(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正極電極と、負極電極と、前記正極電極と前記負極電極との間に介在される隔膜とを備える電池セルに正極電解液及び負極電解液を供給して充放電を行うレドックスフロー電池であって、
前記正極電極は、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池用電極であり、
前記負極電極は、炭素繊維の集合体である、
レドックスフロー電池。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0014】
(1)本発明の実施形態に係るレドックスフロー電池用電極は、基体と、前記基体の表面に被覆される導電部と、前記導電部に保持される触媒部とを備え、
前記導電部は、Sn,Ti,Ta,Ce,In,及びZnからなるα1群から選択される1種以上の元素を含有し、
前記触媒部は、Ru,Ir,Pd,Pt,Rh,及びAuからなるβ群から選択される1種以上の元素を含有する。
【0015】
導電部を構成するα1群の元素は、酸化劣化し難い元素である。上記レドックスフロー電池用電極は、基体の表面に酸化劣化し難い導電部を備えるため、長期に亘るレドックスフロー電池の運転において、基体が酸化劣化し難い。この導電部には、触媒部が保持されているため、上記レドックスフロー電池用電極は、電解液との電池反応性に優れる。導電部を構成するα1群の元素自体も触媒として機能することがある。また、導電部を構成するα1群の元素は、密着性に優れる元素であるため、基体に対する触媒部の密着性を向上することができる。以上より、上記レドックスフロー電池用電極は、長期に亘る経時的な劣化を抑制でき、電池反応性に優れるため、セル抵抗率が小さいレドックスフロー電池を構築できる。
【0016】
なお、導電部は、α1群から選択される1種の元素を含有する場合、その元素単体、その元素の酸化物、又はその元素単体及び同元素の酸化物の双方を含有することが挙げられる。導電部がα1群から選択される複数種の元素を含有する場合、複数種の元素単体、各元素の酸化物の複数種、各元素を複数種含む化合物、各元素を複数種含む固溶体、又はそれらの組み合わせで含有することが挙げられる。各元素を複数種含む化合物には、各元素を複数種含む複合酸化物が含まれる(以下、同様である)。例えば、α1群から選択される複数種の元素をX,Yとしたとき、二種の元素単体:X+Y、各元素の酸化物の二種:X
nO
m+Y
pO
q、各元素を二種含む化合物(複合酸化物):(X
s,Y
t)O等が挙げられる。同様に、触媒部は、β群から選択される1種の元素を含有する場合、その元素単体、その元素の酸化物、又はその元素単体及び同元素の酸化物の双方を含有することが挙げられる。触媒部がβ群から選択される複数種の元素を含有する場合、複数種の元素単体、各元素の酸化物の複数種、各元素を複数種含む化合物、各元素を複数種含む固溶体、又はそれらの組み合わせで含有することが挙げられる。導電部及び触媒部はそれぞれ、α1群の元素やβ群の元素以外の元素を含む場合もあり得る。導電部の構成元素と、触媒部の構成元素とは、互いに独立した元素単体、各元素を含む固溶体、各元素を含む化合物、又はそれらの組み合わせで存在する場合もあり得る。
【0017】
(2)上記のレドックスフロー電池用電極の一例として、前記導電部の構成元素の合計含有量と、前記触媒部の構成元素の合計含有量とのモル比が、30:70〜95:5である形態が挙げられる。
【0018】
導電部の構成元素の合計含有量と触媒部の構成元素の合計含有量とのモル比が上記範囲であることで、基体の表面を確実に導電部で覆うことができると共に、導電部に適量の触媒部を保持することができる。
【0019】
(3)上記のレドックスフロー電池用電極の一例として、更に、前記導電部は、Nb,Sb,Bi,及びPからなるα2群から選択される1種以上の元素を含有する形態が挙げられる。
【0020】
導電部にα2群の元素を含むことで、導電性及び反応性を向上し易く、それにより耐久性を向上し易い。なお、導電部にα2群の元素を含む場合、導電部は、α2群から選択される1種の元素を含有する場合、その元素単体、その元素の酸化物、その元素単体及び同元素の酸化物の双方、α1群から選択される元素とα2群から選択される元素とを含む化合物、α1群から選択される元素とα2群から選択される元素とを含む固溶体、又はそれらの組み合わせで含有することが挙げられる。α2群から選択される複数種の元素を含有する場合、その選択された各元素を複数種含む化合物、各元素を複数種含む固溶体も含む。
【0021】
(4)導電部にα2群から選択される1種以上の元素を含有する上記のレドックスフロー電池用電極の一例として、前記導電部の構成元素のうち前記α2群の元素の合計含有量は、1モル%以上20モル%以下である形態が挙げられる。
【0022】
α2群の元素の合計含有量が導電部の構成元素の合計含有量に対して1モル%以上であることで、長期に亘るレドックスフロー電池の運転における基体の酸化劣化をより抑制できると共に、導電性及び反応性を向上し、それにより耐久性を向上することができる。一方、α2群の元素の合計含有量が導電部の構成元素の合計含有量に対して20モル%以下であることで、十分に導電性及び反応性を向上し、それにより耐久性を向上することができる。
【0023】
(5)上記のレドックスフロー電池用電極の一例として、前記基体は、Ti,Ta,Nb,及びCから選択される1種以上の元素を含有する形態が挙げられる。
【0024】
基体がTi,Ta,Nb,Cを含む材料で構成されることで、長期に亘るレドックスフロー電池の運転において、基体が腐食し難い。
【0025】
(6)上記のレドックスフロー電池用電極の一例として、前記基体は、円相当径が3μm以上100μm以下の横断面を有する繊維の集合体を備える形態が挙げられる。
【0026】
基体が繊維の集合体を備えることで、繊維同士の接点を多くして導電性を高め易く、基体に空隙を確保して電解液の流通性を高め易い。繊維の横断面の円相当径が3μm以上であることで、繊維の集合体の強度を確保することができる。一方、繊維の横断面の円相当径が100μm以下であることで、単位重量当たりの繊維の表面積を大きくでき、十分な電池反応を行うことができる。
【0027】
(7)上記のレドックスフロー電池用電極の一例として、前記基体は、平均粒径が3μm以上500μm以下である粒子の集合体を備える形態が挙げられる。
【0028】
基体が粒子の集合体を備えることで、粒子同士の接点を多くして導電性を高め易く、基体に空隙を確保して電解液の流通性を高め易い。粒子の平均粒径が3μm以上であることで、粒子を取り扱い易い。一方、粒子の平均粒径が500μm以下であることで、単位重量当たりの粒子の表面積を大きくでき、十分な電池反応を行うことができる。
【0029】
(8)上記のレドックスフロー電池用電極の一例として、前記基体は、空隙率が40体積%超98体積%未満である形態が挙げられる。
【0030】
基体の空隙率が40体積%超であることで、電解液の流通性を向上できる。一方、基体の空隙率が98体積%未満であることで、基体の密度が大きくなって導電性を向上でき、十分な電池反応を行うことができる。
【0031】
(9)上記のレドックスフロー電池用電極の一例として、目付量が50g/m
2以上10000g/m
2以下である形態が挙げられる。
【0032】
電極の目付量が50g/m
2以上であることで、十分な電池反応を行うことができる。一方、目付量が10000g/m
2以下であることで、空隙が過度に小さくなることを抑制でき、電解液の流通抵抗の上昇を抑制し易い。
【0033】
(10)上記のレドックスフロー電池用電極の一例として、厚みが0.1mm以上5mm以下である形態が挙げられる。
【0034】
電極の厚みが0.1mm以上であることで、十分な電池反応を行うことができる。一方、電極の厚みが5mm以下であることで、この電極を用いたレドックスフロー電池を薄型とできる。
【0035】
(11)本発明の実施形態に係るレドックスフロー電池は、正極電極と、負極電極と、前記正極電極と前記負極電極との間に介在される隔膜とを備える電池セルに正極電解液及び負極電解液を供給して充放電を行うレドックスフロー電池であって、
前記正極電極は、上記(1)〜(10)のいずれか1つに記載のレドックスフロー電池用電極であり、
前記負極電極は、炭素繊維の集合体である。
【0036】
上記レドックスフロー電池は、本発明の実施形態に係るレドックスフロー電池用電極を正極電極に用いているため、長期に亘るレドックスフロー電池の運転において経時的な劣化を抑制でき、セル抵抗率が小さい。
【0037】
(12)上記のレドックスフロー電池の一例として、前記正極電解液及び前記負極電解液は、酸化還元電位が0.9V以上の活物質を含有する形態が挙げられる。
【0038】
活物質の酸化還元電位が0.9V以上であれば、高い起電力を有するレドックスフロー電池を構築することができる。高い起電力を有するレドックスフロー電池では、充放電に伴う副反応によって正極電極が酸化劣化し易いため、本発明の実施形態に係るレドックスフロー電池用電極を正極電極に用いることによる効果をより発揮し易い。
【0039】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るレドックスフロー電池(RF電池)に備わる電極、及びその電極を備えるRF電池を詳細に説明する。図中の同一符号は、同一名称物を示す。
【0040】
まず、
図3,4を参照して、実施形態のRF電池1を備えるRF電池システムの基本構成を説明し、次に
図1,2を参照して、実施形態のRF電池1に備わるRF電池用電極について説明する。
【0041】
〔RF電池の概要〕
実施形態に係るRF電池1は、
図3に示すようなRF電池1に電解液を循環供給する循環機構が設けられたRF電池システムが構築されて利用される。RF電池1は、代表的には、交流/直流変換器200や変電設備210などを介して、発電部300と、電力系統や需要家などの負荷400とに接続される。RF電池1は、発電部300を電源として充電を行い、負荷400を電力消費対象として放電を行う。発電部300は、例えば、太陽光発電機、風力発電機、その他一般の発電所などが挙げられる。
【0042】
〔RF電池の基本構成〕
RF電池1は、正極電解液が供給される正極電極12と、負極電解液が供給される負極電極14と、正極電極12と負極電極14との間に介在される隔膜11とを備える電池セル100を主な構成要素とする。RF電池1は、代表的には、複数の電池セル100を備えて、隣り合う電池セル100,100間に双極板160(
図4)を備える。
【0043】
正極電極12及び負極電極14は、供給された電解液に含まれる活物質イオンが電池反応を行う反応場である。隔膜11は、正極電極12と負極電極14とを分離すると共に、所定のイオンを透過する正負の分離部材である。双極板160は、正極電極12と負極電極14との間に介在され、電流を流すが電解液を通さない導電部材である。代表的には、
図4に示すように双極板160の外周に形成された枠体161を備えるセルフレーム16の状態で利用される。枠体161は、その表裏面に開口し、双極板160上に配置された各電極12,14に電解液を供給する給液孔163,164及び電解液を排出する排液孔165,166を有する。
【0044】
複数の電池セル100は積層されて、セルスタックと呼ばれる形態で利用される。セルスタックは、
図4に示すように、あるセルフレーム16の双極板160、正極電極12、隔膜11、負極電極14、別のセルフレーム16の双極板160、…と順に繰り返し積層されて構成される。セルスタックにおける電池セル100の積層方向の両端に位置する電極12,14には、双極板160に代えて集電板(図示せず)が配置される。セルスタックにおける電池セル100の積層方向の両端には代表的にはエンドプレート170が配置されて、一対のエンドプレート170,170間が長ボルトなどの連結部材172で連結されて一体化される。
【0045】
〔RF電池システムの概要〕
RF電池システムは、RF電池1と、以下の正極循環経路及び負極循環経路を備えて、正極電極12に正極電解液を循環供給すると共に、負極電極14に負極電解液を循環供給する(
図3を参照)。この循環供給によって、RF電池1は、各極の電解液中の活物質となるイオンの価数変化反応に伴って充放電を行う。
【0046】
正極循環経路は、正極電極12に供給する正極電解液を貯留する正極タンク101と、正極タンク101とRF電池1との間を接続する配管103,105と、供給側の配管103に設けられたポンプ107とを備える。同様に、負極循環経路は、負極電極14に供給する負極電解液を貯留する負極タンク102と、負極タンク102とRF電池1との間を接続する配管104,106と、供給側の配管104に設けられたポンプ108とを備える。複数のセルフレーム16を積層することで給液孔163,164及び排液孔165,166(
図4)は電解液の流通管路を構成し、この管路に配管103〜106が接続される。RF電池システムの基本構成は、公知の構成を適宜利用できる。
【0047】
〔RF電池の主な特徴点〕
実施形態のRF電池1は、長期に亘るRF電池1の運転において、酸化劣化し難く、セル抵抗率を小さくできる電極を用いる点を特徴の一つとする。具体的には、電極は、基体と、基体の表面に被覆される導電部と、導電部に保持される触媒部とを備える複合材で構成される。以下、上述した実施形態のRF電池1に備わるRF電池用電極について詳細に説明する。
【0048】
≪実施形態1≫
実施形態1のRF電池用の電極10Aは、
図1に示すように、互いに絡み合う複数の繊維を主体とする繊維集合体を備える。
図1は、電極10Aを示し、中図は電極10Aの一部拡大図であり、下図は電極10Aを構成する各繊維の拡大縦断面図である。電極10Aは、
図1の下図に示すように、基体110と、基体110の表面に被覆される導電部112と、導電部112に保持される触媒部114とを備える。
【0049】
・基体
基体110は、電極10Aのベースを構成する。「ベースを構成する」とは、繊維集合体(電極10A)のうち基体110の占める割合が50質量%以上であることを言う。基体110は、Ti,Ta,Nb,及びCから選択される1種以上の元素を含有する。基体110は、単一元素からなる材料又は上記元素を含む合金や化合物からなる材料であることが挙げられる。基体110は、その構造(繊維の組み合わせ形態)によって繊維集合体に占める繊維の割合が異なる。繊維集合体の繊維の組み合わせ形態は、例えば、不織布や織布、ペーパーなどが挙げられる。
【0050】
基体110を構成する繊維の横断面の平均径は、円相当径が3μm以上100μm以下であることが好ましい。繊維の円相当径が3μm以上であることで、繊維の集合体の強度を確保することができる。一方、繊維の円相当径が100μm以下であることで、単位重量当たりの繊維の表面積を大きくでき、十分な電池反応を行うことができる。繊維の円相当径は、更に5μm以上50μm以下、特に7μm以上20μm以下であることが好ましい。基体110を構成する繊維の横断面の平均径は、電極10Aを切断して繊維の横断面を露出させ、顕微鏡下で5視野以上、1視野につき3本以上の繊維について測定した結果を平均することで求められる。
【0051】
基体110による繊維集合体の空隙率は、40体積%超98体積%未満であることが好ましい。繊維集合体の空隙率が40体積%超であることで、電解液の流通性を向上できる。一方、繊維集合体の空隙率が98体積%未満であることで、繊維集合体の密度が大きくなって導電性を向上でき、十分な電池反応を行うことができる。基体110による繊維集合体の空隙率は、更に60体積%以上95体積%以下、特に70体積%以上93体積%以下であることが好ましい。
【0052】
・導電部
導電部112は、基体110のほぼ全表面を被覆する。導電部112は、Sn,Ti,Ta,Ce,In,及びZnからなるα1群から選択される1種以上の元素を含有する。更に、導電部112は、Nb,Sb,Bi,及びPからなるα2群から選択される1種以上の元素を含有することができる。導電部112は、α1群から選択される元素単体、その元素の酸化物、複数種の元素を含む場合は、複数種の元素単体、各元素の酸化物の複数種、各元素を複数種含む化合物、各元素を複数種含む固溶体、又はそれらの組み合わせで含有することが挙げられる。また、α2群から選択される元素を含有する場合、その元素単体、その元素の酸化物、α1群から選択される元素とα2群から選択される元素とを含む化合物、α1群から選択される元素とα2群から選択される元素とを含む固溶体、又はそれらの組み合わせで含有することが挙げられる。特に、導電部112は、α1群から選択される1種以上の元素(α2群の元素を含んでもよい)の酸化物の形態で含有することが多い。導電部112はそれぞれ、α1群の元素以外の元素を含む場合もあり得る。導電部112は、基体110の酸化劣化を抑制する保護膜の機能を有する。また、導電部112は、基体110に後述する触媒部114を保持させる保持膜の機能を有する。
【0053】
導電部112にα1群の元素を含有すると、基体110の酸化劣化を効果的に抑制できると共に、基体110に触媒部114を強固に保持することができる。なお、導電部112の構成元素と、触媒部114の構成元素とは、互いに独立した元素単体、各元素を含む固溶体、各元素を含む化合物、又はそれらの組み合わせで存在する場合もある。導電部112の構成元素のうちα1群の元素の含有量は、耐食性と導電性を両立するために、30モル%以上90モル%以下が好ましく、更に35モル%以上80モル%以下、特に40モル%以下70モル%以下が好ましい。
【0054】
導電部112にα2群の元素を含有すると、導電性と耐食性を向上することができる。導電部112にα2群の元素を含有する場合、α2群の元素の合計含有量は、導電部112の構成元素の合計含有量に対して、1モル%以上20モル%以下であることが好ましい。導電部にα2群の元素を上記範囲で含有することで、導電性と耐食性を向上できると共に、基体110の酸化劣化をより抑制でき、基体110に対する触媒部114の密着性も確保できる。導電部112の構成元素の合計含有量に対するα2群の元素の合計含有量は、更に1.5モル%以上15モル%以下、特に2.5モル%以上12モル%以下であることが好ましい。
【0055】
導電部112の平均厚みは、0.1μm以上100μm以下であることが挙げられる。導電部112の平均厚みが0.1μm以上であることで、基体110の酸化劣化を抑制し易い。一方、導電部112の平均厚みが100μm以下であることで、導電部112にクラックが生じ難く、基体110と触媒部114とを密着させ易く、電極10Aの厚肉化も抑制できる。導電部112の平均厚みは、更に0.15μm以上80μm以下、特に0.2μm以上50μm以下であることが挙げられる。導電部112の平均厚みは、電極10Aを切断して繊維の横断面を露出させ、3本以上の繊維について、顕微鏡下で1本当たり異なる5点以上の測定結果を平均することで求められる。
【0056】
・触媒部
触媒部114は、導電部112に保持され、電池反応性を向上する。触媒部114は、Ru,Ir,Pd,Pt,Rh,及びAuからなるβ群から選択される1種以上の元素を含有する。触媒部114は、β群から選択される元素単体、その元素の酸化物、複数種の元素を含む場合は、複数種の元素単体、各元素の酸化物の複数種、各元素を複数種含む化合物、各元素を複数種含む固溶体、又はそれらの組み合わせで含有することが挙げられる。特に、触媒部114は、β群の元素単体又は、その酸化物、各元素の酸化物からなる化合物の形態で含有することが多い。触媒部114は、代表的には、
図1の下図に示すように、粒状体で導電部112の全領域に亘って存在する。触媒部114は、粒状体以外に、短い繊維状体で存在することもある。触媒部114は、その一部が導電部112に埋設され、残部が導電部112から露出していてもよいし、実質的に全部が導電部112に埋設されていてもよい。また、導電部112の構成元素と触媒部114の構成元素とが、互いに独立した元素単体、各元素を含む固溶体、各元素を含む化合物、又はそれらの組み合わせの状態で存在してもよい。
【0057】
導電部112の構成元素の合計含有量と、触媒部114の構成元素の合計含有量とのモル比は、30:70〜95:5であることが好ましい。上記範囲で導電部112と触媒部114とが構成されることで、基体110の表面を確実に導電部112で覆うことができると共に、導電部112に適量の触媒部114を保持することができる。導電部112の構成元素の合計含有量と、触媒部114の構成元素の合計含有量とのモル比は、更に30:70〜80:20、特に40:60〜60:40であることが好ましい。
【0058】
電極10Aは、目付量(単位面積当たりの重量)が50g/m
2以上10000g/m
2以下であることが好ましい。電極10Aの目付量が50g/m
2以上であることで、十分な電池反応を行うことができる。一方、目付量が10000g/m
2以下であることで、空隙が過度に小さくなることを抑制でき、電解液の流通抵抗の上昇を抑制し易い。電極10Aの目付量は、更に100g/m
2以上2000g/m
2以下、特に200g/m
2以上700g/m
2以下であることが好ましい。
【0059】
電極10Aは、外力の作用しない状態での厚みが0.1mm以上5mm以下であることが好ましい。電極10Aの上記厚みが0.1mm以上であることで、電解液との間で電池反応を行う電池反応場を増大できる。一方、電極10Aの上記厚みが5mm以下であることで、この電極10Aを用いたRF電池1を薄型とできる。電極10Aの上記厚みは、更に0.2mm以上2.5mm以下、特に0.3mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
【0060】
・RF電池用電極の製造方法
上述したRF電池用の電極10Aは、基体110と、導電部112及び触媒部114の構成元素を含有する塗布液とを準備し、塗布液を基体110の表面に塗布して熱処理を施すことで得られる。以下、RF電池用の電極10Aの製造方法を詳細に説明する。
【0061】
・・基体の準備
基体110として、Ti,Ta,Nb,及びCから選択される1種以上の元素を含有する繊維が互いに絡み合った繊維集合体を準備する。この繊維集合体の大きさや形状は、所望の電極10Aの大きさや形状となるように適宜選択すればよい。この準備した繊維集合体は、ブラストやエッチング処理などを行い、表面積拡大、表面粗化を行ったものを利用することが好ましい。ブラストやエッチング処理後、表面の選択エッチングを行い清浄化及び活性化を行う。清浄化における酸清浄として、代表的には、硫酸、塩酸、フッ酸などがあり、これらの液に繊維集合体を浸漬し表面の一部を溶解することにより活性化を行うことができる。
【0062】
・・塗布液の準備
導電部112及び触媒部114を構成する元素の原料と有機溶媒とを含有する塗布液を準備する。上記元素の原料としては、金属アルコキシド、塩化物、酢酸塩、有機金属化合物があり、具体的には、四塩化スズ、塩化スズ(IV)五水和物、塩化スズ(II)、塩化スズ(II)二水和物、ビス(2‐エチルヘキサン酸)スズ(II)、ビス(ネオデカンサン酸)スズ(II)三塩化−n−ブチルスズ(IV)、ジブチルスズビス(アセチルアセトネート)、ジ−n−ブチル−ジ−n−ブドキシドスズ(IV)、スズ(IV)−n−ブトキシド、スズ(IV)−t−ブトキシド、テトラメチルスズ、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、四塩化チタン、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)−n−ブトキシド、チタン(IV)−t−ブトキシド、チタン(IV)−i−プロポキシド、チタン(IV)−n−プロポキシド、一塩化チタン(IV)−i−トリプロポキシド、チタン(IV)メトキシド、ビス(−2,4−ネオデカンサン酸)−チタン(IV)−n−ジブトキシド、二塩化チタン(IV)−ジエトキシド、(ビス−2,4−ペンタンジオン酸)−チタン(IV)−i−ジプロポキシド、2−エチルヘキサン酸チタン(IV)、チタン(IV)メチルフェトキシド、チタン(IV)−n−ステアリルシド、三酢酸アンチモン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、アンチモン(III)メトキシド、アンチモン(III)エトキシド、アンチモン(III)ブトキシド、硝酸セリウム(III)、塩化セリウム(III)、塩化セリウム(III)七水和物、セリウム(IV)−i−プロコキシド、セリウム(IV)−メトキシエトキシド、セリウム(III)−t−ブトキシド、2エチルヘキサン酸セリウム(III)、五塩化タンタル、タンタル(V)−n−ブトキシド、タンタル(V)−エトキシド、タンタル(V)メトキシド、酢酸ビスマス(III)、塩化ビスマス(III)、安息香酸ビスマス(III)、硝酸ビスマス(III)五水和物、ビスマス(V)−n−ペントキシド、ビスマス(III)−n−ブトキシド、ネオデカン酸ビスマス(III)、三塩化インジウム、三塩化インジウム四水和物、酢酸インジウム(III)、インジウム(III)−i−プロポキシド、インジウム(III)−トリメトキシエトキシド、2,4−ペンタンジオン酸インジウム(III)、インジウム(III)メチル(トリメチル)アセチルアセテート、二酢酸亜鉛、二酢酸亜鉛二水和物、メタクリル酸亜鉛(II)、亜鉛(II)−N,N−ジメチルアミノエトキシド、2−エチルヘキサン酸亜鉛(II)、2−エチルヘキサン酸亜鉛(IV)、亜鉛(II)−メトキシエトキシド、亜鉛(IV)エトキシド、亜鉛(IV)−n−プロコキシド、亜鉛(IV)−i−プロコキシド、亜鉛(IV)−n−ブドキシド、亜鉛(IV)−t−ブドキシド、亜鉛(IV)2−エチルヘキサノイルオキシド、メタクリル酸亜鉛(IV)、燐酸、ポリ燐酸、亜燐酸、ジヘキシルホスフィン酸、塩化イリジウム(IV)酸n水和物、塩化イリジウム(III)n水和物、塩化イリジウム(III)無水和物、硝酸イリジウム(IV)、塩化イリジウム(IV)酸アンモニウム、ヘキサアンミンイリジウム(III)水酸化物、塩化ルテニウム(III)水和物、硝酸ルテニウム(III)、酸化ルテニウム(IV)水和物、塩化パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、ジニトロジアンミンパラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、テトラアンミンパラジウム(II)ジクロライド、塩化白金(IV)酸n水和物、塩化白金(IV)酸アンモニウム、ジニトロジアンミン白金(II)、塩化第一白金(II)、塩化第二白金(IV)、テトラアンミン白金(II)ジクロライドn水和物、テトラアンミン白金(II)水酸化物、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸、塩化ロジウム(III)三水和物、硝酸ロジウム(III)、塩化金酸などが挙げられる。
【0063】
塗布液に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどが挙げられる。有機溶媒は、塗布液全体に対して70質量%以上95質量%以下含有することが挙げられる。また、塗布液には、安定化剤として、アセチルアセトンなどを含有することができる。安定化剤は、塗布液全体に対して1質量%以上10質量%以下含有することが挙げられる。これら原料と有機溶媒、更には安定化剤を含有した含有物を、窒素雰囲気で1時間以上5時間以下程度撹拌することで、所望の導電部112及び触媒部114の構成元素を含有する塗布液が得られる。
【0064】
・・塗布及び熱処理
得られた繊維集合体の表面に得られた塗布液を塗布する。塗布方法としては、刷毛塗法、噴霧法、浸漬法、フローコート法、ロールコート法などが挙げられる。塗布液を塗布した繊維集合体に、酸化性ガスが含まれるガス中、例えば空気中で、300℃以上600℃以下×10分以上5時間以下の熱処理を行う。この熱処理は、具体的には、第一の熱処理と第二の熱処理とを備えることが挙げられる。第一の熱処理は、繊維集合体中に導電部112及び触媒部114が所望量保持されるまで、塗布液を塗布⇒300℃以上500℃以下×10分以上2時間以下の熱処理という工程を繰り返し行う。第一の熱処理は、繰り返し回数を多くすると、導電部112及び触媒部114の含有量を増大できる一方、導電部112の厚みが増大し、クラックが生じ易く、基体110と触媒部114との密着性が低下する。よって、第一の熱処理は、導電部112の厚みが所望の厚みとなるように行う。第二の熱処理は、繊維集合体中に導電部112及び触媒部114が所望量保持されたら、400℃以上600℃以下×1時間以上5時間以下の熱処理を行う。
【0065】
上記熱処理によって、繊維集合体の内部へ導電部112及び触媒部114の構成元素が熱拡散によって浸透する。そして、繊維集合体を構成する各繊維(基体110)の表面に、触媒部114が分散して保持された導電部112が被覆される。
【0066】
・効果
実施形態1のRF電池用の電極10Aは、基体110の表面に導電部112が被覆されているため、長期に亘るRF電池1の運転において、基体110が酸化劣化し難く、RF電池1のセル抵抗率の増大を抑制できる。この導電部112には、触媒部114が分散して保持されているため、触媒部114によって電池反応性に優れ、セル抵抗率が小さいRF電池1を構築できる。つまり、実施形態1のRF電池用の電極10Aによれば、長期に亘るRF電池1の運転において、セル抵抗率が小さいRF電池1を構築できると共に、安定したRF電池システムを構築できる。
【0067】
実施形態1のRF電池用の電極10Aは、特に正極電極12(
図4を参照)に好適に利用できる。従来のように正極電極12及び負極電極14(
図4)の双方に炭素繊維の集合体を用いると、長期に亘るRF電池1の運転において、充放電に伴う副反応によって正極電極が酸化劣化し、セル抵抗率の増加を招き易い。そのため、正極電極の酸化劣化を抑制するには、RF電池1の通電電圧に例えば1.5V程度などの上限を設定する必要があった。そこで、実施形態1のRF電池用の電極10Aを正極電極12に用いることで、正極電極が酸化劣化し難いことから、RF電池1の通電電圧を1.5V超、更に1.6V以上、特に1.65V以上にまで上げることができる。
【0068】
≪実施形態2≫
実施形態1では、繊維集合体で構成される電極10Aを説明した。その他に、RF電池用の電極として、
図2に示すように、粒子の集合体を備える電極10Bとすることもできる。実施形態2のRF電池用の電極10Bは、基体110が粒子の集合体である点が実施形態1と異なり、触媒部114が分散して保持された導電部112が基体110の表面に被覆される点やその他の構成は実施形態1と同様である。
【0069】
基体110を構成する粒子は、平均粒径が3μm以上500μm以下であることが好ましい。粒子の平均粒径が3μm以上であることで、粒子を取り扱い易い。一方、粒子の平均粒径が500μm以下であることで、粒子の表面積を大きくでき、十分な電池反応を行うことができる。粒子の平均粒径は、更に10μm以上300μm以下、特に50μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0070】
基体110が粒子の集合体である電極10Bも、実施形態1と同様の製造方法によって得ることができる。具体的には、基体110及び塗布液の準備⇒塗布液を基体110の表面に塗布して熱処理を施すことによって電極10Bを得ることができる。基体110は、Ti,Ta,Nb,及びCから選択される1種以上の元素を含有する粒子の集合体であって、上記元素の粉末の成形体である。この成形体(基体110)の表面に導電部112及び触媒部114の構成元素を含有する塗布液を塗布し、熱処理を施す。この熱処理の条件は、実施形態1と同様である。この熱処理によって、成形体の内部へ導電部112及び触媒部114の構成元素が熱拡散によって浸透し、
図2の下図に示すように、粒子の集合体を構成する各粒子(基体110)の表面に、触媒部114が分散して保持された導電部112が被覆された電極10Bを得ることができる。
【0071】
〔その他のRF電池の構成部材〕
・セルフレーム
双極板160は、電気抵抗が小さい導電性材料であって、電解液と反応せず、電解液に対する耐性(耐薬品性、耐酸性など)を有するもの、例えば、炭素材と有機材とを含有する複合材料を利用できる。より具体的には黒鉛などの導電性無機材(粉末や繊維など)とポリオレフィン系有機化合物や塩素化有機化合物などの有機材とを含む導電性プラスチックなどを板状に成形したものを利用できる。枠体161は、電解液に対する耐性、電気絶縁性に優れる樹脂などで構成される。
【0072】
・隔膜
隔膜11は、例えば、陽イオン交換膜や陰イオン交換膜といったイオン交換膜が挙げられる。イオン交換膜は、(1)正極活物質のイオンと負極活物質のイオンとの隔離性に優れる、(2)電池セル100内での電荷担体であるH
+イオンの透過性に優れる、といった特性を有しており、隔膜11に好適に利用できる。公知の隔膜を利用できる。
【0073】
〔電解液〕
RF電池1に利用する電解液は、金属イオンや非金属イオンなどの活物質イオンを含む。例えば、正極活物質としてマンガン(Mn)イオン、負極活物質としてチタン(Ti)イオンを含むマンガン−チタン系電解液が挙げられる(
図3を参照)。その他、正極活物質及び負極活物質として、価数の異なるバナジウムイオンを含むバナジウム系電解液、正極活物質として鉄(Fe)イオン、負極活物質としてクロム(Cr)イオンを含む鉄−クロム系電解液などが挙げられる。電解液は、活物質に加えて、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸から選択される少なくとも1種の酸又は酸塩を含む水溶液などを利用できる。正極電解液及び負極電解液は、酸化還元電位が0.9V以上の活物質を含有することが好ましい。活物質の酸化還元電位が0.9V以上であれば、高い起電力を有するRF電池1を構築することができる。高い起電力を有するRF電池1では、充放電に伴う副反応によって正極電極12(
図3,4)が酸化劣化し易いため、実施形態1,2のRF電池用の電極10A,10Bを正極電極12に用いることによる効果をより発揮し易い。
【0074】
[試験例1]
正極電極として、種々の複合材(繊維集合体)で構成される電極を作製し、経時的な変化としてセル抵抗率を調べた。
【0075】
・試料No.1〜7
正極電極として、基体と、基体の表面に被覆される導電部と、導電部に保持される触媒部とを備える複合材で構成される電極を作製した。
【0076】
まず、基体として、表1に示す材質・繊維径・空隙率を有し、大きさが30mm×30mmで厚みが2.5mmの繊維集合体を作製した(基体No.1〜3)。この繊維集合体は、ヘキサンにより脱脂後、塩酸濃度が12mol/Lであるエッチング液を用いてエッチング処理し、その後に純水で洗浄・乾燥した。
【0077】
次に、表2に示す構成元素からなる導電部及び触媒部の原料と、有機溶媒と、安定化剤とを含有する塗布液を作製した(塗布液No.1〜5)。表2に示す構成元素の原料は、四塩化スズ、アンチモン(III)ブトキシド、三塩化ルテニウム、三塩化イリジウム、二塩化パラジウム、塩化第二白金(IV)である。有機溶媒として、塩酸を1質量%含有するイソプロパノールを用い、安定化剤としてアセチルアセトンを用いた。各原料と有機溶媒と安定化剤とを、原料:有機溶媒:安定化剤がモル比で2:10:1となるように配合し、窒素雰囲気下で1時間撹拌することで、塗布液を調整した。
【0078】
上記基体の表面に上記塗布液を刷毛塗法により塗布し、熱処理を施した。具体的には、塗布液を基体に塗布⇒導電部及び触媒部が100g/m
2程度となるまで空気中で400℃×10分の熱処理を繰り返し(第一の熱処理)、導電部及び触媒部が100g/m
2程度となった後、500℃×1時間の熱処理を行った。各試料No.1〜7における基体と塗布液との組み合わせを表3に示す。
【0082】
・試料No.101
正極電極として、基体No.1の基体を用いた。この基体の表面には、導電部及び触媒部を備えない。試料No.101の電極の目付量は。120.9g/m
2であった。
【0083】
得られた各試料について、断面を走査型電子顕微鏡及びエネルギー分散型X線分光法を利用した分析装置(SEM−EDX)を用いて調べた。その結果、全ての試料において、基体の表面に触媒部を保持する導電部が被覆されていることが確認された。また、X線回析法(XRD)で結晶構造を測定し、X線マイクロアナライザー(EPMA)で元素組成を測定することで導電部及び触媒部の存在状態を調べたところ、表4に示す結果が得られた。その結果、導電部は、Sn,Ti,Ta,Ce,In,Zn,Nb,Sb,B,及びPから選択される1種以上の元素を含有し、触媒部は、Ru,Ir,Pd,Pt,Rh,及びAuから選択される1種以上の元素を含有することがわかった。
【0085】
得られた各試料の電極において、(1)電解液に浸漬開始直後の電極を用いて、後述するセル抵抗率を測定する、(2)電解液(Mn系電解液、75℃)に14日間浸漬した電極を用いて、後述するセル抵抗率を測定することで、その差によって経時的な変化を観測した。
【0086】
〔セル抵抗率〕
上述の正極電極と、負極電極と、隔膜とを用いて、単セルの電池セルを作製した。負極電極には、試料No.101の正極電極と同様のカーボンフェルト(基体No.1)で構成されたものを用いた。電解液は、正極電解液として、活物質にマンガンイオンを含有する電解液を用いた。作製した電池セルに電流密度:70mA/cm
2の定電流で充放電を行った。この試験では、予め設定した所定の切替電圧に達したら、充電から放電に切り替え、複数サイクルの充放電を行った。各サイクルの充放電後、各試料についてセル抵抗率(Ω・cm
2)を求めた。セル抵抗率は、複数サイクルのうち、任意の1サイクルにおける充電時平均電圧及び放電時平均電圧を求め、平均電圧差/(平均電流/2)×セル有効面積とした。セル抵抗率について、表5に、(1)電解液に浸漬開始直後(浸漬日数0日)の電極を用いた場合のセル抵抗率を基準(1.00)とし、(2)電解液に14日間浸漬した電極を用いた場合のセル抵抗率の増加率を示す。
【0088】
セル抵抗率の増加率は、表5に示すように、試料No.1:約50%、試料No.2:約29%、試料No.3:約10%、試料No.4:約5%、試料No.5:約4%、試料No.6:約10%、試料No.7:約80%、試料No.101:約80%であった。この結果より、正極電極として、触媒部を保持する導電部が特定の範囲で被覆された基体を備える試料No.1〜6の電極を用いた場合、触媒部及び導電部を備えない試料No.101の電極を用いた場合や導電部に対して触媒部が多過ぎる試料No.7の電極を用いた場合に比較して、セル抵抗率を低減できることがわかった。特に、基体としてカーボンペーパーやTiペーパーなどのペーパーを用いることで、セル抵抗率を大幅に低減できることがわかった。
【0089】
[試験例2]
試料No.3について、電解液(浸漬液)の温度によるセル抵抗率の経時的な変化を観測した。具体的には、温度が45℃、55℃、65℃、75℃の各電解液に、同じ条件で作製した試料No.3の電極を84日間浸漬し、途中何度か電解液から電極を取り出して試験例1と同様の充放電試験を行うことでセル抵抗率を求めながら、経時的な変化を観測した。その結果を
図5に示す。
図5において、横軸は浸漬日数(日)で、縦軸はセル抵抗率(Ωcm
2)である。
【0090】
図5に示すように、各温度において、電解液に浸漬開始直後(浸漬日数0日)の電極を用いて測定したセル抵抗率を基準とした増減幅の平均は、45℃:約17%、55℃:約15%、65℃:約11%、75℃:約20%であり、温度依存性はほぼ見受けられなかった。電解液に84日間浸漬したとしても、触媒部を保持する導電部が被覆された基体を備えることで、基体の劣化を抑制できると共に、触媒部による電池反応性を確保でき、安定したセル抵抗率が得られることがわかった。
【0091】
[試験例3]
試料No.2,3,101の正極電極を用いてサイクル試験を行った。充放電条件は試験例1と同様である。試料No.2の結果を
図6、試料No.3の結果を
図7、試料No.101の結果を
図8に示す。各図において、横軸はサイクル時間(h)で、縦軸はセル抵抗率(Ωcm
2)である。
図6,7に示すように、触媒部を保持する導電部が被覆された基体を備える試料No.2,3の電極を用いた場合、電解液に浸漬開始直後(浸漬日数0日)の電極を用いて測定したセル抵抗率を基準として、最大でも約10%の増減幅であり、サイクル時間が経過しても安定したセル抵抗率が得られた。これは、触媒部を保持する導電部が被覆された基体を備えることで、長期に亘り基体の劣化を抑制できると共に、触媒部による電池反応性を確保できるためと思われる。一方、
図8に示すように、触媒部及び導電部を備えない試料No.101の電極を用いた場合、サイクル時間の経過と共にセル抵抗率がほぼ直線的に増加した。
【0092】
[試験例4]
試料No.3について、電極の厚みの違いによるセル抵抗率を調べた。本例では、電極の厚みは、外力が作用しない非圧縮状態であり、かつ電解液が含浸されていない状態での電極の厚みとした。具体的には、厚みが0.2mm、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.5mmの各電極について、試験例1と同様の充放電試験を行った。本例では、電解液に浸漬開始直後の電極を用いた。つまり、試験例4では、電極の厚みの違いによる初期のセル抵抗率を調べた。その結果を表6に示す。
【0094】
その結果、電極の厚みが厚いほど、導電抵抗率が増大すると共に、反応抵抗率が減少することがわかった。セル抵抗率は導電抵抗率と反応抵抗率の和で決まるため、セル抵抗率をより低減するには、電極の厚みが0.5mm以上2.5mm以下、特に1.0mm以上1.5mm以下とすることが好ましいことがわかる。
【0095】
[試験例5]
試料No.3について、基体の繊維径の違いによるセル抵抗率を調べた。本例では、基体の繊維径は、電極を切断して繊維の横断面を露出させ、顕微鏡下で5視野以上、1視野につき3本以上の繊維について測定した結果を平均した値とした。具体的には、繊維径が10μm、13μm、20μm、50μmの各電極について、試験例1と同様の充放電試験を行った。本例では、電解液に浸漬開始直後の電極を用いた。つまり、試験例5では、基体の繊維径の違いによる初期のセル抵抗率を調べた。その結果を表7に示す。
【0097】
その結果、繊維径が細いほど、セル抵抗率が低減することがわかった。導電抵抗率と反応抵抗率を見ると、導電抵抗率は繊維径によって大きな差は見られないが、反応抵抗率は繊維径が細いほど大きく減少することがわかる。これは、繊維径が細いほど、単位重量当たりの繊維の表面積を大きくでき、十分な電池反応を行うことができるからと考えられる。繊維径は、20μm以下、特に13μm以下、10μm以下とすることが好ましいことがわかる。一方、繊維径が細過ぎると、繊維の集合体の強度が低下する虞があるため、所定の強度を確保できる程度の繊維径とすればよい。
【0098】
[試験例6]
試料No.3について、基体の空隙率の違いによるセル抵抗率を調べた。具体的には、空隙率が40体積%、50体積%、70体積%、80体積%、90体積%、98体積%の基体を備える各電極について、試験例1と同様の充放電試験を行った。本例では、電解液に浸漬開始直後の電極を用いた。つまり、試験例6では、基体の空隙率の違いによる初期のセル抵抗率を調べた。その結果を表8に示す。
【0100】
その結果、空隙率が40体積%と小さ過ぎるとセル抵抗率が大きくなることがわかった。これは、空隙率が小さ過ぎると電解液の流通性が悪くなるためである。空隙率が40体積%超から大きくなると共にセル抵抗率は低減するが、空隙率が98体積%と大き過ぎるとセル抵抗率は大きくなることがわかった。これは、空隙率が大き過ぎると基体の密度が小さくなって導電性を確保できないからである。そのため、基体の空隙率は、40体積%超、更に70体積%以上、80体積%以上、特に90体積%以上で、98体積%未満とすることが好ましいことがわかる。
【0101】
[試験例7]
正極電極として、Ti粒子を含む焼結体で構成される基体と、基体の表面に被覆される導電部と、導電部に保持される触媒部とを備える複合材で構成される電極を作製し、セル抵抗率を調べた。
【0102】
まず、平均粒径100μmのTi粉末と、成形用潤滑剤とを質量比で99:1となるように配合して混合し、得られた混合粉末を金型に充填し、成形圧力4MPaで加圧圧縮し、大きさ30mm×30mmで厚みが2.5mmの成形体を作製した。この成形体を、0.5体積%水素を含むアルゴンガス雰囲気中で1000℃×1時間の熱処理を施して、Ti粒子を含む焼結体で構成された基体を作製した。この基体は、空隙率が60体積%、目付量が5000g/m
2であった。次に、この基体の表面に、試料No.1と同様の塗布液を刷毛塗法により塗布し、試験例1と同様の熱処理を施した(試料No.10)。
【0103】
得られた試料No.10について、電極の厚みの違いによるセル抵抗率を調べた。本例では、電極の厚みは、外力が作用しない非圧縮状態であり、かつ電解液が含浸されていない状態での電極の厚みとした。具体的には、厚みが0.2mm、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.5mmの各電極について、試験例1と同様の充放電試験を行った。この厚み依存性の試験では、電解液に浸漬開始直後の電極を用いた。つまり、電極の厚みの違いによる初期のセル抵抗率を調べた。その結果を表9に示す。
【0105】
その結果、電極の厚みが厚いほど、導電抵抗率が増大すると共に、反応抵抗率が減少することがわかった。セル抵抗率は導電抵抗率と反応抵抗率の和で決まるため、セル抵抗率をより低減するには、電極の厚みが0.5mm以上2.5mm以下、特に1.0mm以上1.5mm以下とすることが好ましいことがわかる。
【0106】
また、試料No.10について、厚みが1.5mmの電極を用いて試験例3と同様のサイクル試験を行った。その結果を
図9に示す。
図9において、横軸はサイクル時間(h)で、縦軸はセル抵抗率(Ωcm
2)である。その結果、基体として粒子の集合体を用いた場合であっても、各粒子の表面に触媒部を保持する導電部が被覆されていることで、電解液に浸漬開始直後(浸漬日数0日)の電極を用いて測定したセル抵抗率を基準として、最大でも約5%の増減幅であり、サイクル時間が経過しても安定したセル抵抗率が得られた。
【0107】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、基体、導電部、触媒部の各組成を特定元素及び特定範囲で変更したり、電解液の種類を変更したりできる。