特許第6775504号(P6775504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6775504プラズマガンノズルの腐食防止及びガンノズルの腐食防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775504
(24)【登録日】2020年10月8日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】プラズマガンノズルの腐食防止及びガンノズルの腐食防止方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 4/134 20160101AFI20201019BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20201019BHJP
   B05B 7/22 20060101ALI20201019BHJP
   H05H 1/34 20060101ALI20201019BHJP
   B23K 10/00 20060101ALN20201019BHJP
【FI】
   C23C4/134
   C23C26/00 B
   B05B7/22
   H05H1/34
   !B23K10/00 504
【請求項の数】18
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-528583(P2017-528583)
(86)(22)【出願日】2015年12月8日
(65)【公表番号】特表2018-507316(P2018-507316A)
(43)【公表日】2018年3月15日
(86)【国際出願番号】US2015064465
(87)【国際公開番号】WO2016094388
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2018年11月16日
(31)【優先権主張番号】14/568,833
(32)【優先日】2014年12月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515195347
【氏名又は名称】エリコン メテコ(ユーエス)インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホーリー、デイブ
(72)【発明者】
【氏名】モルツ、ロナルド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】コルメナレス、ホセ
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/120357(WO,A1)
【文献】 特開平05−084579(JP,A)
【文献】 特開平09−019771(JP,A)
【文献】 特表2016−514200(JP,A)
【文献】 実開昭58−073366(JP,U)
【文献】 特開2001−316865(JP,A)
【文献】 特開2006−247722(JP,A)
【文献】 特開昭61−166987(JP,A)
【文献】 特表2015−511371(JP,A)
【文献】 特表2011−505492(JP,A)
【文献】 特開2008−157090(JP,A)
【文献】 特開昭61−214400(JP,A)
【文献】 特開2001−170760(JP,A)
【文献】 特表2016−515161(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/064450(WO,A1)
【文献】 米国特許第04235943(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/00−6/00
B05B 1/00−3/18
B05B 7/00−9/08
C23C 24/00−30/00
H05H 1/00−1/54
B23K 10/00−10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央空洞部及び外側表面を有し、溶射ガン内に挿入されるように構成されたノズル本体と、
前記外側表面の少なくとも一部に施された水冷可能面コーティングとを備え、
前記水冷可能面コーティングが、前記溶射ガン内を通って案内される冷却水との化学的相互作用から前記外側表面を保護するように構成されている、溶射ガン用ノズル。
【請求項2】
前記ノズル本体が銅である、請求項1に記載された溶射ガン用ノズル。
【請求項3】
前記中央空洞部の内側表面の少なくとも一部に配置されたライナーを更に備える、請求項2に記載された溶射ガン用ノズル。
【請求項4】
前記水冷可能面コーティングが、ニッケル、クロム、カドミウム、バナジウム、白金、金、銀、タングステン又はモリブデンを含む、請求項2に記載された溶射ガン用ノズル。
【請求項5】
前記水冷可能面コーティングが、水冷可能面における前記冷却水のマイクロ沸騰による腐食を防止するようになっている、請求項1に記載された溶射ガン用ノズル。
【請求項6】
前記水冷可能面コーティングが、少なくとも約2.54μmのコーティング厚さを有する、請求項1に記載された溶射ガン用ノズル。
【請求項7】
前記水冷可能面コーティングが、約12.7μm〜約25.4μmのコーティング厚さを有する、請求項6に記載された溶射ガン用ノズル。
【請求項8】
前記水冷可能面コーティングが、前記ノズル本体から前記冷却水への熱の流れが制限されるのを回避するコーティング厚さを有する、請求項1に記載された溶射ガン用ノズル。
【請求項9】
前記外側表面の少なくとも一部は、水冷される表面の表面温度が、前記冷却水の局所沸点に近づくか又は超えることが予期される表面を含む、請求項1に記載された溶射ガン用ノズル。
【請求項10】
前記外側表面の少なくとも一部は、前記冷却水が接触できる前記外側表面の全体を含む、請求項1に記載された溶射ガン用ノズル。
【請求項11】
中央空洞部及び外側表面を有するノズル本体を備える挿入可能なノズルと、
前記外側表面の少なくとも一部に施されたコーティングと、
前記外側表面の前記少なくとも一部に冷却水を案内するように構成および配置された水冷システムとを備え、
前記コーティングが、冷却水との化学的相互作用から前記外側表面を保護するように構成されている、溶射ガン。
【請求項12】
前記ノズル本体が銅を含む、請求項11に記載された溶射ガン。
【請求項13】
前記ノズルが、前記中央空洞部の内側表面の少なくとも一部に配置されたライナーを更に備える、請求項12に記載された溶射ガン。
【請求項14】
前記水冷可能面コーティングが、ニッケル、クロム、カドミウム、バナジウム、白金、金、銀、タングステン又はモリブデンを含む、請求項11に記載された溶射ガン。
【請求項15】
前記コーティングが、前記外側表面の前記少なくとも一部における前記冷却水のマイクロ沸騰による腐食を防止する材料により形成されている、請求項11に記載された溶射ガン。
【請求項16】
前記コーティングが、少なくとも約2.54μmの厚さを有する、請求項11に記載された溶射ガン。
【請求項17】
前記コーティングが、約12.7μm〜約25.4μmの厚さを有する、請求項16に記載された溶射ガン。
【請求項18】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載された溶射ガン用ノズルを製造する方法であって、
化学浴析出、化学蒸着、物理蒸着、プラズマ溶射物理蒸着、電子放出物理蒸着の1つ化学浴浸漬の1つ又はそれらの任意の変形法又は混成法により水冷可能面コーティングを形成する段階を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プラズマガンは、溶射から、例えば危険物を焼却するためのプラズマ発生器まで様々な用途に使用されている。
【背景技術】
【0002】
溶射用途に使用される従来のプラズマガンノズル(アノード)は、寿命が限られている。使用時、プラズマ電圧は、適切に作動するための所定の範囲内に維持される。しかしながら、プラズマガンによってプラズマアークを発生させると、ノズルの空洞部(ボア)が、極めて高温(>12,000°K)に曝される。ノズル壁の融解を防止するために、冷却水をプラズマガン内を通じてアノード及びカソードに循環させる。
【0003】
プラズマガンの作動中、循環冷却水は、ノズルの表面に沿ってマイクロ沸騰し、これにより、水とノズル内側との境界面に気泡が形成される。冷却水を循環させているにもかかわらず、ノズル上に高温領域が生じる。図1は、コンピュータモデルから導き出したノズルの外側に高温領域が存在する従来のノズルを示す。多くの場合冷却水は不純物を含むので、マイクロ沸騰と水中不純物との組み合わせによって銅が腐食攻撃を受ける。また、高純度の蒸留脱イオン水であってもいずれは経時的に腐食を生じる。銅が腐食するにつれて、銅の熱伝達率が変化し、それによりプラズマノズルの熱的状態が変化し、ひいてはプラズマアークが変化する。この点についてこの熱的状態の変化がプラズマアーク電圧の不安定化に繋がること、そしてこの不安定性がアーク電圧の低下を促進させることが、試験によって示されている。この不安定性は、単位時間当たりのエネルギー状態の変化をももたらし、それが溶射であっても化学処理であっても瞬間的なレベルでプロセスを変化させてしまうことがある。
【0004】
その耐用寿命の終わりには、銅製ノズルの外側表面に腐食が生じる。銅が腐食するにつれて、銅の熱伝導率が変化し、それによりがプラズマノズルの熱的状態が変化し、ひいてはプラズマアークが変化する。本発明者は、この熱的状態の変化がプラズマアーク電圧の不安定化に繋がること、そしてこの不安定性がアーク電圧の低下を促進させることを試験によって見出した。この不安定性は、単位時間当たりのエネルギー状態の変化をももたらすこともが分かっており、それが溶射であっても化学処理であっても瞬間的なレベルでプロセスを変化させてしまうことがある。
【発明の概要】
【0005】
アーク電圧の安定性を促進し耐用ハードウェア寿命を延ばすために、水との界面における銅製ノズルの腐食を低減又は排除するように設計又は構築されたノズルが要求されている。
【0006】
本発明の具体例は溶射ガン用ノズルを対象とし、このノズルは、ノズル本体および水冷可能面コーティングを有する。ノズル本体は、中央空洞部及び外側表面を有し、溶射ガン内に挿入されるように構成されており、水冷可能面コーティングは、上記外側表面の少なくとも一部に施されている。水冷可能面コーティングは、溶射ガン内を案内される冷却水との化学的相互作用から外側表面を保護するように構成されている。
【0007】
具体例によれば、ノズル本体は銅とすることができる。ノズルは、中央空洞部の内側表面の少なくとも一部に配置されたライナーを更に含むことができる。更に、水冷可能面コーティングは、ニッケル、クロム、カドミウム、バナジウム、白金、金、銀、タングステン又はモリブデンを含んでもよい。
【0008】
他の具体例によれば、水冷可能面コーティングは、水冷可能面における、冷却水のマイクロ沸騰による腐食を防止できる。
【0009】
具体例において、水冷可能面コーティングは、少なくとも約2.54μmの コーティング厚さを有することができる。他の具体例において、水冷可能面コーティングは、約12.7μm〜約25.4μmのコーティング厚さを有することができる。
【0010】
更に他の具体例において、水冷可能面コーティングは、ノズル本体から冷却水への熱の流れが制限されるのを回避できるコーティング厚さを有することができる。
【0011】
また、水冷可能面コーティングは、化学浴析出、化学蒸着、物理蒸着、プラズマ溶射物理蒸着、電子放出物理蒸着の1つ又はそれらの任意の変形法又は混成法により施すことが可能な材料で形成できる。
【0012】
他の具体例によれば、外側表面の少なくとも一部は、水冷される表面の表面温度が冷却水の局所沸点に近づくか又は超えることが予期される表面を含むことができる。
【0013】
更なる具体例において、外側表面の少なくとも一部は、冷却水が接触しうる外側表面の全体を含んでもよい。
【0014】
本発明の具体例によれば溶射ガンが対象とされ、溶射ガンは、中央空洞部及び外側表面を有するノズル本体を備えた挿入可能なノズルと、外側表面の少なくとも一部に施されたコーティングと、外側表面の少なくとも一部に冷却水を案内するように構成および配置された水冷システムとを含む。コーティングは、冷却水との化学的相互作用から外側表面を保護するように構成されている。
【0015】
具体例によれば、ノズル本体は銅を含んでもよい。他の具体例において、ノズルは、中央空洞部の内側表面の少なくとも一部に配置されたライナーを更に含むことができる。更に、水冷可能面コーティングは、ニッケル、クロム、カドミウム、バナジウム、白金、金、銀、タングステン又はモリブデンを含んでもよい。
【0016】
具体例によれば、コーティングは、外側表面の少なくとも一部における冷却水のマイクロ沸騰による腐食を防止する材料により形成されてもよい。
【0017】
他の具体例によれば、コーティングは、少なくとも約2.54μmの厚さを有することができる。更なる具体例によれば、コーティングは、約12.7μm〜約25.4μmの厚さを有することができる。
【0018】
本発明の具体例は、溶射ガン用ノズルの形成方法であって、ノズル本体の外側表面の少なくとも一部を、ニッケル、クロム、カドミウム、バナジウム、白金、金、銀、タングステン又はモリブデンの少なくとも1つでコーティングすることを含む方法を対象とする。
【0019】
更に他の具体例によれば、コーティングは、化学浴析出、化学蒸着、物理蒸着、プラズマ溶射物理蒸着、電子放出物理蒸着の1つ又はそれらの任意の変形法又は混成法により施すことができる。
【0020】
本発明の他の例示的な具体例及び利点は、本開示及び添付の図面を検討することによって確認できよう。
【0021】
以下の詳細な説明において、本発明を、本発明の例示的な具体例の非限定の例として記載した複数の図面を参照しながら更に説明する。ここで、図面の幾つかの図を通じて、同様の要素を同様の符号で示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来の溶射ガンを例示する図。
図2】沸騰パターンのある、図1に示す溶射ガン用のノズルを例示する図。
図3図2のコンピュータモデルに対応する沸騰パターンのあるノズルを示す図。
図4図2及び図3の沸騰パターンが対応する、図1に示す溶射ガンのノズルのコンピュータモデルをグラフィックで例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において示す事項は、例示のためのものであり、本発明の具体例の例示的説明のみを目的とするものであり、本発明の原理及び構想的側面の説明として最も有用で理解が容易であると思われるものを提供するために提示するものである。この点について、本発明の基本的な理解のために必要な程度よりも詳細に本発明の構造的細部を示す試みは行っておらず、説明は、図面と合わせて、本発明の幾つかの形態が実際にどのように具体化されるのかを、当業者に対して明らかにするものである。
【0024】
図1は、従来のプラズマノズル2、カソード3、および水冷システム4を備えた従来のプラズマ溶射ガンの先端のガン本体1を例示する。この従来のプラズマ溶射ガンは、例えば、ニューヨーク州ウェストバリーのエリコンメテコ社(米国)(Oerlikon Metco Inc.)が製造するF4MB−XL又は9MBプラズマガンや、プログレッシブテクノロジーズ社(Progressive Technologies)が製造するSG100プラズマガン、あるいは単一のカソード及び非カスケード型アノード/プラズマアークチャネルを有することで例示される任意の典型的な従来のプラズマガンとすることができる。プラズマノズル2は、高い熱電導特性を有する材料、例えば銅単独で作ることができる。あるいは、銅製ノズルは、性能を向上させるために、ライニング、例えばタングステンライニングやモリブデンライニング、高タングステン合金ライニング、銀ライニング、又はイリジウムライニングを含むことができる。プラズマは、典型的に例えばArやN、He、H及びそれらの混合物などのガスに電流を通してプラズマアーク7を作ることによって、プラズマノズル2内に形成される。この電流を生じさせるために、カソード3がDC電源(不図示)のマイナス側に接続され、アノードとして機能するノズル2がDC電源のプラス側に接続される。プラズマノズル2は、カソード3が内部に収容された円錐状空洞部5と、好ましくはプラズマアーク7が内側に当たる円筒状空洞部6とを含む。
【0025】
初期作動において、プラズマアーク7は、ノズル壁に当たる前に円筒状空洞部6内をある程度の距離移動し、最も高いプラズマ電圧を生成する。非限定の例として、プラズマアーク7が最初に当たる点は、円錐状空洞部5の下流から円筒状空洞部6の3分の1の点と2分の1の点との間とすることができ、所定の作動パラメータにおいて壁におけるプラズマ電圧は、70Vよりも高いことが好ましい。他のパラメータは、ガスやハードウェア構成、電流等に応じて、様々な電圧を生じさせることができる。ノズル壁2の表面が摩耗し劣化するにつれて、プラズマアーク7は、更に上流側に当たるようになり、最終的に、プラズマアーク7は、円錐状空洞部5の壁に当たり、その時点で、十分な大きさの電圧低下となり、ノズル2の交換が必要となる。円錐状空洞部5内部の壁は、所定の作動パラメータにおいてプラズマ電圧が70V未満となるため、プラズマアークが当たる領域としては望ましくない。ここでも、他のパラメータは、ガスやハードウェア構成、電流等に応じて、様々な電圧を生じることがある。
【0026】
ノズルの冷却のために、ノズル2の外周面から、複数のフィン12が放射状に延出している。フィン12は、ノズル2の長手方向にも延在し、円錐状空洞部5と円筒状空洞部6とが交わる点及び円錐状空洞部5の一部分を囲む。例えば、円錐状空洞部5及び円筒状部6の長さの約半分、例えば、アークが当たる領域を囲む。タングステンライニングが設けられる場合、フィン12は、例えば、円錐状空洞部5内の壁の一部を形成するライニングの開始点から、円筒状空洞部6を囲む所定のアークが当たる領域の端部まで延在するように配置できる。
【0027】
作動時、ノズル2の空洞部6内部には、例えば12,000°Kを超える極めて高い温度が生じる可能性があり、結果として、ノズル空洞部6内は例えば700〜800°Kと極めて高いピーク平均の壁温度となりうる。この極端な温度によるノズル2の融解を防止するために、水冷システム4が、循環水でノズル2の外側を冷却するために配置される。水冷システム4は、ガン本体の後部から入り、ノズル2の外周囲に向けられ、冷却フィン12を通ってから出る水冷却路8を含む。例示の具体例において、水冷システム4は、冷却水を供給源からノズル2の外周部に供給する少なくとも1つの水入口ポート9を有するとともに、ノズル2の外周部を冷却する水が流出して供給源に戻る少なくとも1つの水出口ポート10を有する。水入口ポート9は、冷却水を、円錐状空洞部5の一部を囲むノズル2の外周面11に接触するように供給する。冷却水は、その後、フィン12の間を通るように案内され、フィン12が位置する周囲に接触して冷却し、その後の領域において、円筒状空洞部6の一部を囲む周面13に接触して冷却する。また、循環する冷却水を、水冷却路8内を反対方向に通るように案内してもよく、あるいは、冷却水を冷却対象のノズル2の表面に移動させる他の適切な方法を採用してもよいことは理解されよう。
【0028】
溶射ガンの作動中、水冷システム4内を循環する冷却水は圧力下にある。その結果、マイクロ沸騰として知られる現象がノズル2の表面に沿って生じ、微細な蒸気泡が、冷却水に接触するノズル2の外周面、例えば、外周面11、フィン12間の外周面、円筒状空洞部6の一部を囲む外周面16に形成され始める。図2は、マイクロ沸騰によるノズル2の外周面16上の沸騰パターン14を示す。図3は、概ね図2に示すものに対応しており、マイクロ沸騰により外周面16’上に実際の沸騰パターン14’が生じた実際のノズル2’を示す。図4は、約400Kでのマイクロ沸騰によるモデル化されたノズル2’’の外周面上に位置するコンピュータモデル化された沸騰パターン14’’を例示する。図2及び図3のマイクロ沸騰による400Kでの沸騰パターン14,14’は、図4に示すモデル化されたノズル2’’上の沸騰パターン14’’に対応している。また、沸騰パターン14,14’の領域におけるノズル2,2’の表面上の冷却水のマイクロ沸騰が、冷却水内の不純物と組み合わせられて、沸騰パターン14,14’の領域の露出したノズルの材料、例えば、銅の腐食攻撃に繋がりうることが分かっている。これは、マイクロ沸騰により生じた水蒸気が非常に反応性が高いため、冷却水中の混入物質が銅製ノズルの材料を攻撃するからである。更に、冷却水が高純度の蒸留脱イオン水であっても、腐食は依然としてノズル2,2’の水冷された表面上にいずれは生じうることが分かっている。これは、全ての混入物質を水から除去することは不可能であり、超純水であっても銅を直接攻撃するのはごく自然なことだからである。
【0029】
沸騰パターン14,14’の領域で水冷された材料、例えば銅の表面が腐食するにつれて、その材料の熱伝達率が変化し、それによって、ノズル2,2’の熱的状態が変化する。その結果、プラズマアークも同様に腐食によりに変化する。より詳細には、ノズル2,2’の変化した熱的状態が、プラズマアーク電圧の不安定化に繋がる可能性があること、そしてこの不安定性がアーク電圧の低下を促進させる可能性があることが試験によって示されている。この不安定性は、単位時間当たりのエネルギー状態の変化をももたらす可能性があり、それが溶射であっても化学処理であっても瞬間的なレベルでプロセスを変化させてしまうことがある。
【0030】
銅は、高い熱伝導率及び高い導電率から、プラズマガンノズルの構成に好ましい材料であるが、ノズル2全体を構成するために代替の材料が試験されており、十分な性能を得る結果から、ノズルが完全に融解する失敗まで様々な結果が得られている。それにより見出された最良の代替材料はタングステンであるが、この材料も銅製プラズマノズル空洞部の空洞部に対するライニングとしてのみ最適である。米国特許出願公開第2013/0076631号明細書に記載されているようなタングステン合金やモリブデン等の他の高融点材料も、ノズル全体に対してよりもライニングに対して最適である。また、銅以外のライニング材料の使用は、米国特許出願公開第2013/0076631号に基づく薄層にライニングがなじむ際に最も良く機能する。
【0031】
具体例として、冷却水に曝されるノズル2の表面、好ましくはノズル2の全ての表面は、冷却水との化学的相互作用から銅材料を保護するために、めっきされる。特に、水冷された表面の表面温度が冷却水の局所沸点(local boiling temperature)に近づくか又は超えるところのノズル2表面をめっきすると有利となりうる。もちろん、ノズル2の他の外側表面をめっきすることも有利である。しかしながら、プラズマアークが当たるノズル2の空洞部は、この空洞部内部に生じる温度によりめっき材料が融解しその結果融解しためっき材料がノズルから流出する虞があるため、めっきしないほうが好ましい。
【0032】
非限定の例として、めっきは、例えば、化学浴析出(電解)、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、プラズマ溶射物理蒸着(PSPVD)若しくは電子放出物理蒸着(EDPVD)、又は、CVD、PVD、PSPVD若しくはEDPVDの任意の変形法又は混成法によってノズル2に施すことができる。特に、最も容易で最も一般的であり且つ最もコストの低い方法であることから、化学浴析出又は電解が好ましいめっき方法である。もちろん、耐食性の純金属又は金属合金により十分に薄い層を施すことが可能な任意の方法が実行可能である。
【0033】
所望の腐食防止を行なうためのめっき材料は、例えばニッケルやクロム、カドミウム、バナジウム、白金、金、銀、タングステン、モリブデンなどの純金属が好ましい。低コストで付着が容易であり、一般に入手可能であることから、ニッケルが好ましいめっき材料である。また、耐食性の合金も、めっき材料として考慮できる。しかしながら、合金は、上述の純金属よりも熱伝導率が相当低いため、そのような合金により形成された保護層のめっき厚さは、熱の流れが制限されるのを回避するのに十分な薄さにする必要があることを理解すべきである。更に、不活性セラミックスコーティングは、これらのセラミックスに典型的に伴う耐熱性が、腐食する銅の副産物と本質的に同じであるため、めっき材料として実行可能な解決手段としては考えられない。
【0034】
具体例によれば、めっきは、妥当な時間だけ、水冷された表面を腐食攻撃から余裕をもって保護するのに十分な厚さがあればよい。非限定の例として、ノズルの材料を保護するためにニッケルでは、少なくとも0.0001インチ(2.54μm)のめっき厚さが許容可能であるが、それよりも若干厚いめっき厚さが好ましい。この点について、めっきがノズルの溶射ガン内に対する許容誤差及び嵌合性に干渉しない限り、より厚いめっき厚さをノズルに適用できる。もちろん、めっき厚さが増大すればするほどめっき材料の熱伝導率はノズルの銅よりも低くなるため、めっきされたノズルの熱伝導特性が低下し、ノズル空洞部の熱的損傷に至る可能性がある。従って、更に非限定の例として、ニッケルでは約0.001インチ(25.4μm)のめっき厚さが好ましく、ニッケルでは約0.0005インチ(12.7μm)のコーティング厚さが最も好ましい。また、記載の他の純金属は熱伝導率がニッケルよりも低いため、これらの他の純金属の場合めっき厚さは、記載のニッケルめっき厚さよりも薄くすることが好ましい。
【0035】
実施例として、標準的な溶射プラズマガンノズル、例えばノズル2に構造的に対応したノズルを用意し、電解によりニッケルをおおよそ0.001インチ(25.4μm)の厚さの層にめっきすることによって、試験体を作製した。特に、ノズル空洞部の内側にめっき又はコーティングを施すとノズルの性能に悪影響を及ぼすことが分かっているため、ニッケルめっきを外側表面のみに施す。めっきされたノズルを、ニューヨーク州ウェストバリーのエリコンメテコ社(米国)が製造するF4プラズマガンに組み付け、計30時間、すなわち3voltの低下に基づきハードウェア寿命の終わりに達するまで作動させた。プラズマガンを作動させるのに一般的な品質の水を含むシステムを使用した。ハードウェア寿命の終了後、めっきされたノズルを検査したところ、マイクロ沸騰領域に形成された化学沈殿物による幾つかの些細な影響しか見つからず、それを拭き取ると、本来の変化していない艶のあるニッケル被覆表面が現れた。
【0036】
同じめっきを施した第2のノズルに対して同様に30時間の試験を行ったところ、結果も同様であった。この試験では、上述の水を、導電率が1マイクロジーメンス(μS)未満の新鮮で清浄な蒸留脱イオン水に入れ替えた。この場合、ノズルの水経路上に銅の非常に薄い層が観察されたが、マイクロ沸騰により堆積した沈殿物はなかった。この銅は、ニッケル上への水及びめっきによってガンの内側の他の銅保有面から取り出された銅イオンの結果であると思われた。この薄い銅の層の追加は、それが酸化したとしてもあまりに薄いため、水への熱伝導を大きく妨げることはなく、熱の流れを損なうものではない。
【0037】
また、標準的な(非めっきの)ノズルを、試験を行った上述のめっきされた2つのノズルと同じ作動条件で30時間作動させて、検査を行ったところ、水との界面においてノズルが最も高い温度に曝される領域に銅の黒ずみが見つかっている。この領域において、銅は、水に溶解した酸素と反応して酸化銅を形成し、それがノズルから水への熱伝導を阻害する。逆に、試験を行っためっきされたノズルを目視で検査したところ、わずかな変色しか認められず、認められた変色は、マイクロ沸騰領域における水の不純性による沈殿物の小さな堆積によるものと判断された。
【0038】
また、作動時、めっきされたノズルは、標準的な、すなわち非めっきのノズルと比較して、試験時間全体に亘ってより良好な電圧安定性を示し、また、平均電圧の最終的な低下にも抵抗できた。従って、ノズルをめっきすることにより、より長持ちするノズルが得られるとともに、ノズルの寿命を通してより安定したプラズマアーク性能が提供される。
【0039】
係属中の開示に記載のものとは異なる寸法を有するノズルを、様々なプラズマ溶射ガンが利用できることは理解されるが、腐食に対してノズルの外側をめっきする上述の具体例の精神及び範囲から逸脱することなく、ノズルの寸法を上述の開示で特定されたものから変更又は修正できることは理解されたい。
【0040】
なお、前述の例は、説明の目的でのみ提供したものであり、本発明を限定するものと解釈されるものでは決してない。本発明を例示的な具体例を参照して説明したが、本明細書において使用されている表現が、限定のための表現ではなく、説明及び例示のための表現であることは理解されたい。その態様において本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、現在記載・補正された添付の請求項の範囲内において、変更を行ってもよい。本発明を、本明細書において特定の手段、材料及び具体例を参照して説明したが、本発明は、本明細書に開示された特定の事項に限定されると意図したものではなく、むしろ、本発明は、添付の請求項の範囲内となるような全ての機能的均等な構造、方法及び使用に拡張される。
図1
図2
図3
図4