特許第6775295号(P6775295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775295
(24)【登録日】2020年10月8日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】デフサイド用の密封装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3204 20160101AFI20201019BHJP
【FI】
   F16J15/3204 201
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-222224(P2015-222224)
(22)【出願日】2015年11月12日
(65)【公開番号】特開2017-89801(P2017-89801A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年8月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000167196
【氏名又は名称】光洋シーリングテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 亮二
(72)【発明者】
【氏名】松田 健太郎
【審査官】 谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−282841(JP,A)
【文献】 実開平02−109076(JP,U)
【文献】 実開平05−030638(JP,U)
【文献】 特開2000−097348(JP,A)
【文献】 特開2002−022029(JP,A)
【文献】 特開2007−225064(JP,A)
【文献】 特開2003−254440(JP,A)
【文献】 特開2003−240126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライブシャフトを挿入するための軸孔が形成されたハウジングの内部の密封空間と前記ハウジングの外部との間を封止するデフサイド用の密封装置であって、
前記軸孔に装着され、前記ドライブシャフトの外周面に接触する主リップ部と、前記主リップ部よりも前記外部側に空間部を介して設けられ、前記ドライブシャフトの外周面に接触する補助リップ部とを有するシール本体を備えており、
前記主リップ部は、
前記外部側ほど内径が大きくなるように傾斜し、少なくとも一部が前記ドライブシャフトの外周面に接触する第1の内周面と、
前記第1の内周面の全面が前記ドライブシャフトの外周面に接触するのを規制する規制部と、
前記第1の内周面に形成されかつ前記外部側へ漏れようとする前記ハウジング内の流体を前記ドライブシャフトとの相対回転に伴うポンプ作用で前記ハウジング内へ戻すための複数の突起条と、を備え、
前記規制部は、前記第1の内周面の前記外部側に隣接して設けられ、前記第1の内周面に対して鈍角をなしかつ自然状態で前記ドライブシャフトの軸心に沿って配置された円筒形状の第2の内周面を備え、
前記第1の内周面と前記第2の内周面との間の角度が、130°〜170°の範囲で設定されている、デフサイド用の密封装置。
【請求項2】
前記第2の円筒面よりも前記外部側には、凹溝が形成され、
前記第2の内周面と、当該第2の内周面に隣接する前記凹溝の内側面との間の内角の角度が、100°〜170°の範囲で設定されている、請求項1に記載のデフサイド用の密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のデフサイドに用いられる密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のディファレンシャル装置は、デフピニオンギヤ及びデフサイドギヤを収容するデフケースと、デフケースを回転自在に支持するハウジングと、デフサイドギヤに連結されるとともに、ハウジングの軸孔に挿通されるドライブシャフトとを備えている。ハウジングの軸孔とドライブシャフトとの間の環状空間には、ハウジング内(密封空間内)の潤滑油の漏洩防止と、ハウジングの外部側からの異物の侵入防止とを兼ねたデフサイド用の密封装置が設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の密封装置は、図6に示すように、ハウジング111の軸孔111aに装着されるシール本体114と、ドライブシャフト112の外周面に装着されるディフレクタ115とを備えている。シール本体114は、ドライブシャフト112に接触する主リップ部132と、この主リップ部132よりもハウジング111の外部側Bにおいてドライブシャフト112に接触するダストリップ部(補助リップ部)133と、このダストリップ部133よりも外部側Bに設けられ且つ外部側Bでかつ径方向外側へ斜め方向に延びるサイドリップ部134とを有する。ディフレクタ115は、径方向に沿って配置された円環状の環状板部115bを有しており、サイドリップ部134は、ディフレクタ115の環状板部115bに接触することによって、外部側Bからの異物の侵入を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−225064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシール本体114における主リップ部132の内周面132b(ドライブシャフト112との接触面)には、複数の突起条132gが設けられており、ハウジング111内(密封空間A内)側の潤滑油がドライブシャフト112と主リップ部132との間から外部側Bへ漏れようとしても、主リップ部132とドライブシャフト112との相対回転により突起条132gがポンプ作用を生じさせ、潤滑油をハウジング111の内部側へ押し戻すように構成されている。
【0006】
しかしながら、主リップ部132とダストリップ部133との間の空間部Sは、前記ポンプ作用によって負圧になりやすいため、図8に示すように、主リップ部132及びダストリップ部133がドライブシャフト112の外周面に強く圧接されることが多くなる。そのため、主リップ部132の内周面132bが広範囲でドライブシャフト112に接触し、主リップ部132の内周面132b全体の摩耗や発熱が大きくなる。
【0007】
したがって、本発明は、主リップ部の内周面における摩耗や発熱を抑制することができるデフサイド用の密封装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の密封装置は、
ドライブシャフトを挿入するための軸孔が形成されたハウジングの内部の密封空間と前記ハウジングの外部との間を封止するデフサイド用の密封装置であって、
前記軸孔に装着され、前記ドライブシャフトの外周面に接触する主リップ部と、前記主リップ部よりも前記外部側に空間部を介して設けられ、前記ドライブシャフトの外周面に接触する補助リップ部とを有するシール本体を備えており、
前記主リップ部は、
前記外部側ほど内径が大きくなるように傾斜し、少なくとも一部が前記ドライブシャフトの外周面に接触する第1の内周面と、
前記第1の内周面の全面が前記ドライブシャフトの外周面に接触するのを防止する規制部と、
前記第1の内周面に形成されかつ前記外部側へ漏れようとする前記ハウジング内の流体を前記ドライブシャフトとの相対回転に伴うポンプ作用で前記ハウジング内へ戻すための複数の突起条と、を備え、
前記規制部は、前記第1の内周面に対して鈍角をなしかつ自然状態で前記ドライブシャフトの軸心に沿って配置された円筒形状の第2の内周面を備え、
前記第1の内周面と前記第2の内周面との間の角度が、130°〜170°の範囲で設定されている。
【0009】
上記構成によれば、主リップ部がドライブシャフトの外周面に強く圧接された場合であっても、主リップには、第1の内周面がドライブシャフトの外周面に接触するのを規制する規制部が設けられているので、ドライブシャフトの外周面に対する主リップ部の第1の内周面の接触面積を減少させ、第1の内周面における摩耗や発熱を抑制することができる。
【0010】
前記主リップ部は、前記第1の内周面に形成されかつ前記外部側へ漏れようとする前記ハウジング内の流体を前記ドライブシャフトとの相対回転に伴うポンプ作用で前記ハウジング内へ戻すための複数の突起条をさらに備えていてもよい。
このように、突起条によるポンプ作用で主リップ部と補助リップ部との間の空間部が負圧になりやすい構成を採用した場合、主リップ部がドライブシャフトの外周面に強く圧接されることも多くなるため、上記のような規制部を設けることがより有用である。
【0011】
前記規制部は、前記第1の内周面に対して鈍角をなしかつ前記ドライブシャフトの軸心に略沿って配置された第2の内周面を備えている。
このような構成によって、主リップ部と補助リップ部との間の空間部における負圧が小さい(圧力が高い)ときには規制部の第2の内周面がドライブシャフトに接触せず、当該規制部の摩耗や発熱を抑制することができる。
また、前記第2の円筒面よりも前記外部側には、凹溝が形成され、
前記第2の内周面と、当該第2の内周面に隣接する前記凹溝の内側面との間の内角の角度が、100°〜170°の範囲で設定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のデフサイド用の密封装置によれば、主リップ部の内周面の摩耗や発熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る密封装置を示す断面図である。
図2】密封装置のシール本体の要部を拡大して示す断面図である。
図3】締め代が最大のときのシール部材のサイドリップ部を示す断面図である。
図4】強く圧接されたときのシール部材の主リップ部及び補助リップ部を示す断面図である。
図5】シール部材のサイドリップの締め代と反力との関係を示すグラフである。
図6】従来の密封装置を示す断面図である。
図7】従来のシール部材において、締め代が最大のときのサイドリップ部を示す断面図である。
図8】従来のシール部材において、ドライブシャフトに強く圧接されたときの主リップ及び補助リップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、密封装置の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る密封装置を示す断面図である。この密封装置10は、自動車のディファレンシャル装置において、デフピニオンギヤ及びデフサイドギヤを収容するデフケースを回転自在に支持するハウジング11と、デフサイドギヤに連結され、このハウジング11に形成された軸孔11aに挿通されたドライブシャフト(回転軸)12との間に用いられるデフサイド用の密封装置である。
【0015】
密封装置10は、互いに相対回転するドライブシャフト12とハウジング11との間に形成される環状空間に装着されて、ハウジング11の内部である密封空間A内に密封された潤滑油等の密封流体がハウジング11の外部側Bへ漏洩するのを防止する。
密封装置10は、シール本体14と、ディフレクタ(当接部材)15とを備えている。
シール本体14は、断面略L字形の環状の芯金21と、芯金21に固定されているシール部材22と、環状のバネリング23とで構成されている。
【0016】
芯金21は、金属(例えば、SPCC)製の環状部材であり、ドライブシャフト12と同軸心状に配置された円筒形状の円筒部21aと、この円筒部21aの軸方向の一端部から径方向内方へ屈曲した円環状の環状板部21bとで構成されている。
【0017】
シール部材22は、合成ゴム(例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM))等の弾性部材からなり、加硫による接着、焼き付けなどにより芯金21に固定されている。シール部材22は、環状に形成されており、本体部31と、主リップ部32と、補助リップ部33と、サイドリップ部34とを有している。
【0018】
本体部31は、芯金21の円筒部21aの外周面に設けられ且つハウジング11の軸孔11aに固定される外周部31aと、環状板部21bの外部側Bの側面に設けられている側面部31bと、環状板部21bの内周部を覆う内周部31cとを備えている。外周部31a、側面部31b、内周部31cは、一体的に形成されている。外周部31aは軸方向に沿って配置され、側面部31bは径方向に沿って配置されている。
【0019】
<主リップ部32の構成>
主リップ部32は、本体部31の内周部31cの径方向内側において密封空間A側へ延びている。主リップ部32の外周面には周溝32aが形成されている。そして、この周溝32aには、ガータスプリングと呼ばれるバネリング23が装着されている。バネリング23は、主リップ部32を径方向内方へ締め付けている。
【0020】
図2は、密封装置10のシール本体14の要部を拡大して示す断面図である。図2においては、外部から負荷を受けていない自然状態のシール本体14が示されている。
図1及び図2に示すように、主リップ部32は、ドライブシャフト12の外周面に締め代をもって接触して密封空間A内の密封流体が外部側Bへ漏れるのを防止している。主リップ部32は、その径方向内側の断面形状が径方向内方に向けて細くなる(軸方向幅寸法が小さくなる)ほぼV字形とされている。したがって、主リップ部32の内周面は、外部側Bの第1傾斜面32bと、密封空間A側の第2傾斜面32cとを有している。
【0021】
第1傾斜面32bは、外部側Bほど内径が大きくなるように傾斜し、第2傾斜面32cは、密封空間A側ほど内径が大きくなるように傾斜している。第1傾斜面32bと第2傾斜面32cとの境界部であって主リップ部32の最小径部(頂部)を第1リップ先端部32dという。また、第1傾斜面32bよりも外部側Bには、軸心方向Cに略沿った方向に形成された円筒形状の円筒面32eが形成されている。第1傾斜面32bと円筒面32eとは鈍角をなして交差している。円筒面32eは、後述するようにドライブシャフト12の外周面に接触可能な接触面(第2の内周面)を構成している。
【0022】
第1傾斜面32bと第2傾斜面32cとの内角の角度θ1は、鈍角をなしており、例えば約122°とされる。θ1は、例えば95°〜140°の範囲で設定することができる。
また、第1傾斜面32bと円筒面32eとの間の角度θ2は、例えば、約157°とされる。θ2は、例えば130°〜170°の範囲で設定することができる。
【0023】
円筒面32eよりも外部側Bには、凹溝37が形成されている。円筒面32eに隣接する凹溝37の内側面37aと、円筒面32eとの間の内角の角度θ3は、鈍角をなしており、例えば約140°とされる。θ3は、例えば100°〜170°の範囲で設定することができる。
【0024】
主リップ部32の第1傾斜面(第1の内周面)32bは、ドライブシャフト12の外周面に接触するシール面として機能する。この第1傾斜面32bには、図1に示すように、軸方向に対して周方向へ所要角度傾斜する複数の突起条32gが形成されている。第1傾斜面32bに突起条32gを形成することによって、シール部材22とドライブシャフト12との相対的な回転に伴い、主リップ部32とドライブシャフト12との接触部分から外部側Bへ漏洩しようとする密封空間A内の密封流体を、密封空間A内へ戻すポンプ作用が発揮される。
【0025】
図2(b)に拡大して示すように、円筒面32eと凹溝37の内側面37aは、第1傾斜面32bに垂直な方向aに関して当該第1傾斜面32bよりも径方向内側に突出する突部38を形成している。そして、この突部38は、第1傾斜面32bの全面がドライブシャフト12の外周面に接触するのを規制する規制部を構成する。
【0026】
<補助リップ部33の構成>
図1及び図2に示すように、補助リップ部33は、ドライブシャフト12の外周面に締め代をもって接触し、主に外部側Bから密封空間A内への異物の侵入を防止している。補助リップ部33は、その径方向内側の断面形状が径方向内方に向けて細くなる(軸方向幅寸法が小さくなる)ほぼV字形とされている。したがって、補助リップ部33の内周面は、密封空間A側の第3傾斜面33aと、外部側Bの第4傾斜面33bとを有している。
【0027】
第3傾斜面33aと第4傾斜面33bとの境界部であって補助リップ部33の最小径部(頂部)を第2リップ先端部33cという。補助リップ部33の第3傾斜面33aがドライブシャフト12の外周面に接触するシール面として機能する。
第3傾斜面33aと第4傾斜面33bとの間の内角の角度θ4は、鈍角をなしており、例えば約111°とされる。角度θ4は、例えば95°〜150°の範囲で設定することができる。
【0028】
<主リップ部32の作用>
主リップ部32と補助リップ部33との間には、凹溝37が形成されているので、補助リップ部33と、主リップ部32と、これらが接触するドライブシャフト12の外周面との間には、環状の第1空間部S1(図1参照)が形成される。
主リップ部32の第1傾斜面32bには、突起条32gが形成されているので、この突起条32gによるポンプ作用によって第1空間部S1内のエアが密封空間A側へ排出され、第1空間部S1内が負圧になりやすくなる。そして、第1空間部S1内が負圧になると、主リップ部32及び補助リップ部33がドライブシャフト12の外周面に強く押し付けられる。この状態を図4に示す。
【0029】
図4に示すように、主リップ部32は、第1傾斜面32bがドライブシャフト12の外周面に接触するが、第1傾斜面32bの外部側Bには突部(規制部)38が隣接して形成されているので、第1傾斜面32bは全体がドライブシャフト12の外周面に接触せず、一部が浮いた状態となる。したがって、主リップ部32とドライブシャフト12との間には、隙間cが形成される。
【0030】
図8に示すように、従来のシール本体114の場合、主リップ部132には本実施形態のような突部38が形成されていないので、第1傾斜面132bの全面がドライブシャフト12に接触している。そのため、第1傾斜面132b全体の摩耗や発熱が大きくなる。
これに対して、本実施形態では、図4に示すように、ドライブシャフト12に対する主リップ部32の接触部位が分散し、主リップ部32の第1傾斜面32bの全面がドライブシャフト12に接触するのを抑制することができる。そのため、主リップ部32の第1傾斜面32bの摩耗や発熱を抑制することができる。
【0031】
<サイドリップ部34の構成>
図1に示すように、シール部材22のサイドリップ部34は、本体部31の側面部31bと内周部31cとの境界部分から外部側Bへ延びている。サイドリップ部34は、多段階に屈曲した形状に形成されている。具体的に、サイドリップ部34は、密封空間A側から順に、基端部41、中間部42、43、先端部44を備えている。そして、基端部41と中間部42との間、及び中間部43と先端部44との間は、それぞれ屈曲されている。
【0032】
図2に示すように、本実施形態のサイドリップ部34は、シール部材22の本体部31における側面部31bからの長さ(軸心方向Cに関する幅)L1が、例えば約12.1mmとされている。
基端部41は、シール部材22の側面部31bから外部側Bでかつ径方向内側へ向けて斜めに延びている。基端部41と側面部31bとの間の角度θ5は鈍角をなし、例えば、約106°とされる。角度θ5は、例えば95°〜150°の範囲で設定することができる。本実施形態の基端部41は、本体部31における側面部31bからの長さ(軸心方向Cに関する幅)L2が、例えば約2.4mmとされている。基端部41の長さL2は、サイドリップ部34全体の長さL1に対して約20%となる。
【0033】
中間部42,43は、基端部側中間部42と、先端部側中間部43とを有する。基端部側中間部42は、基端部41の先端から外部側Bでかつ径方向外側へ向けて斜めに延びている。基端部41と基端部側中間部42との間の角度θ6は鈍角をなし、例えば、約97°とされる。角度θ6は、角度θ5よりも小さい値とされている。また、角度θ6は、例えば95°〜150°の範囲で設定することができる。サイドリップ部34は、基端部41及び基端部側中間部42の部分において、径方向内側に凸となる形状に形成されている。
【0034】
先端部側中間部43は、基端部側中間部42の先端から外部側Bでかつ径方向外側へ向けて斜めに延びている。基端部側中間部42と先端部側中間部43との間の角度θ7は鈍角をなし、例えば、約120°とされる。角度θ7は、角度θ5及びθ6よりも大きい値とされている。また、角度θ7は、例えば95°〜150°の範囲で設定することができる。また、先端部側中間部43は、軸心方向Cに対する傾斜角度θ10が、基端部側中間部42における傾斜角度θ9よりも小さく設定されている。
【0035】
本実施形態の中間部42,43は、軸心方向Cに関する長さ(幅)L3が、約7.2mmとされている。このうち基端部側中間部42の長さL4は、約2.2mm、先端部側中間部43の長さL5が、約5.0mmとされている。中間部42,43の長さL3は、サイドリップ部34全体の長さL1に対して、約60%となり、基端部側中間部42と先端部側中間部43との長さL4,L5の比率は、概ね3:7とされている。
【0036】
サイドリップ部34は、基端部側中間部42及び先端部側中間部43の部分において、径方向外側に凸となる形状に形成されている。したがって、サイドリップ部34の中間部42,43の内周面は凹状に形成されている。そして、中間部42,43の内周面が凹状に形成されることによって、サイドリップ部34は、先端部44と基端部41との間に、空所Dを有している。
【0037】
先端部44は、先端部側中間部43の先端から外部側Bでかつ径方向外側へ向けて斜めに延びている。先端部側中間部43と先端部44との間の角度θ8は鈍角をなし、例えば、約154°とされる。角度θ8は、角度θ7よりも大きい値とされている。また、角度θ8は、例えば100°〜170°の範囲で設定することができる。本実施形態の先端部44は、軸心方向Cに関する長さ(幅)L6が、約2.5mmとされている。先端部44の長さL6は、サイドリップ部34全体の長さL1の約20%となる。
サイドリップ部34は、先端部側中間部43及び先端部44の部分において径方向内側に凸となる形状に形成されている。
【0038】
先端部44は、ドライブシャフト12に取り付けられたディフレクタ15に接触するシール部として機能する。先端部44の内周面44aには、周方向に延びる溝44bが形成されている。この溝44bは、油を保持するために機能する。したがって、先端部44における発熱や摩耗を抑制することができる。
【0039】
図1に示すように、ディフレクタ15は、ドライブシャフト12の外周面に嵌合される円筒形状の円筒部15aと、円筒部15aの軸方向の一端部から径方向外方へ屈曲された円環状の環状板部15bとを有している。ディフレクタ15は、環状板部15bが、シール本体14のサイドリップ部34の外部側Bに対向するようにドライブシャフト12に固定される。
【0040】
シール本体14のサイドリップ部34は、その内周面が締め代を有してディフレクタ15と接触し、サイドリップ部34の内周面と、ディフレクタ15の環状板部15bと、ドライブシャフト12の外周面と、補助リップ部33の外周面との間には、第2空間部S2が形成されている。
【0041】
サイドリップ部34の締め代は、ハウジング11、ドライブシャフト12、シール本体14、ディフレクタ15の組み付けの際の相対位置や、運転時のドライブシャフト12の軸方向のスライド量等によって大きく異なる。例えば、運転時のドライブシャフト12のスライド量は約3mmであり、このスライド量も加味したサイドリップ部34の締め代の範囲Eは、約1mm〜7mm程度になる。サイドリップ部34は、締め代の大きさに関わらず、適切にディフレクタ15に接触することができるように、その形状が設計されている。
【0042】
具体的に、サイドリップ部34は、常にその先端部44がディフレクタ15に接触するように構成されている。図1は、サイドリップ部34の締め代が最小となるときのディフレクタ15の位置を実線で示し、サイドリップ部34の締め代が最大となるときのディフレクタ15の位置を2点鎖線で示している。また、図3には、締め代が最大の時のサイドリップ部34の状態を示している。
【0043】
サイドリップ部34は、基端部41と先端部44との間に中間部42,43を備え、中間部42,43は、内周面が凹状に形成され、先端部44と基端部41との間には空所Dが存在している。そのため、図3に示すように、サイドリップ部34の締め代が最大となり、サイドリップ部34が径方向外側へ大きく屈曲した場合においても、先端部44がディフレクタ15に接触し、その他の部分(中間部42,43及び基端部41)はディフレクタ15に接触しない。そのため、先端部44をディフレクタ15に接触させた状態に維持することができるとともに、先端部44とディフレクタ15との接触面圧を十分に確保することができ、外部側Bからの異物の侵入を確実に防止することができる。
【0044】
また、サイドリップ部34の基端部41は、シール部材22の側面部31b及び内周部31cから径方向内側へ向けて延び、基端部側中間部42は、基端部41の先端から径方向外側へ向けて延びている。このような構造によって、図3に示すように、締め代が拡大したとしても、基端部41は径方向外側へそれほど大きく弾性変形せず、基端部41と基端部側中間部42との間の弾性変形が大きくなっている。これにより、ディフレクタ15と先端部44の接触状態に影響を与えることなく、サイドリップ部34の締め代の変化に追従することができる。
【0045】
図5は、サイドリップ部34の締め代とサイドリップ部34の反力との関係を示すグラフである。図5では、上記実施形態の形状のシール本体14と、従来技術(図6参照)のシール本体114とを比較して示す。また、図7は、従来技術のシール本体114において、締め代が最大となったときのサイドリップ部134の形状を示す。
【0046】
従来技術のシール本体114においては、図6に示すように、サイドリップ部134の略全体がテーパー状に傾斜した形状となっているため、図7に示すように、締め代が大きくなると、サイドリップ部134はディフレクタ115への接触面積を拡大しながら径方向外側へ曲がっていく。これと同時に、接触面圧のピークが、先端部から徐々に径方向内側へ移動し、サイドリップ部134の先端部はディフレクタ15から浮き上がる傾向となる。そのため、異物の侵入を防止する効果が低下するという問題がある。
【0047】
また、図5に示すように、従来技術のシール本体114は、締め代が増えるにしたがってサイドリップ部134の反力も増大するが、締め代がある値(例えば3mm)を超えると、点線で示すように反力が急激に大きくなる。そのため、上述したようにサイドリップ部134の摩耗や発熱が大きくなる。
【0048】
これに対して、本実施形態のシール本体14の場合、図3に示すように、締め代が大きくなったとしても、先端部44がディフレクタ15に接触した状態を維持することができ、しかも、中間部42,43はディフレクタ15には接触しない。そのため、異物の侵入を防止する効果を好適に維持することができる。
【0049】
また、図5に示すように、サイドリップ部34の反力は、締め代が拡大し始めてから所定の値となるまで(例えば、1.6mmまで)は、比較的急激に上昇するが、当該所定値を超えた後は減少に転じ、その後は締め代が大きくなるに従い徐々に反力は減少する。したがって、上述したような締め代の範囲(例えば1.0〜7.0mm)の間で締め代が変化したとしても、密封性を維持しながら過度な摩耗や発熱を抑制することができる。
【0050】
本発明の密封装置は、上記実施の形態に限られるものではなく、この発明の範囲内において、構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等について適宜変更することができる。
例えば、上記実施形態の突部38は、円筒面32eと内側面37aとによって山形状に形成されていたが、これに限定されず、主リップ部32の第1傾斜面32bのドライブシャフト12に対する接触面積を低減させることができる限りにおいて、種々の形状を採用することができる。
【0051】
上記実施形態では、サイドリップ部34の中間部42,43が、基端部側中間部42と先端部側中間部43との境界で屈曲させることによって内周面が凹状に形成されていたが、中間部の内周面を湾曲させることによって凹状に形成してもよい。
サイドリップ部34の基端部41は、外部側Bでかつ径方向外側へ向けて斜めに延びていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10:密封装置
11:ハウジング
11a:軸孔
12:ドライブシャフト
14:シール本体
32:主リップ部
32b:第1傾斜面(第1の内周面)
32e:円筒面(第2の内周面)
32g:突起条
33:補助リップ部
38:突部
A:密封空間
B:外部側
S1:第1空間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8