(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ケーブルを長手方向に移動させながら、センサによって、前記ケーブルの表面に対してレーザ光を照射し、前記ケーブルからの反射光を受光することで、前記反射光の受光位置の変化に基づいて前記ケーブルの表面の凹凸を測定する検査工程を有し、
前記検査工程では、
前記ケーブルの表面から所定の距離だけ離れた位置に前記センサを保持するセンサ保持部と、前記センサ保持部を前記ケーブルの長手方向に交差する方向に移動可能に支持する移動機構と、前記センサ保持部よりも前記ケーブルの上流側および下流側のうち少なくともいずれかで前記センサ保持部に連結されたチャック部と、を用い、
前記ケーブルの外側から前記ケーブルに対して前記チャック部を当接させ、前記ケーブルの表面と前記センサとの距離を一定に保つように、前記ケーブルに対する前記センサ保持部の相対的な位置を合わせるとともに、
前記ケーブルの径方向の変位に追従するように前記センサ保持部を前記移動機構によって移動させ、前記ケーブルの表面と前記センサとの距離を一定に保つ
ケーブルの検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<発明者等が得た知見>
まず、発明者等が得た知見について説明する。
【0013】
これまでの、人手によるケーブル外観検査方法や、カメラを用いたケーブル外観検査方法では、上述のように、ケーブルの表面における欠陥部の見逃しが生じたり、凹凸が生じていない良好部を欠陥部として誤検出したりする可能性があった。そこで、発明者等は、ケーブルの外観の検査精度を向上させるため、レーザ光を用いた三角測距方式によりケーブルの表面の凹凸を測定することを考えた。
【0014】
レーザ光を用いた三角測距方式では、センサによってケーブルに対してレーザ光を照射しその反射光を受光する際に、ケーブルの表面とセンサとの距離を一定に保つ必要がある。一方で、ケーブルの製造工程のうちの検査工程として、ケーブルを長手方向に移動させながらケーブルの外観を検査する際には、ケーブルの押出状態やケーブルのドラム巻き時の状態等によって、ケーブルの外径変動やケーブルの径方向への移動(うねり)等が生じる可能性がある。このような状況のなかで、ケーブルの表面とセンサとの距離を一定に保つ方法としては、例えば、センサの所定の測定位置にケーブルが通過するように、ケーブルに側圧を印加して、ケーブルの径方向の位置を強制的に補正することが考えられる。
【0015】
しかしながら、ケーブルの径方向の位置を強制的に補正する方法は、検査対象のケーブルの表面を保護する観点では良い方法とは言えない。
【0016】
というのも、検査対象となる高圧送電用ケーブルとしてのケーブルは、大容量の電流を流す太い導体と、高電圧に耐えうる厚い絶縁被覆と、を有しており、その剛性は、非常に高くなっている。このようなケーブルにおいて上述のようにケーブルの径方向の位置を強制的に補正するためには、ケーブルに対して非常に強い側圧を印加する必要がある。ケーブルの径方向の位置を補正するために、ケーブルに対して過大な側圧が印加されると、ケーブルの表面を損傷させてしまう可能性がある。その結果、ケーブルの表面に欠陥部がないことを確認するための検査工程において、ケーブルの表面に新たに欠陥部が生じてしまう可能性がある。
【0017】
したがって、レーザ光を用いた三角測距方式によりケーブルの表面の凹凸を測定する場合には、ケーブルに過大な側圧を印加することなく、ケーブルの表面とセンサとの距離を一定に保つことが重要となる。以下で説明する本発明は、本発明者等が見出した上記の新規な課題に基づくものである。
【0018】
<本発明の一実施形態>
(1)ケーブル外観検査装置
本発明の一実施形態に係るケーブル外観検査装置10について、
図1〜
図7を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係るケーブルの軸方向に直交する断面図である。
図2は、本実施形態に係るケーブル外観検査装置を示す概略構成図である。
図3は、本実施形態に係るケーブル外観検査装置を示す斜視図である。
図4および5は、センサ保持部付近を示す斜視図である。
図6(a)は、ケーブルの移動方向に直交する方向から見たときのセンサの配置を示す概略図であり、(b)は、ケーブルの移動方向の上流側から見たときの第2位置側センサ群の配置を示す概略図であり、(c)は、ケーブルの移動方向の上流側から見たときの第1位置側センサ群の配置を示す概略図である。
図7は、制御部を示す概略構成図である。
【0019】
以下の説明において、「ケーブル100の長手方向」とは、ケーブル100の軸方向と言い換えることができる。また、「ケーブル100の径方向」とは、ケーブル100の中心軸から外周に向かう方向のことをいい、場合によってはケーブル100の短手方向と言い換えることができる。また、「ケーブル100の周方向」とは、ケーブル100の外周面に沿った方向のことをいう。また、「ケーブル100の移動方向」とは、ケーブル100が長手方向に沿って移動する(搬送される)方向のことをいう。また、ケーブル外観検査装置10に対してケーブル100が搬入される側を「ケーブル100の上流側」または「ケーブル100の移動方向の上流側」とし、ケーブル外観検査装置10からケーブル100が搬出される側を「ケーブル100の下流側」または「ケーブル100の移動方向の下流側」とする。
【0020】
(ケーブル)
ケーブル外観検査装置10の説明に先立ち、検査対象であるケーブル100について説明する。
【0021】
検査対象であるケーブル100は、最外層に絶縁層または半導電層を有する絶縁被覆(樹脂被覆層)を備えるケーブルであれば、本検査装置が適用可能である。特に、XLPEケーブル(Crosslinked Polyethylene Cable、CVケーブルともいう)やOFケーブル(Oil−Filled Cable)等として構成され直径が大きいケーブル100の検査に、本検査装置を好適に用いることができる。
【0022】
具体的には、例えば
図1に示すように、XLPEケーブルのうちの、いわゆるケーブルコアとして構成されたものを、検査対象のケーブル100としている。具体的には、ケーブル100は、例えば、導体110と、絶縁被覆120と、を有している。導体110は、例えば、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる素線を撚り合わせて構成されている。絶縁被覆120は、例えば、内部半導電層130と、絶縁体140と、外部半導電層150と、を有している。内部半導電層130は、例えば、所定の樹脂成分(エチレン−酢酸ビニル共重合体等)とカーボンブラックとを含んでいる。絶縁体140は、上記した架橋ポリエチレンからなっている。絶縁被覆120の最外層を構成する外部半導電層150は、例えば、内部半導電層130と同様に、所定の樹脂成分とカーボンブラックとを含み、その表面は、黒い鏡面の状態となっている。
【0023】
検査対象であるケーブル100の公称電圧は、例えば、66kV以上500kV以下であり、ケーブル100の導体110の断面積は、例えば、80sqmm以上3500sqmm以下であり、ケーブル100の外径は、例えば、55mm以上135mm以下である。なお、これらの数値は一例であって、検査対象となるケーブル100の公称電圧、導体100の断面積、およびケーブル100の外径が、それぞれ上記範囲外となっていてもよい。
【0024】
ケーブル100は、例えば、ケーブル搬送装置(不図示)によって搬送ローラ(不図示)上を搬送されて長手方向に移動することで、後述のケーブル外観検査装置10を通過することとなる。
【0025】
(ケーブル外観検査装置)
図2〜
図3に示すように、本実施形態に係るケーブル外観検査装置10は、ケーブル100の表面の凹凸を測定するよう構成され、例えば、センサ(レーザ変位計)200と、センサ保持部300と、チャック部500と、移動機構(揺動機構)400と、制御部800と、を有している。
【0026】
ここで、ケーブル外観検査装置10における方向を定義する。水平方向をX方向およびY方向とする。このうち、ケーブル100の移動方向を+Y方向とし、Y方向に垂直な方向をX方向とする。また、鉛直方向をZ方向とし、重力の方向と反対の鉛直上方向を+Z方向とする。
【0027】
(センサ)
センサ200は、三角測距方式のレーザ変位計として構成されている。具体的には、センサ200は、ケーブル100の表面に対してレーザ光(L)を照射し、ケーブル100からの反射光を受光することで、反射光の受光位置の変化に基づいてケーブル100の表面の凹凸を測定するよう構成されている。なお、ここでいう「ケーブル100の表面の凹凸を測定する」とは、ケーブル100の表面において凹凸の有無を検知すること、その凹凸が凹部であるか凸部であるかの判別をすること、ケーブル100の表面における凹凸の大きさ(ケーブル100の長手方向の凹凸の長さ、ケーブル100の周方向の凹凸の幅、凹凸の面積、凹凸の高さ又は深さ)を測定することなどを含んでいる。
【0028】
具体的には、センサ200は、例えば、レーザ(不図示)と、投光レンズ(不図示)と、二次元受光素子(不図示)と、受光レンズ(不図示)と、を有している。レーザは、例えば、半導体レーザとして構成され、投光レンズを介して、所定の方向に広がる帯状のレーザ光を出射するよう構成されている。二次元受光素子は、いわゆるCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)として構成されている。具体的は、二次元受光素子は、例えば、複数の受光画素が平面状に配列された受光面を有し、受光レンズを介してケーブル100からの反射光を受光面で受光するよう構成されている。例えば、ケーブル100の表面が凹凸を有しているとき、ケーブル100からの反射光が二次元受光素子に入射する位置が変化する。このときの反射光の受光位置の変化を二次元受光素子によって検知することで、反射光の受光位置の変化に基づいてケーブル100の表面の凹凸を測定することができる。
【0029】
なお、センサ200の高さ方向の繰り返し測定精度は、例えば、0.2μm以上2μm以下であり、センサ200の幅方向の分解能は、例えば、10μm以上300μm以下である。
【0030】
ここで、上記のような三角測距方式のセンサ200では、レーザによるレーザ光の出射範囲や、二次元受光素子による反射光の受光範囲に制限があるため、検査対象の変位を測定することが可能な、検査対象とレーザとの距離が定められている。このため、本実施形態のケーブル外観検査装置10では、上述のように、検査対象としてのケーブル100の表面と、センサ200との距離を一定に保つことが必要となる。本実施形態では、後述のチャック部500や移動機構40等により、ケーブル100の表面とセンサ200との距離が一定に保たれることとなる。
【0031】
本実施形態では、センサ200は、例えば、複数設けられている。ここでは、センサ200は、例えば、8つ設けられている。8つのセンサ200を、センサ200a〜200hとする。以下において、単に「センサ200」と言った場合は、センサ200a〜200hを総称するものとする。
【0032】
(センサ保持部)
図2および
図5に示すように、センサ保持部300は、ケーブル100の表面から径方向に所定の距離だけ離れた位置にセンサ200を保持している。センサ保持部300において、センサ200は、レーザからの帯状のレーザ光がケーブル100の周方向に広がるよう配置される。
【0033】
センサ保持部300は、例えば、リング状に構成され、ケーブル100の外周を囲むようにケーブル100の周方向に等間隔でセンサ200a〜200hを保持している。また、例えば、センサ200a〜200hは、センサ保持部300の中心から所定の半径を有する同一円周上に配置されている。このようなセンサ200の配置により、ケーブル100の全周に亘ってケーブル100の表面の凹凸を測定することができる。
【0034】
また、
図5に示すように、センサ保持部300は、ケーブル100の外径の変化に応じて、全てのセンサ200のそれぞれをケーブル100の径方向に均等に移動させるセンサ用カム機構30を有している。
【0035】
具体的には、センサ用カム機構30は、例えば、固定円盤310と、センサ用移動支持部320と、センサ用カム円盤340と、を有している。固定円盤310は、例えば、リング状の円盤として構成されている。センサ用移動支持部320は、例えば、いわゆるリニアガイドとして構成され、センサ200を直線状に移動可能に支持するよう構成されている。また、センサ用移動支持部320は、固定円盤310よりもケーブル100の下流側で、固定円盤310の径方向に沿って配置されおり、センサ200を固定円盤310の径方向に移動できるようになっている。また、センサ用移動支持部320は、センサ200が載置される可動板(符号不図示)を有し、可動板には、センサ用カムフォロワ322が設けられている。センサ用カム円盤340は、固定円盤310よりもケーブル100の下流側で固定円盤310に連結されている。センサ用カム円盤340は、固定円盤310に対して周方向に相対的に回転可能に構成されている。なお、センサ用カム円盤340は、カム円盤連結部630を介して、後述の上流側チャック用カム円盤620に連結されている(
図4参照)。また、センサ用カム円盤340は、複数のセンサ用カム溝342を有している。複数のセンサ用カム溝342のそれぞれには、それぞれのセンサ用移動支持部320のセンサ用カムフォロワ322が係合するようになっている。複数のセンサ用カム溝342のそれぞれは、それぞれのセンサ用移動支持部320の可動板の移動方向に対して傾斜した方向に沿って設けられている。全てのセンサ用カム溝342では、センサ用移動支持部320の可動板の移動方向に対するセンサ用カム溝342の傾斜角が、互いに等しくなっている。
【0036】
各センサ200の位置を設定する際、上流側チャック用カム円盤620が周方向に回転することで、センサ用カム円盤340が上流側チャック用カム円盤620に連動して受動的に周方向に回転する。センサ用カム円盤340が周方向に回転すると、各センサ用カムフォロワ322が各センサ用カム溝342に沿って滑って移動する。各センサ用カムフォロワ322が各センサ用カム溝342に沿って移動すると、各センサ200が載置された各センサ用移動支持部320の可動板が直線状に移動する。これにより、各センサ200がケーブル100の径方向に移動することとなる。
【0037】
このようにセンサ保持部300がセンサ用カム機構30を有していることにより、例えば、検査対象のケーブル100の外径を変更したときに、ケーブル100の外径に応じて、全てのセンサ200のそれぞれをケーブル100の径方向に均等に移動させることができ、全てのセンサ200を同一円周上に配置することができる。その結果、全てのセンサ200において、ケーブル100の表面とそれぞれのセンサ200との距離を均等にすることができる。
【0038】
また、
図5および
図6に示すように、センサ保持部300は、複数のセンサ200が互いに干渉することを抑制するように、ケーブル100の移動方向に異なる複数の位置で複数のセンサ200を保持している。
【0039】
具体的には、センサ保持部300は、例えば、ケーブル100の移動方向の第1位置に第1位置側センサ群21を支持し、ケーブル100の移動方向の第1位置と異なる第2位置に第2位置側センサ群22を支持している。第1位置側センサ群21は、例えば、センサ200a,200b,200c,200dを有している。センサ200a,200bは、ケーブル100を挟んで互いに対向するように配置されている。また、センサ200c,200dは、センサ200a,200bの対向方向に対して垂直な方向に、ケーブル100を挟んで互いに対向するように配置されている。一方で、第2位置側センサ群22は、例えば、センサ200e,200f,200g,200hを有している。センサ200e,200fは、第1位置側センサ群21のセンサ200a,200bの対向方向に対して45°傾けた方向に、ケーブル100を挟んで互いに対向するように配置されている。また、センサ200g,200hは、センサ200e,200fの対向方向に対して垂直な方向に、ケーブル100を挟んで互いに対向するように配置されている。
【0040】
ここで、第1位置側センサ群21が配置される第1位置と、第2位置側センサ群22が配置される第2位置とは、第1位置側センサ群21と第2位置側センサ群22とが互いに干渉することを抑制するように、ケーブル100の移動方向に離れている。言い換えれば、第1位置と第2位置とは、第1位置側センサ群21を構成するセンサ200と第2位置側センサ群22を構成するセンサ200とのそれぞれから出射されるレーザ光がケーブル100の表面で散乱されたときに、その散乱光が他方のセンサ200に入射しないように、ケーブル100の移動方向に離れている。このように、第1位置側センサ群21と第2位置側センサ群22とを、互いに干渉することを抑制するように配置することで、それぞれのセンサ200の測定時のノイズを低減し、欠陥部の誤検出を抑制することができる。
【0041】
図5に示すように、例えば、第2位置側センサ群22のセンサ200e等を保持するセンサ用移動支持部320は、第1位置側センサ群21のセンサ200a等を保持するセンサ用移動支持部320よりも、固定円盤310から固定円盤310に垂直な方向に嵩高くなっている。これにより、第2位置側センサ群22のセンサ200e等が配置される第2位置は、第1位置側センサ群21のセンサ200a等が配置される第1位置よりも、センサ保持部300の固定円盤310から固定円盤310に垂直な方向(すなわちケーブル100の移動方向の下流側)に所定距離だけ離れている。ケーブル100の移動方向における、第1位置側センサ群21と第2位置側センサ群22との距離、すなわち、第1位置と第2位置との距離は、例えば、50mm以上100mm以下である。第1位置と第2位置との距離を50mm以上とすることにより、第1位置側センサ群21と第2位置側センサ群22とが干渉することを抑制することができる。一方で、第1位置と第2位置との距離を100mm以下とすることにより、ケーブル外観検査装置10のケーブル100の長手方向(Y方向)の大きさが過大となることを抑制することができる。
【0042】
なお、
図6に示すように、第1位置側センサ群21および第2位置側センサ群22のそれぞれは、作動タイミングが異なる複数のセンサ群(例えば、第1次測定センサ群23および第2次測定センサ群24)を有している。これにより、センサ200間の干渉がさらに抑制されている。この点については、ケーブル100の製造方法の説明において後述する。
【0043】
(チャック部)
図3〜
図4に示すように、チャック部500は、ケーブル100の外側からケーブル100に対して当接し、ケーブル100の表面とセンサ200との距離を一定に保つように、ケーブル100に対するセンサ保持部300の相対的な位置を合わせるよう構成されている。
【0044】
チャック部500は、センサ保持部300よりもケーブル100の上流側および下流側のうち少なくともいずれかで、センサ保持部300に連結されている。これにより、ケーブル100が径方向に変位したときに、チャック部500がケーブル100から受ける反力をセンサ保持部300に伝達することができ、後述する移動機構40によってセンサ保持部300をケーブル100の長手方向に交差する方向に移動させることができる。なお、ここでいう「チャック部500がケーブル100から受ける反力」とは、チャック部500のチャック力に対してケーブル100が反発する力のことを意味し、ケーブル100が径方向に変位したときのケーブル100の径方向の変位力と考えることもできる。
【0045】
本実施形態では、チャック部500は、センサ保持部300よりもケーブル100の上流側および下流側の両方に設けられている。以下、これらのチャック部500うち、センサ保持部300よりもケーブル100の上流側に設けられるチャック部500を「上流側チャック部520」とし、センサ保持部300よりもケーブル100の下流側に設けられるチャック部500を「下流側チャック部540」とする。本実施形態のように、上流側チャック部520および下流側チャック部540の両方を設けることにより、たとえケーブル100がうねっていても、ケーブル100がセンサ保持部300を通過する領域では、ケーブル100が長手方向に交差する方向に振れることを抑制することができる。これにより、ケーブル100に対するセンサ保持部300の相対的な位置を安定的に合わせることができる。
【0046】
図3および
図4に示すように、上流側チャック部520は、複数設けられており、複数の上流側チャック部520は、ケーブル100の外周を囲むようにケーブル100の周方向に等間隔でセンサ保持部300に連結されている。また、例えば、複数の上流側チャック部520は、センサ保持部300の中心から所定の半径を有する同一円周上に配置されている。これにより、複数の上流側チャック部520をケーブル100に対して均等に当接させることができる。また、複数の上流側チャック部520の配置中心は、センサ保持部300に対して垂直な方向から見て、複数のセンサ200の配置中心と一致している。これにより、複数の上流側チャック部520の配置中心にケーブル100を通過させることで、複数のセンサ200の配置中心にケーブル100を通過させることができる。その結果、ケーブル100の表面とセンサ200との距離を安定的に一定に保つことができる。
【0047】
本実施形態では、上流側チャック部520は、例えば、3つ設けられており、3つの上流側チャック部520は、ケーブル100の外周を3等分するようセンサ保持部300に連結されている。これにより、3つの上流側チャック部520のそれぞれのチャック力(当接力)を、3つの上流側チャック部520の配置中心の一点に容易に集中させることができる。その結果、ケーブル100に対するセンサ保持部300の相対的な位置をずれ難くすることができ、ケーブル100の表面とセンサ200との距離を安定的に一定に保つことができる。
【0048】
図4に示すように、それぞれの上流側チャック部520は、ケーブル100に対して滑らかに且つ弾性的に当接するよう構成されている。具体的には、上流側チャック部520は、例えば、ローラ部522と、シリンダ部524と、を有している。ローラ部522は、長手方向に移動するケーブル100に沿って回転可能に該ケーブル100に対して当接するよう構成されている。これにより、上流側チャック部520のローラ部522をケーブル100に対して滑らかに当接させることができ、上流側チャック部520がケーブル100に対して当接する際の摩擦力を小さくすることができる。その結果、上流側チャック部520でケーブル100の移動が妨げられることを抑制することができる。シリンダ部524は、所定の弾性機構によりローラ部522を弾性的に軸方向に移動可能に支持する可動軸526を有している。シリンダ524の弾性機構としては、例えば、バネ式、空気圧式、または油圧式等の機構を用いることができる。また、それぞれのシリンダ部524は、センサ保持部300の固定円盤310の上流側に連結(固定)され、可動軸526が複数の上流側チャック部520の配置中心に向かうように(すなわち、センサ保持部300の径方向に沿って)配置されている。シリンダ部524によってローラ部522をケーブル100に弾性的に押し付けることで、過度な側圧がケーブル100に印加されることを抑制することができる。このような構成により、後述の検査工程において、チャック部500の当接に起因したケーブル100の損傷を抑制することができる。
【0049】
なお、3つの上流側チャック部520のうちの少なくともいずれか1つにおけるローラ部522の回転軸には、エンコーダ530が設けられている。エンコーダ530は、後述の制御部800に接続され、ローラ部522の回転位置および回転速度に基づく信号(パルス信号)を制御部800に送信するよう構成されている。これにより、ケーブル100の長手方向への所定距離の移動に対して各センサ200を作動させるセンサ作動信号を取得することができるとともに、ケーブル100の長手方向の移動速度を検知することができる。
【0050】
また、
図4に示すように、ケーブル外観検査装置10は、全ての上流側チャック部520のそれぞれのローラ部522をケーブル100の径方向に均等に移動させる上流側チャック用カム機構62を有している。
【0051】
具体的には、それぞれの上流側チャック部520は、シリンダ部524の可動軸526の一部にチャック用カムフォロワ528を有している。一方、上流側チャック用カム機構62は、例えば、上流側チャック用カム円盤620を有している。なお、センサ保持部300の固定円盤310を、上流側チャック用カム機構62の一部と考えてもよい。上流側チャック用カム円盤620は、センサ保持部300よりもケーブル100の移動方向の上流側でセンサ保持部300の固定円盤310に連結されている。上流側チャック用カム円盤620は、センサ保持部300の固定円盤310に対して周方向に相対的に回転可能に構成されている。なお、上流側チャック用カム円盤620は、上述のように、カム円盤連結部630を介して、センサ用カム円盤340に連結されている。また、上流側チャック用カム円盤620は、複数の上流側チャック用カム溝622を有している。複数の上流側チャック用カム溝622のそれぞれには、それぞれの上流側チャック部520のチャック用カムフォロワ528が係合するようになっている。複数の上流側チャック用カム溝622のそれぞれは、それぞれの上流側チャック部520の可動軸526の移動方向に対して傾斜した方向に沿って設けられている。全ての上流側チャック用カム溝622では、上流側チャック部520の可動軸526の移動方向に対する上流側チャック用カム溝622の傾斜角が、互いに等しくなっている。
【0052】
各チャック部500によりケーブル100をチャックする際、上流側チャック部520のシリンダ部524は、可動軸526を弾性的に軸方向に伸び出させる。シリンダ部524の可動軸526が伸び出すと、各可動軸526に設けられた各チャック用カムフォロワ528は、各上流側チャック用カム溝622に沿って滑って移動する。各チャック用カムフォロワ528が各上流側チャック用カム溝622に沿って移動すると、上流側チャック用カム円盤620が周方向に回転することとなる。
【0053】
このようにケーブル外観検査装置10が上流側チャック用カム機構62を有していることにより、全ての上流側チャック部520のそれぞれのローラ部522をケーブル100の径方向に均等に移動させることができる。これにより、全ての上流側チャック部520のそれぞれのローラ部522を同一円周上に配置することができる。その結果、全ての上流側チャック部520のそれぞれのローラ部522をケーブル100に対して均等な力で当接させることができる。
【0054】
一方、
図3に示すように、下流側チャック部540は、例えば、センサ保持部300に間接的に連結されている。具体的には、ケーブル外観検査装置10は、例えば、チャック用固定円盤(下流側チャック用固定円盤)610と、フレーム部450と、を有している。チャック用固定円盤610は、例えば、リング状の円盤として構成され、下流側チャック部540を保持している。フレーム部450は、センサ保持部300とチャック用固定円盤610とを連結している。フレーム部450は、例えば、鉛直上側から見てC字状に構成され、C字の上流端側にセンサ保持部300を連結しつつ、C字の下流端側にチャック用固定円盤610を連結している。このようなフレーム部450により、下流側チャック部540は、センサ保持部300からケーブル100の移動方向の下流側に所定距離だけ離れた位置に配置されている。これにより、下流側チャック部540がセンサ200に干渉することを抑制することができる。さらに、フレーム部450は、例えば、ケーブル100の移動方向から見てもC字状に構成され、上流端側における上端および下端の両方でセンサ保持部300を保持するとともに、下流端側における上端および下端の両方でチャック用固定円盤610を保持している。これにより、センサ保持部300とチャック用固定円盤610とを強固に連結することができる。
【0055】
図示されていないが、下流側チャック部540は、上流側チャック部520と同様の数だけ設けられている。具体的には、下流側チャック部540は、例えば、3つ設けられており、3つの下流側チャック部540は、ケーブル100の外周を3等分するよう、チャック用固定円盤610に連結されている。なお、3つの下流側チャック部540は、ケーブル100の移動方向から見て、3つの上流側チャック部520と重なるように配置されている。これにより、上流側チャック部520のチャック力と下流側チャック部540のチャック力とのずれを抑制し、ケーブル100の捻れの発生を抑制することができる。ケーブル100の捻れの発生を抑制することで、3つの上流側チャック部520のチャック中心位置と、3つの下流側チャック部540のチャック中心位置とを平均化(ケーブル100の移動方向から見て重なるように)することができる。
【0056】
それぞれの下流側チャック部540は、上流側チャック部520と同様に、ケーブル100に対して滑らかに且つ弾性的に当接するよう構成され、例えば、ローラ部(不図示)と、シリンダ部(不図示)と、を有している。下流側チャック部540のシリンダ部の弾性機構も、上流側チャック部520と同様に、例えば、バネ式、空気圧式、または油圧式等の機構を用いることができる。それぞれのシリンダ部は、チャック用固定円盤610の下流側に連結(固定)され、可動軸が複数の下流側チャック部540の配置中心に向かうように(すなわち、チャック用固定円盤610の径方向に沿って)配置されている。
【0057】
また、ケーブル外観検査装置10は、上流側チャック部520に対する上流側チャック用カム機構62と同様に、全ての下流側チャック部540のそれぞれのローラ部をケーブル100の径方向に均等に移動させる下流側チャック用カム機構64を有している。
【0058】
具体的には、それぞれの下流側チャック部540は、シリンダ部の可動軸(不図示)の一部にチャック用カムフォロワを有している。一方、下流側チャック用カム機構64は、例えば、下流側チャック用カム円盤640を有している。なお、チャック用固定円盤610を、下流側チャック用カム機構64の一部と考えてもよい。下流側チャック用カム円盤640は、チャック用固定円盤610に対して周方向に相対的に回転可能に構成されている。また、下流側チャック用カム円盤640は、複数の下流側チャック用カム溝(不図示)を有している。複数の下流側チャック用カム溝のそれぞれには、それぞれの下流側チャック部540のチャック用カムフォロワが係合するようになっている。複数の下流側チャック用カム溝のそれぞれは、それぞれの下流側チャック部540の可動軸の移動方向に対して傾斜した方向に沿って設けられている。全ての下流側チャック用カム溝では、下流側チャック部540の可動軸の移動方向に対する下流側チャック用カム溝の傾斜角が、互いに等しくなっている。
【0059】
このようにケーブル外観検査装置10が下流側チャック用カム機構64を有していることにより、上流側チャック用カム機構62と同様に、全ての下流側チャック部540のそれぞれのローラ部542をケーブル100に対して均等な力で当接させることができる。
【0060】
(移動機構)
図2〜
図3に示すように、移動機構40は、センサ保持部300をケーブル100の長手方向に交差する方向に移動可能に支持するよう構成されている。これにより、ケーブル100の径方向の変位に追従するようにセンサ保持部300を移動機構40によって移動させることができ、ケーブル100の表面とセンサ200との距離を一定に保つことができる。
【0061】
具体的には、移動機構40は、例えば、鉛直移動支持部440と、水平移動支持部420と、吊上部460と、荷重部(カウンタウェイト)480と、を有している。
【0062】
鉛直移動支持部440は、センサ保持部300を鉛直方向に移動可能に支持するよう構成されている。鉛直移動支持部440は、例えば、支柱部442と、鉛直可動部444と、を有している。支柱部442は、例えば、センサ保持部300等の重量に耐えうるT字板状部材として構成され、鉛直方向に沿って立設されている。鉛直可動部444は、例えば、いわゆるリニアガイドとして構成され、支柱部442に沿って設けられている。鉛直可動部444は、フレーム部450を介してセンサ保持部300およびチャック用固定円盤610を支持しつつ、センサ保持部300およびチャック用固定円盤610を鉛直方向に直線状に移動できるようになっている。
【0063】
水平移動支持部420は、センサ保持部300を水平方向に移動可能に支持するよう構成されている。本実施形態では、水平移動支持部420は、例えば、鉛直移動支持部440を水平方向に移動可能に支持することで、間接的にセンサ保持部300を水平方向に移動可能に支持するようになっている。水平移動支持部420は、例えば、固定架台422と、水平可動部424と、を有している。固定架台422は、水平な地面の上に載置されて固定されている。水平可動部424は、例えば、いわゆるリニアガイドとして構成され、固定架台422に沿ってケーブル100の移動方向に対して直交する方向(X方向)に設けられている。水平可動部424は、鉛直移動支持部440の支柱部442を鉛直下側から支持しつつ、鉛直移動支持部440を水平方向に直線状に移動できるようになっている。
【0064】
吊上部460は、例えば、柱状に構成され、鉛直移動支持部440の支柱部442の上部に水平方向に沿って設けられている。吊上部460は、例えば、センサ保持部300およびチャック用固定円盤610のそれぞれに対応するように設けられている。吊上部460のうち、センサ保持部300に対応する吊上部460を「上流側吊上部462」とし、チャック用固定円盤610に対応する吊上部460を「下流側吊上部464」とする。上流側吊上部462は、センサ保持部300が一端に連結された連結部材490を介してセンサ保持部300を鉛直上方向に吊り上げるよう構成されている。一方で、下流側吊上部464は、チャック用固定円盤610が一端に連結された連結部材490を介してチャック用固定円盤610を鉛直上方向に吊り上げるよう構成されている。なお、連結部材490は、例えば、ワイヤまたはチェーンなどである。
【0065】
荷重部480は、例えば、所定の重量を有する錘として構成され、センサ保持部300およびチャック用固定円盤610のそれぞれに対応するように設けられている。荷重部480のうち、センサ保持部300に対応する荷重部480を「上流側荷重部482」とし、チャック用固定円盤610に対応する荷重部480を「下流側荷重部(不図示)」とする。上流側荷重部482は、鉛直移動支持部440を挟んでセンサ保持部300と反対側で連結部材490の他端に連結されている。上流側荷重部482は、センサ保持部300の重量と少なくとも同じ重量を有しており、本実施形態では、例えば、センサ保持部300、センサ200a〜200h、および3つの上流側チャック部520の重量と同じ重量を有している。これにより、上流側荷重部482の重量とセンサ保持部300等の重量とを相殺させることができる。一方、下流側荷重部は、鉛直移動支持部440を挟んでチャック用固定円盤610と反対側で連結部材490の他端に連結されている。下流側荷重部は、チャック用固定円盤610の重量と少なくとも同じ重量を有しており、本実施形態では、例えば、チャック用固定円盤610および3つの下流側チャック部540の重量と同じ重量を有している。これにより、下流側荷重部の重量とチャック用固定円盤610等の重量とを相殺させることができる。
【0066】
本実施形態では、移動機構40には、電力が供給されていない。つまり、移動機構40は、電力による動作ではなく、ケーブル100の径方向の変位力の伝達による機械的な動作によって、センサ保持部300を移動させることができるようになっている。ケーブル100が径方向に移動したときの移動機構40等の動作については、ケーブル100の製造方法の説明において後述する。
【0067】
(制御部)
図2、
図3、
図4および
図7に示すように、制御部800は、ケーブル100の外観を検査するよう、センサ200a〜200h等を制御するように構成されている。
【0068】
図7に示すように、制御部800は、例えば、CPU(Central Processing Unit)810、RAM(Random Access Memory)820、記憶装置830、およびI/Oポート840を有している。RAM820、記憶装置830、およびI/Oポート840は、CPU810とデータ交換可能に構成されている。また、制御部800には、表示部850および入力部860が接続されている。
【0069】
I/Oポート840は、センサ200a〜200hと、エンコーダ530と、に接続されている。これにより、制御部800は、センサ200a〜200hと、エンコーダ530と、に対して、所定の信号を送受信することができるようになっている。なお、I/Oポート840は、例えば、Ethernet(登録商標)規格に準拠して、センサ200a〜200hと通信可能に接続されている。また、I/Oポート840は、ケーブル搬送装置に接続されていてもよい。
【0070】
記憶装置830は、センサ200a〜200h等の制御に係る各種データやプログラムを記憶するよう構成されている。例えば、記憶装置830は、センサ200が測定したケーブル100の表面の高さデータ、該高さデータの曲線近似プログラム、ケーブル100の欠陥部の判定に用いられる基準値、チャック部500のローラ部522の回転位置および回転速度に基づくエンコーダ530からの信号をケーブル100の長手方向の位置およびケーブル100の長手方向の移動速度に変換するプログラム等を読み出し可能に記憶するよう構成されている。
【0071】
RAM820は、CPU810によって記憶装置830から読み出される各種データやプログラム等が一時的に保持されるよう構成されている。
【0072】
CPU810は、記憶装置830に格納された所定プログラムを実行することにより、センサ200a〜200h等を制御するように構成されている。制御部800による制御については、ケーブル100の製造方法の説明において後述する。
【0073】
上記の所定プログラムは、制御部800にインストールして用いられるが、そのインストールに先立ち、制御部800で読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されるものであってもよいし、或いは制御部800と接続する通信回線(光ファイバ等)を通じて当該制御部800へ提供されるものであってもよい。
【0074】
表示部850は、ケーブル外観検査装置10の管理者等に対して、センサ200a〜200hの測定結果等の情報を表示するよう構成されている。表示部850は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイなどである。一方、入力部860は、ケーブル外観検査装置10の管理者等が制御部800に対して情報入力を行うよう構成されている。具体的には、入力部860は、マウスやキーボード等である。なお、表示部850および入力部860は、タッチパネル等により両者を兼ねて構成されていてもよい。
【0075】
(2)ケーブルの製造方法
次に、
図1に示したケーブル100の構成や、
図2〜
図7に示したケーブル外観検査装置10の構成を参照しつつ、
図8を用い、本実施形態のケーブルの製造方法について説明する。
図8は、本実施形態に係るケーブルの製造方法を示すフローチャートである。なお、ステップをSと略している。
【0076】
(S100:準備工程)
まず、
図1に示すように、ケーブル100を作製して準備する。
【0077】
ケーブル100は、最外層に絶縁層または半導電層を有する絶縁被覆を備えるものであれば内部の構成は限定されないが、この例では3層絶縁の電力ケーブルを例に挙げる。具体的には、複数の導体芯線を撚り合わせることにより、導体110を形成する。次に、3層同時押出機を用い、導体110の外周に、内側から外側に向けて、内部半導電層130、絶縁体140および外部半導電層150を押出被覆することで、絶縁被覆120を形成する。これにより、ケーブル100が作製される。
【0078】
(S200:検査工程)
次に、ケーブル100を長手方向に移動させながら、ケーブル外観検査装置10によってケーブル100の外観を検査する。
【0079】
ここでは、例えば、押出機から絶縁被覆120が押し出された後のケーブル100をそのまま長手方向に移動させながら(つまり、ケーブル100の作製とともに)、ケーブル100をケーブル外観検査装置10に通過させて検査工程S200を行う。なお、絶縁被覆120が押し出された後のケーブル100を一度ドラムに巻き取って絶縁被覆120を乾燥させ、その後、ドラムからケーブル100を長手方向に送り出しながら、ケーブル100をケーブル外観検査装置10に通過させて検査工程S200を行ってもよい。
【0080】
(S210:チャックおよびセンサ位置設定工程)
[チャック]
まず、チャック部500をケーブル100の外側からケーブル100に対して当接させる。具体的には、例えば制御部800の制御により、上流側チャック部520のシリンダ部524および下流側チャック部540のシリンダ部のそれぞれでは、可動軸を弾性的に軸方向に伸び出させる。それぞれの可動軸の伸び出しにより、上流側チャック部520のローラ部522と下流側チャック部540のローラ部とのそれぞれをケーブル100に対して当接させる(押し付ける)。これにより、3つの上流側チャック部520の配置中心と、3つの下流側チャック部540の配置中心とのそれぞれにケーブル100を通過させることができる。
【0081】
ここで、3つの上流側チャック部520のそれぞれのローラ部522をケーブル100に対して当接させる際、上流側チャック用カム機構62を用い、ケーブル100に対する全てのローラ部522のそれぞれの当接力を均等にする。
【0082】
具体的には、
図4に示すように、3つの上流側チャック部520のそれぞれにおけるシリンダ部524の可動軸526を軸方向に伸び出させ、それぞれのチャック用カムフォロワ528を、上流側チャック用カム円盤620に設けられた3つの上流側チャック用カム溝622のそれぞれに沿って滑らせて移動させる。このとき、それぞれの上流側チャック用カム溝622は、それぞれのシリンダ部524の可動軸526の移動方向に対して同一の傾斜角で傾斜した方向に沿って設けられている。このため、それぞれのチャック用カムフォロワ528は、それぞれの上流側チャック用カム溝622の側面に当接しながら移動することで、上流側チャック用カム円盤620を周方向に回転させる。これにより、全ての上流側チャック部520のそれぞれのローラ部522をケーブル100の径方向に均等に移動させることができ、全ての上流側チャック部520のそれぞれのローラ部522を同一円周上に配置することができる。その結果、全ての上流側チャック部520のそれぞれのローラ部522をケーブル100に対して均等な力で当接させることができる。
【0083】
なお、3つの下流側チャック部540のそれぞれのローラ部をケーブル100に対して当接させる際においても、上流側チャック部520と同様にして、下流側チャック用カム機構64を用い、ケーブル100に対する全てのローラ部542のそれぞれの当接力を均等にする。
【0084】
以下の検査工程S200では、チャック部500をケーブル100に対して当接させた状態で維持させる。
【0085】
[センサ位置設定]
上述のようにチャック部500によりケーブル100をチャックする一方で(それと同時に)、センサ保持部300において、ケーブル100の表面から所定距離だけ離れた測定位置に、センサ200を移動させる。このとき、上記した上流側チャック用カム円盤620に連動させたセンサ用カム機構30を用いることで、全てのセンサ200を径方向に移動させ、ケーブル100の径方向に対する全てのセンサ200のそれぞれの移動量を均等にする。
【0086】
具体的には、
図4および
図5に示すように、上述の上流側チャック用カム円盤620を周方向に回転させることで、カム円盤用連結部630を介して上流側チャック用カム円盤620に連結されたセンサ用カム円盤340を、上流側チャック用カム円盤620に連動させて受動的に周方向に回転させる。センサ用カム円盤340を周方向に回転させることで、8つのセンサ用移動支持部320のそれぞれに設けられたセンサ用カムフォロワ322を、センサ用カム円盤340に設けられた8つのセンサ用カム溝342のそれぞれに沿って滑らせて移動させる。このとき、それぞれのセンサ用カム溝342は、それぞれのセンサ用移動支持部320の可動板の移動方向に対して同一の傾斜角で傾斜した方向に設けられている。このため、それぞれのセンサ用カムフォロワ322は、それぞれのセンサ用カム溝342の側面に当接しながら移動する。それぞれのセンサ用カムフォロワ322をそれぞれのセンサ用カム溝342に沿って移動させることで、センサ200a〜200hのそれぞれが載置された8つのセンサ用移動支持部320のそれぞれの可動板を受動的に直線状に移動させる。これにより、センサ200a〜200hのそれぞれをケーブル100の径方向に移動させることができる。また、このとき、それぞれのセンサ用移動支持部320の可動板の移動方向に対する、それぞれのセンサ用カム溝342の傾斜角が同一であることで、全てのセンサ200のそれぞれをケーブル100の径方向に均等に移動させることができ、全てのセンサ200を同一円周上に配置することができる。その結果、全てのセンサ200において、ケーブル100の表面とそれぞれのセンサ200との距離を均等にすることができる。
【0087】
(S230:測定工程)
それぞれのセンサ200が所定の測定位置に配置されたら、ケーブル100を長手方向に移動させながら、それぞれのセンサ200によって、ケーブル100の表面に対してレーザ光を照射し、ケーブル100からの反射光を受光する。これにより、反射光の受光位置の変化に基づいて、ケーブル100の表面の凹凸を測定する。
【0088】
[ケーブルに対する追従]
測定工程S230では、ケーブル100が径方向に変位したとき、ケーブル100の径方向の変位に追従するように、センサ保持部300を移動機構40によって移動させる。
【0089】
なお、ここでいう「ケーブル100の径方向の変位」とは、例えば、ケーブル100の外径変動や、ケーブル100の径方向(長手方向に交差する方向)への移動(うねり)等を含んでいる。これらのうち、ケーブル100の外径変動は、絶縁被覆120の押出条件等によって変動しうるものである。ケーブル100の外径変動が生じると、所定の高さで固定された搬送ローラに沿って移動する際に、ケーブル100の中心軸の位置が鉛直方向に変動しうる。また、ケーブル100の径方向への移動は、絶縁被覆120の押出状態の変化や、ケーブル100のドラム巻きして乾燥させた際に発生する乾燥癖などによって生じうるものである。
【0090】
具体的には、測定工程S230では、ケーブル100を長手方向に移動させながら、チャック部500をケーブル100の外側からケーブル100に対して当接させることにより、ケーブル100の表面とセンサ200との距離を一定に保つように、ケーブル100に対するセンサ保持部300の相対的な位置を合わせる。このとき、チャック部500のうちの上流側チャック部520では、3つの上流側チャック部520のそれぞれのシリンダ部524の可動軸526を弾性的に軸方向に伸び出させ、それぞれのローラ部522を回転させながらケーブル100に当接させる。このように、それぞれの上流側チャック部520をケーブル100に対して滑らかに且つ弾性的に当接させることで、上流側チャック部520の当接に起因したケーブル100の損傷を抑制することができる。また、3つの上流側チャック部520のそれぞれのローラ部522を3つの上流側チャック部520の配置中心に向けてケーブル100に当接させることで、該配置中心にケーブル100を通過させることができる。3つの上流側チャック部520の配置中心は、センサ200a〜200hの配置中心と一致しているので、3つの上流側チャック部520の配置中心にケーブル100を通過させることで、センサ200a〜200hの配置中心にケーブル100を通過させることができる。このようにして、ケーブル100の表面とセンサ200との距離を一定に保つように、ケーブル100に対するセンサ保持部300の相対的な位置を合わせることができる。なお、チャック部500のうちの下流側チャック部540も、上流側チャック部520と同様に動作する。
【0091】
ケーブル100が径方向に変位したとき、チャック部500は、ケーブル100から反力を受け、その反力をセンサ保持部300に伝達させる。チャック部500がケーブル100から受ける反力がセンサ保持部300に伝達されると、センサ保持部300は、チャック部500がケーブル100から受ける反力が小さくなるように、移動機構40によってケーブル100の長手方向に交差する方向に移動する。
【0092】
例えば、ケーブル100が+X方向に移動したとき、チャック部500のうちの上流側チャック部520は、ケーブル100から+X方向に反力を受け、その反力をセンサ保持部300の固定円盤310に伝達させる。また、チャック部500のうちの下流側チャック部540は、上流側チャック部520と同様に、ケーブル100から+X方向に反力を受け、その反力をチャック用固定円盤610に伝達させ、間接的にセンサ保持部300にも伝達させることとなる。チャック部500がケーブル100から受ける+X方向の反力がセンサ保持部300に伝達されると、センサ保持部300は、チャック部500がケーブル100から受ける+X方向の反力が小さくなるように、移動機構40の水平移動支持部420によって+X方向に移動する。なお、ケーブル100が−X方向に移動したときも、ケーブル外観検査装置10は、上記と同様に動作する。
【0093】
また、例えば、ケーブル100が+Z方向に移動したとき、チャック部500のうちの上流側チャック部520は、ケーブル100から+Z方向に反力を受け、その反力をセンサ保持部300の固定円盤310に伝達させる。また、チャック部500のうちの下流側チャック部540は、上流側チャック部520と同様に、ケーブル100から+Z方向に反力を受け、その反力をチャック用固定円盤610に伝達させ、間接的にセンサ保持部300にも伝達させることとなる。チャック部500がケーブル100から受ける+Z方向の反力がセンサ保持部300に伝達されると、センサ保持部300は、チャック部500がケーブル100から受ける+Z方向の反力が小さくなるように、移動機構40の鉛直移動支持部440によって+Z方向に移動する。このとき、センサ保持部300が一端に連結され上流側荷重部482が他端に連結された連結部材490を介して、上流側吊上部462によってセンサ保持部300を鉛直上方向に吊り上げる。これにより、上流側荷重部482の重量とセンサ保持部300の重量とを相殺させることができる。また、チャック用固定円盤610が一端に連結され下流側荷重部が他端に連結された連結部材490を介して、下流側吊上部464によってチャック用固定円盤610を鉛直上方向に吊り上げる。これにより、下流側荷重部の重量とチャック用固定円盤610の重量とを相殺させることができる。つまり、移動機構40による重量相殺により、センサ保持部300にそれ自身の重量が加わることを抑制することができる。その結果、チャック部500がケーブル100から受ける+Z方向の反力のみにより、移動機構40の鉛直移動支持部440を用いてセンサ保持部300を+Z方向に移動させることができる。なお、ケーブル100が−Z方向に移動したときも、ケーブル外観検査装置10は、上記と同様に動作する。また、ケーブル100が斜め方向に移動したときには、ケーブル外観検査装置10は、ケーブル100がX方向に移動したときの動作とケーブル100がZ方向に移動したときの動作とを合わせた動作をすることとなる。
【0094】
このようにして、ケーブル100が径方向に変位したとき、ケーブル100の径方向の変位に追従するように、センサ保持部300を移動機構40によって移動させることができる。その結果、ケーブル100の表面とセンサ200との距離を一定に保つことができる。
【0095】
[センサ干渉抑制]
図6を用いて上述したように、センサ保持部300は、ケーブル100の移動方向の第1位置に第1位置側センサ群21を支持し、ケーブル100の移動方向の第1位置と異なる第2位置に第2位置側センサ群22を支持している。これにより、第1位置側センサ群21と第2位置側センサ群22とが互いに干渉することを抑制することができる。
【0096】
また、
図6に示すように、第1位置側センサ群21および第2位置側センサ群22のそれぞれでは、所定のセンサ群ごとに作動タイミングをずらしている。所定の作動タイミングで同時に作動させるセンサ群を「第1次測定センサ群23」とし、第1次測定センサ群23と異なる作動タイミングで同時に作動させるセンサ群を「第2次測定センサ群24」とする。
【0097】
第1次測定センサ群23および第2次測定センサ群24のそれぞれでは、複数のセンサ200のうち、ケーブル100の周方向に干渉しない位置に配置される2以上のセンサ200を同時に作動させる。本実施形態の第1次測定センサ群23および第2次測定センサ群24のそれぞれでは、例えば、複数のセンサ200のうち、ケーブル100を挟んで対向するセンサ200の対を同時に作動させる。同時に作動するセンサ200の対がケーブル100を挟んで対向して配置されることで、センサ200の対のそれぞれから出射されるレーザ光がケーブル100の表面で散乱されたときに、その散乱光が他方のセンサ200に入射することを抑制することができる。その結果、センサ200同士の干渉を確実に抑制することができる。
【0098】
具体的には、
図6(c)に示すように、第1位置側センサ群21のうちの第1次測定センサ群23は、例えば、センサ200aおよびセンサ200bにより構成される。また、第1位置側センサ群21のうちの第2次測定センサ群24は、例えば、センサ200cおよびセンサ200dにより構成される。
【0099】
一方、
図6(b)に示すように、第2位置側センサ群22のうちの第1次測定センサ群23は、例えば、センサ200eおよびセンサ200fにより構成される。また、第2位置側センサ群22のうちの第2次測定センサ群24は、例えば、センサ200gおよびセンサ200hにより構成される。
【0100】
なお、第1位置側センサ群21の第1次測定センサ群23と、第2位置側センサ群22の第1次測定センサ群23とは、同時に作動することとなる。また、第1位置側センサ群21の第2次測定センサ群24と、第2位置側センサ群22の第2次測定センサ群24とは、第1次測定センサ群23と異なる作動タイミングで同時に作動することとなる。
【0101】
ここで、
図9を用いて、第1次測定センサ群23および第2次測定センサ群24のそれぞれの作動タイミングについて説明する。
図9は、検査工程での各センサの作動タイミングを示す図である。
図9において、「On」とは、それぞれのセンサ200が作動している状態(測定している状態)を示し、「Off」とは、それぞれのセンサ200が停止している状態を示している。第1次測定センサ群23および第2次測定センサ群24のそれぞれは、エンコーダ530からのセンサ作動信号(S)に基づいて制御部800によって制御される。
【0102】
図9に示すように、まず、制御部800がエンコーダ530から受信したセンサ作動信号(S)をトリガーとして、作動時間t1において、第1次測定センサ群23を停止させた状態で、第2次測定センサ群24を作動させ、第2次測定センサ群24にケーブル100の表面の凹凸を測定させる。
【0103】
次に、作動時間t1が経過した後、作動時間t2において、第2次測定センサ群24を停止させた状態で、第1次測定センサ群23を作動させ、第1次測定センサ群23にケーブル100の表面の凹凸を測定させる。
【0104】
その後、先のセンサ作動信号(S)の受信時からケーブル100が長手方向に所定距離だけ移動し、制御部800がエンコーダ530から次のセンサ作動信号(S)を受信するまで、第1次測定センサ群23および第2次測定センサ群24を停止させた状態とする。
【0105】
なお、エンコーダ530から受信するセンサ作動信号(S)のタイミングは、ケーブル100の長手方向の移動速度に依存するため、時間軸tで見た場合に、必ずしも等間隔とならない。一方で、エンコーダ530から受信するセンサ作動信号(S)は、ケーブル100の長手方向の所定距離ごとに受信されるので、第1次測定センサ群23および第2次測定センサ群24のそれぞれの作動タイミングが時間軸t上で等間隔でなくても、第1次測定センサ群23および第2次測定センサ群24のそれぞれの測定位置は、ケーブル100の長手方向に等間隔となる。
【0106】
このように、ケーブル100が長手方向に所定距離だけ移動した際に制御部800がエンコーダ530から受信するセンサ作動信号(S)をトリガーとして、第1次測定センサ群23を停止させた状態で第2次測定センサ群24を作動させる処理と、第2次測定センサ群24を停止させた状態で第1次測定センサ群23を作動させる処理と、を含むサイクルを繰り返し行う。これにより、第1次測定センサ群23および第2次測定センサ群24のそれぞれによって、ケーブル100の長手方向に対して所定距離ごとに間欠的に、ケーブル100の表面の凹凸を測定することができる。
【0107】
作動時間t1および作動時間t2は、例えば、互いに等しいことが好ましい。これにより、第1次測定センサ群23および第2次測定センサ群24のそれぞれにおいて、1周期中のケーブル100の長手方向の測定長を揃えることができる。
【0108】
具体的には、作動時間t1および作動時間t2のそれぞれは、例えば、100μs以上3000μs以下である。作動時間t1および作動時間t2のそれぞれが100μs未満であると、第1次測定センサ群23および第2次測定センサ群24のそれぞれの作動時間内において、センサ200からのレーザ光の光量が充分に得られず、凹凸を充分に測定できない可能性がある。一方、作動時間t1および作動時間t2のそれぞれが3000μs超であると、第1次測定センサ群23および第2次測定センサ群24のうちのいずれか一方が停止することによる非測定領域が過剰に長くなってしまう可能性がある。
【0109】
このように、第1位置側センサ群21と第2位置側センサ群22との物理的な位置をずらすとともに、第1次測定センサ群23と第2次測定センサ群24との作動タイミングをずらすことで、各センサ200が互いに干渉することを確実に抑制しつつ、ケーブル100の全長に亘ってケーブル100の表面の凹凸を精度良く測定することができる。
【0110】
[凹凸の大きさの測定方法]
図10を用い、ケーブル100の表面における凹凸の大きさの測定方法の一例について説明する。
図10(a)は、ケーブルの表面を実測した高さデータを示す概略図であり、(b)は、高さデータを近似した近似曲線を示す概略図であり、(c)は、高さデータから近似曲線の高さ値を差し引いた差分データを示す概略図である。
【0111】
ここで、測定工程S230では、ケーブル100が長手方向に移動することに伴って、ケーブル100が微小に振動している。ケーブル100の微小な振動によって、センサ200からのレーザ光は散乱され易い。
【0112】
このため、
図10(a)に示すように、ケーブル100の表面を実測した高さデータは、ケーブル100の微小振動に起因したレーザ光の散乱によって、微小に波打っている。このため、ケーブル100の表面を実測した高さデータにおいて凹凸(CP)が検出されたとしても、高さデータ上での凹凸の形状が上記した振動のノイズの影響やケーブル100の曲面の影響を受け、凹凸の大きさを正確に測定することが困難となる。そこで、以下のようにして、ケーブル100の表面を実測した高さデータを補正する。
【0113】
まず、
図10(b)に示すように、
図10(a)のケーブル100の表面を実測した高さデータを最も近い近似曲線(例えば、楕円曲線など)に近似する。このように近似により得られた近似曲線を、仮に振動の影響を受けていない理想的に平坦なケーブル100の表面の高さデータと考えることができる。
【0114】
次に、
図10(c)に示すように、
図10(a)のケーブル100の表面を実測した高さデータから、
図10(b)の近似曲線の高さ値を差し引いた差分データを求める。このようにして求められた差分データに基づいて、凹凸(CP)の大きさを測定する。これにより、上記した振動のノイズの影響やケーブル100の曲面の影響を低減し、凹凸の大きさの測定精度を向上させることができる。
【0115】
以上のように、測定工程S230では、各センサ200において、上記した差分データに基づいて、凹凸の大きさを測定する。制御部200は、ケーブル100の長手方向の位置と、その位置においてケーブル100の表面を実測した高さデータと、該高さデータから近似曲線の高さ値を差し引いた差分データと、を記憶装置830に記録していく。
【0116】
(S240:欠陥部判定)
図8を再度参照し、測定工程S230でケーブル100の表面における凹凸の大きさを測定した後のフローについて説明する。測定工程S230で各センサ200によってケーブル100の表面における凹凸の大きさを測定したら、制御部800は、センサ200a〜200hのうちの少なくともいずれか1つが測定した凹凸の大きさが基準値を超えているときに、当該凹凸をケーブル100の欠陥部と判定する。このとき、基準値を例えばノイズ(の最大値)以上に設定する。これにより、ケーブル100の欠陥部の誤検出を抑制することができる。
【0117】
具体的には、センサ200a〜200hのうちの少なくともいずれか1つにおいて、ケーブル100の径方向の凹部の深さ(以下、「傷深さ」ともいう)が深さ基準値を超えているとき、またはケーブル100の径方向の凸部の高さ(以下、「膨れ高さ」ともいう)が高さ基準値を超えているときに、当該凹部の深さが深さ基準値を超えている領域の面積、または当該凸部の高さが高さ基準値を超えている領域の面積を算出する。このようにして算出した凹凸の面積が面積基準値を超えているときに、当該凹凸をケーブル100の欠陥部と判定する。測定時のノイズによって高さデータ上で生じうる凹凸の範囲は狭い範囲に限られるため、凹凸の面積に基づいてケーブル100の欠陥部を判定することで、ノイズに起因したケーブル100の欠陥部の誤検出を抑制することができる。
【0118】
ここで、
図11は、測定結果を表示する表示部の画面を示す概略図である。
図11に示すように、制御部800は、各センサ200の測定結果854を画面852に表示させるよう、表示部850を制御する。例えば、表示部850の画面852は、センサ200a〜200hのそれぞれが測定した凹凸の大きさ(傷深さまたは膨れ高さ)と、凹凸の大きさに基づいて当該凹凸が欠陥部であるか否かを判定した判定結果(OKまたはNG)と、を含む測定結果854を、センサ200a〜200hのそれぞれに対応するように表示している。これにより、検査工程S200を管理する管理者は、凹凸の大きさとその判定結果とを各センサ200に対応付けて、ケーブル100の状態を早急に把握することができる。
【0119】
さらに、表示部850の画面852は、センサ200a〜200hのうちの少なくともいずれか1つにおいてケーブル100の表面の凹凸が欠陥部であると判定された場合(NG判定)に、欠陥部を合格とするか不合格とするかに応じて測定工程S200の進行を選択するボタン(856a〜856c)を表示している。これらのボタンの使用については、後述する。
【0120】
なお、表示部850は、測定結果854を含む画面852とは別の切替可能な画面に、各センサ200が測定したケーブル100の表面の画像を表示してもよい。このとき、表示部850は、例えば、各センサ200が測定した凹凸の大きさ(高さ値)を色調または階調に変換した3次元画像を表示してもよい。これにより、検査工程S200を管理する管理者がケーブル100に生じた凹凸の形状を早急かつ明確に把握することができる。
【0121】
(S280:終了判定)
センサ200a〜200hのそれぞれにおいてケーブル100の表面の凹凸の大きさが基準値以下であり、当該凹凸が欠陥部ではないと判定したとき(S240でYes)、測定工程S230の終了判定を行う。測定工程S230を終了させないとき(S280でNo)、測定工程S230を継続させる。
【0122】
(S250:処置不要判定)
一方で、センサ200a〜200hのうちの少なくともいずれか1つにおいてケーブル100の表面の凹凸の大きさが基準値超であり、当該凹凸が欠陥部であると判定したとき(NG判定:S240でYes)、ケーブル100の長手方向の移動を停止させ、管理者は、ケーブル100の欠陥部と判定された箇所を目視で確認する。管理者は、目視確認後、当該欠陥部が異常なしか否かを判定する(S250)。
【0123】
欠陥部が軽微である場合などのように、欠陥部が異常なしと判定したとき(合格:S250でYes)、上述の測定工程S230の終了判定を行う。測定工程S230を終了させないとき(S280でNo)、測定工程S200を継続させる。このとき、管理者は、表示部850の画面852において「異常なし(合格)そのまま進行」と記載された第1ボタン856aをクリックする。第1ボタン856aがクリックされたとき、制御部800は、ケーブル100の表面における欠陥部の位置(長手方向および周方向のそれぞれの位置)とともに、当該欠陥部が異常なしであったことを記憶装置830に記録する。また、第1ボタン856aがクリックされたとき、ケーブル搬送装置によってケーブル100の長手方向の移動を再開させた後、制御部800は、第1ボタン856aのクリックをトリガーとして、各センサ200によるケーブル100の表面の凹凸の測定を再開させる。
【0124】
(S260:処置対応可否判定)
欠陥部が異常ありと判定したとき(S250でNo)、管理者は、欠陥部に対して所定の処置を施せば欠陥部を修復可能であるか否かを判定する(S260)。
【0125】
(S270:処置)
欠陥部に対して所定の処置を施せば欠陥部を修復可能であると判定したとき(処置対応可、合格:S260でYes)、管理者は、欠陥部に対して所定の処置を施す。例えば、欠陥部が付着物の付着した膨れである場合には、欠陥部の付着物を剥がす処置を施す。
【0126】
欠陥部に対して所定の処置を施した後、上述の測定工程S230の終了判定を行う。測定工程S230を終了させないとき(S280でNo)、測定工程S200を継続させる。このとき、管理者は、表示部850の画面852において「処置対応(合格)処置後進行」と記載された第2ボタン856bをクリックする。第2ボタン856bがクリックされたとき、制御部800は、ケーブル100の表面における欠陥部の位置(長手方向および周方向のそれぞれの位置)とともに、欠陥部が処置対応によって修復されたことを記憶装置830に記録する。また、第1ボタン856aがクリックされたとき、ケーブル搬送装置によってケーブル100の長手方向の移動を再開させた後、制御部800は、第2ボタン856bのクリックをトリガーとして、各センサ200によるケーブル100の表面の凹凸の測定を再開させる。
【0127】
一方、欠陥部に対して所定の処置を施しても欠陥部を修復不可能であると判定したとき(処置対応不可、不合格:S260でNo)、検査対象のケーブル100をロットアウトとして検査工程S200を終了する。このとき、管理者は、表示部850の画面852において「処置対応不可(不合格)」と記載された第3ボタン856cをクリックする。第3ボタン856cがクリックされたとき、制御部800は、ケーブル100の表面における欠陥部の位置(長手方向および周方向のそれぞれの位置)とともに、欠陥部が処置対応不可であったことと、当該ケーブル100をロットアウトとすることとを記憶装置830に記録する。
【0128】
上述の測定工程S230を継続後、所定の長さのケーブル100の測定が完了した場合などにおいて、測定工程S230を終了させるとき(S280でYes)、ケーブル100の長手方向の移動を停止させ、各センサ200によるケーブル100の表面の凹凸の測定を停止させ、検査工程S200を終了させる。
【0129】
以上により、本実施形態のケーブル100の製造工程を終了する。
【0130】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0131】
(a)レーザ光を用いた三角測距方式によりケーブル100の表面の凹凸を測定することで、ケーブル100の表面に微細な色ムラが生じていた場合であっても、ケーブル100の欠陥部の誤検出を抑制することができる。また、ケーブル100の表面における凹部と凸部とを正確に判別することができ、凹凸の大きさを高い分解能で測定することができる。これにより、ケーブル100の表面に微小な欠陥部が生じていた場合であっても、欠陥部の見逃しの発生を抑制することができる。このように、本実施形態では、ケーブル100の凹凸外観を検査する検査精度を向上させることができる。
【0132】
(b)検査工程S200では、ケーブル100が径方向に変位したとき、ケーブル100の径方向の変位に追従するようにセンサ保持部300を移動機構40によって移動させる。つまり、センサ200の所定の測定位置にケーブル100が通過するように、ケーブル100の径方向の位置を強制的に補正するのではなく、ケーブル100を径方向に自由に移動可能としたまま、ケーブル100の径方向の変位に応じてセンサ保持部300を移動させる。これにより、ケーブル100に過大な側圧が加わることを抑制しつつ、ケーブル100の表面とセンサ200との距離を一定に保つことができる。その結果、検査工程S200でのケーブル100の損傷の発生を抑制しつつ、ケーブル100の外観を検査する検査精度を向上させることができる。
【0133】
(c)検査工程S200では、センサ保持部300に連結されたチャック部500により、ケーブル100の表面とセンサ200との距離を一定に保つように、ケーブル100に対するセンサ保持部300の相対的な位置を合わせる。これにより、ケーブル100が径方向に変位したときに、チャック部500がケーブル100から受ける反力をセンサ保持部300に伝達させ、移動機構40によってセンサ保持部300をケーブル100に追従させることができる。このように、ケーブル100の径方向の変位力の伝達を利用することで、電力を用いることなく、ケーブル100の表面とセンサ200との距離を一定に保つことができる。その結果、移動機構40において電動機構を省くことで、ケーブル外観検査装置10のコストを削減することができる。また、検査工程S200での電力を低減することで、ケーブル100の製造コストを削減することができる。
【0134】
(d)チャック部500は複数設けられており、複数のチャック部500は、ケーブル100の外周を囲むようにケーブル100の周方向に等間隔でセンサ保持部300に連結されている。これにより、複数のチャック部500をケーブル100に対して均等に当接させることができる。また、複数のチャック部500の配置中心にケーブル100を通過させることで、複数のチャック部500が連結されたセンサ保持部300の中心、すなわち、複数のセンサ200の配置中心にケーブル100を通過させることができる。その結果、ケーブル100の表面とセンサ200との距離を安定的に一定に保つことができる。
【0135】
(e)チャック部500は、ローラ部522と、ローラ部522を弾性的に軸方向に移動可能に支持するシリンダ部524と、を有している。チャック部500のローラ部522をケーブル100に対して滑らかに当接させることで、チャック部500がケーブル100に対して当接する際の摩擦力を小さくすることができる。その結果、チャック部500でケーブル100の移動が妨げられることを抑制することができる。また、シリンダ部524によってローラ部522をケーブル100に弾性的に押し付けることで、過度な側圧がケーブル100に印加されることを抑制することができる。このような構成により、検査工程S200において、チャック部500の当接に起因したケーブル100の損傷を抑制することができる。
【0136】
(f)チャック用カム機構(62)により、複数のチャック部500のそれぞれのローラ部522をケーブル100の径方向に均等に移動させる。ここで、チャック部500のシリンダ部524が有する弾性力は、チャック部500ごとに異なったり、経時的に変動したりする場合がある。このため、複数のチャック部500のなかには、シリンダ部524の可動軸526の伸び出し量が他のチャック部500よりも大きいチャック部500があったり、シリンダ部524の可動軸526の伸び出し量が他のチャック部500よりも小さいチャック部500があったりする場合がある。そこで、本実施形態ではチャック用カム機構(62)を用いることで、例えば、複数のチャック部500のうちの1つにおいて、シリンダ部524の可動軸526の伸び出し量が他のチャック部500よりも大きい場合に、当該チャック部500の可動軸526の伸び出しをチャック用カム機構(62)によって抑制することができる。一方で、例えば、複数のチャック部500のうちの1つにおいて、シリンダ部524の可動軸526の伸び出し量が他のチャック部500よりも小さい場合に、当該チャック部500の可動軸526の伸び出しをチャック用カム機構(62)によって促進させることができる。これにより、全てのチャック部500の可動軸526の伸び出し量を均一にすることができ、全てのチャック部500のローラ部522を同一円周上に配置することができる。その結果、全てのチャック部500のローラ部522をケーブル100に対して均等な力で当接させることができる。
【0137】
(g)移動機構40では、センサ保持部300が一端に連結され荷重部480が他端に連結された連結部材490を介して、吊上部460によってセンサ保持部300を鉛直上方向に吊り上げる。これにより、荷重部480の重量とセンサ保持部300の重量とを相殺させることができる。つまり、センサ保持部300にそれ自身の重量が加わることを抑制することができる。その結果、ケーブル100が鉛直方向に移動したときに、チャック部500がケーブル100から受ける鉛直方向の反力のみにより、移動機構40の鉛直移動支持部440を用いてセンサ保持部300を鉛直方向に移動させることができる。
【0138】
(h)センサ200は複数設けられており、センサ保持部300は、ケーブル100の外周を囲むようにケーブル100の周方向に等間隔で複数のセンサ200を保持している。帯状のレーザ光を用いた三角測距方式による測定では、センサ200の測定可能な幅が限られている。このため、複数のセンサ200を上記のようにケーブル100の外周を囲むように配置することで、ケーブル100の周方向にケーブル100の表面の凹凸が測定されない領域の発生を抑制することができる。つまり、ケーブル100の全周に亘ってケーブル100の表面の凹凸を測定することができる。
【0139】
(i)センサ保持部300は、ケーブル100の移動方向の第1位置に第1位置側センサ群21を支持し、ケーブル100の移動方向の第1位置と異なる第2位置に第2位置側センサ群22を支持している。このように、第1位置側センサ群21と第2位置側センサ群22との物理的な位置をずらすことで、第1位置側センサ群21と第2位置側センサ群22とが互いに干渉することを抑制することができる。これにより、それぞれのセンサ200の測定時のノイズを低減し、ケーブル100の表面の凹凸を精度良く測定することができる。その結果、ケーブル100の欠陥部の誤検出を抑制することができる。
【0140】
(j)検査工程S200では、第1次測定センサ群23を停止させた状態で第2次測定センサ群24を作動させる処理と、第2次測定センサ群24を停止させた状態で第1次測定センサ群23を作動させる処理と、を含むサイクルを繰り返し行う。これにより、第1次測定センサ群23および第2次測定センサ群24のそれぞれによって、ケーブル100の長手方向に対して間欠的に、ケーブル100の表面の凹凸を測定することができる。このように、第1次測定センサ群23と第2次測定センサ群24との作動タイミングをずらすことで、第1次測定センサ群23と第2次測定センサ群24とが互いに干渉することを抑制することができる。これにより、それぞれのセンサ200の測定時のノイズを低減し、ケーブル100の表面の凹凸を精度良く測定することができる。その結果、ケーブル100の欠陥部の誤検出を抑制することができる。
【0141】
また、各センサ200の作動タイミングをずらすことで、ケーブル100の移動方向に各センサ200の位置を大きくずらしたり、各センサ200の位置をずらす配置数を多くしたりしなくても、センサ200間の干渉を抑制することができる。これにより、ケーブル100の移動方向に各センサ200の位置をずらす総距離(すなわち、ケーブル100の移動方向におけるセンサ200の測定領域)を短くすることができる。これにより、ケーブル外観検査装置10のサイズを縮小することができる。また、ケーブル100の移動方向におけるセンサ200の測定領域を短くすることで、センサ200の測定領域内でのケーブル100のうねりの発生を抑制し、ケーブル100のうねりに起因した、センサ200の測定領域からのケーブル100の逸脱を抑制することができる。その結果、センサ200の測定エラーの発生を抑制することができる。
【0142】
(k)検査工程S200では、複数のセンサ200のうちの少なくともいずれか1つが測定した凹凸の大きさが基準値を超えているときに、当該凹凸をケーブル100の欠陥部と判定する。このとき、基準値をノイズ以上に設定することで、ノイズに起因したケーブル100の欠陥部の誤検出を抑制することができる。
【0143】
(l)検査工程S200では、複数のセンサ200のそれぞれが測定した凹凸の大きさと、凹凸の大きさに基づいて当該凹凸が欠陥部であるかを判定した判定結果と、を複数のセンサ200のそれぞれに対応するように表示部850に表示させる。これにより、検査工程S200を管理する管理者は、凹凸の大きさとその判定結果とを各センサ200に対応付けて、ケーブル100の状態を早急に把握することができる。例えば、どのセンサ200の測定範囲に、どの程度の大きさの欠陥部が生じたかを一目で把握することができる。
【0144】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0145】
上述の実施形態では、検査対象となるケーブル100は、XLPEケーブルのうちのケーブルコアである場合について説明したが、検査対象となるケーブル100は、完成品のXLPEケーブルであってもよい。この場合、ケーブル100の最外層は、XLPEケーブルのシースとなる。なお、XLPEケーブルに限定されず、少なくとも最外層に絶縁被覆を備えるケーブルを検査する外観検査装置として、本検査装置を広く適用することができる。
【0146】
上述の実施形態では、センサ保持部300がケーブル100の移動方向の2箇所でそれぞれセンサ群を支持する場合について説明したが、センサ保持部300は、2箇所より多い箇所でそれぞれセンサ群を支持してもよい。例えば、センサ保持部300は、複数のセンサ200をそれぞれケーブル100の移動方向に異なる位置で支持していてもよい(8つのセンサ200なら8箇所で支持してもよい)。この場合、各センサ200の作動タイミングをずらさなくてもよい。これにより、制御部800の制御を簡略化させることができる。また、各センサ200の停止期間が無くなるので、各センサ200を連続的に測定させることができ、ケーブル100の非測定領域が生じることを抑制することができる。ただし、複数のセンサ200をそれぞれケーブル100の移動方向に異なる位置に配置すると、ケーブル100の移動方向におけるセンサ200の測定領域が長くなるため、ケーブル外観検査装置10のサイズが過大となる可能性がある。また、センサ200の測定領域内でケーブル100のうねりが発生し易く、これに起因したセンサ200の測定エラーが発生する可能性がある。したがって、上述の実施形態のように、各センサ200の物理的な位置をずらすことと、各センサ200の作動タイミングをずらすこととを組み合わせたほうが、上記課題を生じ難くすることができるため、好ましい。
【0147】
上述の実施形態では、検査工程S200において、2つのセンサ群のそれぞれの作動タイミングをずらす場合について説明したが、2つより多いセンサ群のそれぞれの作動タイミングをずらしてもよい。例えば、複数のセンサ200のそれぞれの作動タイミングを互いに異なるタイミングとなるようにずらしてもよい(8つのセンサ200なら8つの作動タイミングにずらしてもよい)。この場合、複数のセンサ200をケーブル100の移動方向に同じ位置(同一平面上)に配置してもよい。これにより、ケーブル100の移動方向におけるセンサ200の測定領域を短くすることができ、ケーブル外観検査装置10のサイズを縮小することができる。また、ケーブル100の移動方向におけるセンサ200の測定領域を短くすることで、センサ200の測定領域内でのケーブル100のうねりの発生を抑制することができ、ケーブル100のうねりに起因したセンサ200の測定エラーの発生を抑制することができる。ただし、複数のセンサ200をケーブル100の移動方向に同じ位置に配置すると、センサ200の1つ当たりの1周期中の測定時間が短くなる。このため、ケーブル100の長手方向の移動が速い場合に、ケーブル100の非測定領域が長くなる可能性がある。したがって、上述の実施形態のように、各センサ200の物理的な位置をずらすことと、各センサ200の作動タイミングをずらすこととを組み合わせたほうが、上記課題を生じ難くすることができるため、好ましい。
【0148】
上述の実施形態では、チャック部500がセンサ保持部300よりもケーブル100の上流側および下流側の両方に設けられている場合について説明したが、チャック部500は、センサ保持部300よりもケーブル100の上流側または下流側のうちいずれか一方のみに設けられていてもよい。これにより、ケーブル外観検査装置10のサイズを縮小することができる。ただし、例えば、上流側チャック部520のみが設けられている場合では、上流側チャック部520の下流側においてケーブル100がセンサ保持部300を通過する領域で、ケーブル100が長手方向に交差する方向に振れてしまい、ケーブル100に対するセンサ保持部300の相対的な位置が安定しない可能性がある。一方で、例えば、下流側チャック部540のみが設けられている場合では、下流側チャック部540の上流側においてケーブル100がセンサ保持部300を通過する領域で、ケーブル100が長手方向に交差する方向に振れてしまい、ケーブル100に対するセンサ保持部300の相対的な位置が安定しない可能性がある。したがって、上述の実施形態のように、上流側チャック部520および下流側チャック部540の両方を設けたほうが、ケーブル100がセンサ保持部300を通過する領域でケーブル100が長手方向に交差する方向に振れることを抑制することができ、ケーブル100に対するセンサ保持部300の相対的な位置を安定的に合わせることができる点で、好ましい。
【0149】
上述の実施形態では、上流側チャック部520がセンサ保持部300の固定円盤310に直接連結されている場合について説明したが、上流側チャック部520は、間接的に連結されていてもよい。すなわち、上流側チャック部520は、フレーム部を介して、センサ保持部300からケーブル100の上流側に所定距離だけ離れた位置で上流側チャック用固定円盤に連結されていてもよい。ただし、上述の実施形態のように、上流側チャック部520がセンサ保持部300の固定円盤310に直接連結されていたほうが、ケーブル外観検査装置10のサイズを縮小することができる点で、好ましい。
【0150】
上述の実施形態では、チャック部500は、ローラ部522と、ローラ部522を弾性的に軸方向に移動可能に支持するシリンダ部524と、を有している場合について説明したが、チャック部は、電動式であってもよい。すなわち、チャック部のシリンダ部は、可動軸と、可動軸を軸方向に移動させるモータと、を有していてもよい。この場合、複数のチャック部のそれぞれの可動軸をモータの駆動力で軸方向に伸び出させ、それぞれのローラ部を回転させながらケーブルに当接させる。
【0151】
また、この場合、チャック用カム機構(上流側チャック用カム機構62等)が設けられていなくてもよい。すなわち、複数のチャック部のそれぞれのモータを電気的に制御し、ローラ部をケーブルの径方向に均等に移動させることで、複数のチャック部のそれぞれのローラ部をケーブルに対して均等な力で当接させてもよい。
【0152】
上述の実施形態では、移動機構40において、水平移動支持部420が鉛直移動支持部440を支持している場合について説明したが、鉛直移動支持部440が水平移動支持部420を支持していてもよい。
【0153】
上述の実施形態では、移動機構40がケーブル100の径方向の変位力の伝達による機械的な動作によってセンサ保持部300を移動させるよう構成されている場合について説明したが、移動機構40は、電力による動作(モータ駆動)によってセンサ保持部300を移動させるよう構成されていてもよく、または、ケーブル100の径方向の変位力の伝達による機械的な動作を電力による動作によって補助することで、センサ保持部300を移動させるよう構成されていてもよい。
【0154】
上述の実施形態では、移動機構40が吊上部460および荷重部480を有し、荷重部480の重量とセンサ保持部300の重量とを相殺させるよう構成されている場合について説明したが、上述のように、移動機構40が電力による動作等によってセンサ保持部300を移動させるよう構成されている場合には、移動機構40は、吊上部460および荷重部480を有していなくてもよい。つまり、移動機構40は、ケーブル100が鉛直方向に移動したときに、センサ保持部300を電力による動作等で補助しながら鉛直方向に移動させるようになっていてもよい。この場合、吊上部460および荷重部480が不要となるため、ケーブル外観検査装置10のサイズを縮小することができる。ただし、上述の実施形態のように、移動機構40がケーブル100の径方向の変位力の伝達による機械的な動作によってセンサ保持部300を移動させるよう構成されているほうが、電力を用いないため、ケーブル外観検査装置10のコストや、ケーブル100の製造コストを削減できる点で、好ましい。
【0155】
上述の実施形態では、チャック部500をセンサ保持部300に連結させて設けることで、ケーブル100が径方向に変位したときに、チャック部500がケーブル100から受ける反力をセンサ保持部300に伝達させ、移動機構40によってセンサ保持部300をケーブル100に追従させる場合について説明したが、チャック部500は、必ずしも設けられていなくてもよい。例えば、上述のように、移動機構40が電力による動作等によってセンサ保持部300を移動させるよう構成され、さらに、制御部800が、センサ200によって測定されたケーブル100の径方向の位置情報に基づいて、センサ保持部300をケーブル100に追従させるように移動機構40を制御するよう構成されていてもよい。この場合、チャック部500は不要となる。これにより、ケーブル100に側圧が全く加わらないようにすることができ、ケーブル100の損傷を確実に抑制することができる。ただし、上述の実施形態のように、移動機構40がケーブル100の径方向の変位力の伝達による機械的な動作によってセンサ保持部300を移動させるよう構成されているほうが、上述の電力不要の観点で好ましい。
【0156】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様を付記する。
【0157】
(付記1)
ケーブルを準備する工程と、
前記ケーブルを長手方向に移動させながら、センサによって、前記ケーブルの表面に対してレーザ光を照射し、前記ケーブルからの反射光を受光することで、前記反射光の受光位置の変化に基づいて前記ケーブルの表面の凹凸を測定する検査工程と、を有するケーブルの製造方法。
【0158】
(付記2)
前記検査工程では、
前記ケーブルの表面から所定の距離だけ離れた位置に前記センサを保持するセンサ保持部と、前記センサ保持部を前記ケーブルの長手方向に交差する方向に移動可能に支持する移動機構と、を用い、前記ケーブルの径方向の変位に追従するように前記センサ保持部を前記移動機構によって移動させ、前記ケーブルの表面と前記センサとの距離を一定に保つ付記1に記載のケーブルの製造方法。
【0159】
(付記3)
前記検査工程では、
前記センサ保持部よりも前記ケーブルの上流側および下流側のうち少なくともいずれかで、前記センサ保持部に連結されたチャック部を、前記ケーブルの外側から前記ケーブルに対して当接させ、前記ケーブルの表面と前記センサとの距離を一定に保つように、前記ケーブルに対する前記センサ保持部の相対的な位置を合わせる付記2に記載のケーブルの製造方法。
【0160】
(付記4)
前記検査工程では、
前記ケーブルが径方向に変位したときに前記チャック部が前記ケーブルから受ける反力を前記センサ保持部に伝達させ、前記移動機構によって前記センサ保持部を前記ケーブルに追従させるように移動させる付記3に記載のケーブルの製造方法。
【0161】
(付記5)
前記チャック部は、前記センサ保持部よりも前記ケーブルの上流側および下流側の両方に設けられる付記3又は4に記載のケーブルの製造方法。
【0162】
(付記6)
前記チャック部は、複数設けられ、
前記複数のチャック部は、前記ケーブルの外周を囲むように前記ケーブルの周方向に等間隔で前記センサ保持部に連結される付記3〜5のいずれか1つに記載のケーブルの製造方法。
【0163】
(付記7)
前記チャック部は、3つ設けられ、
前記3つのチャック部は、前記ケーブルの外周を3等分するよう前記センサ保持部に連結される付記6に記載のケーブルの製造方法。
【0164】
(付記8)
前記複数のチャック部のそれぞれは、
長手方向に移動する前記ケーブルに沿って回転可能に該ケーブルに対して当接するローラ部と、
前記ローラ部を弾性的に軸方向に移動可能に支持する可動軸を有し、前記センサ保持部に連結され、前記可動軸が前記複数のチャック部の配置中心に向かうように配置されるシリンダ部と、を有し、
前記検査工程では、
前記複数のチャック部のそれぞれの前記可動軸を弾性的に軸方向に伸び出させ、それぞれの前記ローラ部を回転させながら前記ケーブルに当接させる付記6又は7に記載のケーブルの製造方法。
【0165】
(付記9)
前記検査工程では、
前記複数のチャック部のそれぞれの前記ローラ部を該複数のチャック部の配置中心に向けて前記ケーブルに当接させることで、該配置中心に前記ケーブルを通過させる付記8に記載のケーブルの製造方法。
【0166】
(付記10)
前記検査工程では、
前記複数のチャック部のそれぞれの前記ローラ部を前記ケーブルの径方向に均等に移動させるチャック用カム機構を用い、前記複数のチャック部のそれぞれの前記ローラ部を前記ケーブルに対して均等な力で当接させる付記8又は9に記載のケーブルの製造方法。
【0167】
(付記11)
前記複数のチャック部のそれぞれは、前記シリンダ部の前記可動軸の一部にチャック用カムフォロワを有し、
前記チャック用カム機構は、前記センサ保持部に対して周方向に相対的に回転可能なチャック用カム円盤を有し、
前記チャック用カム円盤は、前記複数のチャック部のそれぞれの前記チャック用カムフォロワが係合し、それぞれの前記可動軸の移動方向に対して同一の傾斜角で傾斜した方向に沿って設けられる複数のチャック用カム溝を有し、
前記検査工程では、
前記複数のチャック部のそれぞれの前記可動軸を軸方向に伸び出させ、それぞれの前記チャック用カムフォロワを前記複数のチャック用カム溝のそれぞれに沿って移動させ、前記チャック用カム円盤を周方向に回転させることで、前記複数のチャック部のそれぞれの前記ローラ部を同一円周上に配置しつつ、前記複数のチャック部のそれぞれの前記ローラ部を前記ケーブルに対して均等な力で当接させる付記10に記載のケーブルの製造方法。
【0168】
(付記12)
前記複数のチャック部のそれぞれは、
長手方向に移動する前記ケーブルに沿って回転可能に該ケーブルに対して当接するローラ部と、
前記ローラ部を軸方向に移動可能に支持する可動軸と、前記可動軸を軸方向に移動させるモータと、を有し、前記センサ保持部に連結され、前記可動軸が前記複数のチャック部の配置中心に向かうように配置されるシリンダ部と、を有し、
前記検査工程では、
前記複数のチャック部のそれぞれの前記可動軸を前記モータの駆動力で軸方向に伸び出させ、それぞれの前記ローラ部を回転させながら前記ケーブルに当接させる付記6又は7に記載のケーブルの製造方法。
【0169】
(付記13)
前記検査工程では、
前記複数のチャック部のそれぞれの前記モータを電気的に制御し、前記ローラ部を前記ケーブルの径方向に均等に移動させることで、前記複数のチャック部のそれぞれの前記ローラ部を前記ケーブルに対して均等な力で当接させる付記12に記載のケーブルの製造方法。
【0170】
(付記14)
前記移動機構は、
前記センサ保持部を鉛直方向に移動可能に支持する鉛直移動支持部と、
前記センサ保持部を水平方向に移動可能に支持する水平移動支持部と、
前記鉛直移動支持部の上部に設けられ、前記センサ保持部が一端に連結された連結部材を介して前記センサ保持部を鉛直上方向に吊り上げる吊上部と、
前記センサ保持部の重量と少なくとも同じ重量を有し、前記鉛直移動支持部を挟んで前記センサ保持部と反対側で前記連結部材の他端に連結される荷重部と、を有し、
前記検査工程では、
前記荷重部が他端に連結された前記連結部材を介して前記吊上部により前記センサ保持部を鉛直上方向に吊り上げることで、前記荷重部の重量と前記センサ保持部の重量とを相殺させる付記2〜13のいずれか1つに記載のケーブルの製造方法。
【0171】
(付記15)
前記センサは、複数設けられ、
前記センサ保持部は、前記ケーブルの外周を囲むように前記ケーブルの周方向に等間隔で前記複数のセンサを保持する請求項2〜14のいずれか1つに記載のケーブルの製造方法。
【0172】
(付記16)
前記センサ保持部は、
前記ケーブルの移動方向の第1位置に、前記複数のセンサのうちの一部を含む第1位置側センサ群を支持し、
前記ケーブルの移動方向の前記第1位置と異なる第2位置に、前記複数のセンサのうちの他部を含む第2位置側センサ群を支持する付記15に記載のケーブルの製造方法。
【0173】
(付記17)
前記検査工程では、
前記複数のセンサのうちの一部を含む第1次測定センサ群を停止させた状態で、前記複数のセンサのうちの他部を含む第2次測定センサ群に前記ケーブルの表面の凹凸を測定させる工程と、
前記第2次測定センサ群を停止させた状態で、前記第1次測定センサ群に前記ケーブルの表面の凹凸を測定させる工程と、
を含むサイクルを繰り返し行う請求項15又は16に記載のケーブルの製造方法。
【0174】
(付記18)
前記検査工程では、
前記複数のセンサのうち、前記ケーブルの周方向に互いに干渉しない位置に配置される2以上のセンサを同時に作動させる付記15〜17のいずれか1つに記載のケーブルの製造方法。
【0175】
(付記19)
前記検査工程では、
前記複数のセンサのうち、前記ケーブルを挟んで対向するセンサの対を同時に作動させる付記18に記載のケーブルの製造方法。
【0176】
(付記20)
前記検査工程では、
前記複数のセンサのうちの少なくともいずれか1つが測定した凹凸の大きさが基準値を超えているときに、当該凹凸を前記ケーブルの欠陥部と判定する請求項15〜19のいずれか1つに記載のケーブルの製造方法。
【0177】
(付記21)
前記検査工程では、
前記複数のセンサのそれぞれが測定した凹凸の大きさと、前記凹凸の大きさに基づいて当該凹凸が前記欠陥部であるかを判定した判定結果と、を前記複数のセンサのそれぞれに対応するように表示部に表示させる付記20に記載のケーブルの製造方法。
【0178】
(付記22)
前記検査工程では、
前記複数のセンサのそれぞれが測定した凹凸の大きさを色調または階調に変換した画像を表示部に表示させる付記20又は21に記載のケーブルの製造方法。
【0179】
(付記23)
前記検査工程では、
前記複数のセンサのそれぞれが測定した前記ケーブルの表面の高さデータを近似曲線に近似し、前記高さデータから前記近似曲線の高さ値を差し引いた差分データを求め、前記差分データに基づいて凹凸の大きさを測定する付記20〜22のいずれか1つに記載のケーブルの製造方法。
【0180】
(付記24)
ケーブルを長手方向に移動させながら、センサによって、前記ケーブルの表面に対してレーザ光を照射し、前記ケーブルからの反射光を受光することで、前記反射光の受光位置の変化に基づいて前記ケーブルの表面の凹凸を測定するケーブルの検査方法。
【0181】
(付記25)
ケーブルの外観を検査するケーブル外観検査装置であって、
長手方向に移動する前記ケーブルの表面に対してレーザ光を照射し、前記ケーブルからの反射光を受光することで、前記反射光の受光位置の変化に基づいて前記ケーブルの表面の凹凸を測定するセンサを有するケーブル外観検査装置。