(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
可視光の測距光を射出し、測定点からの反射測距光の受光結果に基づき測距を行う測距部と、前記測距光を2方向間で往復走査させる光軸偏向部と、2方向間の広がり角を検出する角度検出器と、演算制御部とを具備し、前記光軸偏向部は、独立して回転可能な重なり合う一対の円板状の光学プリズムで構成され、各光学プリズムは、中心部に形成され、前記測距光を所要の偏角、所要の方向で偏向する測距光軸偏向部と、外周部に形成され、該測距光軸偏向部と同一の偏角、方向で前記反射測距光を偏向する反射測距光軸偏向部とを有し、前記演算制御部は、前記光学プリズムをそれぞれ独立して回転させ、2方向で照射される前記測距光の照射点の測距結果と、前記2方向間の広がり角とに基づき、前記照射点間の距離を演算するレーザ遠隔測長器。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0019】
先ず、
図1、
図2に於いて、本発明の第1の実施例に係るレーザ遠隔測長器について説明する。
【0020】
レーザ遠隔測長器1は、測定装置本体2と、光軸偏向部としての走査鏡3とを有している。尚、前記レーザ遠隔測長器1は、片手で携帯(ハンドヘルド)可能となっている。
【0021】
前記測定装置本体2内には、測距光射出部4、測距光受光部5、測距部6、演算制御部7が収納されると共に一体化されている。又、前記測定装置本体2の所要の位置には、操作部8、表示部9が設けられている。尚、該表示部9をタッチパネルとし、前記操作部8と兼用させてもよい。
【0022】
前記測距光射出部4は、射出光軸11を有し、該射出光軸11上に発光素子12、例えば可視光の測距光13を射出するレーザダイオード(LD)が設けられている。又、前記射出光軸11上に前記測距光13を平行光束とする投光レンズ14が設けられている。又、前記射出光軸11上に設けられた偏向光学部材としての第1反射鏡15と、本体基準軸である受光光軸16(後述)上に設けられた偏向光学部材としての第2反射鏡17とによって、前記射出光軸11は前記受光光軸16と合致する様に偏向される。
【0023】
更に、前記射出光軸11は前記走査鏡3によって直角に偏向され、測定対象物の方向に向けられる。前記走査鏡3と前記第1反射鏡15と前記第2反射鏡17とで、射出光軸偏向部が構成される。前記発光素子12から発せられた前記測距光13は、前記射出光軸偏向部を経て、測定対象物に照射される。
【0024】
前記測距光受光部5は、前記受光光軸16を有し、前記測距光受光部5には測定点(照射点)で反射された反射測距光18が前記走査鏡3を経て入射する。
【0025】
前記受光光軸16上に結像レンズ21が配設されている。又、該結像レンズ21の結像側に受光素子19、例えばフォトダイオード(PD)が設けられ、前記結像レンズ21は、前記反射測距光18を前記受光素子19に結像する。該受光素子19は前記反射測距光18を受光し、受光信号を発する。該受光信号は、前記測距部6に入力される。尚、前記第2反射鏡17は、前記測距光13を反射できる程度に前記結像レンズ21よりも径が小さくなっている。
【0026】
更に、前記受光光軸16(即ち、前記射出光軸11)上で、前記走査鏡3は前記結像レンズ21の物側に配設されている。又、前記走査鏡3は、前記受光光軸16(即ち、前記射出光軸11)を中心として回転自在となっている。
【0027】
又、前記走査鏡3の下端には被動ギア20が設けられている(
図2参照)。該被動ギア20は、モータ23の駆動軸の先端に設けられた駆動ギア22と噛合し、前記走査鏡3は前記モータ23によって回転される。前記走査鏡3の回転角は、回転角検出器、例えばエンコーダ24によって検出される。該エンコーダ24は検出信号を発し、該検出信号は前記演算制御部7に入力される。
【0028】
前記測距部6は、前記発光素子12を制御し、前記測距光13としてレーザ光線を発光させる。該測距光13は、前記第1反射鏡15と前記第2反射鏡17により前記受光光軸16上に偏向されると共に、前記走査鏡3により測定点に向う様直角に偏向される。
【0029】
測定点で反射された前記反射測距光18は、前記走査鏡3を介して前記測定装置本体2に入射し、前記結像レンズ21によって前記受光素子19に結像される。該受光素子19は、受光信号を前記測距部6に出力し、該測距部6は前記受光信号に基づき測定点の測距を行う。測定点の測距結果は、前記演算制御部7に入力される。
【0030】
該演算制御部7は、入出力制御部、演算器(CPU)、記憶部等から構成されている。該記憶部には、測距作動を制御する測距プログラム、前記走査鏡3の回転を制御する制御プログラム、任意の2点の測定点の測距結果及び2点間を往復回転する前記走査鏡3の回転角、即ち2点間の広がり角に基づき2点間の距離を演算する距離演算プログラム、前記表示部9に測距データ、距離データ等を表示させる為の表示プログラム等のプログラムが格納されている。更に、前記記憶部には、測距データ、距離データ等の測定結果が格納される。
【0031】
次に、前記レーザ遠隔測長器1による測定動作について、
図3を参照して説明する。
【0032】
先ず、前記発光素子12から前記測距光13が発せられる。該測距光13は前記投光レンズ14で平行光束とされ、前記走査鏡3を介して測定点に向けて射出される。
【0033】
測定点で反射された前記反射測距光18は、前記走査鏡3を介して前記測定装置本体2に入射され、前記結像レンズ21により前記受光素子19に集光される。尚、前記反射測距光18の光軸は、前記走査鏡3により、前記受光光軸16と合致する様に偏向される。
【0034】
尚、前記発光素子12より前記測距光13を発光させつつ、広がり角がαとなる様、前記走査鏡3を所定の回転角で往復回転させれば、
図3に示される様に、前記測距光13を直線の軌跡25で走査させることができる。往復の走査時間を視覚の残像時間以下とすることで、前記軌跡25を直線として視認させることができる。又、前記測距光13を点滅させることで、輝度を上げることができ、視認性を向上させることができる。或は、前記測距光13を前記軌跡25の両端でのみ点灯させる様にすれば、輝度を更に上げることができ、省電力化も図れる。
【0035】
構造物の天井等の測定対象物の長さを測る際には、例えば測定対象物の任意の2点をそれぞれ第1測定点26、第2測定点27とし、前記軌跡25の両端が前記第1測定点26、前記第2測定点27と一致する様、前記レーザ遠隔測長器1の方向、傾きを調整し、更に前記操作部8を介して前記走査鏡3の回転角を調整する。前記測距部6は、前記第1測定点26迄の距離A、前記第2測定点27迄の距離Bを測距し、前記エンコーダ24が検出した回転角に基づき広がり角αを求める。
【0036】
前記演算制御部7は、前記距離Aと、前記距離Bと、広がり角αを基に、前記第1測定点26と前記第2測定点27との間の距離Cを演算する。該距離Cは以下の式で求めることができる。
【0037】
C=√(A
2 +B
2 −2ABcosα)
【0038】
演算された前記距離Cは、前記表示部9に表示される。
【0039】
上述の様に、第1の実施例では、測定対象物に対して任意の2点を前記第1測定点26、前記第2測定点27として設定し、前記軌跡25の両端が前記第1測定点26、前記第2測定点27と一致する様、前記レーザ遠隔測長器1の方向と傾きと前記走査鏡3の回転角を調整することで、前記第1測定点26、前記第2測定点27間の距離を測定することができる。
【0040】
従って、作業者が測定対象物に近づくことなく非接触で2点間の距離を測定できるので、構造物の天井等、測定対象物が手の届かない位置にある場合であっても、2点間の距離測定を容易に行うことができ、又単独での作業が可能となり、作業時間の短縮が図れ、作業性を向上させることができる。
【0041】
又、可視光の前記測距光13により前記軌跡25が形成されるので、該軌跡25の両端と前記第1測定点26、前記第2測定点27との位置合せを目視により容易に行うことができ、作業性を向上させることができる。
【0042】
更に、前記レーザ遠隔測長器1は、片手で携帯(ハンドヘルド)可能であるので、該レーザ遠隔測長器1の方向と傾きの調整を容易に行うことができ、作業性をより向上させることができる。
【0043】
次に、
図4、
図5(A)、
図5(B)に於いて、本発明の第2の実施例について説明する。尚、
図4中、
図1中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
第2の実施例では、レーザ遠隔測長器1は、光軸偏向部として一対の光学プリズム28a,28bを有し、該光学プリズム28a,28bは測定装置本体2に収納されている。前記光学プリズム28a,28bは、それぞれ円板状であり、受光光軸16上に該受光光軸16と直交して配置され、重なり合い、平行に配置されている。前記光学プリズム28a,28bとしては、それぞれフレネルプリズムが用いられることが、装置を小型化する為に好ましい。
【0045】
前記光学プリズム28a,28bの中央部は、測距光13が透過する測距光軸偏向部となっており、中央部を除く部分は、反射測距光18が透過する反射測距光軸偏向部となっている。
【0046】
前記光学プリズム28a,28bとして用いられるフレネルプリズムは、それぞれ平行に形成されたプリズム要素29aと多数のプリズム要素31a、プリズム要素29bと多数のプリズム要素31bによって構成され、板形状を有する。前記プリズム要素29a,29b及び前記プリズム要素31a,31bは、同一の光学特性を有する。
【0047】
前記プリズム要素29a,29bは、前記測距光軸偏向部を構成し、前記プリズム要素31a,31bは前記反射測距光軸偏向部を構成する。
【0048】
前記フレネルプリズムは光学ガラスから製作してもよいが、光学プラスチック材料でモールド成形したものでもよい。光学プラスチック材料でモールド成形することで、安価なフレネルプリズムを製作できる。
【0049】
前記光学プリズム28a,28bは、それぞれ前記受光光軸16を中心に独立して回転可能に配設されている。
【0050】
前記光学プリズム28a,28bの外形形状は、それぞれ前記受光光軸16を中心とする円形であり、前記反射測距光18の広がりを考慮し、充分な光量を取得できる様、前記光学プリズム28a,28bの直径が設定されている。
【0051】
前記光学プリズム28a,28bは、それぞれ外周にリングギア32a,32bが形成されている。該リングギア32a,32bに噛合したピニオンギア(図示せず)を介し、それぞれモータ(図示せず)により個別に回転される様になっている。尚、該モータとしては、回転角を検出できるもの、或は駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角)を検出する回転角検出器、例えばエンコーダ等を用いてモータの回転量を検出してもよい。
【0052】
前記光学プリズム28a,28bは、それぞれ前記モータが回転方向、回転量、回転速度を独立して制御されることで、射出される前記測距光13の前記射出光軸11を任意の方向に偏向し、受光される前記反射測距光18の前記受光光軸16を前記射出光軸11と平行に偏向する。
【0053】
尚、投光レンズ14、前記測距光軸偏向部等は、投光光学系を構成し、前記反射測距光軸偏向部、結像レンズ21等は、受光光学系を構成する。
【0054】
発光素子12から発せられた可視光の前記測距光13は、前記プリズム要素29a,29b(前記測距光軸偏向部)により測定点に向う様、前記射出光軸11に沿って偏向される。
【0055】
又、測定点から反射された前記反射測距光18は、前記プリズム要素31a,31b(前記反射測距光軸偏向部)、前記結像レンズ21を介して前記測定装置本体2に入射し、前記受光素子19に受光される。該受光素子19から発せられた受光信号に基づき、測距部6は測定点の測距を行う様になっている。
【0056】
前記光学プリズム28a,28bを回転させるモータの回転角は、それぞれ演算制御部7に入力され、該演算制御部7は、前記モータの回転角に基づき、前記光学プリズム28a,28bの回転位置を演算する。更に、前記演算制御部7は、前記光学プリズム28a,28bの屈折率と回転位置とに基づき、前記測距光13の偏角、偏向方向を演算し、演算結果は前記演算制御部7内の記憶部に格納される。
【0057】
次に、第2の実施例に於ける前記レーザ遠隔測長器1の測定動作について、
図5(A)、
図5(B)を参照して説明する。
【0058】
前記プリズム要素29a,29b、前記プリズム要素31a,31bは、前記光学プリズム28aと前記光学プリズム28bの回転位置(基準位置)が一致した時に最大の偏角、例えば20°が得られる様になっている。又、前記プリズム要素29a,29b、前記プリズム要素31a,31bは、前記光学プリズム28a,28bのいずれか一方が180°回転した位置となった時に最小の偏角、即ち偏角が0°となり、射出されるレーザ光線の光軸は前記射出光軸11と平行となる。前記プリズム要素29a,29bは、例えば±20°の範囲で測定対象物或は測定対象エリアを前記測距光13で走査できる様になっている。
【0059】
前記光学プリズム28aと前記光学プリズム28bとの位置関係を固定した状態で、(前記光学プリズム28aと前記光学プリズム28bとで得られる偏角を固定した状態で)、前記光学プリズム28a,28bを一体に回転することで、該光学プリズム28a,28bを透過した前記測距光13が描く軌跡は、前記射出光軸11を中心とした円となる。
【0060】
又、
図5(A)に示される様に、前記光学プリズム28aと前記光学プリズム28bを相対回転させた場合、前記光学プリズム28aにより偏向された光軸の偏向方向を偏向Xとし、前記光学プリズム28bにより偏向された光軸の偏向方向を偏向Yとすると、前記光学プリズム28a,28bによる光軸の偏向は、該光学プリズム28a,28b間の角度差θとして、合成偏向Zとなる。
【0061】
例えば、前記光学プリズム28aと前記光学プリズム28bを逆向きに同期して等角度で等速往復回転させた場合、前記光学プリズム28a,28bを透過した前記測距光13は、直線状に走査される。従って、前記光学プリズム28aと前記光学プリズム28bを逆向きに等角度で等速往復回転させることで、
図5(A)に示される様に、前記測距光13を合成偏向Z方向に直線状の軌跡33で走査させることができる。
【0062】
更に、
図5(B)に示される様に、前記光学プリズム28aと前記光学プリズム28bを、前記射出光軸11を中心にβだけ回転させる。即ち、前記レーザ遠隔測長器1を前記射出光軸11を中心にβだけ傾けるか、或は前記光学プリズム28a,28bをβだけ一体に回転させる。この状態で、前記光学プリズム28a,28bを逆向きに同期して等角度で等速往復回転させることで、前記軌跡33に対してβ傾斜した軌跡33′が形成される。
【0063】
測定対象物の長さを測定する際には、第1の実施例と同様、測定対象物の任意の2点をそれぞれ第1測定点26、第2測定点27とし、前記軌跡33の両端が前記第1測定点26、前記第2測定点27と一致する様、前記光学プリズム28a,28bの回転角と合成偏向Z方向の傾斜角を設定する。
【0064】
前記演算制御部7は、前記第1測定点26迄の距離と、前記第2測定点27迄の距離と、前記光学プリズム28a,28bの回転角を基に演算した前記第1測定点26と前記第2測定点27間の広がり角を基に、前記第1測定点26と前記第2測定点27との間の距離を演算し、表示部9に表示する。
【0065】
第2の実施例に於いても、前記第1測定点26、前記第2測定点27間の距離を測定する際には、前記軌跡33の両端が前記第1測定点26、前記第2測定点27と一致する様、前記レーザ遠隔測長器1の方向と傾きを調整し、前記光学プリズム28a,28bの回転角を調整するだけでよい。
【0066】
従って、手の届かない位置にある測定対象物の測定を行う場合であっても、測定対象物に近づくことなく非接触で2点間の距離を測定することができ、作業性を向上させることができる。
【0067】
又、前記光学プリズム28a,28bを一体に所定角度だけ回転させることで、前記軌跡33の傾きを調整できる。従って、前記レーザ遠隔測長器1を固定した状態で、前記光学プリズム28a,28bを等速往復回転させつつ、該光学プリズム28a,28bを一体に回転させることで、前記軌跡33と前記第1測定点26、前記第2測定点27との位置合せが可能となり、作業性を向上させることができる。
【0068】
次に、
図6〜
図8に於いて、本発明の第3の実施例について説明する。尚、
図6中、
図1中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
第3の実施例は、第1の実施例に於けるレーザ遠隔測長器1に、少なくとも水平を検出可能なセンサ、例えばジンバル機構を有する姿勢検出装置34を設けた構成となっている。
【0070】
図7は、該姿勢検出装置34の詳細を示している。
【0071】
矩形枠形状の外フレーム51の内部に矩形枠形状の内フレーム53が軸受52、第1水平軸54を介し、回転自在に設けられ、前記内フレーム53の内部に傾斜検出ユニット56が軸受57、第2水平軸55を介して回転自在に設けられる。
【0072】
前記内フレーム53は前記第1水平軸54,54を中心に360゜回転自在であり、前記傾斜検出ユニット56は前記第2水平軸55を中心に360゜回転自在となっている。
【0073】
従って、前記傾斜検出ユニット56は前記外フレーム51に対して2軸方向に回転自在に支持されており、前記内フレーム53を回転自在に支持する機構、前記傾斜検出ユニット56を回転自在に支持する機構はジンバル機構を構成する。前記傾斜検出ユニット56は前記外フレーム51に対してジンバル機構を介して支持され、前記傾斜検出ユニット56は、回転の制約を受けることなく、前記外フレーム51に対して全方向に自在に回転し得る様になっている。
【0074】
前記第1水平軸54の一端部には第1被動ギア58が嵌着され、該第1被動ギア58には第1駆動ギア59が噛合している。前記外フレーム51の下面には第1モータ61が設けられている。前記内フレーム53は前記第1駆動ギア59及び前記第1被動ギア58を介して前記第1モータ61によって回転される。
【0075】
前記第1水平軸54の他端部には第1エンコーダ62が設けられ、該第1エンコーダ62は前記内フレーム53の前記外フレーム51に対する前記第1水平軸54,54を中心とする回転角を検出する。
【0076】
前記第2水平軸55の一端部には、第2被動ギア63が嵌着され、該第2被動ギア63には第2駆動ギア64が噛合している。又、前記内フレーム53の側面(図示では左側面)には第2モータ65が設けられている。前記傾斜検出ユニット56は、前記第2駆動ギア64及び前記第2被動ギア63を介して前記第2モータ65によって回転される。
【0077】
前記第2水平軸55の他端部には第2エンコーダ66が設けられ、該第2エンコーダ66は前記内フレーム53に対する前記傾斜検出ユニット56の前記第2水平軸55を中心とする回転角を検出する。
【0078】
前記第1エンコーダ62、前記第2エンコーダ66によって検出される回転角は、傾斜演算処理部68に入力される。
【0079】
前記傾斜検出ユニット56は、第1傾斜センサ71、第2傾斜センサ72を有しており、該第1傾斜センサ71、該第2傾斜センサ72からの検出信号は、前記傾斜演算処理部68に入力される。
【0080】
前記第1傾斜センサ71は水平を高精度に検出するものであり、例えば水平液面に検出光を入射させ反射光の反射角度の変化で水平を検出する傾斜検出器、或は封入した気泡の位置変化で傾斜を検出する気泡管である。又、前記第2傾斜センサ72は傾斜変化を高応答性で検出するものであり、例えば加速度センサである。
【0081】
尚、前記第1傾斜センサ71、前記第2傾斜センサ72のいずれも、前記第1エンコーダ62が検出する回転方向(傾斜方向)、前記第2エンコーダ66が検出する回転方向(傾斜方向)の2軸方向の傾斜を個別に検出可能となっている。
【0082】
前記傾斜演算処理部68は、前記第1傾斜センサ71、前記第2傾斜センサ72からの検出結果に基づき、傾斜角、傾斜方向を演算し、更に該傾斜角、傾斜方向に相当する前記第1エンコーダ62の回転角、前記第2エンコーダ66の回転角を演算する。前記第1エンコーダ62、前記第2エンコーダ66の演算結果は、演算制御部7に入力される。
【0083】
尚、前記姿勢検出装置34は、前記外フレーム51が水平に設置された場合に、前記第1傾斜センサ71が水平を検出する様に設定され、更に前記第1エンコーダ62の出力、前記第2エンコーダ66の出力が共に基準位置(回転角0゜)を示す様に設定される。
【0084】
以下、前記姿勢検出装置34の作用について説明する。
【0085】
先ず、高精度に傾斜を検出する場合について説明する。高精度に傾斜を検出する場合としては、例えば前記姿勢検出装置34が設置式の三脚に設けられた場合であり、応答性が要求されない場合である。
【0086】
前記姿勢検出装置34が傾斜すると、前記第1傾斜センサ71が傾斜に応じた信号を出力する。
【0087】
前記傾斜演算処理部68は、前記第1傾斜センサ71からの信号に基づき、傾斜角、傾斜方向を演算し、更に演算結果に基づき傾斜角、傾斜方向を0にする為の、前記第1モータ61、前記第2モータ65の回転量を演算し、前記第1モータ61、前記第2モータ65を前記回転量駆動する駆動指令を発する。
【0088】
前記第1モータ61、前記第2モータ65の駆動により、演算された傾斜角、傾斜方向の逆に傾斜する様、前記第1モータ61、前記第2モータ65が駆動され、前記第1モータ61、前記第2モータ65の駆動量(回転角)は前記第1エンコーダ62、前記第2エンコーダ66によって検出され、回転角が前記演算結果となったところで前記第1モータ61、前記第2モータ65の駆動が停止される。
【0089】
更に、前記第1傾斜センサ71が水平を検出する様、前記第1モータ61、前記第2モータ65の回転が微調整される。
【0090】
この状態では、前記外フレーム51が傾斜した状態で、前記傾斜検出ユニット56が水平に制御される。
【0091】
従って、前記傾斜検出ユニット56を水平とする為に、前記第1モータ61、前記第2モータ65により、前記内フレーム53、前記傾斜検出ユニット56を傾斜させた傾斜角、傾斜方向は、前記第1エンコーダ62、前記第2エンコーダ66で検出した回転角に基づき求められる。
【0092】
前記傾斜演算処理部68は、前記第1傾斜センサ71が水平を検出した時の、前記第1エンコーダ62、前記第2エンコーダ66の検出結果に基づき前記姿勢検出装置34の傾斜角、傾斜方向を演算する。この演算結果が、前記姿勢検出装置34の傾斜後の姿勢を示す。
【0093】
前記傾斜演算処理部68は、演算された傾斜角、傾斜方向を前記姿勢検出装置34の検出信号として前記演算制御部7に出力する。
【0094】
次に、前記姿勢検出装置34が携帯される機器に装備され、携帯された状態でデータを取得する場合の、該姿勢検出装置34の作用について説明する。
【0095】
携帯された状態では、前記姿勢検出装置34の姿勢は刻々と変化する。従って、高応答性の前記第2傾斜センサ72の検出結果に基づき、姿勢検出が行われる。
【0096】
先ず、水平状態を前記第1傾斜センサ71により検出し、その後の姿勢変化を高応答性の前記第2傾斜センサ72により求め、該第2傾斜センサ72からの検出結果に基づき姿勢検出をする様に制御すれば、前記姿勢検出装置34の傾斜角、傾斜方向をリアルタイムで検出することが可能となる。
【0097】
更に、前記傾斜検出ユニット56、前記内フレーム53の回転を制約するものがなく、前記傾斜検出ユニット56、前記内フレーム53は共に360゜以上の回転が可能である。即ち、前記姿勢検出装置34がどの様な姿勢となろうとも(例えば、該姿勢検出装置34の天地が逆になった場合でも)、全方向での姿勢検出が可能である。
【0098】
従って、傾斜センサの測定範囲の制限がなく、広範囲、全姿勢での姿勢検出が可能である。
【0099】
高応答性を要求する場合は、前記第2傾斜センサ72の検出結果に基づき姿勢検出が行われるが、該第2傾斜センサ72は前記第1傾斜センサ71に比べ検出精度が悪いのが一般的である。
【0100】
高精度の該第1傾斜センサ71と高応答性の前記第2傾斜センサ72を具備し、該第2傾斜センサ72による検出結果を前記第1傾斜センサ71の検出結果で較正することで、前記第2傾斜センサ72のみの検出結果に基づき高精度の姿勢検出が可能となる。
【0101】
更に、前記第2傾斜センサ72が検出した傾斜角、傾斜方向に基づき、該傾斜角、傾斜方向が0になる様に前記第1モータ61、前記第2モータ65を駆動し、更に前記第1傾斜センサ71が水平を検出する迄前記第1モータ61、前記第2モータ65の駆動を継続する。前記第1傾斜センサ71が水平を検出した時の前記第1エンコーダ62、前記第2エンコーダ66の値、即ち実際の傾斜角と前記第2傾斜センサ72が検出した傾斜角との間で偏差を生じれば、該偏差に基づき前記第2傾斜センサ72の傾斜角を較正することができる。
【0102】
従って、予め、前記第2傾斜センサ72の検出傾斜角と、前記第1傾斜センサ71による水平検出と前記第1エンコーダ62、前記第2エンコーダ66の検出結果に基づき求めた傾斜角との関係を取得しておけば、前記第2傾斜センサ72に検出された傾斜角、傾斜方向の較正(キャリブレーション)をすることができ、前記第2傾斜センサ72による高応答性での姿勢検出の精度を向上させることができる。
【0103】
又、前記演算制御部7は、傾斜の変動が大きい時、傾斜の変化が速い時は、前記第2傾斜センサ72からの信号に基づき、前記第1モータ61、前記第2モータ65を制御する。又、前記演算制御部7は、傾斜の変動が小さい時、傾斜の変化が緩やかな時、即ち前記第1傾斜センサ71が追従可能な状態では、該第1傾斜センサ71からの信号に基づき、前記第1モータ61、前記第2モータ65を制御する。
【0104】
尚、前記演算制御部7の記憶部には、前記第1傾斜センサ71の検出結果と前記第2傾斜センサ72の検出結果との比較結果を示すデータテーブルである対比データが格納されている。前記第2傾斜センサ72からの信号に基づき、前記第1モータ61、前記第2モータ65を制御する場合、前記演算制御部7は前記対比データに基づき前記第2傾斜センサ72による検出結果を較正する。この較正により、該第2傾斜センサ72による検出結果を前記第1傾斜センサ71の検出精度迄高めることができる。よって、前記姿勢検出装置34による姿勢検出に於いて、高精度を維持しつつ高応答性を実現することができる。
【0105】
演算された前記第1エンコーダ62の回転角、前記第2エンコーダ66の回転角を合成することで、傾斜角と傾斜方向が演算される。該傾斜角と傾斜方向は、前記姿勢検出装置34が取付けられる測定装置本体2の、鉛直に対する傾斜角、傾斜方向に対応する。
【0106】
第3の実施例では、前記姿勢検出装置34により水平を検出できるので、
図8に示される様に、X軸、Z軸を水平方向の2軸、Y軸を鉛直方向の軸とすると、水平に対する前記測定装置本体2の2方向の傾きγ2 、γ3 を検出することができる。更に、該傾きγ2 、γ3 を基に、鉛直(Y軸)に対する前記測定装置本体2の傾きの方向及び傾きγ1 を演算により求めることができる。
【0107】
従って、任意の2点の測定点が同一水平線上にない場合、前記姿勢検出装置34の検出結果に基づき、2点間の測距光の軌跡の水平に対する傾斜角を求めることができる。又、傾斜角と2点間の距離に基づき、2点間の水平距離と2点間の鉛直距離を求めることができる。
【0108】
更に、前記レーザ遠隔測長器1と測定点との間の斜距離を測定し、該斜距離と前記姿勢検出装置34により検出された傾斜角とに基づき、前記レーザ遠隔測長器1と測定点との間の水平距離と鉛直距離とを測定することができる。
【0109】
第3の実施例では、前記測定装置本体2の傾斜に拘わらず、2点の測定点間の水平距離と鉛直距離とを測定可能である。従って、前記レーザ遠隔測長器1を水平に保持し、走査鏡3の回転角(偏角)を180°とし、床と天井とをそれぞれ測定点とした場合、床と天井との間の鉛直距離を測定することができる。又、前記レーザ遠隔測長器1を鉛直に保持し、前記走査鏡3の回転角を180°とし、壁と壁とをそれぞれ測定点とした場合、壁と壁の間の水平距離を測定することができる。
【0110】
更に、前記レーザ遠隔測長器1の鉛直に対する傾きγ1 と水平に対する傾きγ2 、γ3 を検出可能であるので、前記レーザ遠隔測長器1が傾斜していた場合でも、検出した傾きγ2 、γ3 に基づき測定値を較正することで、床と天井との鉛直距離、壁と壁との水平距離を測定することができる。
【0111】
図9(A)は、測定対象物30、例えば構造物の床30aと正面壁30bとの境界に位置する測定点を第1測定点26とし、天井30cと前記正面壁30bとの境界に位置する測定点を第2測定点27とし、前記レーザ遠隔測長器1により前記第1測定点26、前記第2測定点27間の鉛直距離を測定した場合を示している。
【0112】
前記第1測定点26と前記第2測定点27との間の距離を測定した際の、前記レーザ遠隔測長器1の鉛直に対する傾斜角が前記姿勢検出装置34で検出される。検出された傾斜角に基づき前記床30aと前記天井30cの真の鉛直距離(
図9(A)中破線矢印で示す)を測定することができる。即ち、任意の姿勢で、前記床30aと前記正面壁30bとの境界線上の任意の測定点と、前記天井30cと前記正面壁30bとの境界線上の任意の測定点を測定することで、前記床30aと前記天井30cとの間の正確な鉛直距離を測定することができる。
【0113】
又、
図9(A)では、前記走査鏡3の回転角(偏角)を180°とすることなく、即ち該走査鏡3を反転させることなく、前記床30aと前記天井30cとの間の鉛直距離を測定することができる。
【0114】
図9(B)は、前記正面壁30bと側壁30d,30eとの境界に位置する測定点をそれぞれ第1測定点26、第2測定点27とし、前記レーザ遠隔測長器1により前記第1測定点26、前記第2測定点27間の水平距離を測定した場合を示している。
【0115】
図9(B)に示す場合、前記第1測定点26と前記第2測定点27との間の距離を測定した際の、前記レーザ遠隔測長器1の水平に対する傾斜角が前記姿勢検出装置34で検出される。検出された傾斜角に基づき前記側壁30d,30e間の真の水平距離(
図9(B)中破線矢印で示す)を測定することができる。
【0116】
又、前記走査鏡3の回転角(偏角)を180°とすることなく、即ち該走査鏡3を反転させることなく、前記側壁30dと前記側壁30eとの間の水平距離を測定することができる。
【0117】
更に、
図10に於いて、前記測定対象物30の倒れ測定を行う場合について説明する。前記床30aと前記正面壁30bと前記側壁30dとの交点を第1測定点26、前記天井30cと前記正面壁30bと前記側壁30dとの交点を第2測定点27とし、前記第1測定点26と前記第2測定点27との間で測距光13を往復走査させた場合、該測距光13の軌跡は前記正面壁30bと前記側壁30dとの境界線と一致する。
【0118】
ここで、鉛直線(Y軸)に対する前記軌跡の傾きを前記姿勢検出装置34で検出することで、前記測定対象物30の鉛直に対する倒れを測定することができる。
【0119】
又、該測定対象物30の前記天井30cと前記正面壁30bと前記側壁30eとの交点を第1測定点26′、前記天井30cと前記正面壁30bと前記側壁30dとの交点を前記第2測定点27とし、前記第1測定点26′と前記第2測定点27との間で前記測距光13を往復走査させた場合、該測距光13の軌跡は前記測定対象物30の前記天井30cと前記正面壁30bとの境界線と一致する。
【0120】
ここで、水平線(X軸)に対する前記軌跡の傾きを前記姿勢検出装置34で検出することで、前記測定対象物30の水平に対する倒れを測定することができる。
【0121】
次に、
図11に於いて、本発明の第4の実施例について説明する。尚、
図11中、
図4、
図6中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0122】
第4の実施例は、第2の実施例に於けるレーザ遠隔測長器1に、少なくとも水平を検出可能なセンサ、例えば姿勢検出装置34を設けた構成となっている。
【0123】
第4の実施例に於いても、該姿勢検出装置34により、水平2方向に対する測定装置本体2の傾きγ2 、γ3 (
図8参照)、鉛直に対する該測定装置本体2の傾きγ1 (
図8参照)を検出することができる。
【0124】
従って、任意の2点の測定点が同一水平線上にない場合、前記姿勢検出装置34の検出結果に基づき、2点間の測距光の軌跡の水平に対する傾斜角を求めることができる。又、傾斜角と2点間の距離に基づき、2点間の水平距離と2点間の鉛直距離を求めることができる。
【0125】
更に、前記レーザ遠隔測長器1と測定点との間の斜距離を測定し、該斜距離と前記姿勢検出装置34により検出された傾斜角とに基づき、前記レーザ遠隔測長器1と測定点との間の水平距離と鉛直距離とを測定することができる。
【0126】
尚、第3の実施例と同様に、床と壁との境界を第1測定点26(
図9(A)参照)とし、天井と壁との境界を第2測定点27(
図9(A)参照)とし、前記第1測定点26、前記第2測定点27間の距離を測定することで、前記レーザ遠隔測長器1を用いて床と天井との間の鉛直距離を測定することができる。
【0127】
同様に、正面壁と側壁との境界をそれぞれ第1測定点26(
図9(B)参照)、第2測定点27(
図9(B)参照)とし、前記第1測定点26、前記第2測定点27間の距離を測定することで、前記レーザ遠隔測長器1を用いて側壁と側壁との間の水平距離を測定することができる。
【0128】
次に、
図12に於いて、本発明の第5の実施例について説明する。
【0129】
第5の実施例では、測定装置本体2にビーム操作部35を設け、該ビーム操作部35は前記測定装置本体2の前後方向にスライド可能となっている。又、該測定装置本体2は、前記ビーム操作部35のスライドの変位を検出する変位検出器36を具備している。前記ビーム操作部35をスライドさせると、前記変位検出器36がスライドの変位を検出し、検出結果は演算制御部7(
図1参照)に入力される。該演算制御部7は、スライドの変位に対応して、測距光13の広がり角を増減する。即ち、第1測定点26、第2測定点27間の軌跡25の長さが拡大及び縮小される。
【0130】
例えば、前記ビーム操作部35を第1の実施例、第3の実施例に適用した場合、該ビーム操作部35のスライドにより、走査鏡3(
図1参照)の往復回転角の増加及び減少が可能となる。
【0131】
又、前記ビーム操作部35を第2の実施例、第4の実施例に適用した場合、該ビーム操作部35のスライドにより、光学プリズム28a,28b(
図4参照)の往復回転角の増加、減少が可能となる。
【0132】
第5の実施例では、前記ビーム操作部35のスライドだけで、前記軌跡25の長さの拡大及び縮小が可能となるので、該軌跡25の両端と前記第1測定点26、前記第2測定点27の位置合せを目視により容易に行うことができ、作業性を向上させることができる。
【0133】
尚、第5の実施例では、前記ビーム操作部35を前後にスライド可能な構成としているが、例えば表示部9(
図1参照)をタッチパネルとし、該表示部9上でのスライド動作により前記軌跡25の長さを拡大及び縮小させる様にしてもよい。
【0134】
又、前記測定装置本体2に撮像部を別途設け、前記表示部9に表示される撮像結果を基に、前記ビーム操作部35により前記軌跡25の長さを拡大及び縮小させてもよい。