(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の整流器、前記第2の整流器、前記第3の整流器および前記第4の整流器は、それぞれ、三組のダイオードを備える三相全波整流回路である、請求項1に記載の分散電源用発電装置の整流回路。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
【0012】
(整流回路の構成)
図1は本実施形態に係る分散電源用発電装置の整流回路10の図である。
【0013】
整流回路10は、永久磁石型発電機2とともに分散電源用発電装置を構成する。本実施形態において、永久磁石型発電機2は風車1によって駆動されて交流電力を出力する。分散電源用発電装置は、永久磁石型発電機2からの交流電力を直流電力に変換して出力する。本実施形態において、分散電源用発電装置の整流回路10から出力された直流電力によって直流電源5が充電される。直流電源5は例えばリチウムイオン電池のような二次電池であってもよい。また、別の実施形態として、風車1に代えて水車が用いられてもよい。
【0014】
整流回路10は、第1の整流器37と、第2の整流器34と、第3の整流器35と、第4の整流器36と、第1のコンデンサ31と、第2のコンデンサ32と、第3のコンデンサ33と、を備える。詳細については後述するが、整流回路10の3倍昇圧回路30は、第2の整流器34と、第3の整流器35と、第4の整流器36と、第2のコンデンサ32と、第3のコンデンサ33と、で構成される。
【0015】
第1の整流器37は永久磁石型発電機2に接続される。より具体的には、第1の整流器37は永久磁石型発電機2の交流電力の出力端子(交流出力端子)に接続される。また、第1の整流器37は、永久磁石型発電機2からの交流電力を変換した直流電力を出力して、直流電源5に供給する。本実施形態において、第1の整流器37は、後述する第2の整流器34、第3の整流器35および第4の整流器36と同様に、三組(6つ)のダイオードを備える三相全波整流回路である。第1の整流器37における各組の上段側のダイオードと下段側のダイオードとの接続点が、永久磁石型発電機2に接続される。
【0016】
第1のコンデンサ31は永久磁石型発電機2に接続される。より具体的には、第1のコンデンサ31は永久磁石型発電機2の交流電力の出力端子(交流出力端子)に一端が接続される。第1のコンデンサ31の他端は3倍昇圧回路30と接続される。第1のコンデンサ31は交流電力を伝送する。つまり、永久磁石型発電機2からの交流電力は、第1のコンデンサ31を介して3倍昇圧回路30に供給される。
【0017】
第2のコンデンサ32は3倍昇圧回路30における上段側の昇圧コンデンサである。第2のコンデンサ32の一端は、第1のコンデンサ31の他端(永久磁石型発電機2に接続されていない方の端子)と接続される。また、第2のコンデンサ32の他端(第1のコンデンサ31に接続されていない方の端子)は、第2の整流器34と接続される。
【0018】
第3のコンデンサ33は3倍昇圧回路30における下段側の昇圧コンデンサである。第3のコンデンサ33の一端は、第1のコンデンサ31の他端と接続される。また、第3のコンデンサ33の他端(第1のコンデンサ31に接続されていない方の端子)は、第4の整流器36と接続される。
【0019】
第2の整流器34は、第2のコンデンサ32を介して第1のコンデンサ31の他端と接続される。本実施形態において、第2の整流器34は、三組(6つ)のダイオードを備える三相全波整流回路である。第2の整流器34における各組の上段側のダイオードと下段側のダイオードとの接続点が、第2のコンデンサ32の他端と接続される。また、第2の整流器34の高電位側のノードは、第1の整流器37の高電位側のノードおよび直流電源5の高電位側の端子と接続される。また、第2の整流器34の低電位側のノードは、第3の整流器35の高電位側のノードと接続される。つまり、第2の整流器34は第3の整流器35と直列に接続される。
【0020】
第3の整流器35は第1のコンデンサ31の他端と接続される。本実施形態において、第3の整流器35は、三組(6つ)のダイオードを備える三相全波整流回路である。第3の整流器35における各組の上段側のダイオードと下段側のダイオードとの接続点が、第1のコンデンサ31の他端と接続される。また、上記のように、第3の整流器35の高電位側のノードは、第2の整流器34の低電位側のノードと接続される。また、第3の整流器35の低電位側のノードは、第4の整流器36の高電位側のノードと接続される。つまり、第3の整流器35は第4の整流器36と直列に接続される。
【0021】
第4の整流器36は、第3のコンデンサ33を介して第1のコンデンサ31の他端と接続される。本実施形態において、第4の整流器36は、三組(6つ)のダイオードを備える三相全波整流回路である。第4の整流器36における各組の上段側のダイオードと下段側のダイオードとの接続点が、第3のコンデンサ33の他端と接続される。また、上記のように、第4の整流器36の高電位側のノードは、第3の整流器35の低電位側のノードと接続される。また、第4の整流器36の低電位側のノードは、第1の整流器37の低電位側のノードおよび直流電源5の低電位側の端子と接続される。
【0022】
上記のように、第2の整流器34、第3の整流器35および第4の整流器36は直列に接続される。また、直列に接続された第2の整流器34、第3の整流器35および第4の整流器36は、直流電源5に直流電力を出力する。
図1に示すように、直列に接続された第2の整流器34、第3の整流器35および第4の整流器36は、第1の整流器37に並列に設けられる。
【0023】
ここで、3倍昇圧回路30は、第2の整流器34と、第3の整流器35と、第4の整流器36と、第2のコンデンサ32と、第3のコンデンサ33と、で構成される。3倍昇圧回路30の端部における第2の整流器34の高電位側のノードの出力をP端子ともいう。また、3倍昇圧回路30の端部における第4の整流器36の低電位側のノードの出力をN端子ともいう。また、本実施形態において、3倍昇圧回路30は第1のコンデンサ31を介して永久磁石型発電機2からの三相交流電力を受け取る。三相交流電力の各相をそれぞれR相、S相またはT相とする。
【0024】
上記のように、本実施形態において、3倍昇圧回路30のP端子は、第1の整流器37の高電位側のノードおよび直流電源5の高電位側の端子と接続される。また、3倍昇圧回路30のN端子は、第1の整流器37の低電位側のノードおよび直流電源5の低電位側の端子と接続される。第1の整流器37および3倍昇圧回路30の合計出力が直流電源5に供給される。
【0025】
(3倍昇圧回路)
図2、
図3および
図4は3倍昇圧回路30の回路図である。
図2、
図3および
図4を参照しながら、第2のコンデンサ32、第3のコンデンサ33および直流電源5の充電について説明する。
図2、
図3および
図4において点線の矢印は電流を示す。また、第2の整流器34、第3の整流器35および第4の整流器36はそれぞれ三組のダイオードを備える三相全波整流回路である。また、第2のコンデンサ32および第3のコンデンサ33は、それぞれR相、S相およびT相の電流経路に設けられた3つのコンデンサで構成されている。また、
図2および
図3は、P端子とN端子の間の電圧が直流電源5の電圧以下である場合の電流経路を例示する。また、
図4はP端子とN端子の間の電圧が直流電源5の電圧を超えた場合の電流経路を例示する。
【0026】
図2は、R相の第2のコンデンサ32(上段側の昇圧コンデンサ)が充電される様子を示す。
図2に示すように、第3の整流器35の他の相(S相、T相のいずれか)の電流が、第2の整流器34のR相を通って、R相の第2のコンデンサ32を充電する。つまり、ある1つの相の第2のコンデンサ32は、第3の整流器35の他の2つの相を流れる電流によって充電される。
図2はR相の例を示しているが、S相の第2のコンデンサ32およびT相の第2のコンデンサ32も同様に充電される。
【0027】
図3は、R相の第3のコンデンサ33(下段側の昇圧コンデンサ)が充電される様子を示す。
図3に示すように、第4の整流器36のR相を通って、第3の整流器35の他の2つの相(S相およびT相)を永久磁石型発電機2側に流れる電流によって、R相の第3のコンデンサ33が充電される。つまり、ある1つの相の第3のコンデンサ33は、第3の整流器35の他の2つの相を
図2とは逆方向に流れる電流によって充電される。
図3はR相の例を示しているが、S相の第3のコンデンサ33およびT相の第3のコンデンサ33も同様に充電される。
【0028】
上記のように、P端子とN端子の間の電圧が直流電源5の電圧以下である場合に、
図2および
図3を参照して説明したように、第2のコンデンサ32および第3のコンデンサ33が充電される。P端子とN端子の間には、永久磁石型発電機2の出力電圧に基づく3倍の直流電圧が生じる。
【0029】
ここで、3倍昇圧回路30とは言えP端子とN端子を経て電流が流れるために、発電機電圧の3倍がP端子、N端子に印加される訳ではなく、各コンデンサの平均充電電圧は端子P端子、N端子間電圧の1/3に直流充電される。負荷電流が流れないピーク充電となるのであれば、P端子、N端子間のピーク電圧は発電機電圧×3×√2となる。ここで、発電機電圧は、正弦波の場合、実効値である。
【0030】
図4は、P端子とN端子の間の電圧が直流電源5の電圧を超えた場合であって、直流電源5が充電される様子を示す。電流は、R相の第2のコンデンサ32および第2の整流器34を流れて、P端子とN端子に接続された直流電源5を通り、第4の整流器36および第3のコンデンサ33のS相またはT相を流れる。つまり、電流は、R相、S相、T相のうち最大電圧相から出て最小電圧相に流れ込む。このとき、直流電源5が充電されて、第3の整流器35に電流は流れない。
【0031】
(出力特性)
図5は、本実施形態に係る分散電源用発電装置の整流回路10の近似出力特性を示す図である。分散電源用発電装置は、風速に応じて風車1の回転数を調整して、風車1に接続された永久磁石型発電機2から概略の最大出力を取り出すことが求められる。
図5に示すように、風車1の最大出力曲線Ptは一般に風車回転数の3乗に比例する。ここで、最大出力曲線Ptは、各風速における出力のピークをつないだものである。
【0032】
本実施形態において、分散電源用発電装置が使用されるシステムで次のような設計(調整)を行う。まず、風車1の定格風車回転数Nrに対して、Nrを超えない(一例としてNrの2/3程度の)風車回転数であるN1を定める。そして、N1において、永久磁石型発電機2の誘起電圧が直流電源5の直流電圧よりも高くなるように調整を行う。N1は第1の整流器37によって、直流電源5の充電が開始される風車回転数である。
図5に示すように、風車回転数がN1以上になると、第1の整流器37によって、出力特性P1に従う出力が得られる。
【0033】
ここで、本実施形態に係る分散電源用発電装置の整流回路10は3倍昇圧回路30を備える。3倍昇圧回路30の3倍昇圧整流作用によって、N1の1/3の風車回転数であるN2から、出力特性P2に従う出力が得られる。つまり、N2は、3倍昇圧回路30によって直流電源5の充電が開始される風車回転数である。
【0034】
上記のように、本実施形態に係る分散電源用発電装置の整流回路10では、第1の整流器37と3倍昇圧回路30とが並列に接続されている。そのため、本実施形態において、第1の整流器37および3倍昇圧回路30の合計出力が直流電源5に供給される。整流回路10を用いる分散電源用発電装置の出力特性は、
図5の太い実線(出力特性P1および出力特性P2の合計)のようになる。整流回路10は、最大出力曲線Ptに近い出力特性(近似出力特性)を有する。
【0035】
(比較例)
ここで、
図6を参照して、比較例の分散電源用発電装置の整流回路10Aを示しながら、本実施形態の分散電源用発電装置の整流回路10の効果について説明する。
【0036】
図6は、比較例の分散電源用発電装置の整流回路10Aの図である。整流回路10Aは、第1の整流器37と、第2の整流器34と、第3の整流器35と、第1のコンデンサ31と、第2のコンデンサ32と、を備える。本実施形態に係る分散電源用発電装置の整流回路10と比較すると、整流回路10Aは、第4の整流器36と、第3のコンデンサ33と、を備えない。整流回路10Aは、3倍昇圧回路30ではなく、第2の整流器34と、第3の整流器35と、第2のコンデンサ32と、で構成される2倍昇圧回路30Aを備える。
【0037】
ここで、
図5を参照すると、整流回路10Aは、2倍昇圧回路30Aによって、N3から出力特性P3に従う出力を行う。つまり、
図5に示されるN3は、2倍昇圧回路30Aによって直流電源5の充電が開始される風車回転数である。N3は、N1の1/2の風車回転数であって、N2よりも大きい。
【0038】
本実施形態に係る分散電源用発電装置の整流回路10は、風車回転数がN2以上であれば電力を出力できる。一方、比較例の整流回路10Aは、風車回転数がN3以上にならないと電力を出力できない。つまり、本実施形態に係る分散電源用発電装置の整流回路10は、3倍昇圧回路30を備える上記の構成によって、永久磁石型発電機2の回転数が低い場合においても電力を出力できる。
【0039】
また、
図5に示される本実施形態に係る分散電源用発電装置の整流回路10の近似出力特性は、風車回転数が低い場合に出力特性P2に従う。そのため、整流回路10の近似出力特性は、比較例の整流回路10A(風車回転数が低い場合に出力特性P3に従う)と比べても、より最大出力曲線Ptに近付いている。つまり、本実施形態に係る分散電源用発電装置の整流回路10は、風車1の回転数に関わらず、最大の出力を取り出すことが可能である。
【0040】
また、本実施形態に係る分散電源用発電装置の整流回路10は、例えばPWMコンバータまたはインバータといった制御回路を要することなく風速の変化に対応できる。そのため、分散電源用発電装置の小型化が可能である。
【0041】
本発明を諸図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形および修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。