(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記仮想処理部は、電位の高い方から順に前記蓄電池を仮想的に並列接続させた場合、および電位の低い方から順に前記蓄電池を仮想的に並列接続させた場合の前記並列接続が可能な前記蓄電池の数を導出し、
前記接続制御部は、
前記起動種別が放電起動の場合は、電位の高い方から順に前記並列接続が可能な前記蓄電池の数が最大となる接続順を選択し、前記起動種別が充電起動の場合は、電位の低い方から順に前記並列接続が可能な前記蓄電池の数が最大となる接続順を選択する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄電装置。
前記接続制御部によって前記蓄電池の接続順を選択する場合に適用される設定として、接続可能な前記蓄電池の数の多さを優先する蓄電池数優先設定および前記起動種別を優先する起動種別優先設定のうち、いずれか一方の設定を受け付ける受付部
をさらに備える
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の蓄電装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する蓄電装置および蓄電制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、実施形態に係る蓄電制御方法の説明図である。
図1に示すように、実施形態に係る蓄電装置1は、並列に接続される複数の蓄電池(以下、「パック」と記載する)P1〜P6を備える。
図1に示すハッチングは、面積が広いほど電位が高いことを示す。なお、
図1に示す蓄電装置1が備えるパックの数は一例であり、これに限定されるものではない。
【0012】
図1に示すような蓄電状態の異なる複数のパックP1〜P6を一度に並列に接続すると、パックP1〜P6の電位差が大きい場合、例えば、電位の高いパックP1から電位の低いパックP6へ過電流が流れパックP1〜P6を接続する配線等が破損する恐れがある。
【0013】
このため、一般的には、電位差の近いパック同士を並列接続して両パックの電位を平準化し、平準化後の電位との電位差が近いパックをさらに並列接続して各パックの電位を順次平準化することによって、パックを接続する配線やパック自体の破損を抑制する。
【0014】
このとき、蓄電装置1では、過電流を流すことなく並列接続可能なパックP1〜P6の接続順が複数通り存在する場合がある。例えば、
図1に示す例では、パックP1〜P3は、電位差が比較的小さいため並列接続可能である。
【0015】
また、パックP4〜P6も電位差が比較的小さいため並列接続可能である。ただし、パックP3とパックP4とは電位差が大きいため並列接続することができない。即ち、パックP1〜P3を並列接続した場合はパックP4〜P6を並列接続できないため、パックP1〜P3のみを電源として使用することになる。またパックP4〜P6を並列接続した場合はパックP1〜P3を並列接続できないため、パックP4〜P6のみを電源として使用することになる。
【0016】
このように、蓄電装置1では、並列接続可能な接続順が複数通りある場合がある。このような場合に、蓄電装置1は、起動目的を考慮せずに、いずれか一方の接続順を選択すると、起動目的を十分に達成できないことがある。
【0017】
例えば、蓄電装置1は、起動目的が充電の場合に、パックP1〜P3を順次並列接続すると、充電が必要な比較的電位が低いパックP4〜P6を充電することができない。また、蓄電装置1は、起動目的が放電の場合に、パックP4〜P6を順次並列接続すると、パックP4〜P6の電位が比較的低いため、外部へ十分な電力を供給することができない。
【0018】
そこで、蓄電装置1は、起動される場合に、放電装置として起動する放電起動か、充電装置として起動する充電起動かを示す起動種別を判定する。ここで、「放電装置として起動する」とは、換言すれば、蓄電装置1の電力を放電により消費するために起動するということであり、例えば車両の運転を開始するためにイグニッションスイッチがオフからオンになったときの起動が放電起動に相当する。
【0019】
また、「充電装置として起動する」とは、換言すれば、蓄電装置1を充電するために起動するということであり、例えば、充電スタンドや自宅等において車両の外部の充電器から蓄電装置1を充電するときの起動が充電起動に相当する。さらに、蓄電装置1は、パックP1〜P6のうち、電位差が所定範囲内のものを仮想的に順次並列接続して電位を平準化する仮想処理を行う。
【0020】
そして、蓄電装置1は、仮想処理による仮想的な並列接続が可能なパックP1〜P3またはパックP4〜P6という2つの接続順から、これらの接続順で並列接続した場合の平準化後の電位が、起動種別に応じた電位となる接続順を選択して並列接続する。
【0021】
これにより、蓄電装置1は、例えば、起動種別が放電起動の場合、
図1に太実線矢印で示すように、平準化後の電位が比較的高くなるパックP1〜P3を並列接続して放電することができる。
【0022】
また、蓄電装置1は、起動種別が充電起動の場合、
図1に太点線矢印で示すように、平準化後の電位が比較的低くなるパックP4〜P6を並列接続して充電することができる。このように、蓄電装置1によれば、起動目的に応じたパックP1〜P3またはパックP4〜P6を並列接続して充放電させることができる。
【0023】
また、蓄電装置1では、パックP1〜P6を電位の高い方から順に並列接続した場合と、電位の低い方から順に並列接続した場合とで、並列接続可能となるパック数や平準化後の電位が異なる場合がある。
【0024】
かかる点については、
図4A〜
図4Cを参照して後述するが、蓄電装置1は、かかる場合、起動種別が放電起動であれば、電位の高い方から順に並列接続可能なパック数が最大となる接続順を選択する。
【0025】
また、蓄電装置1は、起動種別が充電起動であれば、電位の低い方から順に並列接続可能なパック数が最大となる接続順を選択する。これにより、蓄電装置1は、起動目的に応じたより多くのパックP1〜P6を並列接続して充放電を行うことができる。
【0026】
次に、
図2を参照し、実施形態に係る蓄電装置1の構成の一例について説明する。
図2は、実施形態に係る蓄電装置1の構成の一列を示す説明図である。ここでは、蓄電装置1がハイブリッド車に搭載される場合を例に挙げて説明する。
【0027】
蓄電装置1は、車両を走行させるモータや他の車載装置等の負荷4に電力を供給する場合に放電し、エンジンの駆動エネルギーや車両が減速する場合に発生する回生エネルギーによって充電する。また、蓄電装置1は、図示せぬ外部充電器によっても充電する。なお、蓄電装置1は、電気自動車やHEMS(Home Energy Management System)等、二次電池を必要とする任意の蓄電システムに適用することが可能である。
【0028】
図2に示すように、蓄電装置1は、電池ユニット2と制御ユニット3と、メインリレー23とを備える。電池ユニット2は、複数のパックP1、P2、P3、Pn(nは、自然数)が設けられる蓄電部21と、サブリレー部22とを備える。
【0029】
なお、以下では、複数のパックP1、P2、P3、Pnのうち、任意のパックを指す場合には、パックPと記載する。各パックPは、直列に接続される複数の蓄電素子を備える。サブリレー部22は、複数のパックPをそれぞれ個別に並列接続可能な複数のサブリレーを備える。
【0030】
制御ユニット3は、監視部31と、制御部32とを備える。監視部31は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアによって実現される。監視部31は、各パックPの電位を検知し、検知結果を制御部32へ出力する。
【0031】
制御部32は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。なお、制御部32は、一部または全部がASICやFPGA等のハードウェアで構成されてもよい。
【0032】
制御部32は、メインリレー23のON/OFF制御と、サブリレー部22が備える各サブリレーのON/OFF制御とを行う処理部である。かかる制御部32は、車両から電池ユニット2による充放電を開始させる起動信号100が入力される場合、メインリレー23をONにする前に、サブリレー部22へ制御信号を出力して並列接続可能なパックPを接続し、並列接続したパックPの電位を平準化する。
【0033】
ここで、起動信号100には、電池ユニット2を放電装置として起動する放電起動か、電池ユニット2を充電装置として起動する充電起動かを示す起動種別の情報が含まれる。例えば、図示せぬイグニッションスイッチがオンになったときに、運転開始に先立ち放電起動を示す情報と共に起動信号100が車両から出力される。また、図示せぬ外部充電器の充電コネクタが図示せぬ車両側の充電コネクタに接続されたとき、充電開始に先立ち充電起動を示す情報と共に起動信号100が車両から出力される。
【0034】
制御部32は、入力される起動信号100に含まれる起動種別の情報に基づいて放電起動か充電起動かを判定し、起動種別に応じた電位となる接続順でパックPを並列接続してパックPの電位を平準化する。
【0035】
また、制御部32には、パックPの接続順を選択する場合に、接続可能なパックPの数の多さを優先するパック数優先設定と、起動種別を優先する起動種別優先設定とのうち、いずれか一方を設定する設定信号101が車両から入力される。
【0036】
制御部32は、パック数優先設定を適用する場合には、起動種別を問わず、より多くのパックPを安全に並列接続する接続順を選択してパックPを並列接続し、接続したパックPの電位を平準化させる。
【0037】
また、制御部32は、起動種別優先設定を適用する場合には、起動種別に応じた電位となる接続順でパックPを並列接続してパックPの電位を平準化する。例えば、制御部32は、起動種別が放電起動である場合、複数通りの接続順のうち、他の接続順に比べて高電位のパックPが多く含まれる接続順でパックPを並列接続する。これにより、蓄電装置1は、放電起動に適したパックPを並列接続して放電させることができる。
【0038】
また、制御部32は、起動種別が充電起動である場合、複数通りの接続順のうち、他の接続順よりも低電位のパックPが多く含まれる接続順でパックPを並列接続する。これにより、蓄電装置1は、充電起動に適したパックPを並列接続して充電させることができる。
【0039】
なお、制御部32は、起動種別優先設定を適用している場合に、起動種別に応じた電位となる接続順で並列接続するパックPの数が極端に少ない場合、パック数優先設定を適用して導出した接続順でパックPを並列接続する制御を行う構成であってもよい。
【0040】
かかる制御部32は、並列接続した各パックPの電位の平準化が完了した場合に、メインリレー23へ制御信号を出力して電池ユニット2と負荷4となるモータとを接続させ、あるいは電池ユニット2と図示せぬ外部充電器とを接続させ、電池ユニット2による充放電を開始させる。
【0041】
その後、制御部32は、車両から電池ユニット2による充放電を終了させる終了信号が入力される場合に、メインリレー23へ制御信号を出力して電池ユニット2と負荷4となるモータとの接続を切断し、あるいは電池ユニット2と図示せぬ外部充電器との接続を切断し、再度パックの電位を平準化する処理を行う。
【0042】
以下、かかる制御部32の構成および動作について、
図3〜
図6を参照して、さらに具体的に説明する。
図3は、実施形態に係る蓄電装置1を示す機能ブロック図である。
図4〜
図6は、実施形態に係る制御部32が行うパックPの並列接続動作の説明図である。なお、以下では、
図3に示す構成要素のうち、
図2に示す構成要素と同一の構成要素については、
図2に示す符号と同一の符号を付することにより、その説明を省略する。
【0043】
図3に示すように、制御部32は、CPUがROMに記憶された蓄電制御プログラム(図示略)を、RAMを作業領域として使用して実行することにより機能する判定部51と、接続制御部52と、仮想処理部53と、算出部54と、受付部55とを備える。
【0044】
判定部51は、電池ユニット2を起動させる起動信号100が入力されると、起動信号100に含まれる起動種別の情報に基づいて、起動種別が放電起動か充電起動かを判定し、判定結果を接続制御部52へ出力する処理部である。
【0045】
受付部55は、設定信号101が入力されると、設定信号101に含まれる設定種別の情報に基づいて、パック数優先設定か起動種別優先設定かを判定し、判定結果を接続制御部52へ出力する。
【0046】
接続制御部52は、判定部51、受付部55、仮想処理部53、および算出部54から入力される情報に基づいて、メインリレー23のON/OFF制御、およびサブリレー部22が備える各サブリレーのON/OFF制御を行う処理部である。
【0047】
接続制御部52は、判定部51から起動種別の判定結果が入力されると、並列接続可能なパックPの接続順を導出する仮想処理の開始指令を仮想処理部53へ出力する。そして、接続制御部52は、仮想処理によって導出される複数通りの接続順を仮想処理部53から取得し、その中から起動種別および設定種別に応じた接続順を選択し、選択した接続順でパックPを並列接続させる制御信号をサブリレー部22へ出力する。
【0048】
仮想処理部53は、並列接続可能なパックPの接続順を複数通り導出して接続制御部52および算出部54へ出力する処理部である。かかる仮想処理部53は、接続制御部52から仮想処理の開始指令が入力されると、まず、監視部31から各パックPの電位を取得する。
【0049】
このとき、最高電位のパックPと最低電位のパックPとの電位差が所定の閾値以下の場合、全てのパックPを並列接続しても過電流が流れることはない。一方、最高電位のパックPと最低電位のパックPとの電位差が所定の閾値より大きい場合、全てのパックPを並列接続すると、過電流が流れて電池ユニット2が破損する恐れがある。
【0050】
このため、仮想処理部53は、最高電位のパックPと最低電位のパックPとの電位差が所定の閾値以下であるか否かを判定し、閾値以下であった場合、その旨を示す信号を接続制御部52へ出力する。
【0051】
接続制御部52は、仮想処理部53から最高電位のパックPと最低電位のパックPとの電位差が所定の閾値以下であることを示す信号が入力される場合、各サブリレーを順次ONにする制御信号をサブリレー部22へ出力する。
【0052】
このとき、並列接続するパックPの数が多くなるにつれてパックPの合成抵抗の値が小さくなる。このため、接続制御部52は、合成抵抗が大きなうちに電位差が大きなパックP同士を並列接続することによって、並列接続したパックP間に流れる電流量を小さく抑え、パックPを並列接続することによる電池ユニット2へのダメージを軽減する。つまり、接続制御部52は、電位差の大きな順にパックPを順次並列接続する。
【0053】
その後、接続制御部52は、仮想処理部53を介して監視部31から各パックPの電位を取得し、各パックPの電位が均一になった場合に、電位の平準化が完了したと判定して、メインリレー23をONにする制御信号をメインリレー23へ出力する。
【0054】
また、仮想処理部53は、最高電位のパックPと最低電位のパックPとの電位差が所定の閾値より大きいと判定した場合、電位差の小さなパックP同士を順次仮想的に接続する仮想処理を行うことによって、より多くのパックPを並列接続可能な接続順を導出する。
【0055】
このとき、電位の高い方から順にパックPを並列接続した場合と、電位の低い方から順にパックPを並列接続した場合とでは、並列接続可能なパックPの数や、並列接続して平準化が完了した場合の電位が異なることがある。
【0056】
ここで、
図4A〜
図4Cを参照し、かかる点について説明する。例えば、
図4Aに示すように、電位が10[V]のパックP1と、電位が8[V]のパックP2と、電位が7[V]のパックP3があるとする。なお、ここでは、並列接続するパックPの電位差が2[V]を超えると、過電流が流れるものとして説明する。
【0057】
このような場合に、
図4Aに白矢印で示すように、パックPを電位の高い方から順に接続した場合と、
図4Aに黒矢印で示すように、電位の低い方から順に接続した場合とでは、接続可能となるパックPの数および平準化後の電位が異なる。
【0058】
具体的には、電位の高い方から仮想的に順次並列接続する場合、
図4Aに示すように、パックP1の電位が10[V]、パックP2の電位が8[V]であり、電位差が2[V]のため、パックP1とパックP2とを並列接続しても、過電流は流れない。このため、
図4Bに示すように、パックP1とパックP2とを並列接続すると、パックP1およびパックP2の電位は、平準化されて9[V]になる。
【0059】
このとき、次に接続するパックP3は、電位が7[V]でありパックP1およびパックP2の平準化後の電位との電位差が2[V]であるため、パックP1およびパックP2と並列接続しても過電流が流れることはない。このため、パックP3をさらに並列接続することができる。
【0060】
したがって、電位の高い順に並列接続する場合、過電流を流さずに並列接続可能なパックPの数が3になる。そして、3つのパックP1、P2、P3を並列接続した場合の平準化後の電位は、約8.3[V]になる。
【0061】
一方、電位の低い方から仮想的に順次並列接続する場合、
図4Aに示すように、パックP3の電位が7[V]、パックP2の電位が8[V]であり、電位差が1[V]のため、パックP2とパックP3とを並列接続しても、過電流は流れない。このため、
図4Cに示すように、パックP2とパックP3とを並列接続すると、パックP2およびパックP3の電位は、平準化されて7.5[V]になる。
【0062】
このとき、次に接続するパックP1は、電位が10[V]でありパックP2およびパックP3の平準化後の電位との電位差が2.5[V]であるため、パックP2およびパックP3と並列接続すると過電流が流れる。このため、パックP1をさらに並列接続することはできない。
【0063】
したがって、電位の低い順に並列接続する場合、過電流を流さずに並列接続可能なパックPの数が2になる。そして、2つのパックP2、P3を並列接続した場合の平準化後の電位は、7.5[V]になる。
【0064】
このように、
図4Aに示す状態では、電位の高い方から順にパックPを並列接続した場合の方が、電位の低い方から順にパックPを並列接続した場合に比べて、並列接続可能なパックPの数が多く、並列接続して平準化が完了した場合の電位が高くなる。
【0065】
なお、
図4Aに示す状態の場合には、電位の高い順にパックPを順次並列接続した方が並列接続可能パックの数が多くなったが、各パックPの電位や電位差によっては、電位の低い順にパックPを順次並列接続した方が接続可能パックの数が多くなる場合もある。
【0066】
そこで、仮想処理部53は、最高電位のパックPと最低電位のパックPとの電位差が所定の閾値より大きいと判定した場合、電位の高い順にパックPを仮想的に順次並列接続する仮想処理と、電位の低い順にパックPを仮想的に順次並列接続する仮想処理とを行う。
【0067】
具体的には、仮想処理部53は、まず、電位が最高のパックPと、次に電位が高いパックPとの電位差が所定範囲内である場合に、これら一対のパックPを仮想的に並列接続して一対のパックPの平準化後の電位を算出する。
【0068】
その後、仮想処理部53は、平準化後の電位と、次に電位が高いパックPとの電位差が所定範囲内である場合、さらに、そのパックPを仮想的に並列接続して電位を平準化する処理を繰り返す。
【0069】
また、仮想処理部53は、平準化後の電位と、次に電位が高いパックPとの電位差が所定範囲を超える場合には、それまでに仮想的に並列接続したパックPを並列接続可能なパックPと判定する。
【0070】
続いて、仮想処理部53は、最後に並列接続可能と判定したパックPの次に電位の高いパックP、つまり最初に並列接続不可能と判定するパックPから再度、電位の高い順に並列接続可能なパックPを順次仮想的に並列接続して電位を平準化する処理を繰り返す。
【0071】
そして、仮想処理部53は、電位が最低のパックPまで、かかる仮想的な並列接続を行った結果、並列接続可能なパックPの数が最大となるパックPの接続順を導出し、導出したパックPの接続順を接続制御部52へ出力する。
【0072】
その後、仮想処理部53は、全てのパックPについて、電位の低い方からも順に並列接続可能なパックPを仮想的に並列接続して、各パックPの電位を平準化する処理を繰り返す。そして、仮想処理部53は、電位の低い方から順に並列接続する場合に、並列接続可能なパックPの数が最大となるパックPの接続順を導出し、導出したパックPの接続順を接続制御部52へ出力する。
【0073】
なお、仮想処理部53は、電位の低い順にパックPを仮想的に並列接続させる仮想処理を行った後に、電位の高い順にパックPを仮想的に並列接続させる仮想処理を行うこともできる。
【0074】
このように、仮想処理部53は、電位が高い方から順に仮想的に並列接続して並列接続可能パックの数が最大となる接続順と、電位が低い方から順に仮想的に並列接続して並列接続可能パックの数が最大となる接続順とを接続制御部52へ出力する。
【0075】
このとき、並列接続可能パックの数が最大となる接続順でパックPを接続する場合、各パックPの電位が平準化されるまでに要する時間(以下、「接続時間」と記載する)が、電池ユニット2の起動時間を超える場合がある。なお、ここでの起動時間は、制御部32に起動信号100が入力されてから、メインリレー23をONにするまでの予め定められた時間である。
【0076】
このため、仮想処理部53は、並列接続可能なパックPの数が最大のパックPの接続順を算出部54へも出力する。算出部54は、仮想処理部53から入力される接続順でパックPを仮想的に並列接続した場合の接続時間を、監視部31から入力される各パックPの電位に基づいて算出する。そして、算出部54は、算出した接続時間を接続制御部52へ出力する。
【0077】
接続制御部52は、算出部54から入力される接続時間が電池ユニット2の起動時間を超える場合、接続時間が電池ユニット2の起動時間内に収まるように、並列接続するパックPの数を事前に低減し、その接続順を一旦記憶する。
【0078】
例えば、
図5に示すように、電位の高い方から順に最大6つのパックP1〜P6が並列接続可能である場合に、6つのパックP1〜P6の接続時間が電池ユニット2の起動時間を超える場合がある。
【0079】
かかる場合、接続制御部52は、6つのパックP1〜P6のうち、パックP1〜P6の平均電位との電位差が最大のパックP1を並列接続の対象から除外して、接続時間が起動時間を超えなければ、5つのパックP2〜P6の接続順を記憶する。
【0080】
また、接続制御部52は、パックP1を除外して5つのパックP2〜P6を並列接続しても接続時間が起動時間を超える場合には、さらに平均電位との電位差が最大のパックPを順次除外して、接続時間が起動時間内に収まる最大数のパックPの接続順を記憶する。
【0081】
また、接続制御部52は、6つのパックP1〜P6のうち、最低電位のパックP6を並列接続の対象から除外して、接続時間が起動時間を超えなければ、5つのパックP1〜P5の接続順を記憶する。
【0082】
また、接続制御部52は、パックP6を除外して5つのパックP1〜P5を並列接続しても接続時間が起動時間を超える場合、残ったパックP1〜P5から最低電位のパックPを順次除外して、接続時間が起動時間内に収まる最大数のパックPの接続順を記憶する。なお、接続制御部52は、6つのパックP1〜P6の接続時間が起動時間を超えない場合、6つのパックP1〜P6の接続順を記憶する。
【0083】
また、接続制御部52は、電位の低い方から順に並列接続可能な最大数のパックPの接続時間が起動時間を超える場合、接続可能パックの平均電位との電位差が最大のパックPを順次除外し、接続時間が起動時間内に収まる最大数のパックPの接続順を記憶する。
【0084】
また、接続制御部52は、電位の低い方から順に並列接続可能な最大数のパックPの接続時間が起動時間を超える場合、最低電位のパックPを順次除外し、接続時間が起動時間内に収まる最大数のパックPの接続順を記憶する。なお、電位の低い方から順に並列接続可能な最大数のパックPの接続時間が起動時間を超えない場合、その接続順を記憶する。
【0085】
そして、接続制御部52は、上記のように記憶した複数の接続順のなかから、パック数優先設定か、起動種別優先設定かに応じた接続順を選択する。例えば、接続制御部52は、パック数優先設定が適用される場合、上記のように記憶した複数の接続順のうち、並列接続可能パック数が最大となる接続順を選択する。
【0086】
そして、接続制御部52は、選択した接続順でパックPを並列接続させる制御信号をサブリレー部22へ出力する。これにより、接続制御部52は、並列接続可能な最大数のパックPを接続することができる。
【0087】
また、接続制御部52は、起動種別優先設定が適用される場合、放電起動が充電起動かに応じた接続順を選択する。例えば、接続制御部52は、放電起動の場合、平準化後の電位が最高となる接続順を選択し、充電起動の場合、平準化後の電位が最低となる接続順を選択する。
【0088】
そして、接続制御部52は、選択した接続順でパックPを並列接続させる制御信号をサブリレー部22へ出力する。その後、接続制御部52は、並列接続したパックPの電位の平準化が完了した場合に、メインリレー23をONにする制御信号をメインリレー23へ出力して、電池ユニット2と負荷4とを接続する。
【0089】
これにより、接続制御部52は、電池ユニット2の起動を遅らせることなく、起動目的に応じたより多くの接続可能なパックPを並列接続して充放電させることができる。
【0090】
なお、接続制御部52が行うパックPの接続制御は、これに限定されるものではない。接続制御部52は、起動種別優先設定を適用している場合であっても、起動種別に応じた電位となる接続順で並列接続するパックPの数が極端に少ない場合、パック数優先設定を適用して導出した接続順でパックPを並列接続する構成であってもよい。
【0091】
例えば、接続制御部52は、起動種別優先設定を適用している場合に、パック数優先設定に基づく並列接続可能なパックPの数Y1から、起動種別優先設定に基づく接続可能なパックPの数Y2を減算した値が所定値よりも大きければ、パック数優先設定を適用する。このときに適用する所定値は、任意に設定することができる。
【0092】
なお、この処理は必ずしもY1からY2を減算するという減算処理を行う必要はなく、結果としてそうなればよい。すなわち、Y1がY2より所定値以上大きければ、パック数優先設定を適用すればよい。
【0093】
これにより、接続制御部52は、起動種別優先設定を適用していても、起動種別に応じた接続順で並列接続するパックPの数が、パック数優先設定に基づく接続可能なパック数に比べて極端に少ない場合に、より多くのパックPを並列接続することができる。
【0094】
次に、
図6〜
図9を参照し、蓄電装置1の制御ユニット3が実行する処理について説明する。
図6〜
図9は、実施形態に係る蓄電装置1の制御ユニット3が実行する処理を示すフローチャートである。なお、
図7には、制御ユニット3が起動信号100の入力から並列接続可能なパックPを並列接続するまでの処理を示している。
【0095】
図6に示すように、制御ユニット3は、まず、起動信号100が入力されたか否かを判定する(ステップS101)。そして、制御ユニット3は、起動信号100が入力されないと判定した場合(ステップS101,No)、起動信号100が入力されるまで、ステップS101の判定を繰り返す。
【0096】
また、制御ユニット3は、起動信号100が入力されたと判定した場合(ステップS101,Yes)、起動信号100の起動種別を判定する(ステップS102)。このとき、制御ユニット3は、起動種別が充電起動か放電起動かを判別する。
【0097】
続いて、制御ユニット3は、各パックPの電位を取得する(ステップS103)。その後、制御ユニット3は、各パックPの電位のうちの最高電位から最低電位を減算した値が閾値以下であるか否かを判定する(ステップS104)。
【0098】
そして、制御ユニット3は、最高電位から最低電位を減算した値が閾値以下であると判定した場合(ステップS104,Yes)、全パックPを電位差の大きい順に並列接続し(ステップS105)、処理を終了する。なお、ここでは、図示を省略したが、制御ユニット3は、並列接続したパックPの電位が平準化した場合に、メインリレー23をONにする。
【0099】
また、制御ユニット3は、最高電位から最低電位を減算した値が閾値以下でないと判定した場合(ステップS104,No)、接続順および平準化時間導出処理を実行する(ステップS106)。
【0100】
制御ユニット3は、平準化時間導出処理を実行することによって、並列接続可能なパックPの接続順を複数導出し、各接続順でパックPを並列接続した場合に各パックPの電位が平準化されるまでの時間を算出する。かかる接続順および平準化時間導出処理の詳細については、
図7を参照して後述する。
【0101】
続いて、制御ユニット3は、接続順決定処理を実行する(ステップS107)。制御ユニット3は、接続順決定処理を実行することによって、実際に並列接続するパックPの接続順を決定し、決定した接続順でパックPを実際に並列接続する。なお、かかる接続順決定処理の詳細については、
図8を参照して後述する。
【0102】
そして、制御ユニット3は、接続順決定処理を実行した後に、処理を終了する。なお、ここでは、図示を省略したが、制御ユニット3は、接続順決定処理によって決定した接続順でパックPを実際に並列接続した後、メインリレー23をONにする。
【0103】
次に、
図7を参照し、接続順および平準化時間導出処理について説明する。
図7に示すように、制御ユニット3は、接続順および平準化時間導出処理を開始すると、電位が高い順に並列接続可能なパックPを仮想並列接続する(ステップS201)。
【0104】
続いて、制御ユニット3は、並列接続可能パック数および平準化時間を算出する(ステップS202)。なお、ここでの平準化時間は、並列接続可能パックと判定されたパックPが並列接続されてから、各パックPの電位が平準化されるまでに要する時間である。
【0105】
その後、制御ユニット3は、ステップS203およびステップS206の処理を並行して行う。ステップS203において、制御ユニット3は、平準化時間が電池ユニット2の起動時間未満であるか否かの判定を行い、平準化時間が起動時間未満でないと判定した場合(ステップS203,No)、処理をステップS205へ移す。
【0106】
ステップS205において、制御ユニット3は、平均電位からの電位の乖離が最大のパックPを並列接続可能パックから除外して平準化時間および並列接続可能パック数を再算出し、処理をステップS203へ移す。また、制御ユニット3は、平準化時間が起動時間未満であると判定した場合(ステップS203,Yes)、平準化時間が起動時間未満となったパックPの接続順Aを記憶し(ステップS204)、処理をステップS209へ移す。
【0107】
また、制御ユニット3は、ステップS206において、平準化時間が電池ユニット2の起動時間未満であるか否かの判定を行い、平準化時間が起動時間未満でないと判定した場合(ステップS206,No)、処理をステップS208へ移す。
【0108】
ステップS208において、制御ユニット3は、最低電位のパックPを並列接続可能パックから除外して平準化時間および並列接続可能パック数を再算出し、処理をステップS206へ移す。また、制御ユニット3は、平準化時間が起動時間未満であると判定した場合(ステップS206,Yes)、平準化時間が起動時間未満となったパックPの接続順Bを記憶し(ステップS207)、処理をステップS209へ移す。
【0109】
ステップS209において、制御ユニット3は、電位が低い順に並列接続可能なパックPを仮想並列接続し、その後、並列接続可能パック数および平準化時間を算出する(ステップS210)。
【0110】
続いて、制御ユニット3は、ステップS211およびステップS214の処理を並行して行う。ステップS211において、制御ユニット3は、平準化時間が電池ユニット2の起動時間未満であるか否かの判定を行い、平準化時間が起動時間未満でないと判定した場合(ステップS211,No)、処理をステップS213へ移す。
【0111】
ステップS213において、制御ユニット3は、平均電位からの電位の乖離が最大のパックPを並列接続可能パックから除外して平準化時間および並列接続可能パック数を再算出し、処理をステップS211へ移す。
【0112】
また、制御ユニット3は、平準化時間が起動時間未満であると判定した場合(ステップS211,Yes)、平準化時間が起動時間未満となったパックPの接続順Cを記憶し(ステップS212)、接続順および平準化時間導出処理を終了する。そして、制御ユニット3は、引き続き接続順決定処理を実行する。
【0113】
また、制御ユニット3は、ステップS214において、平準化時間が電池ユニット2の起動時間未満であるか否かの判定を行い、平準化時間が起動時間未満でないと判定した場合(ステップS214,No)、処理をステップS216へ移す。
【0114】
ステップS216において、制御ユニット3は、最高電位のパックPを並列接続可能パックから除外して平準化時間および並列接続可能パック数を再算出し、処理をステップS214へ移す。また、制御ユニット3は、平準化時間が起動時間未満であると判定した場合(ステップS214,Yes)、平準化時間が起動時間未満となったパックPの接続順Dを記憶し(ステップS215)、接続順および平準化時間導出処理を終了する。そして、制御ユニット3は、引き続き接続順決定処理を実行する。
【0115】
次に、
図8を参照し、接続順決定処理について説明する。
図8に示すように、制御ユニット3は、接続順決定処理を開始すると、現在適用されている設定がパック数優先設定か否かを判定する(ステップS301)。
【0116】
そして、制御ユニット3は、パック数優先設定であると判定した場合(ステップS301,Yes)、処理をステップS302へ移す。ステップS302において、制御ユニット3は、接続順および平準化時間導出処理で記憶したパックPの接続順A〜Dのうち、接続可能パック数が最多の接続順でパックPを並列接続し(ステップS302)、処理を終了する。
【0117】
また、制御ユニット3は、現在適用されている設定がパック数優先設定でないと判定した場合(ステップS301,No)、起動種別優先設定であると判定し、処理をステップS303へ移す。ステップS303において、制御ユニット3は、起動種別が放電起動であるか否かを判定し、放電起動であると判定した場合(ステップS303,Yes)、高電位のパックPが多く含まれる接続順BでパックPを並列接続し(ステップS304)、処理を終了する。
【0118】
また、制御ユニット3は、起動種別が放電起動でないと判定した場合(ステップS303,Yes)、充電起動であると判定して、低電位のパックPが多く含まれる接続順DでパックPを並列接続し(ステップS305)、処理を終了する。
【0119】
また、制御ユニット3は、前述したように、起動種別優先設定を適用していても、起動種別に応じた電位となる接続順で並列接続するパックPの数が極端に少ない場合、パック数優先設定を適用して導出した接続順でパックPを並列接続することもできる。
【0120】
かかる場合、制御ユニット3は、
図8に示す接続順決定処理に代えて、
図9に示す接続順決定処理を実行する。
図9に示すように、制御ユニット3は、接続順および平準化時間導出処理で導出した接続順A〜Dで接続可能パック数が最多の接続順を接続順Eとして記憶する(ステップS401)。続いて、制御ユニット3は、現在適用されている設定がパック数優先設定か否かを判定する(ステップS402)。
【0121】
そして、制御ユニット3は、パック数優先設定であると判定した場合(ステップS402,Yes)、接続順EでパックPを並列接続し(ステップS403)、処理を終了する。また、制御ユニット3は、パック数優先設定でないと判定した場合(ステップS402,No)、起動種別が放電起動か否かを判定する(ステップS404)。
【0122】
そして、制御ユニット3は、放電起動であると判定した場合(ステップS404,Yes)、高電位のパックPが多く含まれる接続順Bを接続順Fとして記憶する(ステップS405)。続いて、制御ユニット3は、接続順Eで並列接続するパックPの数から、接続順Fで並列接続するパックPの数を減算した値が所定値より大きいか否かを判定する(ステップS406)。
【0123】
そして、制御ユニット3は、減算した値が所定値より大きいと判定した場合(ステップS406,Yes)、接続順EでパックPを並列接続し(ステップS407)、処理を終了する。また、制御ユニット3は、減算した値が所定値より大きくないと判定した場合(ステップS406,No)、接続順FでパックPを並列接続し(ステップS408)、処理を終了する。
【0124】
また、制御ユニット3は、起動種別が放電起動でないと判定した場合(ステップS404,No)、低電位のパックPが多く含まれる接続順Dを接続順Gとして記憶する(ステップS409)。続いて、制御ユニット3は、接続順Eで並列接続するパックPの数から、接続順Gで並列接続するパックPの数を減算した値が所定値より大きいか否かを判定する(ステップS410)。
【0125】
そして、制御ユニット3は、減算した値が所定値より大きいと判定した場合(ステップS410,Yes)、接続順EでパックPを並列接続し(ステップS411)、処理を終了する。また、制御ユニット3は、減算した値が所定値より大きくないと判定した場合(ステップS410,No)、接続順GでパックPを並列接続し(ステップS412)、処理を終了する。
【0126】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。