(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775312
(24)【登録日】2020年10月8日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】回転体保持装置
(51)【国際特許分類】
F16C 32/06 20060101AFI20201019BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20201019BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20201019BHJP
F16C 17/04 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
F16C32/06 B
H01L21/68 A
B25J15/06 S
B25J15/06 A
F16C17/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-67281(P2016-67281)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-180623(P2017-180623A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
【審査官】
渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−205537(JP,A)
【文献】
特開昭61−179329(JP,A)
【文献】
米国特許第6703735(US,B1)
【文献】
特開2001−241439(JP,A)
【文献】
特開平8−303464(JP,A)
【文献】
特開2010−25208(JP,A)
【文献】
特開平7−19236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/00− 32/06
F16C 17/04
B25J 15/06
H02K 7/08
B23Q 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体(1)と、前記基体(1)上に配置されたプレート状の回転体(2)とを備え、
前記基体(1)は、前記回転体(2)に対向するように配置された多孔質プレート(11)と、磁極が前記回転体(2)の回転中心軸線(a)方向を向くように配置された基体側磁石(12)とを有し、
前記回転体(2)は、前記基体側磁石(12)と対向する位置に設けられた吸着部(2a)を有し、
前記多孔質プレート(11)は、前記回転体(2)側以外の面から前記回転体(2)側の面に連通する気孔を有し、
前記基体側磁石(12)及び前記吸着部(2a)は、前記回転体(2)の回転中心軸線(a)と一致する中心軸線を中心とする回転対称性を有し、
前記吸着部(2a)と前記回転体(2)の前記吸着部(2a)以外の領域とは、磁性材料で一体的に形成され、
前記吸着部(2a)には、前記回転体(2)の前記基体(1)側の面に前記回転体(2)の回転中心軸線(a)を中心として前記吸着部(2a)を囲むように吸着部形成溝(2b)が形成され、
前記回転体(2)の前記基体(1)側の面には、前記回転体(2)の縁部に向かって延び、且つ、前記回転体(2)の回転中心軸線(a)から径方向に延びる線に対して少なくとも一部において傾斜している通気溝(2c)が形成されていることを特徴とする回転体保持装置。
【請求項2】
基体(1)と、前記基体(1)上に配置されたプレート状の回転体(2)とを備え、
前記基体(1)は、前記回転体(2)に対向するように配置された多孔質プレート(11)と、磁極が前記回転体(2)の回転中心軸線(a)方向を向くように配置された基体側磁石(12)とを有し、
前記回転体(2)は、前記基体側磁石(12)と対向する位置に設けられた吸着部(2a)を有し、
前記多孔質プレート(11)は、前記回転体(2)側以外の面から前記回転体(2)側の面に連通する気孔を有し、
前記基体側磁石(12)及び前記吸着部(2a)は、前記回転体(2)の回転中心軸線(a)と一致する中心軸線を中心とする回転対称性を有し、
前記回転体(2)の前記吸着部(2a)以外の領域は、非磁性材料で形成され、
前記吸着部(2a)は、前記回転体(2)の前記基体側に設けられた凹部(2d)に配置された、前記基体側磁石(12)と異極対向する磁石、又は、磁性体で形成され、
前記回転体(2)の前記基体(1)側の面には、前記回転体(2)の縁部に向かって延び、且つ、前記回転体(2)の回転中心軸線(a)から径方向に延びる線に対して少なくとも一部において傾斜している通気溝(2c)が形成されていることを特徴とする回転体保持装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の回転体保持装置であって、
前記基体側磁石(12)は、前記回転体(2)の回転中心軸線(a)を中心とする環状に形成されていることを特徴とする回転体保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体を所定の位置で回転可能に保持する回転体保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浮上機構と拘束機構とを組み合わせることによって、保持対象とそれを保持する機構との間で摩擦力を作用させることなく、保持対象の移動や回転を行うことが可能な保持装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の保持装置では、浮上機構として、エアベアリングを採用している。そして、そのエアベアリングから保持対象に向かって気体を放出することによって、その物体を浮上させている。
【0004】
また、特許文献1に記載の保持装置では、拘束機構として、保持対象を磁性材料で形成したものや、エアベアリングと対向するように保持対象に磁性体を配置するとともに、エアベアリングの保持対象側とは反対側に磁石を配置したものを採用している。そして、磁石とエアベアリングと保持対象とを通る閉じた磁束線を形成することによって、保持対象が所定の高さ以上に浮上しないように、保持対象を拘束している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−002241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の従来の保持装置では、保持状態においては、保持対象と保持装置とは、一体的に移動や回転を行うものとして構成されている。すなわち、従来の保持装置では、保持対象と保持装置との相対的な移動や回転は、外乱によって保持対象が移動してしまった際に、保持対象が所定の高さや相対位置に復帰する場合にのみ生じていた。
【0007】
そのため、従来の保持装置では、保持対象のみを回転させようとすると、拘束機構の拘束力によって、保持対象の回転が阻害されてしまうという問題があった。また、回転を阻害しないように拘束力を弱めると、保持対象が回転した際に、保持装置に対する保持対象の相対位置が安定しなくなるという問題があった。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、保持対象である回転体を十分に拘束しつつ、保持装置である基体に対して回転体を滑らかに相対回転させることのできる回転体保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の回転体保持装置は、基体(1)と、前記基体(1)上に配置されたプレート状の回転体(2)とを備え、前記基体(1)は、前記回転体(2)に対向するように配置された多孔質プレート(11)と、磁極が前記回転体(2)の回転中心軸線(a)方向を向くように配置された基体側磁石(12)とを有し、前記回転体(2)は、前記基体側磁石(12)と対向する位置に設けられた吸着部(2a)を有し、前記多孔質プレート(11)は、前記回転体(2)側以外の面から前記回転体(2)側の面に連通する気孔を有し、前記基体側磁石(12)及び前記吸着部(2a)は、前記回転体(2)の回転中心軸線(a)と一致する中心軸線を中心とする回転対称性を有し、前記吸着部(2a)と前記回転体(2)の前記吸着部(2a)以外の領域とは、磁性材料で一体的に形成され、前記吸着部(2a)には、前記回転体(2)の前記基体(1)側の面に前記回転体(2)の回転中心軸線(a)を中心として前記吸着部(2a)を囲むように吸着部形成溝(2b)が形成され
、前記回転体(2)の前記基体(1)側の面には、前記回転体(2)の縁部に向かって延び、且つ、前記回転体(2)の回転中心軸線(a)から径方向に延びる線に対して少なくとも一部において傾斜している通気溝(2c)が形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記のように構成されている本発明の回転体保持装置では、基体(1)の多孔質プレート(11)の回転体(2)側以外の面に気体が供給されると、その気体は、多孔質プレート(11)の気孔を通じて、多孔質プレート(11)の回転体(2)側の面から(すなわち、回転体(2)に向かって)放出される。そして、回転体(2)は、その放出された気体によって押し上げられて、気体による押し上げる力と基体側磁石(12)による吸着力とが均衡している位置まで浮上する。
【0011】
その結果、回転体(2)の回転において、回転体(2)と多孔質プレート(11)との間の摩擦力が作用しなくなる。また、回転体(2)の基体(1)に対する高さが変化した際(すなわち、回転体(2)がその中心軸線(a)方向に移動した際)には、回転体(2)に対し、所定の高さまで復帰させる方向の力が加わる。
【0012】
また、本発明の回転体保持装置では、基体側磁石(12)と対向する位置に設けられ、磁性材料又は基体側磁石(12)と異極対向するように配置された磁石で形成された吸着部(2a)を有しており、その吸着部(2a)は、回転体(2)の吸着部(2a)以外の領域に対して磁気的に独立している。また、基体側磁石(12)は、磁極が回転体(2)の回転中心軸線(a)方向を向くように配置されている。そのため、基体側磁石(12)と吸着部(2a)とは、それぞれの中心軸線が一致した状態で、相互に拘束される。
【0013】
これは、上記の状態において、基体側磁石(12)、吸着部(2a)、回転体(2)の吸着部(2a)以外の領域、基体側磁石(12)の順に通る閉じた磁束線が形成されると考えられる。そして、上記の状態で、基体側磁石(12)と吸着部(2a)との間で磁束密度の極小化又は最小化が図られ、磁気エネルギーが極小値又は最小値をとなり、安定した状態となるためであると推察される。
【0014】
その結果、回転体(2)の回転中心軸線(a)(すなわち、吸着部(2a)の中心軸線)と基体側磁石(12)の中心軸線とがずれた場合には、回転体(2)に対し、それらが一致するように復帰させる方向の力が加わる。
【0015】
さらに、本発明の回転体保持装置では、基体側磁石(12)及び回転体(2)の吸着部(2a)は、その中心軸線を中心とする回転対称性を有している。そのため、基体側磁石(12)の中心軸線と回転体(2)の吸着部(2a)の中心軸線とが一致した状態では、それらの中心軸線を中心とした回転体(2)の回転運動に対する抵抗力の増大が抑えられている。
【0016】
したがって、本発明の回転体保持装置によれば、回転体(2)を、回転体(2)の回転中心軸線(a)を中心として滑らかに回転させることができる。また、本発明の回転体保持装置によれば、回転体(2)を、回転体(2)に回転中心軸線(a)方向又は回転中心軸線(a)と垂直な方向の力が加えられても、所定の位置(すなわち、回転体(2)の回転中心軸線(a)に、吸着部(2a)の中心軸線及び基体側磁石(12)の中心軸線が一致する位置であり、基体側磁石による吸着力と気体による浮上する力の釣り合う位置)まで自動的に復帰させることができる。
また、このように、回転体(2)と吸着部(2a)とを磁性材料で一体的に形成するとともに、上記のような吸着部形成溝(2b)を形成することによっても、吸着部(2a)を、回転体(2)の吸着部(2a)以外の領域に対して、磁気的に独立させることができる。その結果、部品点数を削減することができるので、回転体(2)を軽量化でき、さらに滑らかに回転体(2)を回転させることができるようになる。
【0017】
また、本発明の回転体保持装置においては、前記回転体(2)の前記基体(1)側の面には、前記回転体(2)の縁部に向かって延び、且つ、前記回転体(2)の回転中心軸線(a)から径方向に延びる線に対して少なくとも一部において傾斜している通気溝(2c)が形成されてい
る。
【0018】
このように構成すれば、多孔質プレート(11)から気体が放出された際には、その気体が通気溝(2c)に沿って回転体(2)の縁に向かって流れる。その結果、その気体から、回転体(2)に対して、回転体(2)の回転中心軸線(a)を中心として所定の方向に自転させる力が加えられるとともに、回転中心軸線(a)に対して垂直な方向に移動させる力が加えられる。
【0019】
これらの力のうち、回転中心軸線(a)に対して垂直な方向に移動させる力は、基体側磁石(12)と吸着部(2a)との間に生じる吸着力によって抑制される。その結果、回転体(2)は、気体によって浮上させられるだけではなく、回転中心軸線(a)を中心として自転するようになる。
【0024】
また、
上記目的を達成するために、本発明の回転体保持装
置は、
基体(1)と、前記基体(1)上に配置されたプレート状の回転体(2)とを備え、前記基体(1)は、前記回転体(2)に対向するように配置された多孔質プレート(11)と、磁極が前記回転体(2)の回転中心軸線(a)方向を向くように配置された基体側磁石(12)とを有し、前記回転体(2)は、前記基体側磁石(12)と対向する位置に設けられた吸着部(2a)を有し、前記多孔質プレート(11)は、前記回転体(2)側以外の面から前記回転体(2)側の面に連通する気孔を有し、前記基体側磁石(12)及び前記吸着部(2a)は、前記回転体(2)の回転中心軸線(a)と一致する中心軸線を中心とする回転対称性を有し、前記回転体(2)
の前記吸着部(2a)以外の領域
は、非磁性材料で形成され、前記吸着部(2a)は
、前記回転体(2)の前記基体側に設けられた凹部(2d)に
配置された、前記基体側磁石(12)と異極対向する磁石
、又は
、磁性体
で形成され
、前記回転体(2)の前記基体(1)側の面には、前記回転体(2)の縁部に向かって延び、且つ、前記回転体(2)の回転中心軸線(a)から径方向に延びる線に対して少なくとも一部において傾斜している通気溝(2c)が形成されていることを特徴とする。
【0025】
上記のように構成されている本発明の回転体保持装置では、基体(1)の多孔質プレート(11)の回転体(2)側以外の面に気体が供給されると、その気体は、多孔質プレート(11)の気孔を通じて、多孔質プレート(11)の回転体(2)側の面から(すなわち、回転体(2)に向かって)放出される。そして、回転体(2)は、その放出された気体によって押し上げられて、気体による押し上げる力と基体側磁石(12)による吸着力とが均衡している位置まで浮上する。
その結果、回転体(2)の回転において、回転体(2)と多孔質プレート(11)との間の摩擦力が作用しなくなる。また、回転体(2)の基体(1)に対する高さが変化した際(すなわち、回転体(2)がその中心軸線(a)方向に移動した際)には、回転体(2)に対し、所定の高さまで復帰させる方向の力が加わる。
また、本発明の回転体保持装置では、基体側磁石(12)と対向する位置に設けられ、磁性材料又は基体側磁石(12)と異極対向するように配置された磁石で形成された吸着部(2a)を有しており、その吸着部(2a)は、回転体(2)の吸着部(2a)以外の領域に対して磁気的に独立している。また、基体側磁石(12)は、磁極が回転体(2)の回転中心軸線(a)方向を向くように配置されている。そのため、基体側磁石(12)と吸着部(2a)とは、それぞれの中心軸線が一致した状態で、相互に拘束される。
これは、上記の状態において、基体側磁石(12)、吸着部(2a)、回転体(2)の吸着部(2a)以外の領域、基体側磁石(12)の順に通る閉じた磁束線が形成されると考えられる。そして、上記の状態で、基体側磁石(12)と吸着部(2a)との間で磁束密度の極小化又は最小化が図られ、磁気エネルギーが極小値又は最小値をとなり、安定した状態となるためであると推察される。
その結果、回転体(2)の回転中心軸線(a)(すなわち、吸着部(2a)の中心軸線)と基体側磁石(12)の中心軸線とがずれた場合には、回転体(2)に対し、それらが一致するように復帰させる方向の力が加わる。
さらに、本発明の回転体保持装置では、基体側磁石(12)及び回転体(2)の吸着部(2a)は、その中心軸線を中心とする回転対称性を有している。そのため、基体側磁石(12)の中心軸線と回転体(2)の吸着部(2a)の中心軸線とが一致した状態では、それらの中心軸線を中心とした回転体(2)の回転運動に対する抵抗力の増大が抑えられている。
したがって、本発明の回転体保持装置によれば、回転体(2)を、回転体(2)の回転中心軸線(a)を中心として滑らかに回転させることができる。また、本発明の回転体保持装置によれば、回転体(2)を、回転体(2)に回転中心軸線(a)方向又は回転中心軸線(a)と垂直な方向の力が加えられても、所定の位置(すなわち、回転体(2)の回転中心軸線(a)に、吸着部(2a)の中心軸線及び基体側磁石(12)の中心軸線が一致する位置であり、基体側磁石による吸着力と気体による浮上する力の釣り合う位置)まで自動的に復帰させることができる。
また、このように、吸着部(2a)と吸着部(2a)以外の領域とを別体として形成するとともに、吸着部(2a)を回転体側磁石又は磁性体で形成し、吸着部(2a)以外の領域を非磁性材料で形成することによっても、吸着部(2a)を、回転体(2)の吸着部(2a)以外の領域に対して、磁気的に独立させることができる。その結果、基体側磁石(12)からの磁力を吸着部(2a)に集中させることができるので、回転体(2)に対して加わる所定の位置に復帰させる方向の力を、さらに大きくすることができる。
また、本発明の回転体保持装置においては、前記基体側磁石(12)は、前記回転体(2)の回転中心軸線(a)を中心とする環状に形成されていることが好ましい。
このように構成すれば、磁力が集中されるので、回転体(2)に対して加わる所定の位置に復帰させる方向の力を、さらに大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態に係る回転体保持装置の概略構成を示す平面図。
【
図2】
図1の回転体保持装置のA−A断面を示す斜視図。
【
図3】
図1の回転体保持装置のB−B断面を示す斜視図。
【
図4】第1変形例〜第4変形例に係る回転体保持装置の断面図。
【
図5】第5変形例〜第8変形例に係る回転体保持装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、実施形態に係る回転体保持装置について説明する。
【0028】
図1に示すように、回転体保持装置Rは、基体1と、基体1上に配置されたプレート状の回転体2と、不図示の給気機構とを備えている。
【0029】
なお、本発明の回転体は、必ずしもプレート状である必要はなく、基体1側の面が略平坦な形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0030】
図2に示すように、基体1は、基体側プレート10と、基体側プレート10と回転体2との間に配置された多孔質プレート11と、多孔質プレート11の中央部に配置された環状の基体側磁石12とを有している。
【0031】
図3に示すように、基体側プレート10の内部には、浮上用給気経路10a及び駆動用給気経路10bが形成されている。給気機構によって供給された気体の一部は、浮上用給気経路10aを介して、多孔質プレート11の裏面に供給される。また、給気機構によって供給された気体の他の一部は、駆動用給気経路10b及び環状の基体側磁石12の孔を介して、後述する回転体2の通気溝2cに供給される。
【0032】
なお、基体側プレート10は、多孔質プレート11と一体化してもよい。また、浮上用給気経路10a及び駆動用給気経路10bの形状は、図示したものに限定されるものではない。例えば、浮上用給気経路10aは、多孔質プレート11の回転体2側の面以外の面から回転体2側の面に向かって気体を導くことのできる形状であればよい。
【0033】
多孔質プレート11は、その回転体2側以外の面から回転体2側の面に連通する微細な多数の気孔(不図示)を有している。そのため、浮上用給気経路10aを介して多孔質プレート11の裏面に気体が供給されると、その気体は、その気孔を通じて、多孔質プレート11の回転体2側の面から(すなわち、回転体2に向かって)放出される。
【0034】
基体側磁石12は、磁極が回転体2の回転中心軸線a方向を向くように配置されている。また、基体側磁石12は、その中心軸線が回転体2の回転中心軸線aと一致するように配置されている。すなわち、環状の基体側磁石12は、回転体2の回転中心軸線aを中心とする回転対称性を有している。
【0035】
回転体2は、磁性材料で形成されたプレート状の部材である。回転体2は、基体1側の面に、吸着部2aと、吸着部2aを囲むように形成された吸着部形成溝2bと、吸着部形成溝2bと回転体2の外部とを連通する複数の通気溝2cとを有している。
【0036】
吸着部2aは、基体側磁石12と対向する位置に設けられている。吸着部2aは円板状であり、その中心軸線は、回転体2の回転中心軸線aと一致している。すなわち、吸着部2aは、回転体2の回転中心軸線aを中心とする回転対称性を有している。ここで、回転体2は磁性材料で形成されているので、回転体2の一部である吸着部2aも磁性材料で形成されている。
【0037】
吸着部形成溝2bは、吸着部2aを囲むように形成されている。これにより、吸着部2aは、回転体2の吸着部2a以外の領域に対して磁気的に独立している。すなわち、回転体保持装置Rは、独立した部材を用いて吸着部を磁気的に独立させたものに比べ、部品点数が削減されている。
【0038】
なお、本発明の吸着部は、必ずしも吸着部形成溝によって磁気的に独立させなければならないものではない。例えば、後述する変形例のように、非磁性材料で形成された回転体プレートに磁石を取り付けることによって回転体を形成し、磁石を吸着部とすることによって、吸着部が回転体の吸着部以外の領域に対して磁気的に独立しているようにしてもよい。
【0039】
通気溝2cは、回転体2の縁部に向かって延び、且つ、回転体2の回転中心軸線aから径方向に延びる線に対して少なくとも一部において傾斜している。そのため、多孔質プレート11から放出された気体や駆動用給気経路10b及び環状の基体側磁石12の孔を介して供給された気体は、通気溝2cに沿って流れ、回転体2の縁部から回転体2の外部へと放出される。
【0040】
通気溝2cに沿って気体が流れる際には、その気体から、回転体2に対して、回転体2の回転中心軸線aを中心として所定の方向に自転させる力が加えられるとともに、回転中心軸線aに対して垂直な方向に移動させる力が加えられる。これらの力のうち、回転中心軸線aに対して垂直な方向に移動させる力は、基体側磁石12と吸着部2aとの間に生じる吸着力によって抑制される。
【0041】
その結果、回転体2は、気体によって浮上させられるだけではなく、回転中心軸線aを中心として自転するようになる。すなわち、回転体保持装置Rでは、給気機構と、基体側プレート10の浮上用給気経路10a及び駆動用給気経路10bと、多孔質プレート11と、基体側磁石12の孔と、通気溝2cとによって、回転駆動機構が形成されている。そのため、回転体保持装置Rでは、独立した駆動機構を設ける必要がないので、装置全体の低コスト化や小型化が実現されている。
【0042】
なお、本発明は必ずしもこのような回転駆動機構を備える必要はなく、異なる構成の回転駆動機構を用いて回転体を回転させるようにしてもよい。例えば、通気溝を1本だけ形成してもよい。また、例えば、回転体の周面に溝を設け、その部分に気体を吹き付けることによって、回転体を回転させてもよい。そのような場合には、基体側プレートの駆動用給気経路と基体側磁石の孔と通気溝を省略することができる。
【0043】
以上説明したように、回転体保持装置Rでは、給気機構によって気体が供給されると、回転体2は、その気体による押し上げる力と基体側磁石12による吸着力とが均衡している位置まで浮上する。
【0044】
その結果、回転体2の回転において、回転体2と多孔質プレート11との間の摩擦力が作用しなくなる。また、回転体2の基体1に対する高さが変化した際(すなわち、回転体2がその中心軸線a方向に移動した際)には、回転体2に対し、所定の高さまで復帰させる方向の力が加わる。
【0045】
また、回転体保持装置Rでは、基体側磁石12と対向する位置に設けられ、磁性材料で形成された吸着部2aを有しており、その吸着部2aは、前記回転体2の吸着部2a以外の領域に対して磁気的に独立している。また、基体側磁石12は、磁極が回転体2の回転中心軸線a方向を向くように配置されている。そのため、基体側磁石12と吸着部2aとは、それぞれの中心軸線が一致した状態で、相互に拘束される。
【0046】
これは、上記の状態において、基体側磁石12、吸着部2a、回転体2の吸着部2a以外の領域、基体側磁石12の順に通る閉じた磁束線が形成されると考えられる。そして、上記の状態で、基体側磁石12と吸着部2aとの間で磁束密度の極小化又は最小化が図られ、磁気エネルギーが極小値又は最小値をとなり、安定した状態となるためであると推察される。
【0047】
その結果、回転体2の回転中心軸線a(すなわち、吸着部2aの中心軸線)と基体側磁石12の中心軸線とがずれた場合には、回転体2に対し、それらが一致するように復帰させる方向の力が加わる。
【0048】
さらに、回転体保持装置Rでは、基体側磁石12及び回転体2の吸着部2aは、その中心軸線を中心とする回転対称性を有している。そのため、基体側磁石12の中心軸線と回転体2の吸着部2aの中心軸線とが一致した状態では、それらの中心軸線を中心とした回転体2の回転運動に対する抵抗力の増大が抑えられている。
【0049】
したがって、回転体保持装置Rによれば、回転体2を、回転体2の回転中心軸線aを中心として滑らかに回転させることができる。また、回転体保持装置Rによれば、回転体2を、回転体2に回転中心軸線a方向又は回転中心軸線aと垂直な方向aの力が加えられても、所定の位置(すなわち、回転体2の回転中心軸線aに、吸着部2aの中心軸線及び基体側磁石12の中心軸線が一致する位置であり、基体側磁石による吸着力と気体による浮上する力の釣り合う位置)まで自動的に復帰させることができる。
【0050】
以上、図示の実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限られるものではない。
【0051】
例えば、上記実施形態では、磁性材料で一体に形成された部材に吸着部形成溝2bを設けることによって円板状の吸着部2aを形成するとともに、基体側磁石12として環状の磁石を用いている。これにより、吸着部2aを、回転体2の吸着部2a以外の領域に対して磁気的に独立した状態としている。しかし、本発明の吸着部及び基体側磁石は、必ずしもそのような構成に限定されるものではない。
【0052】
具体的には、
図4に示す回転体保持装置R1のように、磁性材料で形成された回転体2に凹部2dを形成し、その凹部2dに円板状の回転体側磁石20を、基体側磁石12に異極対向するように配置し、その回転体側磁石20を吸着部としてもよい。このとき、凹部2dの内周面と回転体側磁石20の外周面との間には、所定の間隔を開けておくことが好ましい。
【0053】
このように構成した場合には、回転体保持装置R2のように、基体側磁石12及び回転体側磁石20として環状の磁石を用いてもよい。また、回転体保持装置R3のように、基体側磁石12及び回転体側磁石20として、円板状の磁石を用いてもよい。また、回転体保持装置R4のように、吸着部を上記実施形態と同様に円板状に形成し、基体側磁石12として、円板状の磁石を用いてもよい。
【0054】
また、
図5に示す回転体保持装置R5のように、非磁性材料で形成された回転体2に凹部2dを形成し、その凹部2dに円板状の回転体側磁石20を、基体側磁石12に異極対向するように配置し、その回転体側磁石20を吸着部としてもよい。このとき、凹部2dの内周面と回転体側磁石20の外周面とは、密着してもいてもよい。また、基体側磁石12及び回転体側磁石20を備える場合には、それらのいずれか一方を磁性体としてもよい。
【0055】
このように構成した場合には、回転体保持装置R6のように、基体側磁石12及び回転体側磁石20として環状の磁石を用いてもよい。また、回転体保持装置R7のように、基体側磁石12及び回転体側磁石20として、円板状の磁石を用いてもよい。また、回転体保持装置R8のように、基体側磁石12として、円板状の磁石を用いるとともに、回転体側磁石20として、環状の磁石を用いてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、基体側磁石12及び吸着部2aは、回転体2の回転中心軸線aを中心として回転対称性を有する円板及び円環として形成されている。これは、回転体2の回転を滑らかなものとするためである。ただし、本発明における回転対称性を有する形状とは、円板状又は環状に限定されるものではない。例えば、多角形状でもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…基体、2…回転体、2a…吸着部、2b…吸着部形成溝、2c…通気溝、2d…凹部、10…基体側プレート、10a…浮上用給気経路、10b…駆動用給気経路、11…多孔質プレート、12…基体側磁石、20…回転体側磁石、a…回転体2の回転中心軸線、R,R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8…回転体保持装置。