(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリオール成分(d2)中の、前記ポリエーテルポリオール(d2−1)及び前記ポリカーボネートポリオール(d2−2)の含有割合が、ポリエーテルポリオール(d2−1)/ポリカーボネートポリオール(d2−2)の質量比で、95/5〜50/50である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
前記コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)のコア部を構成するポリイソシアネート成分(I−d1)が、前記キシリレンジイソシアネート及び水添キシリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(d1−1)を含有する、請求項6に記載の水性塗料組成物。
前記コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)のコア部を構成するポリオール成分(I−d2)が、前記ポリエーテルポリオール(d2−1)を含有し、シェル部を構成するポリオール成分(II−d2)が、前記ポリカーボネートポリオール(d2−2)を含有する、請求項6又は7に記載の水性塗料組成物。
前記ポリオール成分(d2)中の、前記ポリエーテルポリオール(d2−1)及び前記ポリカーボネートポリオール(d2−2)の含有割合が、ポリエーテルポリオール(d2−1)/ポリカーボネートポリオール(d2−2)の質量比で、95/5〜50/50である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
前記コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)のコア部を構成するポリイソシアネート成分(I−d1)が、前記キシリレンジイソシアネート及び水添キシリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(d1−1)を含有する、請求項14に記載の複層塗膜形成方法。
前記コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)のコア部を構成するポリオール成分(I−d2)が、前記ポリエーテルポリオール(d2−1)を含有し、シェル部を構成するポリオール成分(II−d2)が、前記ポリカーボネートポリオール(d2−2)を含有する、請求項14又は15に記載の複層塗膜形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の水性塗料組成物及び複層塗膜形成方法を、さらに詳細に説明する。
【0017】
水性塗料組成物
本発明の水性塗料組成物(以下、「本塗料」と略称する場合がある)は、下記の工程(1)〜(4)、
工程(1):被塗物上に、水性第1着色塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
工程(2):前記工程(1)で形成された第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、
工程(3):前記工程(2)で形成された第2着色塗膜上に、クリヤ塗料(Z)を塗装してクリヤ塗膜を形成する工程、及び
工程(4):前記工程(1)〜(3)で形成された第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜を一度に加熱硬化する工程、
を順次行う複層塗膜形成方法における水性第1着色塗料(X)として使用される水性塗料組成物であって、
アクリル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)から選ばれる少なくとも1種の樹脂、硬化剤(C)、並びにキシリレンジイソシアネート及び水添キシリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(d1−1)を含有するポリイソシアネート成分(d1)と、ポリオール成分(d2)とを含む構成成分から得られるウレタン樹脂粒子(D)を含有する。
【0018】
なお、本明細書において、水性塗料とは、有機溶剤型塗料と対比される用語であって、一般に、水又は水を主成分とする媒体(水性媒体)に、塗膜形成性樹脂、顔料等を分散及び/又は溶解させた塗料を意味する。また、上記有機溶剤型塗料とは、溶媒として実質的に水を含有しない又は溶媒の全て又はほとんどが有機溶剤である塗料である。
【0019】
アクリル樹脂(A)
アクリル樹脂(A)としては、従来から水性塗料に使用されているそれ自体既知の水溶性又は水分散性のアクリル樹脂を使用することができる。
【0020】
アクリル樹脂(A)は、後記の硬化剤(C)と反応し得る架橋性官能基を有することが好ましい。該架橋性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等が挙げられ、なかでも、少なくともその一種が水酸基であることが好ましい。したがって、アクリル樹脂(A)としては、水酸基含有アクリル樹脂(A1)を使用することが好ましい。
【0021】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)
水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の方法により共重合せしめることによって製造することができる。
【0022】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。但し、後述する「(xvii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー」に該当するモノマーは、水酸基を有するモノマーであっても、本発明においては、上記「水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマー」として規定されるべきものであり、上記「水酸基含有重合性不飽和モノマー」からは除外される。これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、下記モノマー(i)〜(xx)等を使用することができる。これらの重合性不飽和モノマーは単独でもしくは2種以上で組み合わせて使用することができる。
(i) アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii) イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii) アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv) トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v) 芳香環含有重合性不飽和モノマー:ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi) アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii) フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii) マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix) ビニル化合物:N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x) カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート等。
(xi) 含窒素重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等。
(xii) 重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xiii) エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xiv) 分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xv) スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等。
(xvi) リン酸基を有する重合性不飽和モノマー:アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシエチレン)グリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等。
(xvii) 紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:2−ヒドロキシ−4(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−[2−ヒドロキシ−5−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等。
(xviii) 光安定性重合性不飽和モノマー:4−(メタ)アクリロイルオキシ1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
(xix) カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
(xx) 酸無水物基を有する重合性不飽和モノマー:無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等。
【0024】
本明細書において、重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0025】
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0026】
上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)を製造する際の前記水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、モノマー成分の合計量を基準として、1〜50質量%が好ましく、2〜40質量%がより好ましく、3〜30質量%がさらに好ましい。
【0027】
上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、得られる塗膜の硬化性、耐チッピング性、密着性及び仕上がり外観等の観点から、水酸基価が、1〜200mgKOH/gであることが好ましく、2〜180mgKOH/gであることがより好ましく、5〜150mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0028】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、塗料の貯蔵安定性、得られる塗膜の耐水性等の観点から、酸価が、1〜150mgKOH/gであることが好ましく、5〜100mgKOH/gであることがより好ましく、5〜80mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0029】
水性塗料組成物が上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)を含有する場合、該水酸基含有アクリル樹脂(A1)の含有量は、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、2〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%がさらに好ましい。
【0030】
ポリエステル樹脂(B)
ポリエステル樹脂(B)としては、従来から水性塗料に使用されているそれ自体既知の水溶性又は水分散性のポリエステル樹脂を使用することができる。
【0031】
ポリエステル樹脂(B)は、後記の硬化剤(C)と反応し得る架橋性官能基を有することが好ましい。該架橋性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等が挙げられ、なかでも、少なくともその一種が水酸基であることが好ましい。したがって、ポリエステル樹脂(B)としては、水酸基含有ポリエステル樹脂(B1)を使用することが好ましい。
【0032】
水酸基含有ポリエステル樹脂(B1)
水酸基含有ポリエステル樹脂(B1)は、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
【0033】
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。かかる酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
【0034】
上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物、及び該脂肪族化合物のエステル化物である。脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0035】
上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物を用いることが好ましい。
【0036】
上記脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物、及び該化合物のエステル化物である。脂環式構造は、主として4〜6員環構造である。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0037】
上記脂環族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を用いることが好ましく、なかでも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を用いることがより好ましい。
【0038】
上記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物、及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
上記芳香族多塩基酸としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、又は無水トリメリット酸を使用することが好ましい。
【0040】
また、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することも出来る。かかる酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0041】
前記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
【0042】
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分を使用することもできる。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10P」(商品名、HEXION社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0043】
水酸基含有ポリエステル樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、150〜250℃程度で、5〜10時間程度加熱し、該酸成分とアルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法により、水酸基含有ポリエステル樹脂を製造することができる。
【0044】
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、反応容器中に、これらを一度に添加してもよいし、一方又は両者を数回に分けて添加してもよい。また、先ず、水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した、その後、得られた水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を反応させてハーフエステル化を行うことにより、カルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。また、先ず、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加させて水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。
【0045】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
【0046】
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂は、該樹脂の調製中又は調製後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、アクリル樹脂等で変性することができる。
【0047】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられ、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10P」(商品名、HEXION社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
【0048】
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体;これらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;これらの各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独でもしくは2種以上混合して使用することができる。
【0049】
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂をアクリル樹脂で変性する方法としては、既知の方法を用いることができ、例えば、重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂及び重合性不飽和モノマーの混合物を重合させる方法、水酸基含有ポリエステル樹脂とアクリル樹脂の樹脂同士の反応による方法等を挙げることができる。
【0050】
水酸基含有ポリエステル樹脂(B1)は、水酸基価が1〜250mgKOH/gであるのが好ましく、2〜200mgKOH/gであるのがより好ましく、5〜200mgKOH/gであるのがさらに好ましい。
【0051】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(B1)が、さらにカルボキシル基を有する場合は、その酸価が1〜150mgKOH/gであるのが好ましく、2〜100mgKOH/gであるのがより好ましく、2〜80mgKOH/gであるのがさらに好ましい。
【0052】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(B1)の重量平均分子量は、3,000〜100,000であるのが好ましく、4,000〜50,000であるのがより好ましく、5,000〜30,000であるのがさらに好ましい。
【0053】
なお、本明細書において、平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1mL/min、検出器;RIの条件で行った。
【0054】
水性塗料組成物が上記水酸基含有ポリエステル樹脂(B1)を含有する場合、該水酸基含有ポリエステル樹脂(B1)の含有量は、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、2〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%がさらに好ましい。
【0055】
硬化剤(C)
硬化剤(C)は、上記アクリル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)中の架橋性官能基と反応して、水性第1着色塗料(X)を硬化し得る化合物である。該硬化剤(C)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0056】
硬化剤(C)としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物、セミカルバジド基含有化合物等が挙げられる。
【0057】
なかでも、形成される複層塗膜の耐水性、耐チッピング性及び密着性、並びに塗料の貯蔵安定性等の観点から、水酸基と反応し得るアミノ樹脂(C1)、ポリイソシアネート化合物(C2)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(C3)、カルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましく、アミノ樹脂(C1)、ポリイソシアネート化合物(C2)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(C3)がより好ましく、アミノ樹脂(C1)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(C3)が特に好ましい。
【0058】
上記アミノ樹脂(C1)としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0059】
また、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等が挙げられる。
【0060】
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましい。特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂がより好ましい。
【0061】
上記メラミン樹脂は、重量平均分子量が400〜6,000であるのが好ましく、500〜4,000であるのがより好ましく、600〜3,000であるのがさらに好ましい。
【0062】
メラミン樹脂としては市販品を使用することができる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル238」、「サイメル250」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、オルネクスジャパン社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
【0063】
水性塗料組成物が上記メラミン樹脂を含有する場合、水性塗料組成物は硬化触媒として、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸;該スルホン酸とアミンとの中和塩;リン酸エステル化合物とアミンとの中和塩等を含有することができる。
【0064】
前記ポリイソシアネート化合物(C2)は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
【0065】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトヘキサン酸2−イソシアナトエチル、1,6−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0066】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1−シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0067】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1−フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0068】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4−TDI)もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6−TDI)もしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
【0069】
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができる。
【0070】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。また、これらポリイソシアネートのうち、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体が好ましい。
【0071】
また、前記ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、該ポリイソシアネートと反応し得る化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させてなるプレポリマーを使用してもよい。該ポリイソシアネートと反応し得る化合物としては、例えば、水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水等を使用することができる。
【0072】
また、前記ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーの重合体、又は該イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと該イソシアネート基含有重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーとの共重合体を使用してもよい。
【0073】
前記ブロック化ポリイソシアネート化合物(C3)は、上記ポリイソシアネート化合物(C2)のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物である。
【0074】
上記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等アミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール又はイミダゾール誘導体;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0075】
なかでも、好ましいブロック剤としては、活性メチレン系のブロック剤、ピラゾール又はピラゾール誘導体が挙げられる。
【0076】
ブロック化を行なう(ブロック剤を反応させる)にあたっては、必要に応じて溶剤を添加して行なうことができる。ブロック化反応に用いる溶剤としてはイソシアネート基に対して反応性でないものが良く、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)のような溶剤を挙げることができる。
【0077】
また、上記ブロック剤として、1個以上のヒドロキシル基と1個以上のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸、例えば、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸等も使用できる。特に、上記ヒドロキシカルボン酸を用いてイソシアネート基をブロックした後、該ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基を中和して水分散性を付与したブロック化ポリイソシアネート化合物を、好適に用いることができる。
【0078】
上記硬化剤(C)はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0079】
上記硬化剤(C)の含有量は、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、1〜50質量%が好ましく、5〜45質量%がより好ましく、10〜40質量%がさらに好ましい。
【0080】
ウレタン樹脂粒子(D)
ウレタン樹脂粒子(D)は、キシリレンジイソシアネート及び水添キシリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(d1−1)を含有するポリイソシアネート成分(d1)と、ポリオール成分(d2)とを含む構成成分から得られるウレタン樹脂粒子である。換言すれば、ウレタン樹脂粒子(D)は、キシリレンジイソシアネート及び水添キシリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(d1−1)を含有するポリイソシアネート成分(d1)と、ポリオール成分(d2)との反応生成物である。
【0081】
ウレタン樹脂粒子(D)は、例えば、キシリレンジイソシアネート及び水添キシリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(d1−1)を含有するポリイソシアネート成分(d1)、ポリオール成分(d2)、並びに必要に応じてさらに水分散基付与成分としての活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を使用して、合成することができる。
【0082】
ポリイソシアネート成分(d1)
本発明において、ポリイソシアネート成分(d1)は、キシリレンジイソシアネート及び水添キシリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(d1−1)を含有する。
【0083】
キシリレンジイソシアネート及び水添キシリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(d1−1)
ジイソシアネート(d1−1)は、キシリレンジイソシアネート及び水添キシリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートである。
【0084】
上記キシリレンジイソシアネートとしては、例えば、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート等を使用することができ、なかでも1,3−キシリレンジイソシアネートを好適に使用することができる。
【0085】
また、上記水添キシリレンジイソシアネートとしては、例えば、1,3−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート等を好適に使用することができる。
【0086】
上記ジイソシアネート(d1−1)としては、上記キシリレンジイソシアネート及び水添キシリレンジイソシアネートをそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0087】
また、上記ジイソシアネート(d1−1)としては、市販品を使用することができる。
【0088】
上記キシリレンジイソシアネートの市販品としては、例えば、「タケネート500」(商品名、三井化学社製、1,3−キシリレンジイソシアネート)等が挙げられる。
【0089】
また、上記水添キシリレンジイソシアネートの市販品としては、例えば、「タケネート600」(商品名、三井化学社製、1,3−水添キシリレンジイソシアネート)、「フォルティモ」(商品名、三井化学社製、1,4−水添キシリレンジイソシアネート)等が挙げられる。
【0090】
上記ジイソシアネート(d1−1)としては、形成される複層塗膜の仕上がり外観、本発明の水性塗料組成物の貯蔵性等の観点から、キシリレンジイソシアネートを好適に使用することが出来る。
【0091】
本発明において、ウレタン樹脂粒子(D)におけるポリイソシアネート成分(d1)中の上記ジイソシアネート(d1−1)の含有割合は、形成される複層塗膜の仕上がり外観、本発明の水性塗料組成物の貯蔵性等の観点から、ポリイソシアネート成分(d1)の合計固形分量を基準として、20〜100質量%の範囲内であることが好ましく、30〜100質量%の範囲内であることがより好ましく、50〜100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0092】
ジイソシアネート(d1−1)以外のポリイソシアネート(d1−2)
上記キシリレンジイソシアネート及び水添キシリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(d1−1)以外のポリイソシアネート(d1−2)としては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)及びこれと2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)の混合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を使用することができる。
【0093】
また、必要に応じ上記TDI、HMDI、IPDI等の3量体、或いはトリメチロールプロパン等との反応物である3価のポリイソシアネートも使用することができる。これらのポリイソシアネート化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0094】
ポリオール成分(d2)
ポリオール成分(d2)は、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物である。なかでも、ウレタン樹脂粒子(D)の製造性の観点から、該ポリオール成分(d2)は、1分子中に2個の水酸基を有するジオールであることが好ましい。
【0095】
該ポリオール成分(d2)としては、例えば、低分子量のポリオールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、2,5−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を使用することができる。これらの低分子量のポリオールは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0096】
また、上記ポリオール成分(d2)としては、高分子量のポリオールとして、例えば、ポリエーテルポリオール(d2−1)、ポリカーボネートポリオール(d2−2)、ポリエステルポリオール(d2−3)、ポリエーテルエステルポリオール(d2−4)等を使用することが出来る。これらの高分子量のポリオールは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0097】
上記ポリエーテルポリオール(d2−1)としては、前記低分子量のポリオールのアルキレンオキシド付加物、アルキレンオキシド又は環状エーテル(テトラヒドロフラン等)の開環(共)重合体等を使用することができる。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの(ブロック又はランダム)共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコール等が挙げられる。
【0098】
なかでも、上記ポリエーテルポリオール(d2−1)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールを好適に使用することができる。また、該ポリエーテルポリオール(d2−1)の数平均分子量は、製造性と形成される塗膜の柔軟性の観点から、500〜10000であることが好ましく、1000〜5000であることがより好ましく、1600〜4000であることがさらに好ましい。
【0099】
上記ポリエーテルポリオール(d2−1)は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0100】
前記ポリカーボネートポリオール(d2−2)としては、例えば、下記一般式
HO−R−(O−C(O)−O−R)
x−OH
(式中RはC
1-12アルキレン基又はC
1-3アルキレン−C
3-8シクロアルキレン−C
1-3アルキレン基を示し、xは分子の繰返し単位の数を示し、通常5〜50の整数である。複数のRは同一でも異なっていても良い)
で示される化合物等を使用することができる。これらは、ポリオールと置換カーボネート(炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネート等)とを水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法、前記飽和脂肪族ポリオールとホスゲンを反応させるか、又は必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ポリオールを反応させる方法等により得ることができる。
【0101】
上記Rで示されるC
1-12アルキレン基(飽和脂肪族ポリオール残基)には、炭素数1〜12の直鎖状又は分枝鎖状(好ましくは直鎖状)のアルキレン基が含まれ、例えば、−CH
2−、−(CH
2)
2−、−(CH
2)
3−、−(CH
2)
4−、−CH
2−CH(CH
3)−CH
2−、−(CH
2)
5−、−CH
2−CH(C
2H
5)−CH
2−、−(CH
2)
6−、−(CH
2)
7−、−(CH
2)
8−、−(CH
2)
9−、−(CH
2)
10−、−(CH
2)
11−、−(CH
2)
12−等が含まれる。
【0102】
また、Rで示される「C
1-3アルキレン−C
3-8シクロアルキレン−C
1-3アルキレン基」に含まれるC
1-3アルキレン基は、炭素数1〜3(好ましくは炭素数1)の直鎖状又は分枝鎖状(好ましくは直鎖状)のアルキレン基を示し、例えば、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基(n−プロピレン基、イソプロピレン基)が挙げられる。
【0103】
また、「C
1-3アルキレン−C
3-8シクロアルキレン−C
1-3アルキレン基」に含まれる2つの「C
1-3アルキレン」は、同一であっても異なっていても良い(同一であることが好ましい)。
【0104】
「C
1-3アルキレン−C
3-8シクロアルキレン−C
1-3アルキレン基」に含まれるC
3-8シクロアルキレン基は、炭素数3〜8(好ましくは炭素数5〜7、より好ましくは炭素数6)のシクロアルカンから2個の水素原子を除いてできる2価の炭化水素基を示し、例えば、1,1−シクロプロピレン基、1,2−シクロプロピレン基、1,1−シクロブチレン基、1,2−シクロブチレン基、1,3−シクロブチレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,1−シクロへキシレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘプチレン基、1,4−シクロオクチレン基等が挙げられる。
【0105】
C
1-3アルキレン−C
3-8シクロアルキレン−C
1-3アルキレン基としては、上記に挙げたC
1-3アルキレン基、上記に挙げたC
3-8シクロアルキレン基及び上記に挙げたC
1-3アルキレン基がこの順番に結合した2価の置換基を挙げることができ、より具体的には、例えば、メチレン−1,2−シクロプロピレン−メチレン基、メチレン−1,2−シクロプロピレン−エチレン基、エチレン−1,2−シクロプロピレン−エチレン基、メチレン−1,3−シクロブチレン−メチレン基、メチレン−1,3−シクロペンチレン−メチレン基、メチレン−1,1−シクロヘキシレン−メチレン基、メチレン−1,3−シクロヘキシレン−メチレン基、メチレン−1,4−シクロヘキシレン−メチレン基、エチレン−1,4−シクロヘキシレン−エチレン基、メチレン−1,4−シクロヘキシレン−エチレン基、プロピレン−1,4−シクロヘキシレン−プロピレン基、メチレン−1,3−シクロヘプチレン−メチレン基、メチレン−1,4−シクロオクチレン−メチレン基等が挙げられる。
【0106】
上記ポリカーボネートポリオール(d2−2)のRとしては、製造性及び得られる塗膜の物性の観点から、炭素原子数1〜12の飽和脂肪族ポリオール残基であることが好ましく、炭素原子数4〜10の飽和脂肪族ポリオール残基であることがさらに好ましい。また、ポリカーボネートポリオール(d2−2)の数平均分子量は、製造性の観点から、500〜10000であることが好ましく、1000〜5000であることがより好ましく、1600〜4000であることがさらに好ましい。これらのポリカーボネートポリオール(d2−2)は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0107】
前記ポリエステルポリオール(d2−3)としては、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸(無水物)と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール等の前記低分子量のポリオールとを、水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものが挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−アジピン酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−アジピン酸縮合物、及びグリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させて得られるポリラクトンポリオール等が挙げられる。これらのポリエステルポリオール(d2−3)は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0108】
前記ポリエーテルエステルポリオール(d2−4)としては、エーテル基含有ポリオール(前記ポリエーテルポリオール(d2−1)又はジエチレングリコール等)又は、これと他のグリコールとの混合物を上記ポリエステルポリオール(d2−3)で例示したような(無水)ジカルボン酸に加えてアルキレンオキシドを反応させてなるもの、例えば、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物等が挙げられる。これらのポリエーテルエステルポリオール(d2−4)は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0109】
上記ポリオール成分(d2)は、本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性及び形成される複層塗膜の耐チッピング性の観点から、ポリエーテルポリオール(d2−1)及びポリカーボネートポリオール(d2−2)を含有することが好ましい。
【0110】
また、上記ポリオール成分(d2)が上記ポリエーテルポリオール(d2−1)及びポリカーボネートポリオール(d2−2)を含有する場合、該ポリエーテルポリオール(d2−1)及びポリカーボネートポリオール(d2−2)の合計含有量は、本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性及び形成される複層塗膜の仕上がり性等の観点から、ポリオール成分(d2)の合計固形分量を基準として、30〜100質量%の範囲内であることが好ましく、50〜100質量%の範囲内であることがより好ましく、70〜100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0111】
また、上記ポリオール成分(d2)が、上記ポリエーテルポリオール(d2−1)及びポリカーボネートポリオール(d2−2)を含有する場合、該ポリエーテルポリオール(d2−1)及びポリカーボネートポリオール(d2−2)の含有割合は、本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性及び形成される複層塗膜の耐チッピング性の観点から、ポリエーテルポリオール(d2−1)/ポリカーボネートポリオール(d2−2)の質量比で、99/1〜30/70であることが好ましく、95/5〜50/50であることがより好ましく、90/10〜60/40であることがさらに好ましい。
【0112】
また、前記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物としては、例えば、一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物、一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のスルホン酸基を有する化合物、及び一分子中に2個以上のアミノ基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0113】
なかでも、上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物としては、一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物、及び一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のスルホン酸基を有する化合物を好適に使用することができる。本発明において、上記一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物、及び一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のスルホン酸基を有する化合物等の、2個以上の水酸基とイオン形成基とを併有する化合物は、前記ポリオール成分(d2)に含まれるものとする。
【0114】
上記一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸等のアルカノールカルボン酸化合物、ポリオキシプロピレントリオールと無水マレイン酸及び/又は無水フタル酸とのハーフエステル化合物等をあげることができる。
【0115】
前記一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のスルホン酸基を有する化合物としては、例えば、2−スルホン酸−1,4−ブタンジオール、5−スルホン酸−ジ−β−ヒドロキシエチルイソフタレート、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノエチルスルホン酸等をあげることができる。
【0116】
上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物としては、得られる塗膜の柔軟性の観点から、分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物を使用することが特に好ましい。
【0117】
上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物は、ウレタン樹脂粒子(D)中でイオン形成基として作用する。また、該化合物は、ウレタン樹脂粒子(D)の分散安定性向上の観点から、使用することが好ましい。
【0118】
上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を使用する場合、その使用量は、水分散安定性、形成される塗膜の耐水性等の観点から、ウレタン樹脂粒子(D)を構成する化合物の総量に対して、1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、1〜7質量%の範囲内であることがより好ましく、1〜5質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0119】
本発明のウレタン樹脂粒子(D)は、通常、水系溶剤中の分散体として合成されるものであり、ウレタン樹脂粒子(D)は水系溶媒中に分散されていればその形態は特に限定されない。ここで、水系溶媒とは、水を主成分とする溶媒(例えば、溶媒中90〜100質量%が水である溶媒)を示す。
【0120】
ウレタン樹脂粒子(D)の製造方法については、特に制限を受けず、従来既知の方法を適用することが出来る。製造方法としては、例えば、有機溶剤中で、ポリイソシアネート成分(d1)とポリオール成分(d2)とをウレタン化反応させるか、又は、必要に応じて活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物をさらに加えてウレタン化反応させて、プレポリマーを合成し、得られたプレポリマーを乳化し、必要に応じてさらに鎖伸長反応、脱溶剤を行なう方法が挙げられる。
【0121】
上記ポリイソシアネート成分(d1)とポリオール成分(d2)のウレタン化反応には、必要に応じて触媒を使用することが出来る。
【0122】
上記触媒としては、例えば、トリス(2−エチルヘキサン酸)ビスマス(III)等のカルボン酸ビスマス化合物;ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の有機スズ化合物;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン化合物等を挙げることができる。
【0123】
これらのうち、比較的低毒性であり、環境適応性の観点から、ビスマス系触媒が好ましい。
【0124】
上記ウレタン化反応は、50〜120℃で行なうことが好ましい。
【0125】
以上により、ウレタン樹脂粒子(D)のプレポリマーを得ることが出来る。
【0126】
上記プレポリマーの合成において、有機溶剤としては、イソシアネートと不活性で、ウレタン化反応に支障を及ぼさない有機溶剤が使用可能である。このような有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤等を挙げることができる。なかでも上記のうち、水分散安定性の観点から、ケトン系溶剤、エステル系溶剤を好適に使用することができる。
【0127】
上記ウレタンプレポリマーに、必要に応じ上記イオン形成基に対する中和剤、及び脱イオン水を添加して、水分散(乳化)し、必要に応じてさらに、鎖伸長反応、脱溶剤を行うことにより、ウレタン樹脂粒子(D)の水分散液を得ることができる。
【0128】
該中和剤としては、上記イオン形成基を中和できるものであれば特に制限はなく、中和のための塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、ジエチルアミン、エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、エチルアミノエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチレントリアミン等の有機アミン;或いは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムカ等のアルカリ金属水酸化物等を挙げることができる。これらの中和剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0129】
上記塩基性化合物のうち、塗料組成物に適用して得られる塗膜の耐水性の観点から、有機アミンが好ましい。
【0130】
これらの中和剤は、最終的にウレタン樹脂粒子(D)の水分散液のpHが6.0〜9.0程度となるような量で用いることが好ましい。
【0131】
上記中和剤を添加する場合、中和剤の添加量としては、カルボキシル基等の酸基に対して、0.1〜1.5当量用いることが好ましく、0.3〜1.2当量用いることがさらに好ましい。
【0132】
水分散液を得る手段としては、通常の撹拌機による分散で可能であるが、より粒子径の細かい均一な水分散液を得るためにホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー、ラインミキサー等を使用することができる。
【0133】
ウレタンプレポリマーの鎖伸長反応(高分子量化)を行う場合、必要に応じて水以外の鎖伸長剤を添加して、ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤とを反応させることもできる。鎖伸長剤としては、活性水素を有する公知の鎖伸長剤を使用することができる。具体的には、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン化合物、ジエチレントリアミン等のトリアミン化合物、ヒドラジン等を挙げることができる。
【0134】
鎖伸長度を向上する観点からは、ジエチレントリアミン等のトリアミン化合物等、3官能以上のアミン化合物を好適に使用することができる。また、得られる塗膜の柔軟性の観点からは、エチレンジアミン等のジアミン化合物を好適に使用することができる。
【0135】
また、反応性官能基を導入する目的で、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン等のアミンと水酸基を1分子中にそれぞれ1つ以上持つ化合物も、好適に使用できる。
【0136】
ウレタン樹脂粒子(D)のポリイソシアネート成分(d1)とポリオール成分(d2)の含有割合は、製造性等の観点から、
ポリオール成分(d2)の有する活性水素基/ポリイソシアネート成分(d1)の有するイソシアネート基
のモル比で、1/1.01〜1/3.0であることが好ましく、1/1.05〜1/2.0であることがさらに好ましい。
【0137】
ウレタン樹脂粒子(D)の数平均分子量は、分散性、製造性、得られる塗膜性能等の観点から、2000以上であることが好ましく、5000以上であることがより好ましく、10000以上であることがさらに好ましい。
【0138】
数平均分子量が2000以上であると、得られる塗膜性能が良好となる。
【0139】
ウレタン樹脂粒子(D)は、分散性及び貯蔵安定性の観点から、一般に10〜5000nm、好ましくは10〜1000nm、さらに好ましくは20〜500nm、さらに特に好ましくは50〜300nmの範囲内の平均粒子径を有することができる。
【0140】
本明細書において、ウレタン樹脂粒子(D)の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0141】
ウレタン樹脂粒子(D)は、水分散安定性、及び得られる塗膜の耐水性等の観点から、酸価が5〜40mgKOH/gであることが好ましく、5〜30mgKOH/gであることがより好ましく、10〜30mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0142】
ウレタン樹脂粒子(D)は得られる塗膜の耐水性等の観点から、水酸基価が0〜100mgKOH/gであることが好ましく、0〜50mgKOH/gであることがより好ましく、0〜10mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0143】
ウレタン樹脂粒子(D)の水分散体中の固形分濃度は、20〜50質量%が好ましく、30〜50質量%の範囲内であることがより好ましい。固形分濃度が50質量%以下であると、乳化が容易となり、水分散体を容易に得ることが出来る。固形分濃度が20質量%以上であると、溶媒成分が少なくなるので、水性塗料組成物の固形分を高くすることが出来る。
【0144】
上記ウレタン樹脂粒子(D)の含有量は、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、1〜50質量%が好ましく、5〜45質量%がより好ましく、10〜40質量%がさらに好ましい。
【0145】
ウレタン樹脂粒子(D)は、形成される複層塗膜の仕上がり外観及び本発明の塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)であることが好ましい。
【0146】
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)は、キシリレンジイソシアネート及び水添キシリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(d1−1)を含有するポリイソシアネート成分(d1)と、ポリオール成分(d2)とを含む構成成分から得られる、コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子である。
【0147】
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)は、通常、水系溶媒中の分散体として合成されるものであり、ウレタン樹脂粒子は水系溶媒中に分散されていればその形態は特に限定されないが、コア部を構成するウレタン樹脂(I)のまわりに分散安定剤的に、シェル部を構成するウレタン樹脂(II)が位置した構造を有する粒子として、水に分散されていることが好ましい。言い換えると、ウレタン樹脂(II)を外側に、ウレタン樹脂(I)を内側にしたコアシェル構造を有する形態で水系溶媒中に分散していることが好ましい。実際にほぼそのような粒子形態を有していると考えられる。
【0148】
ここで、水系溶媒とは、水を主成分とする溶媒(例えば、溶媒中90〜100質量%が水である溶媒)を示す。
【0149】
なお、コアシェル構造とは、具体的には同一粒子中に異なる樹脂組成の成分が存在し、中心部分(コア)と外殻部分(シェル)とで異なる樹脂組成からなっている構造をいう。
【0150】
上記コアシェル構造は、通常、コア部がシェル部に完全に被覆された層構造が一般的であるが、コア部とシェル部の質量比率、その他の条件等により、シェル部が層構造を形成するのに不十分な場合もあり得る。そのような場合は、上記のような完全な層構造である必要はなく、コア部の一部をシェル部が被覆した構造であってもよい。
【0151】
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)は、ウレタン樹脂(II)を外側に、ウレタン樹脂(I)を内側にしたコアシェル構造を有する形態で水系溶媒中に分散された形態を有するウレタン樹脂粒子である。
【0152】
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)の、コア部を構成するウレタン樹脂(I)とシェル部を構成するウレタン樹脂(II)との構成比率は、ウレタン樹脂(I)/ウレタン樹脂(II)の質量比で、20/80〜95/5とすることが好ましく、40/60〜90/10とすることがより好ましく、60/40〜80/20とすることがさらに好ましい。
【0153】
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)の製造方法としては、コアシェル構造を有する形態とすることができれば、従来既知のウレタン樹脂粒子の製造方法が使用可能であるが、製造安定性(得られる樹脂粒子の分散安定性)の観点から、以下の方法(下記1〜3の工程よりなる)により、製造することが好ましい。
1.まず最初に、親水性基を含有する水酸基末端のウレタン樹脂(II)を合成する。
2.次にウレタン樹脂(I)を構成する原材料を追加して、ウレタン樹脂(II)にウレタン樹脂(I)がグラフトした、イソシアネート末端のプレポリマーを合成する。
3.得られたプレポリマーを乳化し、必要に応じてさらに、鎖伸長反応、脱溶剤を行うことによりコアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)を得る。
【0154】
したがって、上記コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)は、例えば、ポリイソシアネート成分(II−d1)及びポリオール成分(II−d2)を含むモノマー混合物を反応させてウレタン樹脂(II)を得る工程、及び該ウレタン樹脂(II)の存在下で、ポリイソシアネート成分(I−d1)及びポリオール成分(I−d2)を含むモノマー混合物を反応させてウレタン樹脂(I)を合成する工程を含み、かつ該ポリイソシアネート成分(II−d1)及びポリイソシアネート成分(I−d1)の少なくとも一方が、前記キシリレンジイソシアネート及び水添キシリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(d1−1)を含む製造方法によって得ることができる。
【0155】
さらに具体的に、製造方法とともに、コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)について詳述するが、コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)は、下記製造方法で得られるものに何ら限定されるものではない。
【0156】
ウレタン樹脂(II)の合成
ウレタン樹脂(II)は、コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)のシェル部を構成するものであり、ポリイソシアネート成分(II−d1)、ポリオール成分(II−d2)、及び必要に応じてさらに水分散基付与成分としての活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を使用して合成することができる。
【0157】
上記ポリイソシアネート成分(II−d1)としては、前記キシリレンジイソシアネート及び水添キシリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(d1−1)、及び該ジイソシアネート(d1−1)以外のポリイソシアネート(d1−2)を使用することができ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0158】
ポリイソシアネート成分(II−d1)としては、塗料組成物に適用して得られる塗膜の耐黄変性等の観点から、飽和脂肪族構造を有するポリイソシアネート化合物及び/又は飽和脂環式構造を有するポリイソシアネート化合物を好適に使用することができる。上記飽和脂肪族構造を有するポリイソシアネート化合物としては、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等が挙げられ、飽和脂環式構造を有するポリイソシアネート化合物としては、具体的には、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)等が挙げられる。
【0159】
前記ポリオール成分(II−d2)は、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物であって、例えば、前記ウレタン樹脂(D)のポリオール(d2)の説明欄に記載した低分子量のポリオール、ポリエーテルポリオール(d2−1)、ポリカーボネートポリオール(d2−2)、ポリエステルポリオール(d2−3)、ポリエーテルエステルポリオール(d2−4)等を使用することが出来る。これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0160】
上記ポリオール成分(II−d2)は、本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、少なくともその一種としてポリカーボネートポリオール(d2−2)を含有することが好ましい。
【0161】
上記ポリオール成分(II−d2)が、上記ポリカーボネートポリオール(d2−2)を含有する場合、本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性から、ウレタン樹脂(II)中の該ポリカーボネートポリオール(d2−2)の含有割合は、ウレタン樹脂(II)におけるポリオール成分(II−d2)の合計固形分量を基準として、5〜100質量%の範囲内であることが好ましく、5〜80質量%の範囲内であることがより好ましく、10〜60質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0162】
また、上記ポリカーボネートポリオール(d2−2)の数平均分子量は、製造性の観点から、500〜10000であることが好ましく、1000〜5000であることがより好ましく、1600〜4000であることがさらに好ましい。
【0163】
また、前記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物としては、例えば、前記ウレタン樹脂(D)の説明欄において記載した、活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を使用することが出来る。ここで、2個以上の水酸基とイオン形成基とを併有する化合物は、上記ポリオール成分(II−d2)に含まれるものとする。
【0164】
上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの化合物は、ウレタン樹脂中でイオン形成基として作用する。また、これらの化合物は、ウレタン樹脂粒子(D’)の分散安定性の観点から、使用することが好ましい。
【0165】
上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物としては、得られる塗膜の柔軟性の観点から、分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物を好適に使用することができる。
【0166】
上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を使用する場合、その使用量は、水分散安定性、形成される塗膜の耐水性等の観点から、ウレタン樹脂(II)を構成する化合物の総量に対して、2〜40質量%の範囲内であることが好ましく、3〜30質量%の範囲内であることがより好ましく、5〜20質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0167】
活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物として、カルボキシル基、又はスルホン酸基を含有する化合物を使用した場合、塩を形成し親水性化するために中和剤として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール等のアミン化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物を用いることができる。これらの中和剤も、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0168】
カルボキシル基もしくはスルホン酸基に対する中和率は、通常50〜100モル%とすることができる。中和剤としては、分散性の観点からジメチルアミノエタノールが好ましい。
【0169】
ウレタン樹脂(II)は、後に記述するウレタン樹脂(I)のグラフト工程において、グラフト効率を向上させる観点から、水酸基が残存するよう水酸基過剰の条件で合成されることが好ましい。
【0170】
ウレタン樹脂(II)のポリイソシアネート成分(II−d1)とポリオール成分(II−d2)の含有割合は、製造性等の観点から、
ポリオール成分(II−d2)の有する活性水素基/ポリイソシアネート成分(II−d1)の有するイソシアネート基
のモル比で、1.01/1〜3.0/1であることが好ましく、1.05/1〜2.0/1であることがさらに好ましい。
【0171】
ポリオール成分(II−d2)とポリイソシアネート成分(II−d1)のウレタン化反応には、必要に応じて触媒を使用することが出来る。
【0172】
上記触媒としては、例えば、トリス(2−エチルヘキサン酸)ビスマス(III)等のカルボン酸ビスマス化合物;ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の有機スズ化合物;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン化合物等を挙げることができる。
【0173】
これらのうち、比較的低毒性であり、環境適応性の観点から、ビスマス系触媒が好ましい。
【0174】
上記ウレタン化反応は、50〜120℃で行なうことが好ましい。
【0175】
上記ウレタン樹脂(II)の合成において、有機溶剤としては、イソシアネートと不活性で、ウレタン化反応に支障を及ぼさない有機溶剤が使用可能である。このような有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤等を挙げることができる。なかでも上記のうち、水分散安定性の観点から、ケトン系溶剤、エステル系溶剤を好適に使用することができる。
【0176】
以上により、ウレタン樹脂(II)を得ることが出来る。
【0177】
プレポリマーの合成(ウレタン樹脂(I)のグラフト)
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)は、上記ウレタン樹脂(II)の存在下にウレタン樹脂(I)を合成(すなわち、ウレタン樹脂(II)ユニットに続き、ウレタン樹脂(I)ユニットを合成)して、ウレタン樹脂(II)にウレタン樹脂(I)をグラフトすることにより、2段階でプレポリマーを合成し、水系媒体中に分散(必要に応じてさらに鎖伸長反応)することにより得られるコアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子であることが好ましい。
【0178】
ウレタン樹脂(I)は、コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)のコア部を構成するものである。
【0179】
ウレタン樹脂(I)は、例えば、ポリイソシアネート成分(I−d1)及びポリオール成分(I−d2)を使用して合成することが出来る。
【0180】
上記ポリイソシアネート成分(I−d1)としては、前記キシリレンジイソシアネート及び水添キシリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(d1−1)、及び該ジイソシアネート(d1−1)以外のポリイソシアネート(d1−2)を使用することができ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0181】
ウレタン樹脂(I)の合成に用いるポリイソシアネート成分(I−d1)は、本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性及び形成される複層塗膜の仕上がり性の観点から、前記ジイソシアネート(d1−1)を含むことが好ましく、キシリレンジイソシアネートを含むことがさらに好ましい。
【0182】
上記ポリイソシアネート成分(I−d1)が、上記ジイソシアネート(d1−1)を含有する場合、該ジイソシアネート(d1−1)の含有割合は、本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性及び形成される複層塗膜の仕上がり性及びコアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)の製造安定性の観点から、ウレタン樹脂(I)におけるポリイソシアネート成分(I−d1)の合計固形分量を基準として、30〜100質量%の範囲内であることが好ましく、30〜85質量%の範囲内であることがより好ましく、30〜70質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0183】
また、上記ポリイソシアネート成分(I−d1)として、上記ジイソシアネート(d1−1)、及び該ジイソシアネート(d1−1)以外のポリイソシアネート(d1−2)を併用する場合、該ジイソシアネート(d1−1)以外のポリイソシアネート(d1−2)としては、形成される複層塗膜の仕上がり性、及びコアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)の製造安定性の観点から、少なくともその1種として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を使用することが好ましい。
【0184】
上記ポリイソシアネート成分(I−d1)におけるジイソシアネート(d1−1)以外のポリイソシアネート(d1−2)として、上記ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を使用する場合、該ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の含有割合は、ウレタン樹脂(I)におけるポリイソシアネート成分(I−d1)の合計固形分量を基準として、10〜70質量%の範囲内であることが好ましく、15〜70質量%の範囲内であることがより好ましく、30〜70質量%の範囲内であることがさらに好ましい。また、前記ジイソシアネート(d1−1)と該ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の含有割合は、ジイソシアネート(d1−1)/ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の質量比で、30/70〜90/10の範囲内であることが好ましく、30/70〜85/15の範囲内であることがより好ましく、30/70〜70/30の範囲内であることがさらに好ましい。
【0185】
上記ポリオール成分(I−d2)は、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物であって、例えば、前記ウレタン樹脂(D)の説明欄に記載した低分子量のポリオール、ポリエーテルポリオール(d2−1)、ポリカーボネートポリオール(d2−2)、ポリエステルポリオール(d2−3)、ポリエーテルエステルポリオール(d2−4)等を使用することが出来る。これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0186】
上記ポリオール成分(I−d2)は、形成される塗膜の柔軟性等の観点から、ポリエーテルポリオール(d2−1)を含有していることが好ましい。
【0187】
上記ポリオール成分(I−d2)が、上記ポリエーテルポリオール(d2−1)を含有する場合、該ポリエーテルポリオール(d2−1)の含有割合は、形成される塗膜の柔軟性等の観点から、ウレタン樹脂(I)におけるポリオール成分(I−d2)の合計固形分量を基準として、10〜100質量%の範囲内であることが好ましく、30〜100質量%の範囲内であることがより好ましく、50〜100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0188】
また、上記ポリエーテルポリオール(d2−1)の数平均分子量は、製造性の観点から、500〜10000であることが好ましく、1000〜5000であることがより好ましく、1600〜4000であることがさらに好ましい。
【0189】
ウレタン樹脂(I)は、最終的に得られるプレポリマーの末端をイソシアネート末端とする観点から、イソシアネート基が残存するようイソシアネート基過剰の条件で合成されることが好ましい。
【0190】
ウレタン樹脂(I)のポリイソシアネート成分(I−d1)とポリオール成分(I−d2)の含有割合は、製造性等の観点から、
ポリオール成分(I−d2)の有する活性水素基/ポリイソシアネート成分(I−d1)の有するイソシアネート基
のモル比で、1/1.01〜1/3.0であることが好ましく、1/1.05〜1/2.5であることがさらに好ましい。
【0191】
ポリイソシアネート成分(I−d1)とポリオール成分(I−d2)のウレタン化反応には、必要に応じて触媒を使用することが出来る。
【0192】
上記触媒としては、例えば、トリス(2−エチルヘキサン酸)ビスマス(III)等のカルボン酸ビスマス化合物;ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の有機スズ化合物;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン化合物等を挙げることができる。
【0193】
これらのうち、比較的低毒性であり、環境適応性の観点からビスマス系触媒が好ましい。
【0194】
上記ウレタン化反応は、50〜120℃で行なうことが好ましい。
【0195】
上記プレポリマーの合成(ウレタン樹脂(I)のグラフト)において、有機溶剤としては、イソシアネートと不活性で、ウレタン化反応に支障を及ぼさない有機溶剤が使用可能であり、このような有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤等を挙げることができる。なかでも上記のうち、水分散安定性の観点から、ケトン系溶剤、エステル系溶剤を好適に使用することができる。
【0196】
また、上記プレポリマーのイソシアネート基は、必要に応じて一部又は全部をブロック剤によりブロックして、ブロックイソシアネート基としてもよい。
【0197】
以上により、ウレタン樹脂(I)とウレタン樹脂(II)がグラフトした構造を有するプレポリマーを製造することが出来る。
【0198】
上記プレポリマーは、水分散安定性、及び得られる塗膜の耐水性の観点から、酸価が5〜40mgKOH/gであることが好ましく、5〜30mgKOH/gであることがより好ましく、10〜30mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0199】
上記プレポリマーは製造安定性及び形成される複層塗膜の仕上がり外観の観点から、水酸基価が0〜100mgKOH/gであることが好ましく、0〜50mgKOH/gであることがより好ましく、0〜30mgKOH/gであることがさらに好ましく、0〜10mgKOH/gであることが特に好ましい。
【0200】
上記プレポリマーは、製造性の観点から、数平均分子量が2000〜50000であることが好ましく、2000〜30000であることがより好ましく、5000〜20000であることがさらに好ましい。
【0201】
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)の合成
上記プレポリマーに、必要に応じ前記イオン形成基に対する中和剤、及び脱イオン水を添加して、水分散(乳化)を行い、必要に応じてさらに、鎖伸長反応、脱溶剤を行うことにより、コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)の水分散液を得ることができる。
【0202】
該中和剤としては、上記イオン形成基を中和できるものであれば特に制限はなく、中和のための塩基性化合物としては、例えば、上記ウレタン樹脂粒子(D)の中和剤の説明欄に記載した中和剤を挙げることが出来る。これらの中和剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0203】
上記塩基性化合物のうち、塗料組成物に適用して得られる塗膜の耐水性の観点から、有機アミンが好ましい。
【0204】
これらの中和剤は、コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)の水分散液のpHが最終的に6.0〜9.0程度となるような量で用いることが望ましい。
【0205】
上記中和剤を添加する場合、中和剤の添加量としては、カルボキシル基等の酸基に対して、0.1〜1.5当量の範囲内であることが好ましく、0.3〜1.2当量の範囲内であることがより好ましい。
【0206】
水分散液を得る手段としては、通常の撹拌機による分散で可能であるが、より粒子径の細かい均一な水分散液を得るためにホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー、ラインミキサー等を使用することができる。
【0207】
上記プレポリマーの鎖伸長反応(高分子量化)を行う場合、必要に応じて水以外の鎖伸長剤を添加して、ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤とを反応させることもできる。鎖伸長剤としては、活性水素を有する公知の鎖伸長剤を使用することができる。具体的には、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン化合物、ジエチレントリアミン等のトリアミン化合物、ヒドラジン等を挙げることができる。
【0208】
鎖伸長度を向上する観点からは、ジエチレントリアミン等のトリアミン化合物等、3官能以上のアミン化合物を好適に使用することができる。また、得られる塗膜の柔軟性の観点からは、エチレンジアミン等のジアミン化合物を好適に使用することができる。
【0209】
また、反応性官能基を導入する目的で、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン等のアミンと水酸基を1分子中にそれぞれ1つ以上持つ化合物も、好適に使用できる。
【0210】
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)のポリイソシアネート成分(d1)とポリオール成分(d2)の含有割合は、製造性等の観点から、
ポリオール成分(d2)の有する活性水素基/ポリイソシアネート成分(d1)の有するイソシアネート基
のモル比で、1/1.01〜1/3.0であることが好ましく、1/1.05〜1/2.0であることがさらに好ましい。
【0211】
上記コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)のポリイソシアネート成分(d1)である、キシリレンジイソシアネート及び水添キシリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(d1−1)は、コア部に使用することが好ましい。
【0212】
また、該ジイソシアネート(d1−1)の含有割合は、形成される複層塗膜の仕上がり外観及び本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)におけるポリイソシアネート成分(d1)の合計固形分量を基準として、10〜90質量%の範囲内であることが好ましく、15〜80質量%の範囲内であることがより好ましく、20〜70質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0213】
上記コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)のポリオール成分(d2)としては、コア部を構成するポリオール成分(I−d2)として、ポリエーテルポリオール(d2−1)を含有し、シェル部を構成するポリオール成分(II−d2)として、ポリカーボネートポリオール(d2−2)を含有していることが好ましい。
【0214】
また、コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)におけるポリオール成分(d2)中の、ポリエーテルポリオール(d2−1)とポリカーボネートポリオール(d2−2)の含有割合は、本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性及び形成される塗膜の柔軟性の観点から、ポリエーテルポリオール(d2−1)/ポリカーボネートポリオール(d2−2)の質量比で、99/1〜30/70であることが好ましく、95/5〜50/50であることがより好ましく、90/10〜60/40であることがさらに好ましい。
【0215】
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)の数平均分子量は、分散性、製造性、塗料組成物に適用して得られる塗膜性能等の観点から、2000以上、特に5000以上、さらに特に10000以上であることが好ましい。
【0216】
数平均分子量が2000以上であると、得られる塗膜性能が良好となる。
【0217】
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)は、分散性及び貯蔵安定性の観点から、一般に10〜5000nmの範囲内の平均粒子径を有することができ、10〜1000nmの範囲内の平均粒子径を有することが好ましく、20〜500nmの範囲内の平均粒子径を有することがより好ましく、50〜300nmの範囲内の平均粒子径を有することが特に好ましい。
【0218】
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)は、水分散安定性、及び得られる塗膜の耐水性の観点から、酸価が5〜40mgKOH/gであることが好ましく、5〜30mgKOH/gであることがより好ましく、10〜30mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0219】
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、水酸基価が0〜100mgKOH/gであることが好ましく、0〜50mgKOH/gであることがより好ましく、0〜10mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0220】
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)の水分散体中の固形分濃度は、20〜50質量%の範囲内であることが好ましく、30〜50質量%の範囲内であることがより好ましい。固形分濃度が50質量%以下であると、乳化が容易となり、水分散体を容易に得ることが出来る。固形分濃度が20質量%以上であると、溶媒成分が少なくなるので、水性塗料組成物の固形分を高くすることが出来る。
【0221】
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)の含有量は、形成される複層塗膜の仕上がり外観及び本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、1〜50質量%が好ましく、5〜45質量%がより好ましく、10〜40質量%がさらに好ましい。
【0222】
本発明の水性塗料組成物において、仕上がり外観に優れた複層塗膜が形成される理由は必ずしも明確ではないが、該水性塗料組成物中の上記ウレタン樹脂粒子(D)の結晶性が比較的高いため、水性第2着色塗料及びクリヤ塗料中の溶媒による第1着色塗膜の膨潤が起こりにくくなり、第1着色塗膜の微小肌の形成や、第1着色塗膜と第2着色塗膜の塗膜間の混層が抑制されることにより、仕上がり外観に優れた複層塗膜が形成されると推察される。
【0223】
また、本発明の水性塗料組成物が貯蔵安定性に優れる理由は、必ずしも明確ではないが、ウレタン樹脂粒子(D)の結晶性が比較的高いため、該水性塗料組成物中の溶媒による該ウレタン樹脂粒子(D)の膨潤が抑制され、増粘が起こりにくくなり、優れた貯蔵安定性を得られることが推察される。
その他の成分
本発明の水性塗料組成物は、さらに必要に応じて、アクリル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、硬化剤(C)、及びウレタン樹脂粒子(D)以外の樹脂、顔料、有機溶剤、硬化触媒、分散剤、沈降防止剤、消泡剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤等を含有することができる。
【0224】
上記アクリル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、硬化剤(C)、及びウレタン樹脂粒子(D)以外の樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂粒子(D)以外のポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0225】
上記顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等を挙げることができる。該顔料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0226】
本発明の水性塗料組成物が、上記顔料を含有する場合、該顔料の配合量は、該水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、1〜200質量部の範囲内であることが好ましく、20〜160質量部の範囲内であることがより好ましく、50〜140質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0227】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。なかでも、酸化チタン、カーボンブラックを好適に使用することができる。
【0228】
水性塗料組成物が、上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の配合量は該水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、1〜180質量部の範囲内であることが好ましく、5〜150質量部の範囲内であることがより好ましく、15〜130質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0229】
また、前記体質顔料としては、例えば、硫酸バリウム、タルク、クレー、カオリン、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。該体質顔料としては、塗料安定性、仕上がり性の観点から、硫酸バリウム、タルクを好適に使用することができる。
【0230】
水性塗料組成物が上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料の配合量は、該水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、1〜180質量部の範囲内であることが好ましく、5〜140質量部の範囲内であることがより好ましく、10〜120質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0231】
また、前記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、ガラスフレーク、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された雲母等が挙げられる。なかでも、アルミニウム顔料を使用することが好ましい。アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウム顔料とリーフィング型アルミニウム顔料があるが、いずれも使用することができる。
【0232】
上記光輝性顔料は鱗片状であることが好ましい。また、該光輝性顔料としては、長手方向寸法が1〜100μm、特に5〜40μmの範囲内であって、厚さが0.001〜5μm、特に0.01〜2μmの範囲内であるものが適している。
【0233】
水性塗料組成物が、上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の配合量は、該水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、0.1〜100質量部の範囲内であることが好ましく、1〜50質量部の範囲内であることがより好ましく、3〜25質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0234】
前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶剤;イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル系溶剤;芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0235】
水性塗料組成物は、その使用に際して、必要に応じて水及び/又は有機溶剤等を添加して希釈し、適正粘度に調整することにより塗装することができる。
【0236】
適正粘度は、塗料組成により異なるが、例えば、フォードカップ粘度計No.4を用いて調整した場合、20℃において、通常、20〜70秒程度、好ましくは25〜50秒程度の粘度とすることができる。
【0237】
また、上記において、水性塗料組成物の塗装固形分濃度は、通常、5〜70質量%程度、好ましくは10〜55質量%程度であることが好適である。
【0238】
水性塗料組成物は、一液型塗料又は多液型塗料のいずれであっても良いが、塗料の混合工程が無く生産性に優れる、塗装機械のメンテナンスの簡略化ができる等の観点から、一液型塗料であることが好ましい。
【0239】
水性塗料組成物は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等の方法により被塗物に塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。これらの内、エアスプレー塗装、回転霧化塗装が好ましい。また、かかる塗装方法は、所望の膜厚が得られるまで、1回ないし数回に分けて行うことができる。
【0240】
水性塗料組成物の塗布量は、硬化膜厚として、通常、5〜40μm、好ましくは7〜35μm、さらに好ましくは10〜30μmとなる量であることが好ましい。
複層塗膜形成方法
本発明の水性塗料組成物は、下記の工程(1)〜(4)、
工程(1):被塗物上に、水性第1着色塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
工程(2):前記工程(1)で形成された第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、
工程(3):前記工程(2)で形成された第2着色塗膜上に、クリヤ塗料(Z)を塗装してクリヤ塗膜を形成する工程、及び
工程(4):前記工程(1)〜(3)で形成された第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜を一度に加熱硬化する工程、
を順次行う複層塗膜形成方法における水性第1着色塗料(X)として使用される水性塗料組成物である。
【0241】
したがって、本発明は、下記の工程(1)〜(4)、
工程(1):被塗物上に、水性第1着色塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
工程(2):前記工程(1)で形成された第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、
工程(3):前記工程(2)で形成された第2着色塗膜上に、クリヤ塗料(Z)を塗装してクリヤ塗膜を形成する工程、及び
工程(4):前記工程(1)〜(3)で形成された第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜を一度に加熱硬化する工程、
を順次行う複層塗膜形成方法であって、該水性第1着色塗料(X)が、本発明の水性塗料組成物である、複層塗膜形成方法を含む。
被塗物
本発明に従い水性塗料組成物を適用し得る被塗物としては、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができ、なかでも、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0242】
また、上記被塗物の素材としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類や各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;繊維材料(紙、布等)等を挙げることができ、なかでも、金属材料及びプラスチック材料が好適である。
【0243】
上記被塗物は、上記金属材料やそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。さらに、該被塗物は、上記金属基材、車体等に、各種電着塗料等の下塗り塗膜が形成されたものであってもよく、なかでも、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が特に好適である。
工程(1)
被塗物上には、まず水性第1着色塗料(X)が塗装される。水性第1着色塗料(X)としては、前記の本発明の水性塗料組成物が塗装され、第1着色塗膜が形成される。
【0244】
上記第1着色塗膜は、後記の水性第2着色塗料(Y)を塗装する前に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で前記プレヒート、エアブロー等を行うことができる。プレヒートの温度は、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましく、60〜80℃がさらに好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間が好ましく、1〜10分間がより好ましく、2〜5分間がさらに好ましい。また、上記エアブローは、例えば、被塗物の塗装面に、常温又は25℃〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
工程(2)
工程(2)においては、上記工程(1)で形成された第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)が塗装され第2着色塗膜が形成される。
【0245】
水性第2着色塗料(Y)は、一般に、被塗物に優れた外観を付与することを目的とするものであって、例えば、カルボキシル基、水酸基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の基体樹脂と、前記硬化剤(C)等の硬化剤からなる樹脂成分を、顔料、その他の添加剤と共に水又は、水及び有機溶剤の混合溶媒中に溶解ないし分散させて塗料化したものを使用することができる。なかでも、得られる複層塗膜の外観、耐水性等の観点から、基体樹脂として水酸基含有樹脂を使用し、架橋剤として上記メラミン樹脂を使用する熱硬化型水性塗料を好適に用いることができる。
【0246】
また、上記顔料としては、前記着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等を使用することができる。
【0247】
上記着色顔料としては、例えば、水性塗料組成物の説明において例示した、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。
【0248】
水性第2着色塗料(Y)が、上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の配合量は水性第2着色塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、1〜80質量部の範囲内であることが好ましく、1〜70質量部の範囲内であることがより好ましく、1〜50質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0249】
また、前記体質顔料としては、例えば、硫酸バリウム、タルク、クレー、カオリン、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。該体質顔料としては、意匠性向上等の観点から硫酸バリウムを好適に使用することができる。
【0250】
水性第2着色塗料(Y)が、上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料の配合量は水性第2着色塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、50質量部以下、好ましくは3〜50質量部、さらに好ましくは5〜30質量部の範囲内であることが好適である。
【0251】
また、前記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、ガラスフレーク、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された雲母等が挙げられる。なかでも、アルミニウム顔料を使用することが好ましい。アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウム顔料とリーフィング型アルミニウム顔料があるが、いずれも使用することができる。
【0252】
上記光輝性顔料は鱗片状であることが好ましい。また、該光輝性顔料としては、長手方向寸法が1〜100μm、特に5〜40μmの範囲内にあって、厚さが0.001〜5μm、特に0.01〜2μmの範囲内にあるものが適している。
【0253】
水性第2着色塗料(Y)が、上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の配合量は、水性第2着色塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、0.1〜100質量部の範囲内であることが好ましく、1〜60質量部の範囲内であることがより好ましく、3〜40質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0254】
上記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶剤;イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル系溶剤;芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0255】
上記有機溶剤としては、塗料の製造性と貯蔵安定性の観点から、少なくともその一種として親水性溶剤を含有することが好ましい。
【0256】
上記親水性溶剤としては、20℃において、100gの水に溶解する質量が20g以上の有機溶媒を好適に使用することができる。該親水性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノtert−ブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル系溶剤;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノtert−ブチルエーテル等のジエチレングリコールエーテル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のプロピレングリコールエーテル系溶剤;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のジプロピレングリコールエーテル系溶剤等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、塗料の貯蔵安定性と形成される複層塗膜の仕上がり外観の観点から、エチレングリコールエーテル系溶剤を好適に使用することができる。
【0257】
水性第2着色塗料(Y)が、上記親水性溶剤を含有する場合、その配合量は、水性第2着色塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、2〜70質量部の範囲内であることが好ましく、5〜50質量部の範囲内であることがより好ましく、10〜30質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0258】
また、水性第2着色塗料(Y)は、さらに必要に応じて、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤を含有することができる。これらの塗料用添加剤は、単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0259】
水性第2着色塗料(Y)は、その使用に際して、必要に応じて水及び/又は有機溶剤等を添加して希釈し、適正粘度に調整することにより塗装することができる。
【0260】
適正粘度は、塗料組成により異なるが、例えば、フォードカップ粘度計No.4を用いて調整した場合、20℃において、通常、20〜80秒程度、好ましくは25〜50秒程度の粘度とすることができる。また、上記において、水性第2着色塗料(Y)の塗装固形分濃度は、通常、5〜50質量%程度であることが好ましく、10〜40質量%程度であることがより好ましい。
【0261】
水性第2着色塗料(Y)は、一液型塗料又は多液型塗料のいずれであっても良いが、塗料の混合工程が無く生産性に優れる、塗装機械のメンテナンスの簡略化ができる等の観点から、一液型塗料であることが好ましい。
【0262】
水性第2着色塗料(Y)は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等の方法により被塗物に塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。これらの内、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等の方法が好ましい。また、かかる塗装方法は、所望の膜厚が得られるまで、1回ないし数回に分けて行うことができる。
【0263】
水性第2着色塗料(Y)の塗布量は、通常、硬化時の膜厚が5〜30μmとなる量であり、好ましくは7〜25μmとなる量であり、さらに好ましくは10〜20μmとなる量である。
【0264】
上記第2着色塗膜は、後記のクリヤ塗料(Z)を塗装する前に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で前記プレヒート、エアブロー等を行うことができる。プレヒートの温度は、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましく、60〜80℃がさらに好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間が好ましく、1〜10分間がより好ましく、2〜5分間がさらに好ましい。また、上記エアブローは、例えば、被塗物の塗装面に、常温又は25℃〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
工程(3)
工程(3)においては、上記工程(2)で形成される第2着色塗膜上に、クリヤ塗料(Z)が塗装され、クリヤ塗膜が形成される。
【0265】
クリヤ塗料(Z)としては、自動車車体等の塗装用として公知の熱硬化性クリヤ塗料組成物をいずれも使用できる。該熱硬化性クリヤ塗料組成物としては、例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び硬化剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物、水性熱硬化性塗料組成物、粉体熱硬化性塗料組成物等を挙げることができる。
【0266】
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物等を挙げることができる。
【0267】
クリヤ塗料(Z)の基体樹脂/硬化剤の組合せとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂等が好ましい。
【0268】
また、上記クリヤ塗料(Z)は、一液型塗料であってもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等の多液型塗料であってもよい。
【0269】
また、上記クリヤ塗料(Z)には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有させることができ、さらに体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
【0270】
クリヤ塗料(Z)の塗装方法としては、特に限定されないが、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等の塗装方法でウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法において、必要に応じて、静電印加を行なってもよい。このうちエアスプレー塗装又は回転霧化塗装が特に好ましい。クリヤ塗料(Z)の塗布量は、通常、硬化時の膜厚が10〜50μmとなる量であり、好ましくは20〜40μmとなる量である。
【0271】
また、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装及び回転霧化塗装を行なう場合には、クリヤ塗料(Z)の粘度を、該塗装に適した粘度範囲、通常、フォードカップNo.4粘度計において、20℃で15〜60秒程度、特に20〜50秒程度の粘度範囲となるように、有機溶剤等の溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
工程(4)
本発明の複層塗膜形成方法においては、上記工程(1)〜(3)で形成される未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤ塗膜が、同時に加熱硬化せしめられる。
【0272】
上記第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜の硬化は、通常の塗膜の焼付手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により行うことができる。加熱温度は、60〜180℃が好ましく、70〜170℃がより好ましく、80〜160℃がさらに好ましい。また加熱時間は、10〜90分間が好ましく、15〜60分間がより好ましい。この加熱により、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜の3層からなる複層塗膜を同時に硬化させることができる。
【実施例】
【0273】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、これら製造例、実施例及び比較例は単なる例示であり、本発明の範囲を限定するためのものではない。製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量基準による。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づくものである。
【0274】
アクリル樹脂(A)の製造
水酸基含有アクリル樹脂(A1)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水70.7部及び「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬社製、乳化剤、有効成分97%)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで、下記のモノマー乳化物のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後、5% 2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、固形分濃度45%の水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1−1)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は43mgKOH/g、酸価は12mgKOH/gであった。
【0275】
モノマー乳化物:脱イオン水50部、スチレン10部、メチルメタクリレート40部、エチルアクリレート35部、n−ブチルメタクリレート3.5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、アクリル酸1.5部、「アクアロンKH−10」1.0部及び過硫酸アンモニウム0.03部を混合攪拌して、モノマー乳化物を得た。
【0276】
ポリエステル樹脂(B)の製造
水酸基含有ポリエステル樹脂(B1)の製造
製造例2
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン174部、ネオペンチルグリコール327部、アジピン酸352部、イソフタル酸109部及び1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物101部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた。次いで、生成した縮合水を水分離器により留去させながら230℃で保持し、酸価が3mgKOH/g以下となるまで反応させた。この反応生成物に、無水トリメリット酸59部を添加し、170℃で30分間付加反応を行った後、50℃以下に冷却した。次いで、2−(ジメチルアミノ)エタノールを酸基に対して当量添加して中和してから、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度45%、pH7.2の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(B1−1)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、水酸基価が128mgKOH/g、酸価が35mgKOH/g、重量平均分子量が13,000であった。
【0277】
ウレタン樹脂粒子(D)の製造
製造例3
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、「PTMG1000」(商品名、三菱ケミカル社製、数平均分子量が1000であるポリテトラメチレンエーテルグリコール)225.0部、「ETERNACOLL UH−100」(商品名、宇部興産社製、数平均分子量が1000であるポリカーボネートジオール)111.0部、シクロヘキサンジメタノール0.9部、ジメチロールプロピオン酸16.3部及びメチルエチルケトン290部を仕込み、撹拌しながら70℃まで昇温させた。次いで、「タケネート500」(商品名、三井化学社製、キシリレンジイソシアネート)98.5部を30分かけて滴下し、70℃を保持して撹拌を続け、遊離イソシアネート基含有量8.0%のNCO末端プレポリマーを得た。得られた反応物を30℃に冷却し、ジメチルエタノールアミン6.5部及び脱イオン水761.5部を加え、乳化させた。その後、これに5%ジエチレントリアミン水溶液74.1部を添加し、120分間撹拌して、鎖伸長反応を行なった。次いで、メチルエチルケトンを減圧加熱下に留去し、脱イオン水で濃度調整して、固形分35%、酸価15mgKOH/g、平均粒子径145nmのウレタン樹脂粒子分散液(D−1)を得た。ウレタン樹脂粒子分散液(D−1)のポリエーテルポリオール/ポリカーボネートポリオールの質量比は、67/33であった。
【0278】
製造例4〜17
製造例3において、配合組成を下記表1−1、表1−2に示す通りとする以外は、製造例3と同様にして、ウレタン樹脂粒子分散液(D−2)〜(D−15)を得た。
【0279】
【表1-1】
【0280】
【表1-2】
【0281】
なお、表中の(注1)〜(注9)は以下の意味を有する。
(注1)「タケネート600」:商品名、三井化学社製、1,3−水添キシリレンジイソシアネート。
(注2)「フォルティモ」:商品名、三井化学社製、1,4−水添キシリレンジイソシアネート。
(注3)HMDI:ヘキサメチレンジイソシアネート。
(注4)IPDI:イソホロンジイソシアネート。
(注5)水添MDI:ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート。
(注6)「PTMG2000」:商品名、三菱ケミカル社製、数平均分子量が2000であるポリテトラメチレンエーテルグリコール。
(注7)「PTMG3000」:商品名、三菱ケミカル社製、数平均分子量が3000であるポリテトラメチレンエーテルグリコール。
(注8)「ETERNACOLL UH−200」:商品名、宇部興産社製、数平均分子量が2000であるポリカーボネートジオール。
(注9)「ETERNACOLL UH−300」:商品名、宇部興産社製、数平均分子量が3000であるポリカーボネートジオール。
【0282】
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(D’)の製造
製造例18
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、シェル部の原材料である「PTMG1000」(商品名、三菱ケミカル社製、数平均分子量が1000であるポリテトラメチレンエーテルグリコール)39.0部、「ETERNACOLL UH−100」(商品名、宇部興産社製、数平均分子量が1000であるポリカーボネートジオール)47.4部、シクロヘキサンジメタノール1.4部、ジメチロールプロピオン酸16.4部、「ネオスタン U−600」(商品名、日東化成社製、ビスマス系触媒)0.2部及びメチルエチルケトン290部を仕込み、撹拌しながら80℃まで昇温させた。その後、イソホロンジイソシアネート33.8部と水添MDI1.6部を添加し、80℃を保持して撹拌を続け、遊離イソシアネート基含有量0.5%のNCO末端プレポリマーを得た。
【0283】
次いで、この反応生成物に、コア部の原材料である「PTMG1000」(商品名、三菱ケミカル社製、数平均分子量が1000であるポリテトラメチレンエーテルグリコール)246.0部、「タケネート500」(商品名、三井化学社製、キシリレンジイソシアネート)68.8部及びメチルエチルケトン280部をさらに添加して撹拌し、遊離イソシアネート基含有量7.9%のNCO末端プレポリマーを得た。得られた反応物を30℃に冷却し、ジメチルエタノールアミン8.7部及び脱イオン水764.2部を加え、乳化させた。その後、これに5%ジエチレントリアミン水溶液74.2部を添加し、120分間撹拌して、鎖伸長反応を行なった。次いで、メチルエチルケトンを減圧加熱下に留去し、脱イオン水で濃度調整して、固形分35%、酸価15mgKOH/g、平均粒子径149nmのコアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子分散液(D’−1)を得た。コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子分散液(D’−1)のポリエーテルポリオール/ポリカーボネートポリオールの質量比は、86/14であった。
製造例19〜33
製造例18において、配合組成を下記表2−1、表2−2に示す通りとする以外は、製造例18と同様にして、ウレタン樹脂粒子分散液(D’−2)〜(D’−16)を得た。
【0284】
【表2-1】
【0285】
【表2-2】
【0286】
顔料分散液の製造
製造例34
製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(A1−1)33.3部(固形分15部)、「JR−806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)100部、「カーボンMA−100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック)1部及び脱イオン水10部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した。次いで、得られた混合液を広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて30分間分散して、顔料分散液(P−1)を得た。
【0287】
製造例35
製造例2で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(B1−1)37.5部(固形分15部)、「JR−806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)100部、「カーボンMA−100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック)1部及び脱イオン水10部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した。次いで、得られた混合液を広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて30分間分散して、顔料分散液(P−2)を得た。
【0288】
水性塗料組成物の製造
実施例1
製造例34で得た顔料分散液(P−1)144.3部、製造例2で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(B1−1)55.6部(固形分25部)、製造例3で得たウレタン樹脂粒子分散液(D−1)71.4部(固形分30部)、「バイヒジュールVPLS2310」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ブロック化ポリイソシアネート化合物、固形分38%)13.2部(固形分5部)、及び「サイメル325」(商品名、オルネクスジャパン社製、メチル/ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分80%)31.3部(固形分25部)を均一に混合した。次いで、得られた混合物に、「UH−752」(商品名、ADEKA社製、増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、PH8.0、塗料固形分48%、20℃におけるフォードカップNO.4による粘度が30秒の水性塗料組成物NO.1を得た。
【0289】
実施例2〜33、比較例1〜6
配合組成を下記表3−1〜表3−4に示すものとする以外は、実施例1と同様にして、20℃におけるフォードカップNO.4による粘度が30秒の各水性塗料組成物NO.2〜39を得た。
【0290】
水性塗料組成物NO.1〜39の貯蔵安定性について、「LVDV−I」(商品名、BROOKFIELD社製、B型粘度計)によって測定される60rpmで1分後の粘度に基づいて、製造直後の粘度と、40℃で10日間静置した後の粘度の変化率によって評価した。
粘度変化率(%)=[(40℃で10日間静置した後の粘度/製造直後の粘度)−1]×100
◎及び○が合格である。
◎:粘度変化率が20%未満、
○:粘度変化率が20%以上、50%未満、
×:粘度変化率が50%以上。
貯蔵安定性の結果を併せて表3−1〜表3−4に示す。
【0291】
【表3-1】
【0292】
【表3-2】
【0293】
【表3-3】
【0294】
【表3-4】
【0295】
水性第2着色塗料(Y)用アクリル樹脂の製造
製造例36
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水130部、「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬社製、乳化剤、有効成分97%)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し、80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%ジメチルエタノールアミン水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、固形分濃度30%のアクリル樹脂エマルション(AC−1)を得た。得られたアクリル樹脂エマルション(AC−1)は、酸価が33mgKOH/g、水酸基価が25mgKOH/gであった。
【0296】
モノマー乳化物(1): 脱イオン水42部、「アクアロンKH−10」0.72部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
モノマー乳化物(2): 脱イオン水18部、「アクアロンKH−10」0.31部、過硫酸アンモニウム0.03部、メタクリル酸5.1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、スチレン3部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
【0297】
水性第2着色塗料(Y)用ポリエステル樹脂の製造
製造例37
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、ヘキサヒドロ無水フタル酸126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃〜230℃の間を3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに無水トリメリット酸38.3部を加え、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノールで希釈し、固形分濃度70%であるポリエステル樹脂溶液(PE−1)を得た。得られたポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、固形分濃度70%、重量平均分子量が6,400であった。
【0298】
光輝性顔料分散液の製造
製造例38
攪拌混合容器内において、アルミニウム顔料ペースト「GX−180A」(商品名、旭化成メタルズ社製、金属含有量74%)19部(固形分14部)、2−エチル−1−ヘキサノール35部、下記リン酸基含有樹脂溶液8部及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、光輝性顔料分散液(P−3)を得た。
【0299】
リン酸基含有樹脂溶液:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、メトキシプロパノール27.5部及びイソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、下記リン酸基含有重合性モノマー15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部及びt−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を、4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分濃度50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。本樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
【0300】
リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、モノブチルリン酸57.5部及びイソブタノール41部を入れ、90℃に昇温後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノ−ル59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーのリン酸基による酸価は285mgKOH/gであった。
【0301】
水性第2着色塗料(Y)の製造
製造例39
製造例36で得たアクリル樹脂エマルション(AC−1)100部(固形分30部)、製造例37で得たポリエステル樹脂溶液(PE−1)30部(固形分21部)、製造例38で得た光輝性顔料分散液(P−3)62部、「サイメル325」(商品名、オルネクスジャパン社製、メチル/ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分80%)32.5部(固形分26部)、「ユーコートUX−8100」(商品名、三洋化成工業社製、ウレタンエマルション、固形分35%)65部(固形分23部)及びエチレングリコールモノブチルエーテル15部を均一に混合し、さらに、「プライマルASE−60」(商品名、ロームアンドハース社製、増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えて、pH8.0、塗料固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が40秒の水性第2着色塗料(Y−1)を得た。
【0302】
(試験用被塗物の作製)
リン酸亜鉛処理された冷延鋼板に、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料組成物(商品名「エレクロンGT−10」、関西ペイント社製)を膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させた。かくして、鋼板上に電着塗膜を形成してなる被塗物を作製した。
【0303】
(試験板の作成)
実施例34
上記試験用被塗物に、実施例1で得た水性塗料組成物NO.1を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、乾燥膜厚で25μmとなるように静電塗装し、5分間放置した。次いで、該未硬化の第1着色塗膜上に製造例39で得た水性第2着色塗料(Y−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、乾燥膜厚で15μmとなるように静電塗装し、5分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。さらに、該第2着色塗膜上に「マジクロンKINO−1210」(商品名、関西ペイント社製、アクリル樹脂系溶剤型上塗りクリヤ塗料)を乾燥膜厚で35μmとなるように静電塗装し、7分間放置した。次いで、140℃で30分間加熱して、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜を加熱硬化させることにより試験板を作製した。
【0304】
実施例35〜66、比較例7〜12
実施例34において、水性塗料組成物の種類を下記表4の通りに変更すること以外は、実施例34と同様にして試験板を作製した。
【0305】
上記で得られた各試験板について、下記の試験方法により評価を行った。評価結果を下記表4に示す。
【0306】
(試験方法)
仕上がり外観:各試験板について、「Wave Scan」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるLong Wave(LW)値に基づいて、平滑性を評価し、Wa値に基づいて、鮮映性を評価した。LW値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示し、Wa値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示す。
【0307】
【表4】
被塗物上に、水性第1着色塗料(X)、水性第2着色塗料(Y)及びクリヤ塗料(Z)を順次塗装し、得られる3層の複層塗膜を同時に加熱硬化する3コート1ベーク方式による複層塗膜形成方法における水性第1着色塗料(X)として使用される水性塗料組成物であって、前記水性塗料組成物は、アクリル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)から選ばれる少なくとも1種の樹脂、硬化剤(C)、並びにキシリレンジイソシアネート及び水添キシリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(d1−1)を含有するポリイソシアネート成分(d1)と、ポリオール成分(d2)とを含む構成成分から得られるウレタン樹脂粒子(D)を含有する。