特許第6775605号(P6775605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775605
(24)【登録日】2020年10月8日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】耐摩耗コポリマーおよび潤滑剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/12 20060101AFI20201019BHJP
   C10M 145/14 20060101ALI20201019BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20201019BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20201019BHJP
【FI】
   C08F220/12
   C10M145/14
   C10N30:06
   C10N40:04
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-560548(P2018-560548)
(86)(22)【出願日】2017年5月17日
(65)【公表番号】特表2019-520445(P2019-520445A)
(43)【公表日】2019年7月18日
(86)【国際出願番号】EP2017061847
(87)【国際公開番号】WO2017198714
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2018年12月17日
(31)【優先権主張番号】62/338,101
(32)【優先日】2016年5月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】16172136.0
(32)【優先日】2016年5月31日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ソフィア シラク
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリー シャフヴォロストフ
(72)【発明者】
【氏名】イネス ベアヴィング
(72)【発明者】
【氏名】デニース ビンゲル
【審査官】 中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−056613(JP,A)
【文献】 特表2007−532703(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0264662(US,A1)
【文献】 特開2005−248157(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0274843(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F6/00−246/00;301/00
C08C19/00−19/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリマーであって、
a)式(I)
【化1】
[式中、R=C2n+1(n=1〜6)であり、かつ
x=6〜10である]の1種以上の化合物に由来する単位、前記コポリマーの全質量を基準として、0.1質量%〜20質量%、
および
b)アルキル基が炭素原子1〜40個を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位、前記コポリマーの全質量を基準として、60質量%〜99.9質量%
を含み、7.3kg/mol〜109kg/molの質量平均分子量Mを有する、前記コポリマー、ただし含フッ素コポリマーを除く。
【請求項2】
コポリマーであって、
a)式(I)
【化2】
[式中、R=HまたはC2n+1(n=1〜6)であり、かつ
x=6〜10である]の1種以上の化合物に由来する単位、前記コポリマーの全質量を基準として、0.1質量%〜20質量%、
b)アルキル基が炭素原子1〜40個を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位、前記コポリマーの全質量を基準として、60質量%〜97質量%、
および
c)式C2n[式中、n=8〜12である]の1種以上の非官能化α−オレフィンに由来する単位
を含み、7.3kg/mol〜109kg/molの質量平均分子量Mを有する、前記コポリマー、ただし含フッ素コポリマーを除く。
【請求項3】
式(I)の1種以上の化合物に由来する前記単位中で、R=CHである、請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項4】
式(I)の1種以上の化合物に由来する前記単位中で、x=8である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項5】
前記コポリマーが、式(I)の1種以上の化合物に由来する前記単位を、前記コポリマーの全質量を基準として、0.5質量%〜20質量%の全量で含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項6】
前記コポリマーが、1種以上のアルキル(メタ)アクリレートに由来する前記単位を、前記コポリマーの全質量を基準として、60質量%〜97質量%の全量で含む、請求項に記載のコポリマー。
【請求項7】
1種以上のアルキル(メタ)アクリレートに由来する前記単位が、
(i)式(II)
【化3】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、Rは、炭素原子1〜6個を有する線状、分岐状または環状のアルキル基を意味する]の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する単位、アルキル(メタ)アクリレートの全質量を基準として、0〜40質量%、
および
(ii)式(III)
【化4】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、Rは、炭素原子7〜15個を有する線状、分岐状または環状のアルキル基を意味する]の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する単位、アルキル(メタ)アクリレートの全質量を基準として、少なくとも10質量%、
および
(iii)式(IV)
【化5】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、Rは、炭素原子16〜40個を有する線状、分岐状または環状のアルキル基を意味する]の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する単位、アルキル(メタ)アクリレートの全質量を基準として、0〜40質量%
を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項8】
1種以上のアルキル(メタ)アクリレートに由来する前記単位が、式(III)
【化6】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、Rは、炭素原子7〜15個を有する線状、分岐状または環状のアルキル基を意味する]の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する少なくとも2種の異なる単位を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項9】
前記コポリマーが、式C2n[式中、n=8〜12である]の1種以上の非官能化α−オレフィンに由来する単位を、前記コポリマーの全質量を基準として、0.5質量%〜40質量%の全量で含む、請求項2に記載のコポリマー。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に定義されたコポリマーの製造方法であって、
モノマーの混合物を共重合する工程を含み、前記モノマー混合物が、
a.式(I)
【化7】
[式中、R=HまたはC2n+1(n=1〜6)であり、かつ
x=6〜10である]の1種以上の化合物、
b.アルキル基が炭素原子1〜40個を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレート、および任意に
c.式C2n[式中、n=8〜12である]の1種以上の非官能化α−オレフィン
を含む、前記方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のコポリマーを含む、潤滑剤組成物。
【請求項12】
前記潤滑剤組成物の全質量を基準として、0.01質量%〜50質量%の前記コポリマーを含む、請求項11に記載の潤滑剤組成物。
【請求項13】
潤滑剤組成物における、摩耗を減少させるための、請求項1〜9のいずれか1項に記載のコポリマーの使用。
【請求項14】
自動変速機油、無段変速機油、エンジン油、ギヤー油、または作動油としての、請求項11または12に記載の潤滑剤組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コポリマー、これらのコポリマーの製造方法、潤滑剤組成物における摩耗を減少させるためのこれらのコポリマーの使用、これらのコポリマーを含む潤滑剤組成物、および自動変速機油、無段変速機油、エンジン油、ギヤー油、または作動油としてのこれらの潤滑剤組成物の使用に関する。
【0002】
技術水準
潤滑剤は、表面間の摩擦を減少させる組成物である。2つの表面間の運動の自由を可能にし、かつ該表面の機械的摩耗を減少させることに加えて、潤滑剤は、該表面の腐食を抑制することもできるおよび/または熱または酸化による該表面の損傷を抑制することもできる。潤滑剤組成物の例は、エンジン油、変速機油、ギヤー油、工業用潤滑油、および金属加工油を包含するが、しかしこれらに限定されない。
【0003】
典型的な潤滑剤組成物は、ベースオイルおよび任意に1種以上の添加剤を包含する。従来のベースオイルは、炭化水素、例えばミネラルオイルである。多種多様な添加剤を、該潤滑剤の意図した使用に応じて、該ベースオイルと組み合わせることができる。潤滑剤添加剤の例は、酸化防止剤、腐食防止剤、分散剤、極圧添加剤、消泡剤および金属不活性化剤を包含するが、しかしこれらに限定されない。
【0004】
潤滑剤の物理的および化学的な性質は、該潤滑剤の多様な成分の化学構造、該潤滑剤中の該成分の相対量、および該潤滑剤を形成するのに使用される加工技術の影響を受ける。例えば、該ベースオイルの化学構造は、該潤滑剤の全体的な物理的および化学的な性質の範囲を決定しうるものであり、その際に、その具体的な性質は、該潤滑剤組成物のその他の成分および/または該潤滑剤組成物が製造される方法の影響を受ける。該ベースオイルの化学構造の改変は、該ベースオイルを含有する潤滑剤の全体的な性質の範囲を変更することができる。
【0005】
例えばエンジン油またはギヤー油として使用するための潤滑剤組成物には、通常、それらの粘度に関する性質を改善するための補助添加剤が補われる。特に重要であるのは、該潤滑剤組成物の温度依存性の尺度となる粘度指数の改善である。高い粘度指数は、所定の温度範囲にわたる粘度の変動があまりないことを示す。したがって、高い粘度指数を有する潤滑剤組成物は、エンジンの冷間始動段階中ならびに該エンジンがその動作温度に達した際に、適切な粘度を有することになる。このことは、該エンジンの燃料効率を改善する。それというのも、該潤滑剤は、該冷間始動段階中でさえも摩擦損失を減少させることができるからである。
【0006】
ポリアルキルアクリレートは、潤滑油組成物用のありふれたポリマー添加剤である。該アクリレートモノマーのエステル官能基中の長いアルキル鎖(典型的な鎖長:C8〜C18)は、無極性溶剤、例えばミネラルオイルへの、良好な溶解度をポリアルキルアクリレートに付与する。該添加剤の通常の使用分野は、作動油、ギヤーボックス油またはエンジン油である。粘度指数(VI)最適化作用は、該ポリマーによるものであり、VI向上剤の名称はこれに由来している。高い粘度指数は、油が、高温(例えば70℃〜140℃の典型的な範囲内)で相対的に高い粘度を、かつ低温(例えば−60℃〜20℃の典型的な範囲内)で相対的に低い粘度を有することを意味する。高温での油の改善された潤滑性は、それ以外は同じ動粘度を、例えば40℃で有するポリアクリレート不含の油に比べて、上昇した温度範囲におけるより高い粘度によってもたらされる。同時に、例えば、エンジンの冷間始動段階中に存在するような、相対的に低い温度でのVI向上剤の利用の場合に、より低い粘度が、それ以外は同じ動粘度を100℃で有する油に比較して示される。したがって、エンジンの始動段階中の該油のより低い粘度の結果として、冷間始動が実質的に容易になる。
【0007】
最近、VI最適化に加えて、付加的な性質、例えば分散性を提供するポリアクリレート系が潤滑剤工業において確立されてきている。単独でまたは分散目的のために特に使用される分散剤−防止剤(DI)添加剤と共に、そのようなポリマーはとりわけ、該油への応力の結果として生じる酸化生成物が、不利な粘度上昇にあまり寄与しないという効果を有する。改善された分散性によって、潤滑油の寿命を延ばすことができる。それらの洗浄剤作用によって、そのような添加剤は同様に、例えばそのピストン清浄性またはリングスティックにより表現される、エンジン清浄性が好影響を受けるという効果を有する。酸化生成物は、例えば、すすまたはスラッジである。分散性をポリアクリレートに付与するために、窒素含有官能基が、該ポリマーの側鎖中へ組み込まれてよい。潤滑剤における分散性のために挙げられるモノマータイプのさらなる種類は、そのエステル置換基中にエトキシレートまたはプロポキシレートを有する官能基を有するアクリレートの種類である。該分散性モノマーは、該ポリマー中にランダムに存在していてよい、すなわち、古典的な共重合において、該ポリマー中へ組み込まれるか、さもなければポリアクリレート上へグラフトされて、非ランダム構造を有する系となるかのいずれかである。
【0008】
今まで、分散性およびVI改善に関する公知の利点に加えて、摩耗減少に関する利点も提供する、すなわち、耐摩耗性を有する、ポリアルキル(メタ)アクリレートを対象にした研究はなかった。
【0009】
欧州特許第1633793号明細書(EP 1 633 793 B1)には、官能化ポリα−オレフィンが記載されており、ここでは、炭素原子少なくとも10個を有するα−オレフィンモノマーが、官能基を有するα−オレフィンと共重合される。これらのポリα−オレフィンは、多様な溶剤へのそれらの増大した溶解性のために有用であるといわれている。
【0010】
米国特許出願公開第2014/0274843号明細書(US 2014/0274843 A1)、米国特許出願公開第2014/0274844号明細書(US 2014/0274844 A1)および米国特許出願公開第2012/0245063号明細書(US 2012/0245063 A1)には、α−オレフィンと、末端官能基を有するα−オレフィンとのコポリマーが記載されている。記載されたコポリマーは、低い粘度を有し、潤滑剤として有用であるといわれている。特に、米国特許出願公開第2014/0274844号明細書(US 2014/0274844 A1)には、α−オレフィンおよびω−不飽和酸エステルのコポリマーを含む潤滑組成物が開示されている。該コポリマーは、低温および高温での改善された粘度性能および改善された熱酸化安定性を提供する。耐摩耗性は述べられていない。
【0011】
欧州特許出願公開第1531176号明細書(EP 1531176)には、改善されたエンジン性能および耐摩耗性を提供する分散剤を含む潤滑組成物が開示されている。該分散剤は、ヒドロカルビル置換アミン含有化合物である。
【0012】
米国特許第8349779号明細書(US 8,349,779 B2)には、潤滑剤組成物における補助成分として有用である水素結合供与性官能基を有するポリマーが記載されている。該官能基は、重合後のポリマー主鎖に、官能基をもつモノマーをグラフトすることにより、付加される。該グラフト工程は、該ポリマーに付加することができる官能基の量を制限し、かつグラフト位置および密度を制御することができない。さらに、粘度は、グラフト技術では容易に制御されない。
【0013】
したがって、本発明の課題は、潤滑油組成物において、それらの粘度指数(VI)作用についてだけでなく、それらの分散性および/または清浄性、および摩耗挙動へのそれらの好影響についても顕著である、コポリマーを提供することであった。
【0014】
発明の要約
これらの課題、ならび明示的に述べられていないが、しかし本明細書の導入部によって議論された関係から直接的に誘導または認識できるさらなる課題は、以下のものを含むコポリマーによって達成される:
a)式(I)
【化1】
[式中、R=HまたはC2n+1(n=1〜6)であり、かつ
x=6〜10である]の1種以上の化合物に由来する単位、該コポリマーの全質量を基準として、0.1質量%〜20質量%、
および
b)アルキル基が炭素原子1〜40個を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位、該コポリマーの全質量を基準として、60質量%〜99.9質量%。
【0015】
発明の利点
末端に酸またはエステル官能基を有する式(I)の化合物に由来する1個の単位または1個を超える単位を含むコポリマーが、潤滑剤組成物に添加される際に改善された摩耗性能を提供することが、意外なことに見出された。該官能基と該ポリマー主鎖との間にアルキルスペーサーを用いることにより、高い性能が低い官能化度で達成される、すなわち、所望の摩耗性能を達成するためのモノマーがあまり必要とされない。
【0016】
これらのコポリマーを得るための共重合は、グラフト工程、多量の開始剤および/または長い反応時間を必要とする製造技術に比べて、はるかに容易である。
【0017】
従来技術のポリα−オレフィンとは異なり、本発明のコポリマーは、より高い分子量およびより高い粘度で製造することができる。さらに、共重合反応は、良好に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明によるコポリマーと比較ポリマーとの平均摩耗痕直径を比較する棒グラフ。
図2】本発明によるコポリマーのオレフィン含量と動粘度との相関関係を示す図。
図3】本発明によるコポリマーのオレフィン含量と質量平均分子量との相関関係を示す図。
図4】本発明によるコポリマーの質量平均分子量と動粘度との相関関係を示す図。
図5】本発明によるコポリマーの10−ウンデセン酸含量と摩耗痕との相関関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のコポリマーは、一成分として、式(I)
【化2】
[式中、R=HまたはC2n+1(n=1〜6)であり、かつx=6〜10である]の1種以上の化合物に由来する単位0.1質量%〜20質量%を含有する。これらの化合物は、広く公知であり、かつ例えば8−ノネン酸、メチル8−ノネノエート、9−デセン酸、メチル9−デセノエート、10−ウンデセン酸、メチル10−ウンデセノエート、11−ドデセン酸、メチル11−ドデセノエート、12−トリデセン酸、メチル12−トリデセノエートを包含する。
【0020】
本発明の一態様によれば、式(I)の1種以上の化合物に由来する単位中で、R=HまたはCH、より好ましくはR=Hであることが好ましい。
【0021】
本発明の別の態様によれば、式(I)の1種以上の化合物に由来する単位中で、x=8であることが好ましい。
【0022】
本発明のコポリマーは、さらなる成分として、アルキル基が炭素原子1〜40個を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位60質量%〜99.9質量%を含有する。
【0023】
アルキル(メタ)アクリレートという用語は、アルキルメタクリレートおよびアルキルアクリレートならびにそれらの混合物を包含する。これらのモノマーは、当該技術分野において周知である。該エステル化合物のアルキル基は、線状、環状または分岐状であってよい。該アルキル基は、炭素原子1〜40個、好ましくは5〜30個およびより好ましくは7〜15個を有する。該モノマーは、個々にかまたは異なるアルキル(メタ)アクリレートモノマーの混合物として使用することができる。
【0024】
本発明の一態様によれば、1種以上のアルキル(メタ)アクリレートに由来する該単位は、式(II)
【化3】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、Rは、炭素原子1〜6個、好ましくは1〜5個、より好ましくは炭素原子1〜3個を有する線状、分岐状または環状のアルキル基を意味する]の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来している単位を含んでいてよい。
【0025】
式(II)によるモノマーの例は、その中でも、飽和アルコールに由来する(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレートおよびヘキシル(メタ)アクリレート;シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えばシクロペンチル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートである。好ましくは、該ポリマーは、メチルメタクリレートに由来している単位を含む。
【0026】
本発明により使用されるアルキル(メタ)アクリレートに由来する該単位は、アルキル(メタ)アクリレートの全質量を基準として、0質量%〜40質量%、好ましくは0.1質量%〜30質量%、特に0.5質量%〜20質量%の、式(II)の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する単位を含んでいてよい。
【0027】
本発明の別の態様によれば、1種以上のアルキル(メタ)アクリレートに由来する該単位は、式(III)
【化4】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、Rは、炭素原子7〜15個を有する線状、分岐状または環状のアルキル基を意味する]の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来している単位を含んでいてよい。
【0028】
成分(III)の例は、飽和アルコールに由来する(メタ)アクリレート、例えば2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−tert−ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート;不飽和アルコールに由来する(メタ)アクリレート、例えばオレイル(メタ)アクリレート;シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば環置換基を有するシクロヘキシル(メタ)アクリレート、例えばtert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートおよびトリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレートおよびイソボルニル(メタ)アクリレートを包含する。
【0029】
本発明により使用されるアルキル(メタ)アクリレートに由来する該単位は、該アルキル(メタ)アクリレートの全質量を基準として、少なくとも10質量%、殊に少なくとも20質量%の、式(III)の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位を含んでいてよい。本発明の好ましい態様によれば、アルキル(メタ)アクリレートに由来する該単位は、アルキル(メタ)アクリレートの全質量を基準として、約25質量%〜100質量%、より好ましくは約70質量%〜100質量%の、式(III)によるモノマーに由来する単位を含む。
【0030】
さらに、1種以上のアルキル(メタ)アクリレートに由来する該単位は、式(IV)
【化5】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、Rは、炭素原子16〜40個、好ましくは炭素原子16〜30個を有する線状、分岐状または環状のアルキル基を意味する]の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来している単位を含んでいてよい。
【0031】
成分(IV)の例は、飽和アルコールに由来する(メタ)アクリレート、例えばヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレートおよび/またはエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレート;シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば2,4,5−トリ−t−ブチル−3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3,4,5−テトラ−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを包含する。
【0032】
本発明により使用されるアルキル(メタ)アクリレートに由来する該単位は、該アルキル(メタ)アクリレートの全質量を基準として、0質量%〜40質量%、好ましくは0.1質量%〜30質量%、特に0.5質量%〜20質量%の、式(IV)の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する単位を含んでいてよい。
【0033】
本発明の好ましい別の態様によれば、1種以上のアルキル(メタ)アクリレートに由来する該単位は、
(i)式(II)
【化6】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、Rは、炭素原子1〜6個を有する線状、分岐状または環状のアルキル基を意味する]の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する単位、アルキル(メタ)アクリレートの全質量を基準として、0〜40質量%、
および
(ii)式(III)
【化7】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、Rは、炭素原子7〜15個を有する線状、分岐状または環状のアルキル基を意味する]の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する単位、アルキル(メタ)アクリレートの全質量を基準として、少なくとも10質量%、
および
(iii)式(IV)
【化8】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、Rは、炭素原子16〜40個を有する線状、分岐状または環状のアルキル基を意味する]の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する単位、アルキル(メタ)アクリレートの全質量を基準として、0〜40質量%
を含む。
【0034】
本発明のさらに好ましい態様によれば、1種以上のアルキル(メタ)アクリレートに由来する該単位は、式(III)
【化9】
[式中、Rは、水素またはメチルであり、Rは、炭素原子7〜15個を有する線状、分岐状または環状のアルキル基を意味する]の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する少なくとも2種の異なる単位を含む。
【0035】
本発明のコポリマーは、任意成分として、式C2n[式中、n=8〜12、好ましくはn=10である]の1種以上の非官能化α−オレフィンに由来する単位を含有する。これらの化合物は、広く公知であり、かつ例えば1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンを包含する。
【0036】
本発明によれば、該コポリマーは、式(I)の1種以上の化合物に由来する単位を、該コポリマーの全質量を基準として、0.1質量%〜20質量%、より好ましくは0.5質量%〜20質量%の全量で含む。
【0037】
本発明によれば、該コポリマーは、1種以上のアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位を、該コポリマーの全質量を基準として、60質量%〜99.9質量%、より好ましくは60質量%〜97質量%の全量で含む。
【0038】
本発明の好ましい態様によれば、該コポリマーは、式C2n[式中、n=8〜12である]の1種以上の非官能化α−オレフィンに由来する単位を、該コポリマーの全質量を基準として、0.5質量%〜40質量%、好ましくは0.5質量%〜30質量%、より好ましくは3質量%〜30質量%の量で含む。
【0039】
本発明のコポリマーを製造する方法は、モノマーの混合物を共重合する工程を含み、ここで、該モノマー混合物は、
a.式(I)
【化10】
[式中、R=HまたはC2n+1(n=1〜6)であり、かつ
x=6〜10である]の1種以上の化合物、
b.アルキル基が炭素原子1〜40個を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレート、および任意に
c.式C2n[式中、n=8〜12である]の1種以上の非官能化α−オレフィン
を含む。
【0040】
本発明は、本明細書に記載されたようなコポリマーを含む潤滑剤組成物にも関する。
【0041】
本発明の好ましい態様によれば、該潤滑剤組成物は、該潤滑剤組成物の全質量を基準として、0.01質量%〜50質量%、より好ましくは0.05質量%〜40質量%、よりいっそう好ましくは2質量%〜15質量%、最も好ましくは4質量%〜12質量%の、本発明によるコポリマーを含む。
【0042】
好ましくは、該潤滑剤組成物は、ベースオイルを含む。本発明の改良された潤滑油組成物に配合するのに使用されるベースオイルは、例えば、グループI、グループIIおよびグループIIIとして公知のAPI(American Petroleum Institute;米国石油協会)ベースストックカテゴリーから選択される、従来のベースストックを包含する。該グループIおよびIIベースストックは、120未満の粘度指数(またはVI)を有するミネラルオイル材料(例えばパラフィン系およびナフテン系油)であり;グループIは、さらに、グループIIとは、後者のグループIIが90%以上の飽和材料を含有し、かつ前者のグループIが90%未満の飽和材料(すなわち、10%を超える不飽和材料)を含有する点で区別される。グループIIIは、120以上のVIおよび90%以上の飽和分レベルを有する最高レベルのミネラルベースオイルとみなされる。好ましくは、本発明の潤滑油組成物中に包含されるベースオイルは、APIグループIIおよびIIIベースオイルからなる群から選択される。最も好ましくは、該潤滑剤組成物は、APIグループIIIベースオイルを含む。
【0043】
本発明はさらに、潤滑剤組成物における摩耗を減少させるための本明細書に記載されるようなコポリマーの使用、および自動変速機油、無段変速機油、エンジン油、ギヤー油、または作動油としての本明細書に記載されるようなポリマーを含む潤滑剤組成物の使用に関する。
【0044】
本発明はさらに、以下の例によって説明されるが、しかしながらこれらの例に限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
例1
メチル10−ウンデセノエート70gおよび1−デセン137gを、1L四つ口丸底フラスコ中に装入した。反応混合物を、C−撹拌棒を用いて撹拌し、窒素で不活性化し、かつ140℃に加熱した。モノマーフィードは、C12〜C15メタクリレート493gを含んでいた。開始剤フィードは、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン9.4gであった。該混合物が設定値温度に達したら、7時間のワンパスでのモノマーフィードおよび11時間のワンパスでの開始剤フィードを開始した。残存モノマーを、生じたポリマーについてガスクロマトグラフィーにより測定して、完全なモノマー転化を確実にした。未反応α−オレフィンモノマーの残量を、回転蒸発器により100℃および圧力15mmHg未満で除去した。
【0046】
例2〜13
例2〜13を、例1と同じようにして製造したが、ただし、モノマーの質量比を、第1表に従って変更した。該α−オレフィンモノマーを常に最初に該反応器に装入し、かつ該(メタ)アクリレートモノマーおよび該開始剤を、設定期間にわたって供給した。分子量および動粘度は、多様なモノマー&開始剤フィード時間を用いてまたは該反応混合物中でのより大きな分率のα−オレフィンを使用することにより、制御することができる。例えば、例6および13は、同じ反応混合物を有する。該モノマーフィード時間を7時間(例6)から5時間(例13)まで変更することにより、動粘度は、206cStから321cStまで増大し、このことは、9400g/molから14700g/molへの質量平均分子量の変化にも反映される。
【0047】
該反応混合物中のα−オレフィンの量も、分子量および動粘度に大いに影響を及ぼす。このことは図2および3にも図示されている。該反応混合物中のα−オレフィンの量が増加するにつれて、質量平均分子量および動粘度は減少する。これは、該組成物中にメタクリレートモノマーを添加する必要性も説明するので、得られたポリマーは、該油配合物において増粘を提供することができる。
【0048】
比較例1
比較例1を、例1と同じようにして製造したが、ただし、その質量比またはモノマーは第1表に従った。
【0049】
比較例2
比較例2は、商業的に入手可能な高粘度のグループIVベースフルード(Synfluid(登録商標) PAO100)であって、1−デセンのホモポリマーである。
【0050】
比較例3
比較例3を、米国特許第8349779号明細書(US 8,349,779 B2)に従って、氷状メタクリル酸を用いて製造し、これは、COOH酸基を有するが、しかしそのメタクリレート基間にアルキルスペーサーを有していないモノマーである。
【0051】
比較例4
比較例4を、米国特許出願公開第2012/0245063号明細書(US 2012/0245063 A1)の例6に従って製造した。
【0052】
該ポリマーの動粘度を、ASTM D 445に従って逸脱することなく測定した。該ポリマーの質量平均分子量を、ポリ(メチルメタクリレート)標準を用いて校正されたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として使用する。
【0053】
四球試験を、DIN 51350第5部に従って荷重300Nで実施した。使用された構成は、DIN 51350第1部に記載されたとおりであった。該試験後に、摩耗痕をデジタルカメラにより測定し、かつ平均結果を計算した。
【0054】
該ポリマー組成および対応する試験結果は、第1表にまとめられている。
【0055】
【表1】
【0056】
省略形:
cSt=センチストークス
AMA=アルキルメタクリレート
PAO=ポリα−オレフィン
IDMA=イソデシルメタクリレート
LIMA=LIAL 125アルコールから製造されたメタクリレートエステル
PAO2=Synfluid(登録商標) PAO2(商業的に入手可能な低粘度のグループIVベースオイルであって、1−デセンダイマーである)
PAO100=Synfluid(登録商標) PAO100(商業的に入手可能な高粘度のグループIVベースオイルであって、1−デセンのホモポリマーである)。
【0057】
例1〜13は、酸/エステル末端官能性モノマーを有する本発明のコポリマーの改善された摩耗性能を実証する。性能は、7.3kg/mol〜109kg/molのMおよび73cSt〜>5000cStの幅広い範囲により示されるように、分子量または粘度による悪影響を受けない。PAO2についての摩耗痕直径は1.04mmであり、かつ例1〜13について摩耗痕直径は、0.39mm〜0.7mmにわたっている。
【0058】
比較例1は、末端官能性COORまたはCOOH基を有していないα−オレフィン−co−アルキルメタクリレートコポリマーである。摩耗痕は、このポリマーを用いて減少しうるが、しかし本発明のコポリマーを用いた場合ほど低くはない。
【0059】
比較例2は、高粘度のグループIVポリα−オレフィンベースフルード(PAO100)である。また、摩耗痕は、このポリマーを用いて減少しうるが、しかし、極性基(例えば、COORエステル基)が該ポリマー中に存在しないので、あるベースストックおよびパッケージ成分との混和性は限定される。さらに、1−デセンまたは類似のα−オレフィンの高粘度または高分子量のコポリマーを製造することが困難であることは、当該技術分野において周知である。対照的に、本発明のCOOH官能性ポリマーが、より良好な摩耗痕の結果を達成することが意外なことに見出された。さらに、本発明のポリマーは、匹敵するかまたはよりいっそう高い分子量および動粘度を達成する。
【0060】
比較例1は、例6〜13と比較することができる。ここでは、該反応混合物中の、官能基を有していないα−オレフィンである1−デセンの一部が、該COOH末端官能性α−オレフィンで置き換えられる。該末端官能性モノマーを有する本発明のポリマーを用いることによる摩耗性能の劇的な増大は目下明らかである。平均摩耗痕は、0.75mmから0.39mmに減少させることができる。
【0061】
比較例1は、エステル末端官能基を付加する場合に改善された摩耗性能を実証する例1〜5と比較することもできる。平均摩耗痕は、0.75mmから0.63mmに減少させることができる。
【0062】
そのCOOR官能基と主鎖との間のアルキルスペーサーの効果は、比較例1および例5を比較することによって示すこともできる。該ポリマーのメタクリレートモノマー部分は、摩耗性能に影響を及ぼしうるエステル官能基も有する。比較例1において、エステル官能基は、該ポリマー中へ該アルキルメタクリレートモノマー70%によって導入される。例5において、その配合表の該メタクリレート部分に由来するエステル官能基は60%であり、かつ付加的に10%が該末端官能性α−オレフィンに由来する。この比較において、該エステル官能基の10%は、該ポリマー主鎖の近くから側鎖上のアルキルスペーサーの末端へ移動されている。これに伴い、摩耗痕は、0.75mmから0.67mmに減少する。
【0063】
比較例3と、例6、7、9、12、および13との比較は、該ポリマー主鎖とCOOH官能基との間にアルキルスペーサー単位を有するモノマーの使用が、摩耗性能を大いに増大させることを示す。比較例3は、氷状メタクリル酸(GMAA)3質量%を使用し、ここで、COOH基は、該ポリマー主鎖に直接結合される。例6、7、9、12および13は、10−ウンデセン酸3質量%を使用し、ここで、COOH基は、該オレフィンモノマーの末端上にあり、それによって該ポリマー主鎖と該官能基との間に8個の炭素スペーサー単位を有する。ここで、GMAAを有する該ポリマーは、耐摩耗性能を示すが、しかし、同じ量のCOOH官能性モノマーを有する本発明によるポリマーほどではない。例10および11は、よりいっそう少ない量の10−ウンデセン酸、すなわち0.5質量%および1.0質量%のみを有し、かつGMAAを含有する該ポリマーとちょうど同じ(例11)またはそれよりも良好に(例10)、機能する。
【0064】
比較例4は、米国特許出願公開第2012/0245063号明細書(US 2012/0245063 A1)を模倣する。このポリマーは、改善された耐摩耗性能を有するけれども、このポリマーを得る方法は、その反応混合物に対して開始剤>20質量%を使用することを包含する。それは、極めて低い粘度および質量平均分子量も示し、ひいては粘度向上剤として使用することができない、それというのも、このポリマーの動粘度は16.6cStに過ぎないからである。さらに、このことは、グループIベースオイル中のこのポリマー30質量%の添加により実証され、ここで、そのブレンドの粘度は、100℃で測定して、5.4cStから7.6cStに増大するに過ぎない。さらに、このポリマーは、該酸官能性モノマー13質量%を含有するが、それでも例6〜9および12〜13による本発明によるポリマーほどに機能しない。
【0065】
図1は、全ての例の平均摩耗痕直径を示す棒グラフである。摩耗痕試験を、PAO2グループIV(ポリα−オレフィン)ベースフルード中の該試料2質量%のブレンドを用いて実施した。
【0066】
図2は、反応混合物中のα−オレフィン含量への、100℃での動粘度の依存を説明する。該反応混合物中のα−オレフィンの量の増加は、100℃での動粘度を低下させる。これらの例について、全α−オレフィン含量は、各反応混合物中の1−デセン、10−ウンデセン酸、およびメチル10−ウンデセノエートの和に等しい。
【0067】
図3は、反応混合物中のα−オレフィン含量への、質量平均分子量の依存を説明する。該反応混合物中のα−オレフィンの量の増加は、質量平均分子量を低下させる。
【0068】
図4は、100℃での動粘度(KV100)と質量平均分子量との関係を示す。
【0069】
図5は、該反応混合物中の該末端官能性モノマーの添加による摩耗痕直径の減少に対する効果を説明する。該反応混合物中の10−ウンデセン酸の量の増加は、摩耗痕直径を減少させる。
図1
図2
図3
図4
図5