【文献】
REICHERT JM.,Antibodies to watch in 2014,mAbs,2014年,6(4),799-802
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列番号:3の配列を有する重鎖及び配列番号:4の配列を有する軽鎖を含むIL−6受容体抗体を有効成分とするIL−6関連疾患の治療用もしくは予防用の皮下投与製剤であって、通常投与量と同じ投与量で通常投与間隔よりも短い投与間隔で複数回投与される短間隔投与期間により免疫寛容が誘導され、ここで、前記短間隔投与期間の投与間隔が2週間であり、前記短間隔投与の後に通常投与され、前記通常投与量が120mg/回である、製剤。
前記IL−6関連疾患が、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、全身型若年性特発性関節炎、キャッスルマン病、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、クローン病、lymphoma、潰瘍性大腸炎、貧血、血管炎、川崎病、Still病、アミロイドーシス、多発性硬化症、移植、加齢黄斑変性症、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、IgA 腎症、変形性関節症、喘息、糖尿病性腎症、GVHD、子宮内膜症、肝炎(NASH)、心筋梗塞、動脈硬化、セプシス、骨粗しょう症、糖尿病、多発性骨髄腫、前立腺癌、腎癌、B-cell non-Hodgkin's、膵癌、肺癌、食道癌、大腸癌、癌カケクシア、癌神経浸潤、近視性脈絡膜血管新生、特発性脈絡膜血管新生、ぶどう膜炎、慢性甲状腺炎、遅延性過敏症、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、中皮腫、多発性筋炎、皮膚筋炎、汎ぶどう膜炎、前部ぶどう膜炎、中間部ぶどう膜炎、強膜炎、角膜炎、眼窩炎症、視神経炎、糖尿病網膜症、増殖硝子体網膜症、ドライアイ、術後炎症、視神経脊髄炎、重症筋無力症、または肺高血圧症である、請求項1または2に記載の製剤。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、IL−6関連疾患の治療に用いられる医薬組成物あるいは投与レジメンに関する。
【0013】
本発明における「IL−6阻害剤」とは、IL−6によるシグナル伝達を遮断し、IL−6の生物学的活性を阻害する物質である。IL−6阻害剤は、好ましくはIL−6、IL−6受容体及びgp130のいずれかの結合に対する阻害作用を有する物質である。
本発明のIL−6阻害剤としては、例えば抗IL−6抗体、抗IL−6受容体抗体、抗gp130抗体、IL−6改変体、可溶性IL−6受容体改変体あるいはIL−6又はIL−6受容体の部分ペプチドおよび、これらと同様の活性を示す低分子物質が挙げられるが、特に限定されるものではない。本発明のIL−6阻害剤としては、好ましくはIL−6受容体を認識する抗体を挙げることが出来る。
【0014】
本発明における抗体の由来は特に限定されるものではないが、好ましくは哺乳動物由来であり、より好ましくはヒト由来の抗体を挙げることが出来る。
本発明で使用される抗IL−6抗体は、公知の手段を用いてポリクローナル又はモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗IL−6抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマによって産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主によって産生されるものがある。この抗体はIL−6と結合することにより、IL−6のIL−6受容体への結合を阻害してIL−6の生物学的活性の細胞内への伝達を遮断する。
このような抗体としては、MH166(Matsuda, T. et al., Eur. J. Immunol. (1988) 18, 951-956)やSK2抗体(Sato, K. et al., 第21回 日本免疫学会総会、学術記録(1991)21, 166)等が挙げられる。
【0015】
抗IL−6抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、IL−6を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
具体的には、抗IL−6抗体を作製するには次のようにすればよい。例えば、抗体取得の感作抗原として使用されるヒトIL−6は、Eur. J. Biochem (1987) 168, 543-550 、J. Immunol.(1988)140, 1534-1541 、あるいはAgr. Biol. Chem.(1990)54, 2685-2688に開示されたIL−6遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。
IL−6の遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中又は、培養上清中から目的のIL−6蛋白質を公知の方法で精製し、この精製IL−6蛋白質を感作抗原として用いればよい。また、IL−6蛋白質と他の蛋白質との融合蛋白質を感作抗原として用いてもよい。
【0016】
本発明で使用される抗IL−6受容体抗体は、公知の手段を用いてポリクローナル又はモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗IL−6受容体抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマによって産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主によって産生されるものがある。この抗体はIL−6受容体と結合することにより、IL−6のIL−6受容体への結合を阻害してIL−6の生物学的活性の細胞内への伝達を遮断する。
このような抗体としては、MR16-1抗体(Tamura, T. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90, 11924-11928)、PM-1抗体 (Hirata, Y. et al., J. Immunol. (1989) 143, 2900-2906)、AUK12-20抗体、AUK64-7抗体あるいはAUK146-15抗体(国際特許出願公開番号WO 92-19759)などが挙げられる。これらのうちで、ヒトIL−6受容体に対する好ましいモノクローナル抗体としてはPM-1抗体が例示され、またマウスIL−6受容体に対する好ましいモノクローナル抗体としてはMR16-1抗体が挙げられる。
【0017】
抗IL−6受容体モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、IL−6受容体を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
具体的には、抗IL−6受容体抗体を作製するには次のようにすればよい。例えば、抗体取得の感作抗原として使用されるヒトIL−6受容体は、欧州特許出願公開番号EP 325474に、マウスIL−6受容体は日本特許出願公開番号特開平3-155795に開示されたIL−6受容体遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。
【0018】
IL−6受容体蛋白質は、細胞膜上に発現しているものと細胞膜より離脱しているもの(可溶性IL−6受容体)(Yasukawa, K. et al., J. Biochem. (1990) 108, 673-676)との二種類がある。可溶性IL−6受容体は細胞膜に結合しているIL−6受容体の実質的に細胞外領域から構成されており、細胞膜貫通領域あるいは細胞膜貫通領域と細胞内領域が欠損している点で膜結合型IL−6受容体と異なっている。IL−6受容体蛋白質は、本発明で用いられる抗IL−6受容体抗体の作製の感作抗原として使用されうる限り、いずれのIL−6受容体を使用してもよい。
IL−6受容体の遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中又は、培養上清中から目的のIL−6受容体蛋白質を公知の方法で精製し、この精製IL−6受容体蛋白質を感作抗原として用いればよい。また、IL−6受容体を発現している細胞やIL−6受容体蛋白質と他の蛋白質との融合蛋白質を感作抗原として用いてもよい。
【0019】
本発明で使用される抗gp130抗体は、公知の手段を用いてポリクローナル又はモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗gp130抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマによって産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主によって産生されるものがある。この抗体はgp130と結合することにより、IL−6/IL−6受容体複合体のgp130への結合を阻害してIL−6の生物学的活性の細胞内への伝達を遮断する。
このような抗体としては、AM64抗体(特開平3-219894)、4B11抗体および2H4抗体(US 5571513)B-S12抗体およびB-P8抗体(特開平8-291199)などが挙げられる。
【0020】
抗gp130モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、gp130を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナル抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。例えば、抗体取得の感作抗原として使用されるgp130は、欧州特許出願公開番号EP 411946に開示されたgp130遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。
gp130の遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中又は、培養上清中から目的のgp130蛋白質を公知の方法で精製し、この精製gp130蛋白質を感作抗原として用いればよい。また、gp130を発現している細胞やgp130蛋白質と他の蛋白質との融合蛋白質を感作抗原として用いてもよい。
【0021】
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内又は皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate-Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4〜21日毎に数回投与するのが好ましい。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することができる。
このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞が取り出され、細胞融合に付される。細胞融合に付される好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
【0022】
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞としての哺乳動物のミエローマ細胞は、すでに、公知の種々の細胞株、例えば、P3X63Ag8.653(Kearney, J. F. et al. J. Immunol. (1979) 123, 1548-1550)、P3X63Ag8U.1 (Current Topics in Microbiology and Immunology (1978) 81, 1-7) 、NS-1(Kohler. G. and Milstein, C. Eur. J. Immunol.(1976) 6, 511-519 )、MPC-11(Margulies. D. H. et al., Cell (1976) 8, 405-415 )、SP2/0 (Shulman, M. et al., Nature (1978) 276, 269-270)、FO(de St. Groth, S. F. et al., J. Immunol. Methods (1980) 35, 1-21 )、S194(Trowbridge, I. S. J. Exp. Med. (1978) 148, 313-323)、R210(Galfre, G. et al., Nature (1979) 277, 131-133 )等が適宜使用される。
【0023】
前記免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合は基本的には公知の方法、たとえば、ミルシュタインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C. 、Methods Enzymol. (1981) 73, 3-46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は例えば、細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、センダイウィルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
【0024】
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は、例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
【0025】
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め、37℃程度に加温したPEG溶液、例えば、平均分子量1000〜6000程度のPEG溶液を通常、30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)が形成される。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去できる。
当該ハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えば、HAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。当該HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間、通常数日〜数週間継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよびクローニングが行われる。
【0026】
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原蛋白質又は抗原発現細胞で感作し、感作Bリンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、所望の抗原又は抗原発現細胞への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原又は抗原発現細胞を投与し、前述の方法に従い所望のヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO 93/12227、WO 92/03918、WO 94/02602、WO 94/25585、WO 96/34096、WO 96/33735参照)。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
【0027】
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
例えば、抗IL−6受容体抗体産生ハイブリドーマの作製は、特開平3-139293に開示された方法により行うことができる。PM-1抗体産生ハイブリドーマをBALB/cマウスの腹腔内に注入して腹水を得、この腹水からPM-1抗体を精製する方法や、本ハイブリドーマを適当な培地、例えば、10%ウシ胎児血清、5%BM-Condimed H1(Boehringer Mannheim製)含有RPMI1640培地、ハイブリドーマSFM培地(GIBCO-BRL製)、PFHM-II培地(GIBCO-BRL製)等で培養し、その培養上清からPM-1抗体を精製する方法で行うことができる。
【0028】
本発明には、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体を用いることができる(例えば、Borrebaeck C. A. K. and Larrick J. W. THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990参照)。
具体的には、目的とする抗体を産生する細胞、例えばハイブリドーマから、抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294-5299 )、AGPC法(Chomczynski, P. et al., Anal. Biochem. (1987)162, 156-159)等により全RNA を調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia製)等を使用してmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することができる。
【0029】
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit等を用いて行うことができる。また、cDNAの合成および増幅を行うには5'-Ampli FINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5'-RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1988)85, 8998-9002;Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res.(1989)17, 2919-2932)を使用することができる。得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシ法により確認する。
目的とする抗体のV領域をコードするDNAが得られれば、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。又は、抗体のV領域をコードするDNAを、抗体C領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。
【0030】
本発明で使用される抗体を製造するには、後述のように抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
【0031】
本発明では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体、ヒト(human)抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
【0032】
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 125023、国際特許出願公開番号WO 92-19759参照)。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
【0033】
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体またはヒト型化抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023、国際特許出願公開番号WO 92-19759参照)。
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(FR; framework region)を連結するように設計したDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する。得られたDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 239400、国際特許出願公開番号WO 92-19759参照)。
CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., Cancer Res. (1993) 53, 851-856)。
【0034】
キメラ抗体、ヒト化抗体には、ヒト抗体C領域が使用される。ヒト抗体C領域としては、Cγが挙げられ、例えば、Cγ1、Cγ2、Cγ3又はCγ4を使用することができる。また、抗体又はその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
キメラ抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来のC領域からなり、またヒト化抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域とヒト抗体由来のフレームワーク領域およびC領域からなり、両者はヒト体内における抗原性が低下しているため、本発明に使用される抗体として有用である。
【0035】
本発明に使用されるヒト化抗体の好ましい具体例としては、ヒト化PM-1抗体が挙げられる(国際特許出願公開番号WO 92-19759参照)。
また、ヒト抗体の取得方法としては先に述べた方法のほか、ヒト抗体ライブラリーを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、抗原に結合するファージを選択することもできる。選択されたファージの遺伝子を解析すれば、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を含む適当な発現ベクターを作製し、ヒト抗体を取得することができる。これらの方法は既に周知であり、WO 92/01047、WO 92/20791、WO 93/06213、WO 93/11236、WO 93/19172、WO 95/01438、WO 95/15388を参考にすることができる。
【0036】
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させることができる。哺乳類細胞を用いた場合、常用される有用なプロモーター、発現される抗体遺伝子、その3'側下流にポリAシグナルを機能的に結合させたDNAあるいはそれを含むベクターにより発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer)を挙げることができる。
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV40)等のウィルスプロモーター/エンハンサーやヒトエロンゲーションファクター1α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサーを用いればよい。
例えば、SV40プロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mulliganらの方法(Mulligan, R. C. et al., Nature (1979) 277, 108-114) 、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mizushimaらの方法(Mizushima, S. and Nagata, S. Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322 )に従えば容易に実施することができる。
【0037】
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列、発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーターとしては、lacZプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。lacZプロモーターを使用する場合、Wardらの方法(Ward, E. S. et al., Nature (1989) 341, 544-546;Ward, E. S. et al. FASEB J. (1992) 6, 2422-2427 )、araBプロモーターを使用する場合、Betterらの方法(Better, M. et al. Science (1988) 240, 1041-1043 )に従えばよい。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379-4383)を使用すればよい。ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切にリフォールド(refold)して使用する(例えば、WO96/30394を参照)。
【0038】
複製起源としては、SV40、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
【0039】
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の産生系を使用することができる。抗体製造のための産生系は、in vitroおよびin vivoの産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
【0040】
真核細胞を使用する場合、動物細胞、植物細胞、又は真菌細胞を用いる産生系がある。動物細胞としては、(1)哺乳類細胞、例えば、CHO、COS、ミエローマ、BHK(baby hamster kidney)、HeLa、Veroなど、(2)両生類細胞、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞、あるいは(3)昆虫細胞、例えば、sf9、sf21、Tn5などが知られている。植物細胞としては、ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えばアスペルギルス属(Aspergillus)属、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)などが知られている。
【0041】
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E.coli)、枯草菌が知られている。
【0042】
これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。培養は、公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。また、抗体遺伝子を導入した細胞を動物の腹腔等へ移すことにより、in vivoにて抗体を産生してもよい。
【0043】
一方、in vivoの産生系としては、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系などがある。
哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシなどを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993)。また、昆虫としては、カイコを用いることができる。植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。
これらの動物又は植物に抗体遺伝子を導入し、動物又は植物の体内で抗体を産生させ、回収する。例えば、抗体遺伝子をヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生される蛋白質をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギ又はその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい。(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699-702)。
また、カイコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させ、このカイコの体液より所望の抗体を得る(Maeda, S. et al., Nature (1985) 315, 592-594)。さらに、タバコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を植物発現用ベクター、例えばpMON530に挿入し、このベクターをAgrobacterium tumefaciensのようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばNicotiana tabacumに感染させ、本タバコの葉より所望の抗体を得る(Julian, K.-C. Ma et al., Eur. J. Immunol.(1994)24, 131-138)。
【0044】
上述のようにin vitro又はin vivoの産生系にて抗体を産生する場合、抗体重鎖(H鎖)又は軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで、宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94-11523参照)。
【0045】
本発明で使用される抗体は、本発明に好適に使用され得るかぎり、抗体の断片やその修飾物であってよい。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab')2、Fv又はH鎖とL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。
具体的には、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、又は、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co, M.S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976、Better, M. & Horwitz, A. H. Methods in Enzymology (1989) 178, 476-496 、Plueckthun, A. & Skerra, A. Methods in Enzymology (1989) 178, 497-515 、Lamoyi, E., Methods in Enzymology (1989) 121, 652-663 、Rousseaux, J. et al., Methods in Enzymology (1989) 121, 663-66、Bird, R. E. et al., TIBTECH (1991) 9, 132-137参照)。
【0046】
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域を連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域はリンカー、好ましくは、ペプチドリンカーを介して連結される(Huston, J. S. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879-5883)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、上記抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12-19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
【0047】
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖又はH鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖又はL鎖V領域をコードするDNAを鋳型とし、それらの配列のうちの所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNAおよびその両端を各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されれば、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いて常法に従って、scFvを得ることができる。
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明でいう「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
【0048】
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。本発明でいう「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野においてすでに確立されている。
【0049】
前記のように産生、発現された抗体は、細胞内外、宿主から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティークロマトグラフィーにより行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、例えば、プロテインAカラム、プロテインGカラムが挙げられる。プロテインAカラムに用いる担体として、例えば、HyperD、POROS、SepharoseF.F.等が挙げられる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。
例えば、上記アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィー、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせれば、本発明で使用される抗体を分離、精製することができる。クロマトグラフィーとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲルろ過等が挙げられる。これらのクロマトグラフィーはHPLC(High performance liquid chromatography)に適用し得る。また、逆相HPLC(reverse phase HPLC)を用いてもよい。
【0050】
上記で得られた抗体の濃度測定は吸光度の測定又はELISA等により行うことができる。すなわち、吸光度の測定による場合には、PBS(-)で適当に希釈した後、280nmの吸光度を測定し、1mg/mlを1.35ODとして算出する。また、ELISAによる場合は以下のように測定することができる。すなわち、0.1M重炭酸緩衝液(pH9.6)で1μg/mlに希釈したヤギ抗ヒトIgG(TAG製)100μlを96穴プレート(Nunc製)に加え、4℃で一晩インキュベーションし、抗体を固相化する。ブロッキングの後、適宜希釈した本発明で使用される抗体又は抗体を含むサンプル、あるいは標品としてヒトIgG(CAPPEL製)100μlを添加し、室温にて1時間インキュベーションする。
【0051】
洗浄後、5000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG(BIO SOURCE製)100μlを加え、室温にて1時間インキュベートする。洗浄後、基質溶液を加えインキュベーションの後、MICROPLATE READER Model 3550(Bio-Rad製)を用いて405nmでの吸光度を測定し、目的の抗体の濃度を算出する。
【0052】
本発明で使用されるIL−6改変体は、IL−6受容体との結合活性を有し、且つIL−6の生物学的活性を伝達しない物質である。即ち、IL−6改変体はIL−6受容体に対しIL−6と競合的に結合するが、IL−6の生物学的活性を伝達しないため、IL−6によるシグナル伝達を遮断する。
【0053】
IL−6改変体は、IL−6のアミノ酸配列のアミノ酸残基を置換することにより変異を導入して作製される。IL−6改変体のもととなるIL−6はその由来を問わないが、抗原性等を考慮すれば、好ましくはヒトIL−6である。
具体的には、IL−6のアミノ酸配列を公知の分子モデリングプログラム、たとえば、WHATIF(Vriend et al., J. Mol. Graphics (1990) 8, 52-56 )を用いてその二次構造を予測し、さらに置換されるアミノ酸残基の全体に及ぼす影響を評価することにより行われる。適切な置換アミノ酸残基を決定した後、ヒトIL−6遺伝子をコードする塩基配列を含むベクターを鋳型として、通常行われるPCR法によりアミノ酸が置換されるように変異を導入することにより、IL−6改変体をコードする遺伝子が得られる。これを必要に応じて適当な発現ベクターに組み込み、前記組換え型抗体の発現、産生及び精製方法に準じてIL−6改変体を得ることができる。
IL−6改変体の具体例としては、Brakenhoff et al., J. Biol. Chem. (1994) 269, 86-93 、及びSavino et al., EMBO J. (1994) 13, 1357-1367 、WO 96-18648 、WO96-17869に開示されている。
【0054】
本発明で使用されるIL−6部分ペプチド又はIL−6受容体部分ペプチドは、各々IL−6受容体あるいはIL−6との結合活性を有し、且つIL−6の生物学的活性を伝達しない物質である。即ち、IL−6部分ペプチド又はIL−6受容体部分ペプチドはIL−6受容体又はIL−6に結合し、これらを捕捉することによりIL−6のIL−6受容体への結合を特異的に阻害する。その結果、IL−6の生物学的活性を伝達しないため、IL−6によるシグナル伝達を遮断する。
【0055】
IL−6部分ペプチド又はIL−6受容体部分ペプチドは、IL−6又はIL−6受容体のアミノ酸配列においてIL−6とIL−6受容体との結合に係わる領域の一部又は全部のアミノ酸配列からなるペプチドである。このようなペプチドは、通常10〜80、好ましくは20〜50、より好ましくは20〜40個のアミノ酸残基からなる。
【0056】
IL−6部分ペプチド又はIL−6受容体部分ペプチドは、IL−6又はIL−6受容体のアミノ酸配列において、IL−6とIL−6受容体との結合に係わる領域を特定し、その特定した領域の一部又は全部のアミノ酸配列に基づいて通常知られる方法、例えば遺伝子工学的手法又はペプチド合成法により作製することができる。
【0057】
IL−6部分ペプチド又はIL−6受容体部分ペプチドを遺伝子工学的手法により作製するには、所望のペプチドをコードするDNA配列を発現ベクターに組み込み、前記組換え型抗体の発現、産生及び精製方法に準じて得ることができる。
【0058】
IL−6部分ペプチド又はIL−6受容体部分ペプチドをペプチド合成法により作製するには、ペプチド合成において通常用いられている方法、例えば固相合成法又は液相合成法を用いることができる。
具体的には、「続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成(監修:矢島治明、廣川書店、1991年)」に記載の方法に準じて行えばよい。固相合成法としては、例えば有機溶媒に不溶性である支持体に合成しようとするペプチドのC末端に対応するアミノ酸を結合させ、α-アミノ基及び側鎖官能基を適切な保護基で保護したアミノ酸をC末端からN末端方向の順番に1アミノ酸ずつ縮合させる反応と樹脂上に結合したアミノ酸又はペプチドのα-アミノ基の該保護基を脱離させる反応を交互に繰り返すことにより、ペプチド鎖を伸長させる方法が用いられる。固相ペプチド合成法は、用いられる保護基の種類によりBoc法とFmoc法に大別される。
【0059】
このようにして目的とするペプチドを合成した後、脱保護反応及びペプチド鎖の支持体からの切断反応をする。ペプチド鎖との切断反応には、Boc法ではフッ化水素又はトリフルオロメタンスルホン酸を、又Fmoc法ではTFAを通常用いることができる。Boc法では、例えばフッ化水素中で上記保護ペプチド樹脂をアニソール存在下で処理する。次いで、保護基の脱離と支持体からの切断をしペプチドを回収する。これを凍結乾燥することにより、粗ペプチドが得られる。一方、Fmoc法では、例えばTFA中で上記と同様の操作で脱保護反応及びペプチド鎖の支持体からの切断反応を行うことができる。
【0060】
得られた粗ペプチドは、HPLCに適用することにより分離、精製することができる。その溶出にあたり、蛋白質の精製に通常用いられる水-アセトニトリル系溶媒を使用して最適条件下で行えばよい。得られたクロマトグラフィーのプロファイルのピークに該当する画分を分取し、これを凍結乾燥する。このようにして精製したペプチド画分について、マススペクトル分析による分子量解析、アミノ酸組成分析、又はアミノ酸配列解析等により同定する。
IL−6部分ペプチド及びIL−6受容体部分ペプチドの具体例は、特開平2-188600、特開平7-324097、特開平8-311098及び米国特許公報US5210075に開示されている。
【0061】
本発明に使用する抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)、放射性物質、トキシン等の各種分子と結合したコンジュゲート抗体でもよい。このようなコンジュゲート抗体は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。本発明における「抗体」にはこれらのコンジュゲート抗体も包含される。
【0062】
本発明における「IL−6関連疾患」とは、IL−6の関連する疾患であり、たとえば関節リウマチ、若年性特発性関節炎、全身型若年性特発性関節炎、キャッスルマン病、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、クローン病、リンパ腫(lymphoma)、潰瘍性大腸炎、貧血、血管炎、川崎病、Still病、アミロイドーシス、多発性硬化症、移植、加齢黄斑変性症、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、IgA 腎症、変形性関節症、喘息、糖尿病性腎症、GVHD、子宮内膜症、肝炎(NASH)、心筋梗塞、動脈硬化、セプシス、骨粗しょう症、糖尿病、多発性骨髄腫、前立腺癌、腎癌、非ホジキンB細胞性リンパ腫(B-cell non-Hodgkin's)、膵癌、肺癌、食道癌、大腸癌、癌カケクシア、癌神経浸潤、心筋梗塞、近視性脈絡膜血管新生、特発性脈絡膜血管新生、ぶどう膜炎、慢性甲状腺炎、遅延性過敏症、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、中皮腫、多発性筋炎、皮膚筋炎、汎ぶどう膜炎、前部ぶどう膜炎、中間部ぶどう膜炎、強膜炎、角膜炎、眼窩炎症、視神経炎、糖尿病網膜症、増殖硝子体網膜症、ドライアイ、術後炎症、視神経脊髄炎、重症筋無力症、肺高血圧症などが挙げられる。
【0063】
本発明における「通常投与間隔」とは、当該医薬品(本発明の医薬組成物)において通常用いられる投与間隔であり、たとえば添付文書などで「以後、4週間の間隔で投与を行うこと」といった記載のように、定常的に投与される旨が記載されている投与間隔があげられる。本発明における通常投与間隔としては、特に限定されるものではないが、たとえば1日〜24週間、好ましくは2週間〜8週間、より好ましくは3〜5週間、さらに好ましくは4週間が挙げられる。通常投与間隔は一定の幅を持っていてもよい。
【0064】
本発明における「通常投与量」とは、当該医薬品(本発明の医薬組成物)において通常用いられる投与量であり、たとえば添付文書として「通常、体重1kg当たり8mgを1回の投与量とし」といった記載のように、通常投与される旨が記載されている投与量が挙げられる。本発明における通常投与量としては、特に限定されるものではないが、たとえば1回の投与当たり、IL−6阻害剤が体重1kgあたり2〜20mg(2〜20mg/kg)、またはIL−6阻害剤が50〜800mgが挙げられ、好ましくはIL−6阻害剤が体重1kgあたり2〜8mg(2〜8mg/kg)、またはIL−6阻害剤が80〜160mgが挙げられ、さらに好ましくはIL−6阻害剤が体重1kgあたり8mg(8mg/kg)、またはIL−6阻害剤が120mgである。
【0065】
本発明における「短間隔投与期間」とは、免疫原性による抗薬物抗体の生成を抑えるために薬物(本発明の医薬組成物)に対する免疫寛容を誘導させるための投与期間をいう。本発明における短間隔投与期間は通常投与量と同じ投与量で通常間隔よりも短い間隔で複数回投与される期間のことであり、免疫寛容が誘導される期間であれば特に限定されるものではないが、好ましくは初回投与から1〜8週間、より好ましくは初回投与から4週間である。通常投与量と同じ投与量とは、通常投与量を投与した場合と同程度のIL−6阻害剤の血中濃度を呈する場合も含まれる。通常投与間隔よりも短い間隔とは、通常投与間隔よりも短い期間であれば特に限定されるものではないが、好ましくは通常投与間隔の半分の期間であり、たとえば通常投与間隔が4週間の場合は、2週間となる。例えば、短間隔投与期間は一定の幅を持っていてもよく、例えば1〜2週間であってもよい。複数回投与とは、初回投与を含めて2回以上の投与のことを言い、好ましくは初回投与を含め2〜5回、より好ましくは初回投与を含め3回である。免疫寛容が誘導されたか否かは抗薬物抗体の発生が抑えられたか否かにより判断できる。
【0066】
本発明における「通常投与」とは、当該医薬品(本発明の医薬組成物)において通常用いられる投与のことであり、たとえば上述の「通常投与量」、「通常投与間隔」で投与されることをいう。
【0067】
本発明における「IL−6受容体抗体」の好ましい例としては、ヒト化抗IL−6レセプターIgG1抗体であるトシリズマブ、及びトシリズマブの可変領域及び定常領域の改変を行ったヒト化抗IL−6レセプター抗体が挙げられ、具体的には配列番号:1の配列を含む重鎖可変領域および配列番号:2の配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体が挙げられる。さらに好ましくは、配列番号:3の配列を含む重鎖(SA237の重鎖)及び配列番号:4の配列を含む軽鎖(SA237の軽鎖)を含む抗体である。特にSA237が好ましい。
【0068】
このような抗体は、例えばWO2010/035769、WO2010/107108、WO2010/106812などに記載の方法に従って取得することができる。具体的には、上記IL−6受容体抗体の配列を基に、当業者に公知の遺伝子組換え技術を用いて抗体を作製することが可能である(例えば、Borrebaeck CAK and Larrick JW, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照)。組換え型抗体は、それをコードするDNAをハイブリドーマ、または抗体を産生する感作リンパ球等の抗体産生細胞からクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主(宿主細胞)に導入し産生させて得ることができる。
【0069】
このような抗体の分離、精製は、通常の抗体の精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、組み合わせれば抗体を分離、精製することができる。
【0070】
本発明においては、通常投与期間は、短間隔投与期間での最後の投与から開始する。すなわち、短間隔投与期間での最後の投与から通常投与間隔経過した後、通常投与期間での最初の投与が行われる。
【0071】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、短間隔投与期間において初回投与から1〜3週間間隔で2〜5回通常投与量と同じ投与量でIL−6阻害剤を投与したあと、短間隔投与期間での最後の投与から2〜8週間間隔で通常投与量である1回当たり50〜800mgのIL−6阻害剤を投与していく医薬組成物であり、さらに好ましくは、短間隔投与期間において初回投与から2週間間隔でSA237を通常投与量と同じ投与量で3回投与(すなわち0週、2週、4週に投与)した後、短間隔投与期間での最終投与から8週間間隔(すなわち短間隔投与期間の初回投与から12週、20週、28週と8週間間隔で続いていく)で通常投与量である1回当たり120mgのSA237を投与していく通常投与される医薬組成物である。
【0072】
IL−6阻害剤の好ましい投与スケジュールについては、病状の観察および血液検査値の動向を観察しながら適宜投与間隔を延ばしていくなど調整することも可能である。
【0073】
治療または予防目的で使用される本発明の医薬組成物は、必要に応じて、適当な薬学的に許容される担体、媒体等と混和して調製し、凍結乾燥製剤又は溶液製剤とすることができる。適当な薬学的に許容される担体、媒体としては、例えば、滅菌水や生理食塩水、安定剤、賦形剤、酸化防止剤(アスコルビン酸等)、緩衝剤(リン酸、クエン酸、ヒスチジン、他の有機酸等)、防腐剤、界面活性剤(PEG、Tween等)、キレート剤(EDTA等)、結合剤等を挙げることができる。また、その他の低分子量のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチンや免疫グロブリン等の蛋白質、グリシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸、アスパラギン酸、メチオニン、アルギニン及びリシン等のアミノ酸、多糖及び単糖等の糖類や炭水化物、マンニトールやソルビトール等の糖アルコールを含んでいてもよい。注射用の水溶液とする場合には、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えば、D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール、PEG等)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー188、HCO-50)等と併用してもよい。また、製剤中にヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)を混合することによって、より大きな液量を皮下投与することも可能である(Expert Opin Drug Deliv. 2007 Jul;4(4):427-40.)。また、本発明の医薬組成物は予め注射筒に入れられていてもよい。尚、溶液製剤はWO2011/090088に記載の方法に従って作製することができる。
【0074】
また、必要に応じ本発明の医薬組成物をマイクロカプセル(ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリ[メチルメタクリル酸]等のマイクロカプセル)に封入したり、コロイドドラッグデリバリーシステム(リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル等)とすることもできる("Remington's Pharmaceutical Science 16th edition", Oslo Ed. (1980)等参照)。さらに、薬剤を徐放性の薬剤とする方法も公知であり、本発明の医薬組成物に適用し得る(Langer et al., J.Biomed.Mater.Res. 15: 267-277 (1981); Langer, Chemtech. 12: 98-105 (1982);米国特許第3,773,919号;欧州特許出願公開(EP)第58,481号; Sidman et al., Biopolymers 22: 547-556 (1983);EP第133,988号)。
【0075】
本発明の医薬組成物の投与は、任意の適切な経路を介して患者に投与することができる。例えば、ボーラスとしてまたは一定期間にわたる持続注入による静脈内、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、経皮、皮下、関節内、舌下、滑液内、経口、吸入、局所または外用による経路により患者に投与される。静脈内投与又は皮下投与が好ましい。
【0076】
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0078】
実施例1:IL−6阻害剤の調整
特許文献(WO2010/035769)に記載のIL−6受容体抗体であるSA237(特許文献WO2010/035769中では配列番号:26(本明細書では配列番号:3)の配列を有する重鎖及び配列番号:29(本明細書では配列番号:4)の配列を有する軽鎖を含む抗体)を、前記特許文献の記載にしたがって作製した。できた抗体を用いて、特許文献WO2011/090088に記載の方法により皮下投与製剤として調整した。
【0079】
実施例2:日本人及び白人の健康成人男性を対象とした単回皮下投与による試験(SA001JP試験)
日本人及び白人健康成人男性を対象にSA237を皮下投与した際の安全性、忍容性、薬物動態及びバイオアベイラビリティを確認した。本試験では48例の日本人にSA237の皮下または点滴静脈内投与、24例の白人にSA237の皮下投与を実施した。24例までのSA237の単回投与時の安全性及び忍容性は概ね良好であった。60mg及び120mgの皮下投与時の絶対バイオアベイラビリティはそれぞれ64.6%及び69.4%であった。SA237を投与された72例中39例において抗SA237抗体の産生が確認された。
【0080】
実施例3:日本人の関節リウマチ患者を対象とした反復皮下投与による非盲検並行群間比較試験(SA−105JP試験)
以下の基準を満たす患者を被験者として選択した。
(1)アメリカリウマチ学会(ACR)の1987年分類基準によって、関節リウマチ(RA)と診断される患者
(2)RAの罹病期間が6カ月以上の患者
(3)治験薬投与開始前2週間以内の検査においてCRP(C反応性タンパク質)が施設基準値上限を超える患者
(4)同意取得時において年齢20歳以上の患者
(5)文書で本人より治験参加の同意が得られている患者
(6)治験薬投与開始前16週間以降にMTX(メトトレキサート)による治療が実施されていない患者
(7)治験薬投与開始前12週間以降に(標準的なコレスチラミン療法又は活性炭による薬剤除去を実施された場合は、治験薬投与開始前4週間以降)にレフルノミドによる治療が実施されていない患者
(8)治験薬投与開始前4週間以降に上記以外のDMARD又は免疫抑制剤による治療が実施されていない患者
(9)治験薬投与開始前2週間以降にプレドニゾロン換算1日10mgを超える治療が実施されていない患者
【0081】
中央登録法による3グループ(グループA、B、C)にランダムに割り付け、非盲検並行群間比較試験にて実施した(表1参照)。割り付けに際しては体重を因子とした。本治験は主要評価期間、継続投与期間及び後観察期間からなる。
主要評価期間では、SA237 120mgを0、2、4週に投与し、8週時以降はグループA、B、Cそれぞれ120、60、30mgを4週間隔で16週時まで投与し、その後、原則としてグループA、B、Cはそれぞれ血清中SA237濃度が検出限界未満になると予想される32、28、24週時まで観察(抗SA237抗体測定を含む)を実施した。
継続投与期間では、SA237 120mgを0、2、4週時に投与し、8週時以降は120mgを4週間隔で20週時まで投与し、32週時まで観察を実施した。
尚、被験薬は1バイアル中に120mgのSA237を含有する液1.0 mLを充てんしたものである。添加剤としてL−ヒスチジン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸及びポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールを含有し、pHは5.5〜6.5となっている。また、投与は原則、腹部に皮下投与で行った。
【0082】
【表1】
【0083】
RA患者を対象としてSA237を反復投与した際の薬物動態・薬力学的評価、有効性(FAS対象)及び安全性の検討において、各解析対象となった各グループ11例、計33例の被験者背景は、年齢が59.0〜65.0歳(各グループの中央値の範囲、以下同様)、体重が50.30〜57.90kgであった。女性の割合が高く、グループAが81.8%(9/11例)、グループBが90.9%(10/11例)、グループCが63.6%(7/11例)であった。治験薬が主要評価期間の最後まで投与された被験者は、グループAが10/11例(90.9%)、グループBが10/11例(90.9%)及びグループCが9/11例(81.8%)で、全期間(主要評価期間及び継続投与期間)観察できた被験者は、グループAが10/11例(90.9%)、グループBが7/11例(63.6%)及びグループCが7/11例(63.6%)であった。
【0084】
(1) 薬物動態
評価方法:観察・検査は、表2及び表3に従い、観察・検査を行った。特に規定がない場合は治験薬投与前に実施した。既定の主要評価期間を完了していなくても、継続投与期間初回投与後または継続投与期間の初回投与同日となる場合は、以後の主要評価期間の観察・検査は実施不要とした。なお、試験期間について、以下のように定義した。
主要評価期間:治験薬の初回投与日から、原則としてグループA、B、Cはそれぞれ血清中SA237濃度が消失すると予想される32、28、24週時までの観察・検査とする。ただし、これ以前に血清中SA237濃度が検出限界未満であることが確認され継続投与を開始した場合は、継続投与期間の初回投与前の観察・検査までとする。
継続投与期間:主要評価期間の終了後、継続投与の初回投与開始日から、継続投与期間24週時の観察・検査までとする。
後観察期間:継続投与期間の24週時の観察・検査終了後から、32週時までとする。
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
結果:本試験における薬物動態のグラフを
図1に示す。血清中SA237濃度のトラフ値は、主要評価期間のグループA及び継続投与期間では、両期間とも4週時以降ほぼ一定であった。一方、主要評価期間のグループB及びグループCの血清中SA237濃度は、8週時以降低下した。8週時までの血清中SA237濃度及びAUC
0−2Wは主要評価期間と継続投与期間で大きな差が認められなかったことから、1度SA237の投与を中止したのちに再投与を開始しても薬物動態の変動はなかった。
【0088】
(2) 薬力学的評価
結果:本試験における薬力学的評価のグラフを
図2、
図3に示す。血清中SA237濃度が一定に保たれていた主要評価期間のグループAの8週時〜20週時及び継続投与8週時〜24週時では、血清中sIL−6R濃度もほぼ一定に維持されていた。一方、主要評価期間のグループB及びグループCの8週時以降は、SA237濃度の低下に伴いIL−6阻害のPDマーカーである血清中sIL−6R濃度は低下した。
主要評価期間のIL−6阻害のPDマーカーであるCRPは、グループAでは4週時から20週時まで半数程度の被験者で定量下限値(0.005mg/dL)未満であり、平均値においても0.01mg/dL付近と低値で推移した。グループBでは16週時以降に、グループCでは8週時以降に0.1mg/dL以上まで上昇した。CRP正常化(0.3mg/dL以下)の割合においても、平均値の推移と同様の傾向であり、4週時に各グループで81.8〜90.9%となった後、8週時に比べて20週時では、グループAが100%で変わらず、グループBが81.8%から80.0%で同程度であり、グループCでは90.9%から33.3%に減少した。ほとんどの被験者、時点で血清中SA237濃度が定量できる濃度(0.2μg/mL)以上であれば、CRPはベースライン値から低下していると考えられた。
【0089】
(3) 有効性
評価方法:DAS28(Modified disease activity score based on 28 joint counts)は関節リウマチの活動性を評価する指標であり、観察対象の28関節における圧痛関節数(TJC)、腫脹関節数(SJC)並びに、ESR、「被験者による全般評価」を用いて以下の計算式より算出し、投与開始から最終観察日までの推移を検討した。グループごと、時期ごとに要約統計量(平均値、標準偏差、中央値、最小値、最大値)を算出した。また、臨床的寛解率を算出した。
ACR20%、50%、70%改善基準は以下のとおり評価した。
【0090】
結果:本試験における有効性を示す主要評価期間におけるDAS28 scoreの変化量の推移を以下の表4に示す。
【0091】
【表4】
【0092】
DAS28は8週時に改善が認められた。主要評価期間で異なる用量を投与開始(8週時)してから後は、グループAではDAS28が更に改善したが、グループBでは大きな変動が認められず、グループCではベースライン値に戻る傾向が認められた。
【0093】
ACR20%改善頻度は8週時に各グループで70.0〜81.8%、50%改善頻度は40.0〜50.0%、70%改善頻度は18.2〜30.0%となった。8週時に比べて20週時では、20%改善頻度はグループA及びグループBでは維持されたが、グループCでは減少した。20週時には、50%及び70%改善頻度は、グループAではそれぞれ72.7%(8/11例)及び54.5%(6/11例)と8週時に比べて増加したが、グループB及びグループCでは大きな変動は認められなかった。
【0094】
(4) 免疫原性及び抗体陽性例の薬物動態、薬力学的評価、有効性及び安全性
抗SA237抗体が認められたのはグループB及びグループCの各1例計2/33例であった。この2例では、抗SA237抗体検出後の継続投与期間中の血清中SA237濃度は定量下限値未満であり、抗体が検出された時期以降、SA237投与による可溶性IL−6受容体(sIL−6R)濃度上昇及びCRP濃度低下は認められず、DAS28、CDAI及びSDAIが上昇した。また、この2例に抗体検出後認められた有害事象は重症度が軽度の糖尿病1件であった。本事象は、アレルギー反応ではなく、合併症の悪化であった。両被験者とも抗体検出後繰り返しSA237の投与を受けたものの、安全性上の問題は認められなかった。
【0095】
(5) 結論
RA患者を対象として、SA237 120mgを2週間隔で3回投与後、8週時以降4週間隔で120mgを3回投与したとき、4週時〜最終投与4週後まで安定した血清中薬物濃度が維持され、それによる血清中sIL−6R濃度の高値及びCRPの低値、ならびにDAS28を含むいずれの有効性評価項目の安定した改善が認められた。本治験全体での抗SA237抗体検出頻度は6.1%(2/33例)であり、抗SA237抗体検出例では、抗SA237抗体検出時以降、血清中SA237濃度低下を認めたものの、安全性における問題は認められず、許容しうる範囲であった。以上から、本投与方法において安全性上懸念される問題は認められなかった。