【文献】
Manfred Fischer et al.,Core melt stabilization concepts for existing and future LWRs and associated R&D needs,Proceedings of International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics, NURETH-16,米国,Americal nuclear Society,2015年 9月 4日,pp. 7578-7592
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原子炉格納容器における原子炉圧力容器の下方に配置され、原子炉の炉心溶融事故で原子炉圧力容器破損が生じた場合に、落下した炉心溶融物を受け止めて保持し、その外面から炉心溶融物の熱を放熱するコアキャッチャーにおいて,
炉心溶融物を保持するコアキャッチャー壁と,コアキャッチャ−外壁面に接合し炉心溶融物の壁への荷重を支える縦リブと,コアキャッチャー外壁面と間隙を介して縦リブを支持する横リブで構成されることを特徴とするコアキャッチャー。
原子炉格納容器における原子炉圧力容器の下方に配置され、原子炉の炉心溶融事故で原子炉圧力容器破損が生じた場合に,落下した炉心溶融物を受け止めて保持し,その外面から炉心溶融物の熱を放熱するコアキャッチャーにおいて,
炉心溶融物を保持するコアキャッチャー壁を,外側に突の外折リブ形状とし,コアキャッチャー外壁面と間隙を介して外折リブ先端を支持する横リブを設けることを特徴とするコアキャッチャー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1に,外周を冷却水で満たした半球状コアキャッチャーの縦断面図を示す。上方の原子炉圧力容器から落下した液状のデブリは,コアキャッチャー内部で発熱と冷却による自然対流を生じる。コアキャッチャーによるデブリの保持と冷却条件が厳しくなるのは,大量のデブリが落下するケースである。
一般に自然対流熱伝達率は垂直平板や上面加熱平板で高く,下面加熱平板では低くなる。このため,冷却量の少ないデブリ下部から中央部のデブリは温度上昇による密度の低下で上昇流を生じ,壁面では良好に冷却されて密度が増加し下降する。デブリ中央部を上昇した高温のデブリが,コアキャッチャーの側面部に衝突するため,側壁(半球状コアキャッチャーがデブリで満たされた場合,
図1の角度90度の位置)の熱流束は高く,一方でコアキャッチャー底部(
図1の角度0度の位置)の熱流束は低下する。
図2(非特許文献2より)に示した共晶塩を作動流体とする実験をはじめとして半円状壁断面と内部溶融物の傾斜角に対する熱流束の測定では,傾斜角0度と90度で最大5倍程度の熱流束(平均熱流束による規格化値)の差が報告されている。また,熱流束の増加は,壁面の傾斜角が30度を超えた領域で顕著である。一方,コアキャッチャーの外表面では高い熱流束では沸騰を生じて冷却水に熱が伝達される。コアキャッチャー底部で発生した沸騰蒸気は浮力のベクトルが流れ方向と交差するため滞留し易く,壁表面が蒸気に覆われて熱伝達率が低下する。側壁部では沸騰蒸気の浮力のベクトルが流れ方向と一致するため,蒸気が壁面から離脱し易くなり,壁表面が冷却水に接して熱伝達率が上昇する。また,壁面が蒸気に覆われ熱伝達率が大きく低下する膜沸騰状態を生じる熱流束(限界熱流束)も底部が低く,側壁部が高い特性を有する。式1に示す非特許文献3の評価では,自然循環冷却体系の定常加熱条件において半円状容器の底部(壁面の傾斜角Θ:0°)の限界熱流束Qchfは500kW/m2,側壁部(傾斜角Θ:90°)で限界熱流束最大値は1500kW/m2であり,非特許文献2の熱流束の傾向と同様に傾斜角0度と90度の限界熱流束の差は約3倍である。ここで,限界熱流束Qchfの評価式は式1に限るものではなく,熱伝達の体系,流体の種類や雰囲気条件によって適切なものを選択し良い。例えば,非特許文献3ではプール沸騰体系の場合,壁面の傾斜角0度から5度の限界熱流束Qchfは300kW/m2であり,垂直平板(傾斜角90°)では非特許文献4に記された評価式を用いると限界熱流束Qchfは1400kW/m2である。
(式1)Qchf(kW/m2)=500+13.3×Θ (0°<Θ<15°),
Qchf(kW/m2)=540+10.7×Θ (15°<Θ<90°)
【0007】
図3に,コアキャッチャー壁を挟んで冷却水からデブリにわたる温度プロファイルを示す。温度の高低を上下方向で表現する。ここで,Lはコアキャッチャー壁厚さ(m),Tdはデブリ温度(K),Tiはコアキャッチャー壁内表面温度(K),Toはコアキャッチャー壁外表面温度(K),Tmはコアキャッチャー壁の融点(K),Twは冷却水温度(K),ΔTは沸騰熱伝達の壁面過熱度(K),Qbは沸騰熱伝達の熱流束(W/m2),Qcは熱伝導の熱流束(W/m2),Qnはデブリが液状の場合は自然対流熱伝達の熱流束(W/m2),デブリが固体の場合は熱伝導の熱流束(W/m2)を表す。冷却水からコアキャッチャー壁外表面には沸騰熱伝達で熱が伝わり,外表面温度Toは,水温より過熱度ΔTだけ高い値となる。コアキャッチャー壁内部は熱伝導で熱が伝わる。デブリからコアキャッチャー壁内表面には,デブリが液状の場合は自然対流熱伝達で,デブリが固体の場合は熱伝導で熱が伝わる。水は比熱と蒸発潜熱が大きく熱伝達良が良好なため,熱伝達量はコアキャッチャー壁外表面の沸騰熱伝達が支配的である。この伝熱体系で熱伝達量がバランスし,準定常状態になった時点で熱流束Qb,Qc,Qnは等しくなる。
【0008】
熱流束Qcとコアキャッチャー壁の外表面温度To,コアキャッチャー材の熱伝導率Rと融点Tmが与えられると熱伝導の式(式2)にしたがって,内表面温度が融点に達する壁面厚さLが求められる。式2は,一般的な壁面の熱伝導の式を変形したものである。
(式2)L=R×(Tm−To)/Qc
上式は,初期のコアキャッチャー壁厚さLを厚くすると,Qcが減少し(Qcが変わらないと仮定するとコアキャッチャー壁内表面温度Tiの上昇と等価),デブリを受け止めたコアキャッチャー内壁面が融点を越えて溶融して壁の厚さが減肉することを示している。式の形から熱伝導率の高い材質ほど,熱流束が低いほど減肉量が少なく内壁面溶融後の壁は厚くなる。コアキャッチャー外表面の熱流束が限界熱流束に達して膜沸騰に移行しない限り,式2に示した温度のバランスは保たれる。
【0009】
図2に示した熱流束分布を式2に当てはめると,コアキャッチャーの断面は,
図4に示すように底部30度までは比較的厚く(
図4の領域A),30度を超えると側壁部が薄くなる(
図4の領域B)。コアキャッチャーが健全である最少厚さは,熱流束が限界熱流束に達する時の値であり,且つ式2から熱流束が高いほど最少厚さは薄くなる。例えば,ステンレス材のコアキャッチャーでは傾斜角90度で限界熱流束1500kW/m2,外表面温度400K(冷却水との過熱度30℃を仮定),ステンレス材の熱伝導率16W/mK,ステンレス材の融点1700Kを代入すると,傾斜角90度のコアキャッチャー壁面の減肉後の厚さは,式2から約14mmになる。一方,底部では傾斜角0度で限界熱流束500kW/m2を代入すると約42mmである。この厚さ分布は,
図2に示したように壁面の熱伝達量が傾斜角0度と90度で約3.5倍の差であることから,限界熱流束以下の条件を含み,壁の厚さは底部と側壁部で約3〜3.5倍の差が生じると考えられる。
【0010】
以上の評価から,外周を冷却水で満たしたコアキャッチャーでは壁の材質がステンレスのケースで側壁部が最小で20mm以下に減肉するため,融点に近い高温時に重量百数十トンの炉心全量を保持するケースを想定すると,壁面の補強が必要と考えられる。
このような課題に対して,特許文献2ではペデスタル空間に上部支持のコアキャッチャーを設け,デブリによる容器の膨張とクリープ変形を許容し,自由端である容器下部空間で変形を吸収する。しかし,コアキャッチャーの側壁部が減肉した状態でデブリの重量によって下方に引張り応力が掛かるため,側壁部のさらなる減肉や破断が発生する可能性がある。
一般に,このような減肉の進展や側壁部の破断防止の補強対策として,側壁部を非特許文献5に示すようなリブ構造とすることが有効である。特に,コアキャッチャーの補強では,側壁の減肉部の形状が縦断面の高さ方向の一部(鉛直軸からの傾斜角が30度より上方)に生じるため縦リブが有効であるとともに,減肉と温度上昇によるコアキャッチャー壁の周方向の伸びを支えるため,横リブも必要である。
【0011】
図5は,壁面の荷重を支えるため縦リブを取り付けた場合の壁の水平断面図を示す。
図3を用いて説明したように,リブの接合による壁厚さの増加は式2で壁面厚さLを増加させた場合と同様であり,除熱熱流束に対して壁が厚いと
図5(1)に示すようにデブリの熱が通過する壁厚さが見かけ上増加する(破線は冷却水に接する壁面に対する減肉後の壁厚さに相当する距離を示す)。その結果,
図5(2)に示すように内壁面の減肉で欠損が生じ,コアキャッチャーの壁面強度の低下に繋がる可能性がある。
横リブを取り付けた場合,縦リブ同様に内壁面の減肉で欠損が生じるだけでなく,
図1に示したような発生蒸気の浮力等による密度差を駆動力とする外壁面に沿った上昇流が,横リブが障害物となって阻止される。このため,横リブ後流部分の壁の冷却が阻害され,壁面の熱伝達形態が膜沸騰に移行して,壁が溶融破損する可能性がある。
コアキャッチャー壁外側に満たされた冷却水の流動は,
図1に示したように底部での核沸騰によって発生した蒸気が,微傾斜の底部から壁面に沿って傾斜角の大きな側面に徐々に移動し,さらなる核沸騰蒸気を加えて浮力によって加速された流れに乗って上方に抜ける。このような流動状態に対して底部から縦リブを設けると,半球最下点で縦リブが交差するため,交差するリブの頂点に仕切られた空間が形成される。底部で発生した蒸気が交差するリブの開放側に移動する場合は問題ないが,交差するリブの頂点側に移動して滞留して蓄積すると限界熱流束の低下を招き膜沸騰に遷移する可能性がある。膜沸騰への繊維は前述のように,コアキャッチャー壁の溶融,減肉に繋がる。
【0012】
次に特許文献3では,耐熱部材と断熱部材によってデブリの断熱性が高まるため,他に冷却源が無ければ崩壊熱によってデブリ温度が上昇する。また,耐熱部材と断熱部材が重なって壁が厚くなるため,式2に示した特性に従って,崩壊熱に相当する除熱熱流束に対応して内壁温度が耐熱部材と断熱部材を配置しないケースより高まる。耐熱材に接するデブリ温度が耐熱部材の融点に達すると耐熱部材が溶融し,続いて耐熱性のない断熱部材と外層部材が溶融する。また,断熱部材の融点が低い場合は,耐熱部材の溶融より先に断熱部材が溶融する可能性もある。
デブリのような気化温度の高い発熱物質を保持する場合,耐熱材で断熱しても除熱量が発熱量にバランスしない限り温度が上昇して,耐熱材が溶融し,壁面の熱負荷が高くなる。また,壁を厚くしても除熱量と発熱量がバランスする内外壁温度になるまで壁が溶融するため,準定常的な壁厚さが部材の熱伝導率等の物性に依存する最小値を超えることは無い。このため,断熱するよりむしろデブリ温度が下がるように除熱を促進する方法や,犠牲材の溶融にデブリの熱を消費させる方法が有効である。
一方,デブリの落下時や,準定常的な熱バランスに到達するまでの過渡的な状態においては,初期のデブリ温度が高い場合,コアキャッチャー壁面の加熱量が
図3を用いて説明した準定常的な除熱量を超えることがある。これによって,壁厚さが除熱量と発熱量のバランスに基づく値より薄くなる可能性がある。このような過渡的な壁面の加熱を防止する必要もある。
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、原子炉格納容器内に設置する外面冷却型のコアキャッチャーにおいて,高温のデブリを受け止めた場合に,コアキャッチャーの壁面を確実に冷却するとともに,デブリの侵食に対して壁の構造強度を確保することによって,デブリの格納容器床面への落下を防止して格納容器の破損を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明のコアキャッチャーは、デブリの熱負荷を受けるコアキャッチャー壁面と,その外壁面に接合しデブリの壁への荷重を支える縦リブで構成される。
コアキャッチャー壁接合部分の縦リブ周方向厚さが,コアキャッチャー壁厚さより薄くし,好ましくは式2で計算される限界熱流束に対応した減肉後のコアキャッチャー壁厚さより薄くする。
コアキャッチャー外壁面と間隙を介して縦リブを支持する横リブを設ける。
横リブ接合部分の縦リブ周方向厚さを,コアキャッチャー壁接合部分の縦リブ周方向厚さより厚くしても良い。
コアキャッチャー壁を高熱伝導率,且つ高融点,且つ高靭性の材質で構成する。具体的には,ステンレス鋼,あるいは炭素鋼,あるいはタングステン鋼,あるいはモリブデン鋼で構成する。
コアキャッチャー壁を多重構造とし,内壁を高熱伝導率,且つ高融点,且つ高靭性の材質(ステンレス鋼,あるいは炭素鋼,あるいはタングステン鋼,あるいはモリブデン鋼)で構成し,外壁を超高熱伝導率(銅,あるいは真鍮,あるいはアルミニウム)の材質で構成しても良い。
コアキャッチャー壁面の内側に,壁の材質より融点の低い犠牲材を貼り付ける。具体的には,コンクリート,あるいは二酸化ケイ素を貼り付ける。また,コアキャッチャーの内部に,壁の材質より融点の低い犠牲材を配置しても良い。具体的には,コンクリート塊,あるいは二酸化ケイ素塊を配置する。
壁面が半球状のコアキャッチャーにおいては,前記縦リブがコアキャッチャー中心の鉛直軸と半球中心軸水平面との接点を基点に,鉛直軸と30度(経方向周長が底部から1/3)以下から90度(上端)以上までの外壁面を接合することを特徴とする。
壁面が円筒状のコアキャッチャーにおいては,前記縦リブがコアキャッチャー上下端の底部から1/3より下方からコアキャッチャー上端までの外壁面を接合することを特徴とする。
コアキャッチャーの架台が,コアキャッチャー中心の鉛直軸と半球中心軸水平面との接点を基点に,鉛直軸と30度以下のコアキャッチャー外壁面を支持することを特徴とする。また,コアキャッチャーの架台が前記縦リブに接合されてコアキャッチャーを支持することを特徴とする。コアキャッチャーの架台が横リブに接合されてコアキャッチャーを支持することを特徴とする。また,コアキャッチャーの架台が前記の組み合わせによって支持されることを特徴とする。
コアキャッチャー外壁面を外側に突の外折リブ形状とし,コアキャッチャー外壁面と間隙を介して外折リブ先端を支持する横リブを設けても良い。
好ましくは,縦リブ垂直面にほぼ直行する向きに,縦リブ外周側から内周側に向かって上向きの傾斜を有す導流板をコアキャッチャー外壁面に対して間隙を保持して接合しても良い。
コアキャッチャー上端に中央部が下に突の防水板を全周接合しても良く。コアキャッチャー上端に,コアキャッチャー壁上端に全周接合され横リブ上方空間にわたる導流板を設けても良い。
コアキャッチャー外壁面を外側に突の外折リブ形状とし,コアキャッチャー外壁面と間隙を介して外折リブ先端を支持する横リブを設けても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原子炉圧力容器から落下するデブリを受け止め,長期にわたって確実に冷却するとともに,原子炉格納容器床面へのデブリの落下を阻止して原子炉格納容器の破損を防止可能な,原子炉の安全性を高めるコアキャッチャーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施例に係るコアキャッチャーとその内外の流体挙動を表す縦断面図である。
【
図2】本発明の第1実施例に係るコアキャッチャー壁面の熱流束分布を表す数値グラフである。
【
図3】本発明の第1実施例に係るコアキャッチャー壁内外の温度プロファイルを表す模式図である。
【
図4】本発明の第1実施例に係るコアキャッチャー壁の溶融減肉挙動を表す縦断面図である。
【
図5】本発明の第1実施例に係るコアキャッチャー壁とリブの溶融の相互作用を表す断面図である。
【
図6】本発明の実施例に係るコアキャッチャーを適用する原子炉の概略構成を表す縦断面図である。
【
図7】本発明の第1実施例に係るコアキャッチャーの外観を表す鳥瞰図である。
【
図8】本発明の第1実施例に係るコアキャッチャーの構造を表す縦断面図と水平断面図である。
【
図9】本発明の第1実施例に係る縦リブ形状を表す水平断面図である。
【
図10】本発明の第1実施例の変形例に係る縦リブ形状を表す水平断面図である。
【
図11】本発明の第2実施例に係るコアキャッチャーの構造を表す縦断面図と水平断面図である。
【
図12】本発明の第3実施例に係るコアキャッチャーの構造を表す縦断面図である。
【
図13】本発明の第4実施例に係るコアキャッチャーの構造を表す縦断面図である。
【
図14】本発明の第4実施例の変形例に係るコアキャッチャーの構造を表す縦断面図である。
【
図15】本発明の第5実施例に係るコアキャッチャー架台の構造を表す縦断面図である。
【
図16】本発明の第5実施例の変形例に係るコアキャッチャー架台の構造を表す縦断面図である。
【
図17】本発明の第5実施例の変形例に係るコアキャッチャー架台の構造を表す縦断面図である。
【
図18】本発明の第6実施例に係る縦リブ形状を表す縦断面図と水平断面図である。
【
図19】本発明の第7実施例に係る縦リブ形状を表す水平断面図である。
【
図20】本発明の第8実施例に係るコアキャッチャーの構造を表す縦断面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施例>
図6は、本実施例に係るコアキャッチャーを適用する原子炉の一構成例の概略構成を表す縦断面図である。
図6では、沸騰水型原子炉を例示している。以下、本発明を沸騰水型原子炉に適用した場合を説明するが、本発明は、加圧水型原子炉等の軽水炉、高速増殖炉、新型転換炉、高温ガス炉など他の型式の原子炉に対しても適用可能である。
【0018】
図6に示すように、原子炉40は、原子炉圧力容器(圧力容器)1、原子炉格納容器(格納容器)41及び原子炉建屋42を備えている。原子炉建屋42は、格納容器41の外周側に格納容器41を取り囲むように設けられている。格納容器41内に、圧力容器1が格納されている。
【0019】
圧力容器1は、炉心シュラウド55を収納している。炉心シュラウド55内には、複数の燃料集合体56が装荷された炉心50が格納されている。複数の燃料集合体56の下端部は炉心支持板57により支持され、上端部は上部格子板58により保持されている。燃料集合体56は、核燃料物質として、例えば、ウラン燃料のペレットをジルカロイ製の被覆管内にその軸方向に複数充填した燃料棒を有している。圧力容器1内の炉心50の下方には、複数の制御棒案内管59が設けられている。各制御棒案内管59内には、燃料集合体56間に出し入れされて原子炉出力を制御する制御棒60が設けられている。圧力容器1の下鏡61には、制御棒駆動機構(不図示)を収容する複数の制御棒駆動機構ハウジング5が取り付けられている。
【0020】
格納容器41は、気密性を有するように円筒状に形成されている。格納容器41の上部には、上蓋43が取り外し可能に取り付けられている。格納容器41は、冷却水が充填された圧力抑制プールを有する圧力抑制室(ウェットウェル)45等を備えている。格納容器41の内部には、ドライウェル44、格納容器下部空間2などが設けられている。ドライウェル44は、圧力容器1等を取り囲むように設けられている。格納容器下部空間2は、圧力容器1の下方に設けられ、複数の制御棒駆動機構ハウジング5等を収容している。ドライウェル44と格納容器下部空間2は、格納容器41の底部に形成されたコンクリート製の格納容器床面(床面)3から上方向に立設する筒状のペデスタル62により区画されている。格納容器41における圧力容器1の下方の床面3にはコアキャッチャー10が配置されている。以下、コアキャッチャー10について説明する。
【0021】
図7は本発明のコアキャッチャーの外観を表す鳥瞰図,
図8はコアキャッチャーの構造を表す縦断面図(A−A‘縦断面)と水平断面図(B−B‘水平断面),
図9は縦リブ形状を表す水平断面図である。
本実施例では,
図7に示すようにデブリD1を受け止めるコアキャッチャー10は,半球状のコアキャッチャー壁11と,その壁面に接合された縦リブ12と,コアキャッチャー壁11に対して間隙14を介し縦リブ12の外周側に接合された横リブ13で構成される。横リブ13の構成上の要点は,コアキャッチャー壁11に接触していないことである。ここで,縦リブ12と横リブ13の本数は特に限定するものではなく,デブリD1を受け止めた後のコアキャッチャー壁11の熱負荷と構造強度を評価して必要数を決めて良い。
【0022】
図8の縦断面図に示すように、縦リブ12はコアキャッチャー10中心の鉛直軸と半球中心軸水平面との接点を基点に,鉛直軸と30度(経方向周長が底部から1/3)のコアキャッチャー壁11外表面から,90度(上端)以上までの外面に連続的に接合されている。縦リブ12によって,
図2と
図4を用いて説明した傾斜角30度以上の壁面での溶融,減肉によるコアキャッチャー壁11の構造強度の低下が補われるため,デブリD1を保持する機能が保たれる。一方,溶融,減肉によって,コアキャッチャー壁11にはデブリD1の熱と荷重によって周方向に伸びる応力が発生する。これに対して横リブ13が縦リブ12を介してコアキャッチャー壁11を支持しているため,コアキャッチャー壁11の周方向の伸びが防止される。
縦リブ12によって傾斜角30度以上のコアキャッチャー壁11外側の冷却水W1の流動径路は縦方向に制限されるが,
図1で説明したようにコアキャッチャー壁11の外表面に沿った冷却水W1の流れが沸騰蒸気の浮力に駆動された縦方向の流れであるため,コアキャッチャー壁11の外面冷却への影響は少ない。
コアキャッチャー壁11の底部外表面では,沸騰蒸気の浮力のベクトルが壁表面と交差するため蒸気の流速が遅くコアキャッチャー壁11底部外表面に滞留し易くなる。底部外表面に障害物があると,滞留蒸気が抜けにくくなって膜沸騰に遷移する可能性があるが,本実施例では,縦リブ12接合箇所を傾斜角30°以上に制限してコアキャッチャー壁11の底部外表面を障害物の無い構造にすることによって,底部外表面からの蒸気の移動を円滑にしている。
【0023】
また,
図9(1)の水平断面に示すように,コアキャッチャー壁11の外表面から破線で示す距離が冷却水W1の冷却で壁面温度がコアキャッチャー壁11の融点に保たれる範囲である。縦リブ12をコアキャッチャー壁11厚さより薄くすることによって,縦リブ12両面からの冷却で
図9(2)に示すコアキャッチャー壁11の溶融,減肉による欠損C1が緩和されるとともに,縦リブ12は伝熱フィンとしても機能するため,コアキャッチャー壁11の縦リブ12接合部での溶融,減肉が防止される。
【0024】
図10は,第1実施例の変形例に係る縦リブ形状を表す水平断面図である。上記の溶融,減肉を防止するため縦リブ12を薄くする必要があるが,縦リブ12の強度が低下する課題がある。これに対して間隙14の幅を狭める方法があるが,間隙14を極端に狭くした場合,冷却水W1の流動が阻害される可能性がある。本実施例の変形例は,
図10に示すように,縦リブ12の形状をコアキャッチャー壁11の接合部では薄く,横リブ13側では厚くしたものである。これによって,
図5に示したコアキャッチャー壁11の欠損を起こすことなく,縦リブ12の構造強度が高まる。
図10(1)は縦リブ12の中間から厚さを増加させた例であり,
図10(2)は縦リブ12の厚さを段階的に変えた例である。
【0025】
コアキャッチャー壁11の材質は,高熱伝導率,且つ高融点,且つ高靭性の材質が適しており,ステンレス鋼,あるいは炭素鋼,あるいはタングステン鋼,あるいはモリブデン鋼で構成する。例えば,ステンレス鋼を用いた場合,式1で計算した傾斜角90度の位置の熱流束とステンレスの物性値,大気圧の冷却水条件に基づくコアキャッチャー壁11の外表面温度を式2に代入すると減肉後の壁厚さは約15mmである。また,炭素鋼を用いた場合は,約40mmである。
【0026】
以上の本実施例によれば,炉心が溶融し原子炉圧力容器が破損するようなシビアアクシデント時に,原子炉圧力容器から落下した炉心溶融物(デブリ)を冷却,保持する外面冷却型のコアキャッチャーにおいて,コアキャッチャーの壁面を確実に冷却するとともに,デブリの熱による壁の溶融,減肉対してコアキャッチャー壁の構造強度を確保することが出来る。これによって,デブリの格納容器床面への落下を防止して格納容器の破損を防止できるため,原子炉の安全性が向上する。
【0027】
<第2実施例>
本発明の第2実施例について,
図11を参照して詳細に説明する。
図11は,本発明の第2実施例のコアキャッチャーの構造を表す縦断面図(A−A‘縦断面)と水平断面図(B−B‘水平断面)である。本実施例では,デブリD1を受け止めるコアキャッチャー18は,円筒状のコアキャッチャー壁19と,その壁面に接合された縦リブ20と,コアキャッチャー壁19に対して間隙22を介し縦リブ20の外周側に接合された横リブ21で構成される。ここで,縦リブ20と横リブ21の本数は特に限定するものではなく,デブリD1を受け止めた後のコアキャッチャー壁19の熱負荷と構造強度を評価して必要数を決めて良い。形状を円筒状にすることによって,角部が生じるものの,デブリの保持量が増加する。また,デブリ保持量は同じであれば,コアキャッチャーの高さや,直径を縮小できる。
【0028】
図11の縦断面図に示すように、縦リブ20はコアキャッチャー18の側壁に接合されるが,受け止めたデブリD1の熱負荷が大となるケースはデブリが大量に落下した場合の側壁の上部であり,
図2に示した熱流束増加が生じる半球形状の30°より上方の位置を円筒形状に適用すると,縦リブ20はコアキャッチャー壁19の上端からコアキャッチャー壁19底部から全高の1/3の高さより下方を接合すればよい。縦リブ20によって,
図2と
図4を用いて説明したコアキャッチャー壁19上部の溶融,減肉による構造強度の低下が補われるため,デブリD1を保持する機能が保たれる。一方,溶融,減肉によって,コアキャッチャー壁19にはデブリD1の熱と荷重によって周方向に伸びる応力が発生する。これに対して横リブ21が縦リブ19を介してコアキャッチャー壁19を支持しているため,コアキャッチャー壁11の周方向の伸びが防止される。
縦リブ20によってコアキャッチャー壁19外側の冷却水W1の流動径路は縦方向に制限されるが,
図1で説明したようにコアキャッチャー壁11の外表面に沿った冷却水W1の流れが沸騰蒸気の浮力に駆動された縦方向の流れであるため,縦リブ20によるコアキャッチャー壁19の外面冷却への影響は少ない。
コアキャッチャー壁19の底部外表面では,底部外表面に障害物があると,滞留蒸気が抜けにくくなって膜沸騰に遷移する可能性があるが,本実施例では,縦リブ20の接合箇所をコアキャッチャー壁19の側面に制限してコアキャッチャー壁19の底部外表面を障害物の無い構造にしているため,底部外表面からの蒸気の移動が円滑になる。
【0029】
以上の本実施例によれば,第1実施例の効果に加えて,コアキャッチャーを小型化できるので,設置の自由度が向上するとともに,経済性が向上する。
【0030】
<第3実施例>
本発明の第3実施例について,
図12を参照して詳細に説明する。
図12は,本発明の第3実施例に係るコアキャッチャーの構造を表す縦断面図である。デブリD1を受け止めるコアキャッチャー10は,半球状のコアチャッチャー内壁23とその外表面に接合されたコアチャッチャー外壁24の多重壁と,コアチャッチャー外壁24に接合された縦リブ25と,コアチャッチャー外壁24に対して図示しないが
図8と同様に間隙を介し縦リブ25の外周側に接合された横リブ26で構成される。本実施例では,コアチャッチャー内壁23に第1実施例と同様の高熱伝導率,且つ高融点,且つ高靭性の材質を用い,コアチャッチャー外壁24に超高熱伝導率の材質,具体例として銅,あるいは真鍮,あるいはアルミニウムを用いる。
コアチャッチャー外壁24の材質は,融点が低いため直接コアチャッチャー内壁23に用いると壁の過渡的な温度上昇時に溶融し易くなる。一方,熱伝導率が高いため,デブリからの熱流束に対して融点を越えない限り減肉後の壁厚さが熱伝導率に比例して厚くなる。コアチャッチャー外壁23は高融点であるため,これらの壁の材質を組み合わせることによって,過渡的な温度上昇に対応可能で,且つ壁を厚肉化による構造強度の向上が期待される。
【0031】
コアチャッチャー内壁23の厚さは,式1で計算した熱流束用い,式2でコアキャッチャー壁外表面温度Toをコアチャッチャー外壁24の材質の融点以下の温度(仮にTxとする)に置き換えて計算し求める。コアチャッチャー外壁24の厚さは,同様に式1で計算した熱流束用い,式2でコアキャッチャー壁の融点Tmを上記の温度Txに置き換えて計算し求める。上記の手順で得られたコアチャッチャー内壁23の厚さは,第1実施例と同様の高熱伝導率,且つ高融点,且つ高靭性の材質を用いた場合より薄くなるが,コアチャッチャー外壁24の厚さが熱伝導率に比例して厚くなるため,内壁と外壁を合計したコアチャッチャー壁の厚さは,第1実施例のケースより厚くなる。
例えば,コアチャッチャー内壁23にステンレス鋼(熱伝導率16W/mK)を,コアチャッチャー外壁24に真鍮(熱伝導率106W/mK)を用いた場合,温度Txを1140Kとすると,第1実施例と同条件で式2で計算するとコアチャッチャー内壁23の減肉後の壁厚さは約5mm,コアチャッチャー外壁24の壁厚さは約50mmであり,合計したコアチャッチャー壁の厚さは55mmに増加する。本実施例は,半球形状のコアキャッチャーに限らず,第2実施例に示した円筒状のコアキャッチャーにも適用可能である。
なお,コアチャッチャー壁の過渡的な温度上昇による影響を無視し,超高熱伝導率の材質の壁における式1に示したような熱流束の評価式を得て,式2で求めた壁厚さで構造強度的成立性を評価できれば,第1実施例のコアチャッチャー壁11を超高熱伝導率の材質のみで構成可能である。
【0032】
以上の本実施例によれば,第1実施例の効果に加えて,コアキャッチャーの壁厚さを増加できるので構造強度が確保され,デブリの格納容器床面への落下を防止して格納容器の破損を防止する性能が高まるため,原子炉の安全性が向上する。
【0033】
<第4実施例>
本発明の第4実施例について,
図13と
図14を参照して詳細に説明する。
図13と
図14は,本発明の第4実施例に係るコアキャッチャーの構造を表す縦断面図である。デブリD1を受け止めるコアキャッチャー10は,半球状のコアチャッチャー壁11とその内表面に設置された犠牲材27と,コアチャッチャー壁11に接合された縦リブ12と,コアチャッチャー壁11に対して図示しないが
図8と同様に間隙を介し,縦リブ12の外周側に接合された横リブ13で構成される。本実施例では,コアチャッチャー壁11に第1実施例と同様の高熱伝導率,且つ高融点,且つ高靭性の材質を用い,犠牲材27にコアチャッチャー壁11の材質より低融点の材質,具体例としてコンクリート,二酸化ケイ素等を用いる。
【0034】
崩壊熱を連続的に放出しているデブリD1に対するコアキャッチャー壁11の温度上昇を防止するためには,外部冷却の冷却水W1への除熱量を増加させることと,デブリ自体の温度を下げることが有効である。例えば,耐熱材を用いて一時的にデブリD1からコアキャッチャー壁11への伝熱量を減少させることはできるが,放熱できなかったデブリD1の崩壊熱がデブリ自体の温度を上げることなる。デブリD1の温度が上昇して耐熱材が溶融すると,コアキャッチャー壁11は高温のデブリD1の熱に晒される。したがって,コアキャッチャー壁11より融点の低いコンクリートや二酸化ケイ素等の犠牲材をデブリD1に接触させてその熱容量と溶融潜熱でデブリの温度を下げることが有効である。
犠牲材27の溶融中も熱伝導でコアキャッチャー壁11にデブリD1の熱が伝わり,さらにコアキャッチャー壁11外表面から冷却水W1に熱が伝わり除熱される。犠牲材27が溶融した後は,温度の下がったデブリD1とコアキャッチャー壁11の間の熱伝達で,式2で計算される厚さまでコアキャッチャー壁11は溶融する。この時にも,壁面の溶融潜熱相当の除熱でデブリD1の温度は低下する。その後は,デブリD1とコアキャッチャー壁11で崩壊熱相当の除熱が継続するため,コアキャッチャー壁11は高温のデブリD1によって過渡的な溶融が生じることなく,コアキャッチャー壁11の健全性が保たれる。
【0035】
図14は,
図13のコアチャッチャー壁11内表面に設置された犠牲材27に加えて,コアキャッチャー10の内部にも犠牲材27aを配置した例である。犠牲材27aの体積の上限は,デブリD1の最大落下体積を基に犠牲材27a溶解後のデブリD1の上面17がコアキャッチャー10の上面を越えないように設定される。犠牲材27aの形状は,デブリ落下時の衝撃で飛散しないように,相互接触で拘束された構造,例えばテトラポット形状とすることが好ましい。本実施例は,半球形状のコアキャッチャーに限らず,第2実施例に示した円筒状のコアキャッチャーにも適用可能である。
以上の本実施例によれば,第1実施例の効果に加えて,デブリ温度を低下させるとともに継続的な外部冷却の冷却水への除熱が続くため,コアキャッチャー壁の構造強度が確保され,デブリの格納容器床面への落下を防止して格納容器の破損を防止する性能が高まり,原子炉の安全性が向上する。
【0036】
<第5実施例>
本発明の第5実施例について,
図15から
図17を参照して詳細に説明する。
図15から
図17は,本発明の第5実施例に係るコアキャッチャーの架台構造を表す縦断面図である。半球状のコアキャッチャー10は,コアキャッチャー10中心の鉛直軸と半球中心軸水平面との接点を基点に,鉛直軸と30度以下のコアキャッチャー壁11外表面にコアキャッチャー壁支持部29を接した架台28によって床面に設置される。
図4を用いて説明したように,コアキャッチャー壁11の断面は,底部30度までは比較的厚く(
図4の領域A),上記基点から30度を超えると側壁部が薄くなる(
図4の領域B)。また,
図5を用いて説明したように,コアキャッチャー壁11外表面に部材が接触すると,熱抵抗になって壁の減肉が進む特徴がある。この影響は壁厚さの薄い上記基点から30度を超える側壁部で大きいため,
図15に示すように架台の取り付けは上記基点から30度以下の箇所に点支持することが有効である。コアキャッチャー壁支持部29の数は,コアキャッチャー壁11の構造強度を計算した上で,適切な間隔,個数とすることが好ましい。
【0037】
一方,壁面へのコアキャッチャー壁支持部29の接触は熱抵抗上好ましくないが,縦リブや横リブを支持部とすることは,リブが壁面の支持部材で強度を有することから適切である。
図16は架台28のコアキャッチャー壁支持部29を縦リブ12に取り付けた例であり,
図17は架台28のコアキャッチャー壁支持部29を縦リブ12と横リブ13の両方に取り付けた例である。
本実施例の架台は,半球形状のコアキャッチャーに限らず,第2実施例に示した円筒状のコアキャッチャーにもおいて,架台28の取り付け箇所を円筒状のコアキャッチャー壁19の底部から全高の1/3の高さより下方と,底部の外表面,及び縦リブ20と横リブ21とすることにより適用可能である。
【0038】
以上の本実施例によれば,第1から第4の実施例の効果に加えて,コアキャッチャー壁の強度を保ちながらコアキャッチャー内のデブリを床面で支持できるので,構造強度が確保され,デブリの格納容器床面への落下を防止して格納容器の破損を防止する性能が高まり,原子炉の安全性が向上する。
【0039】
<第6実施例>
本発明の第6実施例について,
図18を参照して詳細に説明する。
図18は,本発明の第6実施例に係る縦リブ形状を表す縦断面図と水平断面図である。第1から第5実施例に示したコアキャッチャー壁11,縦リブ12,横リブ13の構成において,縦リブ12の接合面に直行する板面に,縦リブ12外周側から内周側に向かって上向き傾斜を有す導流板30を,コアキャッチャー壁11の外表面に対して間隙を保持して接合する。
図2で説明したように,縦リブ12によってコアキャッチャー壁11が冷却水W1に直接接触しない面があり,縦リブ12とコアキャッチャー壁11が交差する隅部領域R1での冷却が不十分であると,コアキャッチャー壁11の内側に欠損部分C1が生じる可能性がある。本実施例では,縦リブ12に沿って間隙22を上昇してきた冷却水W1の流れの向きを導流板30によって曲げ,隅部領域R1の冷却水の流れW2を増加する。これによって,縦リブ12接合部近傍のコアキャッチャー壁11が十分に冷却され,コアキャッチャー壁11内側の局所の減肉による欠損を防止できる。
【0040】
以上の本実施例によれば,第1から第5の実施例の効果に加えて,コアキャッチャー壁の構造強度が確保され,デブリの格納容器床面への落下を防止して格納容器の破損を防止する性能が高まり,原子炉の安全性が向上する。
【0041】
<第7実施例>
本発明の第7実施例について,
図19を参照して詳細に説明する。
図19は,本発明の第7実施例に係る縦リブ形状を表す水平断面図である。第1から第6実施例に示したコアキャッチャー壁11,横リブ13の構成において,縦リブ31をコアキャッチャー壁11の一部を外側に突の外折リブ形状とし,コアキャッチャー壁11外表面と間隙22を介して外折部先端を点支持する横リブ13を設ける。縦リブ31の外折部先端は,横リブ13表面の接合部32にスポット接合する。スポット接合であるので,コアキャッチャー壁11内表面に欠損が生じ難い。また,コアキャッチャー壁11と縦リブ31を一体構造とすることによってコアキャッチャー壁11の強度が増すとともに,デブリD1の熱によるコアキャッチャー壁11の変形を外折部の空間R2で吸収できるので,コアキャッチャーの変形が防止される。本実施例では,
図5(2)の欠損と異なり,コアキャッチャー壁11に欠損が生じず,壁の連続した構造が保たれる。
【0042】
以上の本実施例によれば,第1から第6の実施例の効果に加えて,コアキャッチャーの変形を防止できるので,デブリの格納容器床面への落下を防止して格納容器の破損を防止する性能が高まり,原子炉の安全性が向上する。
【0043】
<第8実施例>
本発明の第8実施例について,
図20を参照して詳細に説明する。
図20は,本発明の第8実施例に係るコアキャッチャーの構造を表す縦断面図である。第1から第7実施例において,コアキャッチャー10は,半球状のコアチャッチャー壁11と,コアチャッチャー壁11に接合された縦リブ12と,コアチャッチャー壁11に対して図示しないが
図8と同様に間隙を介し,縦リブ12の外周側に接合された横リブ13で構成される。本実施例では,コアチャッチャー壁11の上端に複数の貫通孔33を設けた円筒状の支持壁34を取り付け,支持壁34の上端にコアキャッチャー10の中心方向に負の傾斜を有する漏斗状の導流板36を設ける。導流板36は,その上端の鉛直下方の投影円が横リブ13の外縁より外側を通り,上端の鉛直下方の投影円がコアチャッチャー壁11内表面より内側を通るような形状と寸法をとる。また,貫通孔33はその上縁高さが導流板36の下端より高くなるように穿たれる。
【0044】
コアチャッチャー壁11の上部より上方で,且つ貫通孔33の下縁より下方にコアキャッチャー10の上部全面を覆う逆円錐形状の防水板35を設ける。防水板35の円縁は全周をコアチャッチャー壁11,あるいは支持壁34に接合する。防水板35は軽量材で製作し,その最小強度は防水板35の円錐内から貫通孔33の高さまで水が溜まっても保持可能なように,寸法,構造,材質を設定する。最大強度は防水板35の円錐空間にデブリが溜まった状態で防水板35がデブリ重量や熱負荷で破損,あるいは溶融するように構造,材質を設定する。
【0045】
原子炉圧力容器1からデブリが落下した場合に,コアキャッチャー10の中央ではなく周辺部にデブリが落下すると,本発明のコアチャッチャー壁11と横リブ13の図示しない間隙14を落下デブリが塞ぎ,冷却水W1のコアチャッチャー壁11外表面に沿った流動が阻害される可能性がある。コアチャッチャー壁11の冷却が不十分になると,壁面の減肉による破損が生じる。導流板36は,コアチャッチャー壁11と横リブ13を全周にわたって覆う設置位置とその表面の傾斜によって,落下デブリをコアチャッチャー10の内部に導く機能を有す。
一方,コアキャッチャー10は上部開放で下部が密閉構造であるため,原子炉運転中の格納容器下部空間2に落下する蒸気凝縮水等の水が溜まる場合がある。シビアアクシデント時に原子炉圧力容器1から落下したデブリがコアキャッチャー10内の水中に落下すると水温と雰囲気圧力の条件によっては,水蒸気爆発の発生を想定する必要がある。本実施例のコアキャッチャー10では,防水板35とコアチャッチャー壁11,支持壁34で囲まれる空間で蒸気凝縮水を溜め,さらに増加した水を貫通孔33からコアキャッチャー10の外に排水できる。デブリ落下時は,防水板35の円錐空間にデブリが溜まった時点で防水板35が破損,あるいは溶融してコアキャッチャー10内にデブリが落下する。これによって,デブリ落下開始時の水蒸気爆発を防止するとともに,コアキャッチャー10によるデブリ保持機能を確保できる。
【0046】
以上の本実施例によれば,第1から第7の実施例の効果に加えて,コアキャッチャー内に溜まった水へのデブリ落下による水蒸気爆発を防止できるので,デブリの格納容器床面への落下を防止して格納容器の破損を防止する性能が高まり,原子炉の安全性が向上する。
【0047】
上述した第1〜8実施例では、原子炉圧力容器から格納容器床面に落下するデブリを受け止めるコアキャッチャーの例を示した。しかし,本発明の本質は高温の熱流体を容器構造に確実に保持することであり,本発明は原子炉圧力容器の下部構造や,格納容器の底部構造にも応用可能である。