(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775369
(24)【登録日】2020年10月8日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20201019BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20201019BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20201019BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20201019BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
H01L27/04 H
H01L29/78 301S
H01L29/78 301K
H01L27/06 311C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-190175(P2016-190175)
(22)【出願日】2016年9月28日
(65)【公開番号】特開2018-56307(P2018-56307A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】南 志昌
【審査官】
岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−164967(JP,A)
【文献】
特開2001−094103(JP,A)
【文献】
特開2000−307104(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0247804(US,A1)
【文献】
米国特許第06784490(US,B1)
【文献】
中国特許出願公開第105914208(CN,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2001−0050605(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 21/336
H01L 27/04
H01L 27/06
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板に設けられたP型半導体領域と、
前記P型半導体領域の表面に配置されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の上に配置されたゲート電極と、
前記ゲート電極の両端の前記P型半導体領域の表面にそれぞれ配置されたLOCOS酸化膜と、
前記LOCOS酸化膜の下に配置されたソースの第1のN型低濃度拡散層およびドレインの第1のN型低濃度拡散層と、
前記ソースの第1のN型低濃度拡散層に接して、前記ゲート絶縁膜と反対側に配置されたソースのN型高濃度拡散層および前記ドレインの第1のN型低濃度拡散層に接して、前記ゲート絶縁膜と反対側に配置されたドレインのN型高濃度拡散層と、
前記ドレインの第1のN型低濃度拡散層および前記ドレインのN型高濃度拡散層の下部に配置された第2のN型低濃度拡散層と、
前記第2のN型低濃度拡散層の下部に配置された第3のN型低濃度拡散層と、
を有し、
前記第3のN型低濃度拡散層の濃度は、前記ドレインの第1のN型低濃度拡散層および前記第2のN型低濃度拡散層の濃度よりも濃く、前記第2のN型低濃度拡散層の濃度は前記ドレインの第1のN型低濃度拡散層の濃度よりも濃い、もしくは同等の濃度を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第3のN型低濃度拡散層の深さは、前記第1のN型低濃度拡散層の水平方向の長さの1/4であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気放電などを代表とするサージやノイズから、高耐圧を有する半導体装置の破壊を防ぐESD保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置には、静電気放電(ElectroStatic Discharge:以後ESDと略記)を代表とする様々なサージやノイズから内部素子を保護するためにESD保護素子が設けられている。ESD保護素子の例としては、独立して、あるいは、寄生的に構成されるダイオード素子、バイポーラ素子、サイリスタ素子が挙げられる。これらの素子に求められることは、定常状態においては常にオフしており、サージやノイズが半導体装置に印加された際に内部素子が破壊に至る前に動作し、サージやノイズにより発生した大電流を放出し、再びオフ状態に戻るという機能である。
【0003】
他の一般的なESD保護素子として、NMOSオフトランジスタが挙げられる。
図2に従来のNMOSオフトランジスタを示す。P型半導体基板11に形成されたNMOSオフトランジスタであり、P型半導体基板11上に形成されたゲート絶縁膜22上にゲート電極33を有している。ドレイン電極31にはN型高濃度拡散層15aが接続されており、ソース・基板電極32にはソースとなるN型高濃度拡散層15bおよびP型半導体基板11の電位を取るためのP型高濃度拡散層16が接続され、N型高濃度拡散層15bおよびP型高濃度拡散層16には、さらにゲート電極33が電気的に接合され、Vss電位に結線されている。ドレイン電極31は、Vdd電源端子もしくは入出力端子などに結線される。
【0004】
従来のNMOSオフトランジスタは、ドレイン電極31に負極性のサージやノイズが印加された場合、N型高濃度拡散層15aとP型半導体基板11とのPN接合において順方向バイアスとなり、電荷をVssに逃がし、ドレイン電極31に正極性のサージやノイズが印加された場合には、逆方向バイアスによって表面ブレークダウンが起こり、P型半導体基板11を流れる電流によってソース−基板−ドレイン間での寄生的なNPNバイポーラトランジスタが動作し、Vssに大電流を逃がす構造となっている。上記の寄生NPNバイポーラ動作において、サージやノイズを放出した後に確実にNMOSオフトランジスタをオフするために、保持電圧は半導体装置にかかる最大動作電圧以上に設定することが重要となる。従来構造においては、NMOSオフトランジスタのチャネル長であるL長を調節することにより保持電圧を設定することが可能である。
【0005】
保護するべき半導体装置の耐圧が高い場合、当然NMOSトランジスタの表面ブレークダウン電圧および保持電圧にも高い電圧が要求される。
図3にドレイン電極が高耐圧構造である一般的なNMOSオフトランジスタを示す。P型半導体基板11に形成されたNMOSオフトランジスタであり、P型半導体基板11上に形成されたゲート絶縁膜22上にゲート電極33を有している。ゲート電極33の両端にはLOCOS酸化膜21a、21bおよびオフセット層であるN型低濃度拡散層13a、13bが形成されたLOCOSオフセット構造である。ドレイン電極31には、N型高濃度拡散層15aが接続されている。ソース・基板電極32には、ソースとなるN型高濃度拡散層15bおよびP型半導体基板11の電位を取るためのP型高濃度拡散層16が接続され、N型高濃度拡散層15b、P型高濃度拡散層16およびゲート電極33は電気的に接合し、Vss電位に結線されている。ドレイン電極31は、Vdd電源端子もしくは入出力端子に結線される。NMOSオフトランジスタの外周部分には素子分離のためのLOCOS酸化膜21c、21dが配置され、その下にはN型低濃度拡散層13cとP型低濃度拡散層14が形成されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−031805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ドレイン電極からみた表面ブレークダウン耐圧や半導体基板との接合耐圧を上昇させる必要があるため、半導体基板濃度はあまり濃くすることはできない。要求される耐圧が高いほど、この傾向は強くなる。
図3のNMOSオフトランジスタも高耐圧用保護素子であるためにP型半導体基板11の濃度は非常に薄い。つまり高抵抗であるので、ドレイン電極31に正極性のサージやノイズが印加された際、表面ブレークダウンで発生する電子によって容易にN型高濃度拡散層15bおよびN型低能動拡散層13b下のP型半導体基板11の電位上昇を引き起こし、寄生NPNバイポーラトランジスタ動作に入りやすく、結果として保持電圧が極端に低くなるという問題が発生する。
【0008】
その問題を抑制する対策として、
図4のようにドレイン側のN型高濃度拡散層15aにN型ウェル拡散層12を設け、チャネル端から、ドレイン側のN型高濃度拡散層15aに向けて濃度勾配をつけ、N型高濃度拡散層15aでの電界集中を緩和することで、P型半導体基板11の電位上昇を防ぐことは可能である。このN型ウェル拡散層12は、内部素子のPMOSトランジスタのウェルと共通にすることが一般的で、ウェル拡散しているため、比較的P型半導体基板11表面付近が濃くP型半導体基板内に行くほど薄い。
【0009】
そのような構造において、非常に強い正極性のサージやノイズがVDD端子に印加された場合、ドレイン側のN型高濃度拡散層15aおよびLOCOS下にN型ウェル拡散層12を設け電界を緩和し、P型半導体基板11の電位上昇を抑えて、一次的に保持電圧を動作電圧以上に確保できた(以降、そのとき生じたブレークダウンを一次ブレークダウンと呼ぶ)としても、一次ブレークダウンで発生した電子は、LOCOS下のN型ウェル拡散層12が足しあわされたN型低濃度拡散層13a表面の最も濃度の濃い領域を通過するため、容易にN型低濃度拡散層13a表面の濃度の濃い領域とN型高濃度拡散層15aとの境界に電子集中のポイントが移動する。その結果、ドレイン側のN型高濃度拡散層15aとN型低濃度拡散層表面の濃度の濃い領域との境界でブレークダウンが生じ(以降、そのとき生じたブレークダウンを二次ブレークダウンと呼ぶ)、電子が集中している分、P型半導体基板11の電位上昇を一次ブレークダウンの時よりもさらに大きく引き起こす。その結果、寄生NPNバイポーラトランジスタ動作に入りやすく、
図4の構造にしたとしても結果として保持電圧が極端に低くなるという問題が発生してしまう。そのときの電流電圧波形を
図6に示す。
図6は従来の半導体装置のTLP法による電流電圧波形を示している。
図6の波形はNMOSオフトランジスタのドレイン電極に電流注入したとき、つまり、上述したVDD端子に非常に強い正極性のサージやノイズが印加された場合の、NMOSオフトランジスタの状態をドレイン電流により示したものである。また、同じ
図6に示したように、流れる電流を増やすためにNMOSトランジスタのW長を増やしても、一次ブレークダウン後の保持電圧は維持されるが、NMOSオフトランジスタのサイズが増大する。このほか、従来方法のように、保持電圧の調整をMOSトランジスタのチャネル長であるL長や、LOCOSオフセット長で保持電圧を調整することは可能だが、これもまたNMOSオフトランジスタのサイズが増大に繋がる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するために、以下のような手段を用いた。
P型半導体領域の表面に配置されたゲート絶縁膜と、
ゲート絶縁膜上に配置されたゲート電極と、
ゲート電極の両端のP型半導体領域の表面に配置されたLOCOS酸化膜と、
LOCOS酸化膜両端下部に配置された第1のN型低濃度拡散層と、
第1のN型低濃度拡散層に接して配置された第1のN型高濃度拡散層と、
片方の第1のN型低濃度拡散層および片方の第1のN型高濃度拡散層下部に配置された第2のN型低濃度拡散層と、
第2のN型低濃度拡散層下部に配置された第3のN型低濃度拡散層と、
を有する半導体装置とした。
【0011】
第3のN型低濃度拡散層の濃度は、第1のN型低濃度拡散層および第2のN型低濃度拡散層よりも濃度が濃く、第2のN型低濃度拡散層の濃度は第1のN型低濃度拡散層よりも濃い、もしくは同等の濃度であることを特徴とする半導体装置とした。
【0012】
第3のN型低濃度拡散層の深さは、第1のN型低濃度拡散層の長さの1/4程度であることを特徴とする半導体装置とした。
【発明の効果】
【0013】
高耐圧を有する半導体装置をノイズやサージから守るESD保護素子において、ゲート電極両端に形成されたLOCOS酸化膜下に第1のN型低濃度拡散層を電界緩和のオフセット層として設け、さらにドレイン側のN型高濃度拡散層下に第2のN型低濃度拡散層および第3の低濃度拡散層を設けブレークダウンのポイントを基板表面から基板深くに設定することで保持電圧を動作電圧以上となるように設定し、Vdd電源端子に大きな正電荷のノイズが印加された場合でも、素子サイズを大きくしなくても、ノイズを逃がすことを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例による半導体装置を示す模式的断面図である。
【
図2】従来の半導体装置を示す模式的断面図である。
【
図3】従来の半導体装置を示す模式的断面図である。
【
図4】従来の半導体装置を示す模式的断面図である。
【
図5】本発明の実施例による半導体装置のTLP法による電流電圧波形である。
【
図6】従来の半導体装置のTLP法による電流電圧波形である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る半導体装置を示す。
図1に示すようにP型半導体基板11の上に形成されたゲート絶縁膜22上にゲート電極33を有しており、ゲート電極33の両端にはLOCOS酸化膜21a、21bが形成されている。LOCOS酸化膜21aの下に形成されたドレインの第1のN型低濃度拡散層13aを電界緩和のオフセット層とし、ドレインの第1のN型低濃度拡散層13aと隣接するようにドレインのN型高濃度拡散層15aが形成されている。ドレインのN型高濃度拡散層15aはドレイン電極31に接続されている。LOCOS酸化膜21b下に形成されたソースのオフセット層であるソースの第1のN型低濃度拡散層13bは、ソースのN型高濃度拡散層15bと隣接して配置されている。
【0016】
ドレインのN型高濃度拡散層15aの下部には第2のN型低濃度拡散層17が形成され、さらに、第2のN型低濃度拡散層17下部には、第3のN型低濃度拡散層18が形成されている。第2のN型低濃度拡散層17および第3のN型低濃度拡散層18は、ドレインのN型高濃度拡散層15aと接している第1のN型低濃度拡散層13aに対して平面視では重なるようにオーバーラップしていても構わない。
図1に示す実施例においては、第2のN型低濃度拡散層17および第3のN型低濃度拡散層18は、ドレインのN型高濃度拡散層15aと接している第1のN型低濃度拡散層13aに対してオーバーラップしたものを描いてある。
【0017】
そしてソース・基板電極32には、ソースとなるN型高濃度拡散層15b、オフセット層である第1のN型低濃度拡散層13bおよびP型半導体基板11の電位を取るためのP型高濃度拡散層16が接続された構造になっている。ここでLOCOS酸化膜21a下に形成された第1のN型低濃度拡散層13aは、LOCOS酸化膜の形成前にイオン注入によって形成され、イオン注入のドーズ量およびエネルギーは4e12/cm2、40keV程度で、内部素子間の素子分離に用いられる条件と兼用しても構わない。
【0018】
第2のN型低濃度拡散層17および第3のN型低濃度拡散層18は、第1のN型低濃度拡散層13aよりも濃度を濃くするためにLOCOS酸化膜の形成後にイオン注入することが望ましく、第2のN型低濃度拡散層17を形成するためのイオン注入のドーズ量およびエネルギーは1e12/cm2〜4e12/cm2程度、300keV〜500keVが望ましい。また、第3のN型低濃度拡散層18のドーズ量は5e12/cm2〜1e13/cm2程度とし、注入されたイオンの深さは第1のN型低濃度拡散層13aの長さ(水平方向の長さ)の1/4程度となるようにするため、800keV〜1000keVが望ましい。上記構造の素子において、N型高濃度拡散層15b、P型高濃度拡散層16およびゲート電極33は電気的に接合し、Vss電位に結線する。ドレイン電極31は、Vdd電源端子に結線する。
【0019】
Vdd電源端子に負電荷のノイズが印加された場合は、ドレイン電極31とP型半導体基板11のPN接合が順方向バイアスとなり、Vss電位へノイズを逃がすことによって内部素子を保護する。
【0020】
反対に、Vdd電源端子に正電荷のノイズが印加された場合は、ゲート電極33端下のチャネルと接した第1のN型低濃度拡散層13aとP型半導体基板11とのPN接合において、一次ブレークダウンが生じ、P型半導体基板11内に電子が発生し始める。そして、P型半導体基板11内に発生した電子は、N型の最も濃度の濃い領域を通過する。最初、LOCOS酸化膜21a下に形成された第1のN型低濃度拡散層13aを通過するが、第3のN型低濃度拡散層18の濃度を第1のN型低濃度拡散層13aの濃度よりも濃く設定してあるので、その後は、ドレイン電極31への電子の通路が、第1のN型低濃度拡散層13aの表面付近からP型半導体基板11の深くに形成された第3のN型低濃度拡散層18に遷移する。
【0021】
その結果、第1のN型低濃度拡散層13aの表面の濃度の濃い領域とN型高濃度拡散層15aとの境界への電子集中が抑えられ、二次ブレークダウンは、第3のN型低濃度拡散層18とP型半導体基板11とのPN接合において、第1のN型低濃度拡散層13aとN型高濃度拡散層15aとの境界よりも電界が緩和された状態で生じさせることが可能である。したがって第3のN型低濃度拡散層18を設けることで、保持電圧が極端に低くなるという問題はなくなり、保持電圧を動作電圧以上に維持することを可能とする。また、第3のN型低濃度拡散層を設けることで、一次ブレークダウン後の保持電圧を維持する必要はなくなるため、W長を増やす必要がなくなる。つまり素子サイズを抑える効果もある。
【0022】
また、第2のN型低濃度拡散層17を第1のN型低濃度拡散層13aよりも濃く、もしくは同じにするのは、第3のN型低濃度拡散層18からドレイン電極へ電子の移動を第1のN型低濃度拡散層13aからドレイン電極への電子の移動よりも支配的にするためである。
図6示した従来の半導体装置のTLP法による電流電圧波形と同様に、
図5に本発明の実施例による半導体装置のTLP法による電流電圧波形の結果を示す。上述したように従来の半導体装置の構造に比べ、保持電圧を同再電圧以上まで上昇させ、Vdd電源端子に大きな正電荷のノイズが印加された場合でも、素子サイズを大きくすることなしに、ノイズを逃がす構造となっていると言える。
【符号の説明】
【0023】
11 P型半導体基板
12 N型ウェル拡散層
13a、13b、13c 第1のN型低濃度拡散層
14 P型低濃度拡散層
15a、15b N型高濃度拡散層
16 P型高濃度拡散層
17 第2のN型低濃度拡散層
18 第3のN型低濃度拡散層
21a、21b LOCOS酸化膜
22 ゲート絶縁膜
31 ドレイン電極
32 ソース電極
33 ゲート電極