、SMAとも称する。)のコポリマー、組成:SA/SMA=70/30%、重量平均分子量Mw10000、固形分36.0%。以下、TL213とも称する。)にイオン交換水を添加し、35%水溶液とした。
【0077】
<比較製造例5>
株式会社日本触媒製アクアリックDL453(ポリアクリル酸ナトリウム、重量平均分子量Mw50000、固形分35.4%。以下、DL453とも称する。)にイオン交換水を添加し、35%水溶液とした。
【0078】
<比較製造例6>
株式会社日本触媒製アクアリックTL200(SA及びSMAのコポリマー、組成:SA/SMA=79/21%、重量平均分子量Mw60000、固形分40.6%。以下、TL200とも称する。)にイオン交換水を添加し、35%水溶液とした。
【0079】
<実施例1〜5及び比較例1〜7>
pH10.5に調整した15%のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)9.57gに製造例1〜5又は比較製造例1〜6で得られた粘度調整剤水溶液0.43gを加え10gとし、組成物100質量%に対して界面活性剤を14.4質量%、粘度調整剤を1.5質量%含む組成物を調製した。
なお、比較例7として調製した、粘度調整剤を含まない組成物(ブランク)には、各粘度調整剤水溶液0.43gの代わりにイオン交換水0.43gを加えた。
【0080】
<粘度測定方法>
上で調製した洗剤組成物を恒温槽中で25℃に調温した。25℃における粘度をE型粘度計(測定機器:東機産業製TV型粘度計、型式TVE25H)にて測定した。粘度の測定値から、カルボン酸系水溶性重合体の有無による粘度の変化率を下記式により算出した。
粘度変化率(%)=(A−B)/B×100
(式中、Aは、界面活性剤を含み、かつ、カルボン酸系水溶性重合体を組成物100質量%に対して1.5質量%含む組成物の粘度を表す。Bは、界面活性剤を含み、かつ、カルボン酸系水溶性重合体を含まない組成物の粘度を表す。)
【0081】
<濁度確認方法>
上で調製した洗剤組成物の濁度を目視で確認した。
濁度の評価は次の3段階を基準として行った。
○:目視で分離、沈殿、または白濁していない。
△:目視で僅かに白濁している。
×:目視で分離、沈殿、または白濁している。
【0082】
実施例1〜5及び比較例1〜6の重合体(増粘剤)の重量平均分子量(Mw)、洗剤組成物の粘度、粘度変化率及び濁度並びに比較例7の組成物の粘度及び濁度を表1に示した。
【0083】
【表1】