特許第6775417号(P6775417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775417
(24)【登録日】2020年10月8日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】画像形成装置および画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 15/04 20060101AFI20201019BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20201019BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   B41J15/04
   G03G21/00 370
   G03G15/00 411
   G03G15/00 413
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-256156(P2016-256156)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-108644(P2018-108644A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2019年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】591044164
【氏名又は名称】株式会社沖データ
(74)【代理人】
【識別番号】100133101
【弁理士】
【氏名又は名称】島崎 俊英
(72)【発明者】
【氏名】横山 尚武
【審査官】 五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−234446(JP,A)
【文献】 特開昭63−180498(JP,A)
【文献】 特開2015−042580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 15/00
B41J 11/00
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続紙を搬送する搬送部と、
前記搬送部に配置され、前記連続紙を搬送させながら切断する切断部と、
連続紙の搬送方向における前記搬送部の前記切断部の下流に配置され、搬送されている連続紙に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部により前記連続紙に形成された画像を、前記連続紙を挟持しながら定着させる定着部と、
前記切断部と前記画像形成部との間に位置する弛み生成位置において搬送されている連続紙に弛みを生成する弛み生成部と、
を有し、
前記弛み生成部は、前記切断部で連続紙を切断する前であって、前記連続紙の先端が前記定着部を通過した後に、前記連続紙に弛みを生成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記画像形成部は、現像剤像を転写する転写部であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において、
前記弛み生成部は、
連続紙を搬送する第1の搬送手段と、
連続紙の搬送方向における前記第1の搬送手段の下流に配置され、連続紙を搬送する第2の搬送手段とを有し、
前記第1の搬送手段の搬送速度を前記第2の搬送手段の搬送速度より速くして連続紙に弛みを形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記弛み生成部は、前記切断部で連続紙が切断された後、前記第1の搬送手段の搬送速度を前記第2の搬送手段の搬送速度と同じ速度に戻すことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の画像形成装置において、
前記切断部で切断された連続紙の後端が前記第1の搬送手段を通過すると、前記第1の搬送手段の搬送を停止することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項3から請求項のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記第1の搬送手段および前記第2の搬送手段は、連続紙を挟持して搬送するローラであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項3から請求項のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記切断部は、搬送されている連続紙を回転刃で切断することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項に記載の画像形成装置において、
前記切断部の回転刃の速度は、前記第1の搬送手段の搬送速度以上であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
連続紙を搬送する搬送部と、
前記搬送部に配置され、前記連続紙を搬送させながら切断する切断部と、
連続紙の搬送方向における前記搬送部の前記切断部の下流に配置され、搬送されている連続紙に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部により前記連続紙に形成された画像を、前記連続紙を挟持しながら定着させる定着部と、
前記切断部と前記画像形成部との間に位置する弛み生成位置において搬送されている連続紙に弛みを生成する弛み生成部と、
を有する画像形成装置の画像形成方法であって、
前記弛み生成部は、前記切断部で連続紙を切断する前であって、前記連続紙の先端が前記定着部を通過した後に、前記連続紙に弛みを生成することを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続紙に画像形成を行いながら連続紙を切断する画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置は、連続紙の切断時の画像の乱れを防止するために連続紙に弛みを形成し、また連続紙の良好な搬送を確保するため、連続紙に所望の弛みを確保しつつ、その弛みを次第に減少させながら連続紙を搬送するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−091651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術においては、常に所望の弛みを保持しながら連続紙を搬送するため、連続紙の搬送の安定性は確保できないという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、連続紙の切断時の画像の乱れを防止するとともに、連続紙の搬送の安定性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため、本発明は、連続紙を搬送する搬送部と、前記搬送部に配置され、前記連続紙を搬送させながら切断する切断部と、連続紙の搬送方向における前記搬送部の前記切断部の下流に配置され、搬送されている連続紙に画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部により前記連続紙に形成された画像を、前記連続紙を挟持しながら定着させる定着部と、前記切断部と前記画像形成部との間に位置する弛み生成位置において搬送されている連続紙に弛みを生成する弛み生成部と、を有し、前記弛み生成部は、前記切断部で連続紙を切断する前であって、前記連続紙の先端が前記定着部を通過した後に、前記連続紙に弛みを生成することを特徴とする。

【発明の効果】
【0006】
このようにした本発明は、連続紙の切断時の画像の乱れを防止するとともに、連続紙の搬送の安定性を確保することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例における印刷装置の構成を示す概略側断面図
図2】実施例における印刷装置の制御構成を示すブロック図
図3】実施例における連続紙の切断動作および画像形成動作の説明図
図4】実施例における連続紙の切断動作および画像形成動作の説明図
図5】実施例における連続紙の切断動作および画像形成動作の説明図
図6】実施例におけるモータAの制御の説明図
図7】比較例における印刷装置の構成を示す概略側断面図
図8】比較例における弛み作成動作の説明図
図9】比較例におけるショックライン発生の説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明による画像形成装置および画像形成方法の実施例を説明する。
【実施例】
【0009】
図1は実施例における印刷装置の構成を示す概略側断面図である。
図1において、画像形成装置としての印刷装置1は、連続紙としてのロール紙Pに画像形成を行いながら任意の長さでロール紙Pを切断して排出する電子写真方式のプリンタである。
印刷装置1は、転写ベルト2と、転写ローラ3と、定着部4と、ロータリカッタ5と、搬送ローラA6と、搬送ローラB7と、搬送ローラC8と、搬送ローラD9と、モータA10と、モータB11と、弛みエリア13と、イメージユニット(以下、「IDユニット」と記す。)15K、15C、15Y、15M、15Wと、センサ16とを有している。
【0010】
搬送ローラA6は、回転することによりロール紙Pを挟持して搬送するローラ対である。この搬送ローラA6は、搬送ローラB7、搬送ローラC8、搬送ローラD9とともに、ロール紙Pを図中矢印Aが示す媒体搬送方向に搬送する搬送手段としての搬送部を形成する。この搬送部の媒体搬送方向における最上流に搬送ローラA6が配置されている。
【0011】
搬送ローラB7は、媒体搬送方向におけるロータリカッタ5の下流に配置され、回転することによりロール紙Pを挟持して搬送するローラ対である。
搬送ローラC8は、媒体搬送方向における搬送ローラB7の下流に配置され、回転することによりロール紙Pを挟持して搬送するローラ対である。
搬送ローラD9は、媒体搬送方向における搬送ローラC8の下流に配置され、回転することによりロール紙Pを挟持して搬送するローラ対である。
【0012】
転写ベルト2は、ベルトローラ等の複数のローラに回転可能に張架され、IDユニット15K、15C、15Y、15M、15Wによって形成された現像剤像としてのトナー像を転写ローラ3へ搬送させるものである。
IDユニット15K、15C、15Y、15M、15Wは、回転可能に設けられた複数の像担持体である感光ドラムを有し、ブラック色(K)、シアン色(C)、イエロー色(Y)、マゼンタ色(M)、ホワイト色(W)のトナー像を感光ドラムに形成し、対向配置された搬送ベルト2上に1次転写する画像形成動作を行うものである。
【0013】
画像形成部および転写部としての転写ローラ3は、図中矢印Aが示す媒体搬送方向における搬送部の搬送ローラD9(ロータリカッタ5)の下流に配置され、搬送されているロール紙Pに転写ベルト2上に形成されたトナー像を転写して画像を形成するものである。この転写ローラ3は、高電圧を印加させることにより、転写ベルト2上に形成されたトナー像をロール紙Pに転写する。なお、画像形成部により形成される画像は、トナー像に限られることなく、インク等の画像であっても良い。
【0014】
定着部4は、媒体搬送方向における転写ローラ3の下流に配置され、ロール紙Pを搬送するとともに、ロール紙Pに転写されたトナー像を定着させるものである。この定着部4は、加熱部材を有する定着ローラを備え、熱と圧力でロール紙Pに転写されたトナー像を定着させる。トナー像が定着されたロール紙Pは搬送ローラ4aにより装置外へ搬送される。
このように、搬送ローラA6、搬送ローラB7、搬送ローラC8、搬送ローラD9、および定着部4の搬送ローラ4aにより、ロール紙Pが搬送される搬送経路が形成されている。
【0015】
切断部としてのロータリカッタ5は、搬送部に配置され、媒体搬送方向における搬送ローラA6の下流に配置され、搬送ローラA6、搬送ローラB7等により搬送されているロール紙Pを切断するものである。このロータリカッタ5は、回転刃が回転することにより、搬送されているロール紙Pを媒体搬送方向と略直交する方向に切断することができるようになっている。例えば、ロータリカッタ5は、回転しない固定刃と、搬送ローラA6、搬送ローラB7等によるロール紙P1の搬送速度と同等速度以上で回転する回転刃とにより構成されている。
【0016】
モータA10は、搬送ローラA6および搬送ローラB7を回転駆動する駆動源である。
モータB11は、搬送ローラC8および搬送ローラD9を回転駆動する駆動源である。
モータA10およびモータB11は、制御部によりそれぞれ個別に回転速度や回転量等が制御される。したがって、搬送ローラA6および搬送ローラB7の回転速度を搬送ローラC8および搬送ローラD9の回転速度より速くすることにより搬送するロール紙Pに弛みを形成することができるようになっている。
【0017】
モータA10およびモータB11は、例えばステッピングモータ等により構成され、制御部から出力されるパルスにしたがって動作し、出力パルスの周波数によって回転速度が制御され、また出力パルス数によって回転量が制御される。
検知手段としてのセンサ16は、媒体搬送方向における搬送ローラA6の下流であって、ロータリカッタ5の上流に配置され、ロール紙Pの先端を検知するものである。
【0018】
弛みエリア13は、搬送ローラB7と搬送ローラC8との間に配設された用紙ガイド13aおよび用紙ガイド13bに囲まれた領域である。用紙ガイド13aは媒体搬送経路の上方に、用紙ガイド13bは媒体搬送経路の下方に配設され、装置の本体フレームに固定されたものとなっている。この弛みエリア13は、搬送ローラB7と搬送ローラC8とにより搬送されるロール紙Pの弛みが形成される空間を保持している。
【0019】
なお、弛みエリア13には、ロール紙Pの弛みを検知するセンサ等は配設されず、また用紙ガイド13aおよび用紙ガイド13bは開閉しない構成となっている。
本実施例では、搬送ローラA6および搬送ローラB7と、搬送ローラA6および搬送ローラB7を回転させるモータA10と、搬送ローラC8および搬送ローラD9と、搬送ローラC8および搬送ローラD9を回転させるモータB11と、並びに用紙ガイド13aおよび用紙ガイド13bを含む弛みエリア13とにより、弛み生成部17を構成している。
【0020】
弛み生成部17は、ロータリカッタ5でロール紙Pを切断する前であって、ロール紙Pの搬送量が所定量になると、ロール紙Pに弛みを生成する。
また、弛み生成部17は、ロール紙Pを搬送する第1の搬送手段としての搬送ローラA6および搬送ローラB7と、ロール紙Pの搬送方向における搬送ローラA6および搬送ローラB7の下流に配置され、ロール紙Pを搬送する搬送ローラC8および搬送ローラD9とを有し、搬送ローラA6および搬送ローラB7の搬送速度を搬送ローラC8および搬送ローラD9の搬送速度より速くしてロール紙Pに弛みを形成する。
【0021】
図2は実施例における印刷装置の制御構成を示すブロック図である。
図2において、印刷装置1は、記憶部21と、制御部22とを有している。
記憶部21は、メモリ等により構成され、ロール紙Pの切断位置や弛み生成位置を表す情報としてのモータA10およびモータB11に出力するパルス数の情報や印刷装置1全体の動作を制御する制御プログラム(ソフトウェア)等を記憶するものである。
【0022】
制御部22は、センサ16、モータA10、モータB11および記憶部21と接続され、CPU(Central Processing Unit)等の制御手段を備え、記憶部21に記憶された制御プログラム(ソフトウェア)に基づいて外部装置の通信を含め印刷装置1全体の動作を制御する。
【0023】
また、制御部22は、センサ16でロール紙Pの先端を検知すると、それを基準としてロール紙Pの搬送量を制御する。したがって、制御部22は、センサ16でロール紙Pの先端を検知してからのモータA10およびモータB11の回転量でロール紙Pの切断位置や弛み生成位置を決定する。なお、ロール紙Pの切断位置や弛み生成位置を表す情報は、モータA10およびモータB11に出力するパルス数を記憶部21に予め記憶しておくものとする。
【0024】
図1に示す弛み生成部17は、制御部22の制御により、センサ16が検知した連続紙の先端を基準として制御部22が算出したロール紙Pの搬送量が所定量になってロール紙Pが弛み生成位置に到達すると、モータA10による搬送ローラA6および搬送ローラB7の搬送速度を、モータB11による搬送ローラC8および搬送ローラD9の搬送速度より速くなるように変化させてロール紙Pに弛みを形成する。
【0025】
上述した構成の作用について説明する。
まず、ロール紙の先端が転写ローラまで到達しない状態でロール紙をロータリカッタで切断する場合における印刷装置の画像形成動作を図3の実施例における連続紙の切断動作および画像形成動作の説明図に基づいて図2を参照しながら説明する。
操作者によりロール紙P1の先端部が印刷装置1の搬送ローラA6に挟持され、印刷装置1の制御部22が外部装置から印刷データを受信すると、印刷装置1は、モータA10およびモータB11の回転を開始し、ロール紙P1の搬送を開始する。
【0026】
ロール紙P1は、先端がロータリカッタ5および搬送ローラB7を通過し、モータA10と同速度で回転しているモータB11で回転する搬送ローラC8に挟まれて搬送される。
印刷装置1は、ロール紙P1の先端が搬送ローラ8Cに挟持された後、モータA10およびモータB11によるロール紙P1の搬送量が既に設定されている所定の搬送量に到達すると、ロータリカッタ5の駆動を開始し、ロール紙P1を切断する。印刷装置1は、このようにしてロール紙P1を所定の長さで切断する。
【0027】
このとき、ロール紙P1の先端は、転写ローラ3と転写ベルト2との間まで到達していない。したがって、ロール紙P1に弛みは生成しない。
ロータリカッタ5でロール紙P1が切断されると、ロール紙P1は、図中矢印Bが示す位置においてロール紙P1の後端と、次のページのロール紙P1の先端とが生成される。
【0028】
なお、ロータリカッタ5は、カッタモータと接続されており、制御部22の制御によりカッタモータが駆動され、ロール紙P1を切断する。また、ロータリカッタ5は、ロール紙P1の搬送速度以上の速度で駆動される。これにより、ロール紙P1の搬送を停止することなく、ロール紙P1を切断することができる。
ここで、ロール紙P1をロータリカッタ5で切断するときに発生するロール紙P1に対する影響について説明する。
【0029】
まず、ロール紙P1の先端が転写ローラ3と転写ベルト2との間まで到達している場合のロール紙P1に対する影響を説明する。
モータA10による搬送ローラA6および搬送ローラB7と、モータB11による搬送ローラC8および搬送ローラD9とによるロール紙P1の搬送速度を同速度として、ロール紙P1に弛みを発生させない状態でロール紙P1をロータリカッタ5で切断すると、ロータリカッタ5による衝撃がロール紙P1に伝わり、転写ローラ3と転写ベルト2との間の接触部である転写部にまで伝搬し、転写ベルト2からロール紙P1に転写される画像に乱れが生じてしまう。なお、ロータリカッタ5によるロール紙P1の切断時に生じる転写画像の乱れを「ショックライン」と呼ぶこととする。
【0030】
ロータリカッタ5は、ロール紙P1を搬送しながら切断するため、ロール紙P1の搬送速度と同等速度以上で回転する回転刃と、回転しない固定刃とによりロール紙P1を切断する。
しかしながら、ロール紙P1の先端が転写ローラ3と転写ベルト2との間まで到達している場合、ロール紙P1を切断するときの衝撃が転写部まで伝搬することによりロール紙P1にショックラインが発生してしまう。
【0031】
次に、ロール紙P1の先端が転写ローラ3と転写ベルト2との間まで到達していない場合のロール紙P1に対する影響を説明する。
ロール紙P1の先端が転写ローラ3と転写ベルト2との間まで到達していない場合は、ロール紙P1を切断するときの衝撃は転写部まで伝搬することがないため、ロール紙P1にショックラインは発生することがない。
【0032】
したがって、ロール紙P1の先端が転写ローラ3まで到達しない状態でロール紙P1をロータリカッタ5で切断する本例では、ロール紙P1の先端は、搬送ローラD9と転写ローラ3との間にあるため、ロール紙P1にショックラインは発生しない。
ロータリカッタ5で切断されたロール紙P1は、転写ローラ3と転写ベルト2との間の転写部で転写ベルト2に形成されたトナー画像が転写され、定着部4においてトナー画像が定着されて装置外へ排出されて画像形成動作が終了する。
【0033】
次に、ロール紙の先端が転写ローラまで到達している状態でロール紙をロータリカッタで切断する場合における印刷装置の画像形成動作を図4および図5の実施例における連続紙の切断動作および画像形成動作の説明図に基づいて図2および図6の実施例におけるモータAの制御の説明図を参照しながら説明する。なお、図6の横軸は時間の経過、縦軸は回転速度を表し、またLはロール紙の搬送量を表している。
【0034】
操作者によりロール紙P1の先端部が印刷装置1の搬送ローラA6に挟持され、印刷装置1の制御部22が外部装置から印刷データを受信すると、印刷装置1は、モータA10およびモータB11の回転を開始し、ロール紙P1の搬送を開始する。
ロール紙P1は、先端がロータリカッタ5および搬送ローラB7を通過し、モータA10と同速度で回転しているモータB11で回転する搬送ローラC8に挟まれて搬送される。
【0035】
印刷装置1は、ロール紙P1の先端を搬送ローラ8Cで挟持して搬送した後、さらに搬送ローラD9で挟持して転写ベルト2と転写ローラ3との接触部である転写部へ搬送する。
転写部へロール紙P1を搬送した印刷装置1は、転写ローラ3と転写ベルト2との間の転写部で転写ベルト2に形成されたトナー画像をロール紙P1に転写し、定着部4においてトナー画像を定着する。
【0036】
ロール紙P1の先端が定着部4を過ぎた後、印刷装置1の弛み生成部17は、モータA10によるロール紙P1の搬送量が既に設定されている所定の搬送量X1、即ちロール紙P1が弛み生成位置に到達すると、図6に示すように、モータB11による搬送速度V1と同じ搬送速度V1で駆動しているモータA10の搬送速度を搬送速度V1より速い搬送速度V2に変更する。
【0037】
モータA10の搬送速度を搬送速度V1より速い搬送速度V2に変更することにより、図5に示すように、弛みエリア13においてロール紙P1に弛み14が生成される。
印刷装置1は、ロール紙P1に弛み14を生成した後、モータA10によるロール紙P1の搬送量が既に設定されている所定の搬送量X2、即ちロール紙P1が切断位置に到達すると、ロータリカッタ5の駆動を開始し、ロール紙P1を切断する。印刷装置1は、このようにしてロール紙P1を所定の長さで切断する。
【0038】
ロータリカッタ5でロール紙P1が切断されると、ロール紙P1は、図5中矢印Bが示す位置においてロール紙P1の後端と、次のページのロール紙P1の先端とが生成される。
なお、ロータリカッタ5は、カッタモータと接続されており、制御部22の制御によりカッタモータが駆動され、ロール紙P1を切断する。また、ロータリカッタ5の回転刃は、ロール紙P1の搬送速度V2同等以上の速度で駆動されることが望ましい。
【0039】
ロータリカッタ5でロール紙P1が切断されるとき、ロール紙P1の先端は転写ローラ3と転写ベルト2との間の転写部に到達しているが、転写部とロータリカッタ5の刃(固定刃および回転刃)との間においてロール紙P1に弛み14が形成されているため、ロータリカッタ5による切断の衝撃は弛み14で吸収され、転写部まで伝搬されない。
【0040】
印刷装置1の弛み生成部17は、ロータリカッタ5でロール紙P1を切断した後(図6に示すX2参照)、モータA10による搬送ローラA6および搬送ローラB7の搬送速度を搬送速度V2からモータB11による搬送ローラC8および搬送ローラD9の搬送速度と同じ搬送速度V1に戻す(図6に示すX3参照)。
【0041】
印刷装置1は、モータA10の搬送速度を搬送速度V1に戻した後、切断したロール紙P1の後端が搬送ローラB7を通過すると、ロール紙P1の後端と次ページのロール紙P1の先端との間に所定の間隔を確保するため、モータA10による搬送ローラA6および搬送ローラB7の回転を所定時間経過するまで停止させる(図6に示すX4参照)。
【0042】
印刷装置1は、モータB11の駆動により搬送ローラ8Cおよび搬送ローラD9でロール紙P1の搬送を継続する。このとき、ロール紙P1に形成された弛み14は完全に解消する。
印刷装置1は、転写ローラ3と転写ベルト2との間の転写部で転写ベルト2に形成されたトナー画像をロール紙P1に転写し、定着部4においてトナー画像を定着する。
【0043】
なお、印刷装置1は、モータA10の回転を所定時間経過するまで停止させた後、モータA10を回転させてロール紙P1の搬送を開始し、弛みのない状態の次ページのロール紙P1の画像形成を開始する。
【0044】
このように、ロール紙P1をロータリカッタ5で切断する直前に、転写ローラ3と転写ベルト2との間の転写部と、ロータリカッタ5との間でロール紙P1に弛みを形成するようにしたことにより、ロール紙P1をロータリカッタ5で切断するときの生じる衝撃を転写部まで伝搬させることがないため、転写部においてロール紙P1に形成される画像に乱れとして生じるショックラインの発生を抑制することができる。
【0045】
また、ロール紙P1をロータリカッタ5で切断した後は、ロール紙P1に形成された弛み14は完全に解消するようにしたため、弛みを保持した状態でロール紙P1を搬送することがなく、安定したロール紙P1の搬送を行うことができる。
さらに、搬送ローラを回転させるモータの速度差や加速タイミングにより、ロール紙P1に任意の大きさの弛みを形成することができる。
【0046】
したがって、センサ等を用いてロール紙P1に形成される弛みの大きさを検出する制御が不要になり、簡易な構成で安定したロール紙P1の搬送を行うことができるとともに、ロール紙P1を切断するときのショックラインの発生を抑制することができる。
ここで、比較例について図7から図9に基づいて説明する。なお、図7は比較例における印刷装置の構成を示す概略側断面図、図8は比較例における弛み作成動作の説明図、図9は比較例におけるショックライン発生の説明図である。
【0047】
図7において、比較例の印刷装置100は、転写ベルト102と、転写ローラ103と、定着部104と、ロータリカッタ105と、搬送ローラA106と、搬送ローラB107と、搬送ローラC108と、搬送ローラD109と、モータA110と、モータB111と、センサ112と、弛みエリア113と、IDユニット115K、115C、115Y、115M、115Wとを有している。
【0048】
なお、転写ベルト102、転写ローラ103、定着部104、ロータリカッタ105、搬送ローラA106、搬送ローラB107、搬送ローラC108、搬送ローラD109、モータA110、モータB111、弛みエリア113、およびIDユニット115K、115C、115Y、115M、115Wは、図1に示す転写ベルト2、転写ローラ3、定着部4、ロータリカッタ5、搬送ローラA6、搬送ローラB7、搬送ローラC8、搬送ローラD9、モータA10、モータB11、弛みエリア13、およびIDユニット15K、15C、15Y、15M、15Wと同じ構成なのでその説明を省略する。
【0049】
センサ112は、弛みエリア113内に形成されるロール紙Pの弛みの大きさを検知するものである。
図8に示すように、ロール紙P1の先端は、搬送ローラA106に挟持され、モータA110の駆動により搬送が開始される。ロール紙P1の先端がロータリカッタ105を通過し、搬送ローラB107を通過した後、搬送ローラC108に当接してロール紙P1の斜行が矯正される。
【0050】
このとき、モータA110は回転を継続し、搬送ローラA106および搬送ローラB107はロール紙P1の搬送を続け、モータB111は所定の時間停止しているため、ロール紙P1の先端は搬送ローラC108に当接して停止し、ロール紙P1に弛み114が生成される。
【0051】
ロール紙P1に弛み114が生成されると、モータB111の回転駆動が開始され、ロール紙P1の先端は、転写ベルト102と転写ローラ103との間の転写部へと弛み114が保持された状態で搬送される。転写部では、ロール紙P1の先端の給紙動作と並行して転写ベルト102上に形成されたトナー画像が、ロール紙P1の搬送速度と同じ速度で回転している転写ローラ103によってロール紙P1に転写された後、定着部104においてトナー画像がロール紙P1に定着されてロール紙P1は排出される。
【0052】
ここで、ロール紙P1に弛み114を生成するのは、1つの理由がロール紙P1の斜行を矯正するためであるが、もう1つの理由がロール紙P1を任意の長さでロータリカッタ105により切断する際に発生する衝撃を転写部に伝搬しないようにするためである。
転写部までロール紙P1の先端が到達しない長さでロール紙P1を切断する場合は、ロータリカッタ105により切断する際に発生する衝撃は転写部におけるトナー画像のロール紙P1への転写に影響を及ぼすことはない。
【0053】
しかし、転写部までロール紙P1の先端が到達する長さでロール紙P1を切断する場合は、図9に示すように、モータA110およびモータB111を同速度で回転させ、弛みを生成しない状態でロール紙P1を切断すると、ロータリカッタ105により切断する際に発生する衝撃は図中矢印Cが示す区間のロール紙P1を伝搬し、転写部におけるトナー画像のロール紙P1への転写においてトナー画像が乱れるショックラインが発生する。
【0054】
したがって、図8に示すように、ロール紙P1に弛み114を生成し、ロータリカッタ105により切断する際に発生する衝撃を転写部へ伝搬させないようにしている。
一方、ロール紙P1のような連続した長尺用紙に画像形成を行う用紙搬送において用紙搬送の直進性は重要であり、用紙搬送の直進性が乱れた状態で用紙搬送を続けることにより用紙の蛇行や寄りの累積により用紙の詰まり等が発生する。
【0055】
用紙搬送中の用紙の弛みは用紙の蛇行の原因とされており、長尺用紙の用紙搬送の直進性を確保するためには用紙に一定の張力を付与した状態で用紙搬送することが好ましい。
このことは、ショックラインを発生させないためにロール紙P1に弛み114を生成する場合も同様であり、ロール紙P1に弛み114を保持したまま用紙搬送を続けると、ロール紙P1の走行は安定せず、画像形成位置がずれてしまう等、画像形成品位に悪影響を及ぼしてしまう。
【0056】
本実施例では、ロール紙P1をロータリカッタ5で切断する直前に、転写ローラ3と転写ベルト2との間の転写部と、ロータリカッタ5との間でロール紙P1に弛みを形成するようにしたことにより、転写部においてロール紙P1に形成される画像に乱れとして生じるショックラインの発生を抑制することができる。
また、ロール紙P1をロータリカッタ5で切断した後は、ロール紙P1に形成された弛み14は完全に解消するようにしたため、弛みを保持した状態でロール紙P1を搬送することがなく、安定したロール紙P1の搬送を行うことができる。
【0057】
以上説明したように、本実施例では、ロール紙の切断前に転写部とロータリカッタとの間でロール紙に弛みを形成し、またロール紙の切断後にロール紙に弛みを解消するようにしたことにより、連続紙の切断時の画像の乱れを防止するとともに、連続紙の搬送の安定性を確保することができるという効果が得られる。
【0058】
なお、本実施例では、印刷装置を転写ベルトと転写ローラを用い、IDユニットにより転写ベルトに形成されたトナー画像をロール紙に転写する中間転写方式の印刷装置として説明したが、それに限られるものでなく、IDユニットの感光ドラムと転写ベルトとの間にロール紙を搬送し、感光ドラムに形成されたトナー画像をロール紙に直接転写する直接転写方式の印刷装置としても良い。
また、連続紙をロール紙とした例で説明したが、連続紙をファンフォールド紙とし、任意のページ長に切断するものとしても良い。
【符号の説明】
【0059】
1 印刷装置
2 転写ベルト
3 転写ローラ
4 定着部
5 ロータリカッタ
6 搬送ローラA
7 搬送ローラB
8 搬送ローラC
9 搬送ローラD
10 モータA
11 モータB
13 弛みエリア
13a、13b 用紙ガイド
15K、15C、15Y、15M、15W IDユニット
16 センサ
17 弛み生成部
21 記憶部
22 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9