【文献】
井須 尚紀 ほか,動揺不快感に伴う皮膚電気現象,航空宇宙技術研究所報告880号,日本,航空宇宙技術研究所,1985年,p.1-17,ISSN:0389-4010
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者は、鋭意研究の結果、人に吐き気が生じている場合に、ガルヴァニック皮膚反応の代表的な信号の1つである皮膚導電率反応(Skin Conductance Response:SCR)に特定の揺らぎが生じることを見出し、本発明である吐き気検出装置および吐き気検出方法を発明するに至った。SCRは、ガルヴァニック皮膚反応の代表的な信号の1つであって皮膚電気抵抗の逆数である皮膚導電率レベル(Skin Conductance Level:SCL)の1回差分から求められる。
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)による吐き気検出装置および吐き気検出方法について
図1から
図11を用いて説明する。
【0014】
[本発明の第1実施形態に係る吐き気検出装置]
図1は本発明の第1実施形態に係る吐き気検出装置を説明するための構成図である。
図1に示すように、本実施形態による吐き気検出装置100は、吐き気検出の対象者(以下、単に「対象者」と称する場合がある)のガルヴァニック皮膚反応を計測しガルヴァニック皮膚反応データを出力するガルヴァニック皮膚反応検出部110と、ガルヴァニック皮膚反応検出部110から入力されたガルヴァニック皮膚反応データに基づいて対象者に吐き気が生じているか否かを検出する吐き気検出部150とを備える。なお、本例では、ガルヴァニック皮膚反応データとして、ガルヴァニック皮膚反応の代表的な信号の1つであるSCRデータに基づいて吐き気が生じているか否かを検出する吐き気検出装置および吐き気検出方法を説明する。
【0015】
ガルヴァニック皮膚反応検出部110は、対象者の手首の内側の皮膚電気抵抗を測定することでその逆数であるSCLを計測し、SCLの1回差分であるSCRを導出できる構成であればよい。ガルヴァニック皮膚反応検出部110としては、皮膚電気抵抗センサ111を備えたリストバンド型のGSR(Galvanic Skin Response)センサが用いられる。皮膚電気抵抗センサ111は2つの電極間の皮膚電気抵抗を測定するセンサである。皮膚電気抵抗センサ111の電極のサイズは小さく(例えば、直径が10ミリメートル程度)、対象者の手首に装着可能である。このため、文献1にあるような心電図と胃電図を測定するための電極を胸部から腹部に掛けて対象者に装着させる方法と比べて、容易に対象者に検出装置を装着させることができる。
【0016】
また、GSRセンサがSCLの計測を行う際、手首の親指側を走行する橈骨動脈や小指側を走行する尺骨動脈の脈拍に伴い、電極と皮膚との接触不良のノイズ(モーションアーチファクト)によってSCLの値に揺らぎが生じる場合がある。この脈拍による揺らぎは、吐き気の検出には無関係なノイズであるので、吐き気の検出時には排除する必要がある。脈拍による揺らぎは、最高で220回/分(1波長あたり272ミリ秒)であるとされる。そこで、ガルヴァニック皮膚反応検出部110は、220回/分、すなわち3.7Hzの揺らぎを捉えるため、サンプリング定理(ナイキスト周波数)に基づき、少なくとも7.4Hz以上のサンプリング周波数で皮膚電気抵抗を測定する。ガルヴァニック皮膚反応検出部110のサンプリング周波数が少なくとも7.4Hz以上であれば、脈拍による揺らぎを捉えてその影響を排除することができる。これにより、吐き気検出部150において、脈拍による揺らぎと吐き気に由来する揺らぎとを区別することができる。そこで、ガルヴァニック皮膚反応検出部110として用いるGSRセンサは、20Hzのサンプリング周波数、すなわち50ミリ秒間隔でSCLを計測するようになっている。
【0017】
SCLの値には、個人差がある。また、SCLの値は、計測環境の気温や湿度によっても変化する。そこで、ガルヴァニック皮膚反応検出部110は、SCLデータの1回差分を求め、これをSCRデータとして吐き気の検出に用いる。これにより、吐き気の検出時において、計測環境等を要因とする温熱性発汗による電気抵抗の低下等の影響を低減することができる。
【0018】
また、ガルヴァニック皮膚反応検出部110は、上述の脈拍による影響を排除するため、1回差分を求める2つのSCLデータの時間間隔を、脈拍による揺らぎの1波長の長さ、すなわち脈拍による揺らぎの周期よりも短くする必要がある。一方、SCRデータの変化を感度良く捉えるべく1回差分を求める2つのSCLデータの時間間隔は可能な限り大きく取ることが望ましい。
【0019】
ガルヴァニック皮膚反応検出部110のサンプリング周波数は20Hz、すなわち、SCLの計測間隔は50ミリ秒である。このため、ガルヴァニック皮膚反応検出部110では、1回差分を求める2つのSCLデータの時間間隔が脈拍による揺らぎの最短周期272ミリ秒よりも短い200ミリ秒に設定されている。200ミリ秒は4サンプル分に相当するので、n番目(nは自然数)に計測されたSCLデータをS
nとすると、ガルヴァニック皮膚反応検出部110は、4サンプル前との差分(S
n−S
n−4)を求めてSCRデータを導出する。
【0020】
また、GSRセンサの中には、皮膚の分極防止のために電極に印加する電圧の極を常時切り替える機能(チョッパ制御)を持つものもある。この場合、ガルヴァニック皮膚反応検出部110は、チョッパ制御の態様に応じて2つのSCLデータの1回差分として、200ミリ秒差分の2個移動平均「(S
n+S
n−1−S
n-4−S
n−5)÷2」を用いるのが好適である。ここでS
n−5は5サンプル前のSCLデータであり、S
nとの時間間隔は250ミリ秒である。SCLの計測間隔が50ミリ秒であるときに、250ミリ秒は脈拍による揺らぎの最短周期272ミリ秒以下との制約における限界値となる。
【0021】
ここで、
図2を用いて、ガルヴァニック皮膚反応検出部110におけるSCLデータおよびSCRデータの具体例を示す。
【0022】
図2は、所定の映像の視聴によって映像酔いの状態にある20代女性(対象者α)を計測したデータである。本例では、対象者αにヘッドマウントディスプレイを装着させて所定の映像を視聴させた直後に対象者αが吐き気を訴えてから、12分間に亘って吐き気が収まっていく間、手首の内側にガルヴァニック皮膚反応検出部110(GSRセンサ)を当ててSCLを計測した。対象者αに試聴させた所定の映像は、産業技術総合研究所・人間情報研究部門・感覚知覚情報デザイン研究グループに機械システム振興協会から電子情報技術産業協会(JEITA)への委託事業として、2010年に映像酔いの研究がなされたときに作成された映像である。
【0023】
図2(a)は、ガルヴァニック皮膚反応検出部110が計測した対象者αのSCLの時間変化を示すグラフである。
図2(a)の横軸は、ガルヴァニック皮膚反応検出部110による対象者αのSCLの計測時間(単位:分)を示している。縦軸は、SCLの値(単位:マイクロジーメンス)を示している。
図2(a)にはGSRセンサによるSCLの計測を開始してから12分間のSCLの値の変化が示されている。
図2(a)に示すように、SCLは、計測開始時点では高い値であり、時間を経るごとに低い値へ遷移する。SCLは、皮膚電気抵抗の逆数である。したがって、
図2(a)に示すグラフは、映像の試聴直後では対象者αの皮膚電気抵抗が低く、時間を経るごとに皮膚電気抵抗が高くなっていく様子を表している。
【0024】
また、
図2(b)から
図2(d)は、ガルヴァニック皮膚反応検出部110がSCLデータの1回差分を求めることで導出したSCRデータの揺らぎを示すグラフである。
図2(b)は、
図2(a)に示す0分目から1分目の1分間に対応する区間ΔT1におけるSCRデータの揺らぎを示すグラフであり、
図2(c)は、
図2(a)に示す2分目から3分目の1分間に対応する区間ΔT2におけるSCRデータの揺らぎを示すグラフであり、
図2(d)は、
図2(a)に示す11分目から12分目の1分間に対応する区間ΔT3におけるSCRデータの揺らぎを示すグラフである。
図2(b)から
図2(d)の横軸は、時間(単位:分)を示している。横軸の各目盛の間隔は、0.1分すなわち6秒間隔となっている。また縦軸は、SCRデータの値を示している。SCRデータの値を示す数値は、
図2(a)に示すSCLの200ミリ秒あたりの変化量を1000倍した値であり、本発明のSCRデータのグラフでは、単位はナノジーメンス/200ミリ秒である。
【0025】
ガルヴァニック皮膚反応検出部110はSCRデータを導出すると吐き気検出部150へ出力する。
【0026】
詳しくは後述するが、吐き気検出部150は、ガルヴァニック皮膚反応検出部110からSCRデータの入力を受けると、所定時間内(例えば、1分間)のSCRデータの揺らぎに基づいて吐き気の検出を行う。
【0027】
図2(b)から
図2(d)に示すように、対象者αを計測して得られたSCLデータに基づいて導出されたSCRデータには、揺らぎが生じる。より具体的には、SCRデータの揺らぎは、対象者αが映像を試聴した直後が最も大きく(
図2(b)参照)、時間を経るごとにSCRデータの揺らぎが小さくなる(
図2(c)および
図2(d)参照)。また、対象者αの主観評価は、SCLの計測開始直後の区間ΔT1および区間ΔT2については、「吐き気あり」であり、
図2(d)に示す計測開始後11分目から12分目の区間ΔT3については、「吐き気なし」であった。このように、SCRデータの揺らぎと対象者αの主観評価は一致するので、SCRデータの揺らぎを用いることで吐き気を検出することができる。
【0028】
図1に戻って、吐き気検出部150の詳細について説明する。
図1に示すように、本実施形態による吐き気検出部150は、所定時間内(例えば1分間)におけるSCRデータの揺らぎの回数を計測する揺らぎ回数計測部151と、揺らぎ回数計測部151が計測した揺らぎ回数が第1の閾値より多く、第2の閾値よりも少ない場合に、吐き気が生じていると判定する判定部153とを有する。このように、吐き気検出部150は、SCRデータの揺らぎの回数に基づいて、対象者に吐き気が生じているか否かを検出する。
【0029】
揺らぎ回数計測部151は、所定時間内(例えば、1分間)あたりのSCRデータの揺らぎの回数を計測する。揺らぎ回数計測部151は、例えばSCRデータの揺らぎの特徴点(極大値、極小値、符号が変じる点)を計測することにより、1分間におけるSCRデータの揺らぎの回数を計測する。ノイズが含まれるSCRデータにおいては、正数(または負数)が連続する区間の数をカウントするとともにそれぞれの区間の長さの平均を求め、例えば区間の長さが平均の半分未満になる区間は、ノイズとみなしてカウントした総数から除く工夫が有用である。また、SCRデータの揺らぎの特徴点として符号が正から負に転じる点に着目してもよい。この場合、所定時間内(例えば、1分間)の特徴点の間隔の長さ(時間)を大きい(長い)順に並べ、大きい(長い)方から10個の和を求め、例えばこの和が40秒であれば、1分÷40秒×10回=15回/分を計測回数としてもよい。
【0030】
図2(b)から
図2(d)に示すようなSCRデータの揺らぎには、吐き気以外の要因がノイズとして含まれる場合がある。例えば、ガルヴァニック皮膚反応検出部110において計測されたSCLにメイヤー波(Mayer波、マイヤー波とも称する)や脈拍の情報が含まれ、ノイズとなる場合がある。このノイズによる影響を排除するために、判定部153には、メイヤー波の周期に基づいて決定された第1の閾値と、人間の脈拍の周期に基づいて決定された第2の閾値が設定されている。なお、周期とは同じ現象が繰り返される場合にその現象1回あたりに要する時間であり、周期の逆数である周波数に変換したり、所定時間内にその現象が繰り返される回数に変換したりして取り扱うことができる。判定部153は、揺らぎ回数計測部151が計測したSCRデータの揺らぎの回数が、第1の閾値より多く第2の閾値よりも少ない場合に吐き気が発生していると判定する。なお、情動によってもSCRデータは変化するがその発生は単発的である。本発明は、類似の波形が2回以上繰り返されるSCRデータの揺らぎを吐き気の検出対象としているので、情動によるSCRデータの変化はおのずと排除されることになる。
【0031】
メイヤー波は、心電図における低周波成分(LF成分)と定義される0.04〜0.15Hzの周波数を持つ波である。0.15Hzは1分間に9回の揺らぎである。したがって、第1の閾値は、少なくとも10回以上/分であれば、メイヤー波によるSCRデータの揺らぎを吐き気によるSCRデータの揺らぎと区別して排除することができる。
【0032】
また、相対的に心肺機能が高いと想定されるスポーツ選手の脈拍は、0.5Hz程度と報告されている。0.5Hzは1分間に30回の揺らぎである。したがって、第2の閾値は、少なくとも30回未満/分であれば、脈拍によるSCRデータの揺らぎを吐き気によるSCRデータの揺らぎと区別して排除することができる。
【0033】
このため、判定部153には、第1の閾値として10回/分が設定され、第2の閾値として29回/分が設定されている。したがって、判定部153は、1分間当たりのSCRデータの揺らぎの回数が10回から29回の範囲内であれば、対象者に吐き気が発生していると判定することができる。
【0034】
このように、本実施形態による吐き気検出装置100は、所定時間内におけるSCRデータの揺らぎの回数を計測するという簡易な方法によって、メイヤー波の揺らぎおよび脈拍の揺らぎを吐き気による揺らぎと区別して排除することができるので、吐き気検出の精度を向上することができる。
【0035】
次に、
図3および
図4を用いて、判定部153がSCRデータを用いて吐き気の有無を判定する方法について説明する。まず、
図3を用いて、判定部153がSCRデータに基づいて動揺病に基づく吐き気の有無を判定する方法について説明する。
【0036】
図3は、吐き気検出装置100によって計測された対象者βのSCLデータおよびSCRデータの値を示す図である。本例では、吐き気検出の対象者β(40代男性)を回転する椅子に脚を投げ出させて座らせ、第3者が対象者βの脚を押して10周回転させる動作を3回実施した直後に対象者βが吐き気を訴えてから、12分間に亘って吐き気が収まっていく間、対象者βの手首の内側にガルヴァニック皮膚反応検出部110(GSRセンサ)を当ててSCLを計測した。
【0037】
より具体的には、
図3(a)は、ガルヴァニック皮膚反応検出部110が計測した対象者βのSCLの時間変化を示すグラフである。また、
図3(b)から
図3(d)はSCRデータの揺らぎを示すグラフである。
図3(b)は、
図3(a)に示す0分目から1分目の1分間に対応する区間ΔT1におけるSCRデータの揺らぎを示すグラフであり、
図3(c)は、
図3(a)に示す2分目から3分目の1分間に対応する区間ΔT2におけるSCRデータの揺らぎを示すグラフであり、
図3(d)は、
図3(a)に示す11分目から12分目の1分間に対応する区間ΔT3におけるSCRデータの揺らぎを示すグラフである。なお、
図3に示すグラフの横軸および縦軸は、
図2と同様であるため、説明は省略する。
【0038】
吐き気検出装置100の吐き気検出部150は、ガルヴァニック皮膚反応検出部110からSCRデータが入力されると、所定時間内(例えば、1分間)のSCRデータの揺らぎに基づいて吐き気の検出を行う。1分間分のSCRデータが蓄積されると、揺らぎ回数計測部151は、1分間におけるSCRデータの揺らぎの回数を計測する。揺らぎの回数の計測方法は上述のとおり複数あるが、本例では、正数のSCRデータが連続する区間からノイズ区間を除いた残りの区間の数をカウントする計測方法を用いる。
なお、常に1分間ずつのSCRデータで判定する必要はない。例えば、第1の閾値である10回/分を周期に換算すると6秒であるが、直近の6秒間のSCRデータの最大値と最小値の差の絶対値が閾値(例えば、5ナノジーメンス/200ミリ秒)を超えないことを以てこの6秒間はSCRデータに揺らぎがないと判定して評価対象から除外してもよい。閾値を超えた場合はこの6秒間のSCRデータを含めてここから1分間のSCRデータを蓄積し通常通りの評価を行う。この方法であれば、吐き気によるSCRデータの揺らぎがない状態が続いている間は6秒ずつの簡便な判定方法で処理を軽くすることができ、複雑で処理の重い判定方法を行わずに済む。以降の説明ではこの方法は用いず、通常の1分間のSCRデータを用いる判定方法についてのみ説明する。
【0039】
図3(b)の例では、区間ΔT1におけるSCRデータの揺らぎの回数は、正数区間Pb1から正数区間Pb23の区間23回/分である。判定部153は、SCRデータの揺らぎの回数が第1の閾値(10回/分)以上、第2の閾値(29回/分)以下であるか否かによって、対象者βに吐き気が生じているか否かを判定する。
図3(b)の例では、揺らぎ回数計測部151が計測する区間ΔT1におけるSCRデータの揺らぎの回数は23回/分であって揺らぎの回数が第1の閾値から第2の閾値の範囲内である。したがって、判定部153は、区間ΔT1において対象者βに吐き気が生じていると判定する。
【0040】
同様に、
図3(c)の例では、区間ΔT2におけるSCRデータの揺らぎの回数は、正数区間Pc1から正数区間Pc21の区間21回/分である。判定部153は、揺らぎの回数が第1の閾値から第2の閾値の範囲内であるため、区間ΔT2において対象者βに吐き気が生じていると判定する。
【0041】
図3(d)の例では、区間ΔT3におけるSCRデータの揺らぎの回数は、正数区間Pd1、正数区間Pd2の区間2回/分である。判定部153は、揺らぎの回数が第1の閾値から第2の閾値の範囲外であるため、区間ΔT3において対象者βに吐き気が生じていないと判定する。
【0042】
また、対象者βの主観評価は、
図3(a)に示すSCLの計測開始直後の区間ΔT1および区間ΔT2については、「吐き気あり」であり、
図3(a)に示す計測開始後11分目から12分目の区間ΔT3については、「吐き気なし」であった。このように、本実施形態の吐き気検出装置100は、対象者βの動揺病に基づく吐き気を検出することができる。
【0043】
次に、
図4を用いて、判定部153がSCRデータを用いてアルコール摂取に起因する吐き気の有無を判定する方法について説明する。
図4は、吐き気検出の対象者γ(50代男性)のガルヴァニック皮膚反応を計測して得られたSCLデータに基づいて導出されたSCRデータの揺らぎを示すグラフである。
図4(a)は、対象者γがガルヴァニック皮膚反応の計測の前夜にアルコールを摂取して酩酊状態となっており、計測時にはいわゆる二日酔いの状態にあった対象者γのSCRデータの揺らぎを示すグラフである。より詳細には、
図4(a)は、対象者γが二日酔いの状態で起床し放尿後の35分目から1分間のSCRデータの揺らぎを示すグラフである。また、
図4(b)は、計測の前夜にアルコールを摂取していない状況で起床し放尿後の35分目から1分間のSCRの揺らぎを示すグラフである。
図4(a)、
図4(b)の横軸および縦軸は、
図3(b)から
図3(d)と同様である。なお、SCLの計測時において対象者γは仰臥状態で皮膚電気抵抗センサ111を装着した手首を布団の上に載せて安静にしており、横隔膜や肺の伸縮によるモーションアーチファクトのノイズが皮膚電気抵抗センサ111の信号に混入しにくい計測環境であった。
【0044】
図4(a)の例では、1分間におけるSCRデータの揺らぎの回数は、正数区間Pa1から正数区間Pa16の区間16回/分である。これにより、判定部153は、揺らぎの回数が第1の閾値から第2の閾値の範囲内であるため、対象者γに吐き気が生じていると判定する。
【0045】
図4(b)の例では、1分間におけるSCRデータの揺らぎの回数は、正数区間Pb1の区間1回/分である。これにより、判定部153は、揺らぎの回数が第1の閾値から第2の閾値の範囲外であるため、対象者γに吐き気が生じていないと判定する。
【0046】
また、対象者γの主観評価は、
図4(a)に示すSCRデータの揺らぎが取得された区間については、「吐き気あり」であり、
図4(b)に示すSCRデータの揺らぎが取得された区間については、「吐き気なし」であった。このように、本実施形態の吐き気検出装置100は、対象者γのアルコール摂取に起因する吐き気を検出することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の吐き気検出装置100は、判定部153がSCRデータの揺らぎの回数が第1の閾値から第2の閾値の範囲内であるか否かを判定するという簡易な方法により、対象者の種々の要因に基づく吐き気を検出することが可能である。
【0048】
[本発明の第2実施形態に係る吐き気検出装置]
図5は本発明の第2実施形態に係る吐き気検出装置を説明するための構成図である。詳しくは後述するが、第2実施形態による吐き気検出装置200は、連続する2つの区間におけるSCRデータの相関関係から吐き気検出の対象者に生じている吐き気を検出する。第2実施形態による吐き気検出装置200は、吐き気検出部250の構成が第1実施形態による吐き気検出装置100における吐き気検出部150と異なる。
【0049】
より具体的には、吐き気検出装置200が備える吐き気検出部250は、ガルヴァニック皮膚反応検出部110が導出したSCRデータを時系列順に連続したデータとして記憶する記憶部251と、所定数の連続するSCRデータである第1取得データ群と、第1取得データ群に続く前記所定数と同数の連続するSCRデータである第2取得データ群とを記憶部251から取得する取得部253と、第1取得データ群と第2取得データ群とを用いて相関係数を算出する相関係数算出部255と、相関係数算出部255が算出した相関係数が所定の閾値以上である場合に、対象者に吐き気が生じていると判定する判定部257とを有する。
【0050】
記憶部251は、例えば、吐き気検出部250に設けられたメモリ等の記憶領域である。ガルヴァニック皮膚反応検出部110は50ミリ秒ごとに2つのSCLデータの1回差分(例えば、200ミリ秒差分)を求めてSCRデータを導出し、吐き気検出部250へ出力する。記憶部251には、ガルヴァニック皮膚反応検出部110から50ミリ秒ごとに連続して入力されるSCRデータが時系列順に連続して記憶される。
【0051】
取得部253は、記憶部251から時系列順に第1取得データ群および第2取得データ群を取得する。第2取得データ群において先頭となるSCRデータは、第1取得データ群において最後尾となるSCRデータの直後に入力されたデータである。しかしながら、突発的なノイズ信号を排除したり、2つのデータ群のそれぞれのピーク信号の相対的な位置を合わせるべく微調整する等の目的で、第1取得データ群と第2取得データ群とが連続せず、2つのデータ群の一部が重なったり若干離れたりしても相関係数の評価に影響しなければ適宜工夫してよい。
【0052】
また、第1取得データ群および第2取得データ群のデータ数は、SCRデータの揺らぎの間隔に相当する。また、本実施形態では、例えば、第1取得データ群および第2取得データ群のデータ数がそれぞれ100である場合、第1取得データ群と第2取得データ群には、それぞれ連続する5秒間に亘って入力されたSCRデータが含まれる。
【0053】
また、相関係数算出の対象となる第1取得データ群および第2取得データ群のデータ数を時間に換算したときにその長さがメイヤー波または脈拍の周期と一致すると、相関係数算出部255による相関係数算出の際に、第1取得データ群と第2取得データ群の相関が高いという結果が導出される可能性がある。この場合、判定部257は、実際は吐き気が生じていないにもかかわらず、対象者に吐き気が生じていると判定するおそれがある。そこで、取得部253が取得する第1取得データ群および第2取得データ群のデータ数を時間に換算した長さは人間の脈拍の周期よりも長く且つメイヤー波の周期よりも短くする。すなわち、取得部253が取得する第1取得データ群および第2取得データ群のデータ数は、人間の脈拍の周期をデータ数に換算した数の最大値よりも大きく且つメイヤー波の周期をデータ数に換算した数の最小値よりも小さくするのである。
【0054】
より具体的に説明すると、第1取得データ群および第2取得データ群を形成するSCRデータは、50ミリ秒ごとにガルヴァニック皮膚反応検出部110から吐き気検出部250へ入力される。ここで、50ミリ秒ごとに入力されるSCRデータを1サンプルと定義する。したがって、例えば100サンプルのSCRデータが含まれるデータ群には、5秒間(=50ミリ秒×100)に連続して入力されたSCRデータが含まれる。
【0055】
上記第1実施形態と同様に、メイヤー波は0.04〜0.15Hzであるため、最短で6.7秒間隔(0.15Hz)の揺らぎとなる。また、脈拍の最小値を30回/分とすると、脈拍は最長で2秒間隔(0.5Hz)の揺らぎとなる。したがって、2秒以下の隣接する2つの区間のSCRデータに相関があれば脈拍によるものである可能性があり、6.7秒以上の隣接する2つの区間のSCRデータに相関があればメイヤー波によるものである可能性がある。
【0056】
したがって、吐き気検出装置200では、第1取得データ群および第2取得データ群のデータ数は、データ数を時間に換算したときの長さが2秒より長く、6.7秒より短いものを対象とする。2秒より長くとは40サンプルより多くということであり、6.7秒より短くとは134サンプルより少なくということである。したがって、第1取得データ群および第2取得データ群に含まれるSCRデータの数の範囲は41サンプルから133サンプルとなる。ここではメイヤー波と脈拍の影響を排除する方法を説明するために41サンプルから133サンプルの範囲を用いたが、脈拍には当然に個人差があるので、対象者の実態に合わせて調整してもよい。例えば、後述する対象者の呼吸数に応じた数で第1取得データ群および第2取得データ群に含まれるSCRデータの数の範囲を調整してもよい。
【0057】
相関係数算出部255は、時間的に連続する2つの区間におけるSCRデータの集合(第1取得データ群、第2取得データ群)を用いて、相関係数を算出する。具体的には、相関係数算出部255は、41サンプルから133サンプルの範囲の同数のSCRデータを含む第1取得データ群および第2取得データ群を用いて、相関係数を算出する。
【0058】
例えば、2組の数値からなるデータ列{(xi,yi)}(i=1,2,・・・,n)が与えられたとき、相関係数は、以下のように求められる。
【数1】
【0059】
判定部257は、相関係数算出部255によって求められた時間的に連続する2つの区間におけるSCRデータの集合(第1取得データ群、第2取得データ群)の相関係数が閾値以上であるときに、対象者に吐き気が生じていると判定する。本実施形態による吐き気検出装置200おいて、相関係数と比較する閾値は、例えば0.8である。なお、一般的に2つのデータ群について相関係数が0.7以上であるときに、この2つのデータ群には高い相関があるとされる。
【0060】
吐き気検出部250では、例えば、対象者について最新のSCRデータ(ガルヴァニック皮膚反応検出部110から入力され、最後に記憶部251に記憶されたSCRデータ)から遡って266サンプル(133サンプル×2)が記憶部251に記憶されると、相関係数による吐き気の有無を判定する一連の処理(相関判定処理)を開始する。相関判定処理では、当該266サンプルの先頭(当該266サンプルの中で最も過去に記憶部251に記憶されたデータ)を起点として、まず、取得部253が連続する41サンプルのSCRデータを記憶部251から取得して第1取得データ群とし、それに続く41サンプルのSCRデータを記憶部251から取得して第2取得データ群とする。次に、相関係数算出部255が第1取得データ群と第2取得データ群とを用いて相関係数の算出を行い、判定部257が相関係数が閾値以上であるか否かを判定する。本例では当該266サンプルの先頭を起点として評価する例を示すが、最新のSCRデータを起点として過去に向かって遡る方法を用いてもよい。
【0061】
吐き気検出部250は、第1取得データ群および第2取得データ群に含まれるデータ数を41サンプルから始めて133サンプルまで1サンプルずつ増加させながら、相関判定処理を繰り返す。吐き気検出部250は、第1取得データ群に含まれるデータ数が133サンプルに達しても、判定部257によって相関係数が閾値以上であると判定されない場合は処理を終了し、吐き気が生じていないとの判定結果を出力する。また、吐き気検出部250は、判定部257によって相関係数が閾値以上であると判定されると、133サンプルに達していなくても処理を終了し、吐き気が生じているとの判定結果を出力する。その後、新たなSCRデータが入力されると、再び266サンプル遡ったデータを起点として相関判定処理を実行する。ここではSCRデータが入力される度に吐き気の有無を判定する処理を行う方法を説明したが、一定間隔(例えば、1分)ごとに処理を行ってもよい。また、例えば直近の6秒間のSCRデータの最大値と最小値の差の絶対値が閾値を超えないことを以てSCRデータに揺らぎがないと判定して相関判定処理の対象としない工夫を施すのは第1実施形態において説明したのと同様である。
【0062】
次に、
図6を用いて、判定部257が相関係数算出部255によって求められた相関係数を用いて吐き気を検出する方法について説明する。
【0063】
図6(a)の上段は、
図4(a)に示すのと同じ対象者γのSCRデータの揺らぎを示すグラフである。また、
図6(a)の下段は、
図6(a)の上段に示すグラフの横軸における35.3分付近から35.5分付近の区間のSCRデータの揺らぎを拡大して示す図である。
図6(a)の下段のグラフの横軸は、SCRデータのデータ数であり、縦軸はSCRデータの値(単位はナノジーメンス/200ミリ秒)である。SCRデータの入力間隔は50ミリ秒間隔であるので、
図6(a)の下段のグラフでは、241サンプルすなわち12.05秒間におけるSCRデータの揺らぎが示されている。
【0064】
図6(b)は、第1取得データ群および第2取得データ群のそれぞれに含まれるSRCデータのデータ数と、相関係数算出部255によって算出された相関係数との対応を表形式で表す図である。「データ数(単位:サンプル)」欄には第1取得データ群および第2取得データ群のそれぞれに含まれるSCRデータのデータ数が記載されている。
【0065】
また、「相関係数」欄には、相関係数算出部255が「データ数」欄に記載されたデータ数のSCRデータを含む第1取得データ群と第2取得データ群とを用いて算出した相関係数の値が記載されている。
図6(b)に示す表には、対象者γについて相関係数算出部255が算出した41サンプルから80サンプルまでのデータ数とそれに対応する相関係数が合計40個記載されている。なお、本例では、データ数80サンプルにおいて初めて相関係数が閾値(0.8)以上となり相関判定処理が終了されるため、データ数81サンプルからデータ数133サンプルに対応する相関係数は算出されない。したがって、
図6(b)にはデータ数81サンプル以降についてデータ数およびデータ数と対応する相関係数は記載していない。
【0066】
まず、
図6(b)に示す40個の相関係数データのうち、第1取得データ群と第2取得データ群とにそれぞれ含まれるSCRデータのデータ数が41サンプルの区間における相関係数について説明する。
吐き気検出部250において、相関係数を用いて吐き気を検出するにあたり、まず取得部253が記憶部251から41サンプルのSCRデータを取得して第1取得データ群とし、第1取得データ群に続く41サンプルのSCRデータを取得して第2取得データ群とする。より詳細には、第1取得データ群には、
図6(a)下段のグラフの横軸に示す区間S41aの41サンプル(記憶部251の先頭から1番目のデータから41番目のデータ)のSCRデータが含まれる。また、第2取得データ群には、区間S41bの41サンプル(記憶部251の先頭から42番目のデータから82番目のデータ)のSCRデータが含まれる。
図6(a)下段に示すように、区間S41aと区間S41bとは隣り合う連続した区間である。また、
図6(b)に示すように、第1取得データ群と第2取得データ群とにそれぞれ含まれるデータ数が41サンプルであるとき、相関係数算出部255が算出する相関係数は、「−0.25」である。相関係数「−0.25」は、閾値「0.8」未満であるので、判定部257は閾値を超えていないと判定して、吐き気検出部250は処理を継続する。
【0067】
同様にして、第1取得データ群と第2取得データ群とにそれぞれ含まれるデータ数がNサンプル(Nは1以上の自然数)であるとき、第1取得データ群には記憶部251の先頭から1番目のデータからN番目のデータが含まれ、第2取得データ群には記憶部251の先頭からN+1番目のデータからN+N番目のデータが含まれる。そして相関係数算出部255が相関係数を算出し、その値が閾値「0.8」未満であるとき、判定部257は閾値を超えていないと判定して、吐き気検出部250は処理を継続する。
図6(b)に示すように、Nが41サンプルから79サンプルまでは閾値「0.8」未満であるから吐き気検出部250は処理を継続する。
【0068】
そして、
図6(a)に示すように隣り合う連続した区間である区間S80a(記憶部251の先頭から1番目のデータから80番目のデータ)と区間S80b(記憶部251の先頭から81番目のデータから160番目のデータ)とをそれぞれ第1取得データ群と第2取得データ群として用いたとき、すなわち、データ数が80サンプルであるとき、(
図6(b)に示すように)相関係数算出部255が算出する相関係数は、「0.84」である。ここで、相関係数「0.84」は閾値「0.8」以上であるため、判定部257は閾値を超えていると判定し、吐き気検出部250は吐き気が生じているとの判定結果を出力する。閾値以上と判定される相関係数が1つでも生じれば133サンプルまで相関判定処理を継続する必要がないので、吐き気検出部250は、データ数が81サンプル以降の相関係数の算出は実施せずに相関判定処理を終了し、次のSCRデータの入力を待つ。なお、上述したように、
図6(a)上段に示す区間において対象者γの主観評価は、「吐き気あり」である。
【0069】
このようにして、吐き気検出部250は、ガルヴァニック皮膚反応検出部110から入力されたSCRデータについて、隣り合う2つのデータ群における相関係数を算出し、相関判定処理によってこの相関係数が閾値以上であるか否かを判定し、相関係数が閾値以上であるときのデータ群に含まれるデータ数を時間に換算したものがSCRデータの揺らぎの間隔であり、吐き気検出の対象者に吐き気が生じているか否かを判定することができる。また、判定部257によって閾値以上と判定される相関係数が1つでも生じれば吐き気検出部250は対象者に吐き気が生じているとの判定結果を出力し相関判定処理を終了する。このように、閾値以上と判定される相関係数が1つでも生じれば133サンプルまで相関判定処理を継続する必要がないので、吐き気検出装置200では、吐き気検出の際の処理負荷を軽減することができる。なお、ここでは隣り合う2つのSCRデータのデータ群について相関があるか否かを相関係数を用いて判定したが、これに限られない。例えば、吐き気検出装置200は、相関係数を用いずに、連続する特徴点(極大値、極小値、符号が変じる点)の2つの間隔の長さが一致することを以て相関ありと判定し、その長さが41サンプルから133サンプルの範囲にあることを以て対象者に吐き気が発生していると判定してもよい。
【0070】
[本発明の第3実施形態に係る吐き気検出装置]
図7は、本発明の第3実施形態に係る吐き気検出装置を説明するための構成図である。本発明の発明者は、鋭意研究の結果、人に吐き気が生じている場合にSCRデータの揺らぎと呼吸とが相関することを発見した。そこで、第3実施形態による吐き気検出装置300は、吐き気の検出にSCRデータと呼吸データとを用いる。吐き気検出装置300は、吐き気の検出に呼吸データが用いられる点で第1実施形態および第2実施形態による吐き気検出装置と異なる。
【0071】
第3実施形態による吐き気検出装置300は、対象者の呼吸情報を含む生体信号を計測して生体信号データを出力する生体信号計測部310と、生体信号計測部310から入力された生体信号データに含まれる呼吸情報を抽出して呼吸データを出力する呼吸情報抽出部330と、を備え、吐き気検出部350は、ガルヴァニック皮膚反応検出部110から入力されたSCRデータと、呼吸情報抽出部330から入力された呼吸データとに基づいて対象者に吐き気が生じていることを検出する。ガルヴァニック皮膚反応検出部110は、第1実施形態による吐き気検出装置100におけるのと同様の構成を有している。
【0072】
生体信号計測部310は、対象者の呼吸情報を含む生体信号が計測できる構成であればよい。生体信号計測部310としては、例えば、ICレコーダやヘッドセットマイクのように対象者の呼吸音を録音することが可能な装置が用いられる。例えばICレコーダやヘッドセットマイクの録音部を対象者の鼻先にセットすることで、対象者の呼吸音を録音して呼吸情報を含む生体信号を計測することができる。生体信号計測部310は、対象者を計測して得られた呼吸情報を含む生体信号データを呼吸情報抽出部330に出力する。
【0073】
また、対象者の胸回りまたは横隔膜周辺の腹回りに張りまわしたワイヤーを生体信号計測部310として用いることもできる。この場合、対象者の呼吸時におけるワイヤーの張力の変化を計測することによって呼吸情報を含む生体信号を計測することができる。
【0074】
呼吸情報抽出部330は、生体信号計測部310から入力された生体信号データを解析し、呼吸情報を抽出して呼吸データを出力する。ここで、呼吸データとは、例えば所定時間内(例えば、1分間)における呼吸回数、呼吸間隔、呼吸周期、呼吸頻度等の呼吸情報を表すデータをいう。呼吸情報抽出部330は呼吸データを吐き気検出部350に出力する。
【0075】
吐き気検出部350では、ガルヴァニック皮膚反応検出部110から入力されたSCRデータと、呼吸情報抽出部330から入力された呼吸データとに基づいて対象者の吐き気を検出する。吐き気検出部350は、SCRデータと呼吸データとを用いて、SCRデータの揺らぎと対象者の呼吸の揺らぎとが一致しているか否かによって対象者の吐き気を検出する。SCRデータに加えて呼吸データを吐き気の検出に用いることで、SCRデータの揺らぎが、メイヤー波や脈拍によって引き起こされる皮膚電気抵抗センサ111の電極と皮膚との接触不良によるノイズ(モーションアーチファクト)ではない、あるいはメイヤー波や脈拍に起因する生体反応としての揺らぎではないと判定できる。
【0076】
本実施形態による吐き気検出装置300は、例えば所定時間内におけるSCRデータの揺らぎ回数と対象者の呼吸回数とが一致しているか否かによって、対象者の吐き気を検出する。
より具体的には、吐き気検出装置300の呼吸情報抽出部330は生体信号計測部310から入力された生体信号データに含まれる呼吸情報の1つである呼吸回数を抽出する。また、吐き気検出部350は揺らぎ回数計測部151と判定部353とを有し、判定部353は、揺らぎ回数計測部151が計測したガルヴァニック皮膚反応データの揺らぎ回数と呼吸回数とが一致した場合に、対象者に吐き気が生じていると判定する。この揺らぎ回数計測部151は、第1実施形態による吐き気検出装置100におけるのと同様の構成を有し、例えばSCRデータの揺らぎの特徴点(極大値、極小値、符号が変じる点)を計測することにより、所定時間内(例えば、1分間)におけるSCRデータの揺らぎの回数を計測する。
【0077】
判定部353は、揺らぎ回数計測部151が計測した所定時間内におけるSCRデータの揺らぎ回数と、呼吸情報抽出部330から入力された呼吸データである所定時間内の呼吸回数とが一致した場合に、対象者に吐き気が生じていると判定する。本実施形態では、SCRデータの揺らぎの回数に対して呼吸回数が±1の範囲までをSCRデータの揺らぎ回数と呼吸回数が一致していると定義する。これは、SCRデータおよび呼吸データは生体から計測されるデータであって、ガルヴァニック皮膚反応検出部110や生体信号計測部310での計測誤差を考慮したためである。具体的には、呼吸間隔は必ずしも一定でないことから、ガルヴァニック皮膚反応検出部110と生体信号計測部310とで計測のタイミングがずれると、計測される回数に±1の計測誤差が生じる場合がある。
【0078】
このように、本実施形態による吐き気検出装置300では、SCRデータの揺らぎと呼吸データの揺らぎとが一致しているか否かによって吐き気の有無を判定することで、SCRデータの揺らぎがノイズやメイヤー波および脈拍といった吐き気以外の要因による揺らぎではないことを明確にすることができる。さらに、単発的に発生する情動に起因するSCRデータの変化も同様に排除できる。これにより、吐き気検出装置300は吐き気の検出精度を向上させることができる。
【0079】
[本発明の第4実施形態に係る吐き気検出装置]
図8は、本発明の第4実施形態に係る吐き気検出装置を説明するための構成図である。第4実施形態による吐き気検出装置400は、吐き気の検出にSCRデータと呼吸データとを用いる点で第3実施形態による吐き気検出装置300と共通するが、吐き気検出部450の構成が第3実施形態による吐き気検出装置300の吐き気検出部350と異なる。
【0080】
具体的には、吐き気検出装置400において、呼吸情報抽出部330は、生体信号データに含まれる呼吸情報の1つである所定時間内の呼吸間隔の推移を抽出する。また、吐き気検出部450は、ガルヴァニック皮膚反応検出部110から入力されたSCRデータを記憶する記憶部451と、所定時間内におけるSCRデータの揺らぎの間隔の推移を記憶部451に記憶されたSCRデータから抽出するガルヴァニック皮膚反応揺らぎ間隔抽出部453と、所定時間内における呼吸間隔の推移とSCRデータの揺らぎの間隔の推移とが一致した場合に、対象者に吐き気が生じていると判定する判定部455とを有する。
【0081】
呼吸情報抽出部330は、例えば生体信号計測部310から入力された生体信号データに含まれる呼吸情報である呼吸間隔を抽出し、所定時間内(例えば、1分間)における呼吸間隔の推移を表す時間列(例えば、4.0秒−3.4秒−3.6秒−4.2秒−4.0秒−4.3秒−3.9秒−3.6秒−3.2秒−3.5秒−3.5秒−3.8秒−3.8秒−4.0秒−3.9秒)を呼吸データとして吐き気検出部450に出力する。
【0082】
記憶部451は、吐き気検出部450に設けられたメモリ等の記憶領域である。記憶部451には、ガルヴァニック皮膚反応検出部110から入力されたSCRデータが記憶されている。
【0083】
ガルヴァニック皮膚反応揺らぎ間隔抽出部453は、記憶部451に記憶されているSCRデータから所定時間内(例えば、1分間)におけるSCRデータの揺らぎの間隔を抽出する。この所定時間は、呼吸情報抽出部330が呼吸間隔を抽出したのと同じ時点を起点とする同じ時間である。また、SCRデータの揺らぎの間隔とは、SCRデータの揺らぎの特徴点(極大値、極小値または符号が変じる点)の間隔をいう。本実施形態におけるガルヴァニック皮膚反応揺らぎ間隔抽出部453では、例えば負数のSCRデータが連続する区間からノイズ区間を除いた残りの区間ごとに、それぞれのSCRデータの最小値を極小値として抽出する。ガルヴァニック皮膚反応揺らぎ間隔抽出部453は、抽出した各極小値を持つSCRデータが取得された時間間隔を求めることで、SCRデータの揺らぎの間隔の推移を表す時間列(例えば、4.0秒−3.4秒−3.6秒−4.2秒−4.0秒−4.3秒−3.9秒−3.6秒−3.2秒−3.5秒−3.5秒−3.8秒−3.8秒−4.0秒−3.9秒)を取得する。
【0084】
判定部455は、上述のようにして取得されたSCRデータの揺らぎの間隔の推移を表す時間列と呼吸間隔の推移を表す時間列の要素の数が一致し、かつ各時間列の対応する要素同士の値が一致した場合に、対象者に吐き気が生じていると判定する。ただし、呼吸間隔は必ずしも一定ではないので、判定部455は、SCRデータの揺らぎの間隔の推移を表す時間列と呼吸間隔の推移を表す時間列との対応する要素同士の値の差異が予め決められた範囲であれば、両者は一致していると判定する。また、計測のタイミングによっては要素が1つずつずれている可能性がある。例えば呼吸間隔の推移を表す時間列が「4.0秒−3.4秒−3.6秒−4.2秒−4.0秒−4.3秒−3.9秒−3.6秒−3.2秒−3.5秒−3.5秒−3.8秒−3.8秒−4.0秒−3.9秒」の15要素で、SCRデータの揺らぎの間隔の推移を表す時間列が「3.4秒−3.6秒−4.2秒−4.0秒−4.3秒−3.9秒−3.6秒−3.2秒−3.5秒−3.5秒−3.8秒−3.8秒−4.0秒−3.9秒−5.0秒」の15要素であると仮定する。このとき、呼吸間隔の推移を表す時間列の最初の要素(4.0秒)を1つ削除すれば残りの14要素がSCRデータの揺らぎの間隔の推移を表す時間列の冒頭14要素と一致する。したがって、この場合は対象者に吐き気が生じていると判定する。逆に、SCRデータの揺らぎの間隔の推移を表す時間列の最初の要素を1つ削除して評価を行う場合もある。また、時間列の要素ごとの比較を行わず、単純に時間列に含まれる要素の平均値を算出して、この平均値を比較してもよい。しかし、この場合、ノイズによる影響を排除する機能が低減され、吐き気の検出精度が下がる可能性がある。
【0085】
また、本実施形態においてガルヴァニック皮膚反応揺らぎ間隔抽出部453は、SCRデータの揺らぎの特徴点として極小値を抽出しているが、これに限られない。ガルヴァニック皮膚反応揺らぎ間隔抽出部453は、SCRデータの揺らぎの他の特徴点(極大値または符号が変じる点)を抽出し、その特徴点のデータが取得された時間間隔の推移を表す時間列と、呼吸間隔の推移を表す時間列とを比較評価することにより、吐き気の有無を判定してもよい。ガルヴァニック皮膚反応揺らぎ間隔抽出部453では、SCRデータの揺らぎの間隔の推移を表す時間列さえ求められればよい。本実施形態による吐き気検出装置400はSCRデータの揺らぎが呼吸の揺らぎに相関することを以て吐き気ありと判定するものであるから、これらの特徴点に限らず、1回の呼吸において1回だけ現れるSCRデータの特徴点であれば、どのような特徴点であってもよい。また、SCRデータの揺らぎの間隔を取得する際に、複数のSCRデータの揺らぎの特徴点の中から1つに固定する必要はない。複数の特徴点全てについてそれぞれSCRデータの揺らぎの間隔の推移と呼吸間隔の推移とが一致するか否かの判定を行い、最も呼吸間隔の推移を表す時間列に合致した判定結果を最終の判定結果として吐き気の検出に用いてもよい。また、後述する
図9上段に示すSCRデータのように、ノイズ(例えば、脈拍)の影響が大きい場合には、判定に用いる所定時間内のSCRデータの平均値が負数であれば負数のSCRデータが連続する区間に着目するのが有利であり、平均値が正数であれば正数のSCRデータが連続する区間に着目するのが有利であることは自明である。
【0086】
ここで、
図9を用いてSCRデータの揺らぎの時間間隔の推移を表す時間列と呼吸間隔の推移を表す時間列の具体例を示す。
【0087】
図9の上段は、
図4(a)に示すのと同じ対象者γのSCRデータの揺らぎを示すグラフである。また、
図9の下段は、上段に示す対象者γのSCRデータと同時に計測された生体信号(対象者γの呼吸音)を表す図である。本例では、生体信号計測部310としてICレコーダを用い、仰臥状態の対象者γの顔の近傍にICレコーダを置いて対象者γの鼻息(呼吸音)を録音した。
図9の下段の図は、このようにして録音した対象者γの呼吸音を周波数ごとに分解したデータを示しており、横軸が時間、縦軸が周波数(単位:Hz)を示している。
図9の下段の図における白い点状画像の塊は対象者γの呼気の区間に相当する。したがって、白い点状画像の塊の現れる間隔がすなわち呼吸間隔を示している。いびきをかく人や口で呼吸する人がいるので、この白い点状画像の塊の現れ方には個人差があるが、呼吸間隔を計測できることには変わりはない。また、
図9ではSCRデータの揺らぎの間隔と呼吸間隔とが同期して変化することを示すべく複数の直線を引いているが、SCRデータの揺らぎの極小値のタイミングと呼気の開始のタイミングそのものが常に一致することを示すものではない。
【0088】
図9に示すように、35分目から36分目までの1分間におけるSCRデータの極小値のデータの間隔の推移と、対象者γの呼吸間隔の推移とは一致している。また、
図9に示す区間における対象者γの主観評価は「吐き気あり」である。このように、本実施形態による吐き気検出装置400は、SCRデータの揺らぎの間隔の推移を表す時間列と呼吸間隔の推移を表す時間列とが一致しているか否かを判定するという方法により、SCRデータの揺らぎの間隔の推移に基づいて吐き気検出の対象者の吐き気を検出することができる。
【0089】
(変形例)
上記第1実施形態において、吐き気検出部150は、揺らぎ回数計測部151によって計測された所定区間におけるSCRデータの揺らぎの回数を吐き気の検出に用いていたが、これに限られない。所定時間内における揺らぎの回数は、揺らぎの周波数と同等である。このため、例えば、吐き気検出部150は、フーリエ解析によって求めたSCRデータの揺らぎの周波数が0.15Hzより高く0.5Hzより低い場合に、対象者に吐き気が発生していると判定してもよい。ただし、呼吸周期は必ずしも安定しておらず、さらに吐き気に起因して対象者の呼吸が不安定になる場合があることから、フーリエ解析によって求めたSCRデータの揺らぎの周波数ごとのノルム(振幅、エネルギー)のピーク値が2つ以上現れる場合がある。したがって、フーリエ解析によって求められるSCRデータの揺らぎの周波数を用いて吐き気を検出する場合、ピーク値は第2候補まで採用してよい。
【0090】
図10(a)から
図10(c)は、
図2(a)に示す区間ΔT1、区間ΔT2および区間ΔT3における対象者αのSCRデータ(
図2(b)から
図2(d)参照)をフーリエ解析して求めたSCRデータの揺らぎの周波数を表すグラフである。具体的には、
図2に示す区間ΔT1、区間ΔT2および区間ΔT3それぞれにおけるSCRデータ1200サンプルの中の冒頭の1024サンプルに対してフーリエ解析を行ったグラフである。
図10(a)から
図10(c)の縦軸はノルム(単位:スカラー)、横軸は周波数(単位:Hz)を示す。
図10(a)
図10(b)に示すように、区間ΔT1および区間ΔT2では、SCRデータの揺らぎの周波数のピーク値が2つ現れている。
図10(a)に示すように、区間ΔT1では第1候補のピーク値Pk1が0.27Hz、第2候補のピーク値Pk2が0.21Hzである。また、
図10(b)に示すように、区間ΔT2では、第1候補のピーク値Pk1が0.33Hz、第2候補のピーク値Pk2が0.21Hzである。本例では、区間ΔT1および区間ΔT2共に、第1候補のピーク値Pk1と第2候補のピーク値Pk2とが0.15Hzより高く0.5Hzより低いため対象者αに吐き気があると判定される。ただし、これに限られず、第1候補のピーク値と第2候補のピーク値の少なくともいずれか一方が0.15Hzより高く0.5Hzより低ければ対象者に吐き気が発生していると判定してもよい。また、
図10(c)に示す区間ΔT3のフーリエ解析のグラフではピーク値が現れていない。このように、ピーク値が表れていない場合は、対象者に吐き気が発生していないと判定してもよい。なお、上述したように、区間ΔT1、区間ΔT2における対象者αの主観評価は「吐き気あり」であり、区間ΔT3における対象者αの主観評価は「吐き気なし」である。
【0091】
また、上記第3実施形態において、吐き気検出部350は、フーリエ解析によって求めたSCRデータの揺らぎの周波数と、呼吸情報抽出部330によってフーリエ解析によって求めた呼吸周期の周波数とが一致している場合に、対象者に吐き気が生じていると判定してもよい。ただし、呼吸周期は必ずしも安定しないため、SCRデータの揺らぎの周波数と呼吸周期の周波数との差異が予め定められた範囲に収まっている場合は、SCRデータの揺らぎの周波数と呼吸周期の周波数とが一致していると判定してもよい。また、メイヤー波による影響を排除すべく0.15Hz以上の周波数成分を吐き気の検出対象とし、脈拍による影響を排除すべく0.5Hz以下の周波数成分を吐き気の検出対象とするのは上述のとおりである。このように、本発明においては、吐き気検出部においてSCRデータの揺らぎの周波数、すなわち単位時間あたりのSCRデータの揺らぎの回数、すなわちSCRデータの揺らぎの頻度に基づいて対象者に吐き気が生じているか否かを検出してもよい。
【0092】
また、上記実施形態において、ICレコーダやヘッドセットマイク等を生体信号計測部310として例示したが、これに限られない。脈拍や心拍データにも呼吸情報が含まれることから、例えば、脈拍データや心拍データを計測するLED脈波センサ、圧電圧力波センサ、または心電計等を生体信号計測部310として用いることもできる。脈拍や心拍の間隔の揺らぎは呼吸に連動しているので、呼吸情報抽出部330は、例えば脈拍の間隔の揺らぎから呼吸情報(例えば、一定時間内の呼吸回数や呼吸間隔の時間列)を抽出し、呼吸データを出力することができる。
【0093】
ここで、
図11を用いて、脈拍の間隔の揺らぎから呼吸情報を抽出する方法について説明する。
図11の上段は、脈拍の間隔の揺らぎの間隔を表すグラフである。
図11上段の縦軸は、脈拍の間隔の長さを表しており、単位はミリ秒である。例えば、縦軸の「840」は、連続する2つの脈拍の間隔が840ミリ秒であることを示している。また、
図11上段の横軸は、脈拍データの特徴点におけるデータ取得タイミングを表しており、単位は秒である。例えば脈拍の間隔の値は、上記第2実施形態において連続する2つの区間におけるSCRデータの集合の相関係数を求めたのと同様に、脈波信号の特徴点において相関係数を求めて評価すればよい。人の脈拍数は最大で220回/分、最小で30回/分程度とされる。このため、例えば100Hzサンプリングの脈波センサを生体信号計測部310として用いる場合は、連続する2つの区間における脈波データの集合である第1脈波データ群および第2脈波データ群に含まれるそれぞれのデータの数が27サンプル(60秒÷220回×100サンプル/秒)〜200サンプル(60秒÷30回×100サンプル/秒)の場合における相関係数を評価すればよい。また、
図11の下段は、呼吸の間隔を示す図である。
図11下段における白色帯状の画像は呼吸をしている区間を示している。飽和して矩形波に見える部分が呼気の区間であり、小さく膨らんで見えるところが吸気の区間である。
図11に示すように、脈拍の間隔の極小値の間隔の推移と呼吸の間隔の推移とが一致している。したがって、LED脈波センサや圧電圧力波センサを生体信号計測部310として用いる際に、呼吸情報抽出部330は、例えば脈拍の間隔の極小値の間隔を取得することで、呼吸情報(本例では、呼吸間隔)を抽出することができる。このため、上記第4実施形態において吐き気検出部450は、SCRデータの揺らぎの間隔の推移を表す時間列と脈拍の間隔の揺らぎの間隔の推移を表す時間列とを用いて、各時間列に含まれる要素の数や対応する要素同士の値が一致するか否かによって吐き気の有無を判定するように構成されていてもよい。またSCRデータの揺らぎの間隔の推移および脈拍の間隔の揺らぎの間隔の推移を表す2つの時間列にそれぞれ含まれる要素の数が一致する場合は、吐き気検出部において相関係数を算出し、相関係数が閾値(例えば、0.8)以上であるか否かによって吐き気の有無を判定するように構成されていてもよい。また、脈拍の間隔の揺らぎの間隔から呼吸間隔が求められれば、一定時間内の呼吸回数が求められることは自明である。
なお、
図11では脈拍の間隔の揺らぎの間隔と呼吸間隔とが同期して変化することを示すべく複数の直線を引いているが、脈拍の間隔の極小値のタイミングと呼気の終了のタイミングそのものが常に一致することを示すものではない。例えば深呼吸で計測したデータ(不図示)では脈拍の間隔の極小値のタイミングと呼気の終了のタイミングとは一致しない。深呼吸で計測したデータでは、脈拍の間隔の揺らぎの間隔の推移と呼吸間隔の推移とが一致することに変わりはないものの、脈拍の間隔の極小値のタイミングと吸気の開始のタイミングとが一致する。
【0094】
このように、生体信号計測部310が計測する生体信号データは脈波データであってもよい。呼吸情報抽出部330は、例えば、所定数の連続する脈波データである第1脈波データ群と、第1脈波データ群に続く該所定数の連続する脈波データである第2脈波データ群とを用いて相関係数を算出し、該相関係数が最大となる該所定数を脈拍の間隔として求める。呼吸情報抽出部330は、脈拍の間隔の揺らぎの回数から呼吸情報として呼吸回数を抽出することができる。また、呼吸情報抽出部330は、脈拍の間隔の揺らぎの間隔から呼吸間隔を抽出することができる。
【0095】
また、マイクロ波のドップラーセンサ、GHz帯域(Ultra Wide Band)のレーダ、ベッドに設置した加速度センサ、圧力センサ等を生体信号計測部310に用いて、体動の揺らぎから呼吸を検出することも可能である。
【0096】
、また、第1実施形態から第4実施形態による吐き気検出装置において、吐き気検出部に加速度センサ等の動作を検出するセンサを備え、吐き気対象者の腕や手首が動いていないことを検出した場合に、吐き気検出部において吐き気の検出処理を行ってもよい。これにより、対象者の腕や手首が動くことによって皮膚電気抵抗センサ111の電極と対象者の皮膚との間の接触不良による大きなノイズ信号が発生して本発明が吐き気の検出に用いるSCRデータの揺らぎを検出するのが困難であって、十分な精度で吐き気の検出ができない可能性がある状態にもかかわらず吐き気の検出処理が行われることを防止できる。
【0097】
また、上記第1実施形態から第4実施形態による吐き気検出装置は、吐き気検出部において検出した吐き気の検出結果を出力する出力部を有していてもよい。出力部としては、例えば、情報端末における表示画面等の所定の表示装置が用いられる。出力部が出力する吐き気検出結果の態様は、吐き気の有無が判別できる態様であればよく、文字情報であってもよいし、所定の画像や音声であってもよい。また、出力部は、印刷装置と接続されて、吐き気検出結果が印刷されるようになっていてもよい。