【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
〔第一の評価〕
実施例及び比較例を次のように準備した。なお、比較例1は、既存の酸素洗浄装置において用いられているものである。
実施例1:パイプ2を外径21.7mm・肉厚2.3mmの鉄パイプとした。
実施例2:パイプ2を外径21.7mm・肉厚1.9mmの鉄パイプとした。
実施例3:パイプ2を外径21.7mm・肉厚1.6mmの鉄パイプとした。
比較例1:パイプ2を外径21.7mm・肉厚2.8mmの鉄パイプとした。
比較例2:パイプ2を外径21.7mm・肉厚1mmの鉄パイプとした。
【0035】
比較例1の作業性を基準にして、実施例1〜3及び比較例2の作業性を評価した。具体的には、比較例1による作業を長年経験した作業者の感触によって作業性を評価し、その「OK」、「NG」を次のように判定した。
OK:比較例1と同等の作業性である。
NG:パイプ2の撓みに起因して、比較例1に対して作業性が悪化した。
この判定結果を
図3に示す。
図3に示すように、実施例1〜3は「OK」であり、比較例2は「NG」であった。これらのことから、パイプ2の肉厚が少なくとも1.6mm以上であれば、従来通りの操作性を保てることが確認された。
【0036】
〔第二の評価〕
上述の実施例1〜3及び比較例1について、全発生熱量と、第一熱量と、第二熱量とを測定し、比較評価を行った。具体的には、次の要領にて測定を行った。
i) 酸素濃度90%の酸素含有ガスを収容した酸素供給源4を準備した。
ii) パイプ2の外径が21.7mmであり、パイプ2の肉厚が2.8mmであり、パイプ2の長さが4mである場合に、パイプ2を経て炉底部9内に導入される酸素の流量が約65m
3/h(Normal)となるように、バルブ41の開度を設定し、各測定においてこの開度を一定に保った。
iii) パイプ2の消耗速度を測定し、消耗したパイプ2は全てFe
2O
3となる前提にて、消耗速度の測定結果から第二熱量[kJ/s]を算出した。
iv) 上記iii)と共通の前提にて、パイプ2の燃焼に用いられた酸素量を算出した。
v) パイプ2を経た酸素供給量を測定し、その測定結果から上記iv)の算出結果を減算することで、炉内可燃物の燃焼に用いられた酸素量を算出した。
vi) 炉内可燃物は全てCO
2となる前提にて、上記v)の算出結果から第一熱量[kJ/s]を算出した。
vii) 上記iii)の算出結果と上記vi)の算出結果とを加算して、全発生熱量[kJ/s]を算出した。
全発生熱量QTと、第一熱量Q1と、第二熱量Q2との測定結果を
図4に示す。
図4に示すように、比較例1においては、第一熱量Q1に対する第二熱量Q2の比率が約1/2.4であった。実施例1〜3において、第一熱量Q1に対する第二熱量Q2の比率は、それぞれ約1/2.8、1/3.1、1/3.6、1/4.5であった。実施例1〜3のいずれにおいても、第二熱量Q2は比較例1と同様であった。一方、実施例1における第一熱量Q1は比較例1に比べて大きく、実施例2における第一熱量Q1は実施例1に比べて更に大きく、実施例3における第一熱量Q1は実施例2に比べて更に大きかった。これらの結果から、以下の知見が得られた。
a) パイプ2を経た酸素供給により発生する熱量(以下、「全発生熱量」という。)の大半は、第二熱量ではなく第一熱量である。
b) パイプの内径の拡大により、酸素の供給量を増やしたとしても、第二熱量は大きくならない。
c) パイプの内径の拡大により、酸素の供給量を増やすと、第一熱量は大きくなる。
d) 既存の酸素洗浄装置において、第一熱量に対する第二熱量の比率は約1/2.4である。
これらの知見から、パイプ2の寸法の調節により、全発生熱量に対する第一熱量の比率を大きくすることで、全発生熱量に対する第二熱量の比率を小さくし、酸素洗浄用のパイプの材料消費を削減できることが確認された。更に、第一熱量に対する第二熱量の比率が1/2.4未満となるようにパイプ2の寸法を設定すれば、既存の酸素洗浄装置に比較して、パイプ2の材料消費を削減できることが確認された。
【0037】
〔第三の評価〕
次の5種類のパイプ及び4種類の継手部材を準備した。
パイプ2A:外径21.7mm・肉厚2.8mmの鉄パイプ。
パイプ2B:外径21.7mm・肉厚2.3mmの鉄パイプ。
パイプ2C:外径21.5mm・肉厚2.3mmの鉄パイプ。
パイプ2D:外径21.7mm・肉厚1.9mmの鉄パイプ。
パイプ2E:外径21.7mm・肉厚1.6mmの鉄パイプ。
継手部材21A:内径22mm、肉厚2.6mmの鉄パイプ(筒状部材)。
継手部材21B:内径22mm、肉厚1.7mmの鉄パイプ(筒状部材)。
継手部材21C:内径22.2mm、肉厚1.6mmの鉄パイプ(筒状部材)。
継手部材21D:内径22.5mm、肉厚1.6mmの鉄パイプ(筒状部材)。
【0038】
4種類の継手部材のそれぞれを用い、5種類のパイプのそれぞれについて同種のパイプ同士の接合を行った。その後、各接合部について「OK」、「NG」を次のように判定した。
OK:接合部から酸素含有ガスのリークなし。
NG:接合部から酸素含有ガスのリークあり。
この判定結果を
図5に示す。なお、4種類の継手部材21及び5種類のパイプ2の組み合わせのうち、他の組み合わせの判定結果に基づいて評価結果を推定できるものについては、適宜評価を省略した。
図5に示す組み合わせのうち、評価を省略した組み合わせについては、「OK」、「NG」に代えて「−」が付されている。
【0039】
パイプ2A,2B,2D,2Eに継手部材21Aを用いた結果は、それぞれ「OK」、「NG」、「NG」、「NG」であった。パイプ2B,2D,2Eに継手部材21Aを用いた結果が「NG」であった理由としては、パイプ2B,2D,2Eの肉厚が小さいために、かしめ後におけるパイプ2B,2D,2Eの変形量が継手部材21Aの変形量よりも大きくなったことが考えられる。パイプ2B,2D,2Eに継手部材21Bを用いた結果はいずれも「OK」であった。パイプ2A,2B,2D,2Eに継手部材21Cを用いた結果はいずれも「OK」であった。パイプ2B,2C,2D,2Eに継手部材21Dを用いた結果はいずれも「OK」であった。これらの結果から、以下の知見が得られた。
e)かしめ前における継手部材21の肉厚からパイプ2の肉厚を減じた値は0.1mm以下であることが好ましい。
【0040】
なお、パイプ2と継手部材21との隙間が過大になると、かしめ後においてもパイプ2と継手部材21Cとが密着し難くなり、接合部における気密性を確保できなくなる可能性がある。
図5に示す組み合わせにおいて、継手部材21の内径とパイプ2の外径との差が最大であるのは、継手部材21Dとパイプ2Bとの組み合わせである。継手部材21Dの内径とパイプ2Bの外径との差は1mmであり、この組み合わせにおける酸素含有ガスのリークはなかった。この結果から、少なくとも、継手部材21の内径とパイプ2の外径との差が1mm以下であれば、接合部における気密性を確保できることが確認された。