特許第6775640号(P6775640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャープ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6775640-グレイコードカウンタ 図000004
  • 特許6775640-グレイコードカウンタ 図000005
  • 特許6775640-グレイコードカウンタ 図000006
  • 特許6775640-グレイコードカウンタ 図000007
  • 特許6775640-グレイコードカウンタ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775640
(24)【登録日】2020年10月8日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】グレイコードカウンタ
(51)【国際特許分類】
   H03K 23/00 20060101AFI20201019BHJP
   G06F 1/06 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   H03K23/00 Z
   G06F1/06
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-111912(P2019-111912)
(22)【出願日】2019年6月17日
(65)【公開番号】特開2020-48183(P2020-48183A)
(43)【公開日】2020年3月26日
【審査請求日】2019年6月17日
(31)【優先権主張番号】62/732,229
(32)【優先日】2018年9月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】青木 英治
(72)【発明者】
【氏名】森川 佳直
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0195682(US,A1)
【文献】 特公平6−12878(JP,B2)
【文献】 特開平6−53818(JP,A)
【文献】 特開2002−111482(JP,A)
【文献】 特開2003−283331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K21/00−21/40
H03K23/00−23/86
G06F1/04−1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されるクロック信号に基づいてグレイコードを生成するグレイコード生成回路を備えた複数の回路ブロックを備え、複数の前記回路ブロックそれぞれから出力されたグレイコードを、1以上の各桁にそれぞれ対応させることによって統合した出力グレイコードを出力するグレイコードカウンタであって、
複数の前記回路ブロックの少なくとも1つが、入力されるクロック信号に基づいて、次段の前記回路ブロックに入力するクロック信号を生成するクロック信号生成回路と、
すべての前記回路ブロックからのグレイコードを、1段目の前記回路ブロックに入力されるクロック信号に基づいて同期する同期回路とを備えたグレイコードカウンタ。
【請求項2】
nを2以上の整数として、各前記回路ブロックが、自身に入力されるクロック信号に基づいて、最小値から最大値までを周期的に変動するnビットのグレイコードを出力し、前記回路ブロックの少なくとも1つが、自身に入力されるクロック信号よりも、2のn乗倍の周期を有するクロック信号を次段の前記回路ブロックに入力する請求項1に記載のグレイコードカウンタ。
【請求項3】
mを2以上の整数として、m個の前記回路ブロックを備え、1段目からm段目までの前記回路ブロックからのグレイコードを順に1以上の各桁にそれぞれ対応させることによって統合して、n×mビットの出力グレイコードを出力する請求項2に記載のグレイコードカウンタ。
【請求項4】
入力されるクロック信号に基づいてグレイコードを生成するグレイコード生成回路を備えた複数の回路ブロックを備え、複数の前記回路ブロックそれぞれから出力されたグレイコードを、1以上の各桁にそれぞれ対応させることによって統合した出力グレイコードを出力するグレイコードカウンタであって、
複数の前記回路ブロックの少なくとも1つが、入力されるクロック信号に基づいて、次段の前記回路ブロックに入力するクロック信号を生成するクロック信号生成回路を備え、
2段目以降の前記回路ブロックの少なくとも1つの前記回路ブロックが、前段までの前記回路ブロックからのグレイコードと、自身において出力されるグレイコードと、次段の前記回路ブロックへ入力するクロック信号とを、1段目の前記回路ブロックに入力されるクロック信号に基づいて同期する同期回路をそれぞれ備えたグレイコードカウンタ。
【請求項5】
前記同期回路が、前段までの前記回路ブロックからのグレイコードと、自身を備えた前記回路ブロックにおいて出力されるグレイコードとを1以上の各桁にそれぞれ対応させることによって統合したグレイコードを生成する請求項に記載のグレイコードカウンタ。
【請求項6】
前段の前記回路ブロックから入力されるクロック信号に対する、自身において出力されるグレイコードと、次段の前記回路ブロックへ入力するクロック信号との遅延と同等の遅延を、前段の前記回路ブロックから入力されるグレイコードに発生させる遅延回路と、
遅延回路によって遅延された遅延グレイコードと、自身において出力されるグレイコードと、次段の前記回路ブロックへ入力するクロック信号とを、1段目の前記回路ブロックに入力されるクロック信号に基づいて同期する1段以上のフリップフロップ回路とをさらに備え、
最終段の前記フリップフロップ回路に入力される信号は、1段目の前記回路ブロックに入力されるクロック信号に対して、遅延が低減されている請求項に記載のグレイコードカウンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック信号からグレイコードを生成するグレイコードカウンタに関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1には、各々グレイコードを生成する複数の回路ブロックを備え、複数の回路ブロックからのグレイコードを統合して、多ビットのグレイコードを出力するグレイコードカウンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−53818号公報(1994年2月25日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1においては、カウント可能な最大ビット数を増加させるために、上述の複数の回路ブロックの個数を増加させた場合、当該回路ブロックの増加数に応じて、消費電力が単調に増加する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の一実施形態は、入力されるクロック信号に基づいてグレイコードを生成するグレイコード生成回路を備えた複数の回路ブロックを備え、複数の前記回路ブロックそれぞれから出力されたグレイコードを、1以上の各桁にそれぞれ対応させることによって統合した出力グレイコードを出力するグレイコードカウンタであって、
複数の前記回路ブロックの少なくとも1つが、入力されるクロック信号に基づいて、次段の前記回路ブロックに入力するクロック信号を生成するクロック信号生成回路と、
すべての前記回路ブロックからのグレイコードを、1段目の前記回路ブロックに入力されるクロック信号に基づいて同期する同期回路とを備えるグレイコードカウンタ。
【0006】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、nを2以上の整数として、各前記回路ブロックが、自身に入力されるクロック信号に基づいて、最小値から最大値までを周期的に変動するnビットのグレイコードを出力し、前記回路ブロックの少なくとも1つが、自身に入力されるクロック信号よりも、2のn乗倍の周期を有するクロック信号を次段の前記回路ブロックに入力するグレイコードカウンタ。
【0007】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(2)の構成に加え、mを2以上の整数として、m個の前記回路ブロックを備え、1段目からm段目までの前記回路ブロックからのグレイコードを順に1以上の各桁にそれぞれ対応させることによって統合して、n×mビットの出力グレイコードを出力するグレイコードカウンタ。
【0008】
)また、本発明のある実施形態は、入力されるクロック信号に基づいてグレイコードを生成するグレイコード生成回路を備えた複数の回路ブロックを備え、複数の前記回路ブロックそれぞれから出力されたグレイコードを、1以上の各桁にそれぞれ対応させることによって統合した出力グレイコードを出力するグレイコードカウンタであって、複数の前記回路ブロックの少なくとも1つが、入力されるクロック信号に基づいて、次段の前記回路ブロックに入力するクロック信号を生成するクロック信号生成回路を備え、2段目以降の前記回路ブロックの少なくとも1つの前記回路ブロックが、前段までの前記回路ブロックからのグレイコードと、自身において出力されるグレイコードと、次段の前記回路ブロックへ入力するクロック信号とを、1段目の前記回路ブロックに入力されるクロック信号に基づいて同期する同期回路をそれぞれ備えるグレイコードカウンタ。
【0009】
)また、本発明のある実施形態は、上記()の構成に加え、前記同期回路が、前段までの前記回路ブロックからのグレイコードと、自身を備えた前記回路ブロックにおいて出力されるグレイコードとを1以上の各桁にそれぞれ対応させることによって統合したグレイコードを生成するグレイコードカウンタ。
【0010】
)また、本発明のある実施形態は、上記(4)の構成に加え、前段の前記回路ブロックから入力されるクロック信号に対する、自身において出力されるグレイコードと、次段の前記回路ブロックへ入力するクロック信号との遅延と同等の遅延を、前段の前記回路ブロックから入力されるグレイコードに発生させる遅延回路と、遅延回路によって遅延された遅延グレイコードと、自身において出力されるグレイコードと、次段の前記回路ブロックへ入力するクロック信号とを、1段目の前記回路ブロックに入力されるクロック信号に基づいて同期する1段以上のフリップフロップ回路とをさらに備え、最終段の前記フリップフロップ回路に入力される信号は、1段目の前記回路ブロックに入力されるクロック信号に対して、遅延が低減されているグレイコードカウンタ。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、回路ブロックの増加に伴う、消費電力の増加を低減したグレイコードカウンタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係るグレイコードカウンタのブロック図である。
図2】本発明の実施形態1に係る回路ブロックの等価回路図である。
図3】本発明の実施形態2に係るグレイコードカウンタのブロック図である。
図4】本発明の実施形態3に係るグレイコードカウンタのブロック図である。
図5】本発明の実施形態4に係るグレイコード生成部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
本明細書において、各図面の回路の信号線に付された符号は、当該信号線に印加された信号を示すものとする。また、後述するリセット信号RST0が印加される信号線等、各図面の信号線の一部は省略されている場合がある。なお、各図面の回路の信号線のうち、細線にて示す信号線には、1ビットのみの情報を有する信号が印加され、太線にて示す信号線には、複数ビットの情報を有する信号が印加される。
(グレイコードカウンタの構成概要)
図1は、本実施形態に係るグレイコードカウンタ1のブロック図である。本実施形態に係るグレイコードカウンタ1は、入力されたクロック信号に基づいて、当該クロック信号のクロック回数に対応するグレイコードを出力する。本実施形態においては、グレイコードカウンタ1に入力されるクロック信号を入力クロック信号CK0、グレイコードカウンタ1が出力するグレイコードを出力グレイコードD0とする。
【0014】
グレイコードカウンタ1は、複数の回路ブロックを備える。本実施形態においては、例として、グレイコードカウンタ1が、3つの回路ブロック11、12、および13を備える。以下、本明細書においては、特に指定の無い限り、回路ブロック11について説明を行い、同一の構成を他の回路ブロックについても適用できるとする。
【0015】
回路ブロック11は、リセット信号入力部RSTと、クロック信号入力部CKRと、クロック信号出力部CKGと、グレイコード出力部DGとを備える。
【0016】
回路ブロック11のクロック信号入力部CKRには、グレイコードカウンタ1に入力される入力クロック信号CK0が入力される。回路ブロック11は、入力クロック信号CK0に基づいて、クロック信号出力部CKGからのクロック信号CK1と、グレイコード出力部DGからのグレイコードD1とを出力する。クロック信号CK1とグレイコードD1との詳細な生成方法は後に詳述する。
【0017】
クロック信号CK1は、次段の回路ブロック12のクロック信号入力部CKRに入力される。回路ブロック12以降の回路ブロックにおいては、クロック信号入力部CKRに入力されたクロック信号から、クロック信号出力部CKGからのクロック信号と、グレイコード出力部DGからのグレイコードとを、回路ブロック11と同様に出力する。
【0018】
グレイコードカウンタ1は、各々の回路ブロックのリセット信号入力部RSTに、リセット信号RST0を入力してもよい。リセット信号RST0が入力された回路ブロックにおいては、当該回路ブロックにおける出力信号のビット値がリセットされてもよい。
(一段目のグレイコードビットおよびクロック信号)
本実施形態における回路ブロック11が出力するグレイコードD1およびクロック信号CK1について、下記表1を参照して詳細に説明する。表1は、回路ブロック11が出力するグレイコードD1およびクロック信号CK1を、入力クロック信号CK0の変化と併せて示す表である。
【0019】
【表1】
【0020】
なお、本実施形態においては、信号の状態を、ハイの信号を1、ローの信号を0として、ビット値に置き換えて示す。また、入力クロック信号CK0は、ビット値として、1と0とを交互にとる1ビットの信号であり、入力クロック信号CK0のビット値が0から1に変化する際に、カウントが1上昇するものとする。また、本実施形態においては、各回路ブロックは2ビットのグレイコードを出力するものとする。
【0021】
なお、表1における「カウント」の欄は、入力クロック信号CK0の変化に伴いカウントされたカウント数を、10進法にて示したものである。また、表1における「D10」および「D11」の欄は、回路ブロック11が出力したグレイコードの0桁目および1桁目である、グレイコードビットD10およびD11のビット値を示す。表1における「CK1」は、回路ブロック11から出力され、回路ブロック12に入力されるクロック信号CK1のビット値を示す。
【0022】
本実施形態においては、各回路ブロックが、入力されるクロック信号に基づいて、最小値から最大値までを周期的に変動するグレイコードを出力する。そのため、回路ブロック11においては、表1に示すように、カウント0から3にかけて、グレイコードが0から3に順に上昇し、カウント4から7にかけて、3から0に順にグレイコードが減少している。この後のカウントにおいても、回路ブロック11は、同一の周期にてグレイコードを出力する。
【0023】
さらに、回路ブロックが出力するグレイコードのビット数を2以上の整数であるnとすると、本実施形態における回路ブロックは、入力されるクロック信号と比較して、2のn乗倍の周期を有するクロック信号を出力する。例えば、回路ブロック11が出力するグレイコードのビット数は2ビットである。したがって、回路ブロック11においては、入力される入力クロック信号CK0と比較して、2の2乗倍、すなわち、4倍の周期を有するクロック信号CK1が、回路ブロック11から出力される。このため、クロック信号CK1のビット値は、表1の「CK1」の欄に示す通りとなる。
(回路ブロックの構成概要)
このようなグレイコードD1およびクロック信号CK1を生成する回路ブロック11の具体的な回路の例を、図2の等価回路図にて示す。なお、グレイコードビットD10およびD11とクロック信号CK1とのビット値を反転した否定信号を、それぞれ、否定グレイコードビットD10BおよびD11Bと否定クロック信号CK1Bとする。
【0024】
回路ブロック11は、図2に示すように、グレイコード生成回路20と、クロック信号生成回路21とを備える。グレイコード生成回路20は、フリップフロップ回路31と、フリップフロップ回路32と、論理回路40とを備える。クロック信号生成回路21は、フリップフロップ回路33を備える。
【0025】
論理回路40は、NAND回路41、42、43、および44を備える。NAND回路41に、否定グレイコードビットD10BとグレイコードビットD11とを入力することにより、NAND回路41から出力信号NS1が得られる。NAND回路42に、グレイコードビットD11と否定クロック信号CK1Bとを入力することにより、NAND回路42から出力信号NS2が得られる。NAND回路43に、グレイコードビットD10と否定グレイコードビットD11Bとクロック信号CK1とを入力することにより、NAND回路43から出力信号NS3が得られる。NAND回路44に、出力信号NS1と出力信号NS2と出力信号NS3とを入力することにより、NAND回路44から出力信号NS4が得られる。
【0026】
フリップフロップ回路31、32、および33は、何れも、クロックの立ち上がりに同期して入力信号を出力および保持する、Dタイプのフリップフロップ回路である。フリップフロップ回路31、32、および33は、それぞれ、信号入力部Dと、信号出力部Qと、否定信号出力部QBと、クロック信号入力部CKRと、リセット信号入力部RSTとを備える。
【0027】
フリップフロップ回路31、32、および33における、クロック信号入力部CKRには、自身の回路ブロックに入力されるクロック信号が入力される。本実施形態においては、回路ブロック11に入力される入力クロック信号CK0が、各フリップフロップ回路のクロック信号入力部CKRに入力される。同様に、各フリップフロップ回路のリセット信号入力部RSTには、リセット信号RST0が入力されてもよい。
【0028】
フリップフロップ回路31の信号入力部Dには、次段の回路ブロックに入力されるクロック信号が入力される。本実施形態においては、回路ブロック12に入力されるクロック信号CK1が、フリップフロップ回路31の信号入力部Dに入力される。この結果、フリップフロップ回路31の信号出力部Qからは、グレイコードビットD10が出力され、同様に、フリップフロップ回路31の否定信号出力部QBからは、否定グレイコードビットD10Bが出力される。
【0029】
フリップフロップ回路32の信号入力部Dには、論理回路40の出力信号が入力される。本実施形態においては、論理回路40から出力された出力信号NS4が入力される。この結果、フリップフロップ回路32の信号出力部Qからは、グレイコードビットD11が出力され、同様に、フリップフロップ回路32の否定信号出力部QBからは、否定グレイコードビットD11Bが出力される。
【0030】
フリップフロップ回路33の信号入力部Dには、否定グレイコードビットD10Bが入力される。この結果、フリップフロップ回路33の信号出力部Qからは、クロック信号CK1が出力され、同様に、フリップフロップ回路31の否定信号出力部QBからは、否定クロック信号CK1Bが出力される。
【0031】
上述のように生成されたグレイコードビットD10を0桁目、グレイコードビットD11を1桁目として統合することにより、グレイコードD1が得られる。したがって、グレイコード生成回路20がグレイコードD1を生成し、クロック信号生成回路21がクロック信号CK1を生成する。ゆえに、回路ブロック11から、グレイコードD1とクロック信号CK1とが出力される。
【0032】
なお、表1に示す値を有するグレイコードD1およびクロック信号CK1を生成する回路ブロック11の具体的な回路構成は、状態遷移図またはカルノー図等を使用して求めることが可能である。また、本実施形態においては、回路ブロック11が2ビットのグレイコードD1を出力する例を挙げたが、回路ブロック11は、これよりも多ビットのグレイコードを出力してもよい。この場合においても、状態遷移図またはカルノー図等を使用した一般的な求め方により、回路ブロック11を設計することができる。
(二段目の回路ブロック)
本実施形態において、回路ブロック12は、回路ブロック11と同一の構成を備える。ここで、回路ブロック12に入力されるクロック信号CK1は、入力クロック信号CK0の4倍の周期を有する。このため、回路ブロック12から出力されるグレイコードD2およびクロック信号CK2は、回路ブロック11から出力されるグレイコードD1およびクロック信号CK1の4倍の周期を有することとなる。
【0033】
回路ブロック11および12から出力される信号を、下記の表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
なお、表2においては、入力クロック信号CK0が0の値を取るタイミングの各信号の状態の図示を省略している。また、表1における「D20」および「D21」の欄は、回路ブロック12が出力したグレイコードの0桁目および1桁目である、グレイコードビットD20およびD21のビット値を示す。表1における「CK2」は、回路ブロック12から出力され、回路ブロック13に入力されるクロック信号CK2のビット値を示す。
【0036】
ここで、グレイコードビットD10、D11、D20、およびD21を、それぞれ0桁目から3桁目と見なし、4ビットのグレイコードとして統合したとする。この場合、表2からわかるように、カウント0から15にかけて、当該4ビットのグレイコードが0から15に順に上昇し、カウント16から31にかけて、15から0に順に4ビットのグレイコードが減少している。この後のカウントにおいても、回路ブロック11および12は、同一の周期にてグレイコードを出力する。
(三段目以降の回路ブロック)
さらに、本実施形態において、回路ブロック13は、回路ブロック11および12と同一の構成を備える。回路ブロック12は、クロック信号CK1の4倍の周期を有するクロック信号CK2を回路ブロック13に入力する。ここで、回路ブロック13が出力したグレイコードの0桁目および1桁目である、グレイコードビットD30およびD31を、それぞれ4桁目および5桁目と見なし、上述の4ビットのグレイコードと統合する。これにより、回路ブロック11、12、および13それぞれからの2ビットのグレイコードD1、D2、およびD3を統合した、合計6ビットの出力グレイコードD0を得ることができる。これにより、グレイコードカウンタ1は、入力クロック信号CK0から、出力グレイコードD0を生成する。
【0037】
なお、グレイコードカウンタ1が出力できる、出力グレイコードD0の最大の値まで、出力グレイコードD0がカウントされた場合、次いで、出力グレイコードD0は、当該最大の値からカウントダウンされる。しかしながら、実際には、出力グレイコードD0の最大の値まで出力グレイコードD0がカウントされる前に、必要なカウント数までグレイコードカウンタ1がカウントを行った段階において、出力グレイコードD0はリセットされてもよい。当該リセットは、リセット信号RST0が各回路ブロックに入力されることにより実現してもよい。
(グレイコードカウンタの奏する効果)
本実施形態においては、各回路ブロックは、前段の回路ブロックに入力されるクロック信号よりも2のn乗倍の周期を有するクロック信号に基づいて動作する。このため、各回路ブロックが備える論理回路のトランジスタは、前段の回路ブロックよりも、駆動される周期が長くなる。
【0038】
一般に、COMSトランジスタを含む同期式の論理回路の消費電力の大半は、当該論理回路に与えられるクロック信号の変化に応じて、論理回路内のトランジスタがオンまたはオフする際に、当該トランジスタに流れる電流に起因する。すなわち、論理回路のトランジスタが駆動される周期が長くなると、当該論理回路が消費する単位時間当たりの電力は低減される。
【0039】
つまり、本実施形態における各回路ブロックにおいて、一定時間に消費される電力は、前段の回路ブロックにおいて消費される電力よりも低減される。したがって、多ビットのグレイコードカウンタを構成するために回路ブロックの個数を増加させたとしても、消費電力の増加を低減することのできるグレイコードカウンタ1を実現できる。
【0040】
本実施形態においては、2段目以降の回路ブロックである、回路ブロック12および13に、前段の回路ブロックからのクロック信号が入力されている。しかし、これに限られず、本実施形態においては、2段目以降の回路ブロックの少なくとも1つの回路ブロックに前段の回路ブロックからのクロック信号が入力されていればよい。これにより、グレイコードカウンタ1は、上述した消費電力の増加を低減する効果を奏する。
【0041】
本実施形態においては、各回路ブロックが、自身に入力されるクロック信号に基づいて、最小値から最大値までを周期的に変動するnビットのグレイコードを出力する。さらに、本実施形態においては、各回路ブロックが、自身に入力されるクロック信号よりも、2のn乗倍の周期を有するクロック信号を、次段の回路ブロックに出力する。これにより、比較的簡素な回路構成によって、本実施形態に係るグレイコードカウンタ1を構成できる。
【0042】
本実施形態においては、グレイコードカウンタ1は上述した回路ブロックを複数個備える。例えば、グレイコードカウンタ1が備える回路ブロックの個数を2以上の整数であるmとする。これにより、グレイコードカウンタ1は、1段目からm段目までの各回路ブロックからのグレイコードを順に統合して、n×mビットのグレイコードを出力することができる。
【0043】
本実施形態においては、nビットを発生する回路ブロックは、グレイコードカウンタ1全体として出力される多ビットのグレイコードをそのまま出力する回路ブロックを構成するより、簡潔な論理回路によって構成できる。また、全体のグレイコードカウンタ1の出力は、nビットのグレイコードを出力する回路ブロックの繰り返しとして構成される。したがって、よりビット数の大きなグレイコードを生成するグレイコードカウンタ1を構成する場合においても、同じ構成の回路ブロックを必要に応じて接続することにより、容易に当該グレイコードカウンタ1を構成することが可能である。
【0044】
〔実施形態2〕
(同期回路)
図3は、本実施形態に係るグレイコードカウンタ2のブロック図である。グレイコードカウンタ2は、前実施形態に係るグレイコードカウンタ1と比較して、同期回路51をさらに備える点においてのみ、構成が異なる。
【0045】
同期回路51は、グレイコード入力部DR1、DR2、およびDR3と、グレイコード出力部DGと、クロック信号入力部CKRと、リセット信号入力部RSTとを備える。
【0046】
グレイコード入力部DR1には、回路ブロック11からのグレイコードD1が入力される。同様に、グレイコード入力部DR2およびDR3には、回路ブロック12および13からのグレイコードD2およびD3がそれぞれ入力される。クロック信号入力部CKRには、グレイコードカウンタ2に入力される、入力クロック信号CK0が入力される。リセット信号入力部RSTにリセット信号RST0が入力されることにより、同期回路51の動作がリセットされてもよい。
【0047】
グレイコード入力部DR1、DR2、およびDR3にそれぞれ入力された、グレイコードD1、D2、およびD3は、クロック信号入力部CKRに入力された入力クロック信号CK0に基づいて同期される。同期されたグレイコードD1、D2、およびD3は統合され、グレイコード出力部DGから出力グレイコードD0として出力される。出力グレイコードD0は、グレイコードカウンタ2から出力される。
【0048】
ところで、各回路ブロックにおいて、入力されたクロック信号に対する、出力されたグレイコードの出力タイミングは、当該回路ブロックにおける出力遅延によって決定する。本実施形態においては、例えば、入力クロック信号CK0に対する、回路ブロック11からのグレイコードD1の出力遅延をTDとする。この場合、入力クロック信号CK0に対する、回路ブロック12からのグレイコードD2の出力遅延は、回路ブロック11における出力遅延を考慮すると、TDの2倍となる。同様に、入力クロック信号CK0に対する、回路ブロック13からのグレイコードD3の出力遅延は、TDの3倍となる。
【0049】
本実施形態においては、上述した、各回路ブロックにおける、入力クロック信号CK0に対する、グレイコードの出力遅延を、各回路ブロック間において揃えることができる。これにより、各回路ブロック間における、グレイコードの出力タイミングの差異をより低減したグレイコードを出力するグレイコードカウンタ2を実現できる。
【0050】
上記同期は、入力クロック信号CK0を基準に行ってもよく、例えば、入力クロック信号CK0を所定時間だけ一律に遅延させた信号を基準に行ってもよい。本実施形態においては、同期回路51が3つのグレイコード入力部DR1、DR2、およびDR3を備えた構成を例に挙げたが、これに限られない。同期回路51のグレイコード入力部は、グレイコードカウンタ2が備える回路ブロックの個数に応じて変更できる。
【0051】
〔実施形態3〕
(他の同期回路)
図4は、本実施形態に係るグレイコードカウンタ3のブロック図である。グレイコードカウンタ3は、前実施形態に係るグレイコードカウンタ2と比較して、同期回路51の代わりに、同期回路52および53を備える点においてのみ、構成が異なる。
【0052】
同期回路52および53は、グレイコード入力部DR1、およびDR2と、グレイコード出力部DGと、クロック信号入力部CKR1およびCKR2と、クロック信号出力部CKGを備える。グレイコード入力部およびクロック信号入力部の個数とリセット信号入力部RSTの有無とを除いて、同期回路52および53は、同期回路51と同一の構成を有していてもよい。
【0053】
同期回路52において、グレイコード入力部DR1には、回路ブロック11からのグレイコードD1が入力される。一方、グレイコード入力部DR2には、回路ブロック12において生成されたグレイコードD2が入力される。クロック信号入力部CKR1には、回路ブロック12において生成された、クロック信号CK2が入力される。一方、クロック信号入力部CKR2には、グレイコードカウンタ2に入力される、入力クロック信号CK0が入力される。
【0054】
グレイコード入力部DR1およびDR2にそれぞれ入力された、グレイコードD1およびD2と、クロック信号入力部CKR1に入力された、クロック信号CK2は、CKR2に入力された、入力クロック信号CK0に基づいて同期される。同期されたグレイコードD1およびD2は統合され、グレイコード出力部DGからグレイコードD4として出力される。グレイコードD4は、同期回路53に入力される。また、同期されたクロック信号CK2は、クロック信号出力部CKGから出力され、回路ブロック13のクロック信号入力部CKRに入力される。
【0055】
同期回路53においても、グレイコードD4およびD3とクロック信号CK3に対して、入力クロック信号CK0に基づいた同期が行われる。同期されたグレイコードD4およびD3は統合され、グレイコード出力部DGから出力グレイコードD0として出力される。出力グレイコードD0は、グレイコードカウンタ3から出力される。
【0056】
本実施形態においては、上述した、各回路ブロックにおける、入力クロック信号CK0に対する、グレイコードの出力遅延を、回路ブロックごとに揃えることができる。これにより、各回路ブロック間における、グレイコードの出力タイミングの差異をさらに低減したグレイコードを出力するグレイコードカウンタ3を実現できる。
【0057】
また、本実施形態においては、2段目以降の回路ブロック12および13が、同期回路52および53をそれぞれ備えている。しかし、これに限られず、本実施形態においては、2段目以降の回路ブロックの少なくとも1つの回路ブロックが、同期回路を備えていればよい。これにより、グレイコードカウンタ3は、上述したグレイコードの出力タイミングの差異を低減する効果を奏する。
【0058】
本実施形態においては、同期回路ごとに、前段までの回路ブロックからのグレイコードと、自身を備えた回路ブロックにおいて出力されるグレイコードとを統合したグレイコードを生成している。これにより、前段までの回路ブロックからのグレイコードと、自身を備えた回路ブロックにおいて出力されるグレイコードと、分割して生成するよりも、より当該グレイコード間における出力タイミングの差異を低減できる。
【0059】
〔実施形態4〕
(遅延回路を備えたグレイコード生成部の構成概要)
図5は、本実施形態に係るグレイコード生成部60のブロック図である。本実施形態に係るグレイコードカウンタは、前実施形態のグレイコードカウンタ3と比較して、何れかの回路ブロックと、当該回路ブロックに対応する同期回路との代わりに、図5に示すグレイコード生成部60を備える点においてのみ構成が異なる。下記においては、グレイコードカウンタ3が、回路ブロック12と同期回路52との代わりにグレイコード生成部60を備える構成を例に挙げて説明を行う。
【0060】
グレイコード生成部60は、図5の(a)に示すように、回路ブロック12と、同期回路54と、遅延回路61とを備える。回路ブロック12は、前述の回路ブロック12と同一の構成を備える。同期回路54は、フリップフロップ回路34および35と、遅延回路62とを備える。
【0061】
本実施形態においても、前段の回路ブロック11から出力された、クロック信号CK1が回路ブロック12のクロック信号入力部CKRに入力される。これにより、回路ブロック12は、グレイコード出力部DGから、グレイコードD2を出力する。ここで、本実施形態においては、回路ブロック12は、クロック信号出力部CKGから出力するクロック信号として、クロック信号CK2に代わり、次段の回路ブロックに入力されない中間クロック信号CKMを出力する。
【0062】
本実施形態において、前段の回路ブロック11から出力されたグレイコードD1は、遅延回路61に入力される。遅延回路61は、グレイコードD1に対するグレイコードD2の遅延量に相当する遅延を、入力された信号に与える遅延回路である。このため、遅延回路61は、グレイコードD1に、グレイコードD2の遅延に相当する遅延が与えられた信号である、遅延グレイコードDDを生成する。したがって、遅延グレイコードDDとグレイコードD2との間の同期ズレは低減されている。
【0063】
遅延回路61から出力された遅延グレイコードDDは、回路ブロック12から出力されたグレイコードD2のみならず、中間クロック信号CKMとも統合され、統合信号RS1となる。統合信号RS1は、フリップフロップ回路34の信号入力部Dに入力される。また、フリップフロップ回路34のクロック信号入力部CKRには、遅延回路62によって遅延された入力クロック信号CK0が入力される。遅延回路62は、遅延回路61と同一の構成を有し、入力された信号に対し、グレイコードD1に対するグレイコードD2の遅延量と同等の遅延を与える。
【0064】
ここで、フリップフロップ回路34は、信号入力部Dに入力されるデータ数と同じ個数のDタイプフリップフロップ回路が並列された構成を備える。具体的には、グレイコード生成部60がnビットのグレイコードを生成し、グレイコード生成部60が備える回路ブロックがn段目の回路ブロックの場合、フリップフロップ回路34は、m×n+1個のDタイプフリップフロップ回路を並列して備える。本実施形態においては、フリップフロップ回路34は、2×2+1=5個のDタイプフリップフロップ回路を並列して備える。
【0065】
フリップフロップ回路34が備えるDタイプフリップフロップ回路の信号入力部には、それぞれ、フリップフロップ回路34の信号入力部Dに入力された信号が入力される。また、当該Dタイプフリップフロップ回路のクロック信号入力部は、遅延回路62によって遅延された入力クロック信号CK0が入力される。
【0066】
Dタイプフリップフロップ回路の信号出力部から出力されたデータは統合信号RS2として統合され、フリップフロップ回路34の信号出力部Qから出力される。以上より、統合信号RS2は、遅延回路62によって遅延された入力クロック信号CK0に同期している。
【0067】
次いで、統合信号RS2は、フリップフロップ回路35の信号入力部Dに入力される。フリップフロップ回路35は、グレイコード生成部60が備えるフリップフロップ回路のうち、最終段のフリップフロップ回路であり、フリップフロップ回路34と同一の構成を備える。フリップフロップ回路35のクロック信号入力部CKRには、遅延回路を介することなく直接入力クロック信号CK0が入力される。以上より、フリップフロップ回路35の信号出力部Qから出力された信号は、無遅延の入力クロック信号CK0に同期している。
【0068】
最後に、フリップフロップ回路35の信号出力部Qから出力された信号は、グレイコードD4とクロック信号CK2とに分割され、グレイコード生成部60から出力される。この後、クロック信号CK2は回路ブロック13に入力され、グレイコードD4は、同期回路53に入力されてもよい。
【0069】
また、本実施形態に係るグレイコードカウンタは、回路ブロック13と同期回路53との代わりに、グレイコード生成部60と同一構成の、新たなグレイコード生成部をさらに備えていてもよい。また、グレイコード生成部60から出力されたグレイコードD4とクロック信号CK2とが、上述の新たなグレイコード生成部に入力されてもよい。
【0070】
本実施形態においては、フリップフロップ回路34および35において、それぞれのフリップフロップ回路に入力される統合信号とクロック信号との同期ズレが低減されている。このため、入力クロック信号CK0に対する、グレイコードD4およびクロック信号CK2の遅延をさらに低減することができる。なお、本実施形態においては、最終段のフリップフロップ回路に入力される信号が、入力クロック信号CK0に対して、遅延が低減されればよく、グレイコード生成部60は、少なくとも1段以上のフリップフロップ回路34または35を備えていればよい。
【0071】
なお、本実施形態においては、遅延回路61を同期回路54の外部に備えるグレイコード生成部60を例に挙げて説明した。しかしながら、これに限られず、グレイコード生成部60は、図5の(b)に示すように、遅延回路61を備えた同期回路55を、同期回路54の代わりに備えていてもよい。
【0072】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0073】
1〜3 グレイコードカウンタ
11〜13 回路ブロック
20 グレイコード生成回路
21 クロック信号生成回路
31〜35 フリップフロップ回路
51〜55 同期回路
60 グレイコード生成部
61、62 遅延回路
CK0 入力クロック信号
CK1〜3 クロック信号
D0 出力グレイコード
D1〜4 グレイコード
図1
図2
図3
図4
図5